以下に、添付図面を参照して、本発明に係る通報処理システム及び通報処理方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、本実施例では、事象に係る通報が発生した場合に警備員が対処を行う警備システムを例に説明を行う。このため、本実施例における警備員は特許請求の範囲における対処員に対応し、本実施例における警備員端末装置は特許請求の範囲における対処員端末装置に対応することになる。
図1は、実施例に係る警備システムについての説明図である。図1に示す警備システムは、所定の事象の発生に伴う通報を受け付けた場合に、通報の種別や通報者の位置情報から事象への対処を担当する警備員を特定し、担当警備員として現地に派遣する。
図1では、イベントスタッフなどの人物がスマートフォンなどの端末装置を用いて通報を行った状態を示している。説明の便宜上、通報を行った人物を通報者といい、通報に使用された端末装置を通報者端末装置70という。また、警備員による対処が必要な事象をインシデントという。インシデントには、火災、事故、客同士のトラブルなどが含まれる。
警備システムのコントロールセンタ50は、通報者端末装置70から通報を受けたならば(S11)、事象を一意に識別する事象IDを付与する(S12)。そして、事象IDに対応する識別信号を決定し(S13)、通報者端末装置70に識別信号の発信を指示する(S14)。識別信号としては、事象ID自体を用いてもよいし、事象IDを加工して生成したデータを用いてもよい。
通報者端末装置70は、コントロールセンタ50から識別信号発信指示を受けたならば、自装置の周囲に識別信号を発信する。この識別信号の発信には、近距離無線通信のように通信可能な距離の小さい通信規格、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)などを用いることが望ましい。
コントロールセンタ50は、担当警備員の警備員端末装置40に対して事象の位置や種類等を含む対処通知を送信し、事象の発生位置に派遣する。ここで、コントロールセンタ50は、担当警備員の警備員端末装置40に対し、識別信号特定情報をさらに通知する(S15)。識別信号特定情報は、通報者端末装置70が発信する識別信号を特定するために用いる情報であり、警備員端末装置40は、通知された識別信号特定情報を記憶する。
担当警備員となった警備員が警備員端末装置40を携行して現場に到着すると、通報者端末装置70が事象の近傍に所在し、識別信号を発信しているため、警備員端末装置40は識別信号を受信可能となる(S16)。警備員端末装置40は、受信した識別信号が記憶した識別信号特定情報に対応することを条件に、コントロールセンタ50に到着通知を送信する(S17)。
このように、図1に示した警備システムは、所定の事象が発生した場合に、当該事象の近傍に所在する装置である通報者端末装置70から周囲に識別信号を発信させるとともに、事象への対処を担当する警備員が携行する警備員端末装置40に識別信号特定情報を通知し、警備員端末装置40が識別信号の受信状態に応じて現地への到着を判定し、現地への到着をコントロールセンタ50に通知する。かかる構成により、警備員による操作を必要とすることなく現場への到着を判定し、警備員の状態をリアルタイムで検知可能とすることで、警備員の状態を効率的かつ高精度に管理することが可能となる。
次に、図1に示した警備システムのシステム構成について説明する。図2は、図1に示した警備システムのシステム構成図である。図2に示すように、警備システムは、固定装置10、拠点サーバ20、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22、警備員装備30、コントロールセンタ50及びサービスサーバ80を有する。
固定装置10は、予め設置された装置である。この固定装置10には、警備対象領域の警備に用いる情報を取得するために予め設置された情報取得手段、広告の表示等に用いられる大型固定ディスプレイ14、固定スピーカ15等が含まれる。また、予め設置された情報取得手段としては、監視カメラ11、侵入センサ12、火災センサ13等が含まれる。また、空調装置など任意の装置から動作状態を示す設備情報を取得することもできる。
拠点サーバ20は、固定装置10と、コントロールセンタ50との通信を中継するサーバである。拠点サーバ20は、警備対象領域の内部、若しくは近傍に設置する。また、複数の警備対象領域が存在する場合などには、拠点サーバ20を複数設けることができる。
可搬カメラユニット21は、コントロールセンタ50からの指示に基づいて設置されるカメラである。可搬カメラユニット21は、設置された地点の周辺を撮像し、画像データをコントロールセンタ50に送信する。この可搬カメラユニット21とコントロールセンタ50との間の通信も、拠点サーバ20により中継される。
可搬センサユニット22は、コントロールセンタ50からの指示に基づいて設置されるセンサである。火災センサや侵入センサなど、任意のセンサに通信機能を持たせ、可搬センサユニット22とすることができる。可搬センサユニット22は、設置された地点の周辺の情報を取得し、画像データをコントロールセンタ50に送信する。この可搬センサユニット22とコントロールセンタ50との間の通信も、拠点サーバ20により中継される。
警備員装備30は、警備員が装備する装置である。警備員装備30には、ウェアラブルカメラであるカメラ31と、マイク32と、GPS(Global Positioning System)ユニット33と、イヤホン34と、スピーカ35と、無線中継装置36と、警備員端末装置40とが含まれる。
カメラ31は、周囲を撮像し、画像データを警備員端末装置40に出力する。マイク32は、周囲の音を取得し、音データを警備員端末装置40に出力する。GPSユニット33は、GPS人工衛星の信号を受信して位置を算出し、位置データを警備員端末装置40に出力する。イヤホン34及びスピーカ35は、警備員端末装置40からの制御を受けて音の出力を行なう。
警備員端末装置40は、携帯電話通信網を用いた無線通信を行なう機能と、Wi−Fi(Wireless Fidelity)等の規格に準じた無線通信を行なう機能とを有する。警備員端末装置40は、これらの通信機能を用いてコントロールセンタ50と通信することができる。なお、Wi−Fi等の規格に準じた無線通信は、無線中継装置36及び拠点サーバ20を経由して行なう。
無線中継装置36は、Wi−Fi等の規格に準じた無線通信を中継する装置であり、警備員端末装置40と拠点サーバ20との間の通信のみならず、他の装置の無線通信を中継することができる。例えば、他の無線中継装置36の通信の中継や、歩行者の携帯端末からインターネットへの接続の中継を行なうことも可能である。
警備員端末装置40は、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33が出力したデータをコントロールセンタ50に送信し、コントロールセンタ50から受信したデータに基づいてイヤホン34及びスピーカ35への出力を行なう。
また、警備員端末装置40は、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33から取得したデータを使用する処理を自装置で実行し、処理結果に応じた出力をイヤホン34及びスピーカ35を用いて行なうことができる。
コントロールセンタ50は、固定装置10、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22及び警備員装備30から受信したデータを用い、警備対象領域の警備を行なう。また、コントロールセンタ50は、サービスサーバ80と通信し、サービスサーバ80が提供するサービスを警備員端末装置40で利用可能とする。
サービスサーバ80は、通訳サービスなど、警備員装備30を装備した警備員を補助する各種サービスを提供するサーバである。サービスサーバ80は、サービスごとに個別に設けてもよい。
次に、図1に示したコントロールセンタ50の内部構成について説明する。図3は、図1に示したコントロールセンタ50の内部構成を示す内部構成図である。図3に示すように、コントロールセンタ50は、警備対象領域情報取得部51、装置制御指示送信部52、通知送信部53、記憶部54及び制御部55を有する。
警備対象領域情報取得部51は、固定装置10、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22及び警備員装備30から情報を取得し、制御部55に出力する処理部である。
装置制御指示送信部52は、制御部55が出力する制御指示を対象の装置に送信する処理部である。制御指示の送信対象となる装置は、固定装置10、可搬カメラユニット21及び可搬センサユニット22などである。通知送信部53は、制御部55が出力する警備員端末装置40への通知を送信する処理部である。
記憶部54は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶デバイスであり、警備員状態データ54a及び事象履歴データ54bを記憶する。警備員状態データ54aは、各警備員の状態を示すデータである。事象履歴データ54bは、発生した事象の履歴を示すデータである。
制御部55は、コントロールセンタ50を全体制御する制御部であり、警備員状態管理部55a、事象管理部55b、識別信号発信制御部55c、装置制御部55d、担当警備員特定部55e、警備員通知部55f及び識別情報通知部55gを有する。制御部55は、CPU(Central Processing Unit)などで実現できる。制御部55をCPUにより実現する場合には、警備員状態管理部55a、事象管理部55b、識別信号発信制御部55c、装置制御部55d、担当警備員特定部55e、警備員通知部55f及び識別情報通知部55gは、CPUが実行するプロセスとして実現される。
警備員状態管理部55aは、警備対象領域情報取得部51が警備員装備30から取得した情報を警備員状態データ54aに登録することで、警備員の状態を管理する処理部である。具体的には、警備員状態管理部55aは、各警備員の装備、状態、位置などを警備員状態データ54aに適宜登録する。
事象管理部55bは、警備員による対処が必要な事案であるインシデントを管理する処理部である。事象管理部55bは、警備対象領域情報取得部51が固定装置10、可搬カメラユニット21、可搬センサユニット22などから取得した情報を用いてインシデントの発生を検知する。また、警備員端末装置40や通報者端末装置70からの通報などに基づいてインシデントの検知を行うことも可能である。
事象管理部55bは、インシデントの検知が行われたならば、該インシデントを一意に識別する事象IDを付与し、事象履歴データ54bに登録する。そして、担当警備員の状態や対処状況などを事象IDに関連付け、随時更新することで事象の管理を行う。例えば、担当警備員が決定したならば担当警備員の警備員IDを関連付け、到着通知を受けたならば担当警備員の状態を「到着済」に更新する。そして、対処終了通知を受けたならば、担当警備員の状態を「対処終了」に更新することになる。
識別信号発信制御部55cは、事象管理部55bにより事象IDの付与が行われたならば、事象IDに対応する識別信号を決定し、事象の近傍に所在する装置に識別信号の発信を指示する。具体的には、通報者端末装置70の通報に基づいて事象の登録と事象IDの付与が行われたならば、識別信号発信制御部55cは、通報元である通報者端末装置70に識別信号の発信を指示する。この識別信号の発信の指示には、識別信号を特定可能な情報が含まれる。例えば、識別信号としては事象ID自体を用いる場合には、識別信号として事象IDを通報者端末装置70に通知し、識別信号の発信指示を行うことになる。なお、事象ID自体を識別信号として用いるのではなく、事象IDを加工して生成したデータを識別信号として通報者端末装置70に通知し、識別信号の発信指示を行ってもよい。
また、識別信号発信制御部55cは、警備員端末装置40から対処終了通知を受けた場合に、識別信号の停止を指示する。例えば、通報者端末装置70に識別信号の発信を指示した後、担当警備員の警備員端末装置40から対処終了通知を受けたならば、識別信号の発信を継続していた通報者端末装置70に識別信号の停止を指示することになる。
装置制御部55dは、事象管理部55bによる検知結果に基づいて、固定装置10、可搬カメラユニット21及び可搬センサユニット22に対する制御指示を決定し、装置制御指示送信部52に出力する処理部である。例えば、火災の発生を検知した場合には、大型固定ディスプレイ14の表示出力や固定スピーカ15からの音声出力の内容を指定する制御指示を出力することで、避難誘導を行うことができる。
担当警備員特定部55eは、事象管理部55bによる検知結果に基づいて、事象への対処を担当する担当警備員を特定する処理部である。具体的には、担当警備員特定部55eは、事象管理部55bが事象を検知したならば、事象の種別と、事象の位置と、警備員状態データ54aに格納された警備員の状態とを用い、事象への対処を担当する担当警備員を特定する。
警備員通知部55fは、担当警備員特定部55eにより担当警備員が特定されたならば、対処通知を生成し、通知送信部53に出力することで、特定された対処員への対処通知の送信を行わせる。ここで、対処通知には、事象(インシデント)の種別、位置、詳細情報、必要な装備など、対処に必要な各種情報が含まれる。
識別情報通知部55gは、担当警備員の警備員端末装置40に対し、識別信号特定情報を通知する処理部である。識別信号特定情報は、識別信号発信制御部55cにより決定された識別信号を特定するために用いる情報である。例えば、識別信号としては事象ID自体を用いる場合には、識別信号特定情報として事象IDを通知することになる。事象ID自体を識別信号として用いるのではなく、事象IDを加工して生成したデータを識別信号とするならば、事象IDを加工して生成したデータを識別信号特定情報として通知する。
次に、図2に示した警備員端末装置40の内部構成について説明する。図4は、図2に示した警備員端末装置40の内部構成を示す内部構成図である。図4に示すように、警備員端末装置40は、装備インタフェース41、表示操作部42、携帯通信網接続部43、無線中継装置インタフェース44、近距離無線通信部47、記憶部45及び制御部46を有する。
装備インタフェース41は、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33の出力を受け付け、イヤホン34及びスピーカ35への音の出力を行なうインタフェースである。表示操作部42は、表示出力と操作入力の受付とを行なうタッチパネルディスプレイなどのデバイスである。
携帯通信網接続部43は、携帯電話通信網に接続して通信を行なう通信インタフェースである。無線中継装置インタフェース44は、無線中継装置36とWi−Fi(Wireless Fidelity)等の規格に準じた無線通信を行なう通信インタフェースである。近距離無線通信部47は、BLEなどの近距離無線通信を行う通信インタフェースである。
記憶部45は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶デバイスであり、地図データ45a及び識別信号データ45b等を格納する。地図データ45aは、警備対象領域やその周辺などの地図を示すデータである。識別信号データ45bは、コントロールセンタ50から受信した識別信号特定情報を格納したデータである。
制御部46は、警備員端末装置40を全体制御する制御部であり、情報収集部46a、情報送信部46b、通知処理部46c、到着判定部46d、到着通知部46e及び対処終了通知部46fを有する。制御部46は、CPU(Central Processing Unit)などで実現できる。制御部46をCPUにより実現する場合には、情報収集部46a、情報送信部46b、通知処理部46c、到着判定部46d、到着通知部46e及び対処終了通知部46fは、CPUが実行するプロセスとして実現される。
情報収集部46aは、カメラ31、マイク32及びGPSユニット33の出力を取得することで、情報収集を行なう処理部である。情報送信部46bは、コントロールセンタ50への情報の送信を行なう処理部であり、情報収集部46aが収集した情報をコントロールセンタ50に送信する。このとき、情報収集部46aが収集した情報をそのまま送信してもよいし、加工や解析を行った上で送信してもよい。さらに、情報送信部46bは、表示操作部42に対する対処員の操作に基づいて、インシデントの発生を示す通報をコントロールセンタ50に送信することができる。
通知処理部46cは、コントロールセンタ50からの通知に係る処理を行う。具体的には、通知処理部46cは、コントロールセンタ50から対処通知を受信した場合には、表示操作部42やイヤホン34による出力を用い、警備員に対して対処通知の内容を報知する。また、配置の変更など警備状態の変更に係る通知についても、表示操作部42やイヤホン34による出力を用いて警備員に報知することができる。
到着判定部46dは、自装置を携行している警備員である担当警備員が事象の近傍に到着したか否かを判定する処理部である。まず、到着判定部46dは、コントロールセンタ50から識別信号特定情報を受信した場合に、識別信号特定情報を識別信号データ45bに格納する。
その後、到着判定部46dは、近距離無線通信部47による受信結果に、識別信号データ45bにより特定される識別信号が含まれるか否かを判定することで、識別信号の検索を行う。到着判定部46dは、近距離無線通信部47が識別信号を受信したならば、その受信頻度や受信強度を用いて到着を判定する。例えば、受信頻度と受信強度がそれぞれの閾値以上となった場合に、担当警備員が事象の近傍に到着したと判定する。
到着通知部46eは、到着判定部46dにより担当警備員が事象の近傍に到着したと判定された場合に、コントロールセンタ50に到着通知を送信する処理部である。
対処終了通知部46fは、事象への対処を終了した担当警備員が所定の操作を行った場合に、コントロールセンタ50に対処終了通知を送信する処理部である。
次に、図1に示した通報者端末装置70の内部構成について説明する。図5は、図1に示した通報者端末装置70の内部構成を示す内部構成図である。図5に示すように、通報者端末装置70は、表示操作部71、近距離無線通信部72、携帯通信網接続部73、記憶部74及び制御部75を有する。
表示操作部71は、表示出力と操作入力の受付とを行なうタッチパネルディスプレイなどのデバイスである。近距離無線通信部72は、BLEなどの近距離無線通信を行う通信インタフェースである。携帯通信網接続部73は、携帯電話通信網に接続して通信を行なう通信インタフェースである。なお、この他、カメラ、マイク、GPSユニット、スピーカなどを設けてもよい。また、Wi−Fiなどの他の通信規格に対応した通信インタフェースを設けてもよい。
記憶部74は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶デバイスであり、識別信号データ74aなどを記憶する。識別信号データ74aは、自装置が発信すべき識別信号を示すデータである。
制御部75は、通報者端末装置70を全体制御する制御部であり、通報処理部75a及び識別信号発信処理部75bを有する。制御部75は、CPU(Central Processing Unit)などで実現できる。制御部75をCPUにより実現する場合には、通報処理部75a及び識別信号発信処理部75bは、CPUが実行するプロセスとして実現される。
通報処理部75aは、通報者の操作を受け付けてコントロールセンタ50に事象の発生を通報する処理を行う。この通報では、事象の種別、通報者端末装置70の位置、通報者端末装置70の識別情報などがコントロールセンタ50に送信される。事象の種別は、例えば通報者の入力により決定する。通報者端末装置70の位置情報は、例えばGPSなどを用いて特定すればよい。
識別信号発信処理部75bは、コントロールセンタ50から識別信号発信指示を受けた場合に、識別信号発信指示に含まれる識別信号を特定する情報を識別信号データ74aとして記憶部74に格納し、識別信号の発信を開始する。具体的には、識別信号発信処理部75bは、識別信号データ74aにより特定される識別信号を近距離無線通信部72に定期的に送信させることで識別信号を発信する。
そして、識別信号発信処理部75bは、コントロールセンタ50から識別信号停止指示を受けた場合に、識別信号の発信を停止する。
次に、コントロールセンタ50が格納する警備員状態データ54aの具体例について説明する。図6は、コントロールセンタ50が格納する警備員状態データ54aの具体例についての説明図である。図6に示すように、警備員状態データ54aは、警備員を一意に識別する警備員IDに、装備、状態、位置などを対応付けたデータである。
図5では、警備員ID「G001」に対し、装備「基本装備」、状態「警備中(巡回)」、「位置(X11,Y11)」などを対応付けている。また、警備員ID「G002」に対し、装備「基本装備、AED」、状態「警備中(対処)」、「位置(X12,Y12)」などを対応付けている。また、警備員ID「G003」に対し、装備「なし」、状態「待機中」、「位置(X13,Y13)」などを対応付けている。
次に、コントロールセンタ50が格納する事象履歴データ54bの具体例について説明する。図7は、コントロールセンタ50が格納する事象履歴データ54bの具体例についての説明図である。図7に示すように、事象履歴データ54bは、事象を一意に識別する事象IDに、日時、種別、位置、通報者IDと識別信号発信者ID、担当警備員ID、担当警備員状態などを対応付けたデータである。
図7では、事象ID「B001」に対し、日時「2018/03/10 14:30」、種別「救急」、位置「(X21,Y21)」、通報者IDと識別信号発信者ID「H001」、担当警備員ID「G002」、担当警備員状態「到着済、対処中」などを対応付けている。
また、事象ID「B002」に対し、日時「2018/03/10 15:01」、種別「火災」、位置「(X22,Y22)」、通報者IDと識別信号発信者ID「H002」、担当警備員ID「G005」、担当警備員状態「未到着」などを対応付けている。
図7では、通報者IDと識別信号発信者IDとが一致する場合、すなわち通報者端末装置70に識別信号を発信させる場合を示している。通報者IDと識別信号発信者IDとは異なってもよい。例えば、通報者端末装置70から通報を受け付け、近傍に所在する固定装置に識別信号を発信させる場合には、通報者IDと識別信号発信者IDとが相違する。
次に、警備システムの動作について説明する。図8は、警備システムの動作について説明するフローチャートである。まず、通報者端末装置70は、通報操作を受け付けて(ステップS101)、コントロールセンタ50に通報を行う(ステップS102)。
コントロールセンタ50は、通報者端末装置70から通報を受けて事象IDを発行し、事象履歴データ54bへの登録を行う(ステップS301)。そして、事象IDを識別信号として決定し(ステップS302)、通報者端末装置70に識別信号発信指示を行う(ステップS303)。また、コントロールセンタ50は、事象への対処を担当する担当警備員を特定し、担当警備員の警備員端末装置40に対して対処通知及び識別信号特定情報を送信する(ステップS304)
通報者端末装置70は、コントロールセンタ50からの識別信号発信指示を受けて識別信号の発信を開始する(ステップS103)。対処通知及び識別信号特定情報を受信した警備員端末装置40は、識別信号特定情報を識別信号データ45bとして格納し(ステップS201)、識別信号の検索を開始する(ステップS202)。警備員端末装置40は、識別信号の受信結果と識別信号特定情報とを用いて到着判定を行い(ステップS203)、コントロールセンタ50に到着通知を送信する(ステップS204)。コントロールセンタ50は、警備員端末装置40から到着通知を受信して、事象履歴データ54bを更新する(ステップS305)。
その後、担当警備員による事象への対処が終了したならば、警備員端末装置40は、コントロールセンタ50に対処終了通知を送信する(ステップS205)。コントロールセンタ50は、警備員端末装置40から対処終了通知を受信して事象履歴データ54bを更新し(ステップS306)、通報者端末装置70に識別信号停止指示を送信する(ステップS307)。通報者端末装置70は、コントロールセンタ50から識別信号停止指示を受けて識別信号の発信を停止し(ステップS104)、処理を終了する。
次に、警備システムの変形例について説明する。これまでの説明では、コントロールセンタ50が付与した事象IDを識別信号として用いる場合を示したが、識別信号は事象IDに限定されるものではない。例えば、通報者端末装置70の端末IDを識別信号として用いてもよい。
図9は、通報者端末装置70の端末IDを識別信号として用いる構成についての説明図である。図9に示した構成では、コントロールセンタ50は、通報者端末装置70から通報を受けたならば(S21)、通報者端末装置70の装置IDを通報者IDとして特定し(S22)、通報者IDを識別信号として決定する(S23)。また、通報者端末装置70は、通報後、自装置の装置IDを識別信号として自装置の周囲に発信する(S24)。
コントロールセンタ50は、担当警備員の警備員端末装置40に対して事象の位置や種類等を含む対処通知を送信し、事象の発生位置に派遣する。ここで、コントロールセンタ50は、担当警備員の警備員端末装置40に対し、識別信号特定情報をさらに通知する(S25)。警備員端末装置40は、通知された識別信号特定情報を記憶する。
担当警備員となった警備員が警備員端末装置40を携行して現場に到着すると、通報者端末装置70が事象の近傍に所在し、識別信号を発信しているため、警備員端末装置40は識別信号を受信可能となる(S26)。警備員端末装置40は、受信した識別信号が記憶した識別信号特定情報に対応することを条件に、コントロールセンタ50に到着通知を送信する(S27)。
次に、通報と識別信号の発信とを異なる装置が行う場合について説明する。通報者端末装置70が通報後に移動しなければ、通報者端末装置70は事象の近傍に所在する装置となるため、識別信号を発信して担当警備員の到着の判定に寄与することができる。しかしながら、通報者が通報後に移動しないとは限らない。通報者が移動することが想定される場合には、通報の時点で通報者端末装置70の近傍に所在する固定の装置に識別信号を発信させればよい。
図10は、通報と識別信号の発信とを異なる装置が行う場合についての説明図である。図10では、コントロールセンタ50は、通報者端末装置70から通報を受けたならば(S31)、事象を一意に識別する事象IDを付与する(S32)。そして、事象IDに対応する識別信号を決定し(S33)、通報者端末装置70の近傍に所在する装置を識別信号発信装置として決定する(S34)。識別信号発信装置としては、固定の装置か、少なくとも担当警備員の到着まで移動しない装置を用いる。
コントロールセンタ50は、識別信号発信装置に識別信号の発信を指示する(S35)。識別信号発信装置は、コントロールセンタ50から識別信号発信指示を受けたならば、自装置の周囲に識別信号を発信する。
また、コントロールセンタ50は、担当警備員の警備員端末装置40に対して事象の位置や種類等を含む対処通知を送信し、事象の発生位置に派遣する。ここで、コントロールセンタ50は、担当警備員の警備員端末装置40に対し、識別信号特定情報をさらに通知する(S36)。識別信号特定情報は、識別情報発信装置が発信する識別信号を特定するために用いる情報であり、警備員端末装置40は、通知された識別信号特定情報を記憶する。
担当警備員となった警備員が警備員端末装置40を携行して現場に到着すると、識別信号発信装置が事象の近傍に所在し、識別信号を発信しているため、警備員端末装置40は識別信号を受信可能となる(S37)。警備員端末装置40は、受信した識別信号が記憶した識別信号特定情報に対応することを条件に、コントロールセンタ50に到着通知を送信する(S38)。
上述してきたように、本実施例に係る警備システムは、所定の事象が発生した場合に、当該事象の近傍に所在する装置から周囲に識別信号を発信させ、事象への対処を担当する担当警備員により携行される警備員端末装置に対し、識別信号を特定する識別信号特定情報を通知する。そして、警備員端末装置による識別信号の受信状態に応じて担当警備員が事象の近傍に到着したか否かを判定し、担当警備員が前記事象の近傍に到着したと判定された場合に、所定の管理装置に到着を通知する。かかる構成により、警備員による操作を必要とすることなく現場への到着を判定し、警備員の状態をリアルタイムで検知可能とすることで、警備員の状態を効率的かつ高精度に管理することが可能となる。
事象の近傍に所在する装置としては、事象の発生を管理装置に通報する装置を用いることができる。そして、管理装置は、事象の発生に係る通報を受けた場合に、該事象を一意に特定する事象識別情報である事象IDを付与し、事象IDに対応する識別信号を用いることができる。また、事象の近傍に所在する装置は、自装置の装置識別情報とともに事象の発生を通報し、自装置の装置識別情報を識別情報として発信してもよい。
なお、本実施例では、通報者による操作を受け付けて通報を行う通報者端末装置70を例に説明を行ったが、固定のセンサなどが通報や識別信号の発信を行なう構成とすることもできる。
また、本実施例では、識別信号の送信にBLEを用いる場合を例に説明を行ったが、RFID、ZigBeeなど他の通信規格を用いてもよい。また、電波に限らず、音波、光などで識別信号を周囲に発信してもよい。
また、本実施例では、対処終了通知を受信したときに識別信号を停止している。このため、事象への対処に警備員を追加する場合には、追加の警備員に対処通知と識別信号特定情報を通知すればよい。なお、警備員の到着時点で識別信号の発信を停止する構成とすることも可能である。また。警備員の到着で識別信号の発信を停止するか、対処終了通知まで識別信号の発信を継続するかを事象の種別などによって切り替えてもよい。
また、現地への到着を判定するまでに識別信号の受信状況から現地への接近状況を判定し、担当警備員に報知することも可能である。さらに、警備員同士の合流、警備以外の待ち合わせなどに用いることも可能である。
また、本実施例に開示した警備システムは、適宜変形して実施することができる。例えば、コントロールセンタ50に複数の監視担当者用端末を接続し、複数の監視担当者がコントロールセンタ50にて監視を行うことができるよう構成してもよい。このような構成では、例えば警備員が監視担当者と通話接続する場合には、警備員の発呼により全ての監視担当者端末を着信状態とし、最先に応答した監視担当者用端末と警備員との間で通話接続すればよい。
また、警備員端末装置40のカメラ31により操作者や周囲の人物の顔画像を取得し、表情を分析して通話の緊急度を決定し、緊急度が高い場合(表情に緊張や苦痛、困惑が多い場合など)に優先的に通話接続することもできる。
また、警備員以外に、ボランティアスタッフなどを用いて警備を行う場合には、ボランティアスタッフが携行する端末は警備員端末装置40とは異ならせ、機能の制限を可能となる。また、異なるアプリケーションプログラムとして、それぞれの端末上で実行してもよい。
また、本実施例では、警備員の位置情報の取得について詳細な説明を省略したが、警備員の位置情報は、GPSユニット33による取得の他、任意の方法で取得することができる。例えば、BLEタグや地磁気を利用して屋内での位置測位を行なう構成であってもよい。地磁気により位置測位を行う場合には、磁気センサを内蔵した端末を持って屋内を移動することで、磁化した鉄骨等による環境磁場の特徴量から屋内位置を推定する。なお、磁気による屋内位置測位では、周辺環境の磁気の特徴量から位置推定することから、階層の違いを認識するのが困難となるので、各所に設置したWi−FiのSSID情報と組み合わせることで、階層やエリアを特定したうえで磁気の特徴を検出してもよい。通報を行う装置や、識別情報を発信する装置の位置情報の取得についても同様である。
また、コントロールセンタ50や警備員端末装置40は、事象が発生している階層(警備対象領域)に事象発生を示す記号を付して地図表示を可能としてもよい。また、複数階層を有する場合に、階層一覧における該当層にも事象発生を示す記号を付すことができる。
また、コントロールセンタ50は、警備計画の登録を受け付けて管理し、警備計画に基づいて警備員の特定や、警備員に対する情報提供を行うことができる。
また、警備員端末装置40から通話によりコントロールセンタ50に連絡されたインシデントについて、通話発信者の情報や位置情報を利用してインシデントの履歴に登録することも可能である。
また、コントロールセンタ50に警察、消防等の関係機関への連絡先を登録し、コントロールセンタ50や警備員端末装置40から関係機関の連絡先を参照し、連絡することができるようにしてもよい。このとき、警備員端末装置40の位置情報を利用して最寄りの関係機関の連絡先を選択可能としてもよい。
また、通報者の位置情報を事象の位置情報として登録可能とし、さらに通報者の位置と事象の位置が異なる場合には修正可能としてもよい。
また、警備員が通報を行う場合に、煩雑な操作が難しいことが考えられるため、イヤホン34などに緊急通報用のボタンを設けてもよい。また、音声によるキーワードで通報可能としてもよい。
また、警備員端末装置40にタイマー機能を持たせ、警備員の行動の進捗を管理するとともに、行動の進捗が滞っていることを検知した場合に、警備員の安否確認や応援の警備員の派遣を行ってもよい。
また、発生したインシデントの内容に応じて、予め複数名の警備員を特定してインシデントに対処させてもよい。例えば、初期消火、人払い、連絡係、関係機関の誘導などでは、複数の警備員が必要となるので、通報種別、通報エリア、時間、進捗更新等の条件により適切な人数の警備員に対処通知を送信する。
また、対処通知を受信した警備員が対処不可である場合、例えば警備員が対処不可である旨の通知をコントロールセンタ50に送信した場合や、対処通知を送信したにも関わらず一定時間応答が無い場合には、コントロールセンタ50が他の警備員を特定して対処通知を送信するよう構成してもよい。また、対処不可の警備員については、一定時間(例えば5分程度)対処通知を送信しないよう制御してもよい。
また、監視員等が通報者と連絡をとり、送信した対処通知への対処が不要と判定した場合には、対処通知を送信した警備員に対してキャンセル通知を送信するよう構成してもよい。また、対処通知を受けて対処を開始した警備員が応援が必要と判断した場合には、コントロールセンタ50に応援要請を行い、応援の警備員に対処通知を追加で送信するよう構成してもよい。
また、警備員端末装置40は、対処通知を受けた場合に、事案の位置を示す地図を自動で表示し、警備員の操作を削減するよう構成してもよい。
また、警備員端末装置40から、対処の結果をコントロールセンタ50に通知し、コントロールセンタ50で管理してもよい。コントロールセンタ50では、発生中のインシデントや対処が終了したインシデントを管理し、エリアやキーワードによる絞込み、一覧出力を可能とする。
また、コントロールセンタ50は、インシデント毎の事案の詳細、全体の事案対処概要を記憶し、帳票としてファイル出力可能とすることが望ましい。
また、警備員端末装置40とコントロールセンタ50とがメッセージのやり取りを行う場合には、かかるメッセージのやり取りに位置情報を連携させることで、警備員端末装置40の位置を管理することができる。また、メッセージのやり取りの履歴はコントロールセンタ50が保持しておくことが望ましい。
また、警備員端末装置40は、警備の実施要領を記憶し、警備員が随時参照できるようにしてもよい。
また、警備員端末装置40や、ボランティアスタッフなどが用いる端末は、「AED」や「消火器」、「非常口」等を強調した施設地図を閲覧可能に構成してもよい。また、ボランティアスタッフなどが用いる端末から、虚偽の通報が繰り返し行われた場合には、当該端末の動作を規制してもよい。
また、複数のボランティアスタッフにIDを配布する場合には、リーダーなどから各スタッフに対してQRコード(登録商標)等を利用してID、パスワード等の配布を行ってもよい。スタッフは日々入れ替わることが想定され、警備員であっても勤務日以外の場合があるため、このように適正に警備に当たっていない人物がコントロールセンタ50にアクセス可能となることは好ましくない。そこで、スタッフリーダー、警備員リーダーに、当日のみ有効なIDとパスワードを発行し、配布させる。このとき、スタッフ、ボランティアに個別にID等を配布することは煩雑であるので、スタッフリーダーから各スタッフに対してQRコード等を利用しID、パスワード等の配布を行う。また、位置情報やSSIDから現地にいることを確認できた場合にのみコントロールセンタ50への通報を可能としてもよい。
また、例えばイベントの主催者など警備先の関係者や警備先のシステムからインシデントに関する情報を受信し、対処を行うことも可能である。また、警備システムが検知したインシデントについて重要性を判定し、警備先の関係者や警備先のシステムに通知することも可能である。
また、既設の監視カメラなどからデータを受信し、インシデントの検知やデータ閲覧に使用できるよう構成してもよい。また、通報者の端末からBLEやWi−Fiの電波を発信し、監視カメラに備えられた指向性電波キャプチャで受信することで、通報者位置をカメラの中央部に映すようカメラの向きを変更できるよう構成してもよい。
また、重要エリアに立入する警備員について、生体認証等を確認することで正規の警備員であるか確認するよう構成してもよい。
また、警備員端末装置40に接続されたカメラ31は、常時撮像してもよいし、通信量および電力消費を抑制するため、警備員が現地に到着してから撮像を開始するよう構成してもよい。さらに、ウェアラブルカメラの解像度、フレームレートを制御して、監視の上で重要な映像を効率的に取得するよう構成してもよい。
また、本実施例に示した各構成や動作はあくまで一例であり、本発明は構成及び動作を適宜変形して実施可能である。