JP6781645B2 - レーザ加工方法、レーザ加工装置、及び材料の製造方法 - Google Patents

レーザ加工方法、レーザ加工装置、及び材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザ加工方法、レーザ加工装置、及び材料の製造方法に関するものである。
硬質炭素膜(例えば、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンやアモルファスカーボン)は、その優れた低摩擦性と耐摩耗性において、機械部品や金型のしゅう動面の保護膜として広く用いられている。このような硬質炭素膜表面に微細な穴や溝あるいはそれらの複合物を形成することで、いわゆる油だまりとして潤滑物質の枯渇を防いだり、潤滑物質の流れを制御し動圧を発生させたり、せん断抵抗を低減することができたりする。あるいは、摩耗により発生する微粒子を捕集し焼きつきを防止する等の機能を付与することができる。このように、硬質炭素膜表面は、前記のような微細加工を施すことで高機能化され、機器のエネルギ消費を抑制し、また部品寿命を延ばすこと等が可能となる。
硬質炭素膜は、その硬さから、表面への機械加工による微細形状の付与が難しく、レーザ加工は、硬質炭素膜表面の微細加工を施すことができる手段の一つである。図8に示すように、例えば、基材1上に硬質炭素膜2が形成されており、 硬質炭素膜2を加工するのに十分なエネルギ密度のレーザ光L2が、図8(a)に示すように、硬質炭素膜2を透過して、基材1表面に照射されることがある。すなわち、透過率が高いレーザ光L2を用いれば、図8(a)に示すように、基材1(又は基材1と硬質炭素膜2との間の中間層)にレーザ光L2が吸収され、それらに損傷を与え、図8(b)に示すように、硬質炭素膜2と基材1との結合が破壊され、剥離が発生する。なお、図8(b)において、3は硬質炭素膜2の剥離片を示している。
硬質炭素膜の膜厚が薄いほど、透過光量が増加するため、膜の接合界面での発熱量が増加して剥離が発生しやすくなる。すなわち、図9に示すように、同じ種の硬質炭素膜であれば、膜厚が厚くても薄くても膜質に差はないため、膜の加工閾値(図9の実線A)は膜厚によらず一定である。しかしながら、膜厚が薄くなるにつれて、レーザ光を吸収する物質が減少するため、硬質炭素膜を透過するレーザ光のエネルギは増加する。つまり、硬質炭素膜の膜厚が薄くなるに従い、剥離閾値(図9の実線B)は低下する。そのため、剥離を生じることなくある波長のレーザで加工できる膜厚の薄さには限界がある。また、薄い硬質炭素膜の加工においては、剥離の発生が原因となり、ある波長のレーザを用いた加工ができない場合には、硬質炭素膜に対する透過率が低い波長のレーザの使用が必要となる。一般的に、硬質炭素膜は短い波長の光ほど透過率が低いため、剥離を抑制する手段として、剥離を発生させるレーザよりも短い波長を射出するレーザを使用する方法がとられたり、透過率を低減させる改質部を形成させる方法がとられる(特許文献1)。
特開2016−97419号公報
透過率を低減させるため、短い波長のレーザを発生させるには、基本波(波長=λ)で発振したレーザ光を第2高調波(波長=λ/2)や第3高調波(波長=λ/3)といった、より短い波長の光である高調波に波長変換する必要があり、Nd:YAGレーザやYb:YAGレーザ、ファイバーレーザなど固体レーザの高調波などがある。高調波を発生するためには、レーザ媒質固有の発振波長のレーザ光(基本波:波長=λ)を非線形光学素子により波長変換する必要がある。例えば、Yb:YAGレーザの第2高調波(波長:およそ515nm)、第3高調波(波長:およそ343nm)を発生する場合、その基本波からの変換効率は、それぞれ60%程度、40%程度となり、より短い波長を使用するほど、エネルギ効率が悪化するという問題や、波長変換のための部品点数が増え、装置としてより高価となる問題があった。また、透過率を低減させる改質部の形成だけでは剥離を防止できない場合があった。
本発明は、上記課題に鑑みて、加工閾値が低下した改質部を形成し、加工時における膜の接合界面での発熱量を低減し、硬質炭素膜の剥離を防止することができるレーザ加工方法、レーザ加工装置、及び材料の製造方法を提供する。
本発明のレーザ加工方法は、基材上に形成された硬質炭素膜にレーザ照射して硬質炭素膜を加工するレーザ加工方法であって、硬質炭素膜の加工閾値以下の照射エネルギ密度で、硬質炭素膜とレーザの集光領域とが相対的に走査照射される改質用レーザの照射により、改質用レーザ照射前の硬質炭素膜よりもレーザに対する加工閾値が低下した改質部を形成し、当該硬質炭素膜の改質部に対して、硬質炭素膜とレーザの集光領域とが相対的に走査照射される加工用レーザの照射により、当該改質部に凹凸構造を形成するものであり、硬質炭素膜上の、隣接するレーザの集光領域のピッチが、集光領域の幅の1/2以下であるものである。
本発明のレーザ加工方法によれば、レーザを硬質炭素膜に対して加工閾値以下の照射エネルギ密度を含む状態で照射することにより改質処理を施す。すなわち、硬質炭素膜に改質用レーザを照射して硬質炭素膜中の電子を揺さぶり、硬質炭素膜中の原子の結合を変化させることにより、改質処理を施していない状態と比較してレーザ照射に対する加工閾値が低下した改質部を形成する。この改質部に、加工用レーザを照射して凹凸構造を形成する。この場合、改質部の形成により、改質部での加工閾値は低下しているため、改質処理なしの硬質炭素膜を加工するのに必要な照射エネルギ密度のレーザよりも低い照射エネルギ密度のレーザを使用することができる。その結果、膜の接合界面での発熱量が低減され、従来のレーザ加工法よりも剥離を生じることなく薄い硬質炭素膜を加工できる。
前記改質部は、レーザ照射前の硬質炭素膜よりも剥離閾値が増加したものであってもよい。
前記構成において、前記凹凸構造は、加工用レーザの波長以下の凹凸高さと、波長の5倍以下の周期を持つ周期構造としてもよい。
本発明の材料の製造方法は、前記のいずれかのレーザ加工方法により凹凸構造が形成された硬質炭素膜を有する材料の製造方法であって、前記材料は、自動車部品、ロボット部品、切削工具、医療機器、金型のいずれかの用途に用いられるものである。
本発明のレーザ加工装置は、前記レーザ加工方法の制御を行う制御機構を備えたものである。
本発明のレーザ加工方法、レーザ加工装置及び材料の製造方法は、硬質炭素膜の加工閾値を低減し、剥離を生じることなく薄い硬質炭素膜を加工することが可能となるため、硬質炭素膜の加工に、ある波長のレーザを適用することができる範囲が拡張され、より短い波長を発生するレーザ光源を使用せずにすみ、短波長レーザ発生のための付随部品が不要とできる。これにより、加工装置製造に関わるコストを低減することができる。
本発明のレーザ加工方法を示し、(a)は改質を示し、(b)は加工を示す簡略図である。 本発明のレーザ加工装置の簡略図である。 改質前後の加工閾値及び剥離閾値を、膜厚と照射エネルギ密度との関係において示すグラフ図である。 本発明のレーザ加工方法において、加工中のレーザ強度を示す簡略図である。 改質用レーザと加工用レーザとのオーバーラップを示す説明図である。 改質用レーザと加工用レーザとのオーバーラップを示す他の説明図である。 照射エネルギ密度を示すグラフ図と、その照射位置において、改質処理なしの加工後のDLC膜の写真図(上)と、改質処理した加工後のDLC膜の写真図(下)である。 改質部を形成することなく、硬質炭素膜を加工する方法を示し、(a)は硬質炭素膜にレーザ光を照射している状態の簡略図であり、(b)は硬質炭素膜に剥離が生じている状態の簡略図である。 加工閾値及び剥離閾値を、膜厚と照射エネルギ密度との関係において示すグラフ図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。
図1は本発明に係るレーザ加工方法を示し、このレーザ加工方法は、基材23と、この基材23上に形成された硬質炭素膜24とからなるワーク(加工対象物)Wに加工用レーザLを照射して硬質炭素膜24に凹凸構造26を形成するものである。ここで、基材23としては、鉄系、アルミ系、又はチタン系などの合金、シリコン、チタン、ポリマー、セラミクス等の種々の材料にて構成される。基材23の形状としては、板状、棒状、筒状、球状、環状、網状、またはそれらの複合形状であってもよい。基材23の表面は、平滑面、粗面、またはそれらの複合面であってもよい。加工対象面は、平面、凹面、凸面でもよい。
また、硬質炭素膜24は、炭素を主な構成要素としていればよく、その他の元素を含んでいてもよい。硬質炭素膜24は、例えば、ダイヤモンド、ダイヤンドライクカーボン(DLC)、アモルファスカーボン、水素フリーアモルファスカーボン又はテトラヘドラアモルファスカーボン等である。また、それらの膜に特定の元素が注入されるように作製したもの、あるいは特定の元素を含まないように作製したものであってもよい。特定の元素とは、水素、窒素、フッ素、チタン、シリコン、ゲルマニウム、ボロンなどがある。なお、基材23と硬質炭素膜24との間に接着層としての中間層が介在されたものであってもよい。
凹凸構造26としては、多数の穴部を有するマイクロディンプル構造や、微細な凹部と凸部とからなるグレーティング状の表面微細周期構造等、穴や溝や畝にて構成される。
レーザ加工には、図2に示すレーザ加工装置を用いる。このレーザ加工装置は、後述するように改質用レーザ及び加工用レーザの、夫々の照射パルス数、照射エネルギ、偏光など、照射レーザ及び照射条件の各種パラメータを設定できる制御機構18を備えた、レーザ発生器11と光学系とを備えたものである。また、被加工物とレーザの照射領域との相対位置を制御できる機構(図示省略)を備えている。このレーザ加工装置では、レーザ光は、ミラー12により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ13に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ13を開放し、レーザ照射強度は、レーザ発生器および1/2波長板14と偏光ビームスプリッタ16によって調整可能とし、1/2波長板15によって偏光方向を調整し、集光レンズ17によって、XYθステージ19上の加工対象物表面(硬質炭素膜表面)に集光照射することになる。
本発明に係るレーザ加工方法は、改質部25を形成し、改質部25に凹凸構造26を形成する。改質部25とは、加工用レーザの照射領域の硬質炭素膜の表面乃至内部を、改質用レーザ照射前の硬質炭素膜24(未改質時)よりもレーザに対する加工閾値が低下した層である。すなわち、硬質炭素膜24の加工閾値以下の照射エネルギ密度の改質用レーザを、硬質炭素膜24に対して照射すると、未改質の硬質炭素膜24は改質され、図3の点線Cに示すように、加工閾値が低下する。なお、図3において、実線Aは未改質の硬質炭素膜24の加工閾値を示し、点線Cは硬質炭素膜24の改質部25の加工閾値を示す。すなわち、硬質炭素膜24にレーザを照射して硬質炭素膜中の電子を揺さぶり、硬質炭素膜中の原子の結合を変化させることにより、改質処理を施していない状態と比較して、レーザ照射に対する加工閾値が低下した状態に改質する。
改質用レーザの照射エネルギ密度は、例えば、0.02J/cm2〜0.3J/cm2であるのが好ましい。これは、硬質炭素膜24の膜質や膜厚、レーザ照射条件等により種々変更することができ、本発明は、この照射エネルギ密度の範囲内に限られるものではない。
改質部25は、加工閾値が低下しているため、結果として、ある波長のレーザを用いた場合の、剥離を伴わずに加工可能な膜厚の範囲が薄膜側に拡張される(図3のF参照)。
改質部25は、さらに、図3の点線Dに示すように、レーザ照射前の硬質炭素膜よりも加工閾値低下とともに剥離閾値が増加したものであってもよい。なお、図3において、実線Bは未改質の硬質炭素膜の剥離閾値を示し、点線Dは透過率低減により増加した剥離閾値を示す。すなわち、未改質の硬質炭素膜24と比較して、接合界面への透過光量が減少した場合のものである。このとき、加工閾値低下のみの場合より、剥離を伴わずに加工可能な膜厚の範囲が薄膜側に拡張される(図3のG参照)。
前記レーザ加工装置では、制御機構18によって改質用レーザの照射パルス数、照射エネルギ、偏光など、照射レーザ及び照射条件の各種パラメータが設定されて、レーザ発振器11(例えば、波長1030nm、パルス幅10ps)から射出されたレーザ光のエネルギが硬質炭素膜24下にある基材23表面上で基材23の加工閾値未満になるように調整して集光レンズ17に導く。ここで、基材23の加工閾値未満とは、レーザ集光点を基材23に対して相対的に静止あるいは走査させた状態でレーザ照射した場合に、基材23の溶融あるいは蒸散などにより基材23を被覆している硬質炭素膜24が基材23から剥離しない照射条件とする。この基材23の加工閾値未満のレーザ光Lを硬質炭素膜24に照射する。これによって、硬質炭素膜中の電子を揺さぶり、硬質炭素膜中の原子の結合を変化させることにより、硬質炭素膜24は未照射の状態から改質される。すなわち、改質処理を施していない状態と比較してレーザ照射に対する加工閾値が低下した改質部25が形成される。
改質部25に、改質部25が溶融あるいは蒸散するようなエネルギ密度のレーザ光(加工用パルスレーザ光L)を、前記レーザ照射装置を介して照射する。つまり、少なくとも改質部25が除去されて穴や溝等の凹凸構造26が形成される。加工用レーザの照射エネルギ密度は、例えば、0.05J/cm2〜1.0J/cm2であるのが好ましく、さらに、0.1J/cm2〜0.8J/cm2であるのが好ましい。これは、硬質炭素膜24の膜質や膜厚、レーザ照射条件等により種々変更することができ、本発明は、この照射エネルギ密度の範囲内に限られるものではない。
この場合、改質部25の形成により、改質部25での加工閾値は低下しているため、改質処理なしの硬質炭素膜24を加工するのに必要な照射エネルギ密度のレーザよりも低い照射エネルギ密度のレーザを使用することができる。その結果、硬質炭素膜24を透過するレーザ光量を減少させるため、硬質炭素膜24の下の基材23に対して加工用レーザによる損傷を回避することができ、硬質炭素膜24の基材23からの剥離を抑制した状態で硬質炭素膜24の加工ができる。
上述の方法によるレーザ照射により硬質炭素膜24を加工した場合において、基材表面に照射レーザ波長程度の微細周期構造が自己組織的に形成される場合は、その形状は畝状に整列していてもよく、畝が蛇行していても、畝が途切れてドット状になっていてもよく、周期的に凹凸が複数存在していればよい。また、その微細周期構造の凹凸高さは、照射レーザ波長以下であり、周期間隔は、照射レーザ波長の5倍よりも小さければよい。
改質用レーザの照射及び加工用レーザの照射方法は、種々の方式が採用できる。通常、レーザ照射領域の空間的な照射エネルギ密度分布は、図4に示すように、ガウス分布様(レーザ照射領域の中心部分のエネルギ密度が高く、周辺部分のエネルギ密度が低い)である。このため、1つのレーザ照射領域の中に、改質用の照射エネルギ密度分布領域と加工用の照射エネルギ密度分布領域とを混在させることができる。従って、必ずしも改質処理と加工とを別工程に分けなくてもよく、さらには、改質用レーザと加工用レーザの光源あるいは装置を分けなくてもよい。
例えば、ガウス分布様のレーザ集光点を走査させ改質と加工を行う場合において、集光点の周辺部を改質用の照射エネルギ密度と設定し、中心部を改質部25に対する加工閾値以上の照射エネルギ密度と設定することができる。その結果、レーザ集光点を硬質炭素膜24に対して相対的に走査する時に、改質用照射エネルギ密度領域が先行して照射され改質部25が形成された後に、加工用照射エネルギ密度領域が当該改質部25に照射されるようにレーザ照射領域と硬質炭素膜24との位置関係を設定することができる。
また、1パルスあたりの照射領域の照射エネルギ密度分布は、例えば、液晶空間位相変調器や、回折素子、屈折素子、反射素子など種々の光学部品の組み合わせを用いることにより、任意の分布を設定することができるため、レーザ照射領域の照射エネルギ密度分布は多種多様なものを形成することができる。したがって、1パルスあたりの照射領域において、改質用エネルギ密度分布と加工用エネルギ密度分布の位置関係は制限されることなく、それぞれのエネルギ密度分布が1パルスあたりの照射領域の中に複数存在することもできる。また、改質部25は、未改質部よりも加工閾値が低下しているため、可能な場合には、改質用照射エネルギ密度分布と、加工用エネルギ密度分布とを、同じエネルギ密度分布で兼ねてもよい。
単位面積を改質または加工するのに必要なレーザパルス数に制限はなく、1パルスで改質することもできれば、複数パルスで改質してもよい。同様に、改質部25を1パルスで加工することもできれば、複数パルスで加工してもよい。ただし、単位面積あたりの照射パルス数は、少なくとも改質用の1パルスと、少なくとも加工用の1パルスとを合わせた、少なくとも2パルス以上になることが必要であるから、硬質炭素膜24表面上で隣合うパルス―パルスの照射領域の中心間距離は、図5に示すように、当該照射レーザの1パルスあたりの隣接方向における照射領域幅未満であることが望ましい。なお、図5において、改質用レーザと加工用レーザがオーバーラップする領域を斜線で示している。
さらには、硬質炭素膜24表面上で隣合うパルス―パルスの照射領域の中心間距離が当該照射レーザの1パルスあたりの隣接方向における照射領域幅の1/2以下の距離にあれば、図6に示すように、本発明の効果を硬質炭素膜24上の任意の位置に切れ目無く連続的に展開することができる。なお、図6において、改質用レーザと加工用レーザがオーバーラップする領域を斜線で示す。また、1パルスのみで対象領域を改質する場合や、1パルスのみで改質部25を加工する場合は、改質部25の形成のみ、あるいは、加工領域の形成のみにおいては、レーザの照射領域がオーバーラップしなくてもよい。
前記のように、本発明では、硬質炭素膜の加工閾値を低減し、剥離を生じることなく薄い硬質炭素膜を加工することが可能となるため、硬質炭素膜の加工に、ある波長のレーザを適用することができる範囲が拡張され、より短い波長を発生するレーザ光源を使用せずにすみ、短波長レーザ発生のための付随部品が不要とできる。これにより、加工装置製造に関わるコストを低減することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、改質部25を形成した後に加工が施されるという順序を維持している限りは、隣合うパルス―パルス間の照射領域は、時間的に連続して照射してもよいし、しなくてもよい。すなわち、改質用に射出されたレーザパルスが改質部25を形成し、時間的に当該改質用パルスの直後に照射されるレーザパルスによって当該改質部25を加工しなければならない理由は必ずしもない。つまり、所望の改質部25を形成するレーザ照射を実施した後に、その改質部25中の所望の領域の加工を実施するレーザ照射を実施してもよい。
また、レーザの照射方法は、硬質炭素膜24の改質または加工が生じる照射エネルギ密度のレーザ照射領域が硬質炭素膜24上にあればよい。その場合、レーザ照射領域、基材23のどちらを移動させて加工部位を決定してもよいし、その両方を移動させてもよい。また、その限りでは、レーザの偏光状態や、硬質炭素膜24に入射する入射角、加工場に存在する物質や圧力は問わない。
硬質炭素膜24は、その成膜方法や条件、用途によって種々の特性を設定できる。そのため、本発明におけるレーザの照射条件は、前述の方式に限定されることはなく、それらの膜に対して適宜変更可能である。
本発明は、摺動部品や、液体・粘性体ないしは粉体と接触する各種部品等に適用するのが好ましい。前記部品としては、例えば、自動車、宇宙・航空機、船舶、鉄道、昇降機など各種輸送機器を構成するものや、工作機械を構成するもの、発電機を構成するもの、ロボットを構成するもの、ステント、人工関節、カテーテル、人工臓器、人工補助臓器、体内埋め込み型装置を構成するもの、等がある。その他、工作機械の工具、金型、液体・粘性体ないしは粉体を吐出あるいは吸入する部品にも適用可能である。さらには、食品用、医療用部品、家庭用品、時計、通信機器、電子機器等に適用可能である。
フェムト秒レーザ(中心波長1030nm、パルス幅900fs)の照射により改質処理を施したDLC膜の表面と、改質処理なしのDLC膜の表面それぞれに、同フェムト秒レーザ(中心波長1030nm、パルス幅900fs)を改質部形成以上の照射エネルギで照射した。照射結果を図7に示す。図7(写真−上)は改質処理なしのDLC膜に改質部形成以上の照射エネルギ密度の加工用レーザを照射したものである。図7(写真―下)は改質処理したものに、図7(写真−上)と同じ、加工用のレーザを照射したものである。
両者を比較した場合、改質処理したDLC膜のほうが、改質処理なしのものよりも、加工用レーザによる加工痕の領域が広いことがわかる。当該照射レーザの横方向の照射エネルギ密度分布は、図7のグラフで示すように、ガウス分布様であるので、中心から端へ行くほどレーザの照射エネルギ密度は小さくなっている。改質処理なしのDLC膜で加工痕が形成された照射エネルギ密度Jよりも、改質処理したDLC膜で加工痕が形成されている照射エネルギ密度Kのほうが小さいことから、改質処理を施すことによってDLC膜の加工閾値が低減したといえる。
また、改質処理なしのDLC膜で剥離が発生した照射エネルギ密度Iにおいて、改質処理したDLC膜では剥離の発生が認められないことから、改質処理したDLC膜の剥離閾値は高くなり、例えば図示するように、本実施例における照射エネルギ密度分布の最高値よりも高い、照射エネルギ密度Hのような状態になっているといえる。
以上のことから、硬質炭素膜24に対してレーザを照射し、改質を施すことによって硬質炭素膜24の加工閾値を低減できることが明らかとなった。また、剥離閾値を増加できることも明らかとなった。さらには、本方式を用いれば、より短波長のレーザを用いずとも剥離を発生させない加工ができることが明らかとなった。よって、本方法は、硬質炭素膜24のレーザ照射による加工におけるエネルギ効率向上と装置コスト低減に有効な加工方法であることが示された。また、本方法で用いたレーザ加工装置のように、本方法を実現する制御機構18を備えたレーザ加工装置は、硬質炭素膜24の加工閾値を低減し、剥離閾値を増加させる。また、より短波長のレーザを用いずとも剥離を発生させない加工ができ、硬質炭素膜24のレーザ照射による加工におけるエネルギ効率向上と装置コストの低減を実現する。
23 基材
24 硬質炭素膜
25 改質部
26 凹凸構造
18 制御機構
L1 改質用レーザ
L 加工用レーザ

Claims (5)

  1. 基材上に形成された硬質炭素膜にレーザ照射して硬質炭素膜を加工するレーザ加工方法であって、
    硬質炭素膜の加工閾値以下の照射エネルギ密度で、硬質炭素膜とレーザの集光領域とが相対的に走査照射される改質用レーザの照射により、改質用レーザ照射前の硬質炭素膜よりもレーザに対する加工閾値が低下した改質部を形成し、当該硬質炭素膜の改質部に対して、硬質炭素膜とレーザの集光領域とが相対的に走査照射される加工用レーザの照射により、当該改質部に凹凸構造を形成するものであり、硬質炭素膜上の、隣接するレーザの集光領域のピッチが、集光領域の幅の1/2以下であることを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 前記改質部は、レーザ照射前の硬質炭素膜よりも剥離閾値が増加したものであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
  3. 前記凹凸構造は、加工用レーザの波長以下の凹凸高さと、波長の5倍以下の周期を持つ周期構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工方法。
  4. 前記請求項1〜請求項3のいずれかのレーザ加工方法により凹凸構造が形成された硬質炭素膜を有する材料の製造方法であって、前記材料は、自動車部品、ロボット部品、切削工具、医療機器、金型のいずれかの用途に用いられることを特徴とする材料の製造方法。
  5. 前記請求項1〜請求項3の制御を行う制御機構を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
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