JP6752602B2 - 延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、延伸フィルムの製造方法に関する。
延伸フィルムを製造する際には、材料となるフィルムを準備し、準備したフィルムを延伸する方法が用いられ、フィルムを延伸する方法としては、フィルムの両端部をクリップで把持しながら加熱炉内に搬送し、加熱炉内にて、フィルムの両端部を把持しているクリップにより長さ方向または幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行う一軸延伸法や、長さ方向または幅方向のいずれか一方向に加熱延伸を行い次いで他方向に加熱延伸を行う逐次二軸延伸法、長さ方向および幅方向の二方向に同時に加熱延伸を行う同時二軸延伸法などが知られている。
このような一軸延伸法や二軸延伸法においては、通常、クリップによりフィルムの幅方向の両端部を把持した状態で、加熱炉内にて、フィルムを引っ張ることで、必要な延伸倍率まで加熱延伸させ、その後冷却させるものである。このような一軸延伸法や二軸延伸法においては、フィルムの幅方向の両端部はクリップにより把持されているため、フィルムの幅方向の両端近傍では、加熱延伸によって生じる延伸応力や、加熱延伸後の冷却時に発生する収縮応力の影響が小さいのに対し、フィルムの幅方向の中央部では、クリップによる拘束力が弱くなり、上記の延伸応力や収縮応力の影響が大きくなる傾向にある。そのため、一軸延伸法や二軸延伸法においては、加熱延伸および冷却を経たフィルムは、フィルムの幅方向中央部の変形が、幅方向両端部の変形に比べて、遅延する現象(ボーイング現象)が発生することが知られている。
上述したボーイング現象が発生した場合には、得られる延伸フィルムの分子配列が不均一になり、得られる延伸フィルムは、幅方向における物性にムラが生じ、光学的な異方性が生じたり、強度や耐久性が低下したりしてしまうことがある。
これに対し、フィルムの分子配列を均一化する方法として、たとえば、特許文献1では、熱可塑性フィルムを横延伸した後、横延伸時の温度より1〜50℃低い温度で熱固定することで、ボーイング現象を抑制する技術が開示されている。また、たとえば、特許文献2では、無配向の非晶性樹脂フィルムを、幅方向に一軸延伸する際において、拡幅開始から拡幅完了までの間に、拡幅速度を下げる低拡幅領域を設けることで、ボーイング現象を抑制する技術が開示されている。
特開2008−213324号公報 特開2005−345816号公報
しかしながら、上記特許文献1,2の技術では、フィルムの分子配列を均一化するための適切な処理条件を求めるためには、実際の商品の製造に使用される製造装置を用いて、製造条件を変えながら何度も延伸フィルムを試作する必要があり、適切な処理条件を得るのに手間を要するという問題や、一軸延伸法にしか適用できず、しかも延伸方法が制限されてしまうという問題があった。
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、フィルムを加熱延伸して延伸フィルムを製造する際において、フィルムの分子配列を均一化するための熱緩和処理を、簡便に、適切な条件で行うことができ、これにより、光学特性、強度および耐久性に優れた延伸フィルムを得ることができる延伸フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、加熱延伸および冷却を行ったフィルムに対し、所定の条件で加熱する熱緩和処理を行うことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、熱可塑性樹脂のフィルムを、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度T以上に加熱した状態で、一方向または二方向に延伸する延伸工程と、前記延伸後のフィルムを、前記ガラス転移温度T未満の温度で冷却する冷却工程と、前記冷却後のフィルムを、前記ガラス転移温度T以上の熱処理温度Tで加熱することで熱緩和する熱緩和工程と、を有する延伸フィルムの製造方法であって、前記熱緩和工程における熱緩和時間を、下記式(1)により算出される下限処理時間tmin (秒)以上とする延伸フィルムの製造方法が提供される。
Figure 0006752602
(上記式(1)中、A、B、Cおよびθは、いずれも、予め、前記熱可塑性樹脂のフィルムを用いて、前記延伸工程と、前記冷却工程と、前記熱緩和工程とを行うというプロセスを試行することにより求められる係数、φminは、得ようとする延伸フィルムの配向角(°)、Lは、得ようとする延伸フィルムの幅(mm))
本発明の製造方法において、前記冷却工程で冷却したフィルムを、一旦巻き取った後、巻き取った前記フィルムに対して、前記熱緩和工程を行うことが好ましい。
本発明の製造方法において、前記冷却工程で冷却したフィルムに対し、前記冷却工程から連続して前記熱緩和工程を行うことが好ましい。
本発明の製造方法では、前記熱緩和工程において、前記熱緩和時間を、前記下限処理時間tmin以上、かつ、下記式(2)で示す上限処理時間tmax (秒)以下とすることが好ましい。
Figure 0006752602
(上記式(2)中、φmaxは、得ようとする延伸フィルムの配向角の制御限界値(°))
本発明の製造方法において、前記熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートを含有する樹脂であることが好ましい。
また、本発明によれば、上述した製造方法により得られた延伸フィルムを用いた光学フィルムの製造方法が提供される。
本発明によれば、フィルムを加熱延伸して延伸フィルムを製造する際において、フィルムの分子配列を均一化するための熱緩和処理を、簡便に、適切な条件で行うことができ、これにより、光学特性、強度および耐久性に優れた延伸フィルムを得ることができる延伸フィルムの製造方法を提供することができる。
図1は、延伸フィルムを製造する方法の一例を説明するための図である。 図2は、熱緩和処理を行った際における、フィルムの配向角の変化を説明するためのグラフである。 図3は、熱緩和処理を行った際における、フィルムの配向角の変化を説明するための模式図である。 図4は、熱処理時間に応じた、フィルムの熱緩和の進行の一例を示すグラフである。 図5は、フィルムの幅と、フィルムの配向角との関係を説明するためのグラフである。 図6は、熱処理温度および熱処理時間に応じた、フィルムの熱緩和の進行の一例を示すグラフである。 図7は、熱緩和時間と、熱処理温度との関係を説明するためのグラフである。 図8は、フィルムの幅を変化させた場合における、フィルムの配向角の違いを説明するためのグラフである。 図9は、熱処理温度および熱処理時間の下限および上限を設定する方法の一例を説明するためのグラフである。 図10は、延伸フィルムを製造する方法の他の例を説明するための図(その1)である。 図11は、延伸フィルムを製造する方法の他の例を説明するための図(その2)である。
本実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂のフィルムを、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度T以上に加熱した状態で、一方向または二方向に延伸する延伸工程と、前記延伸後のフィルムを、前記ガラス転移温度T未満の温度で冷却する冷却工程と、前記冷却後のフィルムを、前記ガラス転移温度T以上の熱処理温度Tで加熱することで熱緩和する熱緩和工程と、を有する延伸フィルムの製造方法であって、前記熱緩和工程における熱緩和時間を、下記式(1)により算出される下限処理時間tmin以上とすることを特徴とする。
Figure 0006752602
(上記式(1)中、A、B、Cおよびθは、いずれも、前記熱可塑性樹脂の種類および前記延伸工程における延伸条件に応じて決まる係数、φminは、得ようとする延伸フィルムの配向角(°)、Lは、得ようとする延伸フィルムの幅(mm))
まず、本発明に係る実施形態について、図1に示す方法で延伸フィルムを製造する場面を例に、説明する。図1は、予熱帯、延伸帯、第1冷却帯、熱緩和帯および第2冷却帯を備える同時二軸延伸装置によって、熱可塑性樹脂のフィルムを、長さ方向および幅方向に同時に延伸する場面を示す図である。図1に示す例においては、同時二軸延伸装置により、熱可塑性樹脂のフィルムを、予熱帯にて予備加熱し、延伸帯にて加熱しながら長さ方向および幅方向に同時に延伸し、第1冷却帯にて冷却することで熱固定し、熱緩和帯にてフィルムの分子配向(配向角)を均一化するための加熱を行う熱緩和処理を施し、第2冷却帯にて冷却することで再度熱固定する。
本実施形態の製造方法によれば、上述した熱緩和帯における、フィルムに対する熱緩和処理の熱処理時間を、上記式(1)に基づいて算出される下限処理時間tmin以上とすることにより、簡便に、フィルムの分子配列を均一化することができ、光学特性、強度および耐久性に優れた延伸フィルムを得ることができる。
本実施形態においては、上記式(1)のA、B、Cおよびθは、いずれも係数であり、これらの係数を求める方法としては、たとえば、予め、延伸フィルムの材料となる熱可塑性樹脂のフィルムを用いて、加熱延伸および熱固定を行った後で熱緩和処理を行うというプロセスを試行し、試行により得られた結果を、上記式(1)にカーブフィッティングさせることで、上記係数(A、B、Cおよびθ)を求める方法を用いることができる。そして、本実施形態では、求めた係数(A、B、C、θ)を上記式(1)に代入し、上記式(1)に基づいて、所望の幅Lの延伸フィルムを製造する際における、熱緩和処理の最適な熱処理時間を、算出することができる。
本実施形態によれば、たとえば、試験機のような比較的小規模の延伸装置を用いた場合でも、幅が小さいフィルムに対して加熱延伸、熱固定および熱緩和処理を行うというプロセスを試行することで、上記式(1)の係数(A、B、C、θ)を求めることができ、次いで、求めた係数および上記式(1)に基づいて、実際の延伸フィルムの製造に使用されるような大規模の延伸装置を用いて、幅が大きい延伸フィルムを製造する際における熱緩和処理の下限処理時間tminを、算出することができる。すなわち、本実施形態によれば、大規模の延伸装置を用いて繰返し延伸フィルムを試作することなく、上記式(1)を用いた計算により、簡便に、熱緩和処理の下限処理時間tminを算出できるものである。
以下、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る延伸フィルムの製造方法の各工程を説明する。
<延伸工程>
延伸工程は、図1に示す予熱帯にてフィルム100を予熱し、予熱したフィルム100を、延伸帯にて長さ方向および幅方向に加熱延伸する工程である。具体的には、延伸工程では、まず、ロール等からフィルム100を連続的に送り出し、複数のクリップ200を用いてフィルム100を一定間隔ごとに把持し、各クリップ200を移動させることでフィルム100を同時二軸延伸装置に搬送する。次いで、フィルム100を、搬送しながら、図1に示す予熱帯にて予熱した後、延伸帯にて、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度T以上に加熱した状態で、クリップ200により長さ方向および幅方向に引っ張ることで延伸する。
なお、本実施形態においては、同時二軸延伸装置内を通過するようにして、クリップ200が移動するための一対のガイドレール(不図示)が設置されている。一対のガイドレールは、図1に示すフィルム100の上側を把持するクリップ200の位置と、下側を把持するクリップ200の位置にそれぞれ設置されており、予熱帯では互いに平行であり、延伸帯では互いにフィルム100の幅方向に離れていき、第1冷却帯、熱緩和帯および第2冷却帯ではまた互いに平行となっている。あるいは、第1冷却帯および第2冷却帯においては、フィルムの固化時の収縮分を考慮して、一対のガイドレール同士の距離を、幅方向に近づけるようにしてもよい。本実施形態においては、フィルム100を把持したクリップ200が、このようなガイドレールに沿って移動することで、フィルム100を搬送および延伸できるようになっている。
フィルム100は、たとえば、熱可塑性樹脂をTダイスから溶融押出しすることで得ることができる。
熱可塑性樹脂としては、得ようとする延伸フィルムの用途などに応じて選択すればよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、などのうち1種を単独で使用、または2種以上を混合した混合樹脂を用いることができ、なかでも、後述する熱緩和工程における熱緩和処理により、配向角をより良好に均一化させることができるという観点より、非晶性樹脂が好ましく、ポリカーボネート(PC)が特に好ましい。
延伸を行う前のフィルム100の幅は、好ましくは280〜1000mm、より好ましくは400〜600mmであり、延伸を行う前のフィルム100の厚みは、好ましくは70〜250μm、より好ましくは100〜150μmである。
フィルム100を図1に示す予熱帯で予熱する際の加熱温度は、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tよりも、好ましくは10〜30℃高い温度、より好ましくは20〜25℃高い温度である。
本実施形態においては、このようなフィルム100を、予熱帯で予熱した後、延伸帯にて延伸する。すなわち、延伸帯にて、フィルム100を、フィルム100のガラス転移温度T以上に加熱した状態で、フィルム100を把持したクリップ200を、ガイドレールに沿って幅方向に広がるようにして移動させ、併せてクリップ200同士の間隔を広げる制御を行うことで、フィルム100を、図1に示す矢印のように、長さ方向および幅方向に引っ張る。これにより、フィルム100が、長さ方向および幅方向に必要な延伸倍率となるまで加熱延伸される。
本実施形態においては、延伸帯にてフィルム100を延伸する際には、延伸方向(フィルム100の長さ方向または幅方向)に対する延伸倍率は、好ましくは3倍以内、より好ましくは2.5倍以内、さらに好ましくは2倍以内である。
また、延伸後のフィルム100の幅は、好ましくは500〜3000mm、より好ましくは1000〜2000mmであり、延伸後のフィルム100の厚みは、好ましくは10〜60μm、より好ましくは20〜40μmである。
<第1冷却工程>
次いで、本実施形態においては、延伸帯にて延伸したフィルム100を、図1に示すように第1冷却帯に搬送し、第1冷却帯にて、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度T未満の温度で冷却することで熱固定する。
第1冷却帯にてフィルム100を冷却する際の温度は、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tよりも、好ましくは10〜50℃低い温度、より好ましくは30〜40℃低い温度である。
<熱緩和工程>
次いで、本実施形態においては、第1冷却帯にて冷却したフィルム100を、図1に示すように熱緩和帯に搬送し、熱緩和帯にて、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度T以上の熱処理温度Tで、下記式(1)で表される下限処理時間tmin以上加熱することで、熱緩和処理を行う。これにより、フィルム100は、分子配向が均一化され、光学特性、強度および耐久性に優れたものとなる。
Figure 0006752602
(上記式(1)中、A、B、Cおよびθは、いずれも、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂の種類および延伸工程における延伸条件に応じて決まる係数、φminは、得ようとする延伸フィルムの配向角(°)、Lは、得ようとする延伸フィルムの幅(mm))
すなわち、図1に示すようにしてフィルム100を延伸する際には、フィルム100の幅方向の両端部はクリップ200により把持されているため、フィルム100の幅方向の両端近傍では、加熱延伸によって生じる延伸応力や、加熱延伸後の冷却時に発生する収縮応力の影響が小さいのに対し、フィルム100の幅方向の中央部では、クリップ200による拘束力が弱くなり、上記の延伸応力や収縮応力の影響が大きくなる。そのため、図1に示すようにして延伸されたフィルム100は、フィルム100の幅方向中央部の変形が幅方向端部の変形に比べて遅延する現象(ボーイング現象)が発生することが知られている。
これに対し、本実施形態においては、延伸工程で延伸した後、第1冷却工程で熱固定したフィルム100について、上述したボーイング現象によって不均一化した分子配向(配向角)を均一化させるために、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度T以上の熱処理温度Tで、下記式(1)で表される下限処理時間tmin以上加熱する熱緩和処理を行うことで、適切に、フィルム100の配向角を均一化することができる。
特に、本発明者等は、フィルム100を熱緩和処理する際の熱処理時間の下限値(下限処理時間tmin)を、上記式(1)に基づいて算出できることを見出し、これにより、延伸フィルムの配向角を均一化させるための適切な熱処理時間を、実際の製造装置を用いて延伸フィルムを試作することなく、簡便に求めることができ、求めた熱処理時間の条件で、熱緩和処理を行うことにより、光学特性、強度および耐久性に優れた延伸フィルムを得ることができるようになった。
ここで、上記式(1)は、本発明者等の知見により、次のようにして得られたものである。まず、本発明者等は、延伸後のフィルム100に対する熱緩和処理の熱処理時間と、この熱緩和処理に応じたフィルム100の配向角の変化との関係について検討し、図2に示す関係を見出した。図2は、ポリカーボネートを主成分とする熱可塑性樹脂(ガラス転移温度Tは約130℃)からなる、厚さ150μm、幅280mm、長さ2,000mmのフィルム100を用いて、フィルム100の両端部を83mm間隔でクリップ200にて把持し、150℃で予熱した後、145℃にて長さ方向1倍、幅方向2倍の延伸倍率で延伸し、その後、120℃および100℃で冷却することで熱固定したサンプルを得て(なお、熱固定後のサンプルは、幅525mm、長さ1,600mmであった)、得られたサンプルについて、温度133℃にて熱緩和処理を行い、その後100℃で冷却することで熱固定した際における、フィルムの分子配向の緩和の様子を測定したグラフである。なお、図2では、熱緩和処理を行う前(図2では、0秒で表した)、熱緩和処理を42秒間行った後、熱緩和処理を84秒間行った後、熱緩和処理を168秒間行った後のサンプルについて、それぞれ、フィルムの幅方向の各位置(幅方向の中心、幅方向の中心から±40mmの位置、±80mmの位置、±120mmの位置、および±160mmの位置)における、フィルムの幅方向を基準軸とした配向角(分子配向方向の基準軸からの角度)を測定した結果を示している。図2では、横軸が、フィルムの幅方向の位置(フィルムの幅方向の中心を0とした)を示し、縦軸が、フィルムの幅方向に対する配向角を示している。
図2に示すように、熱緩和処理を行う前のサンプル(0秒)は、フィルムの幅方向の中心位置(図2のグラフの原点)から離れるにつれて配向角が大きくなっており、フィルムの幅方向両端部では、配向角が最も大きくなっている。同様に、熱緩和処理を行ったサンプル(42秒、84秒および168秒)についても、フィルムの幅方向の中心位置から離れるにつれて配向角が大きくなっているものの、熱緩和処理の熱処理時間が長くなるほど、フィルムの各位置における配向角の大きさが、小さくなっている。
このような図2の結果から、本発明者等は、図2に示すフィルムの幅方向の位置とフィルムの配向角との関係を、直線で近似することができるとの知見を得て、これにより、熱緩和処理によるフィルムの配向角の均一化は、図3に示すようにして進行することを見出した。すなわち、図3に示すように、フィルムの幅方向の位置と、フィルムの配向角との関係について、熱緩和処理前のサンプルを破線の直線で近似し、熱緩和処理後のサンプルを実線の直線で近似した場合に、熱緩和処理を行うことで、横軸に対する近似直線の角度が、小さくなる(具体的には、横軸に対する近似直線の角度が、θからθまで小さくなる)ことを見出した。
さらに、本発明者等は、上述したフィルムの幅方向の位置と、フィルムの配向角との関係を示す近似直線(以下、「配向角近似直線」という。)の角度について、さらに検討を加え、上述したポリカーボネートを主成分とする熱可塑性樹脂のフィルムを用いて、熱処理時間を変更して熱緩和処理を行った場合の評価結果を、図4に示すようにプロットした。その結果、図4に示すように、配向角近似直線の角度θは、熱緩和処理の熱処理時間tとの関係で、緩和現象を表す一般式(下記式(3))でカーブフィッティングできることを見出した。なお、図4においては、熱処理時間を上述した42秒、84秒、168秒としたサンプルに加えて、熱処理時間を275秒としたサンプルの評価結果も併せてプロットした。
Figure 0006752602
(上記式(3)中、θは、熱緩和処理を行う前の配向角近似直線の角度、τは緩和時間(θ=θ/eとなる時点のtの値))
延伸フィルムは、通常、分子配列が均一化しているほど、光学特性、強度および耐久性に優れたものとなる傾向にある。そのため、たとえば、延伸フィルムの用途(光学フィルム等)に応じて、その延伸フィルムの配向角を、所定の規格値以下に抑えることが求められる場合がある。たとえば、図5に示す例のように、幅Lの延伸フィルムを得ようとする場合には、延伸フィルムにおける最大の配向角(通常、延伸フィルムの幅方向両端の配向角)を、規格値(目標値)φmin以下に抑えることが求められる場合がある。この場合において、図5に示すように、延伸フィルムの幅方向両端の配向角が、規格値(目標値)φminとなる際における、配向角近似直線の角度θφは、上記式(3)に基づいて、下記式(4)のように表すことができる。
Figure 0006752602
(上記式(4)中、tminは、配向角近似直線の角度をθφにするのに要する熱緩和処理の熱処理時間))
ここで、上記式(4)を、熱緩和処理の処理時間tminについて解くと、下記式(5)で表すことができる。
Figure 0006752602
なお、上記式(5)中、配向角近似直線の角度θφは、図5に示すグラフから、下記式(6)で表すことができる。
Figure 0006752602
すなわち、上述した図5に示すグラフから、下記式(7)を導くことができ、この式(7)を、配向角近似直線の角度θφについて解くと、上記式(6)が得られる。
Figure 0006752602
次いで、上記式(5)に、上記式(6)における配向角近似直線の角度θφを代入すると、下記式(8)で表すことができる。
Figure 0006752602
上記式(8)中、通常、Lはφminと比較して非常に大きい値である(すなわち、得ようとする延伸フィルムの幅L(単位はmm)は、通常、延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φminと比較して非常に大きい値である)ことから、2φmin/L<<1であり、これにより、tan−1(2φmin/L)は2φmin/Lと近似することができる。そのため、上記式(8)において、tan−1(2φmin/L)を2φmin/Lと近似することにより、下記式(9)で表すことができる。
Figure 0006752602
一方で、本発明者等は、鋭意検討を行ったところ、上記式(9)中の緩和時間τ(上記式(3)において、θ=θ/eとなる時点の時間t)は、下記式(10)で表すことができることを見出した。
Figure 0006752602
(上記式(10)中、a、bおよびcは、いずれも、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂の種類および延伸工程における延伸条件に応じて決まる係数、Tは熱緩和処理を行う際における熱処理温度(℃)、Tはフィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(℃))
すなわち、まず、上述した図4に示すように、ポリカーボネートを主成分とする熱可塑性樹脂のフィルムを、所定倍率で延伸した後に熱固定したサンプルに対して、熱処理温度133℃にて熱緩和処理を行った場合には、緩和時間τ(θ=θ/eとなる時点の時間t)は、図4中にてτで表しているように、225秒となった。これに対し、熱処理温度を135℃、137℃および140℃に変更して、熱処理時間42秒、84秒および168秒の条件で熱緩和処理を行った場合における、配向角近似直線の角度の変化を、図4と同様にプロットすると、図6に示す結果が得られた。
このような図6に示す結果に基づいて、各熱処理温度(135℃、137℃および140℃)で熱緩和処理を行った場合における配向角近似直線の角度の変化を、上記式(3)に基づいてカーブフィッティングすると、緩和時間τ(θ=θ/eとなる時点の熱処理時間t)は、それぞれ、95.7秒(135℃)、28.4秒(137℃)、19.4秒(140℃)となった。このようにして、熱処理温度を変化させた場合の緩和時間τを求め、熱処理温度と緩和時間τとの関係をプロットすると、図7に示すような結果が得られた。なお、図7には、熱処理温度を135℃、137℃および140℃とした結果に加えて、熱処理温度を145℃および150℃とした場合における緩和時間τの評価結果も併せて記載した。なお、熱処理温度を145℃および150℃とした際の緩和時間τは、それぞれ、17秒(145℃)、15秒(150℃)であった。
ここで、本発明者等は、図7に示す結果に基づいて検討したところ、図7に示す結果を、上記式(10)を用いてカーブフィッティングできることを見出した。すなわち、緩和時間τを、上記式(10)で表すことができることを見出した。これにより、上記式(10)で表される緩和時間τを、上記式(9)に代入すると、下記式(1)が得られることが分かった。なお、下記式(1)においては、上記式(10)における係数a、bおよびcを、それぞれA、BおよびCに書き改めた。a、bおよびcと、A、BおよびCとの関係は、下記式(11)〜式(13)で表される。
Figure 0006752602
Figure 0006752602
Figure 0006752602
Figure 0006752602
本実施形態によれば、予め、所望の熱可塑性樹脂のフィルム100を用いて、加熱延伸および熱固定を行うことで、図2,3に示すように、熱緩和処理前の配向角近似直線の角度θを得て、さらに、この加熱延伸および熱固定を行ったフィルム100に対して、熱緩和処理を、熱処理温度を変えて試行し、得られた結果を、上述した図7に示すようにプロットしてカーブフィッティングすることにより、上記式(1)におけるA、BおよびCの値を求めることができる。なお、上記式(1)におけるこれらの係数(A、B、Cおよびθ)は、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂の種類(熱可塑性樹脂の配合)や、フィルム100の延伸条件(たとえば、長さ方向、幅方向それぞれの延伸倍率、延伸時の加熱温度、延伸速度等)に応じて変化すると考えられる。
これにより、本実施形態によれば、予め、上記式(1)の係数(A、B、Cおよびθ)を求めておくことにより、所望の幅Lを有する延伸フィルムを得ようとする場合における、延伸フィルムの配向角を所望の規格値(目標値)φminに制御するための熱緩和処理の下限処理時間tminを、上記式(1)に基づいて算出することができる。
本実施形態においては、熱緩和処理を行う際の熱処理時間は、図8に示すように、得ようとする延伸フィルムの幅Lに応じて変化させることが望ましい。ここで、図8は、延伸フィルムの最大の配向角(通常、延伸フィルムの幅方向両端の配向角)を、規格値(目標値)φmin以下に抑えようとしている場面を例示している。図8に示すように、延伸フィルムの幅がLである場合には、延伸フィルムの幅方向両端の配向角を規格値(目標値)φmin以下にするためには、配向角近似直線の角度をθφ以下とすればよいが、一方で、延伸フィルムの幅がLより大きいL’である場合には、配向角近似直線の角度をθφに制御したとしても、延伸フィルムの幅方向両端の配向角は、規格値(目標値)φminを超えたφ’となってしまう。
これに対し、本実施形態によれば、得ようとする延伸フィルムの幅Lを変化させた場合においても、延伸フィルムの配向角を、規格値(目標値)φmin以下に制御するための熱緩和処理の処理時間(下限処理時間tmin)を、上記式(1)から、簡便に算出することができる。これにより、実際に延伸フィルムを製造する際において、上記式(1)から算出した下限処理時間tminに基づいて熱緩和処理を行うことにより、より簡便に、光学特性、強度および耐久性に優れた延伸フィルムを製造することが可能となる。特に、本実施形態によれば、上記式(1)から算出した下限処理時間tminに基づいて熱緩和処理を行うことにより、得られる延伸フィルムの分子配列を高精度に均一化することができるため、得られる延伸フィルムは、たとえば、延伸フィルムの分子配列の均一化の要求が厳しい光学フィルムとして、好適に用いることができる。
なお、延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φminとしては、特に限定されず、延伸フィルムの用途などに応じて適宜設定すればよいが、たとえば、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下、さらに好ましくは1〜0.5°である。延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φminを上記範囲とすることにより、得られる延伸フィルムは、光学特性、強度および耐久性に優れたものとなる。
ここで、上述した図7を参照して、具体的に、上記式(1)の係数(A、B、Cおよびθ)を求め、上記式(1)に基づいて、下限処理時間tminを求める方法の一例を説明する。
なお、図7に示すグラフは、次のようにして得られた評価結果である。すなわち、まず、厚さ150μm、幅280mm、長さ2,000mmのポリカーボネートを主成分とする熱可塑性樹脂(ガラス転移温度Tは約130℃)のフィルムを、83mmの間隔にてクリップ200で把持し、150℃で予熱した後、145℃にて長さ方向1倍、幅方向2倍の条件で延伸し(なお、延伸後のフィルムは、幅Lが525mm、長さが1,600mmであった)、その後、120℃および100℃で熱固定を行ったフィルムを複数準備した。なお、準備したフィルムにおける最大の配向角(幅方向端部の配向角θ)は、3.4°であった。
次いで、準備した複数のフィルムについて、それぞれ、熱処理温度133℃、135℃、137℃、140℃、145℃および150℃にて熱緩和処理を行い、上述した図6のようにして、熱緩和処理の熱処理時間に対する配向角近似直線の角度θをプロットし、上記式(3)に基づいてカーブフィッティングすることにより、それぞれ、緩和時間τ(θ=θ/eとなる時点の時間t)を求めた。
そして、求めた緩和時間τと、熱緩和処理の熱処理温度Tとの関係を、図7に示すようにプロットし、プロットした結果を、上記式(10)に基づいてカーブフィッティングしたところ、係数である上記式(10)中の係数であるa、bおよびcの値は、それぞれ、a=1444、b=0.56、c=15であった。ここで、得られたa、bおよびcの値は、上述したように、熱緩和処理前のフィルムの幅方向端部の配向角θが3.4°であり、延伸フィルムの幅Lが525mmである場合における係数である。また、図7の例では、緩和時間τ(配向角近似直線の角度θが、θ/eとなるまでの時間)を求めた結果を示すものであるため、このことから、図7の例は、熱緩和処理後のフィルムの配向角(延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φmin)における配向角近似直線の角度θφをθ/eに設定した場合に相当し、緩和時間τが下限処理時間tminとなる。なお、図7においては、延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φminにおける配向角近似直線の角度θφがθ/eである例を示したが、このφminは、得ようとする延伸フィルムの製品仕様に応じて、任意に設定することができ、緩和時間τの替りに下限処理時間tminを縦軸とした図7と同様の図を、設定したφminに応じて描くことができる。
したがって、これらのa、bおよびcの値、ならびに、延伸後のフィルムの幅L、熱緩和処理前のフィルムの幅方向端部の配向角θ、および延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φminの値から、たとえば、上記式(11)〜式(13)に基づいて、係数A、BおよびCの値を求めることができ、求めたA、BおよびCの値を上記式(1)に代入することにより、上記式(1)に基づいて、得ようとするフィルムの幅Lを変化させた場合においても、延伸フィルムの配向角を規格値(目標値)φmin以下とするための熱緩和処理の下限処理時間tminを、簡便に算出することができる。
また、上述した例では、延伸フィルムの最大の配向角を規格値(目標値)φmin以下とするための熱緩和処理の下限処理時間tminを求める方法を例示したが、本実施形態においては、上記式(1)において、φminの値を、得ようとする延伸フィルムの配向角の制御限界値φmaxに置き換えることで、下記式(2)のように、熱緩和処理の熱処理時間の上限値(上限処理時間tmax)を求めることもできる。
Figure 0006752602
なお、上記式(2)における、制御限界値φmaxとしては、たとえば、延伸フィルムの最大の配向角を制御限界値φmaxより小さくしようとすると、熱緩和処理の条件が過剰になってしまうような値が挙げられる。熱緩和処理の条件が過剰になってしまう場合としては、たとえば、熱処理時間が長すぎる場合や、熱処理温度が高すぎる場合が挙げられる。熱処理時間が長すぎると、延伸フィルムの製造効率が低下し、延伸フィルムの製造コストが高くなってしまう。さらに、熱処理時間が長すぎると、得られる延伸フィルムは、分子の配向自体が小さくなる傾向にあり、そのため、延伸フィルムを位相差フィルムに用いる場合に、位相差が小さくなって位相差フィルムとしての性能が低下するおそれがある。また、熱処理温度が高すぎると、フィルムが変形しやすくなり、外乱(フィルムを加熱するために用いるオーブンの風等)や自重により変形して形状不良を起こすおそれがある。制御限界値φmaxとしては、特に限定されず、延伸フィルムの用途などに応じて適宜設定すればよいが、たとえば、好ましくは1°以下、より好ましくは0.5°以下である。また、制御限界値φmaxは、熱緩和処理の条件が過剰にならないようにする観点より、0.3°以上とすることが好ましい。
ここで、上述した図7に示す評価に用いたフィルムについて、延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φminを5°とした場合における下限処理時間tminのグラフと、延伸フィルムの配向角の制御限界値φmaxを0.5°に設定した場合における上限処理時間tmaxのグラフとを、図10に示す。
本実施形態においては、予め、図9に示すようにして、下限処理時間tminおよび上限処理時間tmaxを求めておき、所望の熱処理温度で熱緩和処理を行う際における熱処理時間を、図9に示す下限処理時間tmin以上、かつ、上限処理時間tmax以下とすることにより、より良好な条件で熱緩和処理を行うことができるようになり、これにより、光学特性、強度および耐久性に優れた延伸フィルムを得ることができる。
なお、本実施形態においては、熱緩和処理の熱処理温度は、特に限定されないが、たとえば、外乱(フィルムを加熱するために用いるオーブンの風等)や自重による延伸フィルムの形状不良の発生を防止するという観点より、延伸工程における加熱温度より、好ましくは0〜30℃低い温度、より好ましくは5〜15℃低い温度である。
同様に、熱緩和処理の熱処理時間は、特に限定されないが、たとえば、得られる延伸フィルムの位相差の低下を防止するという観点より、好ましくは60秒以下、より好ましくは20秒以下である。
<第2冷却工程>
次いで、本実施形態においては、熱緩和帯にて熱緩和処理を行ったフィルム100を、図1に示すように第2冷却帯に搬送し、第2冷却帯にて、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度T未満の温度で冷却することで熱固定することが望ましい。
第2冷却帯にてフィルム100を冷却する際の温度は、フィルム100を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tよりも、好ましくは10〜50℃低い温度、より好ましくは30〜50℃低い温度である。
本実施形態においては、以上のようにして延伸フィルムを得ることができる。なお、本実施形態では、得られた延伸フィルムについて、必要に応じて幅方向両端部を切断して除去してもよい。これにより、延伸フィルムにおける特に厚みが厚い幅方向両端部を除去することができ、延伸フィルム全体の厚みを均一化することができる。
また、上述した例においては、図1に示すように、熱可塑性樹脂のフィルム100を、予熱帯、延伸帯、第1冷却帯、熱緩和帯および第2冷却帯に連続して搬送して、延伸工程、第1冷却工程、熱緩和工程および第2冷却工程を連続して行うことで延伸フィルムを製造する例を示したが、本実施形態においては、このような例に限定されず、図10,11に示すようにして、各工程を分割して行って延伸フィルムを製造するようにしてもよい。
たとえば、図10,11に示す例では、まず、図10に示すようにして、熱可塑性樹脂のフィルム100を、予熱帯にて予備加熱し、延伸帯にて加熱しながら長さ方向および幅方向に延伸し、第1冷却帯にて熱固定し、その後、得られたフィルムを一旦巻き取るようにする。次いで、巻き取ったフィルムを用いて、図11に示すようにして、フィルムを巻き出しながら、フィルムの幅方向両端部をクリップ200で把持した状態で、熱緩和帯にてフィルムに熱緩和処理を施した後、第2冷却帯にて熱固定することで、延伸フィルムを製造するようにしてもよい。
本実施形態においては、たとえば、上述した図10,11に示すラインを用いて延伸フィルムを製造することで、上記式(1)の係数(A、B、Cおよびθ)を求めておき、その後、図1に示すようにして連続して延伸フィルムを製造する際に、熱緩和処理の下限処理時間tminや上限処理時間tmaxを、上記式(1)から算出するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、延伸帯における延伸工程では、上述した同時二軸延伸に限定されず、一軸(フィルムの長さ方向または幅方向)のみの延伸を行ってもよいし、フィルムの長さ方向および幅方向に、逐次延伸するようにしてもよい。
さらには、上述した例においては、フィルムの幅方向を基準軸とし、熱緩和処理により、フィルムの配向角を幅方向に沿って均一化させる方法について例示したが、本実施形態においては、フィルムの長さ方向を基準軸とし、熱緩和処理によって、フィルムの配向角を長さ方向に沿って均一化させるようにしてもよい。
たとえば、延伸前のフィルムが、もともと長さ方向に沿って配向している場合や、延伸工程において、フィルムの幅方向の延伸倍率に対して、フィルムの長さ方向の延伸倍率が高いような場合においては、延伸後のフィルムは、熱緩和処理により、フィルムの配向角が長さ方向に均一化される場合がある。
そのため、たとえば、延伸工程で延伸されたフィルムについて、熱緩和処理を行う前の最大の配向角(通常、フィルムの幅方向両端の配向角)が、フィルムの幅方向に対して30°以下である場合には、フィルムの幅方向を基準軸とし、熱緩和処理によって、フィルムの配向角を幅方向に沿って均一化させるようにし、一方で、熱緩和処理を行う前の最大の配向角(通常、フィルムの幅方向両端の配向角)が、フィルムの幅方向に対して60°以上である場合には、フィルムの長さ方向を基準軸とし、熱緩和処理によって、フィルムの配向角を長さ方向に沿って均一化させるようにすることが好ましい。
熱緩和処理によって、フィルムの配向角を長さ方向に沿って均一化させる場合には、上記式(1)および式(2)における、熱緩和処理を行う前の配向角近似直線の角度θ、延伸フィルムの配向角の規格値(目標値)φmin、および延伸フィルムの配向角の制御限界値φmaxは、フィルムの長さ方向を基準軸とした角度を設定して、上記式(1)および式(2)に基づき、下限処理時間tminおよび上限処理時間tmaxを算出することができる。
100…フィルム
200…クリップ

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂のフィルムを、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度T以上に加熱した状態で、一方向または二方向に延伸する延伸工程と、
    前記延伸後のフィルムを、前記ガラス転移温度T未満の温度で冷却する冷却工程と、
    前記冷却後のフィルムを、前記ガラス転移温度T以上の熱処理温度Tで加熱することで熱緩和する熱緩和工程と、を有する延伸フィルムの製造方法であって、
    前記熱緩和工程における熱緩和時間を、下記式(1)により算出される下限処理時間tmin(秒)以上とする延伸フィルムの製造方法。
    Figure 0006752602
    (上記式(1)中、A、B、Cおよびθは、いずれも、予め、前記熱可塑性樹脂のフィルムを用いて、前記延伸工程と、前記冷却工程と、前記熱緩和工程とを行うというプロセスを試行することにより求められる係数、φminは、得ようとする延伸フィルムの配向角(°)、Lは、得ようとする延伸フィルムの幅(mm))
  2. 前記冷却工程で冷却したフィルムを、一旦巻き取った後、巻き取った前記フィルムに対して、前記熱緩和工程を行う請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
  3. 前記冷却工程で冷却したフィルムに対し、前記冷却工程から連続して前記熱緩和工程を行う請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
  4. 前記熱緩和工程において、前記熱緩和時間を、前記下限処理時間tmin以上、かつ、下記式(2)で示す上限処理時間tmax(秒)以下とする請求項1〜3のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
    Figure 0006752602
    (上記式(2)中、φmaxは、得ようとする延伸フィルムの配向角の制御限界値(°))
  5. 前記熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートを含有する樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により得られた延伸フィルムを用いた光学フィルムの製造方法。
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