JP6718223B2 - スクロール流体機械 - Google Patents
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Description
このピン−リング式の自転防止機構を備えるスクロール流体機械について、特許文献1は、リングの内径を、ピンとリングで決まるピンの旋回半径ρsが、固定スクロールのラップ面と旋回スクロールのラップ面との噛み合いで決まる旋回スクロールの理論旋回半径ρthよりも大きくなるようにするとともに、リング又はピンが、固定スクロールに対する旋回スクロールのねじれを低減させる方向にずらすことを提案している。
特許文献1によれば、旋回半径ρsが理論旋回半径ρthよりも大きくなるように設定されているので、固定スクロールのラップ面と旋回スクロールのラップ面とが噛み合わなくなることを防止できる。また、リングまたはピンが、固定スクロールに対する旋回スクロールのねじれを低減させる方向にずらされているので、旋回スクロールのねじれを最小限に抑えることができる。
ピン−リング式の自転防止機構を備えるスクロール流体機械を組み立てる際には、ピンがリングの内部に挿入される必要がある。例えば、ピンが旋回スクロールに設けられ、リングがスクロール流体機械のハウジングに設けられているものとすると、旋回半径が可変の場合には、ピンとリングの間に位置ずれがあったとしても、旋回スクロールを径方向に変位させて調整することにより、ピンをリングの内部に挿入することができる。ところが、旋回半径が不変の場合には、旋回スクロールを変位して調整することはできない。
以上より、本発明は、旋回スクロールの旋回半径が不変のスクロール流体機械において、自転防止機構を担うピンとリングを確実に挿入することを目的とする。
本発明のスクロール流体機械は、自転防止機構が、複数のピンと、複数のピンのそれぞれが挿入される複数の係合穴と、が係合されるものである。
また、本発明のスクロール流体機械は、主軸における偏心軸の旋回半径をρs、ピンと係合穴で決まるピンの旋回半径をρpinとすると、ρs< ρpin を満足することを特徴とする。
ρs < ρpin であって、かつ、ρs <ρth を満足する、ことが好ましい。
ρs < ρpin ≦ ρth である、ことが好ましい。
ρs < ρth <ρpin である、ことが好ましい。
スクロール型圧縮機10は、図1に示すように、フロントハウジング11とリアハウジング12とを備え、これらフロントハウジング11とリアハウジング12とをボルト(図示省略)により一体的に締め付け固定したハウジング13を備えている。ハウジング13の内部には、スクロール圧縮機構を構成する旋回スクロール22、固定スクロール24などが収容される。
なお、メイン軸受15とサブ軸受16との間には、メカニカルシール19が設けられており、これによってハウジング13内と大気との間を気密にシールしている。
また、偏心軸14cには、バランスブッシュ20及びドライブ軸受21を介して、旋回スクロール22が連結されており、主軸14が回転すると旋回スクロール22が公転旋回運動する。
偏心軸14cの中心軸線L2と主軸14の回転軸線L1の間隔が、主軸における偏心軸14cの旋回半径ρsをなす。
固定スクロール24は、固定端板24aと、この固定端板24aから立設された渦巻状の固定ラップ24bとを備えており、一方、旋回スクロール22は、旋回端板22aと、この旋回端板22aから立設された渦巻状の旋回ラップ22bとを備えている。
また、旋回スクロール22は、フロントハウジング11に形成されているスラスト受面11bに旋回端板22aの背面が支持されており、このスラスト受面11bと旋回スクロール22の背面との間に介装される自転防止機構としてのピン−リング機構27により、旋回スクロール22は、自転を阻止されながら固定スクロール24に対して公転旋回運動されるように構成されている。
なお、旋回スクロール22の旋回半径が不変のスクロール型圧縮機10は、互いの接触により旋回ラップ22b及び固定ラップ24bの破損を防止するために、旋回ラップ22bと固定ラップ24bの間には微小な隙間が設けられている。
ピン27aの中心軸線L3及びリング27bの中心軸線L4の間隔が、ピンと係合穴で決まるピンの旋回半径ρpinをなし、ピン27aは旋回スクロール22の旋回運動に伴って、旋回半径ρpinの旋回運動をする。
なお、これらピン穴11c及びリング穴27cは、周方向に複数箇所、本実施形態では4箇所であるが、3箇所ないし6箇所の範囲で設けることができる。
また、固定スクロール24の旋回端板24aの背面には、リアハウジング12の内面に密接されるようOリング等のシール部材(図示省略)が設置され、リアハウジング12との間でハウジング13の内部空間(密閉空間)から区画された吐出チャンバ29が形成されている。これにより、吐出チャンバ29を除くハウジング13の内部空間が、吸入チャンバ30として機能するようになっている。
なお、フロントハウジング11とリアハウジング12との間の接合面には、Oリング等のシール部材が設けられ、ハウジング13内の吸入チャンバ30を大気から気密にシールしている。
電磁クラッチECは、外部の制御コントローラからの指令に基づき、電磁コイル41への通電がON・OFFされる。例えば、空気調和装置がOFF状態からON状態に切り替えられたときには、外部の制御コントローラからの指令に基づいて電磁コイル41への通電がONとなる。これにより、電磁コイル41の磁力によりアーマチャ42とロータ43とを一体結合させ、外部駆動源から伝達された回転駆動力が主軸14に伝達される。
外部駆動源からプーリ18に伝達された回転駆動力が、電磁クラッチECを介して主軸14の入力軸14aに入力され、主軸14を回転させる。すると、主軸14の偏心軸14cにバランスブッシュ20、駆動ブッシュ14d及びドライブ軸受21を介して連結されている旋回スクロール22が、ピン−リング機構27により自転を阻止されながら、固定スクロール24に対して公転旋回運動される。なお、この主軸14の駆動機構は一例であり、例えば駆動源としてロータとステータを有する電動モータをハウジング13の中に設け、このロータにより主軸14を直接的に回転する機構を採用できる。
ρs < ρpin … 式(1)
以下、この関係について、図2及び図8を参照して説明する。なお、図8は、旋回半径ρsと旋回半径ρpinが、本実施形態とは逆の関係にある式(2)を満足する例を示している。
ρs > ρpin … 式(2)
前述したように、ピン−リング機構27のピン27aは旋回スクロール22の旋回端板22aに固定されており、旋回スクロール22は主軸14の偏心軸14cの旋回に従って旋回運動する。したがって、ピン27aも偏心軸14cの旋回に伴って旋回運動を行い、このときのピン27aの旋回半径はρsである。スクロール型圧縮機10を組み立てるに際して、このことを当てはめると、ピン27aは旋回スクロール22の位置に応じて旋回半径ρsの円周上を動き得る。
一方で、ピン27aは、リング27b、つまり係合穴の内部に挿入されることでピン−リング機構27を構成するが、ピン−リング機構27におけるピン27aの旋回半径はρpinであるから、スクロール型圧縮機10の組立の際には、ピン27aが旋回半径ρpinの範囲に収まることが必要である。ピン27aは旋回半径ρsの円周上を動き得るから、ピン27aをリング27bの係合穴に挿入するためには、旋回半径ρsより旋回半径ρpinが大きいという式(1)を満足する必要がある。
図2は、旋回スクロール22が、破線矢印で示すように、図中の右側に存在していることを前提としている。この破線矢印が旋回スクロール22の存在位置を示していることは、以下も同様である。
なお、ピン27a、リング27bを含む各部材を誤差なく製作できれば、式(3)に示すように、旋回半径ρsと旋回半径ρpinが等しい場合にも、ピン27aをリング27bに挿入することができる。しかし、現実には各部材を誤差なく作製することは困難であるから、本実施形態は、旋回半径ρsより旋回半径ρpinが大きいことを条件とする。
ρs = ρpin … 式(3)
なお、旋回半径ρsよりも旋回半径ρpinをどの程度まで大きくするかは、スクロール型圧縮機10の寸法などによって一概に定まるものではないが、ピン27aとリング27bが旋回スクロール22の自転を防止するという機能を担うことができる範囲を基準に定められる。
ρpin − ρs < δm × Rpin / b … 式(A)
ρpin:ピン27aの旋回半径
ρs:偏心軸14の旋回半径
δm:初期の旋回スクロール22と固定スクロール24のラップ面の隙間
b:インボリュート曲線の基礎円半径
α:旋回スクロール22と固定スクロール24のねじれ角
Rpin:偏心軸14の中心から、ピン27aの中心まであるいはリング27bの中心までの距離
初期の固定スクロール24と旋回スクロール22の両者のラップ面の隙間をδmとする。
例えば、固定スクロール24及び旋回スクロール22のラップ面がインボリュート曲線で創成されているとすると、その基礎円半径をbとし、固定/旋回スクロールのねじれ量をα(rad)とすると、固定スクロールと旋回スクロールの隙間は、一方(固定腹側)がb×αだけ小さくなり、他方(固定背側)がb×αだけ広くなる。
従って、スクロールのねじれの最大許容値は下記の式(B)を満たす必要がある。
δm>b × α … 式(B)
また、スクロールのねじれαは、初期のρpinとρsの設定値Δ(Δ=ρpin−ρs)とピンリングの設置位置半径Rpinで決まり、その関係は式(C)で表される。
α=Δ/Rpin … 式(C)
従って、式(B)、(C)より、上記の式(A)が規定され、この式(A)を満たせば、スクロールラップ面が理論上は接触しなくなる。
スクロール型圧縮機10は、旋回スクロール22の旋回運動に伴って、旋回スクロール22には回転方向にねじるモーメントが作用する。例えば、図3(a)に示すように、旋回スクロール22が右回り(時計回り)に回転Rする場合には、旋回スクロール22には右回りのモーメントが作用する。ピン27aは、式(1)を満足しているので、リング27bの内壁との間にρpin−ρsに相当する間隙が設けられているので、その分だけ、旋回スクロール22は固定スクロール24に対して回転するので、ねじれαが生じる。
圧縮室Cをシールする固定スクロール24の背側のラップ面の隙間と腹側のラップ面の隙間が変化し、スクロール型圧縮機10の圧縮性能を低下させるおそれがある。ちなみに、図3(a)に示すように、旋回スクロール22が右回りにねじれると、固定スクロール24の背側のラップ面の隙間が腹側のラップ面の隙間より大きくなり、旋回スクロール22が左回りにねじれると、固定スクロール24の背側のラップ面の隙間より腹側のラップ面の隙間が大きくなる。
ここで、固定スクロール24の背側のラップ面の隙間とは、旋回スクロール22の腹側のラップ面との間の隙間(図4の(3),(4)で示される)であり、固定スクロール24の腹側のラップ面の隙間とは、旋回スクロール22の背側のラップ面との間の隙間(図4の(1),(2)で示される)である。
前述したように、旋回スクロール22にねじれが生じると、固定スクロール24の腹側及び背側の隙間に不均一が発生する。
例えば、図4に示すように、旋回スクロール22が左向きにねじれると、固定スクロール24の腹側((1),(2)の矢印が示す側)の隙間は広くなり、背側((3),(4)の矢印が示す側)の隙間が狭くなる。通常、旋回スクロール22及び固定スクロール24は腹側及び背側ともに、インボリュート曲線に従う理論曲線(図4の実線)に従って形成されている。そこで、本実施形態においては、背側及び腹側の形状を、理想曲線とするのではなく、ねじれに対応する形状に形成することを提案する。つまり、図4に二点鎖線で示すように、ねじれにより隙間が広がる固定スクロール24の腹側は、隙間を狭くするように理論曲線より増肉(24d)し、逆に、ねじれにより隙間が狭くなる固定スクロール24の背側は、隙間が広がるように理論曲線より減肉(24e)する。なお、図4は、増肉(24d)及び減肉(24e)を示すことを主たる目的としており、増肉(24d)及び減肉(24e)によりラップ面同士が接触しているものの、それは例示であり、本発明を限定する要素ではない。
なお、増肉及び減肉をどの程度するかは、スクロール型圧縮機10の仕様に応じて定めればよい。
そこで、本実施形態は好ましくは、図5に示すように、ρs < ρpin…式(1)で、かつ、ρs<ρth…式(4)を満足する。なお、ρthは、旋回スクロール22と固定スクロール24の噛み合いで決まる旋回スクロール22の理論旋回半径である。
式(4)を満足することにより、旋回スクロール22と固定スクロール24の接触を確実に回避することができる。
ρpin ≦ ρth …式(5)
ρpin > ρth …式(6)
なお、式(5)を式(1)に加えると、ρs < ρpin≦ ρth …式(7)と表記でき、式(6)を式(1)に加えると、ρs < ρth < ρpin …式(8)と表記できる。
また、式(6)が選択された場合を図7に示すが、旋回スクロール22と固定スクロール24の初期隙間δmを小さくできるため、スクロール型圧縮機10の性能低下を抑えることができる。
例えば、スクロール型圧縮機10は、旋回スクロール22にピン27aを設け、固定スクロール24にリング27bを有することで係合穴を設けたが、ピン27aを固定スクロール24の側に設け、係合穴を旋回スクロール22の側に設けることもできる。この場合の係合穴は、リング27bを設けることなく、旋回スクロール22の旋回端板22aに直接的に設けることもできる。
また、本実施形態はピン−リング式の自転防止機構の中で、一つのピンが一つのリング(係合穴)に係合される機構を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば特許文献2に示されるように、複数(例えば二つ)のピンが一つのリングに係合される自転防止機構にも適用することができる。
また、本実施形態はピン−リング式の自転防止機構の中で、ピンの位置が固定される機構を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば特許文献3に示されるように、ピンの半径方向の変位を許容しつつ最大変位を規制する自転防止機構にも適用することができる。
11 フロントハウジング
11a 小径ボス部
11b スラスト受面
11c ピン穴
12 リアハウジング
13 ハウジング
14 主軸
14a 入力軸
14b 大径軸部
14c 偏心軸
14d 駆動ブッシュ
15 メイン軸受
16 サブ軸受
17 軸受
18 プーリ
19 メカニカルシール
20 バランスブッシュ
20a バランスウェイト
21 ドライブ軸受
22 旋回スクロール
22a 旋回端板
22b 渦巻状ラップ
23 スクロール型圧縮機構
24 固定スクロール
24a 固定端板
24b 渦巻状ラップ
24c 吐出ポート
25 ボルト
26 ボス部
27 ピン−リング機構
27a ピン
27b リング
27c リング穴
28 リテーナ
29 吐出チャンバ
30 吸入チャンバ
41 電磁コイル
43 ロータ
C 圧縮室
L1 回転軸線
L2 中心軸線
L3 中心軸線
L4 中心軸線
EC 電磁クラッチ
ρpin 旋回半径
ρs 旋回半径
Claims (6)
- 固定スクロールと、
前記固定スクロールに対して公転旋回運動するとともに、前記固定スクロールとの間に流体を圧縮する圧縮空間を形成するように組み合わされた旋回スクロールと、
駆動力が入力される入力軸と、前記入力軸に対して所定量だけ偏心し、駆動力を前記旋回スクロールに伝達する偏心軸と、を有する主軸と、
前記旋回スクロールとハウジングの間に設けられる前記旋回スクロールの自転防止機構と、が前記ハウジングに収容され、
前記自転防止機構は、
複数のピンと、複数の前記ピンのそれぞれが挿入される複数の係合穴と、が係合され、
前記主軸における前記偏心軸の旋回半径をρs、前記ピンと前記係合穴で決まる前記ピンの旋回半径をρpinとすると、
ρs < ρpin を満足し、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの少なくとも一方は、
背側のラップ面及び腹側のラップ面が、理論曲線に対して、隙間が広くなる方は狭くなるように増肉され、隙間が狭くなる方は広くなるように減肉されている、
ことを特徴とするスクロール流体機械。 - 前記ピンまたは前記係合穴が、
前記固定スクロールに対する前記旋回スクロールのねじれを低減させる方向にずらされている、
請求項1に記載のスクロール流体機械。 - 前記固定スクロールの前記ラップ面と前記旋回スクロールの前記ラップ面との噛み合いで決まる理論旋回半径をρthとすると、
ρs < ρpin であって、かつ、ρs <ρth を満足する、
請求項1または請求項2に記載のスクロール流体機械。 - 前記ピンまたは前記係合穴が、
前記固定スクロールに対する前記旋回スクロールのねじれを低減させる方向にずらされており、
前記固定スクロールの前記ラップ面と前記旋回スクロールの前記ラップ面との噛み合いで決まる理論旋回半径をρthとすると、
ρs < ρpin ≦ρth である、
請求項1または請求項2に記載のスクロール流体機械。 - 前記固定スクロールの前記ラップ面と前記旋回スクロールの前記ラップ面との噛み合いで決まる理論旋回半径をρthとすると、
ρs < ρth <ρpin である、
請求項1または請求項2に記載のスクロール流体機械。 - 前記旋回スクロールの理論旋回半径ρthが不変である、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のスクロール流体機械。
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