JP6771373B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置は、トルクセンサで故障が発生した場合に、操舵角θおよびその微分値である操舵角速度ωに基づき、モータの電流目標値を次のように設定する。θ>0かつω≧0のときには、右方向へのハンドル操作を補助すべく、車速で定まる一定電流値I(V)を電流目標値として設定する。θ<0かつω≦0のときには、左方向へのハンドル操作を補助すべく、−I(V)を電流目標値として設定する。一方、θ>0かつω<0、または、θ<0かつω>0のときは、ハンドルが戻り状態にあるので、操舵補助を停止すべく電流目標値を零と設定する。
本発明は、トルク検出部に故障が生じた場合においてもステアリングホイールが切り戻されているときに切り戻し方向とは逆方向のアシスト力を抑制することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
{第1の実施形態}
図1は、第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、車両の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては車両の一例としての自動車1に適用した構成を例示している。なお、図1は、自動車1を前方から見た図である。
図2は、制御装置10の概略構成図である。
制御装置10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路である。
制御装置10には、上述したトルク検出装置109にて検出された操舵トルクTが出力信号に変換された第1トルク信号Td1及び第2トルク信号Td2、車速センサ170からの車速Vcに対応する車速信号v、レゾルバ120からの回転角度信号θmsなどが入力される。また、制御装置10には、上述した横Gセンサ180からの出力信号g、ヨーレイトを検出するためのヨーレイトセンサ185からの出力信号y、車輪速度センサ190からの出力信号vhsなどが入力される。
図3は、目標電流算出部20の概略構成図である。
目標電流算出部20は、目標電流Itを設定する上で基準となるベース電流Ibを算出するベース電流算出部21と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流Isを算出するイナーシャ補償電流算出部22と、モータの回転を制限するダンパー補償電流Idを算出するダンパー補償電流算出部23とを備えている。また、目標電流算出部20は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23にて算出された値に基づいて仮の目標電流である仮目標電流Itfを決定する仮目標電流決定部25を備えている。また、目標電流算出部20は、トルク検出装置109にて検出された操舵トルクTの位相を補償する位相補償部26を備えている。
なお、目標電流算出部20には、第1トルク信号Td1及び第2トルク信号Td2、車速Vcに応じた車速センサ170からの出力信号、モータ回転速度Vmに応じたモータ回転速度算出部72からのモータ回転速度信号Vms、横Gセンサ180からの出力信号g、ヨーレイトセンサ185からの出力信号y、車輪速度センサ190からの出力信号vhsなどが入力される。
イナーシャ補償電流算出部22は、位相補償部26から出力されたトルク信号Ts、車速センサ170からの出力信号vに基づいてイナーシャ補償電流Isを算出する。
ダンパー補償電流算出部23は、位相補償部26から出力されたトルク信号Ts、車速センサ170からの出力信号v、モータ回転速度算出部72からの出力信号などに基づいてダンパー補償電流Idを算出する。
位相補償部26は、センサ故障検出部27が故障と判定していない場合(故障した旨の信号を取得していない場合)には、第1トルク信号Td1の位相を補償する。
センサ故障検出部27及びセンサ故障時電流決定部28については後で詳述する。
そして、トルク検出装置109にて検出された操舵トルクTがプラスであるときに、電動モータ110を右回転方向に回転させるようにベース電流算出部21にてベース電流Ibが算出され、そのベース電流Ibが流れる方向をプラスとする。つまり、操舵トルクTがプラスのときにベース電流算出部21はプラスのベース電流Ibを算出し、電動モータ110を右回転方向に回転させる方向のトルクを発生させる。操舵トルクTがマイナスのときにベース電流算出部21はマイナスのベース電流Ibを算出し、電動モータ110を左回転方向に回転させる方向のトルクを発生させる。
また、ステアリングホイール101の回転角度である操舵角θsが0度である状態からステアリングホイール101が右方向に回転した場合に操舵角θsがプラスとなり、左方向に回転した場合に操舵角θsがマイナスとなる。
制御部30は、電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部と、電動モータ110に実際に流れる実電流Imを検出するモータ電流検出部とを有している。
モータ駆動制御部は、目標電流算出部20にて最終的に決定された目標電流Itと、モータ電流検出部にて検出された電動モータ110へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部とを有している。
PWM信号生成部は、フィードバック制御部からの出力値に基づいて電動モータ110をPWM(パルス幅変調)駆動するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を出力する。
モータ電流検出部は、モータ駆動部に接続されたシャント抵抗の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れる実電流Imの値を検出する。
モータ回転角度算出部71(図2参照)は、レゾルバ120からの回転角度信号θmsに基づいてモータ回転角度θmを算出する。
モータ回転速度算出部72(図2参照)は、モータ回転角度算出部71が算出したモータ回転角度θmに基づいて電動モータ110のモータ回転速度Vmを算出する。
図4は、トルク検出装置109の概略構成図である。図5(a)は、トルク検出装置109の主要部品の概略構成図である。図5(b)は、図5(a)におけるVIb方向から見た図である。
トルク検出装置109は、下部連結シャフト108に取り付けられる磁石210と、磁石210が形成する磁界内に配置され、磁石210とともに磁気回路を形成するヨーク300とを有している。また、トルク検出装置109は、磁石210を保持する磁石保持部材220と、ヨーク300を保持するヨーク保持部材330とを有している。
また、トルク検出装置109は、磁石210及びヨーク300にて形成される磁気回路中の磁束密度を検出する磁気センサ410を有し、この磁気センサ410からの出力値に基づいて下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対回転角度に応じた出力信号を出力するセンサユニット400を有している。
第1ヨーク310は、磁石210の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第1円環部311と、この第1円環部311から下部連結シャフト108の軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)に伸びるように形成された複数の第1突起部312とを有している。
第2ヨーク320は、磁石210の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第2円環部321と、この第2円環部321から軸方向に伸びるように形成された複数の第2突起部322とを有している。
第3磁気センサ413、第4磁気センサ414からの出力電圧は、それぞれ、互いに相反する電圧信号を出力する周知の電圧増幅回路である第3電圧増幅部(不図示)、第4電圧増幅部(不図示)を介して出力部に出力される。
このように、トルク検出装置109のセンサユニット400は、第1磁気センサ411、第2磁気センサ412、第1電圧増幅部、第2電圧増幅部を有する第1トルクセンサ421と、第3磁気センサ413、第4磁気センサ414、第3電圧増幅部、第4電圧増幅部を有する第2トルクセンサ422とを備えている。
また、センサユニット400は、第1トルクセンサ421からの出力信号を基に第1トルクセンサ421に故障が生じているか否かを診断する第1故障診断部431と、第1トルクセンサ421からの出力信号を第1トルク信号Td1に変換する第1変換部441とを備えている。
また、センサユニット400は、第2トルクセンサ422からの出力信号を基に第2トルクセンサ422に故障が生じているか否かを診断する第2故障診断部432と、第2トルクセンサ422からの出力信号を第2トルク信号Td2に変換する第2変換部442とを備えている。
第1トルクセンサ421と第2トルクセンサ422とは、同じ構成、機能を有している。また、第1故障診断部431と第2故障診断部432とは、同じ構成、機能を有している。
以下では、代表して第1トルクセンサ421及び第1故障診断部431について説明する。
図6の実線で示すように、第1電圧V1は、操舵トルクTの右方向への大きさが増加(トーションバー112の右方向への回転量が増加)するのに伴って上昇する。他方、図6の破線で示すように、第2電圧V2は、第1電圧V1と相反し、操舵トルクTの右方向への大きさが増加するのに伴って低下する。
さらに、操舵トルクTの変化に対する第1電圧V1の変化の割合と第2電圧V2の変化の割合(絶対値)は等しく、同じ操舵トルクTを示す第1電圧V1と第2電圧V2を合計した合計電圧が常に予め定められた所定電圧(2Vc)となる。
第1トルクセンサ421の回路などに固着故障が発生すると、第1電圧V1又は第2電圧V2が、出力上限値や出力下限値に固着する。また、第1トルクセンサ421に信号異常故障が発生すると、第1電圧V1、第2電圧V2が正常値とは異なる電圧で変化する。
第1トルクセンサ421が正常に作動している場合、第1電圧V1と第2電圧V2とを合計した合計電圧Vtは、常に所定電圧(VHi+VLo)になる(図7の実線参照)。
第1故障診断部431は、第1トルクセンサ421に故障が発生していると判定した場合には、制御装置10に対してその旨の信号を出力する。
同様に、第2故障診断部432は、第2トルクセンサ422に故障が発生していると判定した場合には、制御装置10に対してその旨の信号を出力する。
このように、センサユニット400は、第1トルクセンサ421、第2トルクセンサ422の故障を自ら検出することが可能な自己検出機能付きのセンサである。
第2変換部442は、第2電圧V2を操舵トルクTに応じた信号である第2トルク信号Td2に変換するとともに、変換した第2トルク信号Td2を、制御装置10に出力する。
センサ故障検出部27は、トルク検出装置109の第1故障診断部431から第1トルクセンサ421に故障が発生した旨の信号を取得した場合、及び第2故障診断部432から第2トルクセンサ422に故障が発生した旨の信号を取得した場合には、トルク検出装置109に故障が発生したと判定する。また、センサ故障検出部27は、第1変換部441から取得した第1トルク信号Td1の値と第2変換部442から取得した第2トルク信号Td2の値との差が所定値を超えている場合にはトルク検出装置109に故障が発生したと判定する。
そして、センサ故障検出部27は、トルク検出装置109に故障が発生したと判定した場合には、故障した旨を、位相補償部26、センサ故障時電流決定部28、最終目標電流決定部29に出力する。
図8は、センサ故障時電流決定部28の概略構成図である。
センサ故障時電流決定部28は、操舵角算出部73にて算出された操舵角θsである算出操舵角θscに基づいて後述する制御マップに代入するための操舵角である代入操舵角θseを算出する代入操舵角算出部281を備えている。
また、センサ故障時電流決定部28は、代入操舵角算出部281が算出した代入操舵角θseに基づいてセンサ故障時電流Ieのベースとなるセンサ故障時ベース電流Iebを算出するセンサ故障時ベース電流算出部282を備えている。
また、センサ故障時電流決定部28は、センサ故障時ベース電流算出部282が算出したセンサ故障時ベース電流Iebと操舵状態補正係数設定部284が設定した操舵状態補正係数Kcとを乗算することにより補正後ベース電流Iebcを算出する操舵状態補正係数乗算部285を備えている。
また、センサ故障時電流決定部28は、リミット処理部286にてリミット処理された後の補正後ベース電流Iebcであるリミット処理後ベース電流Ilに対して符号化処理を行う符号化処理部287を備えている。
代入操舵角算出部281は、0度から、操舵角算出部73にて定期的(例えば1ミリ秒毎)に算出された算出操舵角θscの前回値と今回値との差分を積算することにより0度からの回転角度を算出し、この算出値を代入操舵角θseとする。そして、予め定められたリセット条件が成立したら代入操舵角θseを0にリセットする。リセット条件としては、ステアリングホイール101の回転角度(操舵角θs)の差分が0度となったことを把握できる条件であればよく、例えば、目標電流算出部20にて設定された目標電流Itあるいはモータ電流検出部が検出した実電流Imが0近傍となったとき、を例示することができる。
このように、代入操舵角算出部281は、操舵角θsを推定する操舵角推定部の一例である。
図9は、センサ故障時ベース電流算出部282の概略構成図である。
センサ故障時ベース電流算出部282は、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの絶対値化を行う絶対値化部282aを備えている。また、センサ故障時ベース電流算出部282は、絶対値化部282aにて絶対値化された絶対値化後操舵角|θse|に基づいて仮のセンサ故障時ベース電流Iebである仮センサ故障時ベース電流Iebaを算出する仮ベース電流算出部282bを備えている。また、センサ故障時ベース電流算出部282は、車速センサ170からの出力信号v(車速Vc)に基づいて車速補正係数Kvを設定する車速補正係数設定部282cを備えている。また、センサ故障時ベース電流算出部282は、仮ベース電流算出部282bにて算出された仮センサ故障時ベース電流Iebaと車速補正係数設定部282cにて設定された車速補正係数Kvとを乗算することによりセンサ故障時ベース電流Iebを算出する車速補正係数乗算部282dを備えている。センサ故障時ベース電流算出部282は、定期的(例えば1ミリ秒毎)にセンサ故障時ベース電流Iebを算出する。
絶対値化後操舵角|θse|と仮センサ故障時ベース電流Iebaとの対応を示す制御マップにおいては、絶対値化後操舵角|θse|が予め定められた基準操舵角θse0以下である場合には仮センサ故障時ベース電流Iebaは0である。絶対値化後操舵角|θse|が基準操舵角θse0より大きい場合には、絶対値化後操舵角|θse|が大きくなるに従って仮センサ故障時ベース電流Iebaが0から徐々に大きくなるように設定されている。
車速補正係数Kvと車速Vcとの対応を示す制御マップにおいては、車速Vcが0(km/h)であるときの車速補正係数Kvを1、車速Vcが1(km/h)であるときの車速補正係数Kvを0.5としている。また、車速Vcが5(km/h)であるときの車速補正係数Kvを0.3とし、車速Vcが1から5(km/h)に変化する間に車速補正係数Kvを徐々に低下させている。また、車速Vcが40(km/h)であるときの車速補正係数Kvを0.4とし、車速Vcが5から40(km/h)に変化する間に車速補正係数Kvを徐々に上昇させている。そして、車速Vcが40(km/h)から大きくなるに従って車速補正係数Kvを徐々に低下させている。なお、上記速度域は、一例であり車両特性により適宜変更可能である。
操舵状態判定部283は、自動車1が交差点を曲がっている時などの旋回中であるか否かを判定するとともに、旋回中である場合には、ステアリングホイール101が切り込まれているのか、切り戻されているか、一定の力が付加されている保舵状態であるのかを判定する。操舵状態判定部283は、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θse、横Gセンサ180からの出力信号g、ヨーレイトセンサ185からの出力信号y、車輪速度センサ190からの出力信号vhsに基づいて判定する。
他方、操舵状態判定部283は、算出操舵角速度θsevの絶対値が第1基準角速度θv1よりも大きくなった場合には旋回中で切り込まれていると判定する。
操舵状態判定部283は、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの方向と、トルク検出装置109が検出した操舵トルクTの方向とが異なる場合に切り戻されていると判定する。
より具体的には、操舵状態判定部283は、第1故障診断部431から第1トルクセンサ421が故障している旨の情報を取得したことに起因してトルク検出装置109が故障していると判定した旨の情報をセンサ故障検出部27から取得した場合には、第2変換部442から出力された第2トルク信号Td2に基づいて操舵トルクTの方向を把握する。また、操舵状態判定部283は、第2故障診断部432から第2トルクセンサ422が故障している旨の情報を取得したことに起因してトルク検出装置109が故障していると判定した旨の情報をセンサ故障検出部27から取得した場合には、第1変換部441から出力された第1トルク信号Td1に基づいて操舵トルクTの方向を把握する。
そして、操舵状態判定部283は、把握した操舵トルクTの方向と、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの方向とが異なる場合に、ステアリングホイール101が切り戻されていると判定する。
また、第1故障診断部431から第1トルクセンサ421が故障している旨の情報を取得するとともに第2故障診断部432から第2トルクセンサ422が故障している旨の情報を取得した場合も同様に、操舵状態判定部283は、算出操舵角速度θsevが第2基準角速度θv2未満となった場合には切り戻されていると判定し、算出操舵角速度θsevが第2基準角速度θv2未満ではない場合には切り戻されていないと判定すると良い。
操舵状態判定部283は、ステアリングホイール101が切り戻されていると判定した場合でも、保舵状態であるか否かを判定する。例えば、直進状態から曲率が小さな(曲率半径が大きな)道路を右に旋回(右折)する場合に、先ず、ステアリングホイール101を右回転させて切り込んだ後左回転させて切り戻す前に、保舵し続ける(一定の力を付加し続ける)ことがあるからである。また、直進状態から曲率が小さな(曲率半径が大きな)道路を左に旋回(左折)する場合に、先ず、ステアリングホイール101を左回転させて切り込んだ後右回転させて切り戻す前に、保舵し続ける(一定の力を付加し続ける)ことがあるからである。
図10は、操舵状態判定部283が行う操舵状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
操舵状態判定部283は、この操舵状態判定処理を、例えば予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
S1001にて切り込みフラグがONとなっていると判定された場合(S1001でYes)、S1005以降の処理を行う。
図11は、操舵状態判定部283が行う切り戻し判定処理の手順を示すフローチャートである。
操舵状態判定部283は、この切り戻し判定処理を、例えばセンサ故障検出部27からトルク検出装置109が故障していると判定した旨の情報を取得した後に予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
図12は、操舵状態判定部283が行う保舵状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
操舵状態判定部283は、この保舵状態判定処理を、例えば予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
操舵状態判定部283は、先ず、予め定められた期間における検出横Gの変化量である横G変化量ΔGが予め定められた基準横G未満(ΔG<基準横G)であるか否かを判断する(S1201)。そして、横G変化量ΔGが基準横G未満である場合(S1201でYes)、操舵状態判定部283は、予め定められた期間における検出ヨーレイトの変化量であるヨーレイト変化量ΔYが予め定められた基準ヨーレイト未満(ΔY<基準ヨーレイト)であるか否かを判断する(S1202)。そして、ヨーレイト変化量ΔYが基準ヨーレイト未満である場合(S1202でYes)、操舵状態判定部283は、予め定められた期間における車輪速度差Vhlrの変化量である車輪速度差変化量ΔVhlrが予め定められた基準車輪速度差未満(ΔVhlr<基準車輪速度差)であるか否かを判断する(S1203)。そして、車輪速度差変化量ΔVhlrが基準車輪速度差未満である場合(S1203でYes)、操舵状態判定部283は、保舵状態であると判定する(S1204)。
操舵状態補正係数設定部284は、操舵状態判定部283が判定した操舵状態に基づいて操舵状態補正係数Kcを設定する。操舵状態補正係数Kcは0以上1以下の値である。
操舵状態補正係数乗算部285は、センサ故障時ベース電流算出部282が算出したセンサ故障時ベース電流Iebと操舵状態補正係数設定部284にて設定された操舵状態補正係数Kcとを乗算することにより補正後センサ故障時ベース電流Iebcを算出する(Iebc=Ieb×Kc)。
その後、操舵状態判定部283が、保舵状態が解除されて切り戻されていると判定した場合には、その時点の操舵状態補正係数Kcの値(以下、「操舵状態補正係数Kc1」と称す。)から所定時間T0で0まで徐々に減少する値を操舵状態補正係数Kcとして設定する(Kc←Kc1×(1−t/T0))。
リミット処理部286は、操舵状態補正係数乗算部285にて算出された補正後センサ故障時ベース電流Iebcが予め定められた上限値よりも大きい場合には、上限値をリミット処理後ベース電流Ilとして出力する。他方、リミット処理部286は、算出された補正後センサ故障時ベース電流Iebcが上限値以下の場合には、算出された補正後センサ故障時ベース電流Iebcをリミット処理後ベース電流Ilとして出力する。
符号化処理部287は、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの符号がプラスである場合にはリミット処理部286から出力されたリミット処理後ベース電流Ilにプラスの符号を付す。他方、符号化処理部287は、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの符号がマイナスである場合にはリミット処理部286から出力されたリミット処理後ベース電流Ilにマイナスの符号を付す。
以上説明したように構成されたステアリング装置100によれば、トルク検出装置109が故障したと判断された場合、センサ故障時電流決定部28のセンサ故障時ベース電流算出部282は、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θse、言い換えれば操舵角θsに応じたセンサ故障時ベース電流Iebを算出する。つまり、トルク検出装置109が故障したと判断された場合、センサ故障時電流決定部28は、操舵角θsに応じたセンサ故障時電流Ieを算出し、最終目標電流決定部29は、最終的な目標電流Itを、センサ故障時電流決定部28にて決定されたセンサ故障時電流Ieとする。これにより、トルク検出装置109が故障したと判断された場合、電動モータ110によるアシスト力は、操舵角θsに応じて変化する。電動モータ110によるアシスト力が操舵角θsに応じて変化するのは、操舵状態判定部283が、旋回中ではないと判定した場合、及び、旋回中であると判定した場合のいずれの場合も同様である。
また、操舵状態判定部283は、トルク検出装置109が故障したと判断された場合には、トルク検出装置109を用いて操舵トルクTの方向を把握し、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの方向と異なる場合に、ステアリングホイール101が切り戻されていると判定する。
つまり、以上説明したように構成されたステアリング装置100によれば、トルク検出装置109が故障したと判断された場合には、トルク検出装置109を用いて把握した操舵トルクTの方向と電動モータ110の回転方向(代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの方向)とが異なる場合に、電動モータ110のアシスト力が、トルク検出装置109を用いて把握した操舵トルクTの方向と電動モータ110の回転方向とが同じ場合(切り戻されていると判定されない場合)のアシスト力よりも低減される。
路面の摩擦抵抗(以下、「路面抵抗」と称す。)が小さい場合には、電動モータ110の駆動力が同じであったとしても、摩擦抵抗が大きい場合よりもステアリングホイール101が運転者の意図よりも切り込まれ過ぎるおそれがある。運転者の意図よりも切り込まれ過ぎた場合、運転者はステアリングホイール101を切り戻そうとする。切り戻すときには、運転者は、切り込み方向に作用している電動モータ110の駆動力に打ち勝つ操舵トルクを付与しなければ切り戻すことができない。つまり、運転者は、電動モータ110の駆動力に打ち勝つ操舵トルクを付与しなければ切り込まれ過ぎた状態を修正する方向にステアリングホイール101を回転させることができない。
それゆえ、ステアリングホイール101が切り戻されていることを精度高く把握することができない場合には、ステアリングホイール101が切り込まれているときのアシスト力を、運転者が切り込まれ過ぎた状態を修正する方向にステアリングホイール101を回転させることができるように、想定される路面抵抗の中でも最小の路面抵抗で設定する必要がある。より具体的には、例えば補正後ベース電流Iebcやリミット処理後ベース電流Ilの値を、想定される路面抵抗の中の最小の路面抵抗でも、ステアリングホイール101が切り込まれているときのアシスト力が、想定される運転者による逆方向への最小の操舵トルクよりも小さくなるように設定する必要がある。そのため、ステアリングホイール101が切り戻されていることを精度高く把握することができない場合には、ステアリングホイール101が切り込まれているときのアシスト力(補正後ベース電流Iebcやリミット処理後ベース電流Il)を大きくすることができない。
これに対して、本実施の形態に係るステアリング装置100においては、ステアリングホイール101が切り戻されていることを精度高く把握することができ、アシスト力を早期に低減させることができるので、ステアリングホイール101が切り込まれているときのアシスト力を、その後の切り戻し時に運転者が操舵可能な操舵トルク以上に発生させることが可能となる。
また、トルク検出装置109は、磁石210及びヨーク300にて形成される磁気回路中の磁気特性の変化に基づいてトルクを検出する装置であるが、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいてトルクを検出する装置であっても良い。
図13は、第2の実施形態に係るトルク検出装置109の概略構成図である。
第2の実施形態に係るステアリング装置100は、第1の実施形態に係るステアリング装置100に対して、トルク検出装置109と、センサ故障検出部27による故障検出方法、操舵状態判定部283によるステアリングホイール101が切り戻されていると判定する手法が異なる。以下、第1の実施形態に係るステアリング装置100と異なる点を中心に説明する。
第3トルクセンサ423は、第5磁気センサ415と、第5磁気センサ415から出力された電圧信号を増幅する第5電圧増幅部(不図示)とを備えている。第4トルクセンサ424は、第6磁気センサ416と、第6磁気センサ416から出力された電圧信号を増幅する第6電圧増幅部(不図示)とを備えている。トルク方向検出センサ425は、第7磁気センサ417と、第7磁気センサ417から出力された電圧信号を増幅する第7電圧増幅部(不図示)とを備えている。第5磁気センサ415、第6磁気センサ416、第7磁気センサ417は、ホール素子、磁気抵抗素子であることを例示することができる。
なお、以上のように構成された第3トルクセンサ423、第4トルクセンサ424は、第1の実施形態に係る第1トルクセンサ421、第2トルクセンサ422とは異なり自ら故障が生じたことを検出する機能である自己検出機能を有していない。
そして、センサ故障検出部27は、トルク検出装置109に故障が発生したと判定した場合には、故障した旨をセンサ故障時電流決定部28、最終目標電流決定部29に出力する。
より具体的には、操舵状態判定部283は、センサ故障検出部27から、第3変換部443から取得した第3トルク信号Td3の値と第4変換部444から取得した第4トルク信号Td4の値との差が所定値を超えていることに起因してトルク検出装置109が故障している旨の情報を得た場合には、以下のように操舵トルクTの方向を把握する。つまり、第3変換部443から出力された第3トルク信号Td3に基づく操舵トルクTの方向、第4変換部444から出力された第4トルク信号Td4に基づく操舵トルクTの方向及びトルク方向検出センサ425から出力されたトルク方向信号Trに基づく操舵トルクTの方向の3つの方向の内、2つの方向が同じである場合にその方向を操舵トルクTの方向として把握する。
そして、操舵状態判定部283は、把握した操舵トルクTの方向と、代入操舵角算出部281にて算出された代入操舵角θseの方向とが異なる場合に、ステアリングホイール101が切り戻されていると判定する。
操舵状態判定部283は、センサ故障検出部27から、第3変換部443から取得した第3トルク信号Td3の値と第4変換部444から取得した第4トルク信号Td4の値との差が所定値を超えていることに起因してトルク検出装置109が故障している旨の情報を得た場合には、トルク方向検出センサ425から出力されたトルク方向信号Trのみに基づいて操舵トルクTの方向を把握しても良い。
操舵状態判定部283は、センサ故障検出部27から、第3変換部443から取得した第3トルク信号Td3の値と第4変換部444から取得した第4トルク信号Td4の値との差が所定値を超えていることに起因してトルク検出装置109が故障している旨の情報を得た場合であって、第3変換部443から出力された第3トルク信号Td3に基づく操舵トルクTの方向と第4変換部444から出力された第4トルク信号Td4に基づく操舵トルクTの方向とが同じである場合にその方向を操舵トルクTの方向として把握する。このように、第2の実施形態に係る操舵状態判定部283は、第3トルクセンサ423からの出力値に基づく操舵トルクTの値と第4トルクセンサ424からの出力値に基づく操舵トルクTの値が異なるとしても両センサからの出力値に基づく操舵トルクTの方向が同じである場合には、その方向を操舵トルクTの方向として把握する。トルク検出装置109は、第3トルクセンサ423及び第4トルクセンサ424のいずれか一方が故障したことにより、操舵トルクTの値及び方向を検出するトルク検出センサとしては機能しないとしても操舵トルクTの方向を検出するトルク方向検出センサとしては機能するからである。
なお、第2の実施形態の変形例2に係るトルク検出装置109のセンサユニット400は、トルク方向検出センサ425及び第5変換部445を備えていなくても良い。
第3の実施形態に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール101の回転角度である操舵角を検出する上述した操舵角センサ(不図示)を備え、操舵状態判定部283が、操舵角センサが検出した検出操舵角に基づいてステアリングホイール101が切り戻されていると判定する点が第1の実施形態に係るステアリング装置100とは異なる。
操舵角センサ(不図示)は以下の構造であることを例示することができる。つまり、ステアリングシャフト102自体に取り付けられてステアリングシャフト102と同期回転する第1回転部材(不図示)と、この第1回転部材の回転に連動して回転する第2回転部材(不図示)と、この第2回転部材に固定された着磁部の磁界変化を検出する磁気抵抗素子(不図示)とを有する。そして、操舵角センサは、ステアリングホイール101の回転角度に対応する正弦波及び余弦波の信号を出力する。
第4の実施形態に係るステアリング装置100は、第1の実施形態〜第3の実施形態に係るステアリング装置100に対して、トルク検出装置109に故障が生じた場合であってステアリングホイール101が切り戻されている場合に、電動モータ110によるアシスト力を低減する手法が異なる。
つまり、第4の実施形態に係るステアリング装置100においては、操舵状態補正係数設定部284は、ステアリングホイール101が切り戻されていると操舵状態判定部283が判定した場合には、操舵状態補正係数Kcの値を0とする。これにより、トルク検出装置109に故障が生じた場合であってステアリングホイール101が切り戻されていることを把握した場合には、切り戻し方向とは逆方向のアシスト力を早期に低減することができる。
第5の実施形態に係るステアリング装置100は、第3の実施形態に係るステアリング装置100に対して、トルク検出装置109に故障が生じた場合であってステアリングホイール101が切り戻されている場合に、電動モータ110によるアシスト力を低減する手法が異なる。
つまり、第5の実施形態に係るステアリング装置100においては、操舵状態補正係数設定部284は、ステアリングホイール101が切り戻されていると操舵状態判定部283が判定した場合には、代入操舵角算出部281が算出した操舵角θsと操舵角センサ(不図示)が検出した操舵角θsとのズレ量が大きいほど操舵状態補正係数Kcの値をより小さくする。例えば、代入操舵角算出部281が算出した操舵角θsと操舵角センサが検出した操舵角θsとのズレ量が大きいほど、上述した操舵状態補正係数Kc0から0まで減少させる所定時間T0をより短くする。これにより、切り戻されていると判定されたときからの経過時間が同じであるとしても、代入操舵角算出部281が算出した操舵角θsと操舵角センサが検出した操舵角θsとのズレ量が大きいほど、操舵状態補正係数Kcが小さな値となるため電動モータ110によるアシスト力がより小さくなる。これにより、トルク検出装置109に故障が生じた場合であっても、例えば運転者がステアリングホイール101の切り込まれ過ぎから早期に切り戻したい場合に、切り戻し方向とは逆方向のアシスト力が早期に低減するため、早期に切り戻すことができる。
Claims (1)
- 車両のステアリングホイールの操舵に対してアシスト力を付与するモータと、
前記ステアリングホイールの操舵トルクを検出する2つのセンサを有するトルク検出部と、
前記ステアリングホイールの回転角度である操舵角を推定する操舵角推定部と、
前記トルク検出部に故障が発生していない場合には前記トルク検出部が検出した前記操舵トルクに基づいて前記モータを駆動させ、前記2つのセンサが故障している場合、前記2つのセンサが検出した前記操舵トルクの方向が同じである場合にはその方向を前記操舵トルクの方向として把握する機能を有し、前記トルク検出部に故障が発生した場合に、前記操舵角推定部が推定した前記操舵角に基づいて前記モータを駆動させ、前記2つのセンサに故障が発生した場合において、前記操舵角推定部が推定した前記操舵角の方向と、把握した前記操舵トルクの方向とが異なる場合に前記アシスト力を低減するように前記モータを駆動させる制御装置と、
を備える電動パワーステアリング装置。
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