以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1おける電池について図1を用いて説明する。実施の形態1における電池は、正極101と、負極102と、電解質103とを備える。正極101は、複数のナノ構造体から構成された三次元ネットワーク構造の共連続体から構成されている。
電解質103は、正極101と負極102とに挾まれて配置されて塩から構成されている。例えば、電解質103は、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムのいずれかまたはこれらの混合物の水溶液から構成されていればよい。電解質103を塩から構成しているので、処分が容易である。また、周辺環境への影響の懸念がなく、取り扱いが容易である。
例えば、複数のナノ構造体が非共有結合によって一体とされて三次元ネットワーク構造とされ、共連続体となっている。共連続体は、多孔体であり、一体構造とされている。ナノ構造体は、ナノシートあるいはナノファイバーである。複数のナノ構造体が非共有結合によって一体とされている三次元ネットワーク構造の共連続体は、ナノ構造体同士の結合部が変形可能とされており、伸縮性を有した構造となっている。
ここで、複数のナノ構造体の各々は、カーボン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、硫化モリブデンの少なくとも1つから構成されたナノシートである。硫化モリブデン化合物は、例えば、二硫化モリブデン、リンドープ硫化モリブデンなどである。これらの材料の元素は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)から構成されていれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
ナノシートは導電性を有することが重要である。ナノシートは、厚さが1nmから1μmであり、平面縦横長さが、厚さの100倍以上のシート状物質と定義する。例えば、カーボンによるナノシートとしてグラフェンがある。また、ナノシートは、ロール状、波状であっても良く、ナノシートが湾曲や屈曲していても良く、どのような形状であってもよい。
また、複数のナノ構造体の各々は、カーボン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、硫化モリブデン、およびセルロース(炭化したセルロース)の少なくとも1つから構成されたナノファイバーである。これらの材料の元素は、植物生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)から構成されていれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
ナノファイバーも導電性を有することが重要である。ナノファイバーは、直径が1nmから1μmであり、長さが直径の100倍以上の繊維状物質と定義する。また、ナノファイバーは、中空状、コイル状であっても良く、どのような形状であってもよい。なお、セルロースについては、後述するように、炭化により導電性を持たせて用いる。
例えば、まず、ナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを凍結させて凍結体とし(凍結工程)、この凍結体を真空中で乾燥させる(乾燥工程)ことで、正極101とする共連続体を作製することができる。鉄酸化物,マンガン酸化物、シリコン,セルロースのいずれかによるナノファイバーが分散したゲルであれば、所定のバクテリアに生産させることができる(ゲル生産工程)。
また、所定のバクテリアに、セルロースによるナノファイバーが分散したゲルを生産させ(ゲル生産工程)、このゲルを不活性ガスの雰囲気で加熱して炭化することで、共連続体を得る(炭化工程)ようにしてもよい。
正極101を構成する共連続体は、例えば、平均孔径が0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることが更に好ましい。ここで、平均孔径は、水銀圧入法により求めた値である。
正極101には、カーボン粉末を用いた場合のようなバインダーなどの追加の材料を用いる必要がなく、コスト的に有利であり環境面でも有利である。
なお、電池は、例えば、正極101を空気極とする空気電池である。また、電池は、例えば、正極101における活物質を水とする水電池である。負極102は、例えば、マグネシウム、亜鉛、鉄、アルミニウムのいずれかの金属を含むものであればよい。ここで、正極101は、触媒を担持しているとよい。触媒は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、またはカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属の酸化物から構成されていればよい。
以上に説明したように、実施の形態1における電池によれば、正極を複数のナノ構造体から構成された三次元ネットワーク構造の共連続体から構成し、電解質を塩から構成したので、処分が容易である。また、実施の形態1における電池によれば、周辺環境への影響の懸念がなく、取り扱いが容易である。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2における電池について、図2A,図2Bを用いて説明する。
実施の形態2における電池は、ガス拡散型の空気極(正極)111と、負極112と、電解質113とを備える空気電池である。空気極111は、複数のナノ構造体から構成された三次元ネットワーク構造の共連続体から構成されている。負極112は、亜鉛またはマグネシウムを含んで構成されている。負極112は、鉄(Fe)またはアルミニウム(Al)を含んで構成されていてもよい。
電解質113は、空気極111と負極112とに挾まれて配置されて塩から構成されている。例えば、電解質113は、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムのいずれかまたはこれらの混合物の水溶液から構成されていればよい。電解質113を塩から構成しているので、処分が容易である。また、周辺環境への影響の懸念がなく、取り扱いが容易である。
なお、空気極111の一方の面は大気に曝され、他方の面は電解質113と接する。また、負極112の電解質113の側の面は、電解質113と接する。なお、電解質113は、電解液または固体電解質のいずれであってもよい。電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。また、固体電解質とは、電解質がゲル形態または固体形態である場合をいう。
上述した共連続体は、例えば、複数のナノ構造体が非共有結合によって一体とされて三次元ネットワーク構造とされている。共連続体は、多孔体であり、一体構造とされている。ナノ構造体は、ナノシートあるいはナノファイバーである。複数のナノ構造体が非共有結合によって一体とされている三次元ネットワーク構造の共連続体は、ナノ構造体同士の結合部が変形可能とされており、伸縮性を有した構造となっている。
ここで、複数のナノ構造体の各々は、カーボン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、硫化モリブデンの少なくとも1つから構成されたナノシートである。硫化モリブデン化合物は、例えば、二硫化モリブデン、リンドープ硫化モリブデンなどである。これらの材料の元素は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)から構成されていれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
ナノシートは導電性を有することが重要である。ナノシートは、厚さが1nmから1μmであり、平面縦横長さが、厚さの100倍以上のシート状物質と定義する。例えば、カーボンによるナノシートとしてグラフェンがある。また、ナノシートは、ロール状、波状であっても良く、ナノシートが湾曲や屈曲していても良く、どのような形状であってもよい。
また、複数のナノ構造体の各々は、カーボン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、硫化モリブデン、およびセルロース(炭化したセルロース)の少なくとも1つから構成されたナノファイバーである。これらの材料の元素は、植物生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)から構成されていれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
ナノファイバーも導電性を有することが重要である。ナノファイバーは、直径が1nmから1μmであり、長さが直径の100倍以上の繊維状物質と定義する。また、ナノファイバーは、中空状、コイル状であっても良く、どのような形状であってもよい。なお、セルロースについては、後述するように、炭化により導電性を持たせて用いる。
例えば、まず、ナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを凍結させて凍結体とし(凍結工程)、この凍結体を真空中で乾燥させる(乾燥工程)ことで、空気極111とする共連続体を作製することができる。鉄酸化物,マンガン酸化物、シリコン,セルロースのいずれかによるナノファイバーが分散したゲルであれば、所定のバクテリアに生産させることができる(ゲル生産工程)。
また、所定のバクテリアに、セルロースによるナノファイバーが分散したゲルを生産させ(ゲル生産工程)、このゲルを不活性ガスの雰囲気で加熱して炭化することで、共連続体を得る(炭化工程)ようにしてもよい。
空気極111を構成する共連続体は、例えば、平均孔径が0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることが更に好ましい。ここで、平均孔径は、水銀圧入法により求めた値である。
空気極111には、カーボン粉末を用いた場合のようなバインダーなどの追加の材料を用いる必要がなく、コスト的に有利であり環境面でも有利である。
ここで、空気極111およびマグネシウムを含んで構成した負極112における電極反応について説明する。空気極反応は、導電性を有する空気極111の表面において、空気中の酸素および電解質が接することで、「1/2O2+H2O+2e-→2OH-・・・(1)」で示す反応が進行する。一方、負極反応は、電解質113に接している負極112において「Mg→Mg2++2e-・・・(2)」の反応が進行し、負極112を構成しているマグネシウムが電子を放出し、電解質113中にマグネシウムイオンとして溶解する。
これらの反応により、放電を行うことが可能である。全反応は、「Mg+1/2O2+H2O+2e-→Mg(OH)2・・・(3)」となり、水酸化マグネシウムが生成(析出)する反応である。理論起電力は約2.7Vである。以上の反応に関わる化合物を、図2Aの構成要素と共に示している。
次に、空気極111および亜鉛を含んで構成した負極112における電極反応について説明する。空気極反応は、導電性を有する空気極111の表面において、空気中の酸素および電解質が接することで、「O2+2H2O+4e-→4OH-・・・(4)」の反応によりO2が還元されてOH-が生成する。負極反応は、電解質113に接している負極112において「2Zn+4OH-→2ZnO+2H2O+4e-・・・(5)」の反応が進行し、亜鉛が酸化されて酸化亜鉛として析出する。これらの反応により、放電を行うことが可能である。全反応は、「2Zn+O2→2ZnO」となり、酸化亜鉛が生成する反応である。理論起電力は約1.65Vである。以上の反応に関わる化合物を、図2Bの構成要素と共に示している。
このように、空気電池は、空気極111の表面において式(1)や式(4)で示す反応が進行するため、これらの反応サイトを空気極111の内部に多量に生成する方がよいものと考えられる。
正極である空気極111は、カーボン粉末をバインダーで成形するといった公知のプロセスで作製することができるが、上述した通り、空気電池では、空気極111内部に反応サイトを多量に生成することが重要であり、空気極111は、高比表面積であることが望ましい。例えば、本発明においては、空気極111を構成する共連続体の比表面積が200m2/g以上であることが好ましく300m2/g以上であることがより好ましい。
カーボン粉末をバインダーで成形してペレット化することで作製している従来の空気極の場合、高比表面積化した際に、カーボン粉末同士の結着強度が低下し、構造が劣化することで、安定して放電することが困難であり、放電容量が低下する。
これに対し、前述したように複数のナノ構造体が非共有結合によって一体とされている三次元ネットワーク構造の共連続体により構成した空気極111によれば、上述した従来の問題が解消でき、放電容量を高くできるようになる。
また、空気極111は、触媒を担持していてもよい。触媒は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、あるいは、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属からなる金属酸化物から構成されていればよい。なお、これらの材料の元素は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素に含まれる金属から構成され、触媒能を有していれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。金属としては、鉄、マンガン、亜鉛が好ましく、これらの1つからなる酸化物または2つ以上からなる複合酸化物が好ましい。また、特に、酸化マンガン(MnO2)が好適である。酸化マンガンは、本発明において特に優れた触媒性能を示すので好ましい。
また、触媒とする金属酸化物は、水和物としたアモルファス状のものであることも好ましい。例えば、上述した遷移金属酸化物の水和物であればよい。より具体的には、酸化マンガン(IV)−n水和物であればよい。なお、nは、1molのMnO2に対するH2Oのモル数である。空気極111を構成する共連続体の表面に、酸化マンガンの水和物を、ナノサイズの微粒子として高分散で担持させることで、優れた電池性能とすることが可能となる。
例えば、空気極111の共連続体上に、酸化マンガン水和物(MnO2・nH2O)をナノサイズの微粒子として高分散で付着させた(添加した)ものを空気極111として使用することで、優れた電池性能を示すことが可能となる。空気極111に含まれる触媒の含有量は、空気極111の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。空気極111に、遷移金属酸化物を触媒として添加することによって、電池性能は大きく向上する。空気極111中に電解質113の電解液が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、上述したような電解液−電極−ガス(酸素)の三相界面が形成される。この三相界面サイトにおいて、触媒が高活性であれば、電極表面における酸素還元(放電)が円滑に進行し、電池性能は大きく向上することになる。
このような触媒は、正極活物質である酸素との相互作用が強いので、多くの酸素種を自身の表面に吸着でき、または酸素空孔内に酸素種を吸蔵することができる。
このように、触媒を構成する金属酸化物表面上に吸着された、または酸素空孔内に吸蔵された酸素種は、上記式(1)または式(4)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。このように、酸化マンガンなどの金属酸化物は、触媒として有効に機能する。このような金属酸化物の他、金属自体を触媒とすることもでき、金属も上記金属酸化物と同様に機能する。
空気電池では、上述した通り、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位[上記の電解液/電極/空気(酸素)の三相部分]がより多く存在することが望ましい。このような観点から、上述の三相部位が触媒の表面にも多量に存在することが重要であり、触媒は比表面積が高い方が好ましい。金属または金属酸化物による触媒の比表面積は、0.1〜1000m2/g、好ましくは1〜500m2/gであればよい。なお、比表面積は、公知のN2吸着によるBET法により求めた比表面積である。
触媒を添加した空気極111は、後述する正極の製造方法により製造することができる。
次に、負極112について説明する。負極112は負極活物質から構成する。この負極活物質は、空気電池の負極材料として用いることができる材料、つまり、金属マグネシウム、マグネシウム含有物質、金属亜鉛、亜鉛含有物質を含むものであれば特に限定されない。
例えば、負極112は、金属マグネシウム、金属マグネシウムのシート、または、マグネシウム粉末を銅などの金属箔に圧着したものなどから構成すればよい。また例えば、負極112は、金属亜鉛、金属亜鉛のシート、または亜鉛粉末を銅などの金属箔に圧着したものなどから構成すればよい。
負極112は、公知の方法で形成することができる。例えば、マグネシウム金属を負極112とする場合には、複数枚の金属マグネシウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極112を作製することもできる。また、例えば、亜鉛金属を負極112とする場合には、亜鉛板を所定の形状に成形することで、負極112を作製すればよい。なお、複数枚の金属亜鉛箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極112を作製することもできる。
次に、電解質113について説明する。電解質113は、空気極111(正極)および負極112の間で、負極112を構成する金属のイオン、および水酸化物イオンの移動が可能な物質であればよい。例えば、地球上に豊富に存在するカリウムやナトリウムが含まれる金属塩を挙げることができる。なお、この金属塩は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)や海水や雨水に含まれる元素から構成されていれば良い。また、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
電解質113は、前述したように、塩化ナトリウムや塩化カリウムから構成すればよい。カリウムは、肥料成分の中でも多量要素の1つであるため、仮に電解質が土壌に漏れ出たときの影響を与えないのみならず、肥料として機能するため、特に、塩化カリウムが好ましい。
また、電解質113を構成する他の材料として、亜鉛イオンおよび水酸化物イオンを通すイオン導電性を有する芳香族アニオン交換ポリマー固体電解質や無機層状化合物系固体電解質を用いても良い。
なお、空気電池は、上記構成に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えば銅メッシュ)などの構造部材、また、空気電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。セパレータとしては、繊維材料であれば特に限定されないが、植物繊維またはバクテリアからつくられるセルロース系セパレータが特に好ましい。
次に、製造方法について説明する。本発明の電池は、後述する正極の製造方法により得られる空気極111、負極112、電解質113を、所望の空気電池の構造に基づいた他の必要な要素と共に、ケースなどの適切な容器内に適切に配置することで作製することができる。これらの空気電池の製造手順は、従来知られている方法を適用することができる。
以下、空気極111の作製について説明する。
[製造方法1]
はじめに、実施の形態2における製造方法1について図3を用いて説明する。まず、ステップS101で、ナノシートやナノファイバーなどのナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを凍結させて凍結体を得る(凍結工程)。次に、ステップS102で、得られた凍結体を真空中で乾燥させて共連続体を得る(乾燥工程)。
以下、各工程についてより詳細に説明する。ステップS101の凍結工程は、非共有結合によって一体とされた複数のナノ構造体からなる三次元ネットワーク構造とされた伸縮性を有する共連続体の原料となるナノ構造体を用い、三次元ネットワーク構造を維持または構築する工程である。
ここで、ゲルとは、分散媒が分散質であるナノ構造体の三次元ネットワーク構造により流動性を失い固体状になったものを意味する。具体的には、ずり弾性率が102〜106Paである分散系を意味する。ゲルの分散媒は、水(H2O)などの水系または、カルボン酸、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、n−ブタノール、イソブタノール、n−ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系であり、これらから2種類以上を混合してもよい。
次に、ゾルとは、分散媒および分散質であるナノ構造体からなるコロイドを意味する。具体的には、ずり弾性率が1Pa以下である分散系を意味する。ゾルの分散媒は、水などの水系または、カルボン酸、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系であり、これらから2種類以上を混合してもよい。
凍結工程は、例えば、ナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを試験管のような適切な容器に収容し、液体窒素などの冷却材中で試験管の周囲を冷却することで、試験管に収容したゾルまたはゲルを凍結することで実施される。凍結させる手法は、ゲルまたはゾルの分散媒を凝固点以下に冷却ができれば、特に限定されるものではなく、冷凍庫などで冷却してもよい。
ゲルまたはゾルを凍結することで、分散媒が流動性を失い分散質が固定され、三次元ネットワーク構造が構築される。また、凍結工程では、ゲルまたはゾルの濃度を調整することで比表面積を自在に調整でき、ゲルまたはゾルの濃度を薄くするほど、得られる共連続体は高比表面積となる。ただし、濃度が0.01重量%以下となると、分散質が三次元ネットワーク構造を構築することが困難となるため、分散質の濃度は、0.01〜10重量%以下が好適である。
ナノファイバーまたはナノシートなどのナノ構造体で高比表面積な三次元ネットワーク構造を構築することで、圧縮または引張の際に、気孔がクッションの役割を果たし、優れた伸縮性を有する。具体的には、共連続体は、弾性限界での歪みが5%以上であることが望ましく、更に10%以上であることが更に望ましい。
凍結により分散質を固定しない場合、この後の乾燥工程において、分散媒の蒸発に伴い、分散質が凝集するため、十分な高比表面積を得ることができず、三次元ネットワーク構造を有する共連続体の作製は困難となる。
次に、ステップS102の乾燥工程について説明する。乾燥工程では、凍結工程で得た凍結体より、三次元ネットワーク構造を維持または構築した分散質(一体とされている複数の微細構造体)を分散媒から取り出す工程である。
乾燥工程では、凍結工程で得られた凍結体を真空中で乾燥させ、凍結した分散媒を固体状態から昇華させる。例えば、得られた凍結体をフラスコのような適切な容器に収容し、容器内を真空引きすることで実施される。凍結体を真空雰囲気下に配置することで、分散媒の昇華点が低下し、常圧では昇華しない物質においても昇華させることが可能である。
乾燥工程における真空度は、使用する分散媒によって異なるが、分散媒が昇華する真空度であれば特に制限されない。例えば、分散媒に水を使用した場合、圧力を0.06MPa以下とした真空度にする必要があるが、昇華潜熱として熱が奪われるため、乾燥に時間を有する。このため、真空度は1.0×10-6〜1.0×10-2Paが好適である。更に乾燥時にヒーターなどを用いて熱を加えても良い。
大気中で乾燥させる方法は、分散媒が固体から液体になり、この後、液体から気体になるため、凍結体が液体状態となり分散媒中で再び流動的になり、複数のナノ構造体の三次元ネットワーク構造が崩れる。このため、大気圧雰囲気での乾燥では、伸縮性を有する共連続体の作製は困難である。
[製造方法2]
次に、実施の形態2における製造方法2について図4を用いて説明する。
まず、ステップS201で、所定のバクテリアに、酸化鉄、酸化マンガン、またはセルロースのいずれかによるナノファイバーが分散したゲルを生産させる(ゲル生産工程)。このようにして得られたゲルを用いて共連続体を作製する。
バクテリアが産生するゲルは、nmオーダーのファイバーを基本構造としており、このゲルを用いて共連続体を作製することで、得られる共連続体は高比表面積を有するものとなる。前述したように、空気電池の空気極は高比表面積であることが望ましいため、バクテリアが生産したゲルを用いることは、好適である。具体的には、バクテリアが生産するゲルを用いることで比表面積が300m2/g以上を有する空気極(共連続体)の合成が可能である。
バクテリア産生ゲルは、ファイバーがコイル状や網目状に絡まった構造を有し、更にバクテリアの増殖に基づいてナノファイバーが分岐した構造を有しているため、作製できる共連続体は、弾性限界での歪みが50%以上という優れた伸縮性を実現する。従って、バクテリア産生ゲルを用いて作製した共連続体は、空気電池の空気極に好適である。
バクテリア産生ゲルとしては、バクテリアセルロース、酸化鉄、酸化マンガンの中から2種類以上を混合してもよい。
バクテリアは、公知のものが挙げられ、例えば、アセトバクター・キシリナム・サブスピーシーズ・シュクロファーメンタ、アセトバクター・キシリナムATCC23768、アセトバクター・キシリナムATCC23769、アセトバクター・パスツリアヌスATCC10245、アセトバクター・キシリナムATCC14851、アセトバクター・キシリナムATCC11142、アセトバクター・キシリナムATCC10821などの酢酸菌、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属、アゾトバクター属、ズーグレア属、エンテロバクター属、クリューベラ属、レプトスリックス属、ガリオネラ属、シデロカプサ属、チオバチルス属、並びにこれらをNTG(ニトロソグアニジン)などを用いる公知の方法によって変異処理することにより創製される各種変異株を培養することにより生産されたものであればよい。
上述したバクテリアにより生産させたゲルを用いて共連続体を得る方法としては、製造方法1同様に、ステップS202で凍結させて凍結体とし(凍結工程)、ステップS203で凍結体を真空中で乾燥させて共連続体とすればよい(乾燥工程)。ただし、バクテリアにより生産させたセルロースによるナノファイバーが分散したゲルを用いる場合、ステップS204で、作製した共連続体をセルロースが燃焼しないガスの雰囲気で加熱して炭化する(炭化工程)。
バクテリア産生ゲルに含まれる成分であるバクテリアセルロースは、導電性を有していないため、空気極として使用する際は、不活性ガス雰囲気下で熱処理して炭素化することで導電性を付与する炭化工程が重要となる。このようにして炭化した共連続体は、高導電性、耐腐食性、高伸縮性、高比表面積を有しており、空気電池の空気極として好適である。
バクテリアセルロースの炭化は、前述した凍結工程および乾燥工程により、バクテリアセルロースからなる三次元ネットワーク構造を有する共連続体を合成した後に、不活性ガス雰囲気中で500℃〜2000℃、より好ましくは、900℃〜1800℃で焼成して炭化すればよい。セルロースが燃焼しないガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであればよい。また、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスであってもよく、また、二酸化炭素ガスであってもよい。本発明では、カーボン材料に対し賦活効果を有し、共連続体の高活性化が期待できる二酸化炭素ガスまたは一酸化炭素ガスがより好ましい。
[製造方法3]
次に、実施の形態2における製造方法3について図5を用いて説明する。前述したように、空気極に触媒を担持させるとよい。ステップS301で、上述した製造方法1または製造方法2で得られた共連続体を、触媒の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸さる(含浸工程)。このようにして金属塩を含む伸縮性共連続体を調製したら、次に、ステップS302で、金属塩を含む伸縮性共連続体を加熱処理すればよい(加熱工程)。なお、使用する金属塩の好ましい金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。特に、マンガンが好ましい。
遷移金属酸化物を共連続体に担持するためには、従来知られている方法を用いることができる。例えば、共連続体を、遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液に含浸させて蒸発乾固した後、高温高圧化の水(H2O)中で水熱合成する方法がある。また、共連続体に、遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液を含浸させ、ここにアルカリ性水溶液を滴下する沈殿法がある。また、共連続体に遷移金属アルコキシド溶液に含浸させ、これを加水分解するゾルゲル法などがある。これらの液相法による各方法の条件は公知であり、これらの公知の条件を適用できる。本発明では、液相法が望ましい。
上記の液相法で担持される金属酸化物は、多くの場合、結晶化が進んでいないためアモルファス状態である。アモルファス状態の前駆体を、不活性の雰囲気で、500℃程度の高温で熱処理を行うことで、結晶性の金属酸化物を得ることができる。このような結晶性の金属酸化物は、空気極の触媒として用いた場合においても高い性能を示す。
一方、上記のアモルファス状の前駆体を100〜200℃程度の比較的低温で乾燥した場合に得られる前駆体粉末は、アモルファス状態を維持しつつ、水和物の状態となる。金属酸化物の水和物は、形式的に、MexOy・nH2O(ただし、Meは上記金属を意味し、xおよびyはそれぞれ金属酸化物分子中に含まれる金属および酸素の数を表し、nは1モルの金属酸化物に対するH2Oのモル数)と表すことができる。このような低温乾燥により得られた、金属酸化物の水和物を触媒として用いることができる。
アモルファス状の金属酸化物(水和物)は、焼結がほとんど進んでいないため、大きな表面積を有し、粒子径も30nm程度と非常に小さい値を示す。これは、触媒として好適であり、これを用いることで、優れた電池性能を得ることができる。
上述の通り、結晶性の金属酸化物は高い活性を示すが、上記のような高温での熱処理で結晶化させた金属酸化物は、表面積が著しく低下することがあり、粒子の凝集により粒子径も100nm程度となることがある。なお、この粒子径(平均粒径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで拡大観察し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた値である。
また、特に高温で熱処理を行った金属酸化物による触媒は、粒子が凝集するため、共連続体の表面に高分散で触媒を添加させることが困難なことがある。十分な触媒効果を得るためには、空気極(共連続体)中に金属酸化物を大量に添加しなければならない場合があり、高温の熱処理による触媒作製は、コスト的に不利となることがある。
この問題を解消するためには、以下の製造方法4,製造方法5,製造方法6を用いればよい。
[製造方法4]
次に、実施の形態2における製造方法4について図6を用いて説明する。
製造方法4では、製造方法1,製造方法2で説明したことにより作製した共連続体に、触媒を担持させる。製造方法4では、前述した共連続体の製造に加え、触媒を担持させる以下の触媒担持工程を加える。
まず、ステップS401の第1触媒担持工程で、共連続体を界面活性剤の水溶液に浸漬し、共連続体の表面に界面活性剤を付着させる。
次に、ステップS402の第2触媒担持工程で、金属塩の水溶液を用いて界面活性剤が付着した共連続体の表面に界面活性剤により金属塩を付着させる。
次に、ステップS403の第3触媒担持工程で、金属塩が付着した共連続体に対する熱処理により、金属塩を構成する金属または金属の酸化物からなる触媒を共連続体に担持させる。
なお、上記金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、あるいは、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属からなる金属酸化物である。特に、Mnまたは酸化マンガン(MnO2)が好ましい。
製造方法4の第1触媒担持工程で用いる界面活性剤は、空気極(共連続体)上に金属または遷移金属酸化物を高分散で担持するためのものである。界面活性剤のように、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基と遷移金属イオンが吸着する親水基を有していれば、共連続体に遷移金属酸化物前駆体である金属イオンを高い分散度で吸着させることができる。
上述した界面活性剤としては、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基とマンガンイオンが吸着する親水基を有していれば特に限定されないが、非イオン系の界面活性剤が好ましい。例えば、エステル型の界面活性剤として、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどがある。また、エーテル型の界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどがある。
また、エステルエーテル型の界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールなどがある。また、アルカノールアミド型の界面活性剤として、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEAなどがある。また、高級アルコールの界面活性剤として、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどがある。また、ポロキサマー型の界面活性剤として、ポロキサマージメタクリレートなどを挙げることができる。
製造方法4の第1触媒担持工程における界面活性剤の水溶液の濃度は、0.1〜20g/Lであることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度などの浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
製造方法4の第2触媒担持工程では、第1触媒担持工程における界面活性剤を含有する水溶液に、触媒として機能する金属塩を更に溶解するか、または金属塩の水溶液を加えることを含む。あるいは、上述の界面活性剤を含有する水溶液とは別に、触媒として機能する金属塩を溶解させた水溶液を調製し、これに、界面活性剤を含浸した(付着させた)共連続体を浸漬してもよい。
また、金属塩が溶解した水溶液を、界面活性剤を付着させた共連続体に含浸させてもよい。必要に応じて、得られた金属塩を含む(付着した)共連続体にアルカリ性水溶液を滴下してもよい。これらのことによって、金属または金属酸化物前駆体を共連続体に付着させることができる。
製造方法4の第2触媒担持工程における金属塩の添加量は、0.1〜100mmol/Lとなる量であることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度などの浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
より具体的には、金属としてマンガンを例にとって説明すれば、例えば、マンガン金属塩(例えば、塩化マンガンなどのハロゲン化マンガンやその水和物)を、界面活性剤を含有し、共連続体に含浸している水溶液に加える。次いで、得られたマンガン金属塩を含む共連続体にアルカリ性水溶液を滴下することで、金属または金属酸化物前駆体としての水酸化マンガンを、共連続体に担持させることができる。
上述した酸化マンガンによる触媒の担持量は、金属塩水溶液中の金属塩(例えば塩化マンガン)の濃度により調整できる。
また、上述のアルカリ性水溶液に使用するアルカリは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、アンモニウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液などを挙げることができる。これらのアルカリ性水溶液の濃度は、0.1〜10mol/Lであることが好ましい。
製造方法4における第3触媒担持工程では、共連続体の表面に付着させた金属または金属酸化物の前駆体(金属塩)を、熱処理により、金属自体または金属酸化物に転化する。
具体的には、前駆体が付着した共連続体を、室温(25℃程度)〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で1〜24時間乾燥させ、次いで100〜600℃、好ましくは110〜300℃で熱処理すればよい。
製造方法4における第3触媒担持工程では、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性雰囲気や還元性雰囲気で熱処理することで、金属自体を触媒として表面に付着させた共連続体による空気極を製造することができる。また、酸素を含むガス中(酸化性雰囲気)で熱処理することで、金属酸化物を触媒として表面に付着させた共連続体による空気極を製造することができる。
また、上述の還元条件下での熱処理を行い、一度、金属自体を触媒として付着させた共連続体を作製し、次いで、これを酸化性雰囲気で熱処理することで、金属酸化物を触媒として付着させた共連続体による空気極を製造することもできる。
別法として、金属または金属酸化物の前駆体(金属塩)が付着した共連続体を、室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で乾燥させ、共連続体上に金属自体を触媒として付着させ、金属/共連続体の複合体を作製してもよい。
製造方法4では、金属または金属酸化物による触媒の付着量(含有量)は、共連続体および触媒の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
製造方法4によれば、共連続体の表面に、金属または金属酸化物による触媒を高分散させた空気極を製造することができ、電気特性の優れた空気電池が構成できるようになる。
[製造方法5]
次に、実施の形態2における製造方法5について説明する。製造方法5では、製造方法1,製造方法2で説明したことにより作製した共連続体に、前述した製造方法4とは異なる方法で触媒を担持させる。製造方法5では、前述した共連続体の製造に加え、触媒を担持させる以下の触媒担持工程を加える。
第1触媒担持工程では、共連続体を金属塩の水溶液に浸漬して共連続体の表面に金属塩を付着させる。
次に、第2触媒担持工程では、金属塩が付着した共連続体に対する熱処理により、金属塩を構成する金属からなる触媒を共連続体に担持させる。
次に、第3触媒担持工程では、触媒が担持された共連続体を高温高圧の水に作用させることで触媒を金属酸化物の水和物とする。
なお、上記金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、あるいは、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属からなる金属酸化物である。特に、Mnまたは酸化マンガン(MnO2)が好ましい。
製造方法5における第1触媒担持工程では、最終的に触媒とする金属または金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液を、共連続体の表面に付着(担持)させる。例えば、上記金属塩を溶解した水溶液を別途調製し、この水溶液を共連続体に含浸させればよい。含浸の条件などは、前述したように従来と同じである。
製造方法5における第2触媒担持工程は、製造方法4の第3触媒担持工程と同様であり、不活性雰囲気または還元性雰囲気による加熱処理を実施すればよい。また、製造方法4の第3触媒担持工程の別法として説明した、前駆体が付着した共連続体を低温(室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃)で加熱処理(乾燥)することで、共連続体に金属を付着させてもよい。
金属自体を触媒として用いた空気極111は、高活性を示すが、触媒が金属であるため、腐食に弱く、長期安定性に欠ける場合がある。これに対し、金属を以下に詳述する製造方法5の第3触媒担持工程により、加熱処理して金属酸化物の水和物とすることで、長期安定性を実現することができる。
製造方法5の第3触媒担持工程では、金属酸化物の水和物が、共連続体に付着した状態とする。具体的には、製造方法5の第2触媒担持工程で得られた、金属が付着した共連続体を、高温高圧の水に浸漬させ、付着している金属を、金属酸化物の水和物からなる触媒に転化する。
例えば、金属が付着した共連続体を、100℃〜250℃、より好ましくは、150℃〜200℃の水に浸漬させ、付着している金属を酸化させて金属酸化物の水和物とすればよい。
大気圧下(0.1MPa)での水の沸点は100℃であるため、大気圧下では通常100℃以上の水に浸漬させることはできないが、所定の密閉容器を用い、この密閉容器内の圧力を、例えば、10〜50MPa、好ましくは25MPa程度まで上昇させることで、密閉容器内では、水の沸点が上昇し、100℃〜250℃の液体状の水を実現することができる。このようにして得た高温の水に、金属が付着した共連続体を浸漬すれば、金属を金属酸化物の水和物とすることができる。
[製造方法6]
次に、実施の形態2における製造方法6について説明する。製造方法6では、製造方法1,製造方法2で説明したことにより作製した共連続体に、前述した製造方法4、5とは異なる方法で触媒を担持させる。製造方法6では、前述した共連続体の製造に加え、触媒を担持させる以下の触媒担持工程を加える。
第1触媒担持工程では、共連続体を金属塩の水溶液に浸漬して共連続体の表面に金属塩を付着させる。
次に、第2触媒担持工程では、金属塩が付着した共連続体を高温高圧の水に作用させることで、金属塩を構成する金属による金属酸化物の水和物からなる触媒を共連続体に担持させる。
なお、上記金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属であればよい。
製造方法6における第1触媒担持工程は、製造方法5における第1触媒担持工程と同様であり、ここでは説明を省略する。
製造方法6における第2触媒担持工程は、共連続体の表面に付着させた前駆体(金属塩)を、比較的低温の熱処理により、金属酸化物の水和物に転化する。
具体的には、前駆体が付着した共連続体を、高温高圧の水に作用させた後に、100〜200℃程度の比較的低温で乾燥する。これにより、前駆体は、前駆体のアモルファス状態を維持しつつ、粒子中には水分子が存在する水和物となる。このような低温乾燥により得られた、金属酸化物の水和物を触媒として用いる。
製造方法6により作製される空気極では、金属酸化物の水和物が、共連続体上にナノサイズの微粒子の状態で、高分散で担持されうる。従って、このような共連続体を空気極とした場合、優れた電池性能を示すことが可能となる。
上記の各製造方法で得られた共連続体は、公知の手順で所定の形状に成形して空気極とすることができる。例えば、触媒未担持および触媒担持共連続体を板状体またはシートに加工し、得られた共連続体を打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより所望の直径(例えば23mm)の円形に切り抜いて空気極とすればよい。
以下、実験例を用いてより詳細に説明する。はじめに、実際に用いた電池の構成について図7A、図7Bを用いて説明する。
前述した実施の形態における空気極111、負極112、電解質113を使用する電池は、コイン形、円筒形、ラミネート形など従来の形状で作製することができる。これらの電池の製造方法は、従来と同様の方法を用いることができる。
図7A、図7Bに示すように、コインセル型の電池は、空気極111および負極112と、これらの間の電解質113とを備える。この場合の電解質113は、電解液を含浸したシート状のセパレータである。また、空気極111の側には空気極ケース201が配置され、負極112の側には、負極ケース202が配置される。空気極ケース201は開口201aを備え、空気極111に対して周囲の空気が接触可能とされている。
また、空気極ケース201と負極ケース202とは、嵌合され、嵌合している部分には、ガスケット203が配置されている。空気極111と負極112とで電解質113を挾んで電池セルとし、この電池セルを空気極ケース201と負極ケース202との間に配置し、空気極ケース201と負極ケース202とを嵌合させて一体とする。
また、図8に示すように、空気極111以外の電池セル内部を密閉する筐体300を用い、筐体300内に電池セルを収容してもよい。筐体300は、負極112の側に配置される第1筐体311と、空気極111の側に配置される第2筐体312とから構成されている。第2筐体312には、開口312aが形成され、空気極111に対して周囲の空気が接触可能とされている。また、第1筐体311と負極112との間には、負極集電体301が設けられ、第2筐体312と空気極111との間には、正極集電体302が設けられ、各々から端子が筐体300の外部に取り出されている。なお、負極112として金属を用いる場合は、負極集電体301を用いずに、負極112から直接端子を外部に取り出しても良い。
上述した構成の空気電池において、電解質113を、コーヒーフィルタやキッチンペーパー、濾紙のような吸水性を有する絶縁体のシートから構成するとよく、例えば、植物繊維からつくられるセルロース系セパレータのような、自然分解される材料のシートを電解質113に用いることが特に好ましい。
また、筐体300を、電池セルを内部に維持することが可能で、自然分解される材料から構成するとよい。筐体300は、天然物系、微生物系、化学合成系のいずれの材料でも良く、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉などから構成することができる。特に、植物由来のポリ乳酸などの化学合成系が好ましい。また、筐体300の形状は、生分解性プラスチックを加工することで得られる形状であれば限定されない。筐体300に適用可能な材料の例としては、市販の生分解性プラスチックフィルムの他、牛乳パックなどに用いられるポリエチレンなどの樹脂の被膜が形成されている用紙、また寒天フィルムなども使用できる。
上述した材料で構成した第1筐体311と第2筐体312とを、周縁部で接着することで、空気極111以外の電池セル内部を密閉することが可能である。接着方法としては、熱シールや接着剤を使用する例が挙げられ、特に限定はされない。生分解性樹脂で構成される接着剤を使用することが好ましい。なお、空気極111、負極112、電解質113、第1筐体311、第2筐体312、負極集電体301、正極集電体302は、電池として作動するためのこれらの配置が損なわれない限り、形状は限定されない。例えば、平面視で、四角形または円形のシート形状、あるいは、ロールした形状で使用することができる。
上述した自然分解される材料から構成した筐体300による空気電池は、例えば、土壌の水分センサーなどの使い捨てデバイスで使用した際に、時間がたつにつれて自然分解され、電池を回収する必要がない。また、自然由来の材料や肥料成分で構成されているため、環境に対する負荷が極めて低い。土壌以外にも、森の中や海中などの自然界で使用しても回収する必要がなく、また、通常の生活環境下で使用した場合には燃えるごみとして処分することができる。
[実験例1]
はじめに、実施の形態2における実験例1について説明する。実験例1は、非共有結合によって一体とされた複数のナノシートからなる三次元ネットワーク構造とされた共連続体を空気極として使用する例である。空気極を、以下のようにして合成した。以下の説明では、代表として、グラフェンをナノシートとして使用する製造方法を示すが、グラフェンを他の材料によるナノシートに変えることで、三次元ネットワーク構造を有する共連続体を調整することができる。なお、以下に示す気孔率は、共連続体を水銀圧入法により求めた細孔径分布から、細孔を円筒形とモデル化して算出した。
まず、市販のグラフェンゾル[分散媒:水(H2O)、0.4重量%、Sigma−Aldrich製]を試験管に入れ、この試験管を液体窒素中に30分間浸すことでグラフェンゾルを完全に凍結させた。グラフェンゾルを完全に凍結させた後、凍結させたグラフェンゾルをナスフラスコに取り出し、これを凍結乾燥機(東京理科器械株式会社製)により10Pa以下の真空中で乾燥させることで、グラフェンナノシートを含む三次元ネットワーク構造を有する伸縮性共連続体を得た。
得られた、共連続体をX線回折(XRD)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製した共連続体はXRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−075−0444)単相であることを確認した。なお、PDFカードNoは、国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Data,ICDD)が収集したデータベースであるPDF(Powder Diffraction File)のカード番号であり、以下同様である。
また、SEM観察および水銀圧入法により、得られた共連続体は、ナノシート(グラフェン片)が連続に連なった、平均孔径が1μmの共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共連続体のBET比表面積測定を測定したところ、510m2/gであった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、90%以上であった。更に、引張試験の結果から、得られた共連続体は、引張応力により歪が20%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認した。
このようなグラフェンによる共連続体を、打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより直径14mmの円形に切り抜き、ガス拡散型の空気極を得た。
マグネシウムによる負極は、市販の金属マグネシウム板(厚さ200μm、ニラコ製)を、打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより直径14mmの円形に切り抜くことで調整した。また、亜鉛による負極は、市販の金属亜鉛板(厚さ200μm、ニラコ製)を、打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより直径14mmの円形に切り抜くことで調整した。
電解液は、塩化カリウム(KCl、関東化学製)を1mol/Lの濃度で純水に溶解した溶液を用いた。セパレータは、電池用のセルロース系セパレータ(日本高度紙工業製)を用いた。
上述した空気極、負極、電解質となる電解液およびセパレータを用い、図7A、図7Bを用いて説明したコインセル型の空気電池を作製した。まず、スポット溶接により銅メッシュ箔(MIT Japan製)の周縁部を内側に固定した空気極ケースに、上記の空気極を設置した。また、金属マグネシウム板より構成した負極は、スポット溶接により周縁部を銅メッシュ箔(MIT Japan製)に固定し、更に、この銅メッシュ箔を負極ケースにスポット溶接して固定した。次に、空気極ケースに設置した空気極の上に、セパレータを載置し、載置したセパレータに電解液を注入した。次に、負極を固定した負極ケースを空気極ケースに被せ、コインセルかしめ機で空気極ケースおよび負極ケースの周縁部をかしめることにより、ポリプロピレン製ガスケットを含むコインセル型の空気電池を作製した。
作製したコインセル型の空気電池の電池性能を測定した。まず、放電試験を実施した。空気電池の放電試験は、市販の充放電測定システム(北斗電工社製、SD8充放電システム)を用い、空気極の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cm2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、0Vに低下するまで測定を行った電池の放電試験は、25℃の恒温槽内(雰囲気は通常の生活環境下)で測定を行った。放電容量は、共連続体からなる空気極の重量当たりの値(mAh/g)で表した。実施の形態2における実験例1におけるマグネシウムから負極を構成した場合の初回の放電曲線を図9に示す。また、実施の形態2における実験例1における亜鉛から負極を構成した場合の初回の放電曲線を図10に示す。
図9に示すように、負極をマグネシウムから構成し、共連続体を空気極に用いたときの平均放電電圧は1.2Vであり、放電容量は1110mAh/gであることが分かる。なお、平均放電電圧は、電池の放電容量(本実験例では1110mAh/g)の1/2の放電容量(実験例1では555mAh/g)の時の電池電圧とする。
また、図10に示すように、負極を亜鉛から構成し、共連続体を空気極に用いたときの平均放電電圧は0.9Vであり、放電容量は500mAh/gであることが分かる。なお、平均放電電圧は、電池の放電容量(本実験例では500mAh/g)の1/2の放電容量(実験例1では250mAh/g)の時の電池電圧とする。
以下の表1−1に、カーボン(C)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化モリブデン(MoO3)、硫化モリブデン(MoS2)によるナノシートから共連続体を構成して空気極とし、負極をマグネシウムから構成した空気電池の放電容量を示す。
また、以下の表1−2に、カーボン(C)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化モリブデン(MoO3)、硫化モリブデン(MoS2)によるナノシートから共連続体を構成して空気極とし、負極を亜鉛から構成した空気電池の放電容量を示す。
表1-1に示すように、いずれも、放電容量は、初回で1000mAh/g以上を示し、後述する粉末カーボンを用いた空気極について評価した比較例1に比べて大きい値であった。炭素以外の材料によるナノシートの例の場合も、グラフェン同様、高比表面積であるため、放電生成物[Mg(OH)2]が効率的に析出し、放電容量が改善されたものと考えられる。
また、表1-2に示すように、いずれも、放電容量は、初回で500mAh/g以上を示し、後述する粉末カーボンを用いた空気極について評価した比較例1に比べて大きい値であった。炭素以外の材料によるナノシートの例の場合も、グラフェン同様、高比表面積であるため、放電生成物(ZnO)が効率的に析出し、放電容量が改善されたものと考えられる。
[実験例2]
次に、実施の形態2における実験例2について説明する。実験例2は、非共有結合によって一体とされた複数のナノファイバーからなる三次元ネットワーク構造とされた共連続体を空気極として使用する例である。空気極を、以下のようにして合成した。以下の説明では、代表として、カーボンナノファイバーを使用する製造方法を示すが、カーボンナノファイバーを他の材料によるナノファイバーに変えることで、三次元ネットワーク構造を有する共連続体を調整することができる。
共連続体の評価法、空気電池の作製、および放電試験の方法は、実施の形態2における実験例1と同様にして行った。共連続体は、実施の形態2における実験例1に示したプロセスと同様に作製し、原料にはカーボンナノファイバーゾル[分散媒:水(H2O)、0.4重量%、Sigma−Aldrich製]を使用した。
得られた、共連続体は,XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製した共連続体はXRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.00−058−1638)単相であることを確認した。また、SEM観察および水銀圧入法により、ナノファイバーが連続に連なった平均孔径が1μmの共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共連続体のBET比表面積測定を測定したところ、620m2/gあった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、93%以上であった。更に、引張試験の結果から、実施の形態2における実験例2の共連続体は、引張応力により歪が40%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認した。
このカーボンナノファイバーによる共連続体を空気極に用いて実施の形態2における実験例1と同様のコインセル型の空気電池を作製した。作製した実施の形態2における実験例2における空気電池の放電容量を表2−1,表2−2、表3−1、表3−2に示す。表2−1,表3−1は、負極をマグネシウムから構成した場合の結果を示す。表2−2,表3−2は、負極を亜鉛から構成した場合の結果を示す。
実施の形態2における実験例2では、負極をマグネシウムから構成した場合の放電容量は、初回で1160mAh/gを示し、実施の形態2における実験例1のグラフェンによる共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。また、負極を亜鉛から構成した場合の放電容量は、初回で580mAh/gを示し、やはり、実施の形態2における実験例1のグラフェンによる共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。このような特性の向上は、より伸縮性の高い共連続体を用いることにより、放電時において円滑に反応が行われたことによると考えられる。
表2−1,表2−2には、カーボン(C)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化マグネシウム(ZnO)、酸化モリブデン(MoO3)、硫化モリブデン(MoS2)によるナノファイバーから共連続体を構成して空気極とした空気電池の放電容量を示す。
表2−1におけるいずれも、放電容量は、初回で1000mAh/g以上を示し、実施の形態2における実験例1のようなナノシートを含む共連続体よりも全体的に大きい値であった。これらのナノファイバーの例の場合も、カーボンナノファイバー同様、伸縮性を有する空気極が効率的に放電生成物[Mg(OH)2]を析出したため、放電容量が改善されたものと考えられる。
また、表2−2におけるいずれも、放電容量は、初回で570mAh/g以上を示し、実施の形態2における実験例1のようなナノシートを含む共連続体よりも全体的に大きい値であった。これらのナノファイバーの例の場合も、カーボンナノファイバー同様、伸縮性を有する空気極が効率的に放電生成物(ZnO)を析出したため、放電容量が改善されたものと考えられる。
[実験例3]
次に、実施の形態2における実験例3について説明する。実験例3では、カーボンナノファイバーによる共連続体に、酸化物または金属を触媒として担持させて構成した空気極について説明する。以下では、代表として、触媒としてMnO2を共連続体に担持させる場合について説明するが、Mnを任意の金属に変えることで、任意の酸化物を触媒として共連続体に担持させることができる。また、中和の工程を行わないことで、任意の金属を触媒として共連続体に担持させることができる。
共連続体の評価法、空気電池の作製、充放電試験方法は、実施の形態2における実験例1,2と同様にして行った。共連続体は、実施の形態2における実験例2と同様に作製した。次に、市販の塩化マンガン(II)4水和物(MnCl2・4H2O;関東化学製)を蒸留水に溶解し、作製した共連続体を含浸させ、塩化マンガンを担持させた。次いで、塩化マンガンを担持する共連続体(共連続体が担持する塩化マンガン)に、徐々にアンモニア水(28%)をpH7.0になるまで滴下し、中和することで水酸化マンガンを析出させた。析出物は、塩素が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。
得られた水酸化マンガン担持共連続体を、アルゴン雰囲気中500℃で6時間熱処理し、酸化マンガン(MnO2)を担持した共連続体を作製した。作製した酸化マンガン担持共連続体を、XRD測定、TEM観察を行い、評価した。XRD測定より、酸化マンガン(MnO2,PDFファイルNo.00−011−079)のピークを観察することができた。共連続体に担持された触媒は、酸化マンガン単相であることを確認した。また、TEMにより酸化マンガンは、共連続体の表面に平均粒径100nmの粒子状で析出している状態が観察された。
この酸化マンガンを担持した共連続体を空気極に用いて実施の形態2における実験例1,2と同様のコインセル型の空気電池を作製した。作製した実施の形態2における実験例3における負極がマグネシウムの空気電池の放電容量は、1550mAh/gであった。また、実施の形態2における実験例3における負極が亜鉛の空気電池の放電容量は、710mAh/gであった。また、以下の表3−1,表3−2に、他の触媒を用いた場合の結果も合わせて示す。
[実験例4]
次に、実施の形態2における実験例4について説明する。実験例4は、バクテリアに産生させたナノファイバーが分散したゲルによる共連続体に、更に、酸化マンガンを触媒として担持させた場合について説明する。以下では、代表として、鉄バクテリアが産生した酸化鉄によるナノファイバーから共連続体を作製した場合について示すが、鉄バクテリアを任意のバクテリアに変えることで、酸化マンガンによるナノファイバーによる共連続体を調整することができる。
共連続体の評価法、空気電池の作製法、および放電試験方法は、実施の形態2における実験例1,2と同様にして行った。
まず、鉄バクテリアであるレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)を、鉄小片(純度99.9%以上、高純度化学研究所製)と共に試験管中のJOP液体培地に投入し、振とう器で20℃、14日間培養した。JOP液体培地は、滅菌地下水1L中、リン酸水素二ナトリウム12水和物0.076g、リン酸二水素カリウム2水和物0.02g、HEPES[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid:緩衝液用物質]2.383g、硫酸鉄0.01mmol/L、pHを水酸化ナトリウム水溶液で7.0に調整した培地である。また、レプトスリックス・オクラセアは、ATCC(American Type Culture Collection)から購入した。
培養した後、鉄小片を取り除き、得られたゲルを純水中で振とう器を用いて24時間洗浄を行った。この洗浄においては、純水は3度交換した。洗浄したゲルを原料とし、実施の形態2における実験例1および実験例3に示したプロセスと同様に空気電池を作製した。
得られた、共連続体は、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製した共連続体はXRD測定よりアモルファス状のFe3O4およびγ−Fe2O3(Fe3O4,PDFカードNo.01−075−1372,γ−Fe2O3,PDFカードNo.00−039−1346)であることを確認した。
また、SEM観察により、直径1μmで中空状のナノファイバー(ナノチューブ)が連続に連なった、共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共BET比表面積測定を測定したところ、800m2/gであった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、95%以上であった。更に、引張試験の結果から、引張応力により歪が60%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認した。
実施の形態2における実験例4における鉄バクテリア産生の酸化鉄ナノファイバーによる共連続体を、空気極に用いた空気電池(負極はマグネシウム)の、放電容量は、1770mAh/gであった。また、実施の形態2における実験例4における鉄バクテリア産生の酸化鉄ナノファイバーによる共連続体を空気極に用いた空気電池(負極は亜鉛)の、放電容量は、720mAh/gであった。また、以下の表4−1,表4−2に、他の共連続体を用いた場合の結果も合わせて示す。表4−1は、負極をマグネシウムから構成した空気電池の結果である。また、表4−2は、負極を亜鉛から構成した空気電池の結果である。
実施の形態2における実験例4では、負極をマグネシウムから構成した場合の放電容量は、初回で1770mAh/gを示し、実施の形態2における実験例3のような酸化マンガンを担持したカーボンナノファイバーによる共連続体を用いた場合よりもある程度大きい値となった。また、負極を亜鉛から構成した場合の放電容量は、初回で720mAh/gを示し、実施の形態2における実験例3のような酸化マンガンを担持したカーボンナノファイバーによる共連続体を用いた場合よりもある程度大きい値となった。これら結果は、より伸縮性の高い共連続体を用いることにより、放電時において円滑に反応が行われたことによると考えられる。
また、表4−1に示すように、バクテリア産生酸化マンガンによる共連続体を用い、酸化マンガンを触媒とした空気極による空気電池(負極はマグネシウム)の放電容量は、初回で1610mAh/gを示し、実施の形態2における実験例3よりも大きい値であった。また、表4−2に示すように、バクテリア産生酸化マンガンによる共連続体を用い、酸化マンガンを触媒とした空気極による空気電池(負極は亜鉛)の放電容量は、初回で810mAh/gを示し、実施の形態2における実験例3よりも大きい値であった。
バクテリア産生酸化マンガンは、マンガン細菌であるレプトスリックス・ディスコフォラ(Leptothrix discophora)により、マンガン小片(純度99.9%以上、高純度化学研究所製)を用いて前述同様に培養して生産した。レプトスリックス・ディスコフォラは、ATCCから購入した。このバクテリア産生ナノファイバーの場合も、鉄バクテリア産生酸化鉄同様、バクテリアにより産生された優れた伸縮性を有する空気極が効率的に放電生成物を析出したため、放電容量が改善されたものと考えられる。
[実験例5]
次に、実施の形態2における実験例5について説明する。実験例5は、バクテリアに産生させたセルロースが分散したゲルによる共連続体に、更に、酸化マンガンを触媒として担持させた場合について、共連続体の評価法、空気電池の作製法、および充放電試験方法は、実施の形態2における実験例1,2と同様にして行った。
まず、酢酸菌であるアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)産生のバクテリアセルロースゲルとして、ナタデココ(フジッコ製)を用い、実施の形態2における実験例1および実験例3に示したプロセスと同様に空気電池を作製した。なお、実施の形態2における実験例5では、真空中で乾燥させた後、窒素雰囲気下で1200℃、2時間の焼成により、共連続体を炭化させ、これにより空気極を作製した。
得られた、共連続体(炭化した共連続体)は、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。この共連続体は、XRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)単相であることを確認した。また、SEM観察により、直径20nmのナノファイバーが連続に連なった、共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共連続体のBET比表面積測定を測定したところ、830m2/gであった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、99%以上であった。更に、引張試験の結果から、引張応力により歪が80%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認し、炭化した後も優れた伸縮性を有する。
実施の形態2における実験例5における空気電池(負極はマグネシウム)の、放電容量を以下の表5−1に示す。また、実施の形態2における実験例5における空気電池(負極は亜鉛)の、放電容量を以下の表5−2に示す。表5−1,表5−2には、実施の形態2における実験例1,2,3,4の結果も示している。負極をマグネシウムとしている実験例5では、放電容量は、初回で1950mAh/gを示し、実施の形態2における実験例4のような酸化マンガンを担持した鉄バクテリア産生酸化鉄を含む共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。また、負極を亜鉛としている実施の形態2における実験例5では、放電容量は、初回で810mAh/gを示し、実施の形態2における実験例4のような酸化マンガンを担持した鉄バクテリア産生酸化鉄を含む共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。
上記のような特性の向上は、より伸縮性の高い共連続体を用いることにより、放電時において効率的に放電生成物を析出したことと、Cが優れた導電性を有するために、円滑に反応が行われたと考えられる。
上述したように、本発明により、高気孔率、BET比表面積測定で、伸縮性を有する共連続体が得られ、また、この共連続体を空気極に用いた空気電池によれば、放電時の効率的な放電生成物の析出が実現される。上記のような特性の向上は、本発明による各種の改善が理由と考えられる。
[実験例6]
次に、実施の形態2における実験例6について説明する。実験例6は、バクテリアに産生させたセルロースが分散したゲルによる共連続体に、更に、酸化マンガンを触媒として担持させた場合について、図7Aおよび図7Bを用いて説明した筐体ごと自然分解される空気電池を作製した。酸化マンガンを触媒として担持させた共連続体の合成方法、共連続体の評価法、および充放電試験方法は、実施の形態2における実験例5と同様にして行った。
以下、実施の形態2における実験例6における空気電池の作製方法について説明する。負極をマグネシウムから構成する場合は、市販の金属マグネシウム板(厚さ200μm、ニラコ製)を、はさみを用いて20mm×20mmの正方形に切り抜くことで作製した。また、負極を亜鉛から構成するは、市販の金属亜鉛板(厚さ200μm、ニラコ製)を、はさみを用いて20mm×20mmの正方形に切り抜くことで作製した。
電解液は、塩化カリウム(KCl、関東化学製)を1mol/Lの濃度で純水に溶解した溶液を用いた。セパレータは、電池用のセルロース系セパレータ(日本高度紙工業製)を25mm×25mmの正方形にカットして用いた。
金属マグネシウム板からなる負極は、この周縁部をスポット溶接により負極集電体である銅メッシュ箔(MIT Japan製)に固定し、更に、この銅メッシュ箔を平面視で25mm×25mmにカットし、この端を、端子となる3×20mmにカットした銅箔(ニラコ製)の短辺にスポット溶接した。
金属亜鉛板からなる負極は、この周縁部をスポット溶接により負極集電体である銅メッシュ箔(MIT Japan製)に固定し、更に、この銅メッシュ箔を平面視で25mm×25mmにカットし、この端を、端子となる3×20mmにカットした銅箔(ニラコ製)の短辺にスポット溶接した。
また、空気極用の集電体としての25mm×25mmにカットした銅メッシュ箔(MIT Japan製)に空気極を圧着し、この銅メッシュ箔の端に、端子となる3×20mmにカットした銅箔(ニラコ製)の短辺にスポット溶接した。
筐体の材料として、植物系フィルムシート エコロージュ(三菱樹脂製)を用いた。このシートを平面視30m×30mmにカットした2枚のカットシートを作製し、一方を第1筐体とし、他方を第2筐体とした。また、正極側に用いる第2筐体には、中央部に15mm×15mmの開口を形成した。
負極側の第1筐体の上に、負極を固定した負極集電体およびセパレータを配置し、更にセパレータには電解液を注入した。この上に、空気極を圧着した空気極集電体、および第2筐体を被せ、第1筐体および第2の内側の周縁部(幅約5mm)を生分解性樹脂(ミヨシ油脂製)で接着して密閉した。このようにして、空気電池を作製した。
実施の形態2における実験例6における空気電池(負極はマグネシウム)の、放電容量を表5−1に示す。表5−1に示すように実施の形態2における実験例6では、放電容量は、初回で1880mAh/gを示し、実施の形態2における実験例5とほぼ同様の放電特性であった。また、実施の形態2における実験例6における空気電池(負極は亜鉛)の、放電容量を表5−2に示す。表5−2に示すように実施の形態2における実験例6では、放電容量は、初回で790mAh/gを示し、実施の形態2における実験例5とほぼ同様(95%以上)の放電特性であった。
実施の形態2における実験例6における空気電池を放電後に土壌中に設置したところ、約半月で筐体の分解が目視で確認でき、約1カ月後には完全に消失した。土壌中の微生物によって代謝され分解されたことが示された。
[実験例7]
次に、実施の形態2における実験例7について説明する。実験例7は、実施の形態2における実験例6と同様の手順で作製した空気電池について、土壌を模擬した環境下で放電試験を行った。
実施の形態2における実験例7における空気電池(負極はマグネシウム)の、放電容量を表5−1に示す。表5−1に示すように実施の形態2における実験例7では、放電容量は、初回で1530mAh/gを示し、実施の形態2における実験例6よりも低下したが、土壌環境下においても問題なく作動することが示された。
実施の形態2における実験例7における空気電池(負極は亜鉛)の、放電容量を表5−2に示す。表5−2に示すように実施の形態2における実験例7では、放電容量は、初回で690mAh/gを示し、実施の形態2における実験例6よりも低下したが、土壌環境下においても問題なく作動することが示された。容量の低下要因としては、土壌中の温度が安定していないためであると考えられる。
また、実施の形態2における実験例7における空気電池を放電後に土壌中に放置したところ、放電試験開始時から約1カ月後には完全に消失した。
[比較例1]
次に、比較例1について説明する。比較例1は、空気極用の電極として公知であるカーボン(ケッチェンブラックEC600JD)、および酸化マンガンを用いた空気電池セルを作製して評価した。比較例1では、実施の形態2における実験例1と同様のコインセル型の空気電池を作製した。
酸化マンガン粉末(関東化学製)、ケッチェンブラック粉末(ライオン製)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン製)を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕および混合し、ロール成形して、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径14mmの円形に切り抜き空気極を得た。電池の放電試験の条件は、実施の形態2における実験例1と同様である。
比較例1に係る空気電池(負極はマグネシウム)の放電容量を、実施の形態2における実験例1〜7の結果とともに表5−1に示す。表5−1に示すように、比較例1の初回放電容量は、750mAh/gであり、実施の形態2における実験例1よりも小さな値を示した。
比較例1に係る空気電池(負極は亜鉛)の放電容量を、実施の形態2における実験例1〜7の結果とともに表5−2に示す。表5−2に示すように、比較例1の初回放電容量は、360mAh/gであり、実施の形態2における実験例1よりも小さな値を示した。
また、測定後に比較例1の空気極を観察したところ、空気極の一部が崩れて電解液中に分散しており、空気極の電極構造が破壊されている様子が見られた。
次に、実施の形態2における各実験例1〜7,および比較例1について、負極をFeから構成した場合、および負極をAlから構成した場合の同様の結果について、以下の表6に示す。
以上の結果より、実施の形態2における電池(空気電池)は、公知の材料による空気極を用いた空気電池よりも、容量および電圧に関して優れていることが確認された。
以上に説明したように、実施の形態2によれば、非共有結合によって一体とされた複数のナノ構造体からなる三次元ネットワーク構造とされた共連続体から空気極を構成したので、空気電池がより容易に取り扱えるようになる。実施の形態2における電池(空気電)池は、土壌の肥料に用いられる元素や雨水や海水中に含まれる金属以外の金属元素が含まれず、また、自然分解されるため、極めて環境負荷が低い。このような電池は、日常環境の使い捨て電池を始め、土壌中で用いるセンサーなどの様々な駆動源として有効利用することができる。また、実施の形態2によれば、電池の放電容量を大きくすることができる。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3における電池について、図11を用いて説明する。実施の形態3における電池は、正極121と、負極122と、正極121と負極122とに挾まれて配置されて、塩から構成された電解質123とを備える水電池である。負極122は、例えば、マグネシウム、鉄、アルミニウムなどを含んで構成されている。
水電池は、空気電池とは異なり、正極121の一方の面が大気に曝される必要はない。水電池では、正極121は水を活物質とする。なお、電解質123は、電解液または固体電解質のいずれであってもよい。電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。また、固体電解質とは、電解質がゲル形態または固体形態である場合をいう。
実施の形態3における電池(水電池)は、正極121が、一体とされた複数のナノ構造体が分岐を有することで三次元ネットワーク構造とされた共連続体から構成されている。例えば、複数のナノ構造体は、非共有結合によって一体とされている。共連続体は、多孔体であり、一体構造とされている。ナノ構造体は、ナノシートあるいはナノファイバーである。一体とされた複数のナノ構造体が分岐を有することで三次元ネットワーク構造の共連続体は、ナノ構造体同士の分岐部が変形可能とされており、伸縮性を有した構造となっている。
ナノシートは、例えば、カーボン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、硫化モリブデン化合物の少なくとも1つから構成されたものであればよい。硫化モリブデン化合物は、例えば、二硫化モリブデン、リンドープ硫化モリブデンなどである。これらの材料の元素は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)から構成されていれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
ナノシートは導電性を有することが重要である。ナノシートは、厚さが1nmから1μmであり、平面縦横長さが、厚さの100倍以上のシート状物質と定義する。例えば、カーボンによるナノシートとしてグラフェンがある。また、ナノシートは、ロール状、波状であっても良く、ナノシートが湾曲や屈曲していても良く、どのような形状であってもよい。
ナノファイバーは、カーボン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、硫化モリブデン、およびセルロース(炭化したセルロース)の少なくとも1つから構成されたものであればよい。これらの材料の元素は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)から構成されていれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。
ナノファイバーも導電性を有することが重要である。ナノファイバーは、直径が1nmから1μmであり、長さが直径の100倍以上の繊維状物質と定義する。また、ナノファイバーは、中空状、コイル状であっても良く、どのような形状であってもよい。なお、セルロースについては、後述するように、炭化により導電性を持たせて用いる。
例えば、まず、ナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを凍結させて凍結体とし(凍結工程)、この凍結体を真空中で乾燥させる(乾燥工程)ことで、正極121とする共連続体を作製することができる。鉄酸化物,マンガン酸化物、セルロースのいずれかによるナノファイバーが分散したゲルであれば、所定のバクテリアに生産させることができる(ゲル生産工程)。
また、所定のバクテリアに、セルロースによるナノファイバーが分散したゲルを生産させ(ゲル生産工程)、このゲルを不活性ガスの雰囲気で加熱して炭化することで、共連続体を得る(炭化工程)ようにしてもよい。
正極121を構成する共連続体は、例えば、平均孔径が0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることが更に好ましい。ここで、平均孔径は、水銀圧入法により求めた値である。
正極121には、カーボン粉末を用いた場合のようなバインダーなどの追加の材料を用いる必要がなく、コスト的に有利であり環境面でも有利である。
ここで、正極121および負極122における電極反応について説明する。正極反応は、導電性を有する正極121の表面において、水(電解質123)が接することで、「2H2O+2e-→2OH-+H2・・・(6)」で示す反応が進行する。一方、マグネシウムから構成した場合の負極反応は、電解質123に接している負極122において「Mg→Mg2++2e-・・・(7)」の反応が進行し、負極122を構成しているマグネシウムが電子を放出し、電解質123中にマグネシウムイオンとして溶解する。
これらの反応により、放電を行うことが可能である。全反応は、「Mg+2H2O+2e-→Mg(OH)2+H2・・・(8)」となり、水酸化マグネシウムと水素が生成する反応である。理論起電力は約1.4Vである。以上の反応に関わる化合物を、図11の構成要素と共に示している。
このように、水電池は、正極121の表面において式(6)で示す反応が進行するため、正極121の内部に反応サイトを多量に生成する方がよいものと考えられる。
正極である正極121は、カーボン粉末をバインダーで成形するといった公知のプロセスで作製することができるが、上述した通り、実施の形態3における電池(水電池)では、正極121内部に反応サイトを多量に生成することが重要であり、正極121は、高比表面積であることが望ましい。例えば、本発明においては、正極121を構成する共連続体の比表面積が200m2/g以上であることが好ましく300m2/g以上であることがより好ましい。
カーボン粉末をバインダーで成形してペレット化することで作製している従来の正極の場合、高比表面積化した際に、カーボン粉末同士の結着強度が低下し、構造が劣化することで、安定して放電することが困難であり、放電容量が低下する。
これに対し、前述したように一体とされた複数のナノ構造体が分岐を有することで三次元ネットワーク構造とされた共連続体により構成した本発明の正極121によれば、上述した従来の問題が解消でき、放電容量を高くできるようになる。
また、正極121は、触媒を担持していてもよい。触媒は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、あるいは、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属からなる金属酸化物から構成されていればよい。なお、これらの材料の元素は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素に含まれる金属から構成され、触媒能を有していれば良い。また、これらの材料の元素は、植物の生育に有用な、Na,Si,Se,Co,Al,Vから構成されていてもよい。金属としては、鉄、マンガン、亜鉛が好ましく、これらの1つからなる酸化物または2つ以上からなる複合酸化物が好ましい。また、特に、酸化マンガン(MnO2)が好適である。酸化マンガンは、本発明において特に優れた触媒性能を示すので好ましい。
また、触媒とする金属酸化物は、水和物としたアモルファス状のものであることも好ましい。例えば、上述した遷移金属酸化物の水和物であればよい。より具体的には、酸化マンガン(IV)−n水和物であればよい。なお、nは、1molのMnO2に対するH2Oのモル数である。正極121を構成する共連続体の表面に、酸化マンガンの水和物を、ナノサイズの微粒子として高分散で担持させることで、優れた電池性能とすることが可能となる。
例えば、正極121の共連続体上に、酸化マンガン水和物(MnO2・nH2O)をナノサイズの微粒子として高分散で付着させた(添加した)ものを正極121として使用することで、優れた電池性能を示すことが可能となる。正極121に含まれる触媒の含有量は、正極121の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。正極121に、遷移金属酸化物を触媒として添加することによって、電池性能は大きく向上する。正極121中に電解質123の電解液が浸透し、上述したような電解液−電極の界面が形成される。この界面サイトにおいて、触媒が高活性であれば、電極表面における水還元(放電)が円滑に進行し、電池性能は大きく向上することになる。
水電池では、上述した通り、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位[上記の電解液/電極の界面部分]がより多く存在することが望ましい。このような観点から、上述の界面部位が触媒の表面にも多量に存在することが重要であり、触媒は比表面積が高い方が好ましい。金属または金属酸化物による触媒の比表面積は、0.1〜1000m2/g、好ましくは1〜500m2/gであればよい。なお、比表面積は、公知のN2吸着によるBET法により求めた比表面積である。
触媒を添加した正極121は、後述する正極121の製造方法により製造することができる。
次に、負極122について説明する。負極122は、負極活物質から構成する。この負極活物質は、水電池の負極材料として用いることができる材料、つまり、金属マグネシウム、マグネシウム含有物質、金属鉄、鉄含有物質、金属アルミニウム、アルミニウム含有物質を含むものであれば特に限定されない。例えば、負極122は、金属マグネシウム、金属マグネシウムのシート、またはマグネシウム粉末を銅などの金属箔に圧着したものなどから構成すればよい。
負極122は、公知の方法で形成することができる。例えば、マグネシウム金属を負極122とする場合には、複数枚の金属マグネシウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極122を作製することもできる。
次に、電解質123について説明する。電解質123は、正極121および負極122間で、負極122を構成する金属(例えばマグネシウム)のイオンおよび水酸化物イオンの移動が可能な物質であればよい。例えば、地球上に豊富に存在するカリウムやナトリウムが含まれる金属塩を挙げることができる。なお、この金属塩は、植物の生育に不可欠な16種類の必須元素(C,O,H,N,P,K,S,Ca,Mg,Fe,Mn,B,Zn,Cu,Mo,Cl)や海水や雨水に含まれる元素から構成されていれば良い。電解質123は、例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムから構成すればよい。カリウムは、肥料成分の中でも多量要素の1つであるため、仮に電解質が土壌に漏れ出たときの影響を与えないのみならず、肥料として機能するため、特に、塩化カリウムが好ましい。
また、電解質123を構成する他の材料として、マグネシウムイオンおよび水酸化物イオンを通すイオン導電性を有する芳香族アニオン交換ポリマー固体電解質や無機層状化合物系固体電解質を用いても良い。
なお、水電池は、上記構成に加え、セパレータ、電池ケース、金属箔(例えば銅箔)などの構造部材、また、一般的な空気電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。セパレータとしては、繊維材料であれば特に限定されないが、植物繊維またはバクテリアからつくられるセルロース系セパレータが特に好ましい。
次に、実施の形態3における製造方法について説明する。実施の形態3における水電池は、後述する正極製造方法により得られる正極121、負極122、電解質123を、所望の水電池の構造に基づいた他の必要な要素と共に、ケースなどの適切な容器内に適切に配置することで作製することができる。これらの水電池の製造手順は、従来知られている一般的な空気電池の方法を適用することができる。
以下、正極121の作製について説明する。
[製造方法1]
はじめに、実施の形態3における製造方法1について図12を用いて説明する。まず、ステップS111で、ナノシートやナノファイバーなどのナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを凍結させて凍結体を得る(凍結工程)。次に、ステップS112で、得られた凍結体を真空中で乾燥させて共連続体を得る(乾燥工程)。
以下、各工程についてより詳細に説明する。ステップS111の凍結工程は、一体とされた複数のナノ構造体が分岐を有することで三次元ネットワーク構造とされた伸縮性を有する共連続体の原料となるナノ構造体を用い、三次元ネットワーク構造を維持または構築する工程である。
ここで、ゲルとは、分散媒が分散質であるナノ構造体の三次元ネットワーク構造により流動性を失い固体状になったものを意味する。具体的には、ずり弾性率が102〜106Paである分散系を意味する。ゲルの分散媒は、水(H2O)などの水系または、カルボン酸、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、n−ブタノール、イソブタノール、n−ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系であり、これらから2種類以上を混合してもよい。
次に、ゾルとは、分散媒および分散質であるナノ構造体からなるコロイドを意味する。具体的には、ずり弾性率が1Pa以下である分散系を意味する。ゾルの分散媒は、水などの水系または、カルボン酸、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系であり、これらから2種類以上を混合してもよい。
凍結工程は、例えば、ナノ構造体が分散したゾルまたはゲルを試験管のような適切な容器に収容し、液体窒素などの冷却材中で試験管の周囲を冷却することで、試験管に収容したゾルまたはゲルを凍結することで実施される。凍結させる手法は、ゲルまたはゾルの分散媒を凝固点以下に冷却ができれば、特に限定されるものではなく、冷凍庫などで冷却してもよい。
ゲルまたはゾルを凍結することで、分散媒が流動性を失い分散質が固定され、三次元ネットワーク構造が構築される。また、凍結工程では、ゲルまたはゾルの濃度を調整することで比表面積を自在に調整でき、ゲルまたはゾルの濃度を薄くするほど、得られる共連続体は高比表面積となる。ただし、濃度が0.01重量%以下となると、分散質が三次元ネットワーク構造を構築することが困難となるため、分散質の濃度は、0.01〜10重量%以下が好適である。
ナノファイバーまたはナノシートなどのナノ構造体で高比表面積な三次元ネットワーク構造を構築することで、圧縮または引張の際に、気孔がクッションの役割を果たし、優れた伸縮性を有する。具体的には、共連続体は、弾性限界での歪みが5%以上であることが望ましく、更に10%以上であることが更に望ましい。
凍結により分散質を固定しない場合、この後の乾燥工程において、分散媒の蒸発に伴い、分散質が凝集するため、十分な高比表面積を得ることができず、三次元ネットワーク構造を有する共連続体の作製は困難となる。
次に、ステップS112の乾燥工程について説明する。乾燥工程では、凍結工程で得た凍結体より、三次元ネットワーク構造を維持または構築した分散質(一体とされている複数の微細構造体)を分散媒から取り出す工程である。
乾燥工程では、凍結工程で得られた凍結体を真空中で乾燥させ、凍結した分散媒を固体状態から昇華させる。例えば、得られた凍結体をフラスコのような適切な容器に収容し、容器内を真空引きすることで実施される。凍結体を真空雰囲気下に配置することで、分散媒の昇華点が低下し、常圧では昇華しない物質においても昇華させることが可能である。
乾燥工程における真空度は、使用する分散媒によって異なるが、分散媒が昇華する真空度であれば特に制限されない。例えば、分散媒に水を使用した場合、圧力を0.06MPa以下とした真空度にする必要があるが、昇華潜熱として熱が奪われるため、乾燥に時間を有する。このため、真空度は1.0×10-6〜1.0×10-2Paが好適である。更に乾燥時にヒーターなどを用いて熱を加えても良い。
大気中で乾燥させる方法は、分散媒が固体から液体になり、この後、液体から気体になるため、凍結体が液体状態となり分散媒中で再び流動的になり、複数のナノ構造体の三次元ネットワーク構造が崩れる。このため、大気圧雰囲気での乾燥では、伸縮性を有する共連続体の作製は困難である。
[製造方法2]
次に、実施の形態3における製造方法2について図13を用いて説明する。
まず、ステップS211で、所定のバクテリアに、酸化鉄、酸化マンガン、またはセルロースのいずれかによるナノファイバーが分散したゲルを生産させる(ゲル生産工程)。このようにして得られたゲルを用いて共連続体を作製する。
バクテリアが産生するゲルは、nmオーダーのファイバーを基本構造としており、このゲルを用いて共連続体を作製することで、得られる共連続体は高比表面積を有するものとなる。前述したように、水電池の正極は高比表面積であることが望ましいため、バクテリアが生産したゲルを用いることは、好適である。具体的には、バクテリアが生産するゲルを用いることで比表面積が300m2/g以上を有する正極(共連続体)の合成が可能である。
バクテリア産生ゲルは、ファイバーがコイル状や網目状に絡まった構造を有し、更にバクテリアの増殖に基づいてナノファイバーが分岐した構造を有しているため、作製できる共連続体は、弾性限界での歪みが50%以上という優れた伸縮性を実現する。従って、バクテリア産生ゲルを用いて作製した共連続体は、水電池の正極に好適である。
バクテリア産生ゲルとしては、バクテリアセルロース、酸化鉄、酸化マンガンの中から2種類以上を混合してもよい。
バクテリアは、公知のものが挙げられ、例えば、アセトバクター・キシリナム・サブスピーシーズ・シュクロファーメンタ、アセトバクター・キシリナムATCC23768、アセトバクター・キシリナムATCC23769、アセトバクター・パスツリアヌスATCC10245、アセトバクター・キシリナムATCC14851、アセトバクター・キシリナムATCC11142、アセトバクター・キシリナムATCC10821などの酢酸菌、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属、アゾトバクター属、ズーグレア属、エンテロバクター属、クリューベラ属、レプトスリックス属、ガリオネラ属、シデロカプサ属、チオバチルス属、並びにこれらをNTG(ニトロソグアニジン)などを用いる公知の方法によって変異処理することにより創製される各種変異株を培養することにより生産されたものであればよい。
上述したバクテリアにより生産させたゲルを用いて共連続体を得る方法としては、実施の形態3における製造方法1と同様に、ステップS212で凍結させて凍結体とし(凍結工程)、ステップS213で凍結体を真空中で乾燥させて共連続体とすればよい(乾燥工程)。ただし、バクテリアにより生産させたセルロースによるナノファイバーが分散したゲルを用いる場合、ステップS214で、作製した共連続体をセルロースが燃焼しないガスの雰囲気で加熱して炭化する(炭化工程)。
バクテリア産生ゲルに含まれる成分であるバクテリアセルロースは、導電性を有していないため、正極として使用する際は、不活性ガス雰囲気下で熱処理して炭素化することで導電性を付与する炭化工程が重要となる。このようにして炭化した共連続体は、高導電性、耐腐食性、高伸縮性、高比表面積を有しており、水電池の正極として好適である。
バクテリアセルロースの炭化は、前述した凍結工程および乾燥工程により、バクテリアセルロースからなる三次元ネットワーク構造を有する共連続体を合成した後に、不活性ガス雰囲気中で500℃〜2000℃、より好ましくは、900℃〜1800℃で焼成して炭化すればよい。セルロースが燃焼しないガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであればよい。また、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスであってもよく、また、二酸化炭素ガスであってもよい。本発明では、カーボン材料に対し賦活効果を有し、共連続体の高活性化が期待できる二酸化炭素ガスまたは一酸化炭素ガスがより好ましい。
[製造方法3]
次に、実施の形態3における製造方法3について図14を用いて説明する。前述したように、正極に触媒を担持させるとよい。ステップS311で、上述した実施の形態3における製造方法1または製造方法2で得られた共連続体を、触媒の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸さる(含浸工程)。このようにして金属塩を含む伸縮性共連続体を調製したら、次に、ステップS312で、金属塩を含む伸縮性共連続体を加熱処理すればよい(加熱工程)。なお、使用する金属塩の好ましい金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。特に、マンガンが好ましい。
遷移金属酸化物を共連続体に担持するためには、従来知られている方法を用いることができる。例えば、共連続体を、遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液に含浸させて蒸発乾固した後、高温高圧化の水(H2O)中で水熱合成する方法がある。また、共連続体に、遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液を含浸させ、ここにアルカリ性水溶液を滴下する沈殿法がある。また、共連続体に遷移金属アルコキシド溶液に含浸させ、これを加水分解するゾルゲル法などがある。これらの液相法による各方法の条件は公知であり、これらの公知の条件を適用できる。本発明では、液相法が望ましい。
上記の液相法で担持される金属酸化物は、多くの場合、結晶化が進んでいないためアモルファス状態である。アモルファス状態の前駆体を、不活性の雰囲気で、500℃程度の高温で熱処理を行うことで、結晶性の金属酸化物を得ることができる。このような結晶性の金属酸化物は、正極の触媒として用いた場合においても高い性能を示す。
一方、上記のアモルファス状の前駆体を100〜200℃程度の比較的低温で乾燥した場合に得られる前駆体粉末は、アモルファス状態を維持しつつ、水和物の状態となる。金属酸化物の水和物は、形式的に、MexOy・nH2O(ただし、Meは上記金属を意味し、xおよびyはそれぞれ金属酸化物分子中に含まれる金属および酸素の数を表し、nは1モルの金属酸化物に対するH2Oのモル数)と表すことができる。このような低温乾燥により得られた、金属酸化物の水和物を触媒として用いることができる。
アモルファス状の金属酸化物(水和物)は、焼結がほとんど進んでいないため、大きな表面積を有し、粒子径も30nm程度と非常に小さい値を示す。これは、触媒として好適であり、これを用いることで、優れた電池性能を得ることができる。
上述の通り、結晶性の金属酸化物は高い活性を示すが、上記のような高温での熱処理で結晶化させた金属酸化物は、表面積が著しく低下することがあり、粒子の凝集により粒子径も100nm程度となることがある。なお、この粒子径(平均粒径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで拡大観察し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた値である。
また、特に高温で熱処理を行った金属酸化物による触媒は、粒子が凝集するため、共連続体の表面に高分散で触媒を添加させることが困難なことがある。十分な触媒効果を得るためには、正極(共連続体)中に金属酸化物を大量に添加しなければならない場合があり、高温の熱処理による触媒作製は、コスト的に不利となることがある。
この問題を解消するためには、以下の製造方法4,製造方法5,製造方法6を用いればよい。
[製造方法4]
次に、実施の形態3における製造方法4について図15を用いて説明する。
実施の形態3における製造方法4では、実施の形態3における製造方法1,製造方法2で説明したことにより作製した共連続体に、触媒を担持させる。実施の形態3における製造方法4では、前述した共連続体の製造に加え、触媒を担持させる以下の触媒担持工程を加える。
まず、ステップS411の第1触媒担持工程で、共連続体を界面活性剤の水溶液に浸漬し、共連続体の表面に界面活性剤を付着させる。
次に、ステップS412の第2触媒担持工程で、金属塩の水溶液を用いて界面活性剤が付着した共連続体の表面に界面活性剤により金属塩を付着させる。
次に、ステップS413の第3触媒担持工程で、金属塩が付着した共連続体に対する熱処理により、金属塩を構成する金属または金属の酸化物からなる触媒を共連続体に担持させる。
なお、上記金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、あるいは、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属からなる金属酸化物である。特に、Mnまたは酸化マンガン(MnO2)が好ましい。
実施の形態3における製造方法4の第1触媒担持工程で用いる界面活性剤は、空気極(共連続体)上に金属または遷移金属酸化物を高分散で担持するためのものである。界面活性剤のように、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基と遷移金属イオンが吸着する親水基を有していれば、共連続体に遷移金属酸化物前駆体である金属イオンを高い分散度で吸着させることができる。
上述した界面活性剤としては、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基とマンガンイオンが吸着する親水基を有していれば特に限定されないが、非イオン系の界面活性剤が好ましい。例えば、エステル型の界面活性剤として、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどがある。また、エーテル型の界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどがある。
また、エステルエーテル型の界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールなどがある。また、アルカノールアミド型の界面活性剤として、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEAなどがある。また、高級アルコールの界面活性剤として、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどがある。また、ポロキサマー型の界面活性剤として、ポロキサマージメタクリレートなどを挙げることができる。
実施の形態3における製造方法4の第1触媒担持工程における界面活性剤の水溶液の濃度は、0.1〜20g/Lであることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度などの浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
実施の形態3における製造方法4の第2触媒担持工程では、第1触媒担持工程における界面活性剤を含有する水溶液に、触媒として機能する金属塩を更に溶解するか、または金属塩の水溶液を加えることを含む。あるいは、上述の界面活性剤を含有する水溶液とは別に、触媒として機能する金属塩を溶解させた水溶液を調製し、これに、界面活性剤を含浸した(付着させた)共連続体を浸漬してもよい。
また、金属塩が溶解した水溶液を、界面活性剤を付着させた共連続体に含浸させてもよい。必要に応じて、得られた金属塩を含む(付着した)共連続体にアルカリ性水溶液を滴下してもよい。これらのことによって、金属または金属酸化物前駆体を共連続体に付着させることができる。
実施の形態3における製造方法4の第2触媒担持工程における金属塩の添加量は、0.1〜100mmol/Lとなる量であることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度などの浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
より具体的には、金属としてマンガンを例にとって説明すれば、例えば、マンガン金属塩(例えば、塩化マンガンなどのハロゲン化マンガンやその水和物)を、界面活性剤を含有し、共連続体に含浸している水溶液に加える。次いで、得られたマンガン金属塩を含む共連続体にアルカリ性水溶液を滴下することで、金属または金属酸化物前駆体としての水酸化マンガンを、共連続体に担持させることができる。
上述した酸化マンガンによる触媒の担持量は、金属塩水溶液中の金属塩(例えば塩化マンガン)の濃度により調整できる。
また、上述のアルカリ性水溶液に使用するアルカリは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、アンモニウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液などを挙げることができる。これらのアルカリ性水溶液の濃度は、0.1〜10mol/Lであることが好ましい。
実施の形態3における製造方法4における第3触媒担持工程では、共連続体の表面に付着させた金属または金属酸化物の前駆体(金属塩)を、熱処理により、金属自体または金属酸化物に転化する。
具体的には、前駆体が付着した共連続体を、室温(25℃程度)〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で1〜24時間乾燥させ、次いで100〜600℃、好ましくは110〜300℃で熱処理すればよい。
実施の形態3における製造方法4における第3触媒担持工程では、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性雰囲気や還元性雰囲気で熱処理することで、金属自体を触媒として表面に付着させた共連続体による正極を製造することができる。また、酸素を含むガス中(酸化性雰囲気)で熱処理することで、金属酸化物を触媒として表面に付着させた共連続体による正極を製造することができる。
また、上述の還元条件下での熱処理を行い、一度、金属自体を触媒として付着させた共連続体を作製し、次いで、これを酸化性雰囲気で熱処理することで、金属酸化物を触媒として付着させた共連続体による正極を製造することもできる。
別法として、金属または金属酸化物の前駆体(金属塩)が付着した共連続体を、室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で乾燥させ、共連続体上に金属自体を触媒として付着させ、金属/共連続体の複合体を作製してもよい。
実施の形態3における製造方法4では、金属または金属酸化物による触媒の付着量(含有量)は、共連続体および触媒の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
実施の形態3における製造方法4によれば、共連続体の表面に、金属または金属酸化物による触媒を高分散させた正極を製造することができ、電池特性の優れた水電池が構成できるようになる。
[製造方法5]
次に、実施の形態3における製造方法5について説明する。実施の形態3における製造方法5では、実施の形態3における製造方法1,製造方法2で説明したことにより作製した共連続体に、前述した実施の形態3における製造方法4とは異なる方法で触媒を担持させる。実施の形態3における製造方法5では、前述した共連続体の製造に加え、触媒を担持させる以下の触媒担持工程を加える。
第1触媒担持工程では、共連続体を金属塩の水溶液に浸漬して共連続体の表面に金属塩を付着させる。
次に、第2触媒担持工程では、金属塩が付着した共連続体に対する熱処理により、金属塩を構成する金属からなる触媒を共連続体に担持させる。
次に、第3触媒担持工程では、触媒が担持された共連続体を高温高圧の水に作用させることで触媒を金属酸化物の水和物とする。
なお、上記金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属、あるいは、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属からなる金属酸化物である。特に、Mnまたは酸化マンガン(MnO2)が好ましい。
実施の形態3における製造方法5における第1触媒担持工程では、最終的に触媒とする金属または金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液を、共連続体の表面に付着(担持)させる。例えば、上記金属塩を溶解した水溶液を別途調製し、この水溶液を共連続体に含浸させればよい。含浸の条件などは、前述したように従来と同じである。
実施の形態3における製造方法5における第2触媒担持工程は、実施の形態3における製造方法4の第3触媒担持工程と同様であり、不活性雰囲気または還元性雰囲気による加熱処理を実施すればよい。また、実施の形態3における製造方法4の第3触媒担持工程の別法として説明した、前駆体が付着した共連続体を低温(室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃)で加熱処理(乾燥)することで、共連続体に金属を付着させてもよい。
金属自体を触媒として用いた正極121は、高活性を示すが、触媒が金属であるため、腐食に弱く、長期安定性に欠ける場合がある。これに対し、金属を以下に詳述する実施の形態3における製造方法5の第3触媒担持工程により、加熱処理して金属酸化物の水和物とすることで、長期安定性を実現することができる。
実施の形態3における製造方法5の第3触媒担持工程では、金属酸化物の水和物が、共連続体に付着した状態とする。具体的には、実施の形態3における製造方法5の第2触媒担持工程で得られた、金属が付着した共連続体を、高温高圧の水に浸漬させ、付着している金属を、金属酸化物の水和物からなる触媒に転化する。
例えば、金属が付着した共連続体を、100℃〜250℃、より好ましくは、150℃〜200℃の水に浸漬させ、付着している金属を酸化させて金属酸化物の水和物とすればよい。
大気圧下(0.1MPa)での水の沸点は100℃であるため、大気圧下では通常100℃以上の水に浸漬させることはできないが、所定の密閉容器を用い、この密閉容器内の圧力を、例えば、10〜50MPa、好ましくは25MPa程度まで上昇させることで、密閉容器内では、水の沸点が上昇し、100℃〜250℃の液体状の水を実現することができる。このようにして得た高温の水に、金属が付着した共連続体を浸漬すれば、金属を金属酸化物の水和物とすることができる。
[製造方法6]
次に、実施の形態3における製造方法6について説明する。実施の形態3における製造方法6では、実施の形態3における製造方法1,製造方法2で説明したことにより作製した共連続体に、前述した実施の形態3における製造方法4、5とは異なる方法で触媒を担持させる。実施の形態3における製造方法6では、前述した共連続体の製造に加え、触媒を担持させる以下の触媒担持工程を加える。
第1触媒担持工程では、共連続体を金属塩の水溶液に浸漬して共連続体の表面に金属塩を付着させる。
次に、第2触媒担持工程では、金属塩が付着した共連続体を高温高圧の水に作用させることで、金属塩を構成する金属による金属酸化物の水和物からなる触媒を共連続体に担持させる。
なお、上記金属は、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンの少なくとも1つの金属であればよい。
実施の形態3における製造方法6における第1触媒担持工程は、実施の形態3における製造方法5における第1触媒担持工程と同様であり、ここでは説明を省略する。
実施の形態3における製造方法6における第2触媒担持工程は、共連続体の表面に付着させた前駆体(金属塩)を、比較的低温の熱処理により、金属酸化物の水和物に転化する。
具体的には、前駆体が付着した共連続体を、高温高圧の水に作用させた後に、100〜200℃程度の比較的低温で乾燥する。これにより、前駆体は、前駆体のアモルファス状態を維持しつつ、粒子中には水分子が存在する水和物となる。このような低温乾燥により得られた、金属酸化物の水和物を触媒として用いる。
実施の形態3における製造方法6により作製される正極では、金属酸化物の水和物が、共連続体上にナノサイズの微粒子の状態で、高分散で担持されうる。従って、このような共連続体を正極とした場合、優れた電池性能を示すことが可能となる。
上記の各製造方法で得られた共連続体は、公知の手順で所定の形状に成形して正極とすることができる。例えば、触媒未担持および触媒担持共連続体を板状体またはシートに加工し、得られた共連続体を打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより所望の直径(例えば23mm)の円形に切り抜いて正極とすればよい。
以下、実験例を用いてより詳細に説明する。はじめに、実際に用いた電池の構成について図16A、図16Bを用いて説明する。
前述した実施の形態における正極121、負極122、電解質123を使用する電池は、コイン形、円筒形、ラミネート形など従来の形状で作製することができる。これらの電池の製造方法は、従来と同様の方法を用いることができる。
図16A、図16Bに示すように、コインセル型の電池は、正極121および負極122と、これらの間の電解質123とを備える。この場合の電解質123は、電解液を含浸したシート状のセパレータである。また、正極121の側には正極ケース221が配置され、負極122の側には、負極ケース222が配置される。正極ケース221は開口221aを備え、正極121で発生したガスを大気中に開放することが可能とされている。
また、正極ケース221と負極ケース222とは、嵌合され、嵌合している部分には、ガスケット223が配置されている。正極121と負極122とで電解質123を挾んで電池セルとし、この電池セルを正極ケース221と負極ケース222との間に配置し、正極ケース221と負極ケース222とを嵌合させて一体とする。
また、図17に示すように、正極121以外の電池セル内部を密閉する筐体320を用い、筐体320内に電池セルを収容してもよい。筐体320は、負極122の側に配置される第1筐体331と、正極121の側に配置される第2筐体332とから構成されている。第2筐体332には、開口部332aが形成され、正極121で発生したガスを大気中に放出(開放)することが可能とされている。筐体320は、開口部332aの領域以外でセル内部を密閉する。
また、第1筐体331と負極122との間には、負極集電体321が設けられ、第2筐体332と正極121との間には、正極集電体322が設けられ、各々から端子が筐体320の外部に取り出されている。なお、負極122として金属を用いる場合は、負極集電体321を用いず負極122から直接端子を外部に取り出しても良い。
上述した構成の水電池において、電解質123を、コーヒーフィルタやキッチンペーパー、濾紙のような吸水性を有する絶縁体のシートから構成するとよく、例えば、植物繊維からつくられるセルロース系セパレータのような、自然分解される材料のシートを電解質123に用いることが特に好ましい。
また、筐体320を、電池セルを内部に維持することが可能で、自然分解される材料から構成するとよい。筐体320は、天然物系、微生物系、化学合成系のいずれの材料でも良く、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉などから構成することができる。特に、植物由来のポリ乳酸などの化学合成系が好ましい。また、筐体320の形状は、生分解性プラスチックを加工することで得られる形状であれば限定されない。筐体320に適用可能な材料の例としては、市販の生分解性プラスチックフィルムの他、牛乳パックなどに用いられるポリエチレンなどの樹脂の被膜が形成されている用紙、また寒天フィルムなども使用できる。
上述した材料で構成した第1筐体331と第2筐体332とを、周縁部で接着することで、正極121以外の電池セル内部を密閉することが可能である。接着方法としては、熱シールや接着剤を使用する例が挙げられ、特に限定はされない。生分解性樹脂で構成される接着剤を使用することが好ましい。なお、正極121、負極122、電解質123、第1筐体331、第2筐体332、負極集電体321、正極集電体322は、電池として作動するためのこれらの配置が損なわれない限り、形状は限定されない。例えば、平面視で、四角形または円形のシート形状、あるいは、ロールした形状で使用することができる。
上述した自然分解される材料から構成した筐体320による水電池は、例えば、土壌の水分センサーなどの使い捨てデバイスで使用した際に、時間がたつにつれて自然分解され、電池を回収する必要がない。また、自然由来の材料や肥料成分で構成されているため、環境に対する負荷が極めて低い。土壌以外にも、森の中や海中などの自然界で使用しても回収する必要がなく、また、通常の生活環境下で使用した場合には燃えるごみとして処分することができる。
[実験例1]
はじめに、実施の形態3における実験例1について説明する。実験例1は、一体とされた複数のナノシートが分岐を有することで三次元ネットワーク構造とされた共連続体を正極として使用する例である。正極を、以下のようにして合成した。以下の説明では、代表として、グラフェンをナノシートとして使用する製造方法を示すが、グラフェンを他の材料によるナノシートに変えることで、三次元ネットワーク構造を有する共連続体を調整することができる。なお、以下に示す気孔率は、共連続体を水銀圧入法により求めた細孔径分布から、細孔を円筒形とモデル化して算出した。
まず、市販のグラフェンゾル[分散媒:水(H2O)、0.4重量%、Sigma−Aldrich製]を試験管に入れ、この試験管を液体窒素中に30分間浸すことでグラフェンゾルを完全に凍結させた。グラフェンゾルを完全に凍結させた後、凍結させたグラフェンゾルをナスフラスコに取り出し、これを凍結乾燥機(東京理科器械株式会社製)により10Pa以下の真空中で乾燥させることで、グラフェンナノシートを含む三次元ネットワーク構造を有する伸縮性共連続体を得た。
得られた、共連続体をX線回折(XRD)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製した共連続体はXRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−075−0444)単相であることを確認した。なお、PDFカードNoは、国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Data,ICDD)が収集したデータベースであるPDF(Powder Diffraction File)のカード番号であり、以下同様である。
また、SEM観察および水銀圧入法により、得られた共連続体は、ナノシート(グラフェン片)が連続に連なった、平均孔径が1μmの共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共連続体のBET比表面積測定を測定したところ、510m2/gであった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、90%以上であった。更に、引張試験の結果から、得られた共連続体は、引張応力により歪が20%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認した。
このようなグラフェンによる共連続体を、打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより直径14mmの円形に切り抜き、正極を得た。
負極は、市販の金属マグネシウム板(厚さ200μm、ニラコ製)を、打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより直径14mmの円形に切り抜くことで調整した。
電解液は、塩化カリウム(KCl、関東化学製)を1mol/Lの濃度で純水に溶解した溶液を用いた。セパレータは、電池用のセルロース系セパレータ(日本高度紙工業製)を用いた。
上述した正極、負極、電解質となる電解液およびセパレータを用い、図16A、図16Bを用いて説明したコインセル型の水電池を作製した。まず、スポット溶接により銅箔(ニラコ製)の周縁部を内側に固定した正極ケースに、上記の正極を設置した。また、金属マグネシウム板より構成した負極は、スポット溶接により周縁部を銅箔(ニラコ製)に固定し、更に、この銅箔を負極ケースにスポット溶接して固定した。次に、正極ケースに設置した正極の上に、セパレータを載置し、載置したセパレータに電解液を注入した。次に、負極を固定した負極ケースを正極ケースに被せ、コインセルかしめ機で正極ケースおよび負極ケースの周縁部をかしめることにより、ポリプロピレン製ガスケットを含むコインセル型の水電池を作製した。
作製したコインセル型の水電池の電池性能を測定した。まず、放電試験を実施した。水電池の放電試験は、市販の充放電測定システム(北斗電工社製、SD8充放電システム)を用い、正極の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cm2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、0Vに低下するまで測定を行った電池の放電試験は、25℃の恒温槽内(雰囲気は通常の生活環境下)で測定を行った。放電容量は、負極の重量当たりの値(mAh/g)で表した。実験例1における初回の放電曲線を図18に示す。
図18に示すように、共連続体を正極に用いたときの平均放電電圧は0.8Vであり、放電容量は410mAh/gであることが分かる。なお、平均放電電圧は、電池の放電容量(本実験例では410mAh/g)の1/2の放電容量(実験例1では205mAh/g)の時の電池電圧とする。
以下の表7に、カーボン(C)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化モリブデン(MoO3)、硫化モリブデン(MoS2)によるナノシートから共連続体を構成して正極とした水電池の平均放電電圧を示す。
いずれも、平均放電電圧は、0.7V以上を示し、後述する粉末カーボンを用いた正極について評価した比較例1に比べて大きい値であった。炭素以外の材料によるナノシートの例の場合も、グラフェン同様、高比表面積であるため、水還元が効率的に行われたため、放電電圧が改善されたものと考えられる。
[実験例2]
次に、実施の形態3における実験例2について説明する。実験例2は、一体とされた複数のナノファイバーが分岐を有することで三次元ネットワーク構造とされた共連続体を正極として使用する例である。正極を、以下のようにして合成した。以下の説明では、代表として、カーボンナノファイバーを使用する製造方法を示すが、カーボンナノファイバーを他の材料によるナノファイバーに変えることで、三次元ネットワーク構造を有する共連続体を調整することができる。
共連続体の評価法、水電池の作製、および放電試験の方法は、実験例1と同様にして行った。共連続体は、実験例1に示したプロセスと同様に作製し、原料にはカーボンナノファイバーゾル[分散媒:水(H2O)、0.4重量%、Sigma−Aldrich製]を使用した。
得られた、共連続体は,XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製した共連続体はXRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.00−058−1638)単相であることを確認した。また、SEM観察および水銀圧入法により、ナノファイバーが連続に連なった平均孔径が1μmの共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共連続体のBET比表面積測定を測定したところ、620m2/gあった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、93%以上であった。更に、引張試験の結果から、実験例2の共連続体は、引張応力により歪が40%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認した。
このカーボンナノファイバーによる共連続体を正極に用いて実験例1と同様のコインセル型の水電池を作製した。作製した実験例2における水電池の放電電圧を表8、表9に示す。実験例2では、放電容量は、初回で430mAh/gを示し、実験例1のグラフェンによる共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。このような特性の向上は、より伸縮性の高い共連続体を用いることにより、放電時において円滑に反応が行われたことによると考えられる。
表8には、カーボン(C)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化マンガン(MnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化モリブデン(MoO
3)、硫化モリブデン(MoS
2)によるナノファイバーから共連続体を構成して正極とした水電池の平均放電電圧を示す。
いずれも、平均放電電圧は、0.8V以上を示し、実験例1のようなナノシートを含む共連続体よりも全体的に大きい値であった。これらのナノファイバーの例の場合も、カーボンナノファイバー同様、伸縮性を有する正極が効率的に水還元を行ったため、放電電圧が改善されたものと考えられる。
[実験例3]
次に、実験例3について説明する。実験例3では、カーボンナノファイバーによる共連続体に、酸化物または金属を触媒として担持させて構成した正極について説明する。以下では、代表として、触媒としてMnO2を共連続体に担持させる場合について説明するが、Mnを任意の金属に変えることで、任意の酸化物を触媒として共連続体に担持させることができる。また、中和の工程を行わないことで、任意の金属を触媒として共連続体に担持させることができる。
共連続体の評価法、水電池の作製、充放電試験方法は、実験例1,2と同様にして行った。共連続体は、実験例2と同様に作製した。次に、市販の塩化マンガン(II)4水和物(MnCl2・4H2O;関東化学製)を蒸留水に溶解し、作製した共連続体を含浸させ、塩化マンガンを担持させた。次いで、塩化マンガンを担持する共連続体(共連続体が担持する塩化マンガン)に、徐々にアンモニア水(28%)をpH7.0になるまで滴下し、中和することで水酸化マンガンを析出させた。析出物は、塩素が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。
得られた水酸化マンガン担持共連続体を、アルゴン雰囲気中500℃で6時間熱処理し、酸化マンガン(MnO2)を担持した共連続体を作製した。作製した酸化マンガン担持共連続体を、XRD測定、TEM観察を行い、評価した。XRD測定より、酸化マンガン(MnO2,PDFファイルNo.00−011−079)のピークを観察することができた。共連続体に担持された触媒は、酸化マンガン単相であることを確認した。また、TEMにより酸化マンガンは、共連続体の表面に平均粒径100nmの粒子状で析出している状態が観察された。
この酸化マンガンを担持した共連続体を正極に用いて実験例1,2と同様のコインセル型の水電池を作製した。作製した実験例3における水電池の平均放電電圧は、0.91Vであった。また、以下の表9に、他の触媒を用いた場合の結果も合わせて示す。
実験例3では、平均放電電圧は、0.91Vとなり、実験例2の、触媒として酸化マンガンを担持していない共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。本実験例の水電池の正極は安定に作動することを確認した。
[実験例4]
次に、実験例4について説明する。実験例4は、バクテリアに産生させたナノファイバーが分散したゲルによる共連続体に、更に、酸化マンガンを触媒として担持させた場合について説明する。以下では、代表として、鉄バクテリアが産生した酸化鉄によるナノファイバーから共連続体を作製した場合について示すが、鉄バクテリアを任意のバクテリアに変えることで、酸化マンガンによるナノファイバーによる共連続体を調整することができる。
共連続体の評価法、水電池の作製法、および放電試験方法は、実験例1,2と同様にして行った。
まず、鉄バクテリアであるレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)を、鉄小片(純度99.9%以上、高純度化学研究所製)と共に試験管中のJOP液体培地に投入し、振とう器で20℃、14日間培養した。JOP液体培地は、滅菌地下水1L中、リン酸水素二ナトリウム12水和物0.076g、リン酸二水素カリウム2水和物0.02g、HEPES[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid:緩衝液用物質]2.383g、硫酸鉄0.01mmol/L、pHを水酸化ナトリウム水溶液で7.0に調整した培地である。また、レプトスリックス・オクラセアは、ATCC(American Type Culture Collection)から購入した。
培養した後、鉄小片を取り除き、得られたゲルを純水中で振とう器を用いて24時間洗浄を行った。この洗浄においては、純水は3度交換した。洗浄したゲルを原料とし、実験例1および実験例3に示したプロセスと同様に水電池を作製した。
得られた、共連続体は、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製した共連続体はXRD測定よりアモルファス状のFe3O4およびγ−Fe2O3(Fe3O4,PDFカードNo.01−075−1372,γ−Fe2O3,PDFカードNo.00−039−1346)であることを確認した。
また、SEM観察により、直径1μmで中空状のナノファイバー(ナノチューブ)が連続に連なった、共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共BET比表面積測定を測定したところ、800m2/gであった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、95%以上であった。更に、引張試験の結果から、引張応力により歪が60%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認した。
実験例4における鉄バクテリア産生の酸化鉄ナノファイバーによる共連続体を正極に用いた水電池の、平均放電電圧は、1.00Vであった。また、以下の表10に、他の共連続体を用いた場合の結果も合わせて示す。
実験例4では、平均放電電圧は、1.00Vを示し、実験例3のような酸化マンガンを担持したカーボンナノファイバーによる共連続体を用いた場合よりも大きい値となった。この結果は、より触媒活性の高い共連続体を用いることにより、放電時において円滑に反応が行われたことによると考えられる。
また、表10に示すように、バクテリア産生酸化マンガンによる共連続体を用い、酸化マンガンを触媒とした正極による水電池の平均放電電圧は、1.10Vを示し、実験例3よりも大きい値であった。バクテリア産生酸化マンガンは、マンガン細菌であるレプトスリックス・ディスコフォラ(Leptothrix discophora)により、マンガン小片(純度99.9%以上、高純度化学研究所製)を用いて前述同様に培養して生産した。レプトスリックス・ディスコフォラは、ATCCから購入した。このバクテリア産生ナノファイバーの場合も、鉄バクテリア産生酸化鉄同様、バクテリアにより産生された優れた伸縮性を有する正極が効率的に水還元を行ったため、放電電圧が改善されたものと考えられる。
[実験例5]
次に、実験例5について説明する。実験例5は、バクテリアに産生させたセルロースが分散したゲルによる共連続体に、更に、酸化マンガンを触媒として担持させた場合について、共連続体の評価法、水電池の作製法、および充放電試験方法は、実験例1,2と同様にして行った。
まず、酢酸菌であるアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)産生のバクテリアセルロースゲルとして、ナタデココ(フジッコ製)を用い、実験例1および実験例3に示したプロセスと同様に水電池を作製した。なお、実験例5では、真空中で乾燥させた後、窒素雰囲気下で1200℃、2時間の焼成により、共連続体を炭化させ、これにより正極を作製した。
得られた、共連続体(炭化した共連続体)は、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行い、評価した。この共連続体は、XRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)単相であることを確認した。また、SEM観察により、直径20nmのナノファイバーが連続に連なった、共連続体であることを確認した。また、水銀圧入法により共連続体のBET比表面積測定を測定したところ、830m2/gであった。また、水銀圧入法により共連続体の気孔率を測定したところ、99%以上であった。更に、引張試験の結果から、引張応力により歪が80%加えられても、弾性領域を超えず、応力印加前の形状に復元することを確認し、炭化した後も優れた伸縮性を有する。
実験例5における水電池の、平均放電電圧を以下の表11に示す。表11には、実験例1,2,3,4の結果も示している。実験例5では、平均放電電圧は、1.21Vを示し、実験例4のような酸化マンガンを担持した鉄バクテリア産生酸化鉄を含む共連続体を用いた場合よりも大きい値であった。
上記のような特性の向上は、より伸縮性の高い共連続体を用いることにより、放電時において正極が効率的に水還元を行ったことと、Cが優れた導電性を有するために、円滑に反応が行われたと考えられる。
上述したように、本発明により、高気孔率、BET比表面積測定で、伸縮性を有する共連続体が得られ、また、この共連続体を正極に用いた水電池によれば、放電時の効率的な水還元が実現される。上記のような特性の向上は、本発明による各種の改善が理由と考えられる。
[実験例6]
次に、実験例6について説明する。実験例6は、バクテリアに産生させたセルロースが分散したゲルによる共連続体に、更に、酸化マンガンを触媒として担持させた場合について、図17を用いて説明した筐体ごと自然分解される水電池を作製した。酸化マンガンを触媒として担持させた共連続体の合成方法、共連続体の評価法、および充放電試験方法は、実験例5と同様にして行った。
以下、実験例6における水電池の作製方法について説明する。負極は、市販の金属マグネシウム板(厚さ200μm、ニラコ製)を、はさみを用いて20mm×20mmの正方形に切り抜くことで作製した。
電解液は、塩化カリウム(KCl、関東化学製)を1mol/Lの濃度で純水に溶解した溶液を用いた。セパレータは、電池用のセルロース系セパレータ(日本高度紙工業製)を25mm×25mmの正方形にカットして用いた。
金属マグネシウム板からなる負極は、この周縁部をスポット溶接により負極集電体である銅箔(ニラコ製)に固定し、更に、この銅箔を平面視で25mm×25mmにカットし、この端を、端子となる3×20mmにカットした銅箔(ニラコ製)の短辺にスポット溶接した。
また、正極用の集電体としての25mm×25mmにカットした銅箔(ニラコ製)に正極を圧着し、この銅箔の端に、端子となる3×20mmにカットした銅箔(ニラコ製)の短辺にスポット溶接した。
筐体の材料として、植物系フィルムシート エコロージュ(三菱樹脂製)を用いた。このシートを平面視30m×30mmにカットした2枚のカットシートを作製し、一方を第1筐体とし、他方を第2筐体とした。また、正極側に用いる第2筐体には、中央部にガス開放孔として2mm×2mmの開口を形成した。
負極側の第1筐体の上に、負極を固定した負極集電体およびセパレータを配置し、更にセパレータには電解液を注入した。この上に、正極を圧着した正極集電体、および第2筐体を被せ、第1筐体および第2の内側の周縁部(幅約5mm)を生分解性樹脂(ミヨシ油脂製)で接着して密閉した。このようにして、水電池を作製した。
実験例6における水電池の、平均放電電圧を表11に示す。表11に示すように実験例6では、平均放電電圧は、1.20Vを示し、実験例5とほぼ同様の放電電圧であった。
実験例6における水電池を放電後に土壌中に設置したところ、約半月で筐体の分解が目視で確認でき、約1カ月後には完全に消失した。土壌中の微生物によって代謝され分解されたことが示された。
[実験例7]
次に、実験例7について説明する。実験例7は、実験例6と同様の手順で作製した水電池について、土壌を模擬した環境下で放電試験を行った。
実験例7における水電池の、平均放電電圧を表11に示す。表11に示すように実験例7では、平均放電電圧は、1.16Vを示し、実験例6よりも低下したが、土壌環境下においても問題なく作動することが示された。また、実験例7における水電池を放電後に土壌中に放置したところ、放電試験開始時から約1カ月後には完全に消失した。
[比較例1]
次に、比較例1について説明する。比較例1は、一般的な空気電池の空気極用の電極として公知であるカーボン(ケッチェンブラックEC600JD)、および酸化マンガンを用いた水電池セルを作製して評価した。比較例1では、実験例1と同様のコインセル型の水電池を作製した。
酸化マンガン粉末(関東化学製)、ケッチェンブラック粉末(ライオン製)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン製)を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕および混合し、ロール成形して、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径14mmの円形に切り抜き正極を得た。電池の放電試験の条件は、実験例1と同様である。
比較例1に係る水電池の平均放電電圧を実験例1〜7の結果とともに表11に示す。表11に示すように、比較例1の平均放電電圧は、0.50Vであり、実験例1よりも小さな値を示した。また、測定後に比較例1の正極を観察したところ、正極の一部が崩れて電解液中に分散しており、正極の電極構造が破壊されている様子が見られた。
次に、実施の形態3における各実験例1〜7,および比較例1について、負極をFeから構成した場合、負極を亜鉛から構成した場合、および負極をAlから構成した場合の同様の結果について、以下の表12に示す。
以上の結果より、実施の形態3における電池(水電池)は、公知の材料による正極を用いた水電池よりも、電圧および容量に関して優れていることが確認された。
以上に説明したように、実施の形態3によれば、一体とされた複数のナノ構造体が分岐を有することで三次元ネットワーク構造とされた共連続体から正極を構成したので、マグネシウムを負極に用いた電池(水電池)がより容易に取り扱えるようになる。本発明の電池は、土壌の肥料に用いられる元素や雨水や海水中に含まれる金属以外の金属元素が含まれず、また、自然分解されるため、極めて環境負荷が低い。このような電池は、日常環境の使い捨て電池を始め、土壌中で用いるセンサーなどの様々な駆動源として有効利用することができる。また、本発明によれば、水電池の放電電圧を大きくすることができる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。