JP6695556B2 - イメージング質量分析データ処理装置及び方法 - Google Patents

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Description

本発明は、試料上の2次元領域内の多数の測定点についてそれぞれ質量分析を行って得られたデータを処理するイメージング質量分析データ処理装置及び方法に関する。
質量分析を利用して未知化合物を同定する際には、一般に、多数の既知化合物のマススペクトルを格納したライブラリ(データベース)を利用するライブラリ検索が行われる。 例えば特許文献1には、MSn分析(nは2以上の整数)を行うことで得られた未知化合物のMSnスペクトルをライブラリに収録されている多数の既知化合物のMSnスペクトルと照合することにより、マススペクトルの類似性を示すスコアをそれぞれ求め、そのスコアに基づいて未知化合物を同定する方法が開示されている。
また、化学構造の一部が共通している異なる化合物のMS2スペクトルは類似しているため、ライブラリ検索を実施した際にそれら複数の化合物が同定候補として挙がる場合がある。こうした場合に、類似化合物の影響を排除して目的化合物を高い確度で同定する方法として特許文献2に記載の方法がある。この方法では、ライブラリに収録されているマススペクトル上のピーク毎にライブラリ検索に使用するか否かを示す情報を付加することができるため、複数の類似化合物に共通する例えば主要骨格に対応するピークをライブラリ検索に使用しないように設定しておくことで、主要骨格以外の構造に由来するピークの類似性を反映したスコアを算出することができる。それによって、目的化合物の同定精度を向上させることができる。
通常、分析対象である試料中に同定対象である未知化合物のみが存在していることは殆どなく、未知化合物を含む試料は他の化合物も含んでいる。そこで、ライブラリ検索により未知化合物を同定する場合、未知化合物を含む試料は液体クロマトグラフ(LC)、ガスクロマトグラフ(GC)、或いは電気泳動装置(CE)に導入され、目的とする未知化合物は他の化合物と分離されたうえで質量分析装置に導入される。LC等によって未知化合物と他の化合物とが完全に分離されるとは限らないものの、多くの場合、未知化合物と他の化合物との重なりは解消され、それによって未知化合物の同定精度をかなり改善することができる。
近年、質量分析を利用して2次元的な拡がりを有する試料上の物質の分布を調べる手法として質量分析イメージングが注目されている。質量分析イメージングは、生体組織切片などの試料の2次元領域内の多数の測定点(微小領域)に対しそれぞれ質量分析を実施し、それにより得られた分析結果から例えば特定の質量電荷比を有する化合物の2次元分布を可視化する手法であり、創薬やバイオマーカ探索、各種疾病・疾患の原因究明などへの応用が進められている。質量分析イメージングを実施するための質量分析装置は一般にイメージング質量分析装置と呼ばれている(非特許文献1など参照)。
一般に質量分析イメージングでは、生体組織切片である試料の表面にマトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)用のマトリクスを直接塗布し、そのままMALDIイオン源によるイオン化を行う場合が多い。この場合、上述したLC、GC、CE等で事前に化合物が分離される場合とは異なり、試料に含まれる多数の化合物が分離されずに混じった状態でイオン化されるため、マススペクトルにはその多数の化合物に由来するピークが現れる。また、組成は異なるものの質量が非常に近い複数の化合物や、組成が同じであって構造のみが異なる異性体などは、マススペクトル上で重なったピークとして、つまりあたかも一つの化合物であるかのように観測される。
また、マススペクトル上のピークの質量電荷比m/z値は特定の化合物にプロトン(H)などのイオンが付加した状態のイオンの質量電荷比に相当する。生体試料を質量分析すると、プロトンの代わりに生体中に多く含まれるナトリウム(Na)イオンやカリウム(K)イオンが化合物に付加したり、それらを組み合わせた−H+2K、−H+2Na(ただし、−Hはプロトンが脱落することを意味し、+2Naや+2KはNaイオンやKイオンが二つ付加することを意味する)などが付加したりしたイオンがマススペクトル上にしばしば現れる。さらにまた、使用するマトリクスの種類によっては、測定対象の化合物にマトリクスとプロトンなどが付加したイオンがマススペクトル上に現れる場合もある。さらにまた、マトリクス分子の多量体や、そこから中性の分子が脱落したものにH、K、Naなどのイオンが付加したものが現れることもある。
こうしたことから、同定対象である特定の質量電荷比におけるピークをプリカーサイオンとして選択してMS/MSスペクトルを取得すると、該プリカーサイオンには複数の化合物由来のイオンが含まれるため、複数の化合物由来のプロダクトイオンのピークがMS/MSスペクトルに現れる。そのため、上述したような従来のライブラリ検索を実行しても的確な同定を行えないことがある。具体的にいうと、プリカーサイオンに混合している複数の化合物が低いスコアで以て検索結果に現れることになる。
またライブラリに収録されていない化合物がプリカーサイオンに含まれる場合もあり、そのような場合にライブラリに収録されていない化合物由来のプロダクトイオンのピークの強度が大きいと、ライブラリ検索結果に、ライブラリに収録されている方の化合物すら同定候補として挙がらない場合もある。
一例として、マトリクスであるDHBの多量体由来のイオンと還元型グルタチオン由来のイオンとが共にプリカーサイオンに含まれる場合に、実測により得られたMS/MSスペクトルを図9(a)に示す。また、実測のMS/MSスペクトルとの比較のために、DHBの多量体の標準的なMS/MSスペクトルと、還元型グルタチオンの標準的なMS/MSスペクトルを図9(b)、(c)に示す。これら標準的なMS/MSスペクトルはライブラリに収録されているものである。図9から、実測のMS/MSスペクトルには、DHBの多量体由来のプロダクトイオンピークと還元型グルタチオン由来のプロダクトイオンピークがいずれも含まれていることが分かる。
図9(a)に示した実測のMS/MSスペクトルについてライブラリ検索を行ったところ、上記二つの化合物が同定候補として挙げられた。しかしながら、それらの類似度のスコアはDHBの多量体で「37」、還元型グルタチオンで「34」にすぎず、完全一致である場合のスコア「100」に比べてかなり低い値である。この程度の類似度では十分に高い信頼度で同定されているとは言い難く、その化合物が含まれると断定しにくいレベルである。
国際公開第2014/128912号 国際公開第2016/002047号
「iMScope TRIO イメージング質量顕微鏡」、[online]、株式会社島津製作所、[平成28年6月22日検索]、インターネット<URL: http://www.an.shimadzu.co.jp/bio/imscope/index.htm>
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は、イメージング質量分析装置で得られたデータをライブラリ検索に供することで試料中に存在する化合物を同定する場合に、高い精度で以て同定を行うことができるイメージング質量分析データ処理装置及び方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置は、試料上の所定の測定対象領域内の複数の測定点に対しそれぞれMSn分析(ただしnは2以上の整数)を行うことで得られたMSnスペクトルデータを処理するイメージング質量分析データ処理装置であって、
a)前記MSnスペクトルデータに基づいて、前記測定対象領域又は該領域中の一部領域に対する特定の質量電荷比における信号強度分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成部と、
b)前記質量分析イメージング画像上で複数の小領域をそれぞれ関心領域として設定する関心領域設定部と、
c)前記複数の関心領域に含まれる測定点におけるMSnスペクトルデータに基づいて、該複数の関心領域の間で該複数の関心領域それぞれにおけるMSnスペクトルを加算した又は減算した演算済みMSnスペクトルを取得するMSnスペクトル取得部と、
d)前記演算済みMSnスペクトルを利用して前記複数の関心領域に存在する化合物を同定する化合物同定部と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係るイメージング質量分析データ処理方法は、上記本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置で実現される方法であり、試料上の所定の測定対象領域内の複数の測定点に対しそれぞれMSn分析(ただしnは2以上の整数)を行うことで得られたMSnスペクトルデータを処理するイメージング質量分析データ処理方法であって、
a)前記MSnスペクトルデータに基づいて、前記測定対象領域又は該領域中の一部領域に対する特定の質量電荷比における信号強度分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成ステップと、
b)前記質量分析イメージング画像上で複数の小領域をそれぞれ関心領域として設定する関心領域設定ステップと、
c)前記複数の関心領域に含まれる測定点におけるMSnスペクトルデータに基づいて、該複数の関心領域の間で該複数の関心領域それぞれにおけるMSnスペクトルを加算した又は減算した演算済みMSnスペクトルを取得するMSnスペクトル取得ステップと、
d)前記演算済みMSnスペクトルを利用して前記複数の関心領域に存在する化合物を同定する化合物同定ステップと、
を有することを特徴としている。
上記本発明に係るイメージング質量分析データ処理方法を実施する本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置において、画像作成部は、例えば同定対象である目的化合物に関連すると推測される特定の質量電荷比がユーザにより指定されると、収集されたMSnスペクトルデータに基づいて、測定対象領域又は該領域中の一部領域に対するその特定の質量電荷比におけるプロダクトイオンの信号強度分布を示す質量分析イメージング画像を作成する。該質量分析イメージング画像上で信号強度の大きな部分は目的化合物の存在量が多い部分であると推測される。そこで、関心領域設定部は例えば、質量分析イメージング画像上で相対的に信号強度が大きい小領域を関心領域として設定する。この関心領域設定部による関心領域の設定は、質量分析イメージング画像や試料を光学的に観測する光学顕微鏡による光学画像に基づいて自動的に行うようにしてもよいし、或いは、質量分析イメージング画像や光学画像を目視で確認したユーザの判断に基づく手動での指示に応じて行うようにしてもよい。また、この関心領域の大きさや数は任意である。
複数の関心領域が設定されるとMSnスペクトル取得部は、その複数の関心領域にそれぞれ含まれる測定点におけるMSnスペクトルデータを用い、例えば関心領域毎に平均的なMSnスペクトルを求め、複数の関心領域における平均的なMSnスペクトルを加算することで演算済みMSnスペクトルを取得する。平均的なMSnスペクトルの代わりに、各関心領域において代表的なMSnスペクトルを用いてもよい。代表的なMSnスペクトルとしては例えば、関心領域の中で上記特定の質量電荷比におけるプロダクトイオンの信号強度が最大である測定点のMSnスペクトルを選択したり、或いは、主成分分析や階層的クラスタ解析などの統計解析手法により関心領域に対する標準的なMSnスペクトルを選択したりしてもよい。
なお、主成分分析により求められるMSnスペクトルは、例えば後述する因子負荷量スペクトルなどである。後述の処理では測定対象領域内の全ての測定点に対して主成分分析を行っているが、これを関心領域内に含まれる測定点に対してのみ行い、それにより得られる第1主成分(又はその他の主成分)に対する因子負荷量スペクトルを代表的なMSnスペクトルとすればよい。
例えば上述したように目的化合物の存在量が多い部分が複数の関心領域として設定されると、上記演算済みMSnスペクトルでは、目的化合物由来のプロダクトイオンのピークの強度値が他の化合物由来のプロダクトイオンのピークの強度値に比べて相対的に大きくなる可能性が高い。そのため、演算済みMSnスペクトルを例えばライブラリ検索に供してスペクトルの類似性を示すスコアを求めると、正解である化合物に対するスコアが高くなる。それによって、関心領域に存在する未知の化合物を的確に同定できる可能性が高まる。
また、例えばMALDI用マトリクスのように試料上の測定対象領域全体にほぼ満遍なく存在している化合物がある場合には、関心領域設定部は目的化合物の存在量が多い部分と目的化合物の存在量が少ない又は殆ど存在しない部分とをそれぞれ関心領域として設定し、MSnスペクトル取得部は、その複数の関心領域の間で該複数の関心領域それぞれの平均的な又は代表的なMSnスペクトルを減算するとよい。二つのMSnスペクトルについて減算を行うと、両方に共通に同程度の量存在している化合物由来のピークの強度値はゼロに近くなるから、上記減算によって、目的化合物由来のプロダクトイオンのピークの強度値が、測定対象領域全体にほぼ満遍なく存在している化合物由来のプロダクトイオンのピークの強度値に比べて相対的に大きくなる可能性が高い。したがって、この場合にも、演算済みMSnスペクトルをライブラリ検索に供してスペクトルの類似性を示すスコアを求めると、正解である化合物に対するスコアが高くなる。それによって、関心領域に存在する未知の化合物を的確に同定できる可能性が高まる。
なお、MSnスペクトル取得部においてMSnスペクトルの減算を行う際には、減算によって消去したいピークの強度値が揃っているとは限らない。そこで、少なくとも一方のMSnスペクトルの各ピークの強度値に適宜の係数を乗じたうえで減算を行うようにしてもよい。
上述したように、本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置において、関心領域設定部による関心領域の設定はユーザの判断に基づく手動での指示に応じて行うようにすることができる。
そのために本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置では、好ましくは、
前記質量分析イメージング画像を表示部の画面上に表示する画像表示処理部と、
表示された質量分析イメージング画像上でユーザが任意の小領域を関心領域として指定する関心領域指定部と、
をさらに備え、前記関心領域設定部は前記関心領域指定部により指定された小領域を関心領域として設定する構成とするとよい。
上記関心領域指定部は、例えばマウスなどのポインティングデバイスの操作に応じて任意の形状及び大きさの枠を、表示された質量分析イメージング画像上に重ねて表示し、該枠で囲まれる部分を関心領域として指定するものとすることができる。
この構成によれば、ユーザは表示画面上で質量分析イメージング画像を確認しながら、簡便に関心領域を指定することができる。それにより、目的化合物の存在量が多いと推測される関心領域を確実に指定することができる。
またこの場合、本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置では、
前記MSnスペクトルデータに基づいて、主要な複数の質量電荷比における信号強度分布を示す参照質量分析イメージング画像を作成する参照画像作成部と、
前記複数の参照質量分析イメージング画像を信号強度分布の類似性に基づいて一又は複数のグループに分類する画像分類部と、
分類された参照質量分析イメージング画像を表示部の画面上に表示する参照画像表示処理部と、
をさらに備える構成とするとよい。
ここで、上記「主要な複数の質量電荷比」は例えば、測定対象領域全体又は適宜に間引いた複数の測定点におけるMSnスペクトルを全て加算した又は平均したMSnスペクトル上で、信号強度の大きい順に所定数だけ検出したピークの質量電荷比とすればよい。また、画像分類部は主成分分析や階層的クラスタ解析の手法により参照質量分析イメージング画像を一又は複数のグループに分類するものとすることができる。
同じグループに分類された複数の参照質量分析イメージング画像は類似した信号強度分布パターンを有しており、同じ化合物由来のプロダクトイオンである可能性が高いと推測できる。そこで、ユーザは表示された参照質量分析イメージング画像を参照しつつ目的化合物のみが含まれる部分を判断して関心領域を指定したり、目的化合物に別の化合物が重なっていることを判断して減算すべき関心領域を指定したりすることができる。このようにユーザは適切な関心領域を的確に指定することが可能である。
また、上記参照画像表示処理部は、分類された複数のグループにおける代表的な参照質量分析イメージング画像を異なる色で示して重ね合わせた画像を表示部の画面上に表示し、該画像に基づいて上記関心領域設定部による関心領域の設定を行えるようにしてもよい。
また本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置において、前記MSnスペクトル取得部は、複数の関心領域のそれぞれにおいて当該関心領域に含まれる測定点に対する平均MSnスペクトルを算出し、各関心領域に対する平均MSnスペクトルを加算又は減算することで前記演算済みMSnスペクトルを得る構成とすることができる。
この構成によれば、複数の関心領域におけるMSnスペクトルの加算や減算の処理が簡単である。また、関心領域毎に平均MSnスペクトルを表示することも可能になるので、加算や減算を行う前に又は行ったあとに、ユーザが関心領域毎の平均MSnスペクトルを確認することで、関心領域の指定が適切であるか否かを判断することも容易になる。
また本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置の第1の態様において、
前記化合物同定部は既知の化合物についてMSnスペクトルが格納されているライブラリを参照して化合物同定を行うものであり、
既知の化合物に混合し得る一又は複数の化合物を含む混合物のMSnスペクトルを、該混合物が混合する条件と共に前記ライブラリに格納しておき、
処理対象であるMSnスペクトルデータを取得した際の分析条件の一部が前記混合条件と一致する場合に、その混合条件に対応した前記ライブラリ中のMSnスペクトルを実測のMSnスペクトルから減算したうえでライブラリ検索を実行することを特徴としている。
既知の化合物に混合する可能性のある化合物としては、MALDIによるイオン化を行う場合にはMALDI用マトリクスが考えられる。また、試料が例えば生体組織切片などの生体試料である場合には、生体組織にごく一般的に含まれる化合物が既知の化合物に混合する可能性のある化合物として考えられる。一方、混合条件とは、使用するマトリクスの種類、プリカーサイオンの質量電荷比、プリカーサイオンの解離条件などである。
MSnスペクトルデータ取得時の分析条件がライブラリに格納されている混合条件と一致した場合には、その混合物由来のピークが実測のMSnスペクトル上に現れている可能性が高い。上記第1の態様によれば、その場合に、実測のMSnスペクトルから混合している化合物由来のピークが除去される又は少なくともその信号強度が低減されるので、ライブラリ検索によって目的化合物について正解である化合物における類似度を示すスコアが一層高くなる。
なお、この場合にも、上記MSnスペクトル取得部におけるMSnスペクトルの減算と同様に、少なくとも一方のMSnスペクトルの各ピークの強度値に適宜の係数を乗じたうえで減算を行うようにしてもよい。
また本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置の第2の態様において、
前記化合物同定部は既知の化合物についてMSnスペクトルが格納されているライブラリを参照して化合物同定を行うものであり、
該化合物同定部は、前記ライブラリに格納されている複数のMSnスペクトルを組み合わたMSnスペクトルと実測のMSnスペクトルとの類似性に基づく化合物同定を実行することを特徴としている。
ここで、組み合わせるMSnスペクトルの数は例えば「2」等と予め決めておいてもよいが、ユーザが指定できるようにしておいてもよい。
第2の態様において、化合物同定部はライブラリに格納されている多数のMSnスペクトルの中から所定数のMSnスペクトルを選択し、各MSnスペクトル上のピークの強度を加算する。その際に、複数のMSnスペクトルのうちの一つ又は全てではない複数のMSnスペクトル上のピークの強度に適宜の係数を乗じたうえで加算してもよい。また、この係数もユーザが適宜に指定したり、或いはユーザが指定した又は予め決められた範囲内を所定のステップで変化させることで複数段階の係数が設定されたりするようにしてもよい。そうして、選択するMSnスペクトルの組合せや乗じる係数を変更しつつ、加算したMSnスペクトルと実測MSnスペクトルとの類似度を算出し、高い類似度が得られるMSnスペクトルの組合せと係数とを同定結果としてユーザに提示する。これにより、目的化合物に重なっている他の化合物の影響が十分に除去しきれない場合でも、目的化合物を同定するのに重要な情報を得られる可能性が高まる。
また本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置の第3の態様において、
前記化合物同定部は既知の化合物についてMSnスペクトルが格納されているライブラリを参照して化合物同定を行うものであり、
該化合物同定部は、前記ライブラリに格納されているMSnスペクトル上の各ピークを所定の質量電荷比だけ上方向に又は下方向にシフトさせたMSnスペクトルと実測のMSnスペクトルとの類似性に基づく化合物同定を実行することを特徴としている。
ここで、ピークを上方向に又は下方向にシフトさせる質量電荷比の値は、例えば観測されると想定されるアダクトイオンの種類やイオンに付加する付加物の質量などに応じて予め決めておいてもよいし、ユーザが自由に指定できるようにしてもよい。或いは、所定のステップ幅でシフト量を変化させつつ、そのシフト量の異なるMSnスペクトル毎に実測MSnスペクトルとの類似度を計算するようにしてもよい。
この第3の態様によれば、アダクトイオンを考慮したMSnスペクトルがライブラリに収録されていない場合やライブラリに収録されているMSnスペクトルでは想定されていない物質の付加によるアダクトイオンが実測で生成されたような場合であっても、目的化合物についての正解である化合物候補を見つけられる可能性が高まる。
なお、上述した本発明に係る第1乃至第3の態様は、イメージング質量分析データ処理装置やイメージング質量分析データ処理方法に限らず、ライブラリ検索による化合物同定を行う一般的な質量分析データ処理装置や質量分析データ処理方法に適用することができる。
即ち、本発明に関連した第1の質量分析データ処理装置は、試料に対しMSn分析(ただしnは1以上の整数)を行うことで得られたMSnスペクトルデータを処理する質量分析データ処理装置であって、
a)既知の化合物に混合し得る一又は複数の化合物を含む混合物のMSnスペクトルが、その混合物の混合条件と共に収録されているライブラリと、
b)前記MSnスペクトルデータを前記ライブラリと照合することにより試料中の化合物を同定するものであって、該MSnスペクトルデータを取得した際の分析条件の一部が前記混合条件と一致する場合に、その混合条件に対応した前記ライブラリ中のMSnスペクトルを実測のMSnスペクトルから減算したうえでライブラリ検索を実行する化合物同定部と、
を備えることを特徴としている。
また、本発明に関連した第2の質量分析データ処理装置は、試料に対しMSn分析(ただしnは1以上の整数)を行うことで得られたMSnスペクトルデータを処理する質量分析データ処理装置であって、
a)既知の化合物のMSnスペクトルが収録されているライブラリと、
b)前記MSnスペクトルデータを前記ライブラリと照合することにより試料中の化合物を同定するものであって、該ライブラリに格納されている複数のMSnスペクトルを組み合わせたMSnスペクトルと実測のMSnスペクトルとの類似性に基づいて化合物を同定する化合物同定部と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置及び方法によれば、生体試料等に対してイメージング質量分析装置で得られたnが2以上であるMSnスペクトルデータをライブラリ検索に供することで試料中に存在する目的化合物を同定する場合に、共存している別の化合物の影響を低減して又は排除して、高い精度で以て目的化合物を同定することができる。
本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置を用いたイメージング質量分析装置の一実施例の概略構成図。 本実施例のイメージング質量分析装置における試料中の化合物同定時の特徴的なデータ処理のフローチャート。 本実施例のイメージング質量分析装置における試料中の化合物同定時の特徴的なデータ処理の説明図。 本実施例のイメージング質量分析装置におけるROI指定時に利用される参照質量分析イメージング画像の表示の一例を示す図。 本実施例のイメージング質量分析装置におけるROI指定時に利用される参照質量分析イメージング画像の表示の他の例を示す図。 本実施例のイメージング質量分析装置におけるライブラリ検索による同定処理の一例を示すフローチャート。 本実施例のイメージング質量分析装置におけるライブラリ検索による同定処理の他の例を示すフローチャート。 本実施例のイメージング質量分析装置におけるライブラリ検索による同定処理のさらに他の例を示すフローチャート。 DHBの多量体由来のイオンと還元型グルタチオン由来のイオンとが共にプリカーサイオンに含まれる場合の実測のMS/MSスペクトル(a)、DHBの多量体の標準的なMS/MSスペクトル(b)、及び、還元型グルタチオンの標準的なMS/MSスペクトル(c)。 9−AAマトリクスを用いてAMPを含む所定の生体試料に対して得られた実測のMS/MSスペクトル(a)、AMP単体の標準的なMS/MSスペクトル(b)、及び、実測のMS/MSスペクトルからAMPの標準的なMS/MSスペクトルを減算した結果(c)。
以下、本発明に係るイメージング質量分析データ処理装置を用いたイメージング質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のイメージング質量分析装置の概略構成図である。
本実施例のイメージング質量分析装置は、試料に対し質量分析イメージングを実行するイメージング質量分析部1と、イメージング質量分析部1において得られたデータに対し後述するような様々なデータ処理を実行するデータ処理部2と、ユーザ(分析者)が操作する入力部3と、分析結果等をユーザに提示するために表示する表示部4と、を備える。
イメージング質量分析部1は、図示しないものの、大気圧MALDIイオン源、イオントラップ、及び飛行時間型質量分析計(TOFMS)を含む。このイメージング質量分析部1は、ユーザにより指定された試料上の測定対象領域内の多数の測定点に対しそれぞれ質量分析(MS分析及びMS/MS分析)を実施し、測定点毎に所定の質量電荷比範囲に亘るMS(=MS1)スペクトルデータ及びMS/MS(=MS2)スペクトルデータを得ることができる。
データ処理部2は、機能ブロックとして、スペクトルデータ格納部20、参照情報作成処理部21、ROI(関心領域)設定処理部22、平均スペクトル作成部23、スペクトル加減算部24、同定処理部25、スペクトルライブラリ26、などを含む。
参照情報作成処理部21は詳細な機能ブロックとして、主要ピーク抽出部210、画像作成処理部211、画像分類部212、参照情報表示処理部213、を含む。スペクトルライブラリ26には、多数の既知の化合物について、化合物情報(化合物名、組成式、理論分子量、CAS番号等)と対応付けて標準的なMSスペクトル及びMS/MSスペクトルが収録されている。
なお、データ処理部2の実体はパーソナルコンピュータ(又はより高性能なワークステーション)であり、このコンピュータに予めインストールされた専用のデータ処理用ソフトウェアを実行することで上記各ブロックの機能が実現される。
以下、本実施例のイメージング質量分析装置を用いて、生体試料に特異的に分布する化合物を同定する際のユーザが行う操作及び本装置の処理動作について説明する。
図2はその際の特徴的なデータ処理のフローチャート、図3はそのデータ処理の説明図である。
イメージング質量分析部1はまず、試料上の2次元的な拡がりを有する測定対象領域中の多数の測定点に対しそれぞれ質量分析を実行しMSスペクトルデータを収集する(ステップS1)。一つの測定点に対して得られるデータは所定の質量電荷比m/z範囲に亘るマススペクトルを構成するデータである。得られたデータはデータ処理部2に送られ、スペクトルデータ格納部20に測定点の空間位置情報に対応付けて格納される。なお、一般にイメージング質量分析部1には光学顕微鏡が付設され、光学顕微鏡による光学画像を参照してユーザが測定対象領域を指定することができる。
次に、ユーザによる入力部3からの所定の入力操作に応じて、画像作成処理部211はスペクトルデータ格納部20に格納されたマススペクトルデータに基づいて、測定対象領域全体又はユーザにより指定された一部の領域についての、ユーザにより指定された特定の質量電荷比における信号強度の2次元分布を示すMSイメージング画像を作成し、表示部4の画面上に表示する。このとき、光学画像も併せて表示部4の画像上に表示することができる。また、ユーザによる入力部3からの所定の入力操作に応じて、平均スペクトル作成部23は、測定対象領域全体又はユーザにより指定された一部の領域に含まれる測定点について得られたマススペクトルを平均した平均マススペクトルを作成し、表示部4の画面上に表示する。ユーザはこうして表示されるMSイメージング画像や平均マススペクトルを参照し、さらには必要に応じてスペクトルライブラリ26に収録されている既知化合物の情報を参照し、同定したい目的化合物由来であると推測されるイオンをプリカーサイオンとして指定する(ステップS3)。
ユーザによりプリカーサイオンの質量電荷比が指定されると、イメージング質量分析部1は、測定対象領域中の多数の測定点に対しそれぞれ指定されたプリカーサイオンをターゲットとするMS/MS分析を実行しMS/MSスペクトルデータを収集する(ステップS4)。指定されたプリカーサイオンが目的化合物のみに由来するイオンであれば、MS/MSスペクトルには目的化合物に由来するプロダクトイオンのみが現れる。しかしながら、指定されたプリカーサイオンに目的化合物以外の別の化合物に由来するイオンが重なっている場合、MS/MSスペクトルには、目的化合物に由来するプロダクトイオンのほか、上記別の化合物に由来するプロダクトイオンのピークも現れる。その場合、このMS/MSスペクトルをそのままライブラリ検索に供して化合物同定を行うと、目的化合物として正解の化合物が十分な類似度で同定されなかったり(つまりは同定不能となる)、誤った別の化合物を化合物の候補として挙げたりするおそれがある。
そこで本実施例のイメージング質量分析装置では、まず参照情報作成処理部21が、MS/MS分析によって観測される主要な質量電荷比におけるプロダクトイオンのMS/MSイメージング画像を参照MS/MSイメージング画像として作成し表示部4の画面上に表示する(ステップS5)。より詳しくは、参照情報作成処理部21は例えば次のような処理を実行する。
まず主要ピーク抽出部210は測定対象領域中の全ての測定点に対して得られたMS/MSスペクトルを平均化したMS/MSスペクトルを求め、該MS/MSスペクトルについて所定の基準に則ってピークを検出し、これを主要ピークとする。例えば、ピーク強度値が所定閾値以上であるピークを検出したり、或いはピーク強度値の大きい順に所定個数のピークを検出したりすればよく、通常、複数の主要ピークが検出される。
画像作成処理部211は上記主要ピークの質量電荷比におけるMS/MSイメージング画像を参照MS/MSイメージング画像として作成し、画像分類部212はその多数の画像を2次元分布の類似性に応じてグループ分けする。この画像の分類には主成分分析や階層的クラスタ解析などの統計解析手法を用いることができる。
図4は、主成分分析を利用して参照MS/MSイメージング画像を分類した表示の一例である。
この例では、複数の主要ピークのm/z値と各測定点における主要ピークの強度値情報からなる行列データに対し各m/z値を説明変数として主成分分析を行い、各m/z値の線形結合を新たな主成分(つまりは第2、第3、…主成分)とした。このm/z値の線形結合に対するMS/MSスペクトルデータの各画素(測定点)の強度値に基づいて2次元分布画像を作成したものが、図4に示した参照画像表示画面100中の最左端の列の画像である。この画像はその主成分のグループに分類されたm/z値における標準的な2次元分布を示すヒートマップであると捉えることができる。また、図4において上記画像の右側には、主成分スコアから計算されるm/z値毎の因子負荷量(主成分負荷量)の大きさを示す因子負荷量スペクトルが示され、さらにその右側に、各主成分において因子負荷量が大きいm/z値の順にそのm/z値のMS/MSイメージング画像を表示している。なお、因子負荷量スペクトルとは、m/z値毎に求まる因子負荷量をマススペクトル様に表現したものである。
この参照画像表示画面100により、MS/MSイメージングデータ内で特徴的な空間分布と、その分布に近い個々のMS/MSイメージング画像をまとめて確認することができる。
また、図4に示したような情報の代わりに又はそれと共に、主成分分析により分類された各グループにおける代表的な参照MS/MSイメージング画像を異なる色で示して重ね合わせた画像を作成し、これをROI設定のための参照用として表示してもよい。
図5は、階層的クラスタ解析を利用して参照MS/MSイメージング画像を分類した表示の一例である。
各m/z値におけるMS/MSイメージングデータを分類対象として階層的クラスタリングを行い、MS/MSイメージング画像を、ユーザが予め指定したクラスタ数、又は、Jain-Dubes法、x-means法、Upper Tail法などにより自動的に決定されたクラスタ数に分類した。そして、各m/z値におけるMS/MSイメージング画像をクラスタ毎に分けて表示した。
図5に示した参照画像表示画面110中の上部領域には各クラスタの代表的なイメージング画像を表示し、その中の一つのイメージング画像をユーザがクリック操作等により選択すると、そのクラスタに属する(分類されている)m/z値のMS/MSイメージング画像が下部領域に一覧で表示されるようになっている。
この参照画像表示画面110では、MS/MSイメージングデータ内で特徴的な空間分布と、その中の一つのクラスタに含まれる複数のMS/MSイメージング画像とを確認することができる。
上記ステップS5において参照MS/MSイメージング画像を分類した結果、分布パターンが1種類しか存在しない場合には、そのMS/MSスペクトルのプリカーサイオンには1種類の化合物しか含まれていない可能性が高いということが分かる。また逆に、参照MS/MSイメージング画像を分類した結果、分布パターンが複数種類である場合には、それらに対応するピークは異なる化合物の由来のプロダクトイオンのピークである可能性が高いと判断できる。そこで、表示された空間分布情報に基づいて、ユーザは例えば目的化合物のみが含まれる又は目的化合物が特に多く含まれると推測される領域を認識してROIを指定することができる。また、目的化合物の分布領域に別の化合物の分布領域が重なっているか否かを判定し、重なっている場合には、後述するROI指定時に平均MS/MSスペクトルの加算ではなく減算を指定することができる。
上述したように、ユーザは、表示された参照MS/MSイメージング画像を確認し、例えば目的化合物の分布に近いと推測される適宜のm/z値を指定する(ステップS6)。すると、ROI設定処理部22は、指定されたm/z値のMS/MSイメージング画像を表示部4の画面上に表示する(ステップS7)。もちろん、複数のm/z値におけるMS/MSイメージング画像を例えば並べて表示させることもできる。このMS/MSイメージング画像上で又はMS/MSイメージング画像を参照しながら光学画像上でユーザは複数の関心領域(ROI)を指定し、さらに平均MS/MSスペクトルの加算処理又は減算処理のいずれを実行するかを選択する(ステップS8)。例えば図3(a)に示すように、表示されているMS/MSイメージング画像上の任意の範囲を囲むように枠を描く操作をポインティングデバイスにより行うと、ROI設定処理部22は描かれた枠を認識し、その枠で囲まれる範囲をROIとして設定する。ユーザは、任意の数、任意の大きさのROIを指定することができる。なお、加算処理を選択する場合には必要ないが、減算処理を選択する場合には減算されるROIと減算するROIをそれぞれ指定できるようにしておくとよい。
上述したようにプリカーサイオンに目的化合物由来のイオン以外に別の化合物由来のイオンが重なっている場合には、MS/MSスペクトルには目的化合物由来のプロダクトイオンのピークと別の化合物由来のプロダクトイオンのピークとが混在する。目的化合物由来のプロダクトイオンであると推測される質量電荷比(例えば図3(a)ではm/z=M1)のMS/MSイメージング画像上で、信号強度が高い部分は目的化合物の存在量が多いと推測される。そこで、ユーザは信号強度が高い部分をROIとして指定すればよい。
ユーザによる操作に応じてROI設定処理部22が複数のROIを設定すると、平均スペクトル作成部23は、その複数のROIにそれぞれ含まれる測定点に対応するMS/MSスペクトルデータをスペクトルデータ格納部20から取得し、図3(b)に示すように、ROI毎に平均MS/MSマススペクトルを算出する。さらにスペクトル加減算部24は、ステップS8において加算処理が選択されている場合には、図3(c)に示すように、各ROIの平均MS/MSスペクトルを加算することで加算処理後のMS/MSスペクトルを算出する(ステップS9)。
上述したようにMS/MSイメージング画像上で信号強度が高い部分をROIとして指定した場合、各ROIに対応する平均MS/MSスペクトルには目的化合物由来のプロダクトイオンのピークが高い信号強度で現れ、共存している別の化合物由来のプロダクトイオンのピークの信号強度は相対的に低い筈である。複数のROIそれぞれにおいて状況は同じである筈であるから、各ROIに対する平均MS/MSスペクトルを加算すると、目的化合物由来のプロダクトイオンのピークの信号強度と、別の化合物由来のプロダクトイオンのピークの信号強度との差は拡大する。即ち、別の化合物に比べて目的化合物由来のプロダクトイオンピークの強度は相対的に大きくなる。
同定処理部25は、上述した加算処理後のMS/MSスペクトルにおいて検出されるピークの情報をライブラリ検索に供することで化合物を同定する(ステップS10)。即ち、加算処理後のMS/MSスペクトルから得られるピーク情報をスペクトルライブラリ26に収録されている様々な化合物のMS/MSスペクトルと照合してそれぞれスペクトルパターンの類似度を計算し、類似度のスコアの高い化合物を目的化合物の同定候補として抽出する。そして、その同定結果、つまり同定候補である化合物の名称等の情報を類似度のスコアと共に表示部4の画面上に表示する(ステップS11)。
上述したように、加算処理後のMS/MSスペクトルは加算処理前のMS/MS平均スペクトルに比べて、別の化合物由来のプロダクトイオンのピーク強度に対する目的化合物由来のプロダクトイオンのピーク強度が相対的に大きくなる。そのため、同定処理においてスペクトルパターンの類似度が計算されたとき、目的化合物に対応した正解の化合物候補が高いスコアとなる可能性が高くなり、目的化合物の同定精度を向上させることができる。
また、目的化合物と共存している別の化合物の影響を低下させるためには、ステップS8においてユーザは、両者が共存しているROIと、別の化合物のみが存在している又は別の化合物が特に高い信号強度で存在しているROIとを指定し、前者から後者を減算する選択を行うとよい。この場合には、MS/MSスペクトル上で別の化合物由来のプロダクトイオンのピーク強度が下がるため、上記と同様に、ライブラリ検索による同定処理の際に目的化合物に対応した正解の化合物候補が高いスコアとなる可能性が高くなり、目的化合物の同定精度を向上させることができる。
なお、MS/MSスペクトルの減算を行う際に不要なピークを確実に除去するため、減算側に特定の係数を乗じた上で減算を行ったり、或いは、減算側のピークのm/z値が元のMS/MSスペクトルのピークのm/z値と一定の許容範囲内で一致すれば、信号強度に拘わらず元のMS/MSスペクトルからそのピークを消去したりした上でライブラリ検索を行うようにしてもよい。
ここで、上記処理の具体例として、上述したDHBの多量体と還元型グルタチオンとの混合物に対して得られたMS/MSスペクトルデータに本実施例の手法を適用して同定を実施した場合の例を説明する。
この場合、上述したように従来の一般的なライブラリ検索を行った結果、類似度のスコアは低いものの同定候補としてDHBと還元型グルタチオンが挙げられる。スペクトルライブラリ26に収録されているMS/MSスペクトルから還元型グルタチオンの主要なプロダクトイオンのピークは、m/z=178(プロトン付加イオンの場合にはm/z=179)であることが分かる。このピークの質量電荷比におけるMS/MSイメージング画像を表示させると還元型グルタチオンのおおまかな2次元分布を知ることができる。同様にDHB多量体の主要なプロダクトイオンピークはm/z=290であり、これは還元型グルタチオンのプロダクトイオンにはないため、このピークでMS/MSイメージング画像を作成するとDHB多量体のおおまかな2次元分布を知ることができる。
ここでは、還元型グルタチオンが同定したい目的化合物であるから、m/z=178(プロトン付加イオンではm/z=179)においてMS/MSイメージング画像を作成し、その画像の中で信号強度値の大きな部分に二つのROIを設定した。それらの各ROIに含まれる各測定点の平均MS/MSスペクトルを加算したMS/MSスペクトルをライブラリ検索に供したところ、還元型グルタチオンの類似度のスコアは「67」と従来のスコア値から大幅に向上した。
一方、DHB多量体由来のプロダクトイオンピークであるm/z=290(プロトン付加イオンではm/z=291)においてMS/MSイメージング画像を作成すると、DHB多量体の存在量が多い領域が分かる。そこで、還元型グルタチオン由来のプロダクトイオンの強度が大きなROIに対応する平均MS/MSスペクトルから、DHB多量体由来のプロダクトイオンの強度が大きなROIに対応する平均MS/MSスペクトルを減算したMS/MSスペクトルをライブラリ検索に供したところ、還元型グルタチオンの類似度のスコアは同様に「67」と従来のスコア値から大幅に向上した。
なお、上記実施例のイメージング質量分析装置では、ステップS5において図4、図5に示したような参照画像表示画面が表示されたとき、ユーザが空間分布の相違するイメージング画像のうちの代表的なものを指定して重ね合わせ表示することができるようにしてもよい。その場合、その重ね合わせ表示された画像を参照してユーザが同定したい目的化合物のみが分布している領域にROIを設定し、該ROIの範囲内に含まれる複数の測定点のMS/MSスペクトルの平均値などに基づいて化合物同定を行えるようにしてもよい。
また、上記実施例のイメージング質量分析装置では、イオンを解離させない質量分析実行時には試料に照射するレーザ光の径をレーザ照射点間隔に比べて小さく設定しておき、MS/MS分析実行時には質量分析実行時と重複する範囲内で、その質量分析実行時にレーザが照射されていない部位をレーザ照射点としてMS/MS分析を行うようにするとよい。これにより、質量分析実行時にレーザ照射によってそのレーザ照射部位付近の試料中の目的化合物の量が減少してしまっていてもMS/MS分析実行時に該化合物についてのプロダクトイオン情報を確実に得ることができる。
また、上記実施例のイメージング質量分析装置において、MS/MSスペクトルの加算や減算の際に設定するROIは、同一の試料における単一の測定対象領域内だけでなく、同一の試料上の異なる測定対象領域内や、異なる試料上の測定対象領域内に設定してもよい。例えば、薬物を投与した動物の特定の臓器の組織切片を目的サンプル、何も投与していない動物の同じ臓器の組織切片を対照サンプルとして用い、薬剤を投与したことにより強度値が変動するマススペクトルのピークについてMS/MS分析を実施する。目的サンプルのROIに対するMS/MSスペクトルから、対照サンプルの同様のROIに対するMS/MSスペクトルを減算することで、強度値の変動の要因が、単にそのピークに相当する化合物の増減によるものなのか否か、或いは、同一質量で別の化合物が現れているか否か、などを判別することが可能となる。
さらにまた、加算や減算の対象となるマススペクトルは、イメージング質量分析装置で取得したデータに基づく特定のROIにおける代表的なマススペクトルと、例えば液体クロマトグラフ質量分析装置(LCMS)などの他の質量分析装置により取得されたマススペクトルとであってもよい。また、スペクトルライブラリに収録されている化合物のMSnスペクトルは、測定に使用されるイメージング質量分析装置と同等の方式の装置で標準試料に対して取得されたMSnスペクトルや、実試料に対して取得されたMSnスペクトルであることが望ましいが、イオン化法が相違するLCMSなどの別の方式の質量分析装置で取得されたデータに基づくMSnスペクトルであってもよい。
また、減算処理を行ったマススペクトルや主成分分析により得られた因子負荷量スペクトルには負の強度値が現れる場合がある。その場合には、負の値をゼロに置き換えた上でその後の検索処理を行ってもよい。
また上記実施例のイメージング質量分析装置では、各測定点における実測のMS/MSスペクトルデータから求まるMS/MSスペクトルとスペクトルライブラリ26に収録されている既知化合物の標準的なMS/MSスペクトルとの類似性に基づいて化合物同定を行っていたが、さらに以下に述べるような同定処理を行うようにしてもよい。
[同定処理の変形例1]
図6はこの変形例1において同定処理部25が実行する特徴的な処理のフローチャートである。
上記実施例では、スペクトルライブラリ26に収録されているMS/MSスペクトルは既知の化合物に対応するものであったが、ここでは、或る化合物に混合する可能性がある未知の、つまりは同定できない混合物のMS/MSスペクトルを、それが混合する条件、つまりは分析条件と共にスペクトルライブラリ26に保存しておく。
具体例を挙げると、例えば9−アミノアクリジン(以下「9−AA」と略す)マトリクスを用い、アデニル酸(以下「AMP」と略す)を含む所定の生体試料に対し負イオン化モードでプリカーサイオンのm/z値を349.07に設定してMS/MS分析を行った結果、図10(a)に示すようなMS/MSスペクトルが得られるものとする。一方、AMP単体の標準的なMS/MSスペクトルは図10(b)に示すようになる。そこで、実測のMS/MSスペクトルからAMPの標準的なMS/MSスペクトルを減算した図10(c)に示すようなMS/MSスペクトルを求める。このMS/MSスペクトルは、AMPに混合する可能性がある混合物のMS/MSスペクトルであるといえる。なお、この混合物は一種類の化合物である場合もあれば複数種類の化合物が混じったものである場合もある。上記混合物のMS/MSスペクトルからその化合物が同定できない場合であっても、この混合物のMS/MSスペクトルを、分析に使用したマトリクスや試料の種類、プリカーサイオンのm/z値などの分析条件とともにスペクトルライブラリ26に収録しておく。
同定処理部25は実測のデータに基づくMS/MSスペクトルが与えられると、該データが得られたときの分析条件に該当するMS/MSスペクトルが存在するか否かスペクトルライブラリ26で検索を実行する(ステップS21、S22)。該当するMS/MSスペクトルが存在すればステップS22からS23へ進み、該当するMS/MSスペクトルが存在しない場合にはステップS23の処理をパスしてS22からS24へと進む。
例えば、上述した混合物のMS/MSスペクトル上のピークが、9−AAマトリクスに由来したものであったり、生体試料に一般的に含まれる化合物由来のものであったり、或いはそれらの混合物に由来するものであったりした場合、別の生体試料を同じ分析条件でMS/MS分析した場合に、そのMS/MSスペクトルにも上記混合物のMS/MSスペクトル上のピークが現れる可能性がある。そこで、ステップS22で該当するMS/MSスペクトルが存在すると判定された場合には、該MS/MSスペクトルが実測MS/MSスペクトルに混合しているものと判断し、スペクトルライブラリ26から読み出した混合物のMS/MSスペクトルを実測のMS/MSスペクトルから減算する(ステップS23)。そして、減算処理を行った場合にはその減算後のMS/MSスペクトルを、また減算処理を行わなかった場合には実測のMS/MSスペクトルを、通常のライブラリ検索に供することで化合物の同定を実行する(ステップS24)。
もちろん、ステップS22でYesと判定される場合であっても、その該当する混合物のMS/MSスペクトルが実測MS/MSスペクトルに混合しているとは限らない。したがって、ステップS22からS23の処理に自動的に移行するのではなく、例えば該当する混合物のMS/MSスペクトルを表示部4の画面上に表示し、ユーザがそれを確認したうえでステップS23の処理を実行するかしないかを選択できるようにしておくとよい。
[同定処理の変形例2]
図7はこの変形例2において同定処理部25が実行する特徴的な処理のフローチャートである。
上記実施例では、スペクトルライブラリ26に収録されているMS/MSスペクトルの一つ一つと実測のMS/MSスペクトルとの類似性を判定していたが、この変形例2では、スペクトルライブラリ26に収録されている複数のMS/MSスペクトルを組み合わせた、つまりは加算したMS/MSスペクトルも検索の対象とする。
即ち、同定処理部25は、実測のMS/MSスペクトルが与えられると、まずスペクトルライブラリ26から予め指定された数のMS/MSスペクトルを選択し(ステップS31)、それらに初期設定された係数を乗じた上でMS/MSスペクトルを加算する(ステップS32、S33)。MS/MSスペクトルの選択数は予めユーザが指定できるようにしておくとよい。また、係数の範囲及び係数を変化させるステップ幅も予めユーザが指定できるようにしておくとよく、それに応じて係数の初期設定値は自動的に定めることができる。そして、加算処理後のMS/MSスペクトルと実測のMS/MSスペクトルとの類似度を計算する(ステップS34)。この類似度の計算手法は例えば特許文献1に記載の方法を用いることができる。そして、指定された係数範囲及び係数のステップ幅によって定まる全ての係数について処理が終了したか否かを判定し(ステップS35)、未処理であれば係数を変更したうえで(ステップS36)ステップS33へと戻る。ステップS33〜S36の処理の繰り返しにより、選択されたMS/MSスペクトルの組合せに対する様々な係数の下で加算したMS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度が計算される。
ステップS35でYesと判定されると、今度は全てのMS/MSスペクトルの組合せについて処理が終了したか否かを判定し(ステップS37)、未処理であればステップS31に戻り、異なる組合せのMS/MSスペクトルを選択したうえで上記処理を繰り返す。したがって、ステップS31〜S37の処理の繰り返しにより、所定数のMS/MSスペクトルの全ての組合せに対する類似度が計算される。そして、最終的に、その中で最も高い類似度が得られるMS/MSスペクトルの組合せ、係数、及びその類似度を抽出し、それを同定結果として表示部4に表示する(ステップS38)。また、類似度の高い順に所定の数の結果を表示するようにしてもよい。
なお、3以上である値NがMS/MSスペクトルの組合せ数として指定された場合には、N個のMS/MSスペクトルだけでなく、N未満の数のMS/MSスペクトルの組合せについても類似度の算出対象とするとよい。
なお、スペクトルライブラリ26には、既知の化合物のMS/MSスペクトルに加え、マトリクスの多量体やマトリクスの多量体から特定の中性分子が脱落したものに付加イオンが付加したものをプリカーサイオンに選択した際に得られたMS/MSスペクトル、さらには、上記変形例1で用いた混合物のMS/MSスペクトルなども収録しておくとよい。さらにまた、同一化合物について、MALDIイオン源におけるレーザ光の照射条件(レーザ光エネルギ、照射時間など)やイオンを衝突誘起解離により解離させる際の条件(コリジョンエネルギ、コリジョンガス圧など)が相違する下で得られたMS/MSスペクトルなども収録しておくようにするとよい。
[同定処理の変形例3]
図8はこの変形例3において同定処理部25が実行する特徴的な処理のフローチャートである。
MALDIイオン源で化合物をイオン化する際には該化合物にプロトンが付加して又は該化合物からプロトンが脱離してイオン化する場合が多いが、条件によっては、プロトンの代わりにNaやKなどのアルカリ金属イオンが付加してイオン化する場合がある。このようなアダクトイオンをプリカーサイオンとして選択してMS/MS分析を行うと、衝突誘起解離によりイオンの特定の結合部分が解離し断片化した構造体にプリカーサイオンに付加していたアルカリ金属イオンなどが付加し、それがMS/MSスペクトル上のピークとして観測されることがある。そこで、この変形例3では、このアダクトイオンに相当する質量電荷比差を考慮してライブラリ検索を行う。
通常、スペクトルライブラリ26に収録されているMS/MSスペクトルは、純粋な化合物の標準品について該化合物のプロトン付加イオンのピークをプリカーサイオンとして選択したMS/MSスペクトルである。一方、実際に試料を測定する際には、目的化合物のプロトン付加イオンのピークが他の化合物由来のピークと重なってしまっている場合などに、アダクトイオンのピークをプリカーサイオンに選んでMS/MS分析を実施せざるを得ない場合がある。この場合、実測のMS/MSスペクトルは、スペクトルライブラリ26に収録されているMS/MSスペクトルに対して横軸がHとNaの質量差だけ平行移動されたものに近い。
そこで、同定処理部25は実測のMS/MSスペクトルが与えられると、スペクトルライブラリ26からMS/MSスペクトルを選択したあと、ユーザにより指定されたシフト条件に従ったシフト量の初期設定値だけm/z値の増加方向又は減少方向にそのMS/MSスペクトル上の各ピークをシフトさせる(ステップS42、S43)。このシフト条件、つまりシフト量の範囲及びシフト量を変化させるステップ幅は予めユーザが指定できるようにしておくとよく、それに応じてシフト量の初期設定値は自動的に定めることができる。そして、シフトされたMS/MSスペクトルと実測のMS/MSスペクトルとの類似度を計算する(ステップS44)。そして、指定されたシフト条件に則った全ての処理が終了したか否かを判定し(ステップS45)、未処理であればシフト量を変更したうえで(ステップS46)ステップS43へと戻る。ステップS43〜S46の処理の繰り返しにより、選択されたMS/MSスペクトルを様々なシフト量だけシフトしたMS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度が計算される。
ステップS45でYesと判定されると、今度は全てのMS/MSスペクトルについて処理が終了したか否かを判定し(ステップS47)、未処理であればステップS41に戻り、異なるMS/MSスペクトルを選択したうえで上記処理を繰り返す。したがって、ステップS41〜S47の処理の繰り返しにより、全てのMS/MSスペクトルに対する類似度が計算される。そして、最終的に、その中で最も高い類似度が得られるMS/MSスペクトル、シフト量、及びその類似度を抽出し、それを同定結果として表示部4に表示する(ステップS48)。また、類似度の高い順に所定の数の結果を表示するようにしてもよい。
なお、MS/MS分析を実行する際にプリカーサイオンの付加イオンの種類が特定できている場合には、その付加イオンの種類や質量等の情報をユーザが入力し、その入力に基づいて同定処理部25はスペクトルライブラリ26に収録されているMS/MSスペクトルを付加イオンに相当する分だけシフトして実測MS/MSスペクトルと照合するようにしてもよい。
もちろん、上記変形例1〜3は全て併せて上記実施例のイメージング質量分析装置に適用することができるし、その一部のみを適用することもできる。
また、上記変形例1〜3で説明した同定手法はイメージング質量分析装置のみならず、より一般的なMS/MS分析が可能な質量分析装置、例えばタンデム四重極型質量分析装置、Q−TOF型質量分析装置、イオントラップ質量分析装置、イオントラップ飛行時間型質量分析装置などで得られたデータに基づく化合物同定にも利用することができる。
さらにまた、上記実施例や上述した各種の変形例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。例えば、上記実施例ではMS/MSスペクトルを用いて化合物同定を行ったが、nが3以上であるMSnスペクトルを用いて化合物同定を行う際にも本発明を利用することができる。
1…イメージング質量分析部
2…データ処理部
20…スペクトルデータ格納部
21…参照情報作成処理部
210…主要ピーク抽出部
211…画像作成処理部
212…画像分類部
213…参照情報表示処理部
22…ROI設定処理部
23…平均スペクトル作成部
24…スペクトル加減算部
25…同定処理部
26…スペクトルライブラリ
3…入力部
4…表示部

Claims (10)

  1. 試料上の所定の測定対象領域内の複数の測定点に対しそれぞれMSn分析(ただしnは2以上の整数)を行うことで得られたMSnスペクトルデータを処理するイメージング質量分析データ処理装置であって、
    a)前記MSnスペクトルデータに基づいて、前記測定対象領域又は該領域中の一部領域に対する特定の質量電荷比における信号強度分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成部と、
    b)前記質量分析イメージング画像上で複数の小領域をそれぞれ関心領域として設定する関心領域設定部と、
    c)前記複数の関心領域に含まれる測定点におけるMSnスペクトルデータに基づいて、該複数の関心領域の間で該複数の関心領域それぞれにおけるMSnスペクトルを加算した又は減算した演算済みMSnスペクトルを取得するMSnスペクトル取得部と、
    d)前記演算済みMSnスペクトルを利用して前記複数の関心領域に存在する化合物を同定する化合物同定部と、
    を備えることを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  2. 請求項1に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記質量分析イメージング画像を表示部の画面上に表示する画像表示処理部と、
    表示された質量分析イメージング画像上でユーザが任意の小領域を関心領域として指定する関心領域指定部と、
    をさらに備え、前記関心領域設定部は前記関心領域指定部により指定された小領域を関心領域として設定することを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  3. 請求項1に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記MSnスペクトルデータに基づいて、主要な複数の質量電荷比における信号強度分布を示す参照質量分析イメージング画像を作成する参照画像作成部と、
    前記複数の参照質量分析イメージング画像を信号強度分布の類似性に基づいて一又は複数のグループに分類する画像分類部と、
    分類された参照質量分析イメージング画像を表示部の画面上に表示する参照画像表示処理部と、
    をさらに備えることを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  4. 請求項3に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記画像分類部は主成分分析を利用して参照質量分析イメージング画像を一又は複数のグループに分類することを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  5. 請求項3又は4に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記参照画像表示処理部は、分類された複数のグループにおける代表的な参照質量分析イメージング画像を異なる色で示して重ね合わせた画像を表示部の画面上に表示し、
    該画像に基づいて前記関心領域設定部による関心領域の設定を行えるようにしたことを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  6. 請求項1に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記MSnスペクトル取得部は、複数の関心領域のそれぞれにおいて当該関心領域に含まれる測定点に対する平均MSnスペクトルを算出し、各関心領域に対する平均MSnスペクトルを加算又は減算することで前記演算済みMSnスペクトルを得ることを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  7. 請求項1に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記化合物同定部は既知の化合物についてMSnスペクトルが格納されているライブラリを参照して化合物同定を行うものであり、
    既知の化合物に混合し得る一又は複数の化合物を含む混合物のMSnスペクトルを、該混合物が混合する条件と共に前記ライブラリに格納しておき、
    処理対象であるMSnスペクトルデータを取得した際の分析条件の一部が前記混合条件と一致する場合に、その混合条件に対応した前記ライブラリ中のMSnスペクトルを実測のMSnスペクトルから減算したうえでライブラリ検索を実行することを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  8. 請求項1に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記化合物同定部は既知の化合物についてMSnスペクトルが格納されているライブラリを参照して化合物同定を行うものであり、
    該化合物同定部は、前記ライブラリに格納されている複数のMSnスペクトルを組み合わせたMSnスペクトルと実測のMSnスペクトルとの類似性に基づく化合物同定を実行することを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  9. 請求項1に記載のイメージング質量分析データ処理装置であって、
    前記化合物同定部は既知の化合物についてMSnスペクトルが格納されているライブラリを参照して化合物同定を行うものであり、
    該化合物同定部は、前記ライブラリに格納されているMSnスペクトル上の各ピークを所定の質量電荷比だけ上方向に又は下方向にシフトさせたMSnスペクトルと実測のMSnスペクトルとの類似性に基づく化合物同定を実行することを特徴とするイメージング質量分析データ処理装置。
  10. 試料上の所定の測定対象領域内の複数の測定点に対しそれぞれMSn分析(ただしnは2以上の整数)を行うことで得られたMSnスペクトルデータを処理するイメージング質量分析データ処理方法であって、
    a)前記MSnスペクトルデータに基づいて、前記測定対象領域又は該領域中の一部領域に対する特定の質量電荷比における信号強度分布を示す質量分析イメージング画像を作成する画像作成ステップと、
    b)前記質量分析イメージング画像上で複数の小領域をそれぞれ関心領域として設定する関心領域設定ステップと、
    c)前記複数の関心領域に含まれる測定点におけるMSnスペクトルデータに基づいて、該複数の関心領域の間で該複数の関心領域それぞれにおけるMSnスペクトルを加算した又は減算した演算済みMSnスペクトルを取得するMSnスペクトル取得ステップと、
    d)前記演算済みMSnスペクトルを利用して前記複数の関心領域に存在する化合物を同定する化合物同定ステップと、
    を有することを特徴とするイメージング質量分析データ処理方法。
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