JP6643902B2 - 超並列高速シークエンサーによる簡便なhla遺伝子のdnaタイピング方法およびキット - Google Patents

超並列高速シークエンサーによる簡便なhla遺伝子のdnaタイピング方法およびキット Download PDF

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Description

本発明は、超並列高速シークエンサーを用いたHLA遺伝子のDNAタイピングのための方法およびキットに関する。
ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen;HLA)は免疫学的自己、非自己の識別において中心的役割を果たしており、この識別はHLA上に自己または非自己由来のペプチドを提示したHLA・ペプチド複合体を、T細胞がT細胞受容体を介して認識することにより為される。自己のHLA上に非自己(ウイルス、細菌等の病原性微生物や花粉等の外来抗原)由来のペプチドを提示したHLA・ペプチド複合体を表面上に発現した細胞、あるいは移植や輸血により体内に入れられた自己とは異なるHLAアリル(対立遺伝子)を表面に発現した細胞をT細胞が認識することにより、免疫細胞の活性化、あるいは提示した細胞の破壊が起こる。
これらの免疫細胞の活性化や提示した細胞の破壊は、輸血、骨髄移植を初めとする移植医療、iPS細胞やES細胞を用いた再生医療において拒絶反応や移植片対宿主病(Graft versus Host Disease:GVHD)を引き起こす。血小板頻回輸血患者では、自己と異なるHLAに対する抗体が産生され、血小板輸血効果の著しい低減をもたらす。投薬の一部においては、特定のHLAに結合した医薬品(およびペプチド)が非自己と認識され、アレルギー反応を中心とした重篤な医薬品副作用をもたらす場合もある。
よって移植医療や再生医療においては患者とドナー(提供者)のHLAを一致させる必要がある。特定のアリルに対する抗HLA抗体を産生した血小板輸血患者にも、HLAを合致させた「HLA適合血小板」の輸血が必要になる。医薬品副作用においても、投与予定の医薬品と特定のHLAアリルとの関連が報告されている場合は、投薬前にHLAを調べることが重要である。実際に一部の医薬品添付文書にはHLAを調べることを推奨することが明記されている。がんのペプチドワクチン療法においても、ペプチドワクチンが患者HLAに結合できるか否かを予測するために、HLAを調べる必要がある。
HLAの主なものとして6種類の抗原が知られている。ほぼすべての細胞で発現しているクラスI分子(HLA−A、HLA−B、HLA−C)と、主として免疫系の細胞で発現しているクラスII分子(HLA−DR、HLA−DQ、HLA−DP)である。
HLAクラスI抗原は高度な多型性を示すα鎖と多型性がほとんど無いβ2−ミクログロブリンからなり、HLAクラスII抗原は高度な多型が存在するβ鎖と多型性が少ないα鎖からなる。クラスI分子のα鎖はHLA−A、HLA−B、HLA−Cの各遺伝子にコードされ、クラスII抗原のβ鎖はHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1、HLA−DPB1、α鎖はHLA−DRA1、HLA−DQA1、HLA−DPA1遺伝子にコードされている。遺伝子レベルでは、HLAクラスI抗原ではα鎖をコードしている遺伝子のエクソン2とエクソン3が高度な多型性を示し、HLAクラスII抗原ではβ鎖をコードしている遺伝子のエクソン2が高度な多型性を示す。
HLAをコードしている遺伝子領域はヒト第6染色体短腕部6p21.3に位置し、テロメア側からセントロメア側に向けて、クラスI領域(HLA−A、HLA−C、HLA−B等)、クラスIII領域、クラスII領域(HLA−DRA、HLA−DRB1、HLA−DQA1、HLA−DQB1、HLA−DPA1、HLA−DPB1等)の順に並び、多くの遺伝子が非常に高い密度でコードされており、輸血や移植および様々な疾患との関連性が報告されてきている。クラスIII領域にはHLA遺伝子は存在せず、補体成分や腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF)等の遺伝子が存在している。
HLA−DR抗原のβ鎖をコードするHLA−DRB遺伝子領域には5種類の構造多型が確認されている。DR1型およびDR10型では、同一染色体上に、HLA−DRB1の他にHLA−DRB6およびHLA−DRB9などの偽遺伝子が位置する。DR2型では、同一染色体上に、HLA−DRB1の他にHLA−DRB5(DR51)遺伝子と、HLA−DRB6およびHLA−DRB9などの偽遺伝子が位置する。DR3、DR5およびDR6型では、同一染色体上に、HLA−DRB1の他にHLA−DRB3(DR52)遺伝子と、HLA−DRB2およびHLA−DRB9などの偽遺伝子が位置する。DR4、DR7およびDR9型では、同一染色体上に、HLA−DRB1の他にHLA−DRB4(DR53)遺伝子と、HLA−DRB7、HLA−DRB8およびHLA−DRB9などの偽遺伝子が位置する。これらに対して、DR8型では、同一染色体上にHLA−DRB1以外のHLA−DRB遺伝子は位置しない(図1参照)。
各アリルのエクソンには多型性を示す複数の領域が存在し、ある多型領域の塩基配列(アミノ酸配列)が、複数のアリルに共通していることも多い。すなわち各HLAアリルは複数の多型領域の組み合わせにより規定される。HLAクラスII抗原ではエクソン内の多型領域のみならず、同一の塩基配列をもつエクソン2あるいはエクソン3が複数のアリルに共通していることもある。
HLAには高度な多型が存在するため対立遺伝子(アリル)の種類が極めて多いことも知られ、それらの表記法も決められている。即ち、血清学的HLA型を判別する第1区域(2桁レベル)、同一の血清学的HLA型内でアミノ酸置換を伴うアリルを判別する第2区域(4桁レベル)、アミノ酸変異を伴わない塩基置換が認められるアリルを判別する第3区域(6桁レベル)、およびHLA分子をコードする遺伝子領域外(イントロン)での塩基置換を伴うアリルを判別する第4区域(8桁レベル)である(図2参照)。
医療の様々な場合においてHLAアリルを調べること(HLA遺伝子のDNAタイピング)は重要である。しかし従来よく使われてきたSBT法(sequence−based typing)やLuminex法(PCR−sequence−specific oligonucleotide probes(SSOP)−Luminex method)では、アリル間で異なる複数の多型領域が存在する場合に、その多型領域がシスの位置(同一の染色体上)にあるのか、トランスの位置(異なる染色体上)にあるのかを決めることが難しいために、フェーズ・アンビギュイティ(phase ambiguity)とよばれる曖昧さが存在し、アリルを正確に決められない場合があった。
そのため、我々は次世代シークエンサー(超並列高速シークエンサー)を用いてフェーズ・アンビギュイティがない方法を開発した。しかし、この方法ではプロモーター領域から3’UTRを含む長い領域を増幅するために、保存状態が悪く断片化したDNAではタイピングが難しい場合があった。特にHLAクラスII遺伝子ではイントロン1が長く、クラスI遺伝子の2倍程度の長さの領域を増幅することになるので断片化が進んだDNAサンプルではタイピングが難しかった。
特開平11−216000号公報
Lind C.等、Human Immunology、第71巻、1033−1042頁(2010年) Shiina T.等、Tissue Antigens、第80巻、305−316頁(2012年)
本発明は、保存状態が悪く断片化したDNAサンプルを用いた場合であってもタイピングすることが可能であり、同一のPCR条件下で複数のプライマーセットを用いて各HLA遺伝子のPCRを同時に行うことができる、超並列高速シークエンサーを用いたHLA遺伝子のDNAタイピングのための方法、プライマーセットおよびキットを提供することを課題とする。
本発明者らは、アリル間の違いをもたらす多型が多く、また抗体やT細胞受容体に認識される細胞外ドメインをコードしているHLAクラスII遺伝子のエクソン2からエクソン4の一部を含む領域を増幅し、次世代シークエンサーによりDNAタイピングする系を開発した。
具体的には、HLAクラスII遺伝子であるHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、およびHLA−DRB5遺伝子を同時に増幅しうるPCRプライマー、HLA−DQB1、およびHLA−DPB1遺伝子を特異的に増幅しうるPCRプライマーをそれぞれ新たに設計し、好適なPCR条件を設定して、超並列高速シークエンシング技術を駆使するという新しい着想に基づき、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のステップを含むHLA遺伝子のDNAタイピング方法を提供する。
(1)ヒトゲノム塩基配列におけるHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1、およびHLA−DPB1からなる群から選択される少なくとも1つの対象遺伝子のエクソン2とエクソン3を含むイントロン1領域およびエクソン4領域に各々特異的にアニールするプライマーセットを準備するステップ;
(2)前記プライマーセットを用いて被検試料(DNA)をPCR法によるDNA増幅を行うステップ;
(3)PCR法により増幅された産物の塩基配列を決定するステップ;および
(4)データベースとのホモロジー検索を実施するステップ。
ある実施形態では、前記対象遺伝子は、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5からなる群から選択される少なくとも1つが選択され、前記プライマーセットがそれぞれ配列番号:1および配列番号:2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、前記対象遺伝子がHLA−DQB1遺伝子であり、前記プライマーセットがそれぞれ配列番号:3および4のいずれか一方または両方および配列番号:5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。更なる実施形態では、前記対象遺伝子がHLA−DPB1遺伝子であり、前記プライマーセットがそれぞれ配列番号:6および配列番号:7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。
さらに、他の態様では、本発明は、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のエクソン2とエクソン3を含む領域を同時にPCR法によりDNA増幅することが可能なプライマーセットに関する。ある実施形態では、それぞれ配列番号:1および配列番号:2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のDNAタイピング用プライマーセットが提供される。他の実施形態では、それぞれ配列番号:3および4のいずれか一方または両方および配列番号:5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、HLA−DQB1遺伝子のDNAタイピング用プライマーセットが提供される。更なる実施形態では、それぞれ配列番号:6および配列番号:7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、HLA−DPB1遺伝子のDNAタイピング用プライマーセットが提供される。
本発明の方法は1分子からのHLA遺伝子のDNAタイピングに必要な全塩基配列が得られるので、シス・トランスの位置関係が不明なフェーズ・アンビギュイティが排除された究極のDNAタイピング法である。これにより、多型が多く、また抗体やT細胞受容体に認識される細胞外ドメインをコードしているHLAクラスII遺伝子のエクソン2からエクソン4の一部を含む領域の増幅が可能となり、次世代シークエンサーによるDNAタイピングが実現される。
また、増幅領域を短くしたことから、保存状態が悪いDNAサンプルを用いた場合でもHLA遺伝子のDNAタイピングが比較的容易になった。さらに、増幅する領域の長さは既に発表しているクラスI遺伝子の増幅領域とほぼ同等であり、本発明のプライマーセットを用いることにより、同一のPCR条件で複数のHLA遺伝子を同時にPCRを行うことが可能であるので、PCRに費やす時間を短縮することができた。さらに、データ量も少なくなるのでデータ解析の時間も短縮された。
HLA−DR遺伝子領域を示す図である。猪子英俊、笹月健彦、十字猛夫 監修、「移植・輸血検査学」、講談社サイエンティフィック、2004年、第48頁から引用した。 HLAアリルの分類法を示す図である。IMGT−HLAデータベース(www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)から引用した。 (a)HLAクラスI遺伝子構造と分子構造との関連性を示す図である。(b)HLAクラスI遺伝子のプロモーター領域の構造を示す図である。猪子英俊、笹月健彦、十字猛夫 監修、「移植・輸血検査学」、講談社サイエンティフィック、2004年、第35頁から引用した。 各HLA遺伝子の構造を示す模式図である。 HLAクラスII遺伝子上の設計したプライマーの位置とリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さを示す。 新規に開発したプライマーを用いたアガロースゲル電気泳動像を示す。 マルチプレックスPCRによるアガロースゲル電気泳動像を示す。 マルチプレックスPCRによるアガロースゲル電気泳動像を示す。
以下、本発明のDNAタイピング方法をステップ毎に詳細に説明する。
(1)プライマーセット準備ステップ
本発明のDNAタイピング方法においては、まず、ヒトゲノム塩基配列におけるHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1およびHLA−DPB1からなる群から選択される少なくとも1つの対象遺伝子のエクソン2とエクソン3を含むイントロン1およびエクソン4に各々特異的にアニールするプライマーセットであって、同一条件でのアニーリングが可能なプライマーセットを準備する。
HLA遺伝子が存在する領域を含むヒト第6染色体(6p21.3)のゲノム塩基配列は既に解明されており、その遺伝子構造および発現産物(HLA抗原)の構造との関連も知られている(図3および4参照)。
本発明では、古典的クラスII抗原(HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1およびHLA−DPB1)のエクソン2とエクソン3を含む領域を網羅的にPCRできるプライマーセットを調製し(図5参照)、それを用いて増幅したPCR産物を後述するハイスループットシークエンシングに供するので、フェーズ・アンビギュイティ等の不確実さを排除でき、ヌル(null)アリルの有無も正確に検知することができる。
表1における配列番号1と2は、MHCクラスIIβ鎖であるHLA−DRB1遺伝子、HLA−DRB3遺伝子、HLA−DRB4遺伝子およびHLA−DRB5遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−DRB1遺伝子、HLA−DRB5遺伝子、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:6_cox_hap2)において、HLA−DRB1遺伝子、HLA−DRB3遺伝子、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:mann_hap4)において、HLA−DRB1遺伝子、HLA−DRB4遺伝子それぞれのエクソン2とエクソン3を上流側および下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。
配列番号1は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第32552643番目から第32552667番目および第32490446番目から第32490470番目、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:6_cox_hap2)における第4003862番目から第4003886番目および第3939870番目から第3939894番目、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:mann_hap4)における第4000197番目から第4000221番目および第3851785番目から3851809番目に相当する塩基配列を持つ。
配列番号2は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第32548609番目から第32548631番目および32486419番目から32486441番目、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:6_cox_hap2)における第3999861番目から第3999883番目および第3935840番目から3935862番目、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:mann_hap4)における第3996203番目から第3996225番目および3847267番目から第3847289番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。
これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約4,000〜約4,500塩基(bp)である。
表1における配列番号3〜5は、MHCクラスIIβ鎖であるHLA−DQB1遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−DQB1遺伝子のエクソン2とエクソン3を上流側および下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。
配列番号3は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第32633103番目から第32633128番目に相当する塩基配列を持つ。
配列番号4は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第32633103番目から第32633127番目に相当する塩基配列を持つ。
配列番号5は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第32629214番目から第32629237番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。
これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約3,900塩基(bp)である。
表1における配列番号6と7は、MHCクラスIIβ鎖であるHLA−DPB1遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−DPB1遺伝子のエクソン2とエクソン3を上流側および下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。
配列番号6は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第33048187番目から第33048207番目に相当する塩基配列を持つ。
配列番号7は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第33053563番目から第33053591番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。
これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約5,400塩基(bp)である。
これらのプライマーは、当該分野で通常用いられている手法により調製することができる。また、表1に記載したプライマーセットは最も好ましい例を示したものであり、本発明の方法においては、HLAの各遺伝子のエクソン2とエクソン3を上流側および下流側から挟み込む位置にアニーリング可能なセンス(Sense)側プライマーとアンチセンス(Anti−sense)側プライマーとのセットであれば同様に使用することができる。
なお、この明細書においては、リファレンス配列の同一の位置に相当する塩基配列(又はそれに相補的な塩基配列)であっても、1〜数塩基が相違しているプライマーについては各々別個の配列番号を付与した。これらの1〜数塩基の相違は多型によるものである。
Figure 0006643902
また、本発明では、上記古典的クラスII抗原に特異的なプライマーセットに加え、古典的クラスI抗原であるHLA−A、HLA−BおよびHLA−Cの各遺伝子において多型性が高いことが知られているエクソン2および3を含む領域をPCRするためのプライマーセットを組み合わせて用いることができる。HLA−A、HLA−BおよびHLA−Cの各遺伝子に特異的なプライマーセットは以下のように例示することができる。
表2における配列番号8〜10は、MHCクラスIα鎖であるHLA−A遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−A遺伝子の全領域(プロモーター、エクソンおよびイントロンを含む)を上流側および下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。
配列番号8と9は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第29909483番目から第29909514番目に相当する塩基配列を持つ。
配列番号10は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第29914925番目から第29914954番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。
これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約5,500塩基(bp)である。
表2における配列番号11と12は、MHCクラスIα鎖であるHLA−B遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−B遺伝子の全領域(プロモーター、エクソンおよびイントロンを含む)を上流側および下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。
配列番号11は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第31325796番目から第31325824番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。
配列番号12は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第31321210番目から第31321235番目に相当する塩基配列を持つ。
これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約4,600塩基(bp)である。
表2における配列番号13〜15は、MHCクラスIα鎖であるHLA−C遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−C遺伝子の全領域(プロモーター、エクソンおよびイントロンを含む)を上流側および下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。
配列番号13と14は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第31240868番目から第31240896番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。
配列番号15は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第31236075番目から第31236114番目に相当する塩基配列を持つ。
これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約4,800塩基(bp)である。
Figure 0006643902
本明細書中に記載の一又は複数のプライマーセットは、例えばマルチプレックスPCR法などにおいて各HLA遺伝子をPCR増幅させるために同一容器内で用いられてよい。
(2)PCRステップ
本発明の方法では、前記ステップ(1)で準備したプライマーセットを用い、被検試料(DNA)をPCR法によりDNA増幅を行う。
PCRは、通常のプロトコールに従って実施される。具体的には次の通りである。
1.被検試料の形態に応じて、当該試料からDNAを抽出する。
2.抽出したDNAを定量し、適宜プライマー濃度を設定して反応液を調製する。
3.反応条件を設定してPCRを実施する。
例:熱変性ステップ(通常は92〜98℃)
アニーリングステップ(通常は55〜72℃)
伸長ステップ(通常は65〜80℃)
本発明の方法では、前記アニーリングおよび伸長ステップの温度を約65〜70℃とするのが好ましい。より好ましくは65℃〜68℃とする。約65〜70℃でアニーリングおよび伸長させることにより、HLAアリルを等比率で(均一に)生成させることができる。
4.得られたPCR産物を精製し、次の塩基配列決定ステップに供する。
本発明で用いる酵素(DNAポリメラーゼ)は特に限定されるものではないが、例えば、市販品を使用することもできる。例えば、タカラバイオ株式会社製のPrimeSTAR(登録商標)GXL DNAポリメラーゼ、Tks Gflex(登録商標)DNAポリメラーゼ、TaKaRa LA Taq(登録商標)等を挙げることができる。
(3)塩基配列決定ステップ。
次に、前記ステップ(2)で生成されたPCR産物(増幅DNA)の塩基配列を決定する。このステップは、いわゆるハイスループットシークエンス(あるいは超高速シークエンス、大量並列シークエンス)と呼ばれている手法を用いて実施するのが好ましい。ハイスループットシークエンスに関しては、例えば、「実験医学」第27巻、第1号、2009年(羊土社)等を参照されたい。
超並列高速シークエンサーとしては、ロシュ社の454 GSシステム、ライフテクノロジーズ社のゲノムシークエンサーIon Torrent PGMTMシステムおよびイルミナ社のMiSeqシステムなどがあるが、本明細書では、ロシュ社の454 GSシステムに基づいて配列決定する方法を以下に記載する。
1.前記ステップ(2)で得られたPCR産物をネブライザーにより約500塩基ほどに断片化する。
2.その断片化されたDNA断片の末端にDNAアダプターを付加する。
3.DNAアダプターを付加したDNA断片を一本鎖にした後、アダプターを介してビーズに結合させ、得られたビーズを油中水型エマルジョンに包み込む。これにより、1ビーズに1つのDNA断片が結合したマイクロリアクター環境が形成される。
4.エマルジョンPCRを実施し、各DNA断片を増幅させる。エマルジョンPCRにより、各DNA断片は各々のマイクロリアクター内でクローナルに増幅されるので、他の配列との競合もなく、多数の断片の増幅が同時に並列的に実施できる。ついで、エマルジョンを破壊して増幅されたDNA断片が結合したビーズを回収する。
5.ビーズを濃縮し、ピコタイタープレートにローディングする。ピコタイタープレートは、1ウェルに1個のビーズが入るサイズである。
6.各々のビーズについて、4種類の核酸(A、C、G、T)を一定の順序で加え、添加した核酸がポリメラーゼによりDNA配列に取り込まれたときに生じるピロリン酸を、ルシフェラーゼによる蛍光反応により検出し、そのシグナル強度と位置情報との組み合わせにより塩基配列を決定する。
(4)DNAタイピングステップ
次いで、前記ステップ(3)で得られるsff fileをMIDタグ毎に分類した後、既知のHLAアリルの塩基配列データベースのデータと比較することにより、被検試料に含まれていたDNAの第3区域レベルあるいは第4区域レベルのHLAアリル(6桁あるいは8桁レベル)が決定される。
本発明の方法は、前記表1に記載したプライマーセットを代表例とする。HLAクラスクラスIIの各遺伝子のエクソン2とエクソン3を挟み込む位置にプライマーを設定し、ほぼ全領域に渡って増幅したDNAの配列決定をすることに特徴を有し、それによってアンビギュイティ(不確実さ)を排除し、ヌルアリルに関する情報を得ることもできる。
本発明では、各HLA遺伝子のPCRの際のアニーリング温度が同一となるようなプライマーセットを新たに設定したことにより、1台のPCR装置で複数の遺伝子のPCR増幅を同時に行うことができる。
また本発明では、上記の新たなプライマーセットを設定したことにより、複数のHLA遺伝子を1〜2チューブ内で同時に増幅するマルチプレックスPCRを行うことが可能になった。
さらに、本発明で使用するプライマーセットおよび酵素の組み合わせは、高速PCR装置にも適用可能であることを確認した。したがって、従来に比して迅速かつ高精度にPCRを行うことができる。
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[目的]
HLAクラスII各遺伝子における増幅状況を確認する。
[方法]
酵素としてPrimeSTAR(登録商標)GXL DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて、既に抽出されているゲノムDNAを鋳型として、HLAクラスIIの各遺伝子特異的プライマーセット(表1の配列番号1〜7)を用いたPCRを行った。具体的な手順は次の通りである。
(1)25ngのゲノムDNA溶液に、4μLの5xPrimeSTAR(登録商標)GXL緩衝液、1.6μLのdNTP溶液、1μL(4pmol/μL)ずつのPCRプライマー、0.8μLのPrime STAR(登録商標)GXLポリメラーゼを加え、反応液の全量を滅菌水にて20μLに調整した。
(2)(1)の調製物を94℃で2分間の保温後、続いて98℃で10秒間、70℃で3分間の2ステップを1工程として、この工程を30回繰り返してPCRを行った。なお、このPCRにはGeneAmp(登録商標)PCR System9700(ライフテクノロジーズ社)を用いた。PCR後に、アガロースゲル電気泳動法によりPCR産物の増幅状況を確認した。
[結果および考察]
PrimeSTAR(登録商標)GXL DNAポリメラーゼによってHLA遺伝子のPCRが可能であった。増幅されたPCR産物を用いてアガロースゲル電気泳動を行った結果を図6に示す。レーン1はHLA−DRB1、HLA−DRB4およびHLA−DRB5、レーン2はHLA−DQB1、レーン3はHLA−DPB1それぞれのエクソン2および3を含む領域に相当するPCR産物であることが示された。図6においてレーンMはDNAサイズマーカーを示す。これらプライマーを用いることにより、HLAクラスIIの各遺伝子について目的の分子量の位置に単一のPCR産物を得ることができた。
(実施例2)
[目的]
実施例1のHLAクラスIIに加え、HLA−A、HLA−B、HLA−Cを含めたHLA6座位におけるマルチプレックスPCR法の可能性を検証する。
[方法]
1.既に抽出され、HLA型が明らかにされており、従来のDNAタイピング法にてフェーズ・アンビギュイティの見られるアリルの組み合わせを含む6検体(表3のSample1〜6)のゲノムDNAを鋳型として、PrimeSTAR(登録商標)GXL DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて、HLAクラスIおよびHLAクラスIIの各遺伝子に特異的なプライマーセット(表2の配列番号8〜15および表1の配列番号1〜7)を用いたPCRを行った。具体的な手順は次の通りである。
(1)PCRは2本の0.2mlチューブに分けて行った。すなわち、HLA−A、HLA−B、HLA−Cを1本のチューブで増幅させ、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1およびHLA−DPB1を1本のチューブで増幅させた。
(2)25ngのゲノムDNA溶液に、4μLの5xPrimeSTAR(登録商標)GXL緩衝液、1.6μLのdNTP溶液、3.2〜5μL(10pmol/μL)ずつのPCRプライマー、0.8μLのPrime STAR(登録商標)GXLポリメラーゼを加え、反応液の全量を滅菌水にて20μLに調整した。
(3)(2)の調製物を94℃で2分間の保温後、続いて98℃で10秒間、70℃で3分間の2ステップを1工程として、この工程を30回繰り返してPCR増幅を行った。なお、このPCRにはGeneAmp(登録商標)PCR System9700(ライフテクノロジーズ社)を用いた。PCR後に、アガロースゲル電気泳動法によりPCR産物の増幅状況を確認した。
2.PCR産物の塩基配列を決定した。具体的には次の通り行った。
(1)PCR産物をAMPure XPキット(ベックマン・コールター株式会社)の標準的なプロトコールに従って精製した。
(2)PicoGreen(登録商標)dsDNA定量キット(インビトロジェン社)の標準的なプロトコールに従って濃度を測定した。
(3)精製したクラスI遺伝子由来のPCR産物とクラスII遺伝子由来のPCR産物を等量ずつ混合した。
(4)500ng/100μLの濃度に調整し、GS Junior(ロシュ社)の標準的なプロトコールに従って、rapidライブラリーの作製、エマルジョンPCR、シークエンシングを行い、1サンプルあたり1万5千リードの塩基配列を得た。
(5)それら配列をIMGT HLAデータベースに登録されている全HLAアリルデータと全リード間で相同性解析を行い、候補HLAアリル配列を選択した。
(6)その候補HLAアリル配列をリファレンスとして、GS Reference Mapper(ロシュ社)を用いて、リファレンスとリードとを100%一致の条件でマッピングを行い、目視によるマッピング状況を確認することにより、HLAアリルを同定した。
[結果および考察]
1.増幅されたPCR産物を用いてアガロースゲル電気泳動を行った結果を図7に示す。図7においてレーン1〜6は表3のSample ID1〜6を用いたPCR産物に相当する。レーンMはDNAサイズマーカーである。図7から明らかなように、いずれの試料においても、表1および表2に示すプライマーを用いることによりHLAクラスIおよびHLAクラスIIの各遺伝子についてのPCR産物と、目的の分子量の位置に単一の増幅産物を得ることができた。またPCR産物の塩基配列をサンガー法により決定した結果、既報と矛盾しないHLAアリルが得られた。よって、表1および表2に示すプライマーを用いたPCR系によりHLA遺伝子のDNAタイピングを行うことができる。
2.従来のDNAタイピング法にてフェーズ・アンビギュイティの見られるアリルの組み合わせを含む6検体を用いてHLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1およびHLA−DPB1のエクソン2とエクソン3を含む領域の各遺伝子由来のPCR産物をGS JuniorによりHLA遺伝子のDNAタイピングを行った。その結果、全ての遺伝子ともに6桁レベルにおけるDNAタイピングが可能であった(表3)。よって本法により、フェーズ・アンビギュイティのない6桁レベル以上のHLA遺伝子のDNAタイピングを行うことができるとともに、イントロン内も含め、ヌルアリルの原因となり得る塩基置換や挿入・欠失を効率よく検出することができる。
Figure 0006643902
(実施例3)
[目的]
HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5のHLA7座、ならびにHLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1およびHLA−DPB1のHLA9座におけるマルチプレックスPCR法の可能性を検証する。
[方法]
1.既に抽出され、HLA型が明らかにされており、従来のDNAタイピング法にてフェーズ・アンビギュイティの見られるアリルの組み合わせを含む4検体(表4のSample1〜4)のゲノムDNAを鋳型として、PrimeSTAR(登録商標)GXL DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて、HLAクラスIおよびHLAクラスIIの各遺伝子特異的プライマーセット(表2の配列番号8〜15および表1の配列番号1〜5)を用いたPCRを行った。
HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1については表2の配列番号8〜15および表1の配列番号1〜5を用い、HLA−DPB1については、DPB1−F2(5'- CTCAGTGCTCGCCCCTCCCTAGTGAT -3':配列番号16)およびDPB1−R2(5'- GCACAGTAGCTTTCGGGAATTGACCA -3':配列番号17)を用いた。DPB1−F2(配列番号16)とDPB1−R2(配列番号17)は、MHCクラスIIβ鎖であるHLA−DPB1遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマーセットである。これらのプライマーセットは、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)において、HLA−DPB1遺伝子のエクソン2から3’非翻訳領域を上流側及び下流側から挟み込む位置に存在する塩基配列である。配列番号16は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第33048182番目から第33048207番目に相当する塩基配列を持つ。配列番号17は、ヒトゲノム塩基配列(リファレンス配列:hg19)における第33055428番目から第33055453番目に相当する塩基配列に相補的な塩基配列を持つ。これらのプライマーセットを用いた場合のリファレンス配列から予想されるPCR産物の長さは約7,300塩基(bp)である。
PCRの具体的な手順は次の通りである。
(1)PCRは2本の0.2mlチューブに分けて行った。すなわち、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5を1本のチューブで増幅させた。また、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1およびHLA−DPB1を1本のチューブで増幅させた。
(2)25ngのゲノムDNA溶液に、4μLの5xPrimeSTAR(登録商標)GXL緩衝液、1.6μLのdNTP溶液、3.2〜5μL(10pmol/μL)ずつのPCRプライマー、0.8μLのPrime STAR(登録商標)GXLポリメラーゼを加え、反応液の全量を滅菌水にて20μLに調整した。
(3)(2)の調製物を94℃で2分間の保温後、続いて98℃で10秒間、70℃で3分間の2ステップを1工程として、この工程を30回繰り返してPCR増幅を行った。なお、このPCRにはGeneAmp(登録商標)PCR System9700(ライフテクノロジーズ社)を用いた。PCR後に、アガロースゲル電気泳動法によりPCR産物の増幅状況を確認した。
2.PCR産物の塩基配列を決定した。具体的には次の通り行った。
(1)PCR産物をAMPure XPキット(ベックマン・コールター株式会社)の標準的なプロトコールに従って精製した。
(2)PicoGreen(登録商標)dsDNA定量キット(インビトロジェン社)の標準的なプロトコールに従って濃度を測定した。
(3)精製したクラスI遺伝子由来のPCR産物とクラスII遺伝子由来のPCR産物を等量ずつ混合した。
(4)500ng/100μLの濃度に調整し、Ion PGM(ライフテクノロジーズ社)の標準的なプロトコールに従って、ライブラリーの作製、エマルジョンPCR、シークエンシングを行い、1サンプルあたり40万リードの塩基配列を得た。
(5)それら配列をIMGT HLAデータベースに登録されている全HLAアリルデータと全リード間で相同性解析を行い、候補HLAアリル配列を選択した。
(6)その候補HLAアリル配列をリファレンスとして、GS Reference Mapper(ロシュ社)を用いて、リファレンスとリードとを100%一致の条件でマッピングを行い、目視によるマッピング状況を確認することにより、HLAアリルを同定した。
[結果および考察]
1.増幅されたPCR産物を用いてアガロースゲル電気泳動を行った結果を図8に示す。図8においてレーン1〜4は表3のSample ID1〜4を用いたPCR産物に相当する。最も左のレーンはDNAサイズマーカーである。図8から明らかなように、上記のプライマーを用いることにより、HLA7座およびHLA9座ともにいずれの試料においても各遺伝子についてのPCR産物と、目的の分子量の位置に単一の増幅産物を得ることができた。
2.従来のDNAタイピング法にてフェーズ・アンビギュイティの見られるアリルの組み合わせを含む4検体を用いて各遺伝子由来のPCR産物をIon PGMによりHLAタイピングを行った。その結果、全ての遺伝子ともに6桁レベルにおけるタイピングが可能であった(表4)。よって本法により、フェーズ・アンビギュイティのない6桁レベル以上のHLAタイピングを行うことができるとともに、イントロン内も含め、ヌルアリルの原因となり得る塩基置換や挿入・欠失を効率よく検出することができる。
Figure 0006643902

Claims (5)

  1. (1)ヒトゲノム塩基配列におけるHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4、HLA−DRB5、HLA−DQB1、およびHLA−DPB1からなる群から選択される少なくとも1つの対象遺伝子のプライマーセットを準備するステップであって、当該プライマーセットがイントロン1領域およびエクソン4領域に各々特異的にアニールし、エクソン2、イントロン2、エクソン3、イントロン3およびエクソン4の一部を含む領域を増幅するものであり、
    前記対象遺伝子がHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子である場合には、前記プライマーセットがそれぞれ配列番号:1および配列番号:2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであり、
    前記対象遺伝子がHLA−DQB1遺伝子である場合には、前記プライマーセットがそれぞれ配列番号:3および4のいずれか一方または両方および配列番号:5に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであり、
    前記対象遺伝子がHLA−DPB1遺伝子である場合には、前記プライマーセットがそれぞれ配列番号:6および配列番号:7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである、ステップ;
    (2)前記プライマーセットを用いて被検試料(DNA)をPCR法によりDNA増幅するステップ;
    (3)増幅されたPCR産物の塩基配列を決定するステップ;および
    (4)任意に、データベースとのホモロジー検索を実施するステップ
    を含む、HLA遺伝子のDNAタイピング方法。
  2. 6桁ないしは8桁レベルで行う、請求項に記載の方法。
  3. 配列番号:1および配列番号:2に示す塩基配列をそれぞれ有するオリゴヌクレオチドを含む、HLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4およびHLA−DRB5からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のDNAタイピング用プライマーセット。
  4. 配列番号:3および4のいずれか一方または両方および配列番号:5に示す塩基配列をそれぞれ有するオリゴヌクレオチドを含む、HLA−DQB1遺伝子のDNAタイピング用プライマーセット。
  5. 配列番号:6および配列番号:7に示す塩基配列をそれぞれ有するオリゴヌクレオチドを含む、HLA−DPB1遺伝子のDNAタイピング用プライマーセット。
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