JP6752177B2 - スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、アルカリ性物質を用いてpHを5.5以上に調整する工程と、亜硫酸化合物が存在する反応器にアリルグリシジルエーテル等の特定のエーテル化合物を添加する工程とを含むスルホン酸基含有エーテル化合物の製造方法や、スルホン酸基含有エーテル化合物を含む組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明はまた、下記一般式(1);
上記製造方法は、下記一般式(2);
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物は、硫黄含有化合物、りん含有化合物及び窒素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「着色抑制物質」とも称する。)を上記一般式(1)で表わされるスルホン酸基含有エーテル化合物100モル%に対して、2.3〜19モル%含むことを特徴としている。
スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物の着色は、組成物中に含まれる不純物の酸化反応により起こると考えられ、硫黄含有化合物、りん含有化合物及び窒素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の酸化防止作用により、不純物の酸化反応が抑制されることで、組成物の着色が抑制されると推定される。
なお、本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物が着色抑制物質に該当する化合物を2種以上含む場合、当該2種以上の化合物の合計量が、上記一般式(1)で表わされるスルホン酸基含有エーテル化合物100モル%に対して、2.3〜19モル%である。
スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物中の硫黄含有化合物、りん含有化合物及び窒素含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量は、酸化還元滴定を用いて測定することができる。
上記スルホン酸基含有エーテル化合物において、スルホン酸(塩)基とは、−SO3Z(Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を意味する。金属原子としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄等が好ましく、また、有機アミン基としては、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が好ましい。上記スルホン酸(塩)基としてより好ましくは、スルホン酸基、スルホン酸リチウム基、スルホン酸カリウム基、スルホン酸ナトリウム基、スルホン酸アンモニウム基、又は、スルホン酸の4級アミン基である。
本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物は、上記一般式(1)で表わされる化合物を本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物100質量%に対し、20〜80質量%含むことが好ましい。上記一般式(1)で表わされる化合物の濃度が高すぎる場合には不純物の析出又は沈殿が生じ、また濃度が低すぎる場合には、重合体の原料として使用した場合に重合濃度が低くなって重合反応が進行しにくくなるという不具合が生じるおそれがあるが、一般式(1)で表わされる化合物を上記のような濃度で含むと、このような不具合の発生を充分に抑制することができる。より好ましくは30〜60質量%であり、更に好ましくは35〜50質量%である。
下記一般式(3)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物を製造する際に副生しやすい化合物であるが、上記スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物中の下記一般式(3)で表される化合物の含有割合は、上記一般式(1)で表される化合物100モル%に対し、10モル%未満であることが適当である。このようなスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物を重合体原料として使用した場合に、スケール防止能(スケール抑制能)に特に優れた重合体を得ることが可能になる。このような重合体の性能面及びスルホン酸基含有エーテル化合物の重合性の観点から、下記一般式(3)で表される化合物の含有割合は10モル%未満であることが適当である。好ましくは5モル%未満であり、更に好ましくは3モル%未満である。
本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物の製造方法は、一般式(2)で表される化合物と亜硫酸化合物とを反応する工程(以下、「反応工程」とも称する。)と、反応工程により得られたスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物中の着色抑制物質の量をスルホン酸基含有エーテル化合物100モル%に対して、2.3〜19モル%に調整する工程(以下、「着色抑制物質濃度調整工程」とも称する。)とを含む。また、本発明の作用効果を損なわない限り、通常の製法で行われるような他の工程を更に含むものであってもよい。
なお、上記塩としては、上述した亜硫酸(塩)及び/又は重亜硫酸(塩)の塩と同様である。
上記一般式(2)で表される化合物は、その全使用量のうち、一部は初期仕込みしても構わないが、スルホン酸基含有エーテル化合物の収率向上の観点からは、全使用量100モル%中の60モル%以上を反応開始以後に反応器に添加することが好ましい。より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは100モル%、すなわち全量を反応開始以後に反応器に添加することである。なお、「反応開始以後」とは、反応開始と同時又は反応開始後であることを意味する。
窒素ガス流通速度は、通常、反応器上部の空間部(容積)と窒素ガス流量(容積/時間)で、反応装置の大きさに依存しないSV(空間速度)[hr−1]という単位で、表すことが可能である。
一方、上記反応工程におけるアリルグリシジルエーテル等の原料の滴下操作を行う際の窒素ガスのSV値は、24[hr−1]以下であれば特に限定はないが、好ましい窒素ガスのSV値は、2.4[hr−1]以下である。より好ましくは0.24[hr−1]以下である。さらに好ましくは0.024[hr−1]以下である。最も好ましくは、窒素ガスの流通は0.0[hr−1]である。反応工程における窒素ガスのSV値が、前述の範囲よりも大きい場合、着色抑制物質としての亜硫酸(塩)や重亜硫酸(塩)が亜硫酸ガスとして、反応系外に流出するため好ましくない。
なお、本発明の製造方法における全反応工程が、上記反応温度の範囲で行われることが最も好ましいが、全反応工程の時間100%中の30%以上の時間帯において、上記反応温度の範囲で反応が行われれば好ましい形態であり、50%以上であればより好ましい。
形態A:上記反応工程後に得られたスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物中の硫黄含有化合物、りん含有化合物及び窒素含有化合物の合計の濃度が上述の範囲となる形態。
形態B:上記反応工程後に得られた上記スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物に、硫黄含有化合物、りん含有化合物及び窒素含有化合物を添加することにより、該スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物中の上記着色抑制物質の合計の濃度を上述の範囲の濃度に調整する形態。
上記一般式(1)で表される化合物含有組成物中の着色抑制物質濃度には、上記反応工程におけるアルカリ性物質の添加量が影響し、例えば、着色抑制物質として亜硫酸(塩)や重亜硫酸(塩)を用いた場合、アルカリ性物質の添加量が少ない場合には、組成物中の亜硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)濃度が低くなる。これは、アルカリ性物質の添加量が少ない場合には、組成物のpHが低いため、着色抑制物質として亜硫酸(塩)や重亜硫酸(塩)を用いた場合には、これらが亜硫酸ガスとして追い出され、残存亜硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)濃度が低下するためであると考えられる。
本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物の安定化方法、及び、保存方法の好ましい形態は、上述した本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物の好ましい形態と同様である。
アクリル酸(塩)の定量は、下記条件にて高速クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX RSpak DE−413L
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0mL/min.
<アリルグリシジルエーテルおよび3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールの定量方法>
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120(5μm φ4.6mm×250mm)
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0mL/min
検出器:RI
0.1%過酸化水素水の過酸化水素濃度の測定は以下の手順にしたがって行った。100mLビーカーに、ヨウ化カリウム1.0gを秤りとり、純水70gを加え、マグネチックスターラーで撹拌する。ここへ、撹拌下、ホールピペットで18N硫酸15mLを加えた後、さらに、0.1%過酸化水素水を、褐色に変色するまで加え(Zg)、2分撹拌する。ここへ、撹拌下、ホールピペットで1%デンプン1mLを加え、溶液が黒褐色に変色するのを確認する。変色確認後、ただちに、撹拌下、自動滴定装置(平沼産業株式会社製COM−1700)を用いて0.1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、色が消えたところを終点(AmL)とする。別途、ブランクとして、0.1%過酸化水素水を添加しないものについても滴定し、終点(BmL)を求めておく。各測定値を下式に入力することにより、過酸化水素濃度を算出する。
過酸化水素濃度(%)=(A−B)×0.17×(0.1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液の
ファクター)/Z
スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物中の亜硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)濃度の測定は、上記組成物中に酸化剤として過酸化水素を過剰に加えることにより、上記組成物中に含まれる亜硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)をすべて分解させた後、残存する過酸化水素の濃度を、還元剤としてチオ硫酸ナトリウムを用いた酸化還元滴定により算出するものである。測定は以下の手順に従って行った。
0.1%過酸化水素水を十分な量調製し、上記<過酸化水素濃度の測定>にしたがって、正確な濃度(S%)を算出しておく。50mLスクリュー管に、固形分40%に調整したスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物3.0g(正確な重量をXgとする)及び0.1%過酸化水素水15g(正確な重量をYgとする)を秤りとり、マグネチックスターラーで10分撹拌し、これを溶液Cとする。100mLビーカーに、ヨウ化カリウム1.0gを秤りとり、純水70gを加え、マグネチックスターラーで撹拌する。このビーカーに、撹拌下、ホールピペットで18N硫酸15mLを加えた後、溶液Cを褐色に変色するまで(Zg)加え、2分撹拌する。さらに、撹拌下、ホールピペットで1%デンプン1mLを加え、溶液が黒褐色に変色するのを確認する。変色確認後、ただちに、撹拌下、自動滴定装置(平沼産業株式会社製COM−1700)を用いて0.1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、色が消えたところを終点(AmL)とする。別途、ブランクとして、溶液Cを添加しないサンプルの終点(BmL)を求めておく。各測定値を下式に入力することにより、亜硫酸(塩)、重亜硫酸(塩)濃度を算出する。ただし、Fは0.1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液のファクターを示す。
亜硫酸(塩)、重亜硫酸(塩)濃度(ppm)=30600×(X+Y)/{X×(S×Y/(X+Y)−0.17×F×(A−B)/Z)}
上記計算式における定数30600及び0.17は、測定に使用した化合物の分子量及び濃度の単位換算を考慮したうえで導出されたものである。
温度計、攪拌機、窒素流入管と窒素流出口に冷却トラップを備えたSUS製反応容器に、窒素を導入しながら、脱イオン水161.9g、48%水酸化ナトリウム水溶液76.3gを仕込んだ。48%水酸化ナトリウム水溶液の仕込み終了後、さらに窒素導入を30分間維持し、その後窒素導入を止めた(窒素ガスのSV値:0.0[hr−1])。これに35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液549.0gを添加した。液温を63℃に昇温し、アリルグリシジルエーテル212.9gを225分かけて滴下した。アリルグリシジルエーテルの滴下終了後、反応液の温度を63℃で30分間維持した。(このようにして得た本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物を、「スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(1)」と言う。)。
上記スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(1)中、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの収率(アリルグリシジルエーテルベース)は、94.9%であった。また、スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(1)に含まれる亜硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)の合計の存在量は3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(酸型換算)100モル%に対し6.2モル%であった。
温度計、攪拌機、窒素流入管と窒素流出口に冷却トラップを備えたSUS製反応容器に、窒素を導入しながら、脱イオン水161.9g、48%水酸化ナトリウム水溶液76.3gを仕込み、これに35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液549.0gを添加した。液温を63℃に昇温し、アリルグリシジルエーテル212.9gを225分かけて滴下した。アリルグリシジルエーテルの滴下終了後、反応液の温度を63℃で30分間維持した。
その後、反応液の温度を63℃に保持したまま、35%過酸化水素水5.1gを添加して300分間維持した(このようにして得た本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物を、「スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(2)」と言う。)。
上記スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(2)中、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの収率(アリルグリシジルエーテルベース)は、94.9%であった。また、スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(2)に含まれる亜硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)の合計の存在量は3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(酸型換算)100モル%に対し0モル%であった。
温度計、攪拌機、窒素流入管と窒素流出口に冷却トラップを備えたSUS製反応容器に、窒素を導入しながら、イオン交換水232g、水酸化ナトリウム2gを初期仕込みした。液温を83℃に昇温し、アリルグリシジルエーテル200g、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液520gを120分かけて滴下した。その後、反応液の温度を83℃で1時間維持することにより反応を完結した。3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(本発明のスルホン酸基含有エーテル化合物)の収率(アリルグリシジルエーテルベース)は、94.5%であった。スルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物(3)に含まれる亜硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)の合計の存在量は3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(酸型換算)100モル%に対し2.2モル%であった。
色調(APHA)の測定方法は下記条件にてL、a、b値を測定し、式1、2よりAPHAを算出した。
装置:日本電色工業株式会社製分光式差計SE2000
式1 W=100−{(100−L)2+a2+b2}0.5
式2 APHA=−34.9×W+3490
実施例1及び比較例1で合成したスルホン酸基含有エーテル化合物含有組成物を100mLのスクリュー管に入れ蓋をし、40℃のオーブンで3か月間静置し、静置前後の色調を測定した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 下記一般式(1);
該保存方法は、アルカリ性物質を用いて反応系のpHを5.5以上に調整する工程と、下記一般式(2):
- 前記反応工程での原料滴下操作における窒素ガス流通速度を0.024hr −1 以下に調整することを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有エーテル化合物の保存方法。
- 前記反応工程での原料滴下操作における窒素ガス流通速度を0.0hr −1 とすることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有エーテル化合物の保存方法。
- 下記一般式(1);
該安定化方法は、アルカリ性物質を用いて反応系のpHを5.5以上に調整する工程と、下記一般式(2):
- 前記反応工程での原料滴下操作における窒素ガス流通速度を0.024hr −1 以下に調整することを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸基含有エーテル化合物の安定化方法。
- 前記反応工程での原料滴下操作における窒素ガス流通速度を0.0hr −1 とすることを特徴とする請求項4に記載のスルホン酸基含有エーテル化合物の安定化方法。
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