以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態に係る駆動制御装置を搭載したハイブリッド車両について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、動力源としてのエンジン2と、変速機3と、動力源としてのモータジェネレータ4と、駆動輪5と、モータジェネレータ4を制御するHCU(Hybrid Control Unit)10と、エンジン2の制御およびシステム全体の制御を行う駆動制御装置としてのECM(Engine Control Module)11と、変速機3を制御するTCM(Transmission Control Module)12とを含んで構成される。また、ハイブリッド車両1は、ISGCM(Integrated Starter Generator Control Module)13と、INVCM(Invertor Control Module)14と、低電圧BMS(Battery Management System)15と、高電圧BMS16とを含んで構成される。
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施形態において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20と、スタータ21とが連結されている。ISG20は、ベルト22などを介してエンジン2のクランクシャフト18に連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を始動させる電動機の機能と、クランクシャフト18から入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
本実施形態では、ISG20は、ISGCM13の制御により、電動機として機能することで、エンジン2をアイドリングストップ機能による停止状態から再始動させるようになっている。ISG20は、電動機として機能することで、ハイブリッド車両1の走行をアシストすることもできる。
スタータ21は、図示しないモータとピニオンギヤとを含んで構成されている。スタータ21は、モータを回転させることにより、クランクシャフト18を回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与えるようになっている。このように、エンジン2は、スタータ21によって始動され、アイドリングストップ機能による停止状態からISG20によって再始動される。
変速機3は、エンジン2から出力された回転を変速し、ドライブシャフト23を介して駆動輪5を駆動するようになっている。変速機3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の変速機構25と、乾式単板クラッチからなるクラッチ26と、ディファレンシャル機構27と、クラッチアクチュエータ51およびシフトアクチュエータ52と、を備えている。
クラッチアクチュエータ51は、TCM12の制御によってクラッチ26の断続(切断と接続)を行うようになっている。クラッチアクチュエータ51は、非駆動時にクラッチ26を接続状態にし、駆動時にクラッチ26を切断状態にする。シフトアクチュエータ52は、TCM12の制御によって変速機構25の図示しないシフトスリーブを移動して、変速段の切換を行うようになっている。変速機3の変速段を切換えるときは、クラッチアクチュエータ51を駆動してクラッチ26を切断し、シフトアクチュエータ52を駆動して変速段の切換を行う。以下、クラッチアクチュエータ51およびシフトアクチュエータ52を駆動して変速段の切換を行うことを単に変速という。
このように、変速機3は、TCM12の制御により自動で変速を行うことが可能な、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されている。ディファレンシャル機構27は、変速機構25によって出力された動力をドライブシャフト23に伝達するようになっている。
モータジェネレータ4は、ディファレンシャル機構27に対して、チェーン等の動力伝達機構28を介して連結されている。すなわち、モータジェネレータ4は、変速機3から駆動輪5までの動力伝達経路に連結されている。
モータジェネレータ4は、電動機として機能し、第3蓄電装置33から供給される電力で駆動する。
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータジェネレータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成している。ハイブリッド車両1は、エンジン2及びモータジェネレータ4の少なくとも一方が発生する動力により走行する。
ハイブリッド車両1は、エンジン2が発生するエンジントルクのみによる走行と、モータジェネレータ4が発生するモータトルクのみによる走行(EV走行)と、モータジェネレータ4を力行運転してエンジン2のエンジントルクをアシストする走行(アシスト走行)と、が可能である。このように、ハイブリッド車両1は、EV走行を行うEV走行機能と、アシスト走行を行うアシスト走行機能を備えている。
モータジェネレータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行うようになっている。なお、モータジェネレータ4は、変速機3から駆動輪5までの動力伝達経路の何れかの箇所に動力伝達可能に連結されていればよく、必ずしもディファレンシャル機構27に連結される必要はない。
ハイブリッド車両1は、第1蓄電装置30と、第2蓄電装置31を含む低電圧パワーパック32と、第3蓄電装置33を含む高電圧パワーパック34と、高電圧ケーブル35と、低電圧ケーブル36とを備えている。
第1蓄電装置30、第2蓄電装置31及び第3蓄電装置33は、充電可能な二次電池から構成されている。第1蓄電装置30は鉛電池からなる。第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30よりも高出力かつ高エネルギー密度な蓄電装置である。
第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30と比較して短い時間で充電が可能である。本実施形態では、第2蓄電装置31はリチウムイオン電池からなる。なお、第2蓄電装置31はニッケル水素蓄電池であってもよい。
第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定された低電圧バッテリである。第3蓄電装置33は、例えば、ニッケル水素蓄電池からなる。
第3蓄電装置33は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31より高電圧を発生するようにセルの個数等が設定された高電圧バッテリであり、例えば、100Vの出力電圧を発生させる。第3蓄電装置33の残容量などの状態は、高電圧BMS16によって管理される。
ハイブリッド車両1には、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38が設けられている。一般負荷37及び被保護負荷38は、スタータ21及びISG20以外の電気負荷である。
被保護負荷38は、常に安定した電力供給が要求される電気負荷である。この被保護負荷38は、ABS/ESP38A、電動パワーステアリング制御装置38B、及びヘッドライト38Cを含んでいる。ABS/ESP38Aは、駆動輪5および図示しない従動輪の制動時のロックを防止するABS(Antilock Brake System)と、車両の横滑りを防止するESP(Electronic Stability Program)とからなる。なお、被保護負荷38は、図示しないインストルメントパネルのランプ類及びメータ類並びにカーナビゲーションシステムも含んでいる。
一般負荷37は、被保護負荷38と比較して安定した電力供給が要求されず、一時的に使用される電気負荷である。一般負荷37には、例えば、図示しないワイパー、及び、エンジン2に冷却風を送風する電動クーリングファンが含まれる。
低電圧パワーパック32は、第2蓄電装置31に加えて、スイッチ40、41と、低電圧BMS15とを有している。第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、低電圧ケーブル36を介して、スタータ21と、ISG20と、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38とに電力を供給可能に接続されている。被保護負荷38に対しては、第1蓄電装置30と第2蓄電装置31とが並列に電気的に接続されている。
スイッチ40は、第2蓄電装置31と被保護負荷38との間の低電圧ケーブル36に設けられている。スイッチ41は、第1蓄電装置30と被保護負荷38との間の低電圧ケーブル36に設けられている。
低電圧BMS15は、スイッチ40、41の開閉を制御することで、第2蓄電装置31の充放電及び被保護負荷38への電力供給を制御している。低電圧BMS15は、アイドリングストップによりエンジン2が停止しているときは、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、高出力かつ高エネルギー密度な第2蓄電装置31から被保護負荷38に電力を供給するようになっている。
低電圧BMS15は、エンジン2をスタータ21によって始動するとき、及び、アイドリングストップ制御によって停止しているエンジン2をISG20によって再始動するときに、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、第1蓄電装置30からスタータ21又はISG20に電力を供給するようになっている。スイッチ40を閉じてスイッチ41を開いた状態では、第1蓄電装置30から一般負荷37にも電力が供給される。
このように、第1蓄電装置30は、エンジン2を始動する始動装置としてのスタータ21及びISG20に少なくとも電力を供給するようになっている。第2蓄電装置31は、一般負荷37及び被保護負荷38に少なくとも電力を供給するようになっている。
第2蓄電装置31は、一般負荷37と被保護負荷38の両方に電力を供給可能に接続されているが、常に安定した電力供給が要求される被保護負荷38に優先的に電力を供給するようにスイッチ40、41が低電圧BMS15により制御される。
低電圧BMS15は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31の充電状態(SOC:State Of Charge、充電残量、充電容量ともいう)、並びに、一般負荷37及び被保護負荷38への作動要求を考慮しつつ、被保護負荷38が安定して作動することを優先して、スイッチ40、41を上述した例と異なるように制御することがある。
高電圧パワーパック34は、第3蓄電装置33に加えて、インバータ45と、INVCM14と、高電圧BMS16とを有している。高電圧パワーパック34は、高電圧ケーブル35を介して、モータジェネレータ4に電力を供給可能に接続されている。
インバータ45は、INVCM14の制御により、高電圧ケーブル35にかかる交流電力と、第3蓄電装置33にかかる直流電力とを相互に変換するようになっている。例えば、INVCM14は、モータジェネレータ4を力行させるときには、第3蓄電装置33が放電した直流電力をインバータ45により交流電力に変換させてモータジェネレータ4に供給する。
INVCM14は、モータジェネレータ4を回生させるときには、モータジェネレータ4が発電した交流電力をインバータ45により直流電力に変換させて第3蓄電装置33に充電する。
HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13と、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13と、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施形態におけるHCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13と、INVCM14、低電圧BMS15及び高電圧BMS16としてそれぞれ機能する。
本実施形態において、ECM11は、アイドリングストップ制御を実行するようになっている。このアイドリングストップ制御において、ECM11は、所定の停止条件の成立時にエンジン2を停止させ、所定の再始動条件の成立時にISGCM13を介してISG20を駆動してエンジン2を再始動させるようになっている。このため、エンジン2の不要なアイドリングが行われなくなり、ハイブリッド車両1の燃費を向上させることができる。
本実施形態では、ECM11は、車両停止状態(車速がゼロである)であることを所定の停止条件としてエンジン2を停止させるようになっている。このように、ハイブリッド車両1は、車両停車時にアイドリングストップを行う停車IS(Idling Stop)機能を備えている。
ハイブリッド車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線48、49が設けられている。
HCU10は、INVCM14及び高電圧BMS16にCAN通信線48によって接続されている。HCU10、INVCM14及び高電圧BMS16は、CAN通信線48を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
HCU10は、ECM11、TCM12、ISGCM13及び低電圧BMS15にCAN通信線49によって接続されている。HCU10、ECM11、TCM12、ISGCM13及び低電圧BMS15は、CAN通信線49を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
本実施形態では、TCM12は、運転条件に応じてクラッチアクチュエータ51およびシフトアクチュエータ52を駆動し、変速機3の変速動作を制御する。
本実施形態のハイブリッド車両1は、ギャップフィリング機能を備えている。ギャップフィリング機能とは、変速機3の変速中にモータジェネレータ4を駆動し、モータジェネレータ4のトルクを駆動輪5に付与する機能である。
HCU10は、ギャップフィリング制御動作を動作許可時に実行することで、ギャップフィリング機能を実現する。HCU10は、ギャップフィリング制御動作において、変速中に駆動輪5で伝達できない分のエンジントルクと等しいモータトルクをモータジェネレータ4に発生させる。このギャップフィリング機能により、変速中のクラッチ26の切断による減速感が抑制され、車両の走行性能を向上できる。
HCU10は、変速動作に伴うクラッチ26の切断時に、モータジェネレータ4のモータトルクを駆動輪5に付与するギャップフィリング制御動作を、動作許可時に実行する。また、HCU10は、予め設定された自動停止条件が成立した場合に、エンジン2を自動停止する停車IS制御動作を、動作許可時に実行する。
また、HCU10は、モータジェネレータ4を動力源として走行するEV走行制御動作を、動作許可時に実行する。また、HCU10は、モータジェネレータ4を力行運転してエンジンのエンジントルクをアシストするアシスト走行制御動作を、動作許可時に実行する。
このアシスト走行制御動作においては、燃料消費率の良い動作点にエンジン2の動作点が一致するように、エンジン2の目標エンジントルクとモータジェネレータ4の目標モータトルクが補正される。
図2において、ハイブリッド車両1は、車輪速センサ61と、車速センサ62と、アクセルペダルセンサ63と、クランク角センサ64とを更に備えている。
車輪速センサ61は、駆動輪5または従動輪の回転速度を検出し、検出信号を車速情報としてECM11に出力する。
車速センサ62は、変速機3の図示しない出力軸の回転速度を検出し、検出信号を車速情報としてECM11に出力する。
アクセルペダルセンサ63は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出し、検出したアクセルペダル踏み込み量をECM11に出力する。
クランク角センサ64は、エンジン2のクランクシャフト18の回転速度を検出し、検出信号をエンジン回転速度情報としてECM11に出力する。
また、エンジン2には、混合気を点火する点火プラグ2A、燃料を噴射するインジェクタ2B、吸気量を調整する電子制御スロットルバルブ2Cが設けられている。
ECM11は、点火プラグ2Aに対して点火要求を送信し、インジェクタ2Bに対して燃料噴射量・噴射要求を送信し、電子制御スロットルバルブ2Cに対して吸気スロットル開度要求を送信することで、エンジン2の出力を制御する。
ECM11は、エンジン2の動作点を補正する際に、点火プラグ2A、インジェクタ2B、電子制御スロットルバルブ2Cへのこれらの制御パラメータを、エンジントルク補正量に応じて調整する。
ECM11には、HCU10を介してバッテリ状態が入力される。このバッテリ状態は、第1蓄電装置30、第2蓄電装置31、第3蓄電装置33の充電状態、セル温度等の情報を含んでいる。
ECM11は、HCU10に対して動作点補正要求を送信する。この動作点補正要求は、モータジェネレータ4のモータトルクを補正するためのモータトルク補正量が含まれる。HCU10は、動作点補正要求に応じてインバータ45にモータ駆動信号を送信する。インバータ45は、このモータ駆動信号に応じたモータ電圧(モータ印可電圧)をモータジェネレータ4に供給する。
図3において、ECM11には、目標トルク演算部71と、動作点演算部72と、補正量演算部73と、動作点補正部74と、エンジン出力制御部75と、モータ出力制御部76とが設けられている。
目標トルク演算部71は、少なくともアクセルペダルの踏み込み量から、エンジン2の目標エンジントルクとモータジェネレータ4の目標モータトルクを演算する。本実施形態では、目標トルク演算部71は、車速、アクセルペダル踏み込み量、バッテリ状態、TCM12からのトルク要求、およびABS/ESP38Aからのトルク要求に基づき、図示しないマップを参照して目標エンジントルクと目標モータトルクを演算する。
動作点演算部72は、目標エンジントルクとエンジン回転速度とから、エンジン2の動作点を演算する。
補正量演算部73は、エンジン2の動作点と、予め設定されている燃料消費率の良い動作点との差に基づいて、エンジントルク補正量とモータトルク補正量を演算する。具体的には、補正量演算部73は、エンジン2の動作点と、燃料消費率の良い動作点と、エンジン回転速度に基づいて、そのエンジン回転速度におけるエンジントルク補正量とモータトルク補正量を演算する。
さらに、本実施形態では、補正量演算部73は、車速が所定の閾値以下の低車速である場合は、エンジントルク補正量とモータトルク補正量を、所定の割合で所定量まで減少させる。
補正量演算部73は、予め設定されている燃料消費率の良い動作点にエンジン2の動作点が一致するように、エンジン2の目標エンジントルクとモータジェネレータ4の目標モータトルクを補正する動作点補正制御が実行されているとき、車速が所定の閾値以下である場合は、動作点補正制御で用いるエンジントルク補正量とモータトルク補正量を所定量まで減少させる。
動作点補正部74は、目標エンジントルク、エンジントルク補正量、目標モータトルク、モータトルク補正量を取得して、動作点補正制御を実行する。この動作点補正制御において、動作点補正部74は、エンジントルク補正量で目標エンジントルクを補正し、モータトルク補正量で目標モータトルクを補正する。
エンジン出力制御部75は、動作点補正部74により補正された後の補正後目標エンジントルクに従ってエンジン2の出力を制御する。本実施形態では、エンジン出力制御部75は、制御パラメータとしての点火タイミング、吸気量要求、燃料噴射量および噴射タイミングを調整することで、エンジン2の出力を制御する。
モータ出力制御部76は、動作点補正部により補正された後の補正後目標モータトルクに従って、モータジェネレータ4の出力を制御する。このモータジェネレータ4の出力制御は、図2で説明したように、HCU10およびインバータ45を介してモータ電圧(モータ印可電圧)を調整することにより行われる。
ここで、図4、図5を参照して、動作点補正部74により実行される動作点の補正について更に説明する。ECM11のROMには、図4、図5に示す動作点補正マップが記憶されており、ECM11は、この動作点補正マップを参照してエンジントルクとモータトルクを補正する。ここで、動作点の補正は、図3に示すようにエンジントルクを増加させて燃費が良い動作点に一致させる場合と、図4に示すようにエンジントルクを減少させて燃費が良い動作点に一致させる場合とがある。
図4、図5において、縦軸はエンジントルク[N・m]を示し、横軸はエンジン回転速度[rpm]を示している。動作点補正マップには目標動作点ラインが設定されており、この目標動作点ラインは、最も熱効率の良い動作点から構成される曲線である。動作点は、エンジントルクとエンジン回転速度の組み合わせからなる。
動作点補正マップには、燃料消費率の等高線(等効率ラインともいう)が設定されており、この燃料消費率の等高線は、目標動作点ライン上のある動作点に対して熱効率の等しい点を結んでできる楕円形のラインである。
ECM11は、エンジン2のエンジントルクと、モータジェネレータ4のモータトルクの和がドライバ要求トルクと等しくなるように、エンジントルクとモータトルク4を決定する。ドライバ要求トルクとは、アクセルペダルを通じてドライバから入力された要求トルクである。
エンジントルクとモータトルク4を決定する際、ECM11は、図4に示すように、ドライバ要求トルクから決定される動作点P1のエンジントルクが、目標動作点ライン上の動作点P2のエンジントルクよりも小さい場合、目標動作点ライン上のP2まで上昇するように、エンジン2の動作点(エンジントルク)を補正する。この場合、ECM11は、P1とP2の差分のトルク(エンジントルクの増加分)を吸収して発電するように、モータジェネレータ4を回生させ、負荷トルク(負のモータトルク)を発生させる。
一方、ECM11は、図5に示すように、ドライバ要求トルクから決定される動作点P3のエンジントルクが、目標動作点ライン上の動作点P2のエンジントルクよりも大きい場合、目標動作点ライン上のP2まで減少するように、エンジン2の動作点(エンジントルク)を補正する。この場合、ECM11は、P2とP3の差分のトルク(エンジントルクの減少分)を補うように、モータジェネレータ4を力行し、正のモータトルクを発生させる。
ここで、補正量演算部73による「補正量を所定量まで減少させる」とは、補正量の絶対値を減少させることを意味している。例えば、車両を前進させる方向へのトルクを正の値で表し、車両を後退させる方向へのトルクを負の値で表す場合、エンジントルク補正量が10[N・m]であれば、モータトルク補正量は−10[N・m]となる。この場合、エンジントルクが増加側に10[N・m]補正され、この10[N・m]の増加分のトルクを回生発電により吸収するようにモータジェネレータ4が制御される。
また、「補正量を所定の割合で所定量まで減少させる」とは、例えば、エンジントルク補正量に関しては、10→8→6→4→2→0[N・m]のように減少させることである。この例では、エンジントルク補正量を、初期値の10[N・m]から、所定の割合である2[N・m]で、所定量である0[N・m]まで減少させている。モータトルク補正量に関しても、エンジントルク補正量の減少と同様に、−10→−8→−6→−4→−2→0[N・m]のように、所定の割合で所定量まで減少される。
ここで、「所定の割合で減少させる」とは、上記の例では、所定の時間間隔で、所定の量(2[N・m])ずつ、補正量の絶対値を減少させるようにしているが、これに限定されるものではなく、所定の時間間隔で所定の割合(所定のパーセント)ずつ補正量を減少させることも含まれる。
以上のように構成されたハイブリッド車両の駆動制御装置において実行される動作点補正解除動作について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。なお、この動作点補正解除動作は、所定の短い周期で繰り返し実行される。
図6に示す動作点補正解除動作において、ECM11は、変速機3が変速中であるか否かを判別する(ステップS1)。このステップS1では、例えば、変速機3のクラッチアクチュエータ51が駆動中であるとき、ECM11は、変速機3が変速中であると判定する。
ステップS1で変速機3が変速中であると判別した場合、ECM11は、エンジン2の動作点の補正を停止し(ステップS2)、このフローチャートの1回のルーチンを終了する。すなわち、変速機3が変速中のときは、クラッチ26が切断されておりエンジン2の動力が駆動輪5に伝達されないため、動作点の補正は行われない。
ステップS1で変速機3が変速中ではないと判別した場合、ECM11は、車速が低車速であるか否かを判別する(ステップS3)。ここでは、ECM11は、車速が所定の閾値V1以下である場合に低車速であると判別する。
ステップS3で車速が低車速である(閾値V1以下)と判別した場合、ECM11は、エンジン2の動作点の補正が停止中であるか否かを判別する(ステップS4)。
ステップS4で動作点の補正が停止中であると判別した場合、ECM11は、このフローチャートの1回のルーチンを終了する。
ステップS3で車速が低車速ではない(閾値V1より大きい)と判別した場合、ECM11は、エンジン2の動作点の補正を実行し(ステップS8)、このフローチャートの1回のルーチンを終了する。ステップS8では、ECU11は、図4、図5の動作点補正マップを参照して燃費が最も良くなるようにエンジントルクとモータトルクを補正する。
ステップS4で動作点の補正が停止中ではないと判別した場合、ECM11は、エンジントルク補正量とモータトルク補正量を所定の割合で減少させ、減少された補正量で動作点の補正を実行する(ステップS5)。
ステップS5に次いで、ECM11は、エンジントルク補正量とモータトルク補正量が0であるか否かを判別する(ステップS6)。
ステップS6で補正量が0であると判別した場合、ECM11は、動作点の補正を停止し(ステップS7)、このフローチャートの1回のルーチンを終了する。
ステップS6で補正量が0でないと判別した場合、ECM11は、このフローチャートの1回のルーチンを終了する。
ECM11は、ステップS6で補正量が0であると判別するまで、ステップS5を繰り返す。これにより、ステップS5が繰り返されることで、エンジントルク補正量とモータトルク補正量を所定の割合で徐々に減少する。
この動作点補正解除動作では、ECM11が動作点補正解除動作を実行することで、ステップS1で変速機3が変速中ではなく、かつ、ステップS2車速が閾値V1以下の低車速であり、かつ、ステップS4で動作点の補正が実行中である場合、ステップS5が繰り返された後にステップS7が実行される。
これにより、図7に示すように、車速が時刻t0から減少し始めて時刻t1で閾値V1以下になった場合、時刻t1で、エンジントルク補正量とモータトルク補正量が所定の割合で徐々に0になるまで減少され、動作点の補正が停止される。このように、補正量を徐々に減少することで、急激なトルク変化やこれによる車両の振動が発生しないため、急激なトルク変化や車両の振動によってドライバビリティが悪化するのを防止できる。
なお、ステップS5の繰り返しによりエンジントルク補正量が例えば初期値の10[N・m]から8[N・m]を経て6[N・m]まで減少していたときに、車速が閾値V1を超えた場合は、ステップS8に移行して初期値の10[N・m]を補正量としてエンジン2の動作点が補正される。すなわち、ステップS5で減少された補正量は、ステップS8で実行される補正には反映されない。
以上のように説明した本実施形態のハイブリッド車両の駆動制御装置の作用効果について説明する。
ハイブリッド車両1において、動作点補正制御によりエンジントルクが増加側に補正された場合、モータトルクが減少側に補正されることで、ドライバ要求トルクに対する駆動トルクの増減を発生させることなく、エンジン2の燃費が向上される。
従来のハイブリッド車両において、動作点補正制御が実行されているとき、車速が所定の閾値V1以下の低車速である場合は、エンジントルクの追従性がモータトルクの追従性より低い。これは、低車速では、エンジン2がフューエルカットの終了後であるため、および、エンジン2の回転数が低くエンジントルクが低いためである。
このような状態において、図4のように、エンジントルクを増加させる補正をする場合、補正が完了するまでの過渡状態で、エンジン2のエンジントルクよりもモータジェネレータ4の回生側のモータトルクが大きくなり、運転者の意に反して前進方向への車両の駆動トルクが低下することがある。なお、図5のように、エンジントルクを減少させる補正をする場合は、エンジン2が速やかに追従し、エンジントルクの減少量とモータトルクの増加量を釣り合わせることができるため、運転者の意に反して駆動トルクが低下することがない。
本実施形態のハイブリッド車両の駆動制御装置は、動作点補正制御が実行されているとき、車速が所定の閾値V1以下の低車速である場合は、動作点補正制御で用いるエンジントルク補正量とモータトルク補正量を所定量まで減少させる補正量演算部73を備えている。
この構成により、低車速のときは、エンジントルク補正量とモータトルク補正量が所定量まで減少されるため、エンジントルクを増加させる補正が行われている場合であっても、エンジントルクの増加量よりモータトルクの減少量が大きくなることがない。この結果、低車速域で、運転者の意に反して車両の駆動トルクが低下することを防止できる。
また、本実施形態のハイブリッド車両の駆動制御装置は、少なくともアクセルペダルの踏み込み量から、エンジン2の目標エンジントルクとモータジェネレータ4の目標モータトルクを演算する目標トルク演算部71と、目標エンジントルクとエンジン回転速度とから、エンジン2の動作点を演算する動作点演算部72と、エンジン2の動作点と、予め設定されている燃料消費率の良い動作点との差に基づいて、エンジントルク補正量とモータトルク補正量を演算する補正量演算部73と、エンジントルク補正量で目標エンジントルクを補正し、モータトルク補正量で目標モータトルクを補正する動作点補正部74と、動作点補正部74により補正された後の補正後目標エンジントルクに従ってエンジンの出力を制御するエンジン出力制御部75と、動作点補正部により補正された後の補正後目標モータトルクに従ってモータジェネレータ4の出力を制御するモータ出力制御部76と、を有する。
そして、補正量演算部73は、車速が所定の閾値以下である場合は、エンジントルク補正量とモータトルク補正量を所定量まで減少させる。
この構成により、低車速のときは、エンジントルク補正量とモータトルク補正量が所定量まで減少されるため、エンジントルクを増加させる補正が行われている場合であっても、エンジントルクの増加量よりモータトルクの減少量が大きくなることがない。この結果、低車速域で、運転者の意に反して車両の駆動トルクが低下することを防止できる。
また、本実施形態のハイブリッド車両の駆動制御装置において、補正量演算部73は、車速が所定の閾値以下である場合は、エンジントルク補正量とモータトルク補正量とを所定の割合で所定量まで減少させる。
この構成により、補正量が所定の割合で所定量まで減少するため、エンジントルクやモータトルクを緩やかに変化させることができ、エンジントルクやモータトルクの変化によりショックが発生するのを防止できる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。