(実施形態1)
以下、本実施形態の単独運転検出装置1と、それを用いたパワーコンディショナ10、および単独運転の検出方法について図を参照して説明する。
単独運転検出装置1は、図1に示すように、注入部2(無効電力変動部)と、計測部3と、算出部4と、調整部5と、判定部6とを備える。単独運転検出装置1は、電力系統151と系統連系された分散型電源152の単独運転を検出する。単独運転検出装置1は、注入部2と、算出部4と、調整部5と、判定部6とを1つのマイクロコンピュータの動作で実現している。なお、単独運転検出装置1はマイクロコンピュータを用いることに限定されず、IC(Integrated Circuit)などの演算装置を用いてもよい。
単独運転検出装置1は、電力系統151が停電しているにもかかわらず分散型電源152が、電力系統151に電力を供給している場合、分散型電源152が単独運転していると判断し、分散型電源152を系統電源から電気的に切り離す。
単独運転検出装置1は、電力系統151の交流電圧(この電圧を系統電圧V1とする)の周波数F1の変化に基づいて分散型電源152を系統電源から電気的に切り離す。具体的に言うと、系統電源から電力が供給されている状態から、分散型電源152が単独運転する状態になると、系統電圧V1の周波数F1が変化する。単独運転検出装置1は、分散型電源152が単独運転していることを判断するために電力系統151の無効電力を変動させる動作を行う。分散型電源152が単独運転していない場合には、系統電圧V1の周波数F1はほとんど変化せず、周波数F1の変動量は基準量未満となる。しかしながら分散型電源152が単独運転している場合には、系統電圧V1の周波数F1が変化する。単独運転検出装置1は、電力系統151の無効電力を変動させる動作と系統電圧V1の周波数F1の計測とを繰り返し行い、周波数F1の変動量が基準値を超えると分散型電源152が単独運転を行っていると判断する。電力系統151の無効電力を変動させる動作および周波数F1を計測する動作の詳細については後述する。
パワーコンディショナ10は、単独運転検出装置1と、インバータ7と、解列器8(例えば、リレーなど)とを備える。本実施形態のパワーコンディショナ10はさらに指令部102を備える。パワーコンディショナ10は、電力系統151に接続されている系統電源(例えば商用系統電源)と、分散型電源152とに電気的に接続されている。パワーコンディショナ10は、分散型電源152からの直流電力を交流電力に変換して系統電源や負荷153に出力する。電力系統151は、例えば、電力会社の発電所からパワーコンディショナ10までを結ぶ配電系統である。分散型電源152は、例えば、太陽電池、燃料電池、または二次電池からなる直流電源である。二次電池は、例えば、ニッケル水素蓄電池や、リチウムイオン蓄電池である。
インバータ7は、分散型電源152から入力される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を一対の出力端子から負荷153および電力系統151へ出力する。インバータ7は、一対の入力端子と、一対の出力端子とを備えている。インバータ7の一対の入力端子には分散型電源152が電気的に接続される。ここでは分散型電源152は太陽光発電装置からなるので、インバータ7は接続箱を介して分散型電源152に接続される。インバータ7の一対の出力端子には、電力系統151が電気的に接続される。インバータ7の一対の出力端子には、電力系統151から供給される交流電力で動作する負荷153が電気的に接続される。インバータ7の一対の出力端子は、例えば分電盤に設けられた連系ブレーカに電気的に接続されることにより、負荷153および系統電源に電気的に接続される。
解列器8は、インバータ7の一対の出力端子と、電力系統151との間に電気的に接続されている。解列器8は、判定部6からの解列信号が入力されると、インバータ7と系統電源とを電気的に切り離す。
注入部2は、無効電力X2を電力系統151に注入する。本実施形態の注入部2は、系統電圧V1に対して位相の異なる電流を含む無効電力X2を、インバータ7の出力する交流電力に注入して電力系統151の無効電力を変動させる。なお、注入部2は、無効電力X2をインバータ7の出力する交流電力に注入することによりインバータ7の出力する無効電力を変動させることに限定されない。注入部2(無効電力変動部)は、例えばインバータ7の出力する電流と電圧の位相を変動させることにより、インバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されていてもよい。その場合、注入部2は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御されたデューティ比の制御信号をインバータ7に出力し、インバータ7の出力する電流と電圧の位相を変動させてもよい。
計測部3は、電力系統151から供給される系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1を計測する回路からなる。図2は、分散型電源152が電力系統151に系統連系している状態の系統電圧V1および出力電流A1を示している。計測部3は、系統電圧V1の電圧値、周波数F1(周期)、および電力系統151に流れる出力電流A1を、例えば5ミリ秒間隔で周期的に計測する。計測部3は、図2に示す系統電圧V1がゼロクロスするタイミングの時間差から電圧波形の周期を計測し、計測した周期から周波数F1を求める。系統電圧V1の極性が負から正に反転(ゼロクロス)するタイミングT101と、系統電圧V1の極性が正から負に反転するタイミングT103と時間差は、系統電圧V1の半周期に相当する。計測部3は、系統電圧V1の複数のゼロクロスするタイミングを測定し、その時間差(周期)に基づいて周波数F1を算出する。計測部3は、算出した周波数F1を算出部4と判定部6とに出力する。例えば計測部3は、系統電圧V1の1周期の間にタイミングT101,T102,T103,T104の4回、系統電圧V1の電圧値を計測する。
算出部4は、計測部3から入力される周波数F1の値を記憶させる記憶部を有する。記憶部は、複数の周波数F1を記憶するように構成されている。算出部4は、計測部3の複数の計測結果から系統電圧V1の周波数F1の変動(この変動を周波数偏差DF2とする)を求め、周波数F1の変動(周波数偏差DF2)に基づいて注入部2から注入させる無効電力X2の大きさを表す目標値x100を求める。算出部4は、計測部3から周波数F1の値が入力されるごとに目標値x100を更新して調整部5に出力する。
具体的に言うと、算出部4は、計測部3からの最新の計測結果を含む8回分の周波数F1の平均値f3を求める。また、算出部4は、周波数F1を計測した時点から200ミリ秒前よりも以前に計測した16回分の周波数F1の平均値f4を求める。算出部4は、平均値f4から平均値f3を減算した結果を周波数偏差DF2として求める。数式で表すと、DF2=f4−f3となる。算出部4は、周波数偏差DF2に応じて、注入部2から電力系統151に注入させる無効電力X2の大きさの目標値x100を求める。算出部4は、例えば周波数偏差DF2の符号の正負と同じ符号(極性)の無効電力X2を注入部2から電力系統151に注入させる信号を調整部5に出力する。算出部4は例えば、所定の範囲内の周波数偏差DF2に対しては周波数偏差DF2の大きさに比例するように、無効電力X2の大きさの目標値x100を求める。なお、注入部2がインバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されている場合、算出部4は、注入部2で変動させる無効電力(インバータ7の出力する無効電力)の目標値を求めるように構成される。なお、ここで言う無効電力の目標値とは、正または負の極性を含めた無効電力の値である。具体的に言うと、注入部2が無効電力の変動を開始させた後にその変動を停止させた際の無効電力の値である。また、以下では、無効電力の極性が正または負の何れであってもよい場合には、無効電力については無効電力の大きさと表記し、目標値については目標値の大きさと表記する。
算出部4は、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定する基準となる周波数閾値F5を求める。周波数閾値F5は、注入部2が電力系統151に注入する無効電力の大きさに応じて変化するように算出される。周波数閾値F5は、例えばその無効電力の大きさに比例して大きくなるように算出される。算出部4は、計測部3で周波数F1が計測されるごとに周波数閾値F5を算出して判定部6へ出力する。
調整部5は、算出部4から目標値x100が入力されるごとに、目標値x100に応じて注入部2が注入する無効電力X2を調整する。調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させる時点では目標値x100よりも小さい無効電力X2を注入させ、かつ、注入部2から注入させる無効電力X2を目標値x100まで時間経過に伴って増加させる。なお、注入部2がインバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されている場合、調整部5は、注入部2でインバータ7の出力する無効電力の変動を開始させる時点では無効電力の大きさを目標値の大きさよりも小さくする。かつ調整部5は、注入部2で変動させる無効電力を目標値まで時間経過に伴って変化させるように構成される。調整部5の詳細については後述する。
判定部6は、計測部3が計測した周波数F1に基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定する。本実施形態の判定部6は、目標値x100まで無効電力X2が注入された後に計測部3で計測された周波数F1を用いて求めた周波数偏差DF2と、周波数閾値F5とに基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定する。なお、注入部2がインバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されている場合、判定部6は、次のように動作する。判定部6は、インバータ7の出力する無効電力を目標値まで変動させた後に計測部3で計測された周波数F1を用いて求めた周波数偏差DF2と、周波数閾値F5とに基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定する。
判定部6は、正の周波数閾値F5と負の周波数閾値F5とで定まる周波数の範囲内に、周波数偏差DF2が収まるか否かを判定する。具体的に言うと、判定部6は、算出部4で算出された周波数偏差DF2が、周波数閾値F5で定まる周波数の範囲を連続して所定回数(例えば4回)超える場合、分散型電源152が単独運転を行っていると判定する。判定部6は、分散型電源152が単独運転を行っていると判定すると、解列器8に解列信号を出力する。
ここで、単独運転検出装置1が電力系統151に無効電力を注入した際に発生する直流分D1(直流電流)について、図2を参照して説明する。なお、本実施形態の単独運転検出装置1と比較するため、図3に示す従来の無効電力の注入方法で単独運転検出装置1が無効電力を注入する例について説明する。なお、以下では、従来の無効電力の注入方法で注入される無効電力にはX1を付して説明する。なお、単独運転検出装置1は、電力系統151に無効電力を注入する他にも、例えばインバータ7の出力する無効電力を直接変動させてもよい。
電力系統151には、分散型電源152および系統電源により周波数F1の交流の系統電圧V1が印加されている。また、電力系統151には、分散型電源152および系統電源から出力される交流の出力電流A1が流れている。
単独運転検出装置1は、系統電圧V1の周波数F1が変動していない場合には無効電力X2を注入しないが、系統電圧V1の周波数F1が変動すると、分散型電源152の単独運転を判定するために、無効電力X1を電力系統151に注入する。例えば周波数F1が小さくなる(つまり1周期分の時間(1/F1)が大きくなる)ように変動すると、単独運転検出装置1は、タイミングT101において、大きさが目標値x100となる正の無効電力X1をインバータ7から電力系統151に注入させる。目標値x100は、電力系統151に系統電源から電力が供給されている場合には、系統電圧V1の周波数F1がほとんど変化しない程度の無効電力の大きさに定められている。
無効電力X1の注入を開始してから一定時間t1が経過するまで、大きさが目標値x100となる無効電力X1を電力系統151に注入させ続ける。本実施形態では、一定時間t1は、例えば5ミリ秒に定められているが、この秒数に限定される趣旨ではない。
図2では、単独運転検出装置1は、タイミングT101で正の無効電力X1を注入する。例えば単独運転検出装置1は、出力電流A1が系統電圧V1に対して位相が進むように(図2に示す出力電流A2の位相となるように)無効電力X1を注入する。電力系統151から電力が供給されている場合には、無効電力X1の注入に応じて出力電流A1の位相がずれるが、系統電圧V1の位相はほとんど変化しない。すなわち電力系統151から電力が供給されている場合に無効電力X1が電力系統151に注入されても、系統電圧V1の周波数F1はほぼ変化していないとみなすことができる。言い換えると、分散型電源152が単独運転していない場合、正の無効電力X1の注入が行われても、周波数偏差DF2の大きさが、周波数閾値F5で定まる周波数の範囲内に収まるので、分散型電源152は単独運転を行っていないと判定部6が判定する。
一方、電力系統151が停電している場合に正の無効電力X1が注入されると、出力電流A1の位相が(出力電流A2の位相となるように)ずれる。そして、その出力電流A1に応じて系統電圧V1が出力される。すなわち無効電力X1の注入に応じて系統電圧V1の位相が変化し、系統電圧V1の周波数F1が変化する。言い換えると、分散型電源152が単独運転している場合、正の無効電力X1の注入が行われるごとに周波数F1は小さくなる。そして周波数偏差DF2の大きさが、周波数閾値F5で定まる周波数の範囲を連続して所定回数(4回)超えることにより、分散型電源152は単独運転を行っていると判定部6が判定する。
無効電力X1が注入されると、タイミングT101から系統電圧V1の1周期分の時間(数式で表すと1/F1)が経過したタイミングT105で、直流分D1が電力系統151に発生する。本実施形態では、1周期分の時間(1/F1)は、例えば200ミリ秒に定められているが、この秒数に限定される趣旨ではない。
直流分D1は、系統電圧V1の周波数F1や、負荷153の種類や、分散型電源152の供給電力などによって定まる周期で周期的に変化する。例えば直流分D1は、周波数F1の周期(20ミリ秒)よりも長い周期(例えば500ミリ秒など)で変動する場合もある。直流分D1の変動の大きさは、注入される無効電力X1が短時間で急峻に変化するほど大きくなる傾向がある。
ところで、系統電圧V1は系統電源の稼動状態(例えば発電設備および変電設備の稼動状態)や、電力需要の変動などによって変動する場合がある。例えば系統電圧V1が、周波数閾値F5によって定まる所定の範囲を正方向と負方向とに交互に超えるように変動する場合がある。単独運転検出装置1は、周波数F1の変化をさらに助長するように電力系統151の無効電力を変動させる動作を行うので、この場合、正と負の無効電力X1を交互に電力系統151に注入する。正と負の無効電力X1が交互に電力系統151に注入されると、電力系統151に発生する直流分D1の大きさが変動する。しかも正と負の無効電力X1が交互に連続して電力系統151に注入されると、直流分D1の変動が大きくなる。同様に、インバータ7の出力する無効電力を変動させる方向が交互に反転する(系統電圧V1に対する電流が進み位相と遅れ位相とに交互に反転する)ように変動させると、直流分D1の変動が大きくなる。分散型電源152を電力系統151に系統連系するためには、直流分D1の大きさをあらかじめ定められた値よりも小さくしなければならない。そのため、無効電力X1の連続注入時(またはインバータ7の出力する無効電力の変動時)に発生する直流分D1の大きさの変動を抑制したいという要望があった。
本実施形態の調整部5は、図4に示すように、電力系統151に注入する無効電力X2の大きさを時間経過に伴って増加させる。調整部5は例えば、注入部2から無効電力X2の注入を開始させるタイミングT101では目標値x100よりも小さい無効電力X2を注入させる。本実施形態では、タイミングT101における無効電力X2の大きさはゼロに定めている。調整部5は、無効電力X2の注入を開始させた後に無効電力X2の大きさを目標値x100まで時間経過に伴って増加させる。以下では、調整部5は、無効電力X2を電力系統151に注入する場合について説明する。なお、注入部2がインバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されている場合、調整部5は、インバータ7の出力する無効電力の大きさを増加させるように構成される。この場合、調整部5において、無効電力X2を注入する動作を、インバータ7の出力する無効電力を変動させる動作と読み替えればよい。この場合、調整部5において、注入する無効電力X2の大きさを、インバータ7の出力する無効電力の大きさと読み替えればよい。またこの場合、注入する無効電力X2の符号(極性)を、インバータ7の出力する無効電力の極性と読み替えればよい。
本実施形態の調整部5は、注入する無効電力X2の符号に応じて、無効電力X2を正の目標値(x100)に増加させる場合と負の目標値(−x100)に減少させる場合とがある。注入する無効電力X2の符号が正負いずれの場合も、以下では、調整部5が、注入する無効電力X2の大きさを目標値x100に増加させると表記する。
調整部5は、電力系統151に無効電力X2を注入させる時点では、無効電力X2の大きさをゼロに定めている。そのため、無効電力X2が電力系統151に注入される際に電力系統151の急峻な変化が起こりにくくなる。調整部5は、無効電力X2をゼロから時間経過に伴い徐々に、電力系統151に注入する無効電力X2の大きさを増加させる。調整部5は、電力系統151に注入する無効電力X2を急激に変化させることなく無効電力X2を注入するので、電力系統151に発生する直流分D1の大きな変動を抑制できる。
次に、調整部5が、電力系統151の周波数F1の変動に応じて、注入部2から電力系統151に注入させる無効電力X2を調整する動作について図5を参照して説明する。
図5における周波数F1は、以下のように変動していると仮定する。周波数F1は、区間t301の前(区間t300)、および、区間t304の後では変動していない。また、周波数偏差DF2は、区間t301および区間t304では各々、周波数閾値F5を超えて変動する。具体的に言うと、区間t301および区間t304において、周波数偏差DF2は、正の周波数閾値F5を超えて大きくなる変化と、負の周波数閾値F5を下回る変化とを5ミリ秒ごとに繰り返す。周波数偏差DF2は、区間t302では、正の周波数閾値F5を超えた状態→周波数閾値F5で定まる周波数の範囲内→負の周波数閾値F5を下回る状態に変化する。周波数偏差DF2は、区間t303では周波数閾値F5を下回っている。
図5において点線で示す無効電力X1は、従来例の方法(図3参照)で注入される無効電力X1のグラフである。図5において実線で示す無効電力X2は、本実施形態の注入部2から注入される無効電力X2のグラフである。従来例の方法では、区間t301および区間t304において、周波数F1が周波数閾値F5を超えて変動するごとに、大きさがx100であって正の無効電力X1と、大きさがx100であって負の無効電力X1とが交互に注入される。そのため、区間t301および区間t304において、一定時間t1(5ミリ秒)が経過するごとに電力系統151に注入される無効電力X1が急峻に変化する。特に、符号が異なる無効電力X1が交互に注入されると、注入される無効電力X1の変動量が最大となる。しかも直流分D1の変動の大きさは、注入される無効電力X1が短時間で急峻に変化するほど大きくなる傾向があるため、従来例の方法で無効電力X1を注入すると、電力系統151に発生する直流分D1の変動が大きくなりやすい。
一方、本実施形態の調整部5は、図5の実線で示すように、時間経過に伴って無効電力X2を徐々に注入部2から注入させる。例えば区間t301および区間t304であっても、調整部5は、注入する無効電力X2の大きさを、短時間で増加させることなく徐々に増加させて無効電力X2を電力系統151に注入させる。そのため、電力系統151に発生する直流分D1の変動が抑制される。
ここで、調整部5は、注入している無効電力X2を目標値x100から目標値x100よりも小さい大きさにする場合、無効電力X2の大きさを時間経過に伴って減少させてもよい。本実施形態の調整部5は、図5の区間t302で示すように、注入させている無効電力X2をゼロにする場合、一定時間t1が経過した時点で無効電力X2の大きさがゼロになるように、無効電力X2の大きさを時間経過に伴って減少させている。調整部5のこの動作によって、電力系統151に注入されている無効電力X2が停止する(注入する無効電力X2をゼロにする)際の変化も緩やかになり、電力系統151に発生する直流分D1の変動が効果的に抑制される。
ここで、本実施形態の調整部5が、電力系統151に発生する直流分の変動を抑制する効果について図6を参照して説明する。図6に示す直流分D1は、直流分の変動が抑制されていない場合の波形を示している。一方、直流分D2は、直流分の変動が抑制されている場合の波形を示している。直流分D1の振幅は、図示している期間において一定であるのに対し、直流分D2の振幅は時間経過に伴って小さくなる。例えばタイミングT201における直流分D2の大きさD21よりも、タイミングT201よりも後のタイミングT202における直流分D2の大きさD22は小さくなる(D22<D21)。つまり、直流分D1の変動を抑制することにより、電力系統151に発生する直流分の大きさを小さくすることができる。
以上説明したように、本実施形態の単独運転検出装置1は、電力系統151と系統連系された分散型電源152の単独運転を検出する。単独運転検出装置1は、注入部2と、計測部3と、算出部4と、調整部5と、判定部6とを備える。注入部2は、無効電力X2を電力系統151に注入する。計測部3は、電力系統151から供給される系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1を計測する。算出部4は、計測部3の複数の計測結果から系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1の変動(本実施形態では周波数偏差DF2)を求める。算出部4は、周波数F1の変動に基づいて(本実施形態では周波数偏差DF2および周波数閾値F5に基づいて)注入部2から注入させる無効電力X2の大きさを表す目標値x100を求める。調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させる時点では目標値x100よりも小さい無効電力X2を注入させ、かつ、注入部2から注入させる無効電力X2を目標値x100まで時間経過に伴って増加させる。判定部6は、計測部3が計測した周波数F1に基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定する。
上記構成によれば、調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させる時点では目標値x100よりも小さい大きさの無効電力X2を注入させ、かつ、注入部2から注入させる無効電力X2の大きさを目標値x100まで時間経過に伴って増加させる。電力系統151に注入される無効電力X2の大きさは、時間経過に伴って増加するため、電力系統151に注入される無効電力X2の急峻な変化が抑制される。そのため、電力系統151に発生する直流分D1の変動が抑制される。言い換えると、調整部5のこの動作により、単独運転検出装置1は、電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制しつつ分散型電源152の単独運転を検出できる。
また、本実施形態の調整部5は、無効電力X2を電力系統151に注入する際に、無効電力X2の大きさをゼロから時間経過に伴って増加させているので、電力系統151に注入される無効電力X2の急峻な変化が抑制される。
本実施形態の単独運転検出装置1において、調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させた時点から一定時間t1が経過した時点で、注入させる無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。
上記構成によれば、調整部5は、目標値x100を超える大きさの無効電力X2を電力系統151に注入することを抑制することができる。また調整部5は、一定時間t1の経過時に目標値x100と同じ大きさの無効電力X2が電力系統151に注入されるように、時間経過に伴って徐々に無効電力X2を増加させるので、電力系統151に注入される無効電力X2の急峻な変化が抑制される。
本実施形態のパワーコンディショナ10は、インバータ7と、解列器8と、無効電力変動部(本実施形態では注入部2)と、計測部3と、算出部4と、調整部5と、判定部6とを備える。インバータ7は、分散型電源152の出力する直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を電力系統151に出力する。解列器8は、インバータ7に接続され、分散型電源152を電力系統151から解列させる。無効電力変動部(注入部2)は、インバータ7の出力する交流電力の無効電力を変動させる。計測部3は、電力系統151の系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1を計測する。算出部4は、計測部3の複数の計測結果から系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1の変動(本実施形態では周波数偏差DF2)を求める。算出部4は、周波数F1の変動に基づいて(本実施形態では周波数偏差DF2および周波数閾値F5に基づいて)無効電力変動部(注入部2)で変動させる無効電力の目標値を求める。調整部5は、無効電力変動部(注入部2)で無効電力の変動を開始させる時点では無効電力の大きさを目標値の大きさよりも小さくし、かつ、無効電力を目標値まで時間経過に伴って変動(変化)させる。判定部6は、計測部3が計測した周波数F1に基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定する。
上記構成によれば、電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制しつつ分散型電源152の単独運転を検出可能なパワーコンディショナを実現できる。
本実施形態の単独運転の検出方法は、注入ステップと、計測ステップと、算出ステップと、調整ステップと、調整ステップと、判定ステップとを有し、電力系統151と系統連系された分散型電源152の単独運転を検出する検出方法である。注入ステップは、無効電力X2を電力系統151に注入するステップである。計測ステップは、電力系統151から供給される系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1を計測するステップである。算出ステップは、計測ステップの複数の計測結果から系統電圧V1(交流電圧)の周波数F1の変動を求め、周波数F1の変動に基づいて注入ステップで注入させる無効電力X2の大きさを表す目標値x100を求めるステップである。調整ステップは、注入ステップで無効電力X2の注入を開始させる時点では目標値x100よりも小さい無効電力X2を注入させ、かつ、注入ステップで注入させる無効電力X2を目標値x100まで時間経過に伴って増加させるステップである。判定ステップは、計測ステップで計測した周波数F1に基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かを判定するステップである。
上記構成によれば、電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制しつつ分散型電源152の単独運転を検出可能な単独運転の検出方法を提供できる。
なお、本実施形態の調整部5は、無効電力X2を注入させる際に、時間経過に対する無効電力X2の増加量は一定(図4に示すグラフの傾きが一定)にしているが、無効電力X2の増加量は一定でなくてもよい。例えば調整部5は、経過時間に対して無効電力X2を二次関数的に増加させてもよいし、経過時間に対して対数関数的に増加させてもよい。また、調整部5は、一定時間t1が経過するまでの間に、無効電力X2を注入させ続けることに限定されず、無効電力X2の注入を所望の期間停止させてもよい。さらに調整部5は、例えば三次関数のように、変曲点を2つ有するように無効電力X2を増加させてもよい。つまり調整部5は、無効電力X2の注入を開始させる時点から一定時間t1が経過するまでの間に、無効電力X2の大きさがゼロにならない範囲であれば、注入させる無効電力X2の大きさや符号は適宜選択されてもよい。
本実施形態の調整部5は、注入している無効電力X2の大きさを、一定時間t1をかけてゼロに減少させているが、この動作は必須ではなく、省略されてもよい。
ここで、別の構成により電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制しつつ分散型電源152の単独運転を検出できるパワーコンディショナ10を、本実施形態の変形例として説明する。なお、本実施形態のパワーコンディショナ10と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
変形例のパワーコンディショナ10は、本実施形態のパワーコンディショナ10から、解列器8と算出部4とが省略されていてもよい。つまりパワーコンディショナ10は、インバータ7と、注入部2(無効電力変動部)と、計測部3と、調整部5と、判定部6とを備えていればよい。
注入部2は、計測部3が計測した系統電圧V1の周波数F1の変動に基づいて、電力系統151の無効電力を変動させる。注入部2は、電力系統151の無効電力を変動させる場合には、無効電力を複数回(例えば5回)変動させる。注入部2は、電力系統151の無効電力を、例えば1ミリ秒ごとに1回変動させ、5ミリ秒間で5回変動させる。注入部2は例えば、本実施形態の単独運転検出装置1の注入部2のように無効電力X2を電力系統151に注入して無効電力を変動させる。他にも注入部2は例えば、インバータ7の出力する電流と電圧の位相を変動させることにより、インバータ7の出力する無効電力を直接変動させてもよい。
注入部2は、無効電力の注入を開始させる時点では、無効電力の大きさが目標値の大きさよりも小さい無効電力を注入させる。そして注入部2は、無効電力を目標値まで時間経過に伴って徐々に変動(変化)させる。本変形例の注入部2は、無効電力を5回変動させることにより電力系統151の無効電力を段階的に変化させて目標値まで変動させる。
注入部2は、電力系統151の無効電力を目標値まで変動させる場合、1回の無効電力の変化幅を、現在の無効電力の値を目標値まで変化させる場合の変化幅の5分の1に定める。そして注入部2は、無効電力を5回変動させることで電力系統151の無効電力を目標値まで変動させる。すなわち注入部2は、5回に分けて段階的に無効電力を変化させる。この場合、注入部2が無効電力を1回変動させる際の無効電力の変化幅は、無効電力を目標値まで1回で変動させる場合に比べて小さいので、電力系統151に発生する直流分D1の大きさの変動を抑制できる。
判定部6は、注入部2が無効電力を5回変動させた後に、分散型電源152の単独運転の判定を行う。つまり本変形例の判定部6は、本実施形態の判定部6と同様に、無効電力を変動させてから5ミリ秒後の計測部3の計測結果に基づいて、分散型電源152が単独運転を行っているか否かを判定する。
以上のように、注入部2は、無効電力の注入を開始させる時点では目標値よりも小さい無効電力を注入させ、かつ、無効電力を目標値まで時間経過に伴って徐々に変化させる。本変形例の注入部2は、時間経過に伴って、無効電力を目標値まで5回に分けて段階的に変化させる。これにより、電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制しつつ分散型電源152の単独運転を検出できるパワーコンディショナ10を実現することができる。しかも、無効電力が目標値に達するまでの変動回数を多くすることにより、無効電力の段階的な変化を一次関数的な変化に近づけることも可能である。この場合、本変形例の注入部2は、本実施形態の注入部2のように無効電力X2を時間経過に伴って電力系統151に注入した場合とほぼ同様に、電力系統151の無効電力を変動させることができる。
なお、注入部2が無効電力を変動させる回数およびその時間間隔は一例であり、適宜の回数および適宜の時間間隔に定めてよい。
以上説明したように、本変形例のパワーコンディショナ10は、インバータ7と、無効電力変動部(本変形例では注入部2)と、計測部3と、調整部5と、判定部6とを備える。インバータ7は、分散型電源152の出力する直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を電力系統151へ出力する。無効電力変動部(注入部2)は、インバータ7の出力する交流電力の無効電力を変動させる。計測部3は、交流電力の電圧成分の周波数(本変形例では系統電圧V1の周波数F1)を計測する。調整部5は、無効電力変動部(注入部2)で無効電力の変動を開始させる時点では無効電力の大きさを目標値の大きさよりも小さくし、かつ、無効電力変動部(注入部2)で変動させる無効電力を目標値まで時間経過に伴って変動(変化)させる。判定部6は、計測部3が計測した交流電力の電圧成分の周波数(系統電圧V1の周波数F1)に基づいて、分散型電源152が単独運転しているか否かの判定を行う。無効電力変動部(注入部2)は、計測部3が計測した周波数(系統電圧V1の周波数F1)の変動に基づいて無効電力を変動させる。判定部6は、無効電力変動部(注入部2)が無効電力を複数回変動させた後に、上記の判定を行う。
上記構成によれば、電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制しつつ分散型電源152の単独運転を検出可能なパワーコンディショナを実現できる。
(実施形態2)
ところで、分散型電源152から電力系統151や負荷153に供給する電力が大きいほど、無効電力X2を電力系統151に注入した際に発生する電力系統151の変化(例えば直流分D1の変化)は、供給される電力に比べて相対的に小さくなる。そのため、分散型電源152からの供給電力が大きい場合は、無効電力X2の注入速度を速めても、電力系統151に発生する直流分D1の変化が大きくなりにくい。言い換えると、分散型電源152からの供給電力が大きい場合は、直流分D1が大きく変動しにくい。
そこで、本実施形態の単独運転検出装置1およびパワーコンディショナ10は、分散型電源152からの供給電力に応じて電力系統151に注入する無効電力X2の大きさを変化させる。パワーコンディショナ10は、図7に示すように、実施形態1のパワーコンディショナ10の構成に加えて、さらに指令部102を備える。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
以下では、調整部5は、無効電力X2を電力系統151に注入する場合について説明する。なお、注入部2がインバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されている場合、調整部5は、インバータ7の出力する無効電力の値を変動(変化)させるように構成される。この場合、調整部5は、無効電力X2を注入する動作を、インバータ7の出力する無効電力を変動させる動作と読み替えればよい。この場合、調整部5は、注入する無効電力X2の大きさを、インバータ7の出力する無効電力を大きさと読み替えればよい。またこの場合、注入する無効電力X2の符号(極性)を、インバータ7の出力する無効電力の極性と読み替えればよい。
指令部102は、分散型電源152から電力系統151に供給される電力が基準となる電力値よりも大きいか否かを判断し、判断結果に応じて調整部5に立ち上がり時間を指示する。本実施形態の指令部102は、2通りの立ち上がり時間t13,t14(所定時間)のうち何れか一方を選択して調整部5に指示する。なお、立ち上がり時間の選択肢は複数あればよく、2通りに限定されない。
指令部102は、例えばマイクロコンピュータで構成され、内蔵しているメモリに記録されているプログラムを読みこんで実行することにより、所望の機能を実現させる。指令部102は、分散型電源152から出力される直流電力に関する情報(直流電圧値や直流電流値)を取得する。指令部102は、取得した情報に基づいて、無効電力X2が目標値x100に達するまでの立ち上がり時間を、立ち上がり時間t13,t14の何れかに決定する。指令部102は、無効電力X2が目標値x100に達するまでの所要時間を立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)として定めるように指示する信号を調整部5に出力する。例えば、指令部102は、シリアル通信などにより立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)を調整部5に出力してもよい。他にも例えば、指令部102は、調整部5があらかじめ保持している立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)を指定する信号を調整部5に出力してもよい。
調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させた時点から、所定の条件に応じて定まる立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)が経過した時点で、注入させる無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。所定の条件とは、本実施形態では分散型電源152から供給される電力の大小である。具体的に言うと、分散型電源152からの供給電力の大小に応じて指令部102が立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)を選択する。その選択結果が指令部102から調整部5に入力されることにより、調整部5は立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)を定める。つまり調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させた時点から立ち上がり時間t13(または立ち上がり時間t14)が経過した時点で、注入させる無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入部2から注入させる。
調整部5は、図8に示すように、一定時間t1よりも短い立ち上がり時間t14または立ち上がり時間t13が経過した時点で無効電力X2の大きさが目標値x100に達するように、注入する無効電力X2の大きさを変化させる。例えば図8では、一定時間t1、立ち上がり時間t13、立ち上がり時間t14の順に時間の長さが短くなるように定められている(t14<t13<t1)。調整部5が立ち上がり時間t14で無効電力X2の大きさを目標値x100に達するように無効電力X2の大きさを調整すると、本実施形態に比べて短い時間で目標値x100の大きさの無効電力X2を注入できる。言い換えると本実施形態の調整部5は、電力系統151に注入する無効電力X2の増加の度合を変化させることができる。
指令部102は、分散型電源152から電力系統151や負荷153に供給する電力が基準となる電力値よりも大きいと判断すると、調整部5に対して立ち上がり時間t14を指示する信号を調整部5に出力する。調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させた時点から、分散型電源152から供給される電力に応じて定まる立ち上がり時間t14が経過した時点で、注入させる無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。分散型電源152からの供給電力が大きい場合、調整部5は、無効電力X2の注入開始時点から立ち上がり時間t14が経過した時点で無効電力X2の大きさを目標値x100にするように無効電力X2の大きさを変化させる。つまり、調整部5は、分散型電源152からの供給電力が大きく、直流分D1の変動が相対的に小さい場合には、本実施形態1よりも短い時間で無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2の注入速度を変える。
一方、分散型電源152から電力系統151や負荷153に供給する電力が小さいほど、無効電力X2を電力系統151に注入した際に発生する電力系統151の変化(直流分D1の変化)は、供給される電力に比べて相対的に大きくなる。そのため、分散型電源152からの供給電力が小さい場合は、無効電力X2の注入速度が速いと、電力系統151の変化が大きくなりやすい。言い換えると、分散型電源152からの供給電力が小さい場合は、直流分D1は変動しやすい。
指令部102は、分散型電源152から電力系統151や負荷153に供給する電力が基準となる電力値よりも小さいと判断すると、調整部5に対して立ち上がり時間t13を指示する。分散型電源152の供給電力が、基準となる電力値よりも小さい場合、調整部5は、無効電力X2の注入開始時点から立ち上がり時間t13が経過した時点で無効電力X2の大きさを目標値x100にするように無効電力X2の大きさを変化させる。つまり調整部5は、分散型電源152の供給電力が基準となる電力値よりも小さく、直流分D1の変動が相対的に大きい場合には、立ち上がり時間t14よりも長い立ち上がり時間t13をかけて、注入する無効電力X2を目標値x100まで増加させる。
上記したように、調整部5は、分散型電源152からの供給電力に応じて無効電力X2の注入速度を変えるので、分散型電源152からの供給電力が変動しても、電力系統151に発生する直流分D1の変動を効率よく抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態の調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させた時点から、所定の条件に応じて定まる所定時間が経過した時点で、注入させる無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。所定時間とは、本実施形態では立ち上がり時間t13または立ち上がり時間t14である。所定の条件とは、本実施形態では分散型電源152の供給電力の大小である。
上記構成によれば、調整部5は、所定の条件に応じて、注入させる無効電力X2が目標値x100に達する時間を、立ち上がり時間t13または立ち上がり時間t14から選択する。言い換えると調整部5は、所定の条件の変化に応じて無効電力X2の注入速度を変化させることで、電力系統151に発生する直流分D1の変動を効率よく抑制できる。所定の条件とは、例えば分散型電源152の供給電力が、基準となる電力値を上回るか否かである。
本実施形態の調整部5は、分散型電源152からの供給電力に応じて無効電力X2の注入速度を変えるので、分散型電源152の供給電力が変動しても、電力系統151に発生する直流分D1の変動を効率よく抑制することができる。
本実施形態の調整部5は、注入している無効電力X2の大きさをゼロに減少させるまでの所要時間を立ち上がり時間t13,t14および一定時間t1から選択しているが、この動作は必須ではなく、省略されてもよい。
ところで、調整部5は、分散型電源152からの供給電力の他にも、例えば過去の無効電力X2の注入状況に応じて立ち上がり時間t13,t14を定めてもよい。調整部5が、直前の所定区間(例えば過去25ミリ秒)の無効電力X2の注入状況に応じて、無効電力X2を目標値x100にするまでの所要時間を定めるように構成された例を本実施形態の変形例として説明する。調整部5が、注入する無効電力X2の大きさを目標値x100に増加させるまでの所要時間を定める動作について、図9を参照して説明する。
変形例の調整部5は、例えばマイクロコンピュータのメモリに、過去25ミリ秒の間における無効電力X2の注入の有無および符号を記憶させ、メモリから記憶内容を読みこむことができるように構成されている。
調整部5は、周波数偏差DF2が周波数閾値F5で定まる周波数の範囲を超えて変動した際に算出部4から出力される信号に基づいて、無効電力X2を注入部2から注入させるか否かを判断する(S101)。調整部5は、無効電力X2を注入させないと判断すると(S101:No)、メモリから前回の無効電力X2の注入状況を読み込んで、前回、無効電力X2を注入させたか否かを判断する。調整部5は、前回、無効電力X2を注入しておらず、かつ、今回も無効電力X2を注入しない場合は、無効電力X2の注入を行わない(S108:No)。調整部5は、前回、無効電力X2を注入している場合(S108:Yes)、無効電力X2の注入を停止させる(S109)。変形例の調整部5は、一定時間t1をかけて無効電力X2の大きさをゼロにする。
調整部5は、無効電力X2を注入させると判断すると(S101:Yes)、過去25ミリ秒間の無効電力X2の注入状況をメモリから読みこむ(S102)。調整部5は、過去25ミリ秒以内に無効電力X2を注入していないと判断すると(S103:No)、立ち上がり時間t14を選択する。この判断の25ミリ秒前までは無効電力X2の注入の変動がないので、一定時間t1よりも短い時間で注入する無効電力X2を増加させても、直流分D1の変動は大きくなりにくい。そこで調整部5は、立ち上がり時間t14を選択する(S110)。調整部5が注入開始時点から立ち上がり時間t14が経過した時点で無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入させることにより、短時間で無効電力X2の大きさを増加させることができる。
調整部5は、過去25ミリ秒以内に無効電力X2を注入したと判断すると(S103:Yes)、前回、無効電力X2を注入させたか否かを判断する。調整部5は、前回、無効電力X2を注入していない場合(S104:No)、立ち上がり時間t13を選択する。この判断の25ミリ秒間前までに無効電力X2が注入されているが、直前の5ミリ秒前には無効電力X2が注入されていない。つまり、過去25ミリ秒以内で注入される無効電力X2が変動しているが、今回の注入により連続して変動し続けているわけではないので、一定時間t1よりも短い時間で注入する無効電力X2を増加させても、直流分D1の変動は大きくなりにくい。そこで調整部5は、立ち上がり時間t13を選択する(S111)。調整部5は、立ち上がり時間t13(t14<t13<t1)を選択することにより、過去25ミリ秒以内に多少の無効電力X2の変動がある場合でも直流分D1の変動を抑制しつつ、短時間で無効電力X2の大きさを増加させることができる。
調整部5は、前回、無効電力X2を注入している場合(S104:Yes)、今回注入する無効電力X2の符号が、前回注入した無効電力X2の符号と同じか否か(つまり極性が同じか否か)を判断する。調整部5は、前回と同じ符号の無効電力X2を注入する場合(S105:No)、前回に引き続き、今回も同じ符号の無効電力X2を継続して注入させる(S112)。調整部5は、前回とは異なる符号の無効電力X2を注入する場合(S105:Yes)、一定時間t1を選択する(S106)。前回と今回とで異なる符号の無効電力X2が注入されると、無効電力X2の変動が大きいので、直流分D1の変動が大きくなる可能性がある。そこで調整部5は、一定時間t1(つまり5ミリ秒)をかけて、注入する無効電力X2の大きさを徐々に増加させることにより、直流分D1の変動を抑制する。
調整部5は、今回注入する無効電力X2の大きさが目標値x100に達するまでの時間を、立ち上がり時間t13,t14および一定時間t1から択一的に選択し、注入部2から電力系統151に無効電力X2の注入を開始させる(S107)。
ここで、調整部5が上記の条件に応じて無効電力X2を調整する動作について、図10を参照して説明する。なお、図10において調整部5が無効電力X2を注入させる条件と、時間軸と、従来例のグラフの説明とは、図5と同様であるため、説明を省略する。
区間t300は、25ミリ秒の間(つまり5回分の一定時間t1)、周波数F1がほぼ変動していないとみなせる区間であり、無効電力X2が注入されていない区間であると仮定する。区間t301の開始時点で、調整部5は、過去25ミリ秒の間に、無効電力X2の注入がなかったと判断し、立ち上がり時間t14の経過後に無効電力X2の大きさが目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。このとき、電力系統151に注入される無効電力X2は、一定時間t1をかけて無効電力X2を目標値x100まで注入する場合と比べて急峻な変化であるが、従来例よりは緩やかな変化である。また過去25ミリ秒間に無効電力X2が注入されていないため、一定時間t1よりも短い立ち上がり時間t14で目標値x100に達する無効電力X2を注入しても、電力系統151に発生する直流分D1の変化は、従来例の注入時より抑制される。
区間t302,t303における調整部5の動作は、図5と同様であるため、説明を省略する。
区間t304の開始時点において、調整部5は、過去25ミリ秒の間に、無効電力X2の注入があったが、前回は無効電力X2が注入されていなかったと判断する。調整部5は、立ち上がり時間t13が経過した時点で無効電力X2の大きさが目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。
上述のように、変形例の調整部5は、前回と今回とで符号の異なる無効電力X2を注入する場合には、緩やかに無効電力X2を注入させる。また変形例の調整部5は、過去25ミリ秒以内で無効電力X2の注入が行われていない場合には、無効電力X2の大きさが目標値x100に短時間で達するように無効電力X2を注入させる。変形例の調整部5は、上記の2つの場合の何れにも当てはまらない場合には、その2つの場合の中間の注入速度で無効電力X2を注入させる。
以上説明したように、本変形例の単独運転検出装置1において、調整部5は、調整部5は、所定期間における無効電力X2の注入状況に応じて所定時間(本変形例では立ち上がり時間t13または立ち上がり時間t14)を定める。所定期間とは、本変形例では過去5ミリ秒から過去25ミリ秒までの期間である。調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させた時点から、上記で定めた所定時間(立ち上がり時間t13または立ち上がり時間t14)が経過した時点で、注入させる無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を注入させる。
上記構成によれば、調整部5は、所定の条件に応じて無効電力X2の注入速度(立ち上がり時間)を変化させることができる。そのため調整部5は、所定の条件の変化に応じて無効電力X2の注入速度を変化させることで、電力系統151に発生する直流分D1の変動を効率よく抑制できる。本変形例における調整部5は、過去の無効電力X2の注入の有無や符号の変化に応じて立ち上がり時間t13,t14の何れかを選択するので、直流分D1の変動を抑制しつつ、一定時間t1より短い時間で注入する無効電力X2を目標値x100まで増加できる。
なお、変形例の調整部5の判断条件(図9のS103〜S105,S108)は一例であり、適宜変更可能である。例えば、無効電力X2が注入されていないと調整部5が判断する期間(所定期間)は25ミリ秒に限定されず、適宜の期間に定めてよい。また、調整部5が立ち上がり時間t13を選択する条件を上記と異なる条件に変えてもよい。また、調整部5が択一的に選択する立ち上がり時間の選択肢は2個に限定されず、複数あればよい。
なお、変形例の調整部5は、S109のように、注入している無効電力X2を停止させる場合に一定時間t1をかけて無効電力X2の大きさをゼロにしているが、この例に限定されない。例えば調整部5は、過去25ミリ秒以内に注入した無効電力X2の注入部2の注入状況に応じて、立ち上がり時間t13,t14をかけて無効電力X2の大きさをゼロにするように構成されていてもよい。例えば、無効電力X2の注入を停止させる直前の直前の過去25ミリ秒の間、同じ符号の無効電力X2を注入し続けていた場合、立ち上がり時間t14を選択し、できるだけ短い時間で無効電力X2の大きさをゼロにしてもよい。
(実施形態3)
実施形態1の単独運転検出装置1が、電力系統151に無効電力X2を注入する際に、電力系統151の系統電圧V1の電圧値の大小に応じて直流分D1の大きさが異なることが知られている。例えば、図2に示すタイミングT101,T103で無効電力X2が注入された場合に発生する直流分D1の大きさよりも、タイミングT102,T104で無効電力X2が注入された場合に発生する直流分D1の大きさの方が大きくなる。
そこで、本実施形態の調整部5は、注入する無効電力X2の注入開始時の大きさ(初期値)を系統電圧V1の電圧値に応じて変化させる。本実施形態の調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させる時点で、ゼロではない無効電力X2を注入させる。以下、本実施形態の単独運転検出装置1およびパワーコンディショナ10について図2および図11を参照して説明する。なお、本実施形態の単独運転検出装置1およびパワーコンディショナ10は、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
以下では、調整部5は、無効電力X2を電力系統151に注入する場合について説明する。なお、注入部2がインバータ7の出力する無効電力を直接変動させるように構成されている場合、調整部5は、インバータ7の出力する無効電力の値を変動(変化)させるように構成される。この場合、調整部5は、無効電力X2を注入する動作を、インバータ7の出力する無効電力を変動させる動作と読み替えればよい。この場合、調整部5は、注入する無効電力X2の大きさを、インバータ7の出力する無効電力を大きさと読み替えればよい。またこの場合、注入する無効電力X2の符号(極性)を、インバータ7の出力する無効電力の極性と読み替えればよい。
本実施形態の計測部3は、電力系統151の電圧値を計測して算出部4に出力する。本実施形態の算出部4は、計測部3からの電圧値情報に基づいて、調整部5に初期値をx103またはx104に選択させる信号を調整部5に出力する。
調整部5は、算出部4からの信号に応じて、大きさがゼロよりも大きい初期値x103またはx104を選択して、無効電力X2の注入を開始させる(図11参照)。無効電力X2の大きさx103,x104の大小関係を数式で表すと、0<x103<x104<x100となる。以下では、無効電力X2の注入開始時における無効電力X2の大きさx103,x104のことを、初期値x103,x104と表記する。
調整部5は、図2に示すタイミングT101,T103で無効電力X2を注入する場合には、初期値x104を選択する。タイミングT101,T103で注入部2から無効電力X2を注入させると、系統電圧V1の電圧値はゼロに近いので、電力系統151に発生する直流分D1は大きく変動しにくい。そこで調整部5は、タイミングT101,T103では初期値x103よりも大きい初期値x104を選択して無効電力X2を注入させる。調整部5は、初期値x104の無効電力X2を注入させる場合、注入開始時から立ち上がり時間t24が経過した時点で無効電力X2の大きさが目標値x100に達するように無効電力X2を増加させる。言い換えると、このときの調整部5の動作は、実施形態2の調整部5の動作(図8参照)について初期値x104から無効電力X2を注入させる動作と等しい。
また調整部5は、タイミングT102,T104で無効電力X2を注入する場合には、初期値x103を選択する。タイミングT102,T104で注入部2から無効電力X2を注入させると、系統電圧V1の電圧値は最大値に近いので、電力系統151に発生する直流分D1は大きく変動しやすい。そこで調整部5は、初期値x104よりも小さい初期値x103を選択して無効電力X2の注入を開始させる。調整部5は、初期値x103の無効電力X2を注入させる場合、注入開始時から一定時間t1が経過した時点で無効電力X2の大きさが目標値x100に達するように無効電力X2を増加させる。言い換えると、このときの調整部5の動作は、実施形態1の調整部5の動作(図4参照)について初期値x103から無効電力X2を注入させる動作と等しい。
つまり調整部5は、系統電圧V1の電圧値に応じて、大きさがゼロよりも大きい初期値x103またはx104を選択して無効電力X2の注入を開始させる。調整部5は、無効電力X2を注入するタイミングの系統電圧V1の電圧値の大小に応じて、無効電力X2の初期値x103またはx104を選択する。調整部5は、無効電力X2を注入するタイミングの系統電圧V1の電圧値が、基準電圧値未満の場合(例えばゼロに近い場合など)は初期値x104を選択し、短い時間で無効電力X2が目標値x100に達するように無効電力X2を調整部5から注入させる。調整部5は、上記のように、電力系統151に発生する直流分D1の変動があまり大きくならない場合、なるべく短時間のうちに無効電力X2を目標値x100まで注入させる。
調整部5は、無効電力X2を注入するタイミングの系統電圧V1の電圧値が、基準電圧値以上の場合(例えば最大値に近い場合)は初期値x103を選択し、注入する無効電力X2の時間的変化を抑えて徐々に無効電力X2を注入する。系統電圧V1の電圧値が最大値に近いと直流分D1の変動が大きくなりやすいので、調整部5は、無効電力X2の時間的変化を抑えて徐々に無効電力X2を増加させることにより、電力系統151に発生する直流分D1の変動を抑制する。
調整部5は、上記のように、電力系統151に発生する直流分D1の変動しやすさに応じて、無効電力X2の初期値をx103またはx104から選択するので、直流分D1の変動を抑制しつつ、短い時間で無効電力X2を目標値x100まで注入させる。
以上説明したように、本実施形態の単独運転検出装置1において、調整部5は、注入部2から無効電力X2の注入を開始させる時点で、ゼロではない無効電力X2(本実施形態では初期値x103またはx104の無効電力X2)を注入させる。
上記構成によれば、無効電力X2の注入開始時の大きさがゼロでなくても電力系統151の直流分D1の変動が大きくならない場合に、調整部5は、ゼロよりも大きな初期値の無効電力X2で注入を開始させることができる。本実施形態の調整部5は、初期値x103,x104の無効電力X2の注入できる。
調整部5は、初期値x103またはx104の無効電力X2を選択して無効電力X2の注入を開始させることにより、直流分D1の変動を抑制しつつ、一定時間t1(図4参照)よりも短い時間で無効電力X2の大きさを目標値x100まで増加させることができる。
なお、本実施形態の初期値x103,x104は、あらかじめ定められているが、調整部5が演算や情報テーブルを参照するなどの適宜の方法で初期値x103,x104を定めてもよい。つまり初期値x103,x104は、あらかじめ定められた値に限定されない。
本実施形態の単独運転検出装置1およびパワーコンディショナ10は、実施形態1および実施形態2に適用可能である。
実施形態1〜実施形態3の一定時間t1は、5ミリ秒に限定されず、適宜の値でもよい。また、実施形態1〜実施形態3の無効電力X2の目標値x100は、あらかじめ定められた値に限定されず、例えば算出部4の演算や情報テーブルの参照などの適宜の方法で定められてもよい。