以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.一般的な医療用観察装置についての検討
2.第1の実施形態
2−1.装置構成
2−2.使用時の動作
2−3.装置の機能構成
3.第2の実施形態
3−1.装置構成
3−2.使用時の動作
3−3.装置の機能構成
4.第3の実施形態
4−1.装置構成
4−2.使用時の動作
5.変形例
5−1.撮像部がAF機能を有する変形例
5−2.応力検知に基づく力制御によって撮像部を移動させる変形例
6.補足
(1.一般的な医療用観察装置についての検討)
本開示の好適な一実施形態について説明するに先立ち、本発明者らが一般的な医療用観察装置について検討した結果について説明するとともに、以下に説明する実施形態に想到した背景について説明する。
上述したように、例えば脳神経外科等の外科手術においては、手術用顕微鏡(以下、単に顕微鏡とも呼称する。)によって術部を撮影し、その撮影された映像を参照しながら術者によって手術が実行されることがある。顕微鏡の位置及び姿勢を高精度に調整するために、当該顕微鏡をバランスアームやロボットアームによって保持する医療用観察装置が用いられている。例えば、顕微鏡を保持する保持部(アーム部)をカウンターウエイトを有したバランスアームによって構成することにより、術者はあたかも無重力のような感覚で顕微鏡を移動させることが可能になる。
ここで、一般的に、6自由度を有する保持部によって顕微鏡が保持される場合について考える。顕微鏡の移動は、平行移動と傾斜移動の2つに分けることができる。平行移動では、顕微鏡の平面内での位置が変化し、傾斜移動では、顕微鏡の姿勢(すなわち、観察方向(光軸の方向))が変化する。例えば、平行移動は、顕微鏡の姿勢にもよるが、6自由度のうち1〜3自由度を機能させることにより実現することができる。術者は、顕微鏡によって撮影された画像(撮像画像)を参照しながら当該顕微鏡を平行移動させることにより、例えば観察点を視野内に捉えたまま、当該観察点から所定の距離離れた次の観察点を視野の中心にするような顕微鏡の移動を、比較的容易に行うことができる。
一方、手術時には、例えば血管等の対象物の側面を観察したり、死角となっている部位を観察したりといった、同一の術部を異なる角度から観察したいという要望、すなわち、ポイントロック観察を行いたいという要望がある。図1に、ポイントロック観察時における顕微鏡の動きを概略的に示す。図1は、ポイントロック観察時の顕微鏡の動きについて説明するための説明図である。
図示するように、ポイントロック観察を行う際には、観察点762が顕微鏡761の光軸上に常に位置するように、すなわち、移動後の顕微鏡761による観察点762が移動前の顕微鏡761による観察点762と一致するように、顕微鏡761が移動する。このような動作を実現するためには、顕微鏡761には、平行移動と傾斜移動とが組み合わされた複雑な動きが求められる。
例えば、既存の一般的なバランスアームを用いて、術者が手動で顕微鏡761を移動させてポイントロック観察を行う場合について考える。この場合、術者は、移動後の顕微鏡761の位置及び姿勢を予め正確に認識することはできないため、顕微鏡761による撮像画像を参照しながら、顕微鏡761を平行移動させる操作と、顕微鏡761を傾斜移動させる操作とを組み合わせて実行することにより、所望の顕微鏡761の位置及び姿勢を探索しなければならない。
バランスアームを用いることにより、術者はより小さな力で顕微鏡761を移動させることが可能であるため、顕微鏡761の移動操作自体は大きな負担とはならない。しかしながら、例えば脳神経外科手術等において行われるいわゆるマイクロサージャリーでは、直径30(mm)程度の小さな範囲を高倍率で拡大観察しながら手術が行われることがある。従って、顕微鏡761の位置及び姿勢を変化させることにより、観察点が視野内から容易に外れてしまう。よって、視野内に観察点を収めつつ当該観察点を所望の方向から観察可能な顕微鏡761の位置及び姿勢を探索することは、必ずしも簡単な操作とは言えない。また、一般的に、手術中には、観察点を変更しながらポイントロック観察が頻繁に行われることが想定される。従って、ポイントロック観察においては、手動操作によってより簡単に顕微鏡761の移動が行えることが望まれていた。
そこで、上述したように、上記特許文献1に記載のバランスアームでは、保持部の構成を工夫し、ポイントロック動作が実現されるように機械的に顕微鏡の動きを規制することにより、ポイントロック観察時において、比較的簡易な操作による顕微鏡761の移動を可能としている。しかしながら、上記特許文献1に記載のバランスアームでは、機械的に顕微鏡の動きを規制するために、保持部の構成が複雑なものとなり、装置が大型化、重量化する可能性がある。また、手術用顕微鏡の姿勢制御がワイヤー等の伝達部材により伝達されているため、例えば経年によるワイヤーの劣化により観察点がずれてしまう等、部材同士の機械的なずれに起因して、意図した通りのポイントロック動作が実現されない可能性がある。
また、同じく上述したように、上記特許文献2には、6自由度を有するロボットアームにおいて、各関節部に搭載される駆動装置によって各関節部の駆動を能動的に制御することにより、保持部の先端に設けられる処置具を所定のプログラムに従って自動的に移動させる技術が開示されている。特許文献2に記載の技術において、処置具として顕微鏡を装着し、例えば位置制御によって各関節部の駆動を適宜制御することにより、術者による煩雑な操作は必要なく、ポイントロック動作に相当する顕微鏡の移動が実現され得る。しかしながら、全ての関節部に駆動装置が設けられる構成では、保持部の後方(保持部の根元に当たる側)に配置される関節部の駆動装置には、当該保持部のうち自身よりも先端側の構成を支持し、移動させるだけの出力が求められることとなり、やはり装置が大型化する可能性がある。
ここで、手術室内には、他の装置や、手術を実行又は補佐する多数のスタッフ等が存在し得るため、一般的に、手術に用いられる装置には、より小型であることが求められる。しかしながら、上述してきたように、上記特許文献1、2に例示されるような既存の医療用観察装置では、ポイントロック観察時における顕微鏡の移動操作を比較的簡易なものにすることができる可能性がある反面、装置が大型化する傾向があり、上記のような装置の小型化の要請を、必ずしも満足するものとは言えなかった。
一方、同じく各関節部の駆動を能動的に制御可能なロボットアームの中には、力制御を用いて、保持部におけるモーメント等の力学的なアンバランスをキャンセルするように、各関節部の駆動を制御することにより、バランスアームに近い操作性を実現可能なものが存在する。しかしながら、このようなロボットアームの関節部は、アクチュエータ及び減速機構によって構成されることが多く、このような構成においては、単純に軸受(ベアリング)によって各回転軸が構成されるバランスアームに比べて、滑らかな動きを実現することが難しく、操作性が劣る可能性がある。
以上説明したように、本発明者らは、一般的な医療用観察装置について検討した結果、より高い操作性を確保しつつ、より小型で簡易な構成によって、ポイントロック動作のようなユーザの所望の動作を実現可能な技術が求められているとの知見を得た。本発明者らは、上記のような要望を満たす構成について鋭意検討した結果、以下に説明する、本開示の好適な実施形態に想到した。以下では、本発明者らが想到した、本開示のいくつかの好適な実施形態について詳細に説明する。
(2.第1の実施形態)
(2−1.装置構成)
図2−4を参照して、本開示の第1の実施形態に係る医療用観察装置の構成について説明する。図2は、本開示の第1の実施形態に係る医療用観察装置の一構成例を示す図である。図3は、図2に示す撮像部の一構成例を示す図である。図4は、図2に示す回転軸部のうち、能動軸に対応する回転軸部の一構成例を示す図である。なお、以下では、医療用観察装置に対して各種の操作を行うユーザのことを、便宜的に術者と記載する。ただし、当該記載は医療用観察装置を使用するユーザを限定するものではなく、医療用観察装置に対する各種の操作は、他の医療スタッフ等、あらゆるユーザによって実行されてよい。
図2を参照すると、第1の実施形態に係る医療用観察装置10は、患者の術部を撮影する撮像部110と、撮像部110を保持する保持部120(アーム部120)と、保持部120の一端が接続され撮像部110及び保持部120を支持するベース130(基台130)と、医療用観察装置10の動作を制御する制御コントローラ140と、を備える。図2では、医療用観察装置10の撮像部110によって、手術台710の上に横臥している患者720の術部730(観察点730)が撮影されている様子を図示している。
ベース130は、撮像部110及び保持部120を支持する。ベース130は板状の形状を有し、その上面に保持部120の一端が接続される。ベース130から延伸される保持部120の他端(先端)に撮像部110が接続されることとなる。ベース130の下面には複数のキャスター131が設けられており、医療用観察装置10は、キャスター131を介して床面と接地する。医療用観察装置10は、キャスター131によって床面上を移動可能に構成されている。
なお、以下の説明では、医療用観察装置10が設置される床面に対して鉛直方向をz軸方向と定義する。また、z軸方向と互いに直交する2方向を、それぞれ、x軸方向及びy軸方向と定義する。図示する例では、撮像部110の光軸方向は、z軸方向と略一致している。
制御コントローラ140は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Pocessor)等のプロセッサ、若しくはこれらのプロセッサが搭載されたマイコン等によって構成され、所定のプログラムに従った演算処理を実行することにより、医療用観察装置10の動作を制御する。例えば、第1の実施形態では、保持部120は複数の動作モード(固定モード、オールフリーモード及びポイントロックモード)を有する。制御コントローラ140は、術者の操作入力に応じて、保持部120の動作モードを切り替えることができる。ここで、固定モードは、保持部120に設けられる各回転軸における回転がブレーキにより規制されることにより、撮像部110の位置及び姿勢が固定される動作モードである。オールフリーモードは、ブレーキが解除されることにより、保持部120に設けられる各回転軸における回転が自由に可能な状態であり、術者による手動での直接的な操作によって撮像部110の位置及び姿勢を調整可能な動作モードである。ここで、直接的な操作とは、術者が例えば手を撮像部110に接触させて当該撮像部110を移動させる操作のことを意味する。ポイントロックモードは、保持部120に設けられる回転軸のうちの一部が術者による直接的な操作に従って回転する受動軸として振る舞うとともに、他の回転軸がその回転駆動が所定の条件に基づいて制御される能動軸として振る舞うことにより、撮像部110のポイントロック動作が実行されるモードである。
また、制御コントローラ140は、上述したポイントロックモードにおける能動軸の駆動を制御する。具体的には、制御コントローラ140は、撮像部110における焦点距離についての情報に基づいて、撮像部110から観察点730までの距離を算出することができる。また、保持部120の各回転軸には、当該回転軸の回転角度を検出するエンコーダ(後述するエンコーダ212、222、232、292、252、262)が設けられており、制御コントローラ140は、これらのエンコーダの検出値に基づいて、撮像部110の3次元的な位置及び姿勢を算出することができる。制御コントローラ140は、算出した撮像部110から観察点730までの距離と、撮像部110の3次元的な位置及び姿勢と、に基づいて、移動後の撮像部110による観察点730が移動前の撮像部110による観察点730と一致するように、能動軸に設けられるアクチュエータの駆動を制御する。これにより、ポイントロックモードにおいては、ポイントロック動作を行うように撮像部110が移動することとなる。
なお、制御コントローラ140の機能については、下記(2−3.装置の機能構成)において改めて詳しく説明する。
撮像部110は、例えば顕微鏡であり、患者の術部を撮影する。撮像部110は、ディスプレイ装置等の表示装置(図示せず。)に対して撮影した画像情報を送信可能に構成される。術者は、撮像部110によって撮影され、当該表示装置に表示された撮像画像を参照しながら、術部を観察し、当該術部に対して各種の処置を行う。
撮像部110には、撮像部110の撮影条件を調整するためのズームスイッチ151(ズームSW151)及びフォーカススイッチ152(フォーカスSW152)、並びに、保持部120の動作モードを変更するためのオールフリースイッチ153(オールフリーSW153)及びポイントロックスイッチ154(ポイントロックSW154)が設けられる。術者は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作することにより、撮像部110の倍率及び焦点距離を、それぞれ調整することができる。また、術者は、オールフリーSW153及びポイントロックSW154を操作することにより、保持部120の動作モードを、固定モード、オールフリーモード及びポイントロックモードのいずれかに切り替えることができる。
なお、これらのスイッチは必ずしも撮像部110に設けられなくてもよい。第1の実施形態では、これらのスイッチと同等の機能を有する、操作入力を受け付けるための機構が医療用観察装置10に設けられればよく、当該機構の具体的な構成は限定されない。例えば、これらのスイッチは、医療用観察装置10の他の部位に設けられてもよい。また、例えば、リモコン等の入力装置を用いて、これらのスイッチに対応する命令が、遠隔的に医療用観察装置10に対して入力されてもよい。
また、図面が煩雑になることを避けるために図2では図示を省略しているが、撮像部110の一部領域には、術者によって把持される把持部が設けられ得る。術者は、当該把持部を手で握り、撮像部を手動で平行移動及び傾斜移動させることができる。なお、下記(2−2.使用時の動作)で説明するように、第1の実施形態では、術者は把持部を握った状態で、オールフリーSW153及びポイントロックSW154を操作する。従って、把持部、オールフリーSW153及びポイントロックSW154の配置位置は、互いの相対的な位置関係と術者の操作性を考慮して決定されることが好ましい。
図3を参照して、撮像部110の構成についてより詳細に説明する。図3では、撮像部110の、光軸を通る平面での断面図を示している。図3を参照すると、撮像部110の筐体115の内部には、いわゆるステレオカメラに対応して、1対の撮像素子111a、111bが設けられる。撮像素子111a、111bとしては、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary
Metal−Oxide−Semiconductor)センサ等の公知の各種の撮像素子が適用されてよい。撮像素子111a、111bによって撮影された画像についての情報が、手術室内に設けられる表示装置に送信されることにより、術部の撮像画像が当該表示装置に表示されることとなる。
撮像素子111a、111bの前段には、対物光学系を構成する1対の凹レンズ112a及び凸レンズ112b、変倍光学系を構成する凸レンズ113a、凹レンズ113b及び凸レンズ113c、並びに、結像光学系を構成する凸レンズ114aが配置される。また、凸レンズ113a、凹レンズ113b及び凸レンズ113c、並びに、凸レンズ114aは、各撮像素子111a、111bに対応して、2組設けられる。対物光学系を構成する凹レンズ112a及び凸レンズ112bを通過して撮像部110に入射した光は、各撮像素子111a、111bに対応して設けられる変倍光学系を構成する凸レンズ113a、凹レンズ113b及び凸レンズ113c、並びに、結像光学系を構成する凸レンズ114aをこの順に通過して、撮像素子111a、111b上に結像されることとなる。なお、図面が煩雑になることを避けるために図3では図示を省略しているが、撮像部110の筐体115内に設けられる各構成部材は、各種の支持部材によって筐体115に対して適宜支持されている。
対物光学系を構成する凹レンズ112a及び凸レンズ112bのうちの一方、例えば筐体115に対してより外側に配置される凹レンズ112aは筐体115に固定されており、他方、例えばより内側に配置される凸レンズ112bはz軸方向(光軸方向)に移動可能に構成される。図3に示すように、凸レンズ112bを筐体115に対して支持する支持部材116には、当該支持部材116及び凸レンズ112bをz軸方向に移動させるためのリードねじ117及び当該リードねじ117をz軸方向を回転軸方向として回転させるモータ118が配置される。上述したフォーカスSW152に対する操作入力に応じてモータ118が駆動されることにより、凸レンズ112bの光軸上での位置が移動し、撮像部110の焦点距離が調整されることとなる。また、モータ118には、モータ118の回転数を検出するためのエンコーダ119が設けられる。エンコーダ119による検出値は、制御コントローラ140に随時提供され得る。エンコーダ119による検出値は、凸レンズ112bの光軸上の位置を示す値であるため、制御コントローラ140は、エンコーダ119による検出値に基づいて、撮像部110の焦点距離及び/又は作動距離(WD:Working Distance)を算出することができる。
なお、上記の例では、凹レンズ112aが固定され、凸レンズ112bが移動可能に構成されることにより、撮像部110の焦点距離が調整される場合について説明したが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。撮像部110の焦点距離を調整するためには、凹レンズ112a及び凸レンズ112bの光軸上における相対距離が調整されればよいため、凹レンズ112a及び凸レンズ112bのいずれか又は双方が移動可能に構成されてよく、その具体的な構成は限定されない。また、凹レンズ112a及び凸レンズ112bのいずれか又は双方を移動させるための移動機構も、上述した例に限定されず、あらゆる公知の機構が用いられてよい。
変倍光学系を構成する凸レンズ113a、凹レンズ113b及び凸レンズ113cも、その一部のレンズ又は全てのレンズが、z軸方向に移動可能に構成される。凸レンズ113a、凹レンズ113b及び/又は凸レンズ113cを光軸上で移動させることにより、撮像部110による撮像画像の倍率を調整することができる。なお、簡単のため図3では図示を省略しているが、凸レンズ113a、凹レンズ113b及び/又は凸レンズ113cに対しても、凸レンズ112bと同様に、これらのレンズをz軸方向に移動させるための移動機構が設けられる。上述したズームSW151に対する操作入力に応じて当該移動機構が駆動されることにより、凸レンズ113a、凹レンズ113b及び/又は凸レンズ113cの光軸上での位置が移動し、撮像部110の倍率が調整され得る。
以上、図3を参照して、撮像部110の構成について詳しく説明した。
図2に戻り、医療用観察装置10の構成についての説明を続ける。保持部120は、撮像部110を保持し、撮像部110を3次元的に移動させるとともに、移動後の撮像部110の位置及び姿勢を固定する。図示される例では、保持部120は、6自由度を有するバランスアームとして構成されている。ただし、第1の実施形態はかかる例に限定されない。保持部120は、少なくとも6自由度を有するように構成されればよく、7自由度以上で、いわゆる冗長自由度を有するように構成されてもよい。また、保持部120は、必ずしもバランスアームとして構成されなくてもよい。第1の実施形態では、保持部120がバランスアームとして構成されない場合であっても、ポイントロック動作を実行することが可能である。ただし、保持部120をバランスアームとして構成し、撮像部110及び保持部120全体としてモーメントの釣り合いが取れた構成とすることにより、より軽い外力で撮像部110を移動させることが可能となり、術者の操作性をより向上させることができる。
保持部120には、6自由度を実現する6軸の回転軸が設けられる。以下では、説明のため便宜的に、各回転軸を構成する部材をまとめて、回転軸部と呼称することとする。例えば、回転軸部は、軸受(ベアリング)、当該軸受に回動可能に挿通されるシャフト、回転軸の状態(例えば回転角度等)を検出するセンサ部材、回転軸における回転を規制するブレーキ等によって構成され得る。回転軸部の構成は、その回転軸が後述する能動軸であるか又は受動軸であるかに応じて異なっていてよい。また、後述する平行四辺形リンク機構240は、当該平行四辺形リンク機構240が回転軸を構成し得るため、平行四辺形リンク機構240を回転軸部とみなすことができる。
保持部120は、各回転軸に対応する回転軸部210、220、230、250、260(以下、回転軸部210〜260と略記する。)及び平行四辺形リンク機構240と、回転軸部210〜260及び平行四辺形リンク機構240の間を接続するアーム271〜274と、撮像部110及び保持部120全体としてのモーメントの釣り合いを取るためのカウンターウエイト280と、によって構成される。以下では、各回転軸に対して、O1軸〜O6軸までの名称を付して説明を行う。撮像部110に最も近い回転軸がO1軸であり、ベース130に最も近い回転軸がO6軸である。
回転軸部210は、撮像部110の光軸と略一致する回転軸(O1軸)を回転軸方向として、撮像部110を回動可能に設けられる。回転軸部210によって、O1軸回りに撮像部110が回動することにより、撮像部110による撮像画像の向きが調整されることとなる。
回転軸部210には、ブレーキ211及びエンコーダ212が搭載される。エンコーダ212は、O1軸における回転角度を検出する。ブレーキ211は、上述したオールフリーSW153及びポイントロックSW154に対する操作によって駆動され、必要に応じてO1軸における回転を規制する。ブレーキ211が機能している間は、例えば術者によって手動で外力が加えられた場合であっても、O1軸における撮像部110の回転が生じないようにすることができる。回転軸部210のように、アクチュエータ等の能動的な駆動機構が設けられない回転軸部は、ブレーキが機能していない場合(例えば上述したオールフリーモードやポイントロックモード)であれば、例えば術者による手動での直接的な操作に従って回転する回転軸を構成し得る。本明細書では、このような直接的な操作に従って回転する回転軸のことを受動軸とも呼称する。
回転軸部210には、O1軸とは略垂直な方向に延伸するアーム271の一端が接続される。また、アーム271の他端には、当該アーム271の延伸方向を回転軸方向(O2軸方向)としてアーム271を回動可能に構成される回転軸部220が設けられる。O2軸は、O1軸とは略垂直に配置されており、図2に示す例ではy軸と略平行な回転軸として設けられている。回転軸部220によって、O2軸を回転軸として撮像部110及びアーム271が回動することにより、撮像部110のx軸方向の位置が調整されることとなる。
回転軸部220は、ブレーキ221、エンコーダ222及びアクチュエータ223を有する。ブレーキ221及びエンコーダ222の機能は、回転軸部210に設けられるブレーキ211及びエンコーダ212の機能と同様であるため、詳細な説明は省略する。アクチュエータ223は、例えばサーボモータ等の電動モータによって構成され、上述したポイントロックモードにおいて、制御コントローラ140からの制御により駆動され、回転軸部220における回転を所定の角度だけ生じさせる。回転軸部220における回転角度は、例えば撮像部110の移動の前後において観察点730が変化しないように撮像部110を移動させるために必要な値として、各回転軸O1〜O6における回転角度に基づいて制御コントローラ140によって設定される。回転軸部220のように、アクチュエータ等の能動的な駆動機構が設けられる回転軸部は、例えばポイントロックモードにおいて、当該アクチュエータの駆動が制御されることにより能動的に回転する回転軸を構成し得る。本明細書では、このような、駆動機構によって回転駆動が能動的に制御される回転軸のことを能動軸とも呼称する。なお、図2では、能動軸に対応する回転軸部220、230に対して、他の回転軸部と区別するために、ハッチングを付して図示している。
回転軸部220には、O1軸及びO2軸と互いに略垂直な方向に延伸するアーム272の一端が接続される。また、アーム272の他端には、当該アーム272の延伸方向を回転軸方向(O3軸方向)としてアーム272を回動可能に構成される回転軸部230が設けられる。O3軸は、O1軸及びO2軸とは略垂直に配置されており、図2に示す例ではx軸と略平行な回転軸として設けられている。回転軸部230によって、O3軸を回転軸として撮像部110、アーム271及びアーム272が回動することにより、撮像部110のy軸方向の位置が調整されることとなる。回転軸部230は、回転軸部220と同様に、ブレーキ231、エンコーダ232及びアクチュエータ233を有する。このように、回転軸部230に対応する回転軸であるO3軸は能動軸として振る舞う。
第1の実施形態では、保持部120は、回転軸O1軸〜O6軸のうち少なくとも2軸が能動軸として機能し、少なくとも1軸が受動軸として機能するように構成される。図2に示す例では、回転軸部220、230に対応するO2軸及びO3軸が能動軸として機能し、その他の回転軸部210、250、260及び平行四辺形リンク機構240に対応するO1軸O4軸、O5軸及びO6軸が受動軸として機能する。上述したように、回転軸部220、230は、撮像部110の光軸と略垂直な2軸である、x軸及びy軸を回転軸とする回転を制御し得る。従って、O2軸及びO3軸は、O1軸〜O6軸の中でも、撮像部110の傾斜、すなわち撮像部110の光軸方向を決定し得る2軸であると言える。撮像部110の光軸と略垂直な2軸での回転が制御できれば、撮像部110の位置にかかわらず、撮像部110に任意の方向を向かせることが可能である。従って、O2軸及びO3軸が能動軸として機能するように保持部120を構成し、O1軸〜O6軸における回転角度の検出値に基づいてO2軸及びO3軸における回転を適宜制御することにより、ポイントロック動作を実現するように撮像部110の移動を制御することが可能となるのである。
ここで、図4を参照して、回転軸部230を例に挙げて、回転軸部210〜260の構成について説明する。図4では、回転軸部230の、回転軸(O3軸)を通る平面での断面図を示している。
図4を参照すると、回転軸部230の筐体234の内部には、回転軸(出力軸)がO3軸と平行となるように、アクチュエータ233が設けられる。アクチュエータ233の側面と筐体234の内壁との間にはベアリング235が配置されており、後述するブレーキ231が解除されている場合には、アクチュエータ233は、筐体234に対して回動可能に構成される。
アクチュエータ233の出力軸は、ブレーキ231を介して筐体234のO3軸方向の内壁に接続される。このように、筐体234は、アクチュエータ233の駆動に応じて回転する回転体として機能する。筐体234のO3軸方向の壁面の外壁には、アーム272が接続されており、アクチュエータ233の駆動に応じて、筐体234とともにアーム272が回動することになる。なお、ブレーキ231は、例えば機械的なクラッチ機構によって構成され得る。ブレーキ231を機能させる場合には、当該クラッチ機構によってアクチュエータ233の出力軸と筐体234の内壁との機械的な接続が解除されることにより、アクチュエータ233の駆動が回転体である筐体234に伝達されない。一方、ブレーキ231を解除する場合には、当該クラッチ機構によってアクチュエータ233の出力軸と筐体234の内壁とが機械的に接続されることにより、外力によっては筐体234が回転せず、アクチュエータ233の駆動によって筐体234が回転することになる。ただし、ブレーキ231の構成はかかる例に限定されず、ブレーキ231としては、電気的に筐体234の回転を規制する電磁ブレーキ等、他のブレーキ機構が用いられてもよい。
アクチュエータ233の出力軸とは逆側の端には、後述する平行四辺形リンク機構240を構成するアーム241が、例えば図示しないベアリングを介して接続される。つまり、アクチュエータ233は、アーム241に対して回動可能に接続される。これにより、アーム272が、回転軸部230を介して、アーム241に対して回動可能に接続されることとなる。
また、アクチュエータ233の、アーム241が接続される側の回転軸には、支持部材236を介してエンコーダ232が接続される。エンコーダ232によって、アクチュエータ233の回転数及び/又は回転角度が検出される。エンコーダ232による検出値は制御コントローラ140に提供される。制御コントローラ140は、エンコーダ232による検出値に基づいて、基準位置に対する、例えばアーム241に対する、O3軸における回転角度を算出することができる。
以上、図4を参照して、回転軸部230の構成について説明した。なお、上記では、回転軸部210〜260の一例として、回転軸部230の構成について説明したが、例えば回転軸部230と同じく能動軸に対応する回転軸部220は、図4に示す構成と同様の構成であってよい。また、受動軸に対応する回転軸部210、250、260は、図4に示す構成からアクチュエータ233を取り除いたものと同様の構成を有してよい。ただし、回転軸部210、250、260においては、アクチュエータ233が設けられないため、上述したような機械的なクラッチ機構からなるブレーキ231は用いることができないので、そのブレーキ機構としては、当該回転軸部210、250、260における回転運動を好適に停止可能な、各種の機構が適宜用いられ得る。例えば、回転軸部210、250、260におけるブレーキ機構としては電磁ブレーキが用いられてよい。
図2に戻り、保持部120の構成についての説明を続ける。回転軸部230の、アーム272が接続されない方向の端には、平行四辺形リンク機構240が接続される。平行四辺形リンク機構240は、平行四辺形の形状に配置される4つのアーム241、242、243、244と、当該平行四辺形の略頂点に対応する位置にそれぞれ設けられる軸受部245、246、247、248と、によって構成される。
具体的には、回転軸部230に対して、O3軸と略平行な方向に延伸するアーム241の一端が接続される。つまり、アーム272とアーム241とは、略同一の方向に延伸するアームとして配置される。アーム241の一端には軸受部245が、他端には軸受部246がそれぞれ設けられる。軸受部245、246には、これら軸受部245、246を挿通する互いに略平行な回転軸(O4軸)回りに回動可能に、それぞれ、アーム242、243の一端が接続されている。
更に、アーム242、243の他端には、それぞれ、軸受部247、248が設けられる。これら軸受部247、248には、軸受部247、248を挿通する回転軸(O4軸)回りに回動可能に、かつ、アーム241に対して略平行に、アーム244が連接されている。このように、これら4つのアーム241〜244と、4つの軸受部245〜248とにより、平行四辺形リンク機構240が構成されることとなる。
ここで、アーム244は、アーム241よりも長尺に形成され、その一端は平行四辺形リンク機構240の外部に延出されている。また、アーム242、243は、それぞれ、アーム244の軸受部247、248間よりも長尺に形成されていることが好適である。すなわち、アーム242、243は、アーム241よりも長尺に形成されていることが好適である。
第1の実施形態では、平行四辺形リンク機構240に対応する回転軸であるO4軸は、受動軸として機能する。従って、受動軸に対応する回転軸部210、250、260と同様に、平行四辺形リンク機構240には、ブレーキ291及びエンコーダ292が設けられる。図2に示す例では、軸受部247に、O4軸回りの平行四辺形リンク機構240の回転を規制するためのブレーキ291が設けられている。また、平行四辺形リンク機構240の軸受部245に、O4軸回りの平行四辺形リンク機構240の回転角度を検出するためのエンコーダ292が設けられている。ただし、ブレーキ291及びエンコーダ292の配置位置はかかる例に限定されず、平行四辺形リンク機構240における4つの軸受部245〜248のいずれに設けられてもよい。
アーム242の、軸受部247が設けられる端から所定の距離離れた部位には、当該アーム242の延伸方向と垂直な方向を回転軸方向(O5軸方向)として、平行四辺形リンク機構240を回動可能に支持する回転軸部250が設けられる。O5軸は、O4軸と略平行な回転軸であり、図2に示す例ではy軸と略平行な回転軸として設けられている。回転軸部250には、O5軸における回転を規制するブレーキ251及びO5軸における回転角度を検出するエンコーダ252が搭載される。回転軸部250には、z軸方向に延設するアーム273の一端が接続されており、平行四辺形リンク機構240は、回転軸部250を介して、アーム273に対して回動可能に構成される。
アーム273は略L字型の形状を有しており、回転軸部250が設けられる側とは逆側は、床面と略平行になるように折り曲げられている。アーム273の、当該床面と略平行な面には、O5軸と直交する回転軸(O6軸)回りにアーム273を回動可能な回転軸部260が設けられる。図2に示す例では、O6軸は、z軸と略平行な回転軸として設けられている。回転軸部260には、O6軸における回転を規制するブレーキ261及びO6軸における回転角度を検出するエンコーダ262が搭載される。回転軸部260には、鉛直方向に延伸するアーム274の一端が挿通され、アーム274の他端はベース130に接続される。
ここで、平行四辺形リンク機構240の回転軸部230が接続される側に設けられる軸受部245に対して対角上に位置する軸受部248よりも外方に延出されたアーム244の端には、カウンターウエイト280(カウンターバランス280)が一体的に取り付けられる。カウンターウエイト280は、平行四辺形リンク機構240よりも先端側に配置される各構成(すなわち、撮像部110、回転軸部210、220、230及びアーム271、272)の質量によって、O4軸回りに発生する回転モーメント及びO5軸回りに発生する回転モーメントを相殺可能なように、その質量及び配置位置が調整されている。なお、カウンターウエイト280は着脱可能であってよい。例えば、互いに異なる質量を有するいくつかの種類のカウンターウエイト280が準備されており、平行四辺形リンク機構240よりも先端側に配置される構成が変更された場合には、当該変更に応じて、回転モーメントを相殺し得るカウンターウエイト280が適宜選択されてよい。
また、O5軸に対応する回転軸部250の配置位置は、当該回転軸部250よりも先端側に配置される各構成(すなわち、撮像部110、回転軸部210、220、230、アーム271、272及び平行四辺形リンク機構240)の重心が当該O5軸上に位置するように、調整されている。更に、O6軸に対応する回転軸部260の配置位置は、当該回転軸部260よりも先端側に配置される各構成(すなわち、撮像部110、回転軸部210、220、230、250、アーム271、272、273及び平行四辺形リンク機構240)の重心が当該O6軸上に位置するように、調整されている。カウンターウエイト280及び回転軸部250、260がこのように構成されることにより、術者が撮像部110を手動で直接的に移動させようとした場合に、あたかも無重力であるかのような軽い力で撮像部110を移動させることが可能となる。従って、ユーザの操作性を向上させることができる。
以上、保持部120の構成について説明した。以上説明したように、保持部120の各回転軸には、当該回転軸における回転を規制するブレーキ211、221、231、291、251、261(以下、ブレーキ211〜261と略記する。)が設けられる。制御コントローラ140からの制御によりこれらブレーキ211〜261が制御されることにより、保持部120の動作モードが切り替えられる。なお、能動軸である回転軸部220、230には、ブレーキ221、231は必ずしも設けられなくてもよい。ブレーキ221、231が設けられない場合には、回転軸部220、230の位置(回転角度)をその状態で保持するようなトルクを発生させるようにアクチュエータ223、233の駆動を制御することにより、回転軸部220、230における回転を固定することができる。このように、第1の実施形態では、能動軸において機械的なブレーキ機構は設けられなくてもよく、アクチュエータを駆動させることによってブレーキ機能が実現されてもよい。
また、保持部120の各回転軸には、当該回転軸における回転角度を検出するエンコーダ212、222、232、292、252、262(以下、エンコーダ212〜262と略記する。)が設けられる。更に、能動軸に対応する回転軸部220、230には、アクチュエータ223、233が設けられる。エンコーダ212〜262による検出値は制御コントローラ140に所定の間隔で随時提供されており、制御コントローラ140は、各回転軸における回転角度を常時モニタし得る。制御コントローラ140は、各回転軸における回転角度に基づいて、現在の撮像部110及び保持部120の状態、すなわち、撮像部110及び保持部120の位置及び姿勢を算出することができる。ポイントロックモードでは、制御コントローラ140は、算出した撮像部110及び保持部120の位置及び姿勢に基づいて、移動後の撮像部110による観察点730が移動前の撮像部110による観察点730と一致するように、回転軸部220、230のアクチュエータ223、233の駆動を制御する。
以上、図2−図4を参照して、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の構成について説明した。以上説明したように、第1の実施形態によれば、全ての回転軸を能動的に制御することなく、O2軸及びO3軸の2軸を能動軸として機能させることにより、ポイントロック動作が実現される。従って、例えば、上記特許文献1、2に記載されているような、複雑な保持部の構成を有するバランスアームや、全ての回転軸に駆動装置が設けられるロボットアームと比べて、より小型で簡易な構成によって、ポイントロック動作を実行することが可能となる。
また、第1の実施形態に係る保持部120はバランスアームとして構成され得る。従って、ポイントロック動作において撮像部110を術者が移動させる際にも、軽い力で容易に移動させることが可能となる。このように、第1の実施形態によれば、より小型で簡易な構成によって、高い操作性を確保することが可能となる。
また、第1の実施形態では、ポイントロックモードにおいて、観察点と撮像部110との距離については能動的な制御は行われない。つまり、ポイントロック動作においては、観察点を中心とする半球上を、当該観察点の方を向いた状態で撮像部110が移動することとなるが、その際、球の半径方向における撮像部110の移動に対しては規制が設けられない。従って、必要に応じて、ポイントロック動作中に観察点と撮像部110との距離を自由に変更することができ、術者の利便性を向上させることができる。
なお、上記では図示及び説明を省略したが、医療用観察装置10は、一般的な既存の医療用観察装置が備え得る他の構成を更に備えてもよい。例えば、医療用観察装置10は、手術に用いられる情報や医療用観察装置10の駆動制御に必要な情報等の各種の情報を当該医療用観察装置10に入力可能な入力部、上記各種の情報を視覚的、聴覚的に術者に対して提示する出力部、上記各種の情報を外部の機器との間で送受信する通信部、上記各種の情報を記憶する記憶部、及び、上記各種の情報をリムーバブル記録媒体に書き込んだりリムーバブル記録媒体から読み出したりする記録部等の構成を備え得る。
(2−2.使用時の動作)
次に、以上説明した第1の実施形態に係る医療用観察装置10の使用時の動作について説明する。まず、使用前(手術前)の準備として、キャスター131を使い、医療用観察装置10全体を手術台710の近くまで移動させる。
手術が開始されると、まず、術者は、撮像部110の把持部を握った状態で、オールフリーSW153を押下する。例えば、医療用観察装置10の保持部120の動作モードは、オールフリーSW153及びポイントロックSW154がともに押下されていない状態では固定モードであり、オールフリーSW153及びポイントロックSW154が押下されている間は、それぞれ、オールフリーモード及びポイントロックモードとなるように構成されている。オールフリーSW153が押下されることにより、各回転軸部210〜260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ211〜261が解除され、術者による手動での直接的な操作によって、撮像部110を自由に移動させることができるようになる。このように、オールフリーモードでは、あたかも全ての回転軸が受動軸であるかのように振る舞う。
術者は、例えばディスプレイ装置に表示される、撮像部110による撮像画像を参照しながら、術部が撮像部110の視野内に位置するように、オールフリーSW153を押下した状態で撮像部110を移動させる。上記(2−1.装置構成)で説明したように、医療用観察装置10はバランスアームであるため、術者は、軽い力で容易に撮像部110を移動させることができる。撮像部110を適切な位置、例えば術部(観察点)が視野の中心となる位置まで移動させたら、術者はオールフリーSW153を離す。これにより、各回転軸部210〜260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ211〜261が機能し、保持部120の動作モードが固定モードに移行する。
この状態で、術者は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作して、撮像部110の倍率及び焦点距離を適宜調整する。術者は、調整後の撮像画像を参照しながら、術部に対して各種の処置を行う。
ポイントロック動作を行いたい場合、すなわち、観察点を固定したまま、当該観察点を別の方向から観察したい場合には、術者は、ポイントロックSW154を押下する。ポイントロックSW154が押下されている間は、受動軸であるO1軸、O4軸、O5軸及びO6軸にそれぞれ対応する回転軸部210、250、260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ211、291、251、261が解除される。また、能動軸であるO2軸及びO3軸にそれぞれ対応する回転軸部220、230のブレーキ221、231は機能した状態がそのまま維持される。これにより、術者による手動での直接的な操作により、O1軸、O4軸、O5軸及びO6軸回りの回転が可能な状態となる。
一方、図2に示す制御コントローラ140によって、図3に示す撮像部110の対物光学系に対して設けられるエンコーダ119の検出値(すなわち、凸レンズ112bの光軸上の位置を表す値)と、回転軸部210〜260及び平行四辺形リンク機構240のエンコーダ212〜262の検出値(すなわち、O1軸〜O6軸における回転角度の値)が、常時モニタされている。制御コントローラ140によって、上記の各エンコーダ119、212〜262の検出値に基づいて、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点の、保持部120に対する3次元的な位置が計算される。また、ポイントロックSW154が押下された状態で、術者が撮像部110を移動させようとすると、制御コントローラ140によって、回転軸部210〜260及び平行四辺形リンク機構240のエンコーダ212〜262の検出値に基づいて、移動後の撮像部110及び保持部120の位置及び姿勢が随時算出される。このように、制御コントローラ140は、撮像部110及び保持部120の位置及び姿勢が変化する際に、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点の、保持部120に対する3次元的な位置を、常時検出することができる。制御コントローラ140は、当該情報に基づき、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点を基準点(ポイントロック点)とするポイントロック動作を実行させる。具体的には、制御コントローラ140は、検出されたポイントロック点の保持部120に対する3次元的な位置情報に基づき、撮像部110の位置の変化前後において、撮像部110の光軸が常に観察点を通るように、回転軸部220、230のアクチュエータ223、233の駆動を制御することができる。
このように、ポイントロックSW154が押下されている間、すなわち、ポイントロック動作時には、術者が撮像部110を移動させると、受動軸であるO1軸、O4軸、O5軸及びO6軸回りの回転が術者の操作に従って生じ、撮像部110において光軸回りの回転及び3次元的な平行移動が行われる。一方で、これらの受動軸の移動量(回転量)から、観察点と、移動後の撮像部110及び保持部120との相対的な位置関係が算出され、算出された当該情報に基づいて、移動前後において撮像部110の光軸が同一の観察点を通過するように能動軸であるO2軸及びO3軸回りの回転、すなわち、撮像部110の傾斜移動が制御される。これにより、術者が大まかに撮像部110の位置を動かすだけでも、観察点を見失うことなく、常に観察点を向いた状態で撮像部110が傾斜移動することとなる。
所望の位置まで撮像部110を移動させたところで、術者は、ポイントロックSW154を離し、保持部120の動作モードを固定モードに移行させ、撮像部110の位置を固定する。術部を別の方向から観察しながら、術者は、当該術部に対して適宜処置を行うことができる。
以上、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の使用時の動作について説明した。なお、上述したように、術者は、オールフリーSW153を押下した状態で、撮像部110を移動させ視野の調整を行うため、オールフリーSW153は、撮像部110の把持部を握った状態で押下しやすい位置に配置されることが望ましい。一方、ポイントロック動作を行う際には、術者は、視野の調整のような細かい操作を行う必要はなく、術者自身の感覚としては大まかに撮像部110の位置を移動させる操作を行えばよいため、ポイントロックSW154は、把持部との位置関係を特に考慮することなく、術者の指の届く範囲で、撮像部110のいずれの部位に配置されてもよい。
(2−3.装置の機能構成)
次に、図5を参照して、図2を参照して説明した第1の実施形態に係る医療用観察装置10の機能構成について説明する。図5は、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5を参照すると、医療用観察装置10は、撮像部110と、操作部150と、回転軸部160、170と、記憶部180と、制御部190と、を備える。
撮像部110は、例えば顕微鏡であり、患者の術部を撮影する。撮像部110は、図2及び図3に示す撮像部110に対応するものである。撮像部110には、図3を参照して説明したように、対物光学系の凸レンズ112bの光軸上の位置を移動させるためのモータ118と、当該モータ118の回転数を検出するエンコーダ119が設けられる。撮像部110では、操作部150に対する操作入力(より詳細には図2に示すズームSW151及びフォーカスSW152に対する操作)に応じて、その倍率及び焦点距離が調整される。例えば、ズームSW151の押下に応じて、モータ118が駆動され、撮像部110の焦点距離が調整されることとなる。エンコーダ119は、モータ118の回転数を検出し、その検出値を後述する制御部190の観察点位置算出部193に提供する。なお、第1の実施形態では、撮像部110は顕微鏡によって構成されなくてもよく、カメラ等、撮像機能を有する他の装置によって構成されてもよい。
操作部150は、術者による医療用観察装置10への操作入力を受け付ける入力インターフェースである。操作部150は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等、術者によって操作される装置によって構成される。術者は、操作部150を介して、医療用観察装置10に対して各種の情報を入力したり、各種の指示を入力したりすることができる。操作部150は、図2に示す構成においては、ズームSW151、フォーカスSW152、オールフリーSW153及びポイントロックSW154に対応する。例えば、ユーザによりズームSW151又はフォーカスSW152が押下された場合には、当該操作に応じて撮像部110の倍率又は焦点距離が調整され得る。また、ユーザによりオールフリーSW153又はポイントロックSW154が押下された場合には、これらのスイッチが押下された旨の情報が、後述する制御部190の動作モード制御部191に提供され、医療用観察装置10の保持部(アーム部)の動作モードが制御される。
回転軸部160、170は、医療用観察装置10の保持部に設けられる回転軸を構成する部材に対応する機能を示している。図2を参照して説明したように、医療用観察装置10の回転軸O1軸〜O6軸は、受動軸及び能動軸に区別することができる。回転軸部160は、受動軸に対応する回転軸部(すなわち、図2に示す回転軸部210、250、260及び平行四辺形リンク機構240)の機能を表しており、回転軸部170は、能動軸に対応する回転軸部(すなわち、図2に示す回転軸部220、230)の機能を表している。以下、説明のため、便宜的に、回転軸部160を受動回転軸部160とも呼称し、回転軸部170を能動回転軸部170とも呼称する。
受動回転軸部160は、その機能として、状態検出部161及び動作部163を有する。状態検出部161は、受動回転軸部160の状態、すなわち、受動回転軸部160の回転角度を検出する。状態検出部161は、回転軸部160の回転角度を検出可能なエンコーダ162によって構成される。エンコーダ162は、例えば図2に示すエンコーダ212、292、252、262に対応するものである。状態検出部161は、エンコーダ162によって検出された回転角度の値を、後述する制御部190のアーム状態取得部192に提供する。
動作部163は、受動回転軸部160の回転動作に関する機能を有する。動作部163は、受動回転軸部160の回転を規制するブレーキ164によって構成される。このように、動作部163には、アクチュエータのような受動回転軸部160を能動的に駆動させる機能は備えられない。例えば、ブレーキ164は、例えば図2に示すブレーキ211、291、251、261に対応するものである。動作部163は、後述する制御部190の動作モード制御部191からの指示により、選択された動作モードに応じて、ブレーキ164を機能させ、又は解除する。具体的には、動作モードが固定モードである場合には、動作部163は、ブレーキ164を機能させ、受動回転軸部160が外力に応じて自由に回転しないようにする。一方、動作モードがオールフリーモード及びポイントロックモードである場合には、動作部163は、ブレーキ164を解除し、術者の直接的な操作に従って受動回転軸部160が自由に回転するようにする。
能動回転軸部170は、その機能として、状態検出部171及び動作部173を有する。状態検出部171は、能動回転軸部170の状態、すなわち、能動回転軸部170の回転角度を検出する。状態検出部171は、能動回転軸部170の回転角度を検出可能なエンコーダ172によって構成される。エンコーダ172は、例えば図2及び図4に示すエンコーダ222、232に対応するものである。状態検出部171は、エンコーダ172によって検出された回転角度の値を、後述する制御部190のアーム状態取得部192に提供する。
動作部173は、能動回転軸部170における回転動作に関する機能を有する。動作部173は、能動回転軸部170を回転軸回りに回転駆動するアクチュエータ174、及び、能動回転軸部170の回転を規制するブレーキ175によって構成される。このように、動作部173には、アクチュエータ174のように能動回転軸部170を能動的に駆動させる機能が備えられる。アクチュエータ174は、例えば図2及び図4に示すアクチュエータ223、233に対応するものである。また、ブレーキ175は、例えば図2及び図4に示すブレーキ221、231に対応するものである。
動作部173は、後述する制御部190の動作モード制御部191からの指示により、選択された動作モードに応じて、ブレーキ175を機能させ、又は解除する。具体的には、動作モードが固定モード及びポイントロックモードである場合には、動作部173は、ブレーキ175を機能させ、能動回転軸部170が外力に応じて自由に回転しないようにする。一方、動作モードがオールフリーモードである場合には、動作部173は、ブレーキ175を解除し、術者の直接的な操作に従って能動回転軸部170が自由に回転するようにする。また、動作部173は、ポイントロックモード時に、後述する制御部190の駆動制御部194からの指示により、ポイントロック動作が行われるように、すなわち、移動後の撮像部110による観察点が移動前の撮像部110による観察点と一致するように、アクチュエータ174を駆動する。
記憶部180は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により構成され、医療用観察装置10によって処理される各種の情報を記憶する。例えば、記憶部180は、医療用観察装置10の保持部の駆動制御に係る各種の情報を記憶することができる。駆動制御に係る各種の情報とは、例えば、保持部に対応する内部モデルや、撮像部110のエンコーダ119による検出値及び状態検出部161、171のエンコーダ162、172による検出値、後述するアーム状態についての情報、観察点の位置情報、並びに、動作部173のアクチュエータ174の制御量についての情報等の各種の情報を含む。制御部190は、記憶部180にアクセス可能に構成されており、制御部190は、記憶部180に記憶されている各種の情報を用いて各種の演算処理を行うことができる。
制御部190は、例えばCPUやDSP等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、医療用観察装置10の動作を制御する。なお、制御部190及び記憶部180は、図2に示す制御コントローラ140によって実現されてよい。例えば、制御コントローラ140に設けられるメモリ等の記憶装置によって記憶部180の機能が実現され、制御コントローラ140に設けられるプロセッサによって制御部190の機能が実現されてよい。
制御部190は、その機能として、動作モード制御部191、アーム状態取得部192、観察点位置算出部193及び駆動制御部194を有する。
動作モード制御部191は、医療用観察装置10の保持部の動作モードを制御する。動作モード制御部191は、操作部150を介した術者による操作入力に応じて、保持部の動作モードを決定し、決定した動作モードが実現されるように回転軸部160、170の動作部163、173に対して指示を出す。例えば、オールフリーSW153及びポイントロックSW154がともに押下されていない場合には、動作モード制御部191は、保持部の動作モードを固定モードにすることを決定し、ブレーキ164、175を機能させるように、動作部163、173に対して指示を出す。また、例えば、オールフリーSW153が押下されている場合には、動作モード制御部191は、保持部の動作モードをオールフリーモードにすることを決定し、ブレーキ164、175を解除するように、動作部163、173に対して指示を出す。また、例えば、ポイントロックSW154が押下されている場合には、動作モード制御部191は、保持部の動作モードをポイントロックモードにすることを決定し、ブレーキ164を解除するように受動軸に対応する動作部163に対して指示を出すとともに、ブレーキ175を機能させるように能動軸に対応する動作部173に対して指示を出す。
アーム状態取得部192は、回転軸部160、170の状態に基づいて、保持部の状態(アーム状態)を取得する。ここで、アーム状態は、保持部120の位置及び姿勢を表すものであってよい。アーム状態取得部192は、状態検出部161、171から提供される、エンコーダ162、172の検出値(すなわち、回転軸部160、170の回転角度)と、記憶部180に記憶されている内部モデルと、に基づいて、アーム状態を取得する。内部モデルには、保持部の幾何学的パラメータ、すなわち、保持部における回転軸の配置位置やアーム271〜274の長さ、形状等についての情報が含まれるため、アーム状態取得部192は、エンコーダ162、172の検出値と内部モデルとに基づいて、アーム状態を取得することができるのである。ここで、アーム状態取得部192は、ポイントロック動作が開始された時点でのアーム状態を取得するとともに、ポイントロック動作が行われている最中におけるアーム状態を常時取得し続ける。アーム状態取得部192は、ポイントロック動作が開始された時点でのアーム状態についての情報を、観察点位置算出部193に提供する。また、アーム状態取得部192は、ポイントロック動作が行われている最中におけるアーム状態についての情報を、駆動制御部194に提供する。
観察点位置算出部193は、ポイントロック動作開始時における観察点の3次元的な位置を算出する。観察点位置算出部193は、アーム状態取得部192から提供されるポイントロック動作が開始された時点でのアーム状態についての情報、すなわち保持部の位置及び姿勢を表す情報と、撮像部110から提供されるエンコーダ119の検出値と、に基づいて、観察点の3次元的な位置を算出することができる。具体的には、エンコーダ119によって検出されるモータ118の回転数は、図3に示す対物光学系の凸レンズ112bの光軸上の位置を示す値であるため、観察点位置算出部193は、エンコーダ119の検出値に基づいて、撮像部110の作動距離、すなわち、撮像部110から観察点までの距離を算出することができる。また、観察点位置算出部193は、アーム状態についての情報に基づいて、保持部の先端に取り付けられる撮像部110の3次元的な位置を算出することができる。観察点位置算出部193は、算出したこれらの情報に基づいて、観察点の3次元的な位置を算出することができる。当該観察点の3次元的な位置は、例えば内部モデルの座標系における座標として表現され得る。観察点位置算出部193によって算出される観察点の3次元的な位置は、保持部に対する観察点の位置、すなわち、保持部と観察点との相対的な位置関係を表すものであるとも言える。観察点位置算出部193は、算出したポイントロック動作開始時における観察点の位置情報を、駆動制御部194に提供する。
駆動制御部194は、ポイントロック動作中における能動回転軸部170の駆動を制御する。駆動制御部194は、ポイントロック動作開始時における観察点の位置情報に基づいて、当該観察点が撮像部110の光軸上に位置するように、すなわち、移動後の撮像部110による観察点が移動前の撮像部110による観察点と一致するように、能動回転軸部170の駆動を制御することができる。具体的には、駆動制御部194には、観察点位置算出部193から、ポイントロック動作が開始された時点での観察点の3次元的な位置情報が提供されている。また、駆動制御部194には、アーム状態取得部192から、ポイントロック動作中におけるアーム状態(すなわち、保持部の位置及び姿勢)についての情報が随時提供されている。従って、駆動制御部194は、これらの情報に基づいて、ポイントロック動作が開始された時点での観察点と、撮像部110及び保持部の位置及び姿勢と、の相対的な位置関係を、撮像部110及び保持部の位置及び姿勢の変化に応じて随時算出することができる。駆動制御部194は、算出した位置関係に基づいて、その移動後の撮像部110の位置において、ポイントロック動作開始時における観察点が撮像部110の光軸上に位置するような、回転軸部170(すなわち、図2に示す回転軸部220、230)の回転角度(すなわち、能動回転軸部170を駆動する際の制御量)を算出する。そして、当該回転角度を実現するように、動作部173のアクチュエータ174を駆動させる。駆動制御部194によって算出された制御量に従って能動回転軸部170の駆動が制御されることにより、ポイントロック動作が実現されることとなる。なお、駆動制御部194が制御量を算出する際には、例えば一般的に用いられている位置制御の理論を適用することができるため、その詳細な説明は省略する。
以上、図5を参照して、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の機能構成について説明した。
(3.第2の実施形態)
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、能動軸に対応する回転軸部の構成が変更されるとともに、それに応じて、ポイントロックモードにおけるこれら回転軸部の制御方法が変更されたものに対応する。それ以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、以下の第2の実施形態についての説明にでは、第1の実施形態との相違点について主に説明することとし、第1の実施形態と重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
(3−1.装置構成)
図6及び図7を参照して、本開示の第2の実施形態に係る医療用観察装置の構成について説明する。図6は、本開示の第2の実施形態に係る医療用観察装置の一構成例を示す図である。図7は、図6に示す回転軸部のうち、能動軸に対応する回転軸部の一構成例を示す図である。
図6を参照すると、第2の実施形態に係る医療用観察装置30は、撮像部110と、保持部320(アーム部320)と、ベース130(基台130)と、制御コントローラ140と、を備える。なお、保持部320以外の構成は、図2を参照して説明した、第1の実施形態に係る医療用観察装置10における各構成と同様であるため、その説明を省略する。
保持部320は、撮像部110を保持し、撮像部110を3次元的に移動させるとともに、移動後の撮像部110の位置及び姿勢を固定する。図6に示すように、第2の実施形態に係る保持部320は、図2に示す第1の実施形態に係る保持部120に対して、能動軸に対応する回転軸部220、230が、回転軸部420、430に、それぞれ変更されたものに対応する。その他の構成は、保持部120と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、回転軸部420、430に対応するO2軸及びO3軸は能動軸として機能し得る。ただし、回転軸部420、430の具体的な構成が第1の実施形態とは異なる。具体的には、回転軸部420、430は、それぞれ、力センサ421、431及びアクチュエータ223、233を有する。
図7を参照して、回転軸部430を例に挙げて、回転軸部420、430の構成について説明する。図7では、回転軸部430の、回転軸(O3軸)を通る平面での断面図を示している。図7を参照すると、回転軸部430は、図4に示す回転軸部230に対して、ブレーキ231が設けられず、アクチュエータ233の出力を後段の部材に伝達する伝達部材437にひずみゲージ438が設けられたものに対応する。その他の構成は、回転軸部230の各構成と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
伝達部材437は、アクチュエータ233の出力を、出力側の回転体として振る舞う筐体234に伝達する機能を有する。当該伝達部材437の表面には、ひずみゲージ438が貼り付けられる。ひずみゲージ438により、伝達部材437に作用する力が応力値(トルク値)として検出され得る。例えば、ひずみゲージ438によって、筐体234及びアーム272の回転に伴い回転軸部430に加えられる外力が検出され得る。当該外力は、例えば、術者が手動で撮像部110を移動させる際に回転軸部430に加えられる外力であり得る。このように、ひずみゲージ438は、回転軸部430における外力を検出する力センサとして機能するものであり、上述した力センサ431に対応するものである。なお、力センサ431に対応する具体的な構成は、ひずみゲージ438に限定されない。第2の実施形態では、伝達部材437に作用する応力値を検出可能なデバイスが設けられればよく、当該デバイスとしては、ひずみゲージに限定されない各種の公知の応力検出デバイスが適用可能である。
回転軸部230とは異なり、回転軸部430には、機械的なブレーキ機構は設けられない。回転軸部430では、制御コントローラ140によってアクチュエータ233の駆動が適宜制御されることにより、制御的にブレーキが機能し得る。例えば、固定モードのように、回転軸部430の回転を規制したい場合には、アクチュエータ233を駆動させず、アクチュエータ233の出力軸を回転させないような制御が行われる。これにより、アクチュエータ233の出力軸に連結される筐体234も回転しないこととなり、回転軸部430における回転が固定される。
また、回転軸部430が回転する際には、回転軸部430の駆動は、制御コントローラ140によって、力を制御目標値とする、いわゆる力制御によって制御され得る。例えば、オールフリーモードでは、ひずみゲージ438による検出値に基づいて、ひずみゲージ438の検出値が略ゼロとなるように(すなわち、回転軸部430を回転させようとして加えられる外力を打ち消すように)、アクチュエータ233の駆動が制御される。これにより、術者の手動による直接的な操作に従って、回転軸部430がほぼ抵抗のない状態でスムーズに回転することとなり、回転軸部430に対応するO3軸があたかも受動軸のように振る舞うこととなる。また、ポイントロックモードでは、観察点が撮像部110の光軸上に常に位置するように、すなわち、移動後の撮像部110による観察点が移動前の撮像部110による観察点と一致するように、アクチュエータ233の駆動が制御される。ここで、図6に示すように、第2の実施形態に係る医療用観察装置30も、第1の実施形態と同様に、カウンターウエイト280を備える、いわゆるバランスアームとして構成され得る。従って、ポイントロックモードにおいて、力制御によってポイントロック動作を実現しつつ、あたかも無重力であるかのような軽い力で撮像部110を移動させることが可能となり、ユーザの操作性を向上させることができる。
以上、図6及び図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る医療用観察装置30の構成について説明した。なお、上記では、能動軸に対応する回転軸部420、430について説明するために、一例として、図7を参照して回転軸部430の構成について説明したが、回転軸部420も、回転軸部430と同様の構成を有し、各動作モードにおいて同様の動作を行うことができる。
(3−2.使用時の動作)
次に、以上説明した第2の実施形態に係る医療用観察装置30の使用時の動作について説明する。なお、第2の実施形態に係る医療用観察装置30の使用時の動作において、術者が行う操作は、上記(2−2.使用時の動作)で説明した、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の使用時の動作における術者の操作と略同様である。ただし、第2の実施形態では、オールフリーモード及びポイントロックモードにおける、能動軸に対応する回転軸部420、430の制御方法が、第1の実施形態と異なる。
医療用観察装置30を手術台の近くまで移動させ、オールフリーSW153が押下されるまでの操作は、第1の実施形態と同様である。オールフリーSW153が押下されることにより、回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ211、291、251、261が解除され、術者の手動による直接的な操作によって、撮像部110を自由に移動させることができるようになる。ここで、受動軸に対応する回転軸部210、250、260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ解除については、第1の実施形態と同様である。一方、第2の実施形態では、能動軸に対応する回転軸部420、430については、オールフリーSW153が押下されている間、回転軸部420、430に搭載される力センサ421、431(例えば図7に示すひずみゲージ438)の検出値が略ゼロとなるように、回転軸部420、430のアクチュエータ223、233(例えば図7に示すアクチュエータ233)の駆動が制御される。これにより、オールフリーSW153が押下されている間、すなわち、オールフリーモードにおいては、回転軸部420、430に対応するO2軸及びO3軸を含む全ての回転軸が、術者の直接的な操作に従って回転する受動軸として振る舞うこととなる。なお、回転軸部420、430に対する上記のような駆動制御は、例えば一般的な力制御の理論に基づいて実行することができる。
術者は、例えばディスプレイ装置に表示される、撮像部110によって撮影された画像を参照しながら、術部が撮像部110の視野内に位置するように、オールフリーSW153を押下した状態で撮像部110を移動させる。第1の実施形態と同様に医療用観察装置30はバランスアームであり、また、回転軸部420、430を受動軸として機能させる上記のような駆動制御により、術者は、軽い力で容易に撮像部110を移動させることができる。
撮像部110を適切な位置まで移動させたら、術者はオールフリーSW153を離す。これにより、各回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ211、291、251、261が機能し、保持部320の動作モードが固定モードに移行する。固定モードにおいて、術者は、ズームSW151及びフォーカスSW152により、撮像部110による撮像画像の倍率及び焦点距離を適宜調整した後、当該撮像画像を参照しながら術部に対して各種の処置を行う。ここで、受動軸に対応する回転軸部210、250、260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ機構については、第1の実施形態と同様である。一方、第2の実施形態では、能動軸に対応する回転軸部420、430については、回転軸部420、430が回転しないように回転軸部420、430に搭載されるアクチュエータ223、233の駆動が制御されることにより、その回転が固定されることとなる。
ポイントロック動作を行いたい場合、すなわち、観察点を固定したまま、当該観察点を別の方向から観察したい場合には、術者は、ポイントロックSW154を押下する。ポイントロックSW154が押下されている間は、受動軸に対応する回転軸部210、250、260及び平行四辺形リンク機構240のブレーキ211、291、251、261が解除される。また、能動軸に対応する回転軸部420、430においては、観察点が常に撮像部110の光軸上に位置するように、アクチュエータ223、233の駆動が制御される。
上記のようなポイントロック動作時における回転軸部420、430の駆動制御は、図6に示す制御コントローラ140によって実行され得る。第1の実施形態と同様に、制御コントローラ140によって、撮像部110の対物光学系に対して設けられるエンコーダ119の検出値と、回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構240のエンコーダ212〜262の検出値が、常時モニタされている。制御コントローラ140によって、上記の各エンコーダ119、212〜262の検出値に基づいて、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点の、保持部320に対する3次元的な位置が計算される。また、ポイントロックSW154が押下された状態で、術者が撮像部110を移動させようとすると、制御コントローラ140によって、回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構240のエンコーダ212〜262の検出値に基づいて、移動中における撮像部110及び保持部320の位置及び姿勢の変化が随時算出される。このように、制御コントローラ140は、撮像部110及び保持部320の位置及び姿勢が変化する際に、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点の、保持部320に対する3次元的な位置を、常時検出することができる。制御コントローラ140は、当該情報に基づき、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点を基準点(ポイントロック点)とするポイントロック動作を実行させる。具体的には、制御コントローラ140は、検出されたポイントロック点の保持部320に対する3次元的な位置情報に基づき、撮像部110の位置の変化前後において、撮像部110の光軸が常に観察点を通るように、回転軸部420、430のアクチュエータ223、233の駆動を制御することができる。
このように、ポイントロックSW154が押下されている間、すなわち、ポイントロック動作時には、術者が撮像部110を移動させると、受動軸であるO1軸、O4軸、O5軸及びO6軸回りの回転が術者の操作に従って行われ、撮像部110において光軸回りの回転及び3次元的な平行移動が行われる。一方で、これらの受動軸の移動量(回転量)から、観察点と、移動後の撮像部110及び保持部320との相対的な位置関係が算出され、算出された当該情報に基づいて、光軸が観察点を通過するように能動軸であるO2軸及びO3軸回りの回転、すなわち、撮像部110の傾斜移動が制御される。これにより、術者が大まかに撮像部110の位置を動かすだけでも、観察点を見失うことなく、常に観察点を向いた状態で撮像部110が傾斜移動することとなる。
所望の位置まで撮像部110を移動させたところで、術者は、ポイントロックSW154を離し、保持部320の動作モードを固定モードに移行させ、撮像部110の位置を固定する。術部を別の方向から観察しながら、術者は、当該術部に対して適宜処置を行うことができる。
以上、第2の実施形態に係る医療用観察装置30の使用時の動作について説明した。以上説明したように、第2の実施形態によれば、能動軸に対応する回転軸部420、430に力センサを設け、当該力センサの検出値に基づく力制御により回転軸部420、430の駆動を制御することにより、第1の実施形態と同様のポイントロック動作時における高い操作性を得ることが可能となる。
なお、第2の実施形態では、回転軸部420、430の駆動制御を力制御によって行うことにより、以下のような制御を行うことも可能である。例えば、撮像部110に対して加えられる外力の大きさに応じて、動作モードが切り替えられてもよい。具体的には、ポイントロックモードにおいて撮像部110に対して所定の値よりも大きい外力が加えられ、回転軸部420、430の力センサ421、431によって所定の値よりも大きい外力が検出された場合に、動作モードがオールフリーモードに切り替えられてもよい。これにより、例えばポイントロック動作時に観察点の位置の微調整を行いたい場合に、術者は、わざわざ操作部150を介した操作入力を行わずとも、撮像部110を一定以上の力で直接移動させる操作を行うことにより、動作モードを一時的にオールフリーモードに変更し、ポイントロックの拘束がない状態で所望の位置まで撮像部110を移動させることが可能となる。撮像部110に対する直接的な操作が終了すると、自動的に再度動作モードがポイントロックモードに切り替えられる。このような制御を行うことにより、ポイントロック動作を行いながら、より簡易な操作によって、撮像部110をx−y平面内で平行移動させ、撮像部110の光軸と観察点との位置関係の微調整を行うことが可能となり、術者の利便性を向上させることができる。
(3−3.装置の機能構成)
次に、図8を参照して、図6を参照して説明した第2の実施形態に係る医療用観察装置30の機能構成について説明する。図8は、第2の実施形態に係る医療用観察装置30の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、第2の実施形態に係る医療用観察装置30の機能構成は、図5に示す第1の実施形態に係る医療用観察装置10の機能構成に対して、能動回転軸部170及び制御部190の機能構成が変更されたものに対応する。従って、以下の医療用観察装置30の機能構成についての説明においては、第1の実施形態と相違する機能について主に説明することとする。
図8を参照すると、医療用観察装置30は、撮像部110と、操作部150と、受動回転軸部160と、能動回転軸部370と、記憶部180と、制御部390と、を備える。ここで、撮像部110、操作部150、受動回転軸部160及び記憶部180の機能は、図5に示す医療用観察装置10におけるこれらの構成の機能と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
能動回転軸部370は、その機能として、状態検出部371及び動作部374を有する。状態検出部371は、能動回転軸部370の状態、すなわち、能動回転軸部370に加えられる外力及び能動回転軸部370の回転角度を検出する。状態検出部371は、能動回転軸部370に加えられる外力を検出可能な力センサ372、及び、能動回転軸部370の回転角度を検出可能なエンコーダ373によって構成される。力センサ372は、例えば図6に示す力センサ421、431及び図7に示すひずみゲージ438に対応するものであり、能動回転軸部370に加えられる外力を応力値(トルク値)として検出し得る。また、エンコーダ373は、例えば図6及び図7に示すエンコーダ222、232に対応するものである。状態検出部371は、力センサ372によって検出された応力値を、後述する制御部390の動作モード制御部391及び駆動制御部394に提供する。また、状態検出部371は、エンコーダ373によって検出された回転角度の値を、後述する制御部390のアーム状態取得部192に提供する。
動作部374は、能動回転軸部370における回転動作に関する機能を有する。動作部374は、能動回転軸部370を回転軸回りに回転駆動するアクチュエータ375によって構成される。アクチュエータ375は、例えば図6及び図7に示すアクチュエータ223、233に対応するものである。
動作部374は、後述する制御部390の動作モード制御部391からの指示により、選択された動作モードに応じて、アクチュエータ375を駆動する。具体的には、動作モードが固定モードである場合には、動作部374は、アクチュエータ375の駆動を停止し、当該アクチュエータ375が回転しないようにすることにより、能動回転軸部370が外力に応じて自由に回転しないようにする。一方、動作モードがオールフリーモードである場合には、動作部374は、力センサ372の検出値が略ゼロとなるように、すなわち、能動回転軸部370に加えられる外力を打ち消すように、アクチュエータ375を駆動する。これにより、術者による手動での直接的な操作に従って能動回転軸部370が自由に回転可能になる。また、動作モードがポイントロックモードである場合には、動作部374は、後述する制御部390の駆動制御部394からの指示により、ポイントロック動作が行われるように、すなわち、移動後の撮像部110による観察点が移動前の撮像部110による観察点と一致するように、アクチュエータ375を駆動する。
制御部390は、例えばCPUやDSP等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、医療用観察装置30の動作を制御する。なお、制御部390及び記憶部180は、図6に示す制御コントローラ140によって実現されてよい。例えば、制御コントローラ140に設けられるメモリ等の記憶装置によって記憶部180の機能が実現され、制御コントローラ140に設けられるプロセッサによって制御部390の機能が実現されてよい。
制御部390は、その機能として、動作モード制御部391、アーム状態取得部192、観察点位置算出部193及び駆動制御部394を有する。ここで、アーム状態取得部192及び観察点位置算出部193の機能は、図5に示す医療用観察装置10におけるこれらの構成の機能と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
動作モード制御部391は、医療用観察装置30の保持部の動作モードを制御する。動作モード制御部391は、操作部150を介した術者による操作入力に応じて、保持部の動作モードを決定し、決定した動作モードが実現されるように受動回転軸部160及び能動回転軸部370の動作部163、374に対して指示を出す。例えば、オールフリーSW153及びポイントロックSW154がともに押下されていない場合には、動作モード制御部391は、保持部の動作モードを固定モードにすることを決定し、ブレーキ164を機能させるように動作部163に対して指示を出すとともに、アクチュエータ375を回転させないように動作部374に対して指示を出す。また、例えば、オールフリーSW153が押下されている場合には、動作モード制御部391は、保持部の動作モードをオールフリーモードにすることを決定し、ブレーキ164を解除するように動作部163に対して指示を出すとともに、力センサ372の検出値が略ゼロとなるようにアクチュエータ375を駆動するように動作部374に対して指示を出す。また、例えば、ポイントロックSW154が押下されている場合には、動作モード制御部391は、保持部の動作モードをポイントロックモードにすることを決定し、ブレーキ164を解除するように動作部163に対して指示を出すとともに、駆動制御部394による制御に従ってポイントロック動作を実現するようにアクチュエータ375を駆動するように動作部374に対して指示を出す。オールフリーモード及びポイントロックモードにおけるアクチュエータ375の駆動制御には、一般的に用いられている力制御の理論を適用することが可能であるため、その詳細な説明は省略する。
また、第2の実施形態では、動作モード制御部391は、力センサ372によって検出される能動回転軸部370に負荷される外力に基づいて、保持部の動作モードを決定してもよい。例えば、動作モード制御部391は、ポイントロックモードにおいて能動回転軸部370に負荷される外力が所定の値を超えた場合に、動作モードをオールフリーモードに切り替えてもよい。このような制御を行うことにより、ポイントロック動作を行いながら、より簡易な操作によって、撮像部110をx−y平面内で平行移動させ、撮像部110の光軸と観察点との位置関係の微調整を行うことが可能となり、術者の利便性を向上させることができる。
駆動制御部394は、ポイントロック動作中における能動回転軸部370の駆動を制御する。駆動制御部394は、ポイントロック動作開始時における観察点の位置情報に基づいて、当該観察点が撮像部110の光軸上に位置するように、能動回転軸部370の駆動を制御することができる。具体的には、駆動制御部394には、観察点位置算出部193から、ポイントロック動作が開始された時点での観察点の3次元的な位置情報が提供されている。また、駆動制御部394には、アーム状態取得部192から、ポイントロック動作中におけるアーム状態(すなわち、保持部の位置及び姿勢)についての情報が随時提供されている。従って、駆動制御部394は、これらの情報に基づいて、ポイントロック動作が開始された時点での観察点と、撮像部110及び保持部の位置及び姿勢と、の相対的な位置関係を、撮像部110及び保持部の位置及び姿勢の変化に応じて随時算出することができる。駆動制御部394は、算出した位置関係に基づいて、その移動後の撮像部110の位置において、ポイントロック動作開始時における観察点が撮像部110の光軸上に位置するような、能動回転軸部370(すなわち、図6に示す回転軸部420、430)を駆動させるためのトルク値(すなわち、能動回転軸部370を駆動する際の制御量)を算出する。そして、当該トルク値を実現するように、動作部374のアクチュエータ375を駆動させる。駆動制御部394によって算出された制御量に従って能動回転軸部370の駆動が制御されることにより、ポイントロック動作が実現されることとなる。なお、駆動制御部394が上記のような制御量を算出する際には、例えば一般的に用いられている力制御の理論を適用することが可能であるため、その詳細な説明は省略する。
以上、図8を参照して、第2の実施形態に係る医療用観察装置30の機能構成について説明した。
(4.第3の実施形態)
次に、本開示の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第2の実施形態に対して、受動軸として機能していた平行四辺形リンク機構240の構成が、能動軸に対応する構成に変更されたものに対応する。それ以外の構成は第2の実施形態と同様であるため、以下の第3の実施形態についての説明においては、第2の実施形態との相違点について主に説明することとし、第2の実施形態と重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
(4−1.装置構成)
図9を参照して、本開示の第3の実施形態に係る医療用観察装置の構成について説明する。図9は、本開示の第3の実施形態に係る医療用観察装置の一構成例を示す図である。
図9を参照すると、第3の実施形態に係る医療用観察装置50は、撮像部110と、保持部520(アーム部520)と、ベース130(基台130)と、制御コントローラ140と、を備える。なお、保持部520以外の構成は、図2及び図6を参照してそれぞれ説明した、第1及び第2の実施形態に係る医療用観察装置10、30における各構成と同様であるため、その説明を省略する。
保持部520は、撮像部110を保持し、撮像部110を3次元的に移動させるとともに、移動後の撮像部110の位置及び姿勢を固定する。図9に示すように、第3の実施形態に係る保持部520は、図6に示す第2の実施形態に係る保持部320に対して、平行四辺形リンク機構240の構成が変更されたものに対応する。具体的には、第1及び第2の実施形態では、平行四辺形リンク機構240は受動軸として機能していたが、第3の実施形態に係る平行四辺形リンク機構640は能動軸として機能する。保持部520のその他の構成は、保持部320と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
図9を参照すると、平行四辺形リンク機構640において、アーム241〜244及び軸受部245〜248の形状及び配置は、第1及び第2の実施形態における平行四辺形リンク機構240と同様であってよい。ただし、第3の実施形態では、平行四辺形リンク機構640の軸受部245〜248に対して、回転軸部420、430と同様の構成、すなわち、力センサ641、エンコーダ642及びアクチュエータ643が設けられる。これにより、平行四辺形リンク機構640は能動軸として機能し得る。図9に示す例では、軸受部245に対して力センサ641、エンコーダ642及びアクチュエータ643が設けられている。ただし、力センサ641、エンコーダ642及びアクチュエータ643の配置位置はかかる例に限定されず、これらの部材は、軸受部245〜248のいずれかに設けられればよい。
第3の実施形態では、平行四辺形リンク機構640は、制御コントローラ140からの制御により駆動される。例えば、平行四辺形リンク機構640では、制御コントローラ140によってアクチュエータ643の駆動が適宜制御されることにより、制御的にブレーキが機能し得る。固定モードのように、平行四辺形リンク機構640の回転を規制したい場合には、アクチュエータ643を駆動させず、アクチュエータ643の出力軸を回転させないような制御が行われる。
また、平行四辺形リンク機構640が回転する際には、平行四辺形リンク機構640の駆動は、制御コントローラ140によって、力を制御目標値とする、いわゆる力制御によって制御され得る。例えば、オールフリーモードでは、力センサ641による検出値に基づいて、力センサ641の検出値が略ゼロとなるように(すなわち、平行四辺形リンク機構640を回転させようとして外部から加えられる力を打ち消すように)、アクチュエータ643の駆動が制御される。これにより、術者の手動による直接的な操作に従って、平行四辺形リンク機構640がほぼ抵抗のない状態でスムーズに回転することとなり、平行四辺形リンク機構640に対応するO4軸が、あたかも受動軸のように振る舞うこととなる。また、ポイントロックモードでは、観察点と撮像部110との距離を所定の距離に保つように、アクチュエータ643の駆動が制御される。
以上、図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る医療用観察装置50の構成について説明した。上記のような構成を取ることにより、医療用観察装置50では、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640に対応する回転軸(すなわち、O2軸、O3軸及びO4軸)が能動軸として機能し、回転軸部210、250、260に対応する回転軸(すなわち、O1軸、O5軸及びO6軸)が受動軸として機能することとなる。ここで、上記(2−1.装置構成)で説明したように、回転軸部420、430に対応する回転軸であるO2軸及びO3軸は、撮像部110の傾斜、すなわち撮像部110の光軸方向を決定し得る2軸であると言える。従って、O2軸及びO3軸における回転が制御されることにより、撮像部110の位置にかかわらず、撮像部110に観察点の方向を向かせる動作、すなわち、ポイントロック動作を行わせることが可能となる。一方、図9に示すように、平行四辺形リンク機構640に対応する回転軸であるO4軸は、撮像部110のz軸方向の位置、すなわち、撮像部110と観察点との距離を決定し得る軸であると言える。このように、第3の実施形態では、O2軸、O3軸及びO4軸が能動軸として機能するように構成されることにより、観察点と撮像部110との距離まで制御されたポイントロック動作を行うことが可能となる。
(4−2.使用時の動作)
次に、以上説明した第3の実施形態に係る医療用観察装置50の使用時の動作について説明する。なお、第3の実施形態に係る医療用観察装置50の使用時の動作において術者が行う操作は、上記(2−2.使用時の動作)及び(3−2.使用時の動作)で説明した、第1及び第2の実施形態に係る医療用観察装置10、30の使用時の動作における術者の操作と略同様である。ただし、第3の実施形態では、回転軸部420、430に加えて平行四辺形リンク機構640が能動軸として振る舞うことにより、各動作モードにおいて平行四辺形リンク機構640の駆動が制御される点で、第1及び第2の実施形態と相違する。
医療用観察装置50を手術台の近くまで移動させ、オールフリーSW153が押下されるまでの操作は、第1及び第2の実施形態と同様である。オールフリーSW153が押下されることにより、回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構640のブレーキ211、251、261が解除され、術者の手動による直接的な操作によって、撮像部110を自由に移動させることができるようになる。ここで、受動軸に対応する回転軸部210、250、260のブレーキ解除については、第1及び第2の実施形態と同様である。一方、第3の実施形態では、能動軸に対応する回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640については、オールフリーSW153が押下されている間、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640に搭載される力センサ421、431、641の検出値が略ゼロとなるように、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640のアクチュエータ223、233、643の駆動が制御される。これにより、オールフリーSW153が押下されている間、すなわち、オールフリーモードにおいては、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640に対応するO2軸、O3軸及びO4軸を含む全ての回転軸が、術者の直接的な操作に従って回転する受動軸として振る舞うこととなる。なお、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640に対する上記のような駆動制御は、例えば一般的な力制御の理論に基づいて実行することができる。
術者は、例えばディスプレイ装置に表示される、撮像部110によって撮影された画像を参照しながら、術部が撮像部110の視野内に位置するように、オールフリーSW153を押下した状態で撮像部110を移動させる。第1及び第2の実施形態と同様に医療用観察装置50はバランスアームであり、また、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640を受動軸として機能させる上記のような駆動制御により、術者は、軽い力で容易に撮像部110を移動させることができる。
撮像部110を適切な位置まで移動させたら、術者はオールフリーSW153を離す。これにより、各回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構640のブレーキ211、251、261が機能し、保持部520の動作モードが固定モードに移行する。固定モードにおいて、術者は、ズームSW151及びフォーカスSW152により、撮像部110による撮像画像の倍率及び焦点距離を適宜調整した後、当該撮像画像を参照しながら術部に対して各種の処置を行う。ここで、受動軸に対応する回転軸部210、250、260のブレーキ機能については、第1及び第2の実施形態と同様である。一方、第3の実施形態では、能動軸に対応する回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640については、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640が回転しないように回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640に搭載されるアクチュエータ223、233、643の駆動が制御されることにより、その回転が固定されることとなる。
ポイントロック動作を行いたい場合、すなわち、観察点を固定したまま、当該観察点を別の方向から観察したい場合には、術者は、ポイントロックSW154を押下する。ポイントロックSW154が押下されている間は、受動軸に対応する回転軸部210、250、260のブレーキ211、251、261が解除される。また、能動軸に対応する回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640においては、ポイントロック動作を実現するように、アクチュエータ223、233、643の駆動が制御される。具体的には、回転軸部420、430においては、観察点が常に撮像部110の光軸上に位置するようにアクチュエータ223、233の駆動が制御される。また、平行四辺形リンク機構640においては、観察点と撮像部110との距離を一定に保つように平行四辺形リンク機構640のアクチュエータ643の駆動が制御される。
上記のようなポイントロック動作時における回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640の駆動制御は、図9に示す制御コントローラ140によって実行され得る。第1及び第2の実施形態と同様に、制御コントローラ140によって、撮像部110の対物光学系に対して設けられるエンコーダ119の検出値と、回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構640のエンコーダ212、222、232、642、252、262の検出値が、常時モニタされている。制御コントローラ140によって、上記の各エンコーダ119、212、222、232、642、252、262の検出値に基づいて、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点の、保持部320に対する3次元的な位置が計算される。また、ポイントロックSW154が押下された状態で、術者が撮像部110を移動させようとすると、制御コントローラ140によって、回転軸部210、420、430、250、260及び平行四辺形リンク機構640のエンコーダ212、222、232、642、252、262の検出値に基づいて、移動中における撮像部110及び保持部520の位置及び姿勢の変化が随時算出される。このように、制御コントローラ140は、撮像部110及び保持部520の位置及び姿勢が変化する際に、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点の、保持部520に対する3次元的な位置を、常時検出することができる。制御コントローラ140は、当該情報に基づき、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点を基準点(ポイントロック点)とする、距離が略一定に保たれたポイントロック動作を実行させる。具体的には、制御コントローラ140は、検出されたポイントロック点の保持部520に対する3次元的な位置情報に基づいて、撮像部110の位置の変化前後において、撮像部110の光軸が常にポイントロック点を通るように、かつ、ポイントロック点と撮像部110との距離が一定に保たれるように、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640のアクチュエータ223、233、643の駆動を制御する。
このように、ポイントロックSW154が押下されている間、すなわち、ポイントロック動作時には、術者が撮像部110を移動させると、受動軸であるO1軸、O5軸及びO6軸回りの回転が術者の操作に従って行われ、撮像部110において光軸回りの回転及び3次元的な平行移動が行われる。一方で、これらの受動軸の移動量(回転量)から、観察点と、移動後の撮像部110及び保持部520との相対的な位置関係が算出され、算出された当該情報に基づいて、光軸が観察点を通過するように能動軸であるO2軸及びO3軸回りの回転、すなわち、撮像部110の傾斜移動が制御される。更に、O5軸及びO6軸回りの回転に伴う撮像部110の移動量に基づいて、観察点と撮像部110との距離が一定に保たれるように、すなわち、ポイントロックSW154が押下された時点での観察点と撮像部110との距離(すなわち作動距離)を半径とする球面上を撮像部110が移動するように、O4軸回りの回転が制御される。これにより、術者が大まかに撮像部110の位置を動かすだけでも、観察点を見失うことなく、常に観察点を向いた状態で、かつ作動距離が一定の状態で、撮像部110が移動することとなる。
所望の位置まで撮像部110を移動させたところで、術者は、ポイントロックSW154を離し、保持部320の動作モードを固定モードに移行させ、撮像部110の位置を固定する。術部を別の方向から観察しながら、術者は、当該術部に対して適宜処置を行うことができる。
以上、第3の実施形態に係る医療用観察装置50の使用時の動作について説明した。以上説明したように、第3の実施形態によれば、観察点と撮像部110の距離まで含めて、ポイントロック動作を実行することが可能となる。例えば、観察点と撮像部110との距離を一定に保った状態でポイントロック動作を行うことができるため、撮像部110を移動させても、ピントがずれることがなく、常に鮮明な撮像画像が術者に対して提供されることとなり、術者の利便性をより向上させることができる。
なお、医療用観察装置50の機能構成は、図8に示す第2の実施形態に係る医療用観察装置30の機能構成と略同一であり得る。ただし、医療用観察装置50では、平行四辺形リンク機構640は、受動回転軸部160ではなく、能動回転軸部370に対応する。また、制御部390の駆動制御部394は、ポイントロックモードにおいて、回転軸部420、430に対して、第2の実施形態と同様の制御、すなわち、観察点が撮像部110の光軸上に常に位置するような駆動制御を行うとともに、平行四辺形リンク機構640に対して、観察点と撮像部110との距離が一定に保たれるような駆動制御を行う。例えば、駆動制御部394は、観察点位置算出部193から提供されるポイントロック動作が開始された時点での観察点の3次元的な位置情報と、アーム状態取得部192から提供されるポイントロック動作中におけるアーム状態(すなわち、保持部の位置及び姿勢)についての情報と、に基づいて、観察点と撮像部110との距離が一定に保たれるように平行四辺形リンク機構640を駆動させるための制御量を、トルク値として算出する。そして、駆動制御部394は、当該トルク値が実現されるように、平行四辺形リンク機構640のアクチュエータ375を駆動させる。なお、駆動制御部394が上記のような制御量を算出する際には、例えば一般的に用いられている力制御の理論を適用することが可能である。
ここで、上記の第3の実施形態では、第2の実施形態に示す構成に対して能動軸の数が増加された構成について説明した。ただし、第3の実施形態はかかる例に限定されない。例えば、図2に示す第1の実施形態に係る医療用観察装置10の構成に対して、平行四辺形リンク機構240にアクチュエータを設けることにより、第3の実施形態に係る医療用観察装置が構成されてもよい。この場合であっても、O2軸、O3軸及びO4軸が能動軸として振る舞うこととなり、上述したような観察点と撮像部110との距離まで制御されたポイントロック動作が実現され得る。ただし、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の構成において平行四辺形リンク機構240が能動軸として機能するように変更された場合には、変更後の平行四辺形リンク機構の駆動制御は、他の能動軸に対応する回転軸部220、230と同様に、位置制御によって実行され得る。その場合、例えば、一般的な位置制御の手法を用いて、観察点と撮像部110との距離が一定に保たれるように平行四辺形リンク機構を駆動させるための制御量が、当該平行四辺形リンク機構における回転角度の値として算出され得る。
(5.変形例)
以上説明した第1〜第3の実施形態におけるいくつかの変形例について説明する。
(5−1.撮像部がAF機能を有する変形例)
まず、撮像部がオートフォーカス(AF)機能を有する変形例について説明する。ここでは、一例として、図2に示す第1の実施形態に係る医療用観察装置10の撮像部110がAF機能を有する場合について説明する。
上記(2.第1の実施形態)で説明したように、第1の実施形態では、保持部120に設けられる回転軸のうち、O2軸及びO3軸の駆動を能動的に制御することにより、撮像部110にポイントロック動作を行わせることができる。このように、第1の実施形態におけるポイントロック動作は、O2軸及びO3軸の駆動制御によって行われるため、撮像部110の傾斜移動は制御されるが、観察点と撮像部110との距離は必ずしも一定ではない。
一方、手術においては、例えばノミやハンマーを用いて骨などの硬組織を切断、研削するような処置が行われることがある。このような処置を行う場合には、観察点(すなわち術部)と撮像部110との間に比較的広い作業空間を確保する必要があるため、ポイントロック動作を継続したまま、撮像部110を観察点から遠ざける操作を行う必要がある。
図10は、このような、作業空間を確保するために撮像部110を観察点から遠ざける操作を概略的に示す図である。図10に示すように、例えば、観察点743(術部743)に対してノミ741及びハンマー742を用いた処置が行われる場合には、ポイントロック動作を継続したまま、すなわち、観察点743を固定したまま、撮像部110を傾斜移動させ、更に撮像部110を観察点743から遠ざける操作が行われ得る。
ここで、撮像部110の焦点距離は、例えば、移動前の撮像部110の位置において観察点743と一致するように調整されている。従って、撮像部110と観察点743との距離が変化すると、ピントがずれてしまい、観察点743に対する正常な観察を行うことができなくなってしまう。
そこで、本変形例では、撮像部110にAF機能を設け、例えばポイントロックSW154が押下されている間(すなわち、ポイントロック動作中)は、当該AF機能により撮像部110の焦点が常に観察点743に合うように、焦点距離が調整されるようにする。これにより、ポイントロック動作時に、撮像部110と観察点743との距離が変化した場合であっても、常に観察点743の鮮明な撮像画像が術者に対して提供されることとなり、術者の利便性を向上させることができる。
ここで、実際に術者によって処置が行われるのは、ポイントロック動作によって観察点743を異なる方向から観察するように撮像部110の位置が変更されてから、固定モードに移行した後のことである。従って、撮像部110に設けられるAF機能は、ポイントロック動作時に常に有効に機能するのではなく、ポイントロックSW154が離されることをトリガとして有効に働くように構成されてもよい。このような構成であれば、ポイントロックモードから固定モードに移行すると同時に観察点743に撮像部110の焦点が合わせられるため、術者がフォーカスSW152を用いて手作業で焦点距離の調整を行う必要がなく、より円滑に手術を実行することが可能となる。
以上、撮像部110がAF機能を有する変形例について説明した。なお、上記の説明では、一例として、第1の実施形態に係る医療用観察装置10の撮像部110にAF機能が設けられる場合について説明したが、本変形例は、第2の実施形態に係る医療用観察装置30の撮像部110に対してAF機能を設ける場合であっても、同様の効果を得ることが可能である。
(5−2.応力検知に基づく力制御によって撮像部を移動させる変形例)
次に、応力検知に基づく力制御によって撮像部を移動させる変形例について説明する。ここでは、一例として、図6に示す第2の実施形態に係る医療用観察装置30に対して本変形例を適用した場合について説明する。
上記(3.第2の実施形態)で説明したように、第2の実施形態では、保持部320においてO2軸及びO3軸に対応する回転軸部420、430に力センサ421、431が設けられ、オールフリーモード時及びポイントロックモード時に、当該力センサ421、431の検出値に基づいて、回転軸部420、430の駆動がいわゆる力制御によって制御される。例えば、上記で説明した実施形態では、オールフリーモード時において、力センサ421、431の検出値が略ゼロとなるように回転軸部420、430の駆動が制御されていた。このような制御を行うことにより、術者は、オールフリーモード時において、ほぼ抵抗を感じずに手動で撮像部110を移動させることができる。また、ポイントロックモード時においては、ポイントロック動作を実現するように回転軸部420、430の駆動が制御されていた。しかしながら、力制御によって実現され得る制御はかかる例に限定されない。本変形例では、回転軸部420、430の駆動制御について、力制御を用いた異なる制御を行うことにより、ユーザの利便性を更に向上させることを可能とする。
図11は、本変形例が適用された場合における、撮像部110の移動について説明するための説明図である。図11では、説明のため、図6に示す医療用観察装置30の構成のうち、回転軸部430よりも先端側の構成、すなわち、撮像部110、回転軸部210、420、430及びアーム271、272を抜き出し、z軸方向から見た様子を図示している。また、撮像部110による撮像画像が表示されるディスプレイ装置の表示画面751を併せて図示している。
例えば、図11(a)に示すように、オールフリーモード又はポイントロックモードが終了し、固定モードに移行した直後において、処置を行う対象である術部753(すなわち、観察点753)が、表示画面751の中心752とずれてしまっていたとする。この場合、術者は、術部753が表示画面751の中心752と略一致するように、x−y平面内における撮像部110の位置を微調整する必要がある。
ここで、上記(3−2.使用時の動作)で説明した第2の実施形態における操作方法に従えば、術者は、保持部320の動作モードをオールフリーモードに移行し、撮像部110の位置を微調整することができる。しかしながら、表示画面751に表示されている撮像画像は、所定の倍率で拡大された画像であり得る。従って、表示画面751上の見た目の距離とは異なり、実際に必要な撮像部110の移動距離は、例えば数(mm)程度である可能性がある。オールフリーモードでは、撮像部110を非常に軽い力で、ほぼ抵抗なく移動させることが可能であるが、このように撮像部110を僅かな距離だけ移動させたい場合には、オールフリーモードは必ずしも最適な操作性を提供するものであるとは言えない。
そこで、本変形例では、固定モードにおいて、撮像部110を移動させようとして術者によって所定の値よりも大きい外力が加えられた場合に、一定の抵抗を術者の手に与えながら当該外力の方向に撮像部110が移動するように、回転軸部420、430の駆動を制御する。例えば、図11(b)に示すように、撮像部110を移動させようとして術者によって外力Fが加えられると、当該外力Fは、回転軸部420、430に負荷される応力値f1、f2として、力センサ421、431によって検出され得る。制御コントローラ140は、検出されたこれら応力値f1、f2を合成することにより、負荷された外力Fの大きさを算出することができる。また、制御コントローラ140は、応力値f1、f2の比率により、外力Fが負荷されている方向を算出することができる。
算出された外力Fの大きさが所定の値よりも大きい場合、制御コントローラ140は、一定の抵抗を術者の手に与えながら当該外力の方向に撮像部110が移動するように、力センサ421、431及びエンコーダ422、432の検出値を随時フィードバックしながら、アクチュエータ423、433の駆動を制御する。回転軸部420、430は、撮像部110の光軸と互いに直交する2軸であるO2軸及びO3軸にそれぞれ対応する回転軸部であるため、回転軸部420、430の駆動を適宜制御することにより、x−y平面内における撮像部110の移動を制御することができるのである。ここで、制御コントローラ140は、当該駆動制御を、術者によって外力が加えられている間だけ実行し、術者による外力の負荷が停止された場合にはその位置で撮像部110が停止するように回転軸部420、430の駆動を制御する。これにより、術者は、所定の抵抗を感じながら撮像部110を移動させることができ、また、撮像部を移動させる操作を止めればその位置で撮像部110を停止させることができる。従って、撮像部110を僅かな距離だけ移動させる操作を、より円滑に実行することが可能となる。なお、以上説明したような回転軸部420、430の駆動制御は、例えば一般的な力制御の理論を適用することにより実現可能であるため、その詳細な説明は省略する。
ここで、例えば回転軸部420、430における回転運動に対して機械的に軽い摩擦が生じさせるような構成を設けることにより、本変形例のように、手動で撮像部110を移動させる際に術者に対して所定の抵抗を与えることを実現できる可能性がある。しかしながら、機械的な摩擦を用いる場合には、静摩擦係数と動摩擦係数との差に起因するスティックスリップ現象が生じてしまい、撮像部110を滑らかに移動させることが困難になる恐れがある。また、x−y平面内での撮像部110の移動は、回転軸部420、430における回転運動が連動することにより実現され得るため、機械的な摩擦を用いる場合には、撮像部110のx軸方向への移動とy軸方向への移動とが滑らかに連動せずに、ステップ状の移動となってしまう可能性がある。
一方、本変形例によれば、アクチュエータ423、433の駆動を制御することにより、術者に対して所定の抵抗感を付与しつつ撮像部110を移動させる。アクチュエータ423、433の出力は、互いに連動して連続的に変化させることが可能であるため、術者に対して与えられる抵抗が激しく変化することなく、また、x−y平面内における直線的な撮像部110の移動が可能となる。
以上、応力検知に基づく力制御によって撮像部110を移動させる変形例について説明した。以上説明したように、本変形例によれば、撮像部110の移動に際して力制御を用いた異なる制御を行うことにより、術者の利便性を更に向上させることが可能となる。なお、上記の説明では、一例として、第2の実施形態に係る医療用観察装置30に対して本変形例が適用される場合について説明したが、本変形例は、制御対象である回転軸部に力センサが設けられ、当該回転軸部の駆動が力制御によって行われるものであれば、他の構成を有する医療用観察装置に対しても適用可能である。例えば、上述した第3の実施形態に係る医療用観察装置50に対して本変形例が適用されてもよい。この場合、図9に示す回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640の力センサ421、431、641によって検出された応力に基づいて、負荷された外力の方向に所定の抵抗が付与された状態で撮像部110が移動するように、回転軸部420、430及び平行四辺形リンク機構640の駆動が制御されることとなり、撮像部110の3次元的な移動に対して、同様の制御を実行することが可能である。
(6.補足)
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
なお、上述した各実施形態及び各変形例は、可能な範囲で互いに組み合わせることが可能である。例えば、能動軸のうちの一部を、位置制御によって駆動が制御される能動軸(例えば図2に示す回転軸部220、230)によって構成し、残りの能動軸を、力制御によって駆動が制御される能動軸(例えば図6に示す回転軸部420、430)によって構成してもよい。この場合、位置制御と力制御とを適宜組み合わせて各能動軸の駆動を制御することにより、保持部について、上述した各実施形態や各変形例と同様の駆動制御を行うことが可能となる。
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)術部の画像を撮影する撮像部と、前記撮像部が接続され、少なくとも6自由度で動作可能に回転軸が設けられる保持部と、を備え、前記回転軸のうち、少なくとも2軸は当該回転軸の状態に基づいて駆動が制御される能動軸であり、少なくとも1軸は接触を伴う外部からの直接的な操作に従って回転する受動軸である、医療用観察装置。
(2)前記能動軸の駆動が所定の条件に基づいて制御されることにより、前記撮像部の位置及び姿勢が制御される、前記(1)に記載の医療用観察装置。
(3)前記撮像部が移動する際に、移動後の前記撮像部による観察点が移動前の前記撮像部による観察点と一致するように、観察点が前記撮像部の光軸上に位置するように、前記能動軸の駆動が制御される、前記(1)又は(2)に記載の医療用観察装置。
(4)前記能動軸には、前記撮像部の傾斜を決定可能な2つの回転軸が少なくとも含まれる、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医療用観察装置。
(5)前記能動軸には、前記撮像部の光軸と互いに直交する第1の回転軸と、前記光軸及び前記第1の回転軸と互いに直交する第2の回転軸と、が含まれる、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の医療用観察装置。
(6)前記保持部は、カウンターウエイトを有するバランスアームである、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の医療用観察装置。
(7)前記回転軸には、当該回転軸の状態を検出する状態検出部が設けられ、前記能動軸として機能する前記回転軸には、当該回転軸における回転を駆動するアクチュエータが更に設けられ、前記能動軸においては、前記状態検出部によって検出された前記回転軸の各々の状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動が制御される、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の医療用観察装置。
(8)前記状態検出部は、前記回転軸における回転角度を検出するエンコーダを含み、
前記能動軸においては、前記エンコーダによって検出された前記回転軸の各々の回転角度に基づいて、前記アクチュエータの駆動が制御される、前記(7)に記載の医療用観察装置。
(9)前記能動軸に設けられる前記状態検出部は、少なくとも前記能動軸に負荷される外力を検出する力センサを更に含み、前記能動軸においては、前記エンコーダによって検出された前記回転軸の各々の回転角度と、前記力センサによって検出された前記能動軸の各々における応力値と、に基づいて、前記アクチュエータの駆動が制御される、前記(8)に記載の医療用観察装置。
(10)前記能動軸には、前記撮像部の傾斜を決定可能な2つの回転軸と、前記撮像部と観察点との距離を決定可能な1つの回転軸と、が少なくとも含まれ、前記撮像部が移動する際に、移動後の前記撮像部による観察点が移動前の前記撮像部による観察点と一致するように、かつ、前記撮像部と前記観察点との距離が一定に保たれるように、前記能動軸の駆動が制御される、前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の医療用観察装置。
(11)前記保持部の動作モードは、前記撮像部が移動する際に移動後の前記撮像部による観察点が移動前の前記撮像部による観察点と一致するように前記能動軸の駆動が制御されるポイントロックモードと、前記回転軸における回転が固定される固定モードと、のいずれかに少なくとも切り替え可能である、前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の医療用観察装置。
(12)前記撮像部はAF機能を有し、前記ポイントロックモードにおいて前記撮像部が移動する際に前記観察点に対して焦点を合わせるように、前記AF機能が常に作動される、前記(11)に記載の医療用観察装置。
(13)前記撮像部はAF機能を有し、前記ポイントロックモードから前記固定モードに移行する際に、前記観察点に対して焦点を合わせるように前記AF機能が作動される、前記(11)に記載の医療用観察装置。
(14)前記能動軸には、前記撮像部の光軸と互いに直交する第1の回転軸と、前記光軸及び前記第1の回転軸と互いに直交する第2の回転軸と、が含まれ、前記第1及び第2の回転軸には、前記第1及び第2の回転軸における回転角度を検出するエンコーダと、少なくとも前記第1及び第2の回転軸に負荷される外力を検出する力センサと、前記第1及び第2の回転軸における回転を駆動するアクチュエータと、が設けられ、前記撮像部を移動させるために外力が負荷された際に、前記第1及び第2の回転軸の前記力センサの検出値に基づいて検出される前記外力の方向に、前記外力が負荷されている間、前記撮像部を移動させるように、前記能動軸の前記エンコーダ及び前記力センサによる検出値に基づいて前記能動軸の前記アクチュエータの駆動が制御される、前記(1)又は(2)に記載の医療用観察装置。
(15)術部の画像を撮影する撮像部と、前記撮像部が接続され、少なくとも6自由度で動作可能に回転軸が設けられる保持部と、を備え、前記回転軸のうち、前記撮像部の光軸と互いに直交する第1の回転軸と、前記光軸及び前記第1の回転軸と互いに直交する第2の回転軸と、の少なくとも2軸は、当該回転軸の状態に基づいて駆動が制御される能動軸であり、少なくとも1軸は、接触を伴う外部からの直接的な操作に従って回転する受動軸であり、前記第1及び第2の回転軸には、前記第1及び第2の回転軸における回転角度を検出するエンコーダと、少なくとも前記第1及び第2の回転軸に負荷される外力を検出する力センサと、前記第1及び第2の回転軸における回転を駆動するアクチュエータと、が設けられる、医療用観察装置。
(16)前記撮像部を移動させるために外力が負荷された際に、前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸の前記力センサの検出値に基づいて検出される前記外力の方向に、前記外力が負荷されている間、前記撮像部を移動させるように、前記エンコーダ及び前記力センサによる検出値に基づいて前記アクチュエータの駆動が制御される、前記(15)に記載の医療用観察装置。