JP6748293B2 - サイドエアバッグ装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1のような排気形式では、展開したエアバッグに乗員が接触した時に継ぎ目が十分に開かずに排気が不十分になる場合がある。また、その他の構造も提案されているが、何れも構造が複雑であった。
上記目的を達成する本発明は、車両シートに収容され、膨張展開することで乗員を保護するエアバッグを有するサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグが、膨張展開時に車両前方に面するフロントパネルと、当該フロントパネルの側方に連結されるサイドパネルとを含む。そして、前記フロントパネルには、膨張展開時にテンションが加わる方向に沿ってスリットが形成する。
このような構造のサイドエアバッグ装置においては、膨張展開したエアバッグの側面に乗員が衝突(接触)した時に、フロントパネルのテンションが緩み、これに伴ってスリットがテンションと直交する方向(概ね上下方向)に開き、膨張ガスが確実に外部に排出されることになる。
前記フロントパネルの左右縁部が前記サイドパネルと連結されている構造とすることができる。
このように、サイドパネルとフロントパネルを完全に別部材とすることにより、エアバッグの膨張展開時にフロントパネルに加わるテンションの向きを制御しやすくなる。
前記フロントパネルは、少なくとも乗員の頭部に対応する位置(高さ)の周辺に形成することができる。
このように配置形成されたフロントパネルにスリットを形成することで、乗員の頭部がエアバッグに接触した時に、膨張ガスをスリットが開いて確実に排気を行うことができる。また、フロントパネルの範囲を必要最小限に抑えることができ、エアバッグのパネル構成の自由度が増すことになる。
前記フロントパネルは、前記エアバッグの前面全体を形成する構造とすることができる。
このような構造により、エアバッグの展開形状を三次元形状に維持しやすくなると共に、スリットの形成位置の自由度が増す。例えば、体格の小さな乗員のために比較的下方にスリットを追加するようなアレンジが可能となる。
前記フロントパネルは、上端及び下端の少なくとも一方が、当該端部に向かって徐々に幅が狭くなるように成形することができる。
このような構造を採用することにより、膨張展開したエアバッグの全体形状を突起の少ない、よりなめらかな形状にすることが可能となる。
前記スリットは、前記エアバッグの膨張展開時に概ね水平に延びるように構成することができる。
仮に、スリットが水平に対して斜めに傾いていると、フロントパネルに掛かるテンションの方向とスリットが延びる方向が交差し、エアバッグの膨張展開の過程でスリットが確実に閉じずに、膨張ガスが漏れてしまう恐れがある。
前記スリットは、前記サイドパネルとの連結部近傍まで延びる構造とすることができる。
このような構造により、膨張展開したエアバッグのサイドパネルに乗員が衝突した時に、フロントパネルのテンションの緩みが直接スリットの端部に達するため、速やかにスリットが開くことになる。
前記スリットは、乗員の頭部に相当する高さに形成することができる。
このような構造を採用することにより、膨張展開したエアバッグのサイドパネルに乗員の頭部が衝突した時に、フロントパネルのテンションの低下が直接スリットに影響して、スリットが速やかに開くことになる。
前記スリットを複数形成し、少なくとも1つのスリットが、乗員の頭部に相当する高さに形成するように構成することができる。
このような構造を採用することにより、体格の異なる乗員に対して適切に対応することが可能となる。例えば、体格の小さな乗員を想定して、フロントパネルの下方にスリットを追加すれば、当該乗員へのダメージの緩和がより確実になる。
前記スリットの周辺部の剛性を高める補強構造を設けることができる。
このような構造を採用することにより、膨張展開したエアバッグのサイドパネルに乗員が衝突した時に、フロントパネルに形成されたスリットが確実且つ速やかに開くことになる。他方、スリット周辺の剛性が不十分な場合には、フロントパネルのテンションが低下しても、その力がスリットに伝わり難くなり、スリットの開きが不十分になってしまう。
前記補強構造としては、前記スリットの上下の縁部に沿った縫製とすることができる。ここで言う縫製には、「かがり縫い」を含む。
このような構造を採用することにより、シンプルな構成でスリット周辺の剛性を高めることが可能となる。
前記縫製は、前記スリットの端部において交差させることが好ましい。
このような構成により、最も高い剛性が要求される端部において、十分な剛性を確保することが可能となる。その結果、膨張展開したエアバッグのサイドパネルに乗員が衝突した時に、より確実にスリットが開くことになる。
前記補強構造としては、前記フロントパネルに重ねて設けられた補強パネルを採用することができる。この場合、前記スリットが前記フロントパネルと前記補強パネルの両方を貫通して形成される。比較的簡単な作業工程により、スリット周辺の剛性を高めることが可能となる。
前記エアバッグ内部には、左右の前記サイドパネルを連結する少なくとも1枚のインナーパネルを設けることができる。
フロントパネルに加えて、インナーパネルを設けることにより、エアバッグの展開形状を全体として所望の3次元形状に維持することが容易となる。
前記インナーパネルは、前記エアバッグの膨張展開時に前記フロントパネルと概ね平行になるように配置することができる。
このような構造によれば、フロントパネルと共にエアバッグが左右幅方向に必要以上に膨張することを確実に規制するため、当該左右方向に大きなテンションが加わり、フロントパネルに設けられたスリットの開閉機能が十分に発揮されることになる。
前記エアバッグは、膨張展開することで乗員を拘束するメインチャンバと、前記メインチャンバ内部に配置され、膨張ガスを発生するインフレータを収容したインナーチャンバと、を備えることができる。そして、前記インナーチャンバに、前記メインチャンバと流体連通する開口部を形成することができる。
更に、前記インナーチャンバに、前記メインチャンバと流体連通する複数の開口部を形成し、これら複数の開口部から流出する膨張ガスが、前記インナーパネルによって仕切られる各空間に導くように構成することができる。
このような構成を採用することにより、膨張ガスの流れがスムーズになり、エアバッグの展開速度の向上や、展開形状の安定化に寄与することになる。
前記エアバッグ装置を、前記車両シートの車両内側部分(ドアパネルと反対側)に収容する構造とすることができる。このようなタイプのエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
車両のドアパネル側に展開するタイプのサイドエアバッグに比べて、エアバッグの展開形状を積極的に規制する必要が大きく、本発明の意義・効果がより顕著なものとなる。
本実施例に係るサイドエアバッグ10は、乗員の拘束に直接関与するメインチャンバ30と、メインチャンバ30内に収容され、その内部にインフレータ14を収容したサブチャンバ32とから構成される。
図2及び図3に示すように、フロントパネル16はエアバッグ10の前面の少なくとも一部を形成し、エアバッグ10が膨張展開した時にフロントパネル16の左右方向にテンションが掛かるようになっている。このテンションの方向は、概ね水平に近い。そして、そのテンションの方向に沿ってスリット20が形成されている。スリット20の上下方向(高さ方向)の位置は、乗員Pの頭部が接触する位置(図4(B)参照)に対応するように設計することが好ましい。
図4は、本発明の実施例に係るサイドエアバッグ装置の動作を示す正面図であり、(A)が膨張展開直後の状態を示し、(B)が乗員の頭部がエアバッグに接触した時の状態を示す。
図5(A)〜(D)は、本発明に係るサイドエアバッグ装置に使用されるフロントパネルの他の態様を示す概略平面図である。
図6(A)〜(E)は、本発明に係るサイドエアバッグ装置に使用されるフロントパネルのスリット20周辺の構造の態様を示す概略平面図である。スリット20は、ただ単にフロントパネル16に切り込みをいれただけのものや、わずかに幅(隙間)を有する構造とすることができる。重要なことは、エアバッグ10が膨張展開した時にフロントパネル16にテンションが掛かり、これによってスリット20の両端部が引っ張られて閉じた状態となることと、膨張展開したエアバッグ10のサイドパネル18R、18Lに乗員が接触した時に、フロントパネル16のテンションの低下に伴って、スリット20が口を開けるように開くことにある。
発明を実施するための形態では、所謂ファーサイド(車両用シートの車両ドアから遠い側)のサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ニアサイドエアバッグ(車両用シートの車両ドアに近い側)や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両(ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両)等にも用いることが可能である。
Claims (12)
- 車両シートに収容され、膨張展開することで乗員を保護するエアバッグを有するサイドエアバッグ装置において、
前記エアバッグが、膨張展開時に車両前方に面するフロントパネルと、当該フロントパネルの側方に連結されるサイドパネルとを含み、
前記フロントパネルの左右縁部が前記サイドパネルと連結され、
前記フロントパネルは、車両前方から見たときに上下方向を長手方向とした概ね長方形に成形され、前記フロントパネルには、膨張展開時にテンションが加わる方向に沿ってスリットが形成されており、
前記スリットは、前記エアバッグの膨張展開時に概ね水平に延びて前記サイドパネルとの連結部近傍まで延びており、
前記スリットの周辺部には、その剛性を高める補強構造が設けられ、且つ、
前記エアバッグ内部には、左右の前記サイドパネルを連結する少なくとも1枚のインナーパネルが設けられ、
前記インナーパネルは、前記エアバッグの膨張展開時に前記フロントパネルと概ね平行になるように配置されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。 - 前記フロントパネルは、少なくとも乗員の頭部に相当する位置の周辺に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記フロントパネルは、前記エアバッグの前面全体を形成することを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記フロントパネルは、上端及び下端の少なくとも一方が、当該端部に向かって徐々に幅が狭くなるように成形されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記スリットは、乗員の頭部に相当する高さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記スリットは、複数形成され、
少なくとも1つのスリットが、乗員の頭部に相当する高さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。 - 前記補強構造は、前記スリットの上下の縁部に沿った縫製であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記縫製は、前記スリットの端部近傍において交差していることを特徴とする請求項7に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記補強構造は、前記フロントパネルに重ねて設けられた補強パネルであり、
前記スリットが前記フロントパネルと前記補強パネルの両方を貫通して形成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。 - 前記エアバッグは、膨張展開することで乗員を拘束するメインチャンバと、
前記メインチャンバ内部に配置され、膨張ガスを発生するインフレータを収容したインナーチャンバと、を備え、
前記インナーチャンバには、前記メインチャンバと流体連通する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。 - 前記開口部が複数形成され、これら複数の開口部から流出する膨張ガスが、前記インナーパネルによって仕切られる各空間に導かれることを特徴とする請求項10に記載のサイドエアバッグ装置。
- 前記エアバッグ装置は、前記車両シートの車両内側部分に収容されることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
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