以下、添付図面を参照して、本実施例に係る貨幣処理装置及び貨幣処理システムについて説明する。本実施例では、商業施設の売場(レジ)等からレジ担当者が回収してきた売上金を入金する売上金入金機に本発明を適用した場合について説明する。売上金入金機は、スーパーマーケットやショッピングモール等の商業施設における出納室や、自動販売機のメンテナンス会社の営業所に設置される装置である。
<売上金入金機の概念>
まず、本実施例に係る売上金入金機1の概念について説明する。図1は、本実施例に係る売上金入金機1の概念を説明するための説明図であり、同図は、売上金入金機1を斜め上面から見た状況を示している。
同図に示すように、この売上金入金機1の上部には、操作表示部86及び88、操作キー89が設けられている。レジ担当者は、この操作表示部86及び88、操作キー89を操作して売上金を入金することになる。なお、以下では、売上金入金機1への売上金の入金処理を「引渡処理」と言うこととする。
操作者であるレジ担当者が、操作表示部88にて売上金を売上金入金機1に引き渡す引渡処理を選択したならば、レジ担当者のカードIDと、レジ担当者が所在するレジの売上金を売上金入金機1に引き渡した金額の合計(以下、「引渡済金額」と言う)と、売上金入金機1に引き渡すことが可能な硬貨及び紙幣の枚数とが含まれる引渡処理画面が操作表示部88に表示される。ここでは、カードIDが「A123」であり、引渡済金額が「2,151,650円」であり、硬貨の引渡可能枚数が「3723枚」であり、紙幣の引渡可能枚数が「2191枚」である状況を示している。
本実施例によれば、従来、レジ担当者は、新たな売上金の引渡処理を行ってレシート印字することによって引渡金額を確認していたが、本実施例によれば、レジ担当者が、自身が所持する磁気カードを磁気カードリーダに読み取らせるだけで、新たな売上金の引渡処理を確定する前に引渡済金額を確認することが可能となる。また、レジ担当者は、新たな売上金の引渡処理を行う前に、売上金入金機1に入金可能な硬貨と紙幣の枚数を把握することができるため、レジ担当者が所持する全ての貨幣を売上金入金機1に収納することができるか否かを把握することが可能となる。
そして、この引渡処理画面は、一定時間(例えば、30秒)を経過すると、紙幣及び硬貨を計数する計数画面に移行する。その結果、不必要に長期間引渡済金額が操作表示部88に表示されなくなる。明確な悪意を持たない者であっても、目前に高額な貨幣が存在するとなると、不正に略取したいとの想いを招いてしまうおそれがあるが、本実施例によれば、かかる不正の発生を未然に防止することができる。
このように、本実施例に係る売上金入金機1は、引渡済金額、硬貨及び紙幣の引渡可能枚数を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示するとともに、一定時間が経過したならば、かかる引渡処理画面を引渡済金額が含まれない他の画面に切り換えるよう構成することで、貨幣を引き渡す前に、不正を招く事態を抑制しつつ、装置内に引渡済みの貨幣の金額を効率良く操作者に報知できるようにしている。
<売上金入金機1の構成>
次に、本実施例に係る売上金入金機1の構成について説明する。図2は、本実施例に係る売上金入金機1の外観を示す斜視図である。同図に示すように、この売上金入金機1は、略直方体形状の筐体1aを有する。
また、売上金入金機1の筐体1aを手前側から見て当該売上金入金機1の左側部分には、硬貨の入金処理や計数処理を行う硬貨入金装置10が設けられている。一方、売上金入金機1の筐体1aを手前側から見て当該売上金入金機1の右側部分には、紙幣の入金処理や計数処理を行う紙幣入金装置50が設けられている。
また、図2に示すように、売上金入金機1の筐体1aの上部には上部カバー2が設けられている。この上部カバー2を上方に開くことにより、操作者が硬貨入金装置10や紙幣入金装置50の内部にアクセスすることが可能となる。具体的には、この上部カバー2は、水平方向に延びる軸2pを中心として図2に示す状態から上方に回転可能となっている。ここで、硬貨入金装置10の投入部12(後述)における硬貨の投入口及び紙幣入金装置50の投入部52(後述)における紙幣の投入口は、それぞれ上部カバー2に設けられている。一方、操作表示部86及び88、操作キー89は、上部カバー2とは別に設けられており、上部カバー2を上方に開いても操作表示部86、88や操作キー89の位置は変化しない。
また、売上金入金機1には、上部カバー2が上方に開かれたときに、開かれたことを検知する上部カバー開閉検知センサ(図示せず)が設けられている。また、売上金入金機1には、上部カバー2を閉状態でロックするためのロック部(図示せず)が設けられている。売上金入金機1において硬貨や紙幣の計数処理や入金処理が行われているときは、ロック部により上部カバー2が閉状態にロックされ、該上部カバー2を上方に開けない構造となっている。
<硬貨入金装置10の構成>
次に、本実施例に係る売上金入金機1における硬貨入金装置10の構成について説明する。図3は、硬貨入金装置10の内部を側方から見たときの構成を示す側面図であり、図4は、図3に示す硬貨入金装置10の内部における上部領域を上方から見たときの構成を示す上面図である。
図3及び図4に示すように、硬貨入金装置10は、筐体1aの外部から内部に硬貨を投入するための投入部12と、投入部12により筐体1aの内部に投入された硬貨を搬送するための搬送部14と、搬送部14により搬送される硬貨の金種、真偽、正損等の識別を行う識別部16とを備える。
具体的には、図4に示すように、投入部12には、水平状態となるよう配置された円盤形状の回転盤13が設けられており、当該回転盤13が回転することにより、筐体1aの外部から投入されこの回転盤13の上に載置された硬貨が1枚ずつ当該回転盤13から搬送部14に繰り出される。また、投入部12には、筐体1aの外部から当該投入部12に投入された硬貨を検知するための投入硬貨検知センサ(図示せず)が設けられている。また、図2に示すように、筐体1aの上面には硬貨の投入口の開閉を行うシャッタ12aが設けられており、当該シャッタ12aが開かれたときに、操作者は筐体1aの外部から投入部12に硬貨を投入することができる。かかるシャッタ12aは、操作者が手動で開閉できる。
また、搬送部14は、図4の矢印に示す方向に循環移動を行う無端状の搬送ベルト14aと、当該搬送ベルト14aが張架される複数のプーリ14b、14cとを有し、複数のプーリ14b、14cのうちの一つのプーリ14bには当該プーリ14bを回転駆動させる駆動モータ(図示せず)が設けられている。また、無端状の搬送ベルト14aには、当該搬送ベルト14aの長手方向に沿って複数の突起が間隔を空けて設けられており、各突起により硬貨が1枚ずつ押動されて搬送される。かかる搬送部14において、駆動モータがプーリ14bを回転駆動させることにより無端状の搬送ベルト14aが図4の矢印に示す方向に循環移動し、これにより投入部12により筐体1aの内部に投入された硬貨が1枚ずつ搬送ベルト14aにより搬送される。
また、搬送部14には、識別部16による硬貨の識別結果に基づいて硬貨の振り分けを行う振分機構18が設けられる。具体的には、この振分機構18は、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨を当該搬送部14から分岐させて一時保留部26に送る。より詳細に説明すると、搬送部14において硬貨が搬送される搬送面において、振分機構18の近傍には開口が設けられている。そして、振分機構18が搬送部14における硬貨の搬送面から上方に突出した突出位置に移動すると、搬送部14の搬送ベルト14aにより搬送される硬貨が当該開口を介して搬送部14から下方に落下して後述する一時保留部26に送られる。また、搬送部14の下流側端部の近傍には、開口20が設けられている。振分機構18により搬送部14から分岐されなかった硬貨、すなわち識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨は、リジェクト硬貨として当該開口20から下方に落下し、後述するリジェクト部28に送られる。
図3に示すように、硬貨入金装置10において搬送部14の下方には一時保留部26及びリジェクト部28がそれぞれ設けられている。ここで、一時保留部26は、硬貨入金装置10の奥行き方向(すなわち、図3における左右方向)において移動可能となっており、図3において実線や二点鎖線で示される3箇所の位置に移動することができる。また、一時保留部26は、その頂部及び底部に開口が設けられた略直方体形状の枠体を有する。また、図3における中央位置にある一時保留部26と、搬送部14における硬貨の搬送面において振分機構18の近傍に設けられた開口との間には、一時保留用シュート22が設けられている。振分機構18により振り分けられた硬貨は、一時保留用シュート22を通って一時保留部26に送られる。また、リジェクト部28と、搬送部14の下流側端部の近傍に設けられた開口20との間には、リジェクト用シュート24が設けられている。開口20から落下したリジェクト硬貨はリジェクト用シュート24を通ってリジェクト部28に送られる。
図2に示すように、リジェクト部28は売上金入金機1の筐体1aの前面側から操作者であるレジ担当者がアクセスすることができ、このリジェクト部28にリジェクト硬貨が送られると、操作者はリジェクト部28からリジェクト硬貨を取り出すことができる。
また、硬貨入金装置10の奥行き方向において手前側に位置する一時保留部26(すなわち、図3において左側に位置する一時保留部26)の下方には、硬貨返却箱30が設けられている。一時保留部26が図3における中央の位置から左側の位置に移動すると、当該一時保留部26に一時的に保留されている硬貨がこの一時保留部26から自重により落下して硬貨返却箱30に送られる。かかる硬貨返却箱30は、筐体1aから手前側に引き出し可能となる。具体的には、硬貨返却箱30を筐体1aの内部にロックするためのロック部31(図6参照)が設けられており、当該ロック部31によるロック状態が解除されると、硬貨返却箱30を筐体1aから手前側に引き出すことができる。また、図2に示すように、硬貨返却箱30の前面には、操作者が把持するための把持部分30aが設けられており、ロック部31によるロック状態が解除された後、操作者が把持部分30aを把持して硬貨返却箱30を筐体1aから手前側に引き出すことにより、硬貨返却箱30に収納されている硬貨を筐体1aの外部に返却することができる。
また、硬貨入金装置10の内部における下部領域には、硬貨収納カセット40が収容されており、硬貨入金装置10の奥行き方向において奥側に位置する一時保留部26(すなわち、図3において右側に位置する一時保留部26)と、硬貨収納カセット40との間には収納用シュート32が設けられている。これにより、一時保留部26が図3における中央の位置から右側の位置に移動すると、当該一時保留部26に一時的に保留されている硬貨がこの一時保留部26から自重により落下して、収納用シュート32を介して硬貨収納カセット40に送られ、当該硬貨収納カセット40に収納される。なお、硬貨収納カセット40は、筐体1aの外部に取り出すことができる。具体的には、図2に示すように売上金入金機1の筐体1aの前面における下部領域には、警送会社の警備員等の所定の権限を有する者しか開くことができない扉1bが設けられており、この扉1bを開くことにより硬貨収納カセット40を筐体1aの外部に取り出すことができる。警送会社の警備員等により筐体1aの外部に取り出された硬貨収納カセット40は、警送会社の管理本部や現金処理センターに運搬され、硬貨収納カセット40から取り出された硬貨が管理本部等で管理される。
<紙幣入金装置50の構成>
次に、本実施例の売上金入金機1における紙幣入金装置50の構成について説明する。図5は、紙幣入金装置50の内部を側方から見たときの構成を示す側面図である。図5に示すように、紙幣入金装置50は、筐体1aの外部から紙幣が束状態で投入される投入部52と、投入部52に投入された紙幣を1枚ずつ筐体1aの内部に繰り出すための繰出機構54と、繰出機構54により筐体1aの内部に繰り出された紙幣を搬送するための搬送部56と、搬送部56により搬送される紙幣の金種、真偽、正損等の識別を行う識別部58とを備える。
また、図2に示すように、筐体1aの上面には紙幣の投入口の開閉を行うシャッタ52aが設けられており、当該シャッタ52aが開かれたときに操作者は筐体1aの外部から投入部52に紙幣の束を投入することができる。かかるシャッタ52aは、操作者が手動で開閉することができる。また、投入部52には、筐体1aの外部から当該投入部52に投入された紙幣を検知するための投入紙幣検知センサ(図示せず)が設けられている。
また、搬送部56における識別部58よりも下流側の箇所には、識別部58により識別された紙幣をリジェクト部62及び一時保留部64のうちいずれか一方に振り分ける分岐部60が設けられている。具体的には、分岐部60において、識別部58により正常な紙幣であると識別された紙幣は一時保留部64に送られるよう振り分けられる。一方、識別部58により正常な紙幣ではないと識別された紙幣や識別部58により識別することができなかった紙幣は、リジェクト紙幣としてリジェクト部62に送られるよう振り分けられる。
図2に示すように、リジェクト部62は売上金入金機1の筐体1aの前面側から操作者がアクセス可能であり、このリジェクト部62にリジェクト紙幣が送られると、操作者はリジェクト部62からリジェクト紙幣を取り出すことができる。
また、図5に示すように、紙幣入金装置50の内部における下部領域において一時保留部64の真下の位置には紙幣収納カセット70が収容される。そして、一時保留部64に紙幣が一時的に保留された後、入金確定の指令が売上金入金機1の本体制御部80(後述)に与えられると、一時保留部64から紙幣収納カセット70に紙幣が一括して送られ、この紙幣収納カセット70に収納される。
なお、紙幣収納カセット70は、筐体1aの外部に取り出すことができる。具体的には、売上金入金機1の筐体1aの前面における下部領域には扉1bが設けられており、この扉1bを開くことにより紙幣収納カセット70を筐体1aの外部に取り出すことができる。警送会社の警備員等により筐体1aの外部に取り出された紙幣収納カセット70は、警送会社の管理本部や現金処理センターに運搬され、紙幣収納カセット70から取り出された紙幣が管理本部等で管理される。
また、図2に示すように、売上金入金機1の筐体1aの前面における一時保留部64の手前側の位置には扉1cが設けられるとともに、当該扉1cを閉状態にロックするための扉ロック部65(図6参照)が設けられている。そして、当該扉ロック部65による扉1cのロック状態が解除されると、操作者は扉1cを手前右側に開いて一時保留部64の内部にアクセス可能となる。
このようにして、紙幣が一時保留部64に一時的に保留された後、返却の指令が売上金入金機1の本体制御部80(後述)に与えられると、扉ロック部65による扉1cのロック状態が解除され、操作者は扉1cを開くことにより一時保留部64の内部から紙幣を取り出すことができ、筐体1aの外部に紙幣が返却される。そして、操作者が手動で扉1cを閉じると、扉ロック部65により扉1cが再び閉状態にロックされる。なお、一時保留部64に一時的に保留された紙幣を紙幣収納カセット70に収納させる際には、扉ロック部65による扉1cの閉状態のロックが維持されたままとなる。
<売上金入金機の制御系の構成>
次に、本実施例による売上金入金機1の制御系の構成について説明する。図6は、本実施例による売上金入金機1の制御系の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この売上金入金機1には、当該売上金入金機1の各構成部位の制御を行う本体制御部80が設けられている。
また、硬貨入金装置10には、当該硬貨入金装置10の各構成部位(具体的には、投入部12、搬送部14、識別部16、振分機構18、一時保留部26、ロック部31等)に接続された硬貨制御部81が設けられており、この硬貨制御部81により硬貨入金装置10の各構成部位が制御される。
また、紙幣入金装置50には、当該紙幣入金装置50の各構成部位(具体的には、繰出機構54、搬送部56、識別部58、分岐部60、一時保留部64、扉ロック部65等)に接続された紙幣制御部82が設けられており、この紙幣制御部82により紙幣入金装置50の各構成部位が制御される。図6に示すように、硬貨入金装置10に設けられた硬貨制御部81や紙幣入金装置50に設けられた紙幣制御部82はそれぞれ本体制御部80に通信可能に接続されている。
また、図2に示すように、売上金入金機1の筐体1aの上面には、プリンタ等の印字部84、2つの操作表示部86、88、操作キー89及び操作者が携帯するIDカード(磁気カード)92に磁気記録されたカードIDを読み取るための磁気カードリーダ90が設けられており、これらの印字部84、操作表示部86、88、操作キー89、読取部90はそれぞれ本体制御部80に通信可能に接続されている。
印字部84は、売上金入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報や、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納されている硬貨及び紙幣の金種毎の枚数や合計金額に係る情報(在高情報)がレシートに印字される。
また、2つの操作表示部86、88のうち左側の操作表示部86は例えばモニタからなり、売上金入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報等が表示される。一方、右側の操作表示部88は例えばタッチパネルからなり、当該操作表示部88には売上金入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報等の様々な情報の少なくとも一部が表示されるとともに、操作者は操作表示部88を操作することにより本体制御部80に様々な指示を与えることができる。
2つの操作表示部86、88は並列に配置されており、また、これらの2つの操作表示部86、88は同一の形状及び大きさとなる。また、本実施例では、操作者によって右側の操作表示部88が操作されることにより左側の操作表示部86の表示内容を変更することができる。また、操作キー89は、例えば売上金入金機1において引渡処理(入金処理)が行われる際に確定待ち状態となったときに図示しないLED等によって光が照射されることにより光るようになっており、操作者が当該操作キー89を押下することにより引渡確定(入金確定)の指令が本体制御部80に与えられる。
ここで、右側の操作表示部88には、すでに説明したように、操作表示部88にて売上金を売上金入金機1に引き渡す引渡処理を選択したならば、レジ担当者のカードIDと、レジ担当者が所在するレジの売上金を売上金入金機1に引き渡した金額を示す「引渡済金額」と、売上金入金機1に引き渡すことが可能な硬貨及び紙幣の枚数とが含まれる引渡処理画面が表示される。また、この引渡処理画面は、一定時間(例えば、30秒)を経過すると、紙幣及び硬貨を計数する計数画面に移行する。その結果、不必要に長期間引渡済金額が操作表示部88に表示されなくなる。
また、この売上金入金機1では、図2等に示すように、操作表示部86、88や操作キー89を支持するための支持部4が設けられており、この支持部4を筐体1aの手前側に開くことができる。具体的には、支持部4は、その下端部分(基端部分)に設けられた水平方向に延びる軸4p(図4等参照)を中心として揺動可能となっている。また、図2や図5等に示すように、操作表示部86、88や操作キー89を支持するための支持部4は、売上金入金機1の筐体1aの前壁部分の少なくとも一部を構成している。また、支持部4の軸4pには、当該支持部4を筐体1aの手前側に開いた状態から元の所定位置に戻る方向に付勢するための付勢部として例えばねじりバネ等が設けられている。これにより、操作者が手動で支持部4を筐体1aの手前側に開いた後、この支持部4から手を離すと当該支持部4は自動的に元の所定位置に戻るようになっている。
また、本実施例では、操作表示部86、88や操作キー89を支持するための支持部4は、上部カバー2が上方に開かれた状態においてのみ、筐体1aの手前側に開くことができる。すなわち、上部カバー2が閉じているときには、支持部4の上端部分が図示しない係合部材によって上部カバー2に係合することにより、当該支持部4を筐体1aの手前側に開くことができない。
また、図6に示すように、操作者が携帯するIDカード等の磁気カード92には、IDカードのカードIDが磁気記録されており、この磁気カード92を磁気カードリーダ90に通すと、当該磁気カード92aに磁気記録されたカードIDが磁気カードリーダ90により読み取られる。
また、記憶部94には、カードIDデータ94a、引渡済金額データ94b、在高データ94c及び収納上限枚数データ94dが記憶される。カードIDデータ94aは、カードID、レジID、権限レベル及び回収可否を対応付けたデータであり、引渡済金額データ94bは、レジIDと引渡済金額を対応付けたデータである。在高データ94cは、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納された貨幣の金種ごとの枚数を含むデータであり、収納上限枚数データ94dは、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される硬貨及び貨幣の上限枚数を含むデータである。
本体制御部80は、カードIDが読み取られたならば、カードIDデータ94aを参照して、このカードIDに対応するレジID、権限レベル及び回収可否を特定する。そして、このカードIDに対応する権限レベルが「1(レジ担当者)」である場合には、引渡済金額データ94bを参照してレジIDに対応する引渡済金額を取得するとともに、引渡済貨幣データ94cを参照して貨幣の枚数を取得し、貨幣上限枚数データ94dを参照して硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される硬貨及び紙幣の上限枚数を取得する。
その後、操作者により「引渡処理」が選択されたならば、本体制御部80は、この引渡済金額及び引渡処理が可能な貨幣の枚数を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示制御する。なお、引渡処理が可能な貨幣の枚数は、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される硬貨及び紙幣の上限枚数と引渡処理された硬貨及び紙幣の枚数との差分となる。
ただし、このカードIDに対応する権限レベルが「0(権限無し)」である場合には、引渡処理画面を操作表示部88に表示しない。操作者が引渡処理を実施する権限を有しないためである。また、このカードIDに対応する権限レベルが「2(管理者)」である場合には、全てのレジIDに対応する引渡済金額を取得し、これらの引渡済金額及びその合計金額を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示する。管理者は、全てのレジの状況を把握する必要がある場合が多いからである。
また、操作者により「警備回収」が選択されたならば、本体制御部80は、このカードIDに対応する回収可否を特定し、回収可否が「0」である場合には回収不可と判定して回収処理を拒否する。一方、回収可否が「1」である場合には回収可能と判定して回収を許可する。
このように、操作者が磁気カード92を磁気カードリーダ90に通すことにより、当該操作者の権限を認証することができ、所定の権限を有する操作者のみが売上金入金機1において貨幣の引渡処理(入金処理)や計数処理、回収処理を行うことができる。また、この操作者の権限レベルに応じた情報を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示することができる。
また、本体制御部80には通信インターフェース部98が通信可能に接続されており、本体制御部80は、この通信インターフェース部98により、売上金入金機1の外部に設けられた上位端末等の外部装置と信号の送受信を行うことができる。
<データの一例>
次に、図6に示したカードIDデータ94a、引渡済金額データ94b、在高データ94c及び収納上限枚数データ94dの一例について説明する。
まず、図6に示したカードIDデータ94aの一例について説明する。図7は、図6に示したカードIDデータ94aの一例を示す図である。同図に示すカードIDデータ94aは、カードID、レジID、権限レベル及び回収可否を対応付けたデータである。ここでは、カードID「A123」が、レジID「R001」、権限レベル「1(レジ担当者)」、回収可否「0(回収権限無し)」と対応付けられ、カードID「A124」が、レジID「R001」、権限レベル「2(管理者)」、回収可否「0(回収権限無し)」と対応付けられ、カードID「A125」が、レジID「R002」、権限レベル「1(レジ担当者)」、回収可否「0(回収権限無し)」と対応付けられ、カードID「A126」が、レジID「R002」、権限レベル「1(レジ担当者)」、回収可否「0(回収権限無し)」と対応付けられた状況を示している。また、カードID「B001」及び「B002」は、回収可否「1(回収権限有り)」に対応付けられた状況を示している。
このため、このカードIDデータ94aを参照すれば、IDカードに対応するレジIDを特定することができるとともに、レジ担当者のIDカードであるか、管理者のIDカードであるか、警備会社の担当者が有するIDカードであるかを判定することができる。
次に、図6に示した引渡済金額データ94bの一例について説明する。図8は、図6に示した引渡済金額データ94bの一例を示す図である。同図に示す引渡済金額データ94bは、レジIDと引渡済金額を対応付けたデータである。ここでは、レジID「R001」に引渡済金額「2,151,650円」が対応付けられ、レジID「R002」に引渡済金額「1,950,500円」が対応付けられ、レジID「R003」に引渡済金額「1,800,520円」が対応付けられ、レジID「R010」に引渡済金額「2,305,140円」が対応付けられた状況を示している。
このため、この引渡済金額データ94bを参照すれば、レジIDに対応する引渡済金額を特定することができ、カードIDの取得を条件として、引渡済金額を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示することが可能となる。
次に、図6に示した在高データ94c及び収納上限枚数データ94dの一例について説明する。図9は、図6に示した在高データ94cの一例を示す図であり、図10は、図6に示した収納上限枚数データ94dの一例を示す図である。
図9に示す在高データ94cは、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納された貨幣の金種ごとの枚数を含むデータである。ここでは、硬貨収納カセット40内に500円貨が「110枚」収納され、100円貨が「410枚」収納され、50円貨が「120枚」収納され、10円貨が「457枚」収納され、5円貨が「80枚」収納され、1円貨が「120枚」収納され、合計で「1277枚」の硬貨が硬貨カセット40に収納された状況を示している。また、紙幣収納カセット70内に、万円券が「210枚」収納され、五千円券が「105枚」収納され、千円券が「494枚」収納され、合計で「809枚」の紙幣が紙幣収納カセット70に収納された状況を示している。
図10に示す収納上限枚数データ94dは、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される硬貨及び紙幣の上限枚数を含むデータである。ここでは、硬貨収納カセット40に収納できる硬貨の上限枚数が「5000枚」であり、紙幣収納カセット70に収納できる紙幣の上限枚数が「3000枚」である状況を示している。
このため、本体制御部80は、この在高データ94c及び収納上限枚数データ94dを参照することで、硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に新たに収納することができる硬貨と紙幣の枚数を算定することができる。図9及び図10に示す例では、硬貨収納カセット40に新たに収納できる硬貨の枚数が「3723枚(=5000枚−1277枚)」であり、紙幣収納カセット70に新たに収納できる紙幣の枚数が「2191枚(=3000枚−809枚)」となる。このため、新たに収納できる硬貨及び紙幣の枚数を残り枚数として操作表示部86,88に表示することが可能となる。なお、図1に示すように、収納上限枚数に占める残り枚数をグラフ状にして操作表示部86,88に表示することもできる。
<売上金入金機の動作及び表示画面>
次に、上記の構成を有する売上金入金機1の動作及び表示画面の一例について説明する。なお、以下に示す売上金入金機1の動作は、本体制御部80が当該売上金入金機1の各構成部位を制御することにより、あるいは本体制御部80が硬貨制御部81や紙幣制御部82を経由して硬貨入金装置10や紙幣入金装置50の各構成部位を制御することにより行われる。
まず、売上金入金機1において硬貨や紙幣の引渡処理(入金処理)が行われるときの動作について説明する。図11〜図14は、図2に示す売上金入金機1において硬貨や紙幣の入金処理が行われる際に操作表示部86、88に表示される画面の一例を示す図である。
売上金入金機1が待機状態にあるときには、操作表示部86、88には図11(a)に示す待機画面が表示される。ここでは、図中の左側に表示される画面は操作表示部86の表示内容を示し、右側に表示される画面は操作表示部88の表示画面を示すものとする。
ここで、操作表示部86に表示される左側の表示内容は、図11(b)に示す表示画面と所定時間ごとに交互に切り替わる。また、操作表示部88に表示される右側の表示画面は、「次へ」を操作された場合に、図11(c)に示す表示画面に切り替わる。このため、操作者は、「引渡(入金)」、「警備回収」、「計数」、「バッチ」、「締め」、「ユーザー設定」、「入金履歴」、「金額指定」を選択することが可能となる。なお、「引渡」は、主として操作者が売上金を入金する場合に操作する項目であり、売上金の入金を行うことなくレジの引渡済金額を確認する場合にも操作される。「警備回収」は警備会社等の担当者が硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70を回収する場合に操作される。また、「締め」は、例えば店舗の閉店時などの締め処理を行う場合に操作される。ここでは、「計数」、「バッチ」、「ユーザー設定」、「入金履歴」、「金額指定」については、本発明の特徴部分ではないため、その説明を省略する。
そして、売上金入金機1が待機状態にあるときに、操作者が自己のIDカード(磁気カード)92を磁気カードリーダ90に通すことにより、当該IDカードに磁気記録されたカードIDが読み取られる。この状態で、このIDカードが警備会社の担当者のIDカードであり、操作者が「引渡」を行う権限を有しない場合には、「引渡」を非表示又は薄い色の表示とするとともに、この「引渡」の操作を受け付けない。一方、操作者が「引渡」を行う権限を有する場合に、操作者が「引渡(入金)」を選択すると、図12(a)に示す引渡処理画面が操作表示部88に表示される。
この引渡処理画面には、カードID、引渡済金額、収納可能な硬貨の枚数及びそのグラフ表示、収納可能な紙幣の枚数及びそのグラフ表示が含まれる。このため、操作者は、売上金を売上金入金機1に引渡処理(入金処理)する前に、操作者が従事するレジから入金した売上金の合計金額を示す引渡済金額を確認することができる。なお、操作者が管理者である場合には、全てのレジの引渡済金額及びその合計金額を引渡処理画面に表示する。
また、操作表示部88に引渡処理画面が表示されてから所定の期間(例えば「30秒」)が経過したならば、図12(b)に示す表示画面に切り替わる。長時間に亘り操作表示部88に引渡済金額を表示すると、思わぬ不正行為を引き起こすおそれがあるためである。なお、ここでは、操作表示部86の表示画面も併せて切り替わる場合を示しており、この操作表示部86の表示画面は、一定時間ごと交互に図12(c)に示す表示画面に切り替わる。
その後、操作者が、売上金入金機1の筐体1aの上面に設けられたシャッタ12aやシャッタ52aを手動で開き、筐体1aの外部から硬貨や紙幣を投入部12や投入部52に投入した後、操作表示部88の引渡処理画面に表示されている「スタートボタン」を押下すると、投入部12や投入部52に投入された硬貨や紙幣は筐体1aの内部に繰り出される。具体的には、投入部12に投入された硬貨は当該投入部12に設けられた回転盤13により1枚ずつ筐体1aの内部に繰り出され、搬送部14により搬送される。この際に、識別部16により硬貨の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨は振分機構18により搬送部14から分岐させられ、一時保留用シュート22を介して一時保留部26に送られ、この一時保留部26に一時的に保留される。この際に、一時保留部26は図3における中央の位置に維持される。また、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨はリジェクト硬貨として開口20から落下し、リジェクト用シュート24を介してリジェクト部28に送られる。このように、売上金入金機1の筐体1aの前面側から操作者がリジェクト部28にアクセスすることができるため、リジェクト部28にリジェクト硬貨が送られると、操作者はリジェクト部28からリジェクト硬貨を取り出すことができる。
また、投入部52に紙幣が投入された後、操作者が操作表示部88の引渡処理画面に表示される「スタートボタン」を押下すると、投入部52に投入された紙幣が繰出機構54によって1枚ずつ筐体1aの内部に繰り出され、搬送部56により搬送される。この際に、識別部58により紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部58により正常な紙幣であると識別された硬貨は分岐部60により一時保留部64に送られ、この一時保留部64に一時的に保留される。また、識別部58により正常な紙幣ではないと識別された紙幣や識別部58により識別することができなかった紙幣はリジェクト紙幣としてリジェクト部62に送られる。このように、売上金入金機1の筐体1aの前面側から操作者がリジェクト部62にアクセスすることができるため、リジェクト部62にリジェクト紙幣が送られると、操作者はリジェクト部62からリジェクト紙幣を取り出すことができる。
投入部12に投入された硬貨が全て当該投入部12に設けられた回転盤13により筐体1aの内部に繰り出されて一時保留部26又はリジェクト部28に送られるとともに、投入部52に投入された紙幣が全て繰出機構54により筐体1aの内部に繰り出されて一時保留部64又はリジェクト部62に送られると、操作表示部88には、図13(a)に示す表示画面が表示される。具体的には、図13(a)に示すように、操作表示部86には引渡処理を行う金額を示す「合計金額」を含む画面が表示され、操作表示部88には確定画面が表示される。
そして、操作キー89が光るようになり、当該操作キー89が確定キーであることが示される。操作者が操作キー89を押下して入金確定の指令を本体制御部80に入力すると、一時保留部26は図3における中央の位置から右側の位置に移動し、この一時保留部26に一時的に保留されている硬貨が当該一時保留部26から自重により落下し、収納用シュート32を介して硬貨収納カセット40に送られ、この硬貨収納カセット40に収納される。また、入金確定の指令が本体制御部80に入力されると、一時保留部64に一時的に保留された紙幣が当該一時保留部64から紙幣収納カセット70に送り込まれ、この紙幣収納カセット70に収納される。
入金確定の指令が本体制御部80に入力されることによって硬貨収納カセット40や紙幣収納カセット70に硬貨や紙幣が収納された後、操作表示部86、88には図13(b)に示す取引確定画面が表示される。具体的には、引渡金額を含む画面が操作表示部88に表示される。また、印字部84により、売上金入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報がレシートに印字される。
なお、図13(a)に示す操作表示部86の表示画面に代えて、図14に示す画面を表示することもできる。具体的には、図13(a)に示す画面の「枚数表示」が選択操作されると、図13(a)に示す画面から図14に示す画面に切り替わることになる。
<本体制御部80の処理手順>
次に、「締め」操作が行われた場合における本体制御部80の処理手順について説明する。図15は、「締め」操作が行われた場合における本体制御部80の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、すでに磁気カードリーダ90にてIDカード(磁気カード)92に磁気記録されたカードIDが読み取られているものとする。
同図に示すように、本体制御部80が、「締め」操作を受け付けたならば(ステップS101;Yes)、カードIDを有する操作者が「締め」操作を行う権限を有するか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、図7に示したカードIDデータ94aを参照し、カードIDに対応する権限レベルが「1(レジ担当者)」又は「2(管理者)」である場合に、「締め」操作を行う権限を有するものと判定する。
そして、「締め」操作を行う権限を有すると判定した場合には(ステップS103;Yes)、「締め」操作に関する画面を操作表示部88に表示する。そして、この画面上で「確定操作」がなされたならば(ステップS104;Yes)、「締め」レシートを印字した後(ステップS105)、引渡済金額データ94bの引渡済金額をバックアップした後、この引渡済金額データ94bの引渡済金額をリセットする(ステップS106)。なお、「締め」操作を行う権限を有しないと判定した場合(ステップS103;No)、「確定操作」がされない場合(ステップS104;No)は、そのまま処理を終了する。
このように、「締め」操作が行われたならば、引渡済金額データ94bの引渡済金額がリセットされるため、引渡処理を行う場合に操作表示部88に表示される引渡処理画面に含まれる引渡済金額は、「締め」処理がなされた後の引渡済金額を意味することになる。
次に、「引渡」操作が行われた場合における本体制御部80の処理手順について説明する。図16は、「引渡」操作が行われた場合における本体制御部80の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、すでに磁気カードリーダ90にてIDカード(磁気カード)92に磁気記録されたカードIDが読み取られているものとする。
図16に示すように、本体制御部80が、「引渡」操作を受け付けたならば(ステップS201;Yes)、カードIDを有する操作者が「引渡」操作を行う権限を有するか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、図7に示したカードIDデータ94aを参照し、カードIDに対応する権限レベルが「1(レジ担当者)」又は「2(管理者)」である場合に、「引渡」操作を行う権限を有するものと判定する。
そして、「引渡」操作を行う権限を有すると判定した場合には(ステップS203;Yes)、カードIDデータ94aを参照してカードIDに対応するレジIDを特定する(ステップS204)。例えば、カードIDが「A123」である場合には、「引渡」操作を行う権限があり、このカードIDに対応するレジIDが「R001」と特定される。なお、「引渡」操作を行う権限を有しないと判定されたならば(ステップS203;No)、そのまま処理を終了する。
その後、本体制御部80は、引渡済金額データ94bを参照してレジIDに対応する引渡済金額を特定し、この引渡済金額を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示制御する(ステップS205)。例えば、カードIDが「A123」である場合には、レジIDが「R001」となるため、このレジIDに対応する引渡済金額が「2,151,650円」となる。
そして、所定の時間(例えば、「30秒」)を経過するまでは(ステップS206;No)、上記の引渡処理画面を操作表示部88に表示制御し、所定の時間が経過したならば(ステップS206;Yes)、操作表示部88に表示される引渡処理画面が貨幣の計数開始画面に切り替えられる(ステップS207)。長時間に亘り、引渡済金額を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示すると、思わぬ不正行為を招くおそれが生ずるからである。
そして、この計数開始画面の「スタート」ボタンが押下されたならば(ステップS208;Yes)、貨幣の計数処理を行い(ステップS209)、計数結果を表示するとともに(ステップS210)、レシートを印字して(ステップS211)、処理を終了する。
次に、「警備回収」操作が行われた場合における本体制御部80の処理手順について説明する。図17は、「警備回収」操作が行われた場合における本体制御部80の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、すでに磁気カードリーダ90にてIDカード(磁気カード)92に磁気記録されたカードIDが読み取られているものとする。
同図に示すように、本体制御部80が、「警備回収」操作を受け付けたならば(ステップS301;Yes)、カードIDを有する操作者が「警備回収」操作を行う権限を有するか否かを判定する(ステップS302)。具体的には、図7に示したカードIDデータ94aを参照し、カードIDに対応する回収可否が「1(回収権限有り)」である場合に、「警備回収」操作を行う権限を有するものと判定する。例えば、図7に示すカードID「A123」は、回収可否が「0(回収権限無し)」であるため、警備回収を行う権限を有さない。一方、図7に示すカードID「B001」は、回収可否が「1(回収権限有り)」であるため、警備回収を行う権限を有する。
そして、「警備回収」操作を行う権限を有すると判定した場合には(ステップS303;Yes)、全レジの引渡済金額の合計額を算定する(ステップS304)。なお、警備回収を行う前に締め処理がなされ、バックアップした引渡済金額が存在する場合には、このバックアップした引渡済金額を含む合計額を算定する。硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される全ての貨幣の金額を特定するためである。なお、「警備回収」操作を行う権限を有しないと判定されたならば(ステップS303;No)、そのまま処理を終了する。
その後、この引渡済金額の合計額すなわち硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される全ての貨幣の合計額を含む確認画面を操作表示部88に表示し(ステップS305)、所定の時間(例えば、「30秒」)が経過したならば(ステップS306;Yes)、操作表示部88に表示した確認画面を貨幣回収開始画面に切り替える(ステップS307)。硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納される全ての貨幣の金額を長時間表示することで、思わぬ不正行為を招く事態を防止するためである。
そして、この貨幣回収開始画面上で「スタート」ボタンが押下されると(ステップS308;Yes)、貨幣の回収処理を行って硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70を装置外部に取り出し(ステップS309)、レシートを印字して(ステップS310)、処理を終了する。
上述してきたように、本実施例に係る売上金入金機1は、操作表示部88と、貨幣が投入される投入部12,52と、投入部12,52に投入された貨幣を収納する硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70と、所定の操作がなされてから所定の期間(例えば、「30秒」)、引渡済金額を操作表示部88に表示制御する本体制御部80とを備えるよう構成したので、貨幣を引き渡す前に、不正を招く事態を抑制しつつ、装置内に引渡済みの貨幣の金額を効率良く操作者に報知することができる。
ところで、上記実施例では、1台の売上金入金機1を設けた場合を示したが、店舗内に複数の売上金入金機1が設けられる場合がある。かかる場合に、レジ担当者は、いずれの売上金入金機1を用いても売上金の引渡処理(入金処理)ができることが望ましい。このため、ここでは複数の売上金入金機1が設けられる場合について説明する。
この場合に、操作者が複数の売上金入金機1のいずれを利用した場合であっても、該当するレジの引渡済金額を確認できる必要がある。このため、各売上金入金機1の本体制御部80は、操作者のIDカードのカードIDを受け付けたならば、このカードIDからレジIDを特定し、このレジIDに対応する各売上金入金機1の引渡済金額の合計を所定の期間(例えば、「30秒」)操作表示部88に表示制御するよう構成する。具体的には、複数の売上金入金機1を通信可能に接続し、自装置内の引渡済金額データ94bを他の売上金入金機1に通知するよう構成すれば、各売上金入金機1の本体制御部80は、レジIDに対応する各売上金入金機1の引渡済金額の合計を算定することが可能となる。また、複数の売上金入金機1を通信可能に接続するとともに、複数の売上金入金機1のうちの1台を親機とし、この親機が子機となる売上金入金機1の引渡済金額を取得し、IDカードを受け付けた売上金入金機1が親機に引渡済金額の合計を要求し、親機が該当する売上金入金機1に対して引渡済金額の合計を通知するよう構成した場合にも、本体制御部80が、レジIDに対応する各売上金入金機1の引渡済金額の合計を取得することが可能となる。さらに、複数の売上金入金機1を所定のサーバ装置と通信可能に接続するとともに、サーバ装置が各売上金入金機1の引渡済金額を取得し、IDカードを受け付けた売上金入金機1がサーバ装置に引渡済金額の合計を要求し、サーバ装置が該当する売上金入金機1に対して引渡済金額の合計を通知するよう構成した場合にも、本体制御部80が、レジIDに対応する各売上金入金機1の引渡済金額の合計を取得することが可能となる。なお、複数の売上金入金機1が存在し、操作者により操作された売上金入金機1に売上金を引渡処理(入金処理)できない場合に、どの売上金入金機1に貨幣を入金できるかを通知することもできる。
なお、上記の実施例では、所定の時間(例えば、「30秒」)経過後に引渡処理画面から貨幣計数画面に切り換えることとしたが、操作者による操作(計数ボタン、戻るボタン)によって画面を切り替える方策を併用することもできる。
また、操作者の選択により、引渡処理画面に含まれる項目を貨幣計数画面に表示するよう構成することもできる。ただし、引渡済金額については、長時間表示させることが望ましくないため、原則として、この引渡済金額については貨幣計数画面に表示できないものとする。ただし、この引渡済金額については貨幣計数画面に一定時間(例えば、「30秒」)のみ表示するよう構成することもできる。
また、本実施例では、新たに硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納できる貨幣の枚数(上限枚数から収納済み枚数を差し引いた枚数)を引渡処理画面に表示することとしたが、所定の操作がなされた場合に、「硬貨収納カセット40及び紙幣収納カセット70に収納された収納済みの貨幣の枚数」を表示するよう構成することもできる。この場合は、操作者自身が、上限枚数から収納済みの貨幣の枚数を減算して、収納可能な貨幣の枚数を判断することになる。
また、本実施例では、カードIDにより操作者が「管理者」であると判定された場合に、全てのレジの引渡済金額及びその合計金額を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示制御することとしたが、操作者が「管理者」であると判定された場合に、締め処理時にバックアップした過去の引渡済金額を含む引渡処理画面を操作表示部88に表示制御することもできる。
また、売上金入金機1がレジに所在するPOS端末又はレジ釣銭機と接続されている場合に、POS端末又はレジ釣銭機が算定した引渡済金額と売上金入金機1に引き渡された引渡済金額とが異なるならば、この引渡済金額を例えば赤字にして強調表示することもできる。
なお、本実施例では、説明の便宜上、磁気カードリーダ90により磁気カード92に磁気記録されたカードIDを読み取る場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ICカードリーダによりICカードに記憶されたカードID等を読み取る場合に適用することもできる。
また、本実施例の売上金入金機1においては、操作表示部86、88を同一の形状及び大きさとした場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、操作表示部86、88の形状や大きさを互いに異ならせることもできる。また、各操作表示部86、88を並列に配置した場合を示したが、各操作表示部86、88の配置を並列以外としてもよい。
また、本実施例では、複数の操作表示部86、88のうち少なくとも1つの操作表示部(具体的には、右側の操作表示部88)が、操作者により操作可能であることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、左側の操作表示部86をタッチパネルとして、操作者により操作可能としてもよい。