JP6782429B2 - 誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータおよびその制御方法 - Google Patents
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Description
既に実用化されている従来のIH用電源機器として、フルブリッジ(FB)のダイオード整流回路と力率改善回路(PFCコンバータ;Power Factor Correction Converter)から、高周波インバータを介してIH負荷へ高周波交流(HFAC)を供給する3段式の回路が知られている(図19を参照)。
また、上記の3段式の回路をベースに、PFC回路とハーフブリッジ高周波インバータを一体化させて2段式としたブーストハーフブリッジ(BHB)のAC−ACコンバータが知られている(図20を参照)。
また、FBダイオード整流回路を用いず、商用周波交流(UFAC)から高周波交流(HFAC)へダイレクトに電力変換できる1段式AC−ACコンバータが知られている(図21を参照)。
一方、図21に示す1段式AC−ACコンバータ場合、非平滑DCリンクを介して、商用周波交流(UFAC)から高周波交流(HFAC)へダイレクトに電力変換することから、フルブリッジ整流回路を除去できると同時に、力率改善(PFC)も実現できるという利点がある。また、非平滑DCリンク方式であるため大容量コンデンサを要せず(ケミコンレス化)、小容量フィルムキャパシタを適用できるため、装置の保守メンテナンス性の向上が期待できる。しかしながら、回路構造上、電源電圧に対する昇圧機能を持ち得ず、その結果、より高出力を要するIH負荷への応用が困難であるといった問題がある。
しかしながら、電源電圧に対する昇圧機能を持ち得ず、その結果、より強い火力を要するIH調理器など比較的電流容量の大きいIH負荷への応用が困難であるといった問題がある。
提案したAC−ACコンバータによれば、入力となる単相商用周波交流電源から高周波出力まで1段の回路にて直接電力変換可能で、フルブリッジ整流回路と力率改善昇圧コンバータが不要で、大容量コンデンサが不要なため、高効率かつ装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。また、パワー半導体スイッチのゼロ電圧ソフトスイッチングが実現可能であり、これにより高出力から低出力まで低スイッチング損失と低電磁ノイズを実現できる。
そのため、より高出力用途に適し、かつ、非対称PWM制御を行うための電源電圧の極性検出センサを不要とするAC−ACコンバータが求められる。
1)ハイサイドの第1スイッチとローサイドの第2スイッチが直列接続され、第1および第2スイッチに各々並列に逆並列ダイオードが接続された第1インバータレッグ
2)ハイサイドの第3スイッチとローサイドの第4スイッチが直列接続され、第3および第4スイッチに各々並列に逆並列ダイオードが接続された第2インバータレッグ
3)インバータレッグに並列に設けられた非平滑DCリンクキャパシタ
4)第1インバータレッグの中点に接続されたワークコイル
5)第2インバータレッグの中点に接続された共振キャパシタ
6)入力用商用周波交流電源
7)入力用商用周波交流電源の一端に直列接続された昇圧用リアクトル
8)インバータレッグと入力用商用周波交流電源の間に接続されるブリッジレス整流用の第1および第2ダイオード
本発明者らは、フルブリッジ整流回路とPFC昇圧コンバータと高周波インバータの3機能を1つに集約したブーストフルブリッジ(BFB)回路を発案した。発案した回路によれば、部品点数の削減と同時に電源電圧の非検出(センサレス)を実現し、かつ、高周波電力制御と電源品質改善動作を同時に実現できる。これにより、電力変換プロセスの損失低減、すなわち電力変換効率の向上に加え、制御回路の簡易化と電源電圧検出用センサのセンサレス化により、コンバータの信頼性向上が図られる。なお、発案した回路では、非平滑DCリンクキャパシタを採用しており、その低周波脈動によるIH負荷(被加熱物体)での機械振動(ローレンツ力の影響)の発生はあるが、非加熱物体を固定する金属熱処理装置では、特に実用上問題とはならない。
単相交流電源に昇圧用リアクトル、或は、三相交流電源の各相に昇圧用リアクトルと4石の逆導通型自励式スイッチからなるBFB回路を形成し、小容量キャパシタによる非平滑DCリンクキャパシタを内包した回路構造によって、入力用商用周波交流電源の極性に関わらず、BFB回路内の上下2石からなるブリッジレッグの駆動タイミングパルスを左右間で位相差を設けてスイッチング動作を行い、その高周波出力電流の実効値を位相シフトコントローラ(PS controller)での指令値に応じて連続的に調整できる。
BFB回路を構成要素にすることから、位相シフトPWM制御が適用できる。また、非対称PWM方式で要する商用周波交流電源の電圧極性を検出する電源センサが不要となることから、入力用商用周波交流電源の信頼性が格段に向上する。このことは、実用的観点から、シングルステージでの電力変換と並んで重要な特徴である。
同容量又は略同容量の2つのキャパシタが、第1インバータレッグと第2インバータレッグの各々に並列に設けられ、それぞれのキャパシタが各々のインバータレッグの近傍に配置される場合では、1つの非平滑DCリンクキャパシタがインバータレッグに並列に設けられる場合と比べて、配線およびパワー半導体スイッチ内部の寄生(浮遊)インダクタンスに起因するスイッチターンオフ時の寄生振動を抑制し、より高効率な電力変換が期待できる。
ZVS用ロスレススナバキャパシタが接続されることにより、パワー半導体で構成される第1〜第4スイッチのゼロ電圧ソフトスイッチングが実現でき、これにより高出力から低出力まで低スイッチング損失と低電磁ノイズを実現できる。
ZVS用ロスレススナバキャパシタが接続されることにより、パワー半導体で構成される第1スイッチと第3スイッチのゼロ電圧ソフトスイッチング、或は、第2スイッチと第4スイッチのゼロ電圧ソフトスイッチングが実現でき、これにより高出力から低出力まで低スイッチング損失と低電磁ノイズを実現できる。なお、第1〜第4スイッチ全てに並列にZVS用ロスレススナバキャパシタが接続される場合と比べて、ハイサイドとローサイドのスイッチ間で転流電流に若干の差異が出るが、実用上さしたる影響ではない。
本発明の制御方法は、本発明の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの制御方法であって、入力用商用周波交流電源の電圧極性を検出することなく、第1スイッチに対する第4スイッチの導通開始区間、或は、第2スイッチに対する第3スイッチの導通開始区間を、IH出力の指令値に応じて遅らせる位相シフトパルス幅変調制御(PS−PWM制御)を行うステップを備える。
具体的には、PS−PWM制御は、BFB回路の出力段となるIH負荷電圧およびIH負荷電流を検出し、それらより得られる瞬時電力を平均化して得られる電力とその指令値との誤差を増幅した後、比例積分器(PI制御器)を介して、位相シフトコントローラ(PS controller)への入力信号とする。位相シフトコントローラは、第1スイッチ/第2スイッチ,第4スイッチ/第3スイッチ間の適切な位相シフト角に入力信号を変換して、第1スイッチ〜第4スイッチのスイッチング動作のパルス信号を出力することにより、第1スイッチに対する第4スイッチの導通開始区間、又は、第2スイッチに対する第3スイッチの導通開始区間を、IH出力の指令値に応じて遅らせる。
また、本発明の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータによれば、昇圧機能を有するブーストフルブリッジ(BFB)インバータ構造によって、位相シフトPWM制御が適用でき、非対称PWM制御方式で必要とする入力用商用周波交流電源の電圧極性検出センサが不要となり、交流電源の信頼性を向上できる。
さらに、パワー半導体から成るスイッチのゼロ電圧ソフトスイッチングが実現可能で、高出力から低出力まで低スイッチング損失と低電磁ノイズを実現できる。
図1に、実施例1の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの単相回路構成図と制御ブロック図を示す。図1に示す回路は、以下1)〜8)の回路要素で構成される。
1)ハイサイドの第1スイッチ(S1)とローサイドの第2スイッチ(S2)が直列接続され、第1および第2スイッチに各々並列に逆並列ダイオード(D1,D2)が接続された第1インバータレッグ
2)ハイサイドの第3スイッチ(S3)とローサイドの第4スイッチ(S4)が直列接続され、第3および第4スイッチに各々並列に逆並列ダイオード(D3,D4)が接続された第2インバータレッグ
3)インバータレッグに並列に設けられた非平滑DCリンクキャパシタ(Cd)
4)第1インバータレッグの中点に接続されたワークコイル
5)第2インバータレッグの中点に接続された共振キャパシタ(C0)
6)入力用商用周波交流電源(vs)
7)入力用商用周波交流電源(vs)の一端に直列接続された昇圧用リアクトル(Lb)
8)インバータレッグと入力用商用周波交流電源(vs)の間に接続されるブリッジレス整流用の第1および第2ダイオード(D5,D6)
図1に示す回路では、入力用商用周波交流電源(vs)をもとに、LCフィルタ(Lf,Cf)と、昇圧用リアクトル(Lb)と、ブリッジレス整流用ダイオード(D5,D6)と、基準相スイッチ(Q1,Q2)と、制御相スイッチ(Q4,Q4)と、非平滑DCリンクキャパシタ(Cd)とから成るブーストフルブリッジ(BFB)構造で、昇圧形PFCコンバータが形成されている。共振キャパシタ(C0)は、IH負荷に対して負荷力率改善機能と直列共振機能を兼ねている。被加熱物体には、インピーダンスマッチングトランスを介して、電流や電圧が供給される。
なお、図1に示す回路には、入力用商用周波交流電源(vs)側にLCフィルタ(LfとCf)を設けているが、これは、入力用商用周波交流電源への高周波スイッチング成分を除去できることから、電源側における電磁ノイズの影響を軽減するためのものである。従って、LCフィルタを設けなくとも、誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの機能を発揮することができる。
図1に示す回路におけるPS−PWM制御は、図1(2)に示すように、BFB回路の出力段となるIH負荷電圧VoおよびIH負荷電流Ioを検出し、それらより得られる瞬時電力Poを平均化(Average)して得られる電力Po *とその指令値Porefであるとの誤差を増幅した後、比例積分器(PI制御器)を介して、位相シフトコントローラ(PS controller)への入力信号とする。位相シフトコントローラは、各アクティブスイッチ(Q1〜Q4)間、すなわち、Q1/Q2,Q4/Q3間の適切な位相シフト角φs *に入力信号を変換して、アクティブスイッチ(Q1〜Q4)のゲート駆動バルスを供給(Gate Drivers)することにより、アクティブスイッチQ1に対するQ4の導通開始区間、又は、アクティブスイッチQ2に対するQ3の導通開始区間を、IH出力の指令値に応じて遅らせる。
入力用商用周波交流電源(vs)は、昇圧用リアクトル(Lb)を介して、非平滑DCリンクキャパシタ(Cd)の端子電圧(vd)へ昇圧される。そのため、非平滑DCリンクキャパシタ(Cd)の端子電圧(vd)は、図3に示すように、商用周波の半波整流に振幅変調をかけた包絡線を示す。
また同時に、非平滑DCリンクキャパシタ(Cd)および共振キャパシタ(C0)は、IH負荷の等価直列インダクタ(L0)と直列共振を得て、位相シフトPWM制御により、Cd−Q1−R0−L0−C0−Q4およびCd−Q3−C0−L0−R0−Q2の閉回路における高周波インバータ動作を行う。
ここで、回路の動作周波数(スイッチング周波数)fsを、BFB回路の直列共振周波数frより高いIH負荷領域に設定して、各アクティブスイッチ(Q1〜Q4 )がZVSターンオフおよびゼロ電圧/ゼロ電流ソフトスイッチング(ZVZCS) ターンオンを実現する。回路の動作周波数fsは、一般的には、5〜200kHz近傍で使用されているが、アクティブスイッチの高速化によりさらに、周波数が高くなる場合がある。
次に、図1に示す回路構成の回路動作について、図4〜7を参照して説明する。
図4に、商用周波の電源電圧vsが正の半サイクル(vs>0)における実施例1の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの理論動作波形を示す。
電源電圧が正の半サイクルvs>0において、実施例1の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの動作は、以下に述べる11の動作モードから成る。
実施例1の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータは、図4に示すように、時間の経過に従い、アクティブスイッチをそれぞれのゲートトリガ信号によってオン/オフ制御することによって、t0〜t11の区間において高周波電力変換を行う。
以下、t0〜t11の各区間(tn〜tn+1;n=0〜5)における実施例1の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの11の動作モードについて説明する。なお、図5は11の動作モードのモード遷移図を示している。
アクティブスイッチ(Q1,Q4)がオン状態であり、商用周波の電源電流IsはVs−Lb−D5−S1−Vsの経路で流れ、昇圧用インダクタLbに磁気エネルギーが蓄積される。一方、高周波インバータでは、S1−Ro−Lo−Co−S4−Cd−S1の経路で電流が流れ、非平滑キャパシタCdから静電エネルギーが放出されて負荷へ電力供給される。
時刻t1において、スイッチS1のゲート信号を取り除くと、電源電流IsはVs−Lb−D5−Cs1の経路を流れ、ハイサイドのアクティブスイッチQ1に並列のロスレススナバキャパシタCs1の充電を開始する。ロスレススナバキャパシタCs1の端子電圧、すなわちアクティブスイッチQ1の端子間電圧VQ1は、ゼロから緩やかに上昇を始める。これと同時に、ローサイドのアクティブスイッチQ2に並列のロスレススナバキャパシタCs2は放電を開始し、アクティブスイッチQ2の端子電圧VQ2は、非平滑DCリンクキャパシタCdの端子電圧vdより緩やかに下降を開始する。すなわち、ロスレススナバキャパシタCs1, Cs2およびIH負荷等価実効インダクタンスLoによる部分共振動作となる。
時刻t2において、ハイサイドのアクティブスイッチQ1の端子間電圧VQ1がvdまで達すると、アクティブスイッチQ1のZVSターンオフ動作が完了する。これと同時に、ローサイドのアクティブスイッチQ2の端子電圧VQ2がゼロまで下降すると、IH負荷電流Ioが逆並列ダイオードD2へ転流し、S4−D2−Ro−Lo−Co−S4の経路で電流が流れる。この間にスイッチS2にゲート駆動パルスを供給して、ローサイドのアクティブスイッチQ2のゼロ電圧/ゼロ電流ソフトスイッチング(ZVZCS)ターンオンを実現する。一方、入力電流Isは、非平滑DCリンクキャパシタCdへ流れ込み、昇圧用インダクタLbの残存磁気エネルギーは、非平滑DCリンクキャパシタCdへの蓄積静電エネルギーとなる。
時刻t3において、スイッチS4へのゲート駆動信号を取り除くと、IH負荷電流Ioの一部は、ローサイドのアクティブスイッチQ4に並列のロスレススナバキャパシタCs4に電流が流れ込み、アクティブスイッチQ4の端子電圧VQ4はゼロから緩やかに上昇を始める。これと同時に、残りのIH負荷電流Ioは、ハイサイドのアクティブスイッチQ3のロスレススナバキャパシタCs3を放電し、アクティブスイッチQ3の端子電圧VQ3は非平滑DCリンクキャパシタCdの端子電圧vdより緩やかに下降を始める。
時刻t4において、ローサイドのアクティブスイッチQ4の端子電圧VQ4がvdまで達すると、アクティブスイッチQ4のZVSターンオフ動作が完了する。これと同時に、ハイサイドのアクティブスイッチQ3の端子電圧VQ3がゼロまで下降すると、IH負荷電流Ioは逆並列ダイオードD3へ転流し、D3−Cd−D2−Ro−Lo−Co−D3の経路で電流が流れる。この間にハイサイドのアクティブスイッチQ3のゲート駆動パルスを供給し、アクティブスイッチQ3のゼロ電圧/ゼロ電流ソフトスイッチング(ZVZCS)ターンオンを実現する。
時刻t5において、逆並列ダイオードD3からスイッチS3へ転流し、IH負荷電流Ioの極性が切り替わるとともに、入力電流Isの一部からIH負荷へ電力を供給する状態となる。
さらに、時刻t6において、逆並列ダイオードD2からスイッチS2への転流が完了すると、入力電流Isとともに非平滑DCリンクキャパシタCdも放電状態となりIH負荷電流Ioとなる。
時刻t7において、スイッチS2のゲート駆動信号を取り除くと、IH負荷電流IoはローサイドのアクティブスイッチQ2に並列のロスレススナバキャパシタCs2の充電を開始する。ロスレススナバキャパシタCs2の端子電圧、すなわちアクティブスイッチQ2の端子間電圧VQ2は、ゼロから緩やかに上昇を始める。これと同時に、ハイサイドのアクティブスイッチQ1に並列のロスレススナバキャパシタCs1は放電を開始し、アクティブスイッチQ1の端子電圧VQ1は、非平滑DCリンクキャパシタCdの端子電圧vdより緩やかに下降を開始する。すなわち、ロスレススナバキャパシタCs1, Cs2およびIH負荷等価実効インダクタンスLoによる部分共振動作となる。
時刻t8において、ローサイドのアクティブスイッチQ2の端子間電圧VQ2がvdまで達すると、アクティブスイッチQ2のZVSターンオフ動作が完了する。これと同時に、ハイサイドのアクティブスイッチQ1の端子電圧VQ1がゼロまで下降すると、IH負荷電流Ioが逆並列ダイオードD1へ転流し、S3−Co−Lo−Ro−D1−S3の経路で電流が流れる。この間にスイッチS1にゲート駆動パルスを供給して、ハイサイドのアクティブスイッチQ1のゼロ電圧/ゼロ電流ソフトスイッチング(ZVZCS)ターンオンを実現する。
時刻t9において、スイッチS3へのゲート駆動信号を取り除くと、IH負荷電流Ioの一部は、ハイサイドのアクティブスイッチQ3に並列のロスレススナバキャパシタCs3に電流が流れ込み、アクティブスイッチQ3の端子電圧VQ3はゼロから緩やかに上昇を始める。これと同時に、残りのIH負荷電流Ioは、ローサイドのアクティブスイッチQ4のロスレススナバキャパシタCs4を放電し、アクティブスイッチQ4の端子電圧VQ4は非平滑DCリンクキャパシタCdの端子電圧vdより緩やかに下降を始める。
時刻t10において、ハイサイドのアクティブスイッチQ3の端子間電圧VQ3がvdまで達すると、アクティブスイッチQ3のZVSターンオフ動作が完了する。これと同時に、ローサイドのアクティブスイッチQ4の端子電圧VQ4がゼロまで下降すると、IH負荷電流Ioが逆並列ダイオードD4へ転流し、入力電流Isの一部と重なりながら、D4−Co−Lo−Ro−Vs−Lb−D5−Cd−D4の経路で電流が流れる。この間にスイッチS4にゲート駆動パルスを供給して、ローサイドのアクティブスイッチQ4のゼロ電圧/ゼロ電流ソフトスイッチング(ZVZCS)ターンオンを実現する。
実施例1の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ(以下、「BFB AC−ACコンバータ」という)では、ブーストフルブリッジ(BFB)構成で、非平滑DCリンクキャパシタにより、昇圧PFC動作を達成する。非平滑DCリンクキャパシタの特性について、本発明者が既に提案した前述のブーストハーフブリッジ(BHB)構成の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータ(以下、「BHB AC−ACコンバータ」という)と比較しながら説明する。ここでは、スイッチング周期(HFACサイクル)におけるそれぞれの電圧と電流パラメータに着目する。なお、アクティブスイッチの耐圧は、両回路ともに非平滑DCリンクキャパシタの端子電圧vdと等しい。BFB AC−ACコンバータの非平滑DCリンクキャパシタ電圧の平均値をvd,BFBとすると、電源電圧vsが一定にVsであると仮定すると下記数式が成立する。
非平滑DCリンクキャパシタ電圧vdの値が等しいと仮定した場合に、IH負荷電圧ならびにIH負荷電流は、それぞれの下記数式の関係を満たす。
また、最大出力を基準とした負荷電力における非平滑DCリンクキャパシタ電圧のピーク値と平均値をシミュレーション解析により比較した結果を図7(a)(b)にそれぞれ示す。ここで、非平滑DCリンクキャパシタ電圧のピーク値は、高周波の脈動成分を考慮した電源電圧vsのピーク点での最大値とし、平均電圧はUFACの2倍となるサイクルを1周期として平均値とした。これにより、BHB AC−ACコンバータでは、出力電力に対して電圧ストレスが低減されていることが確認できる。
図1に示した回路構成の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータについて、基本動作特性に関して、試作器を用いた実験により検証したので検証結果を以下に説明する。
試作器の回路パラメータを下記表1に示す。本試作器では、撚り数105の高周波リッツ線を用いた巻き数23の平面型IHワークコイルを適用した。
金属熱処理負荷として鉄を使用し、インピーダンスマッチングトランスを含めたIH負荷を構成した。また、試作器に適用するアクティブスイッチ(Q1〜Q4)には、600V耐圧のハーフブリッジ入りIGBTパワーモジュール(型番:CM100DUS-12F;600V,100A,Mitsubishi製) を2組使用し、ブリッジレス整流用ダイオード(D5,D6)には600V耐圧のダイオード(型番:DSEI 2x31-06C;600V,60A,IXYS製) を使用した。
また、電源電圧vsおよび電源電流isとIH負荷電圧voおよびIH負荷電流ioの実測波形から、シングルステージUFAC−HFAC変換が実証された。位相シフト角φs=20(deg)におけるHFAC周期での各アクティブスイッチ(Q1〜Q4)の電圧、電流および負荷電流波形を図9に示す。図9の実測波形から、誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータは、ターンオフ/ターンオンともにZVS動作が達成できていることがわかった。
なお、本試作実験において、φs=0〜90(deg)の範囲で全てのスイッチのZVS動作の達成を確認している。
ここでは負荷の都合上、電源電圧を120Vに設定している。図10に示す結果から、φs=0〜90(deg)の間に、出力電力は3.0kWから1.3kWまで連続的な高周波電力制御を実現していることがわかった。
図11に電力変換効率特性に示す。電力変換効率特性評価において、誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの主回路での効率評価とするため、ゲートドライバおよびパルス発生回路の消費電力は除外することにした。図11の電力変換効率特性の結果から、出力電力Po=2.8kW時に、最高効率96%を達成しており、極めて高効率に電力変換が可能であることが実証された。また、位相シフトPWM制御により、出力電力が、1.3〜3.0kW位まで大幅に変動しても、効率が90%以上を超えており、高効率を維持して、電力変換が可能であると実証された。
以上の実証結果から、図1に示した回路構成の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータでは、高調波電流を抑制しながら、シングルステージUFAC−HFAC変換が可能であり、高効率な電力変換が行えることが実証された。
本実施例の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータの回路構成では、実施例1の回路構成(図1)と異なり、アクティブスイッチ(Q1〜Q4)には、ロスレススナバキャパシタ(CS1〜CS4)が並列接続されていない。
そのため、アクティブスイッチ(Q1〜Q4)が、ロスレススナバキャパシタ(CS1〜CS4)を用いたゼロ電圧ソフトスイッチング(ZVS)動作を行うことができない。しかしながら、本実施例2の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータの回路構成でも、入力となる入力用商用周波交流電源から高周波出力まで1段の回路にて直接電力変換可能で、フルブリッジ整流回路と昇圧用コンバータが不要である。また、昇圧機能を有するブーストフルブリッジ(BFB)インバータ構造によって、位相シフトPWM制御が適用でき、非対称PWM制御方式で必要とする入力用商用周波交流電源の電圧極性検出センサが不要となり、交流電源の信頼性を向上できる。さらに、フルブリッジ整流回路と昇圧用コンバータが不要であるため、高効率化が図れ、また装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
本実施例の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータの回路構成では、実施例1の回路構成(図1)と異なり、ローサイドのアクティブスイッチ(Q2,Q4)には、ロスレススナバキャパシタ(CS2,CS4)が並列接続されておらず、ハイサイドのアクティブスイッチ(Q1,Q3)だけに、ロスレススナバキャパシタ(CS1,CS3)が並列接続されている。
この場合、実施例1の回路構成(図1)のロスレススナバキャパシタ(CS1,CS3)の容量よりも大きくすることによって、アクティブスイッチ(Q1〜Q4)が、ロスレススナバキャパシタ(CS1〜CS4)を用いたゼロ電圧ソフトスイッチング(ZVS)動作を行うことができる。
なお、本実施例では、ローサイドのアクティブスイッチ(Q2,Q4)にロスレススナバキャパシタ(CS2,CS4)が並列接続されておらず、ハイサイドのアクティブスイッチ(Q1,Q3)だけにロスレススナバキャパシタ(CS1,CS3)が並列接続されている回路構成であるが、反対に、ハイサイドのアクティブスイッチ(Q1,Q3)には、ロスレススナバキャパシタ(CS1,CS3)が並列接続されておらず、ローサイドのアクティブスイッチ(Q2,Q4)だけにロスレススナバキャパシタ(CS2,CS4)が並列接続されている回路構成でも構わない。
本実施例の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータの回路構成では、実施例1の回路構成(図1)と異なり、入力用商用周波交流電源vsはインバータレッグのローサイドに接続され、入力用商用周波交流電源vsの一端に直列接続された昇圧用リアクトルLbの端はアクティブスイッチQ1とQ2の中点に接続され、入力用商用周波交流電源vsの他端から分岐して、一方はブリッジレス整流用ダイオードD5を介してアクティブスイッチQ1と接続され、他方はブリッジレス整流用ダイオードD6を介してアクティブスイッチQ2と接続された回路構成である。
本実施例の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータの回路構成は、三相4線式を用いた配電方式に用いられるものであり、実施例1の回路構成(図1)が各相に接続され、電源中性点と各相1線が共通結線とされ、各相のワークコイルがIH負荷に高周波の電流を供給するものである。入力用商用周波交流電源は、U,V,W相の電圧の位相が、それぞれ120度ずつ異なっている。
図16は、三相回路の商用周波交流サイクルのシミュレーション波形を示している。また、図17は、三相回路の高周波サイクルのシミュレーション波形を示している。
本実施例の誘導加熱用商用周波−高周波コンバータの回路構成では、実施例1の回路構成(図1)と異なり、非平滑DCリンクキャパシタCdは、同容量の2つのキャパシタ(Cd1,Cd2)が、第1インバータレッグと第2インバータレッグの各々に並列に設けられたた回路構成である。
実施例1の回路構成のように、1つの非平滑DCリンクキャパシタがインバータレッグに並列に設けられる場合と比べて、第1インバータレッグと第2インバータレッグの各々に並列に、同容量の2つのキャパシタ(Cd1,Cd2)が設け、それぞれのキャパシタが各々のインバータレッグの近傍に配置されることで、配線およびパワー半導体スイッチ内部の寄生(浮遊)インダクタンスに起因するスイッチターンオフ時の寄生振動を抑制し、より高効率な電力変換が可能である。本実施例では、同容量の2つのキャパシタを設ける例を示したが、回路配線等により浮遊容量から、2つのキャパシタは、多少値が異なる場合もあり、略同容量の2つのキャパシタであってもよい。
Vo 出力電圧
is 電源電流
io 出力電流
Q1,Q2 アクティブスイッチ
S1〜S4 トランジスタスイッチ
D1〜D4 逆並列ダイオード
D5,D6 逆流阻止/整流ダイオード
Cd ,Cd1 ,Cd2 非平滑DCリンクキャパシタ
Lb 昇圧用リアクトル
R0 IH負荷等価実効抵抗
L0 IH負荷等価実効インダクタンス
C0 直列共振キャパシタ
Cr 並列キャパシタ
CS1〜CS4 ZVS用ロスレススナバキャパシタ
Claims (11)
- ハイサイドの第1スイッチとローサイドの第2スイッチが直列接続され、第1および第2スイッチに各々並列に逆並列ダイオードが接続された第1インバータレッグと、
ハイサイドの第3スイッチとローサイドの第4スイッチが直列接続され、第3および第4スイッチに各々並列に逆並列ダイオードが接続された第2インバータレッグと、
インバータレッグに並列に設けられた非平滑DCリンクキャパシタと、
第1インバータレッグの中点に接続されたワークコイルと、
第2インバータレッグの中点に接続された共振キャパシタと、
入力用商用周波交流電源と、
入力用商用周波交流電源の一端に直列接続された昇圧用リアクトルと、
インバータレッグと入力用交流電源の間に接続されるブリッジレス整流用の第1および第2ダイオードと、
前記昇圧用リアクトルを介して、前記入力用商用周波交流電源の電源電圧に対して、前記非平滑DCリンクキャパシタの電圧を昇圧し、前記入力用商用周波交流電源の電圧極性を検出することなく、第1スイッチに対する第4スイッチの導通開始区間、或は、第2スイッチに対する第3スイッチの導通開始区間を、前記ワークコイルの出力の指令値に応じて遅らせる第1〜第4スイッチの位相シフトパルス幅変調制御手段と、
を備え、
前記ワークコイルと前記共振キャパシタが直列接続され、
第1インバータレッグと第2インバータレッグとがフルブリッジ構成を成し、
位相シフトPWM制御により商用周波交流から高周波交流へシングルステージにて電力変換し得ることを特徴とする誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。 - 上記の非平滑DCリンクキャパシタは、同容量又は略同容量の2つのキャパシタが、第1インバータレッグと第2インバータレッグの各々に並列に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。
- 前記インバータレッグにおいて、第1〜第4スイッチにそれぞれ並列に、ゼロ電圧ソフトスイッチング(ZVS)用ロスレススナバキャパシタが接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。
- 前記インバータレッグにおいて、第1スイッチと第3スイッチにそれぞれ並列に、或は、第2スイッチと第4スイッチにそれぞれ並列に、ゼロ電圧ソフトスイッチング(ZVS)用ロスレススナバキャパシタが接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。
- 前記入力用商用周波交流電源は、前記インバータレッグのハイサイドに接続され、
前記入力用商用周波交流電源の一端に直列接続された前記昇圧用リアクトルの端から分岐して、一方はブリッジレス整流用の第1ダイオードを介して第1インバータレッグの第1スイッチ側と接続され、他方はブリッジレス整流用の第2ダイオードを介して第1インバータレッグの第2スイッチ側と接続され、
前記入力用商用周波交流電源の他端は第1インバータレッグの中点に接続されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。 - 前記入力用商用周波交流電源は、前記インバータレッグのローサイドに接続され、
前記入力用商用周波交流電源の一端に直列接続された前記昇圧用リアクトルの端は第1インバータレッグの中点に接続され、
前記入力用商用周波交流電源の他端から分岐して、一方はブリッジレス整流用の第1ダイオードを介して第1インバータレッグの第1スイッチ側と接続され、他方はブリッジレス整流用の第2ダイオードを介して第1インバータレッグの第2スイッチ側と接続されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。 - 前記入力用商用周波交流電源と前記昇圧用リアクトルの間に、高周波ノイズを選択的に除去するLCフィルタが備えられたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。
- 三相4線式を用いた配電方式の場合、
各相に請求項1〜7の何れかの誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータが接続され、電源中性点と各相1線が共通結線とされ、各相の前記ワークコイルがIH負荷に高周波の電流を供給することを特徴とする三相4線式誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータ。 - 請求項1〜8の何れかの誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータを備える熱処理加工装置。
- 請求項1〜7の何れかの誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの制御方法であって、
前記入力用商用周波交流電源の電圧極性を検出することなく、第1スイッチに対する第4スイッチの導通開始区間、或は、第2スイッチに対する第3スイッチの導通開始区間を、IH出力の指令値に応じて遅らせる位相シフトパルス幅変調制御(PS−PWM制御)を行うステップ、
を備えたことを特徴とする誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの制御方法。 - 請求項8の三相4線式誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの制御方法であって、
前記入力用商用周波交流電源の電圧極性を検出することなく、各相の第1スイッチに対する第4スイッチの導通開始区間、或は、各相の第2スイッチに対する第3スイッチの導通開始区間を、IH出力の指令値に応じて遅らせる位相シフトパルス幅変調制御(PS−PWM制御)を行うステップ、
を備えたことを特徴とする三相4線式誘導加熱用シングルステージ商用周波−高周波コンバータの制御方法。
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