(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による内燃機関100及び内燃機関100を制御する制御ユニット20の概略構成図である。
本実施形態による内燃機関100は、燃料タンク1と、ポンプ吸入通路2と、サプライポンプ3と、ポンプ吐出通路4と、コモンレール5と、供給通路6と、増圧装置7と、噴射通路8と、インジェクタ9と、リターン通路10と、リリーフ通路11とを備える。
燃料タンク1は、外部から供給された燃料を、常圧で貯留する。燃料タンク1に貯留された燃料は、ポンプ吸入通路2を介してサプライポンプ3によって吸い上げられる。
サプライポンプ3は、燃料タンク1に貯留された燃料を吸い上げ、増圧する。サプライポンプ3によって増圧された燃料はポンプ吐出通路4を介してコモンレール5に供給される。サプライポンプ3から吐出される燃料の量は、制御ユニット20によって制御可能となっており、サプライポンプ3から吐出される燃料の量を制御することでコモンレール5内の燃料の圧力が制御される。
コモンレール5は、ポンプ吐出通路4を介してサプライポンプ3から供給された燃料を、高圧のまま保持する。コモンレール5は、各気筒に対応した複数の供給通路6と連結されており、各気筒に向けて燃料を分配する。さらにコモンレール5には、コモンレール5内に保持された燃料の圧力を測定するためのコモンレール圧センサ51が備えられる。以下の説明では、コモンレール5の内部の燃料の圧力をコモンレール圧Pcrと称する。
増圧装置7は、各気筒に対応して設けられ、供給通路6を介してコモンレール5から供給された燃料を、さらに増圧して、噴射通路8を介してインジェクタ9へ供給する。増圧装置7には、増圧装置7を駆動させるためのアクチュエータ17が設けられている。このアクチュエータ17に後述する制御ユニット20から信号が送られると、アクチュエータ17が駆動して、増圧装置7は燃料の増圧を行う。増圧装置7は、増圧させた燃料をインジェクタ9に向けて吐出するのに伴って、増圧させていない燃料を、リターン通路10を介して燃料タンク1に放出する。
インジェクタ9は、各気筒に対応して設けられ、噴射通路8を介して増圧装置7から供給された燃料を、気筒に対して噴射する。気筒に対して噴射される燃料の量(燃料噴射量)は、インジェクタ9の開弁時間が同じであれば、インジェクタ9に供給される燃料の圧力が高くなるほど多くなる。このため本実施形態においては、燃料噴射量を制御するために、インジェクタ9に供給される燃料の圧力が制御される。このためインジェクタ9には、インジェクタ9に供給された燃料の圧力を計測する噴射圧センサ91が設けられている。以下の説明では、インジェクタ9の内部の燃料の圧力を燃料噴射圧Pinjと称する。
さらに、インジェクタ9には燃料の圧力が高くなりすぎた場合には、リリーフ通路11を介して、燃料を燃料タンク1に戻すための、リリーフ弁92が設けられている。リリーフ弁92は、インジェクタ9の内部とリリーフ通路11との間に設けられており、インジェクタ9の燃料の圧力があらかじめ定められた燃料の圧力よりも高くなった場合には開かれて、インジェクタ9の内部の燃料が燃料タンク1に向けて放出される。
制御ユニット20は、デジタルコンピュータから構成され、双方向バス21によって互いに接続されたROM22、RAM23、CPU24、入力ポート25及び出力ポート26を備える。
入力ポート25には、前述したコモンレール圧センサ51や噴射圧センサ91などからのアナログ信号が、対応するAD変換器27を介してデジタル信号に変換されて入力される。また入力ポート25には、内燃機関100の負荷を検出するためにアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダル踏込量センサ15からのアナログ信号が、AD変換器27を介してデジタル信号に変換されて入力される。また入力ポート25には、クランクシャフトの回転数を検出するためのクランク角センサ16から出力されるデジタル信号が入力される。このように入力ポート25には、内燃機関100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力される。出力ポート26は、サプライポンプ3や増圧装置7、インジェクタ9などに接続されており、CPU24により算出されたデジタル信号を出力する。
次いで、図2A及び図2Bを参照しながら増圧装置7の構成の説明をする。図2Aは、増圧装置7によって燃料の増圧が行われる前の増圧装置7の状態を表した概略図である。図2Bは、増圧装置7がインジェクタ9に向けて燃料を増圧して吐出している状態を表した概略図である。
図2Aに示されるように、増圧装置7は、ハウジング71、ピストン72、ピストン室73、増圧室74、増圧制御室75、スプリング76、三方弁77、第1三方弁通路78、及び第2三方弁通路79を備えている。なお図2A及び図2Bの矢印は、燃料が流通する方向を示している。
ハウジング71の内部には燃料が充填される。本実施形態においては、ハウジング71の長手方向の一端(図中右側)には供給通路6が、他端(図中左側)には噴射通路8が連結されており、供給通路6を通ってハウジング71内部に供給された燃料は、噴射通路8から吐出される。以下の説明では、図2A又は図2Bの右側を供給通路6側、図2A又は図2Bの左側を噴射通路8側と呼称する。このハウジング71は、内径が異なる2つの円筒をつなぎ合わせた形状であり、供給通路6側の円筒の内径は、噴射通路8側の円筒の内径よりも大きい。以下では、供給通路6側の円筒を「ハウジング71の大径部」、ハウジング71の大径部の内周面を「ハウジング71の大径内周面」、噴射通路8側の円筒を「ハウジング71の小径部」、ハウジング71の小径部の内周面を「ハウジング71の小径内周面」と呼称する。
ハウジング71には、ハウジング71の内部をハウジング71の長手方向に沿って移動できるように、ピストン72が格納されている。
ピストン72は、直径が異なる2つの円柱をつなぎ合わせた形状であり、供給通路6側の直径が噴射通路8側の直径よりも大きい。以下では、供給通路6側の円柱を「ピストン72の大径部」、ピストン72の大径部の外周面を「ピストン72の大径外周面」、噴射通路8側の円柱を「ピストン72の小径部」、ピストン72の小径部の外周面を「ピストン72の小径外周面」と呼称する。
ピストン72とハウジング71とによって、ハウジング71の内部には、供給通路6側に配置されるピストン室73と、噴射通路8側に配置される増圧室74と、ピストン室73と増圧室74との間に配置される増圧制御室75と、がそれぞれ形成される。
ピストン72は、ピストン72を長手方向に貫通するように設けられるピストン内通路721と、ピストン内通路721に設けられた逆止弁722とを備える。逆止弁722は、ピストン室73から増圧室74に向けてピストン内通路721内に燃料が流れることを許容し、増圧室74からピストン室73に向けてピストン内通路721を通って燃料が流れることを制限する。
ピストン室73は、ハウジング71の大径部の端面と、ハウジング71の大径内周面と、ピストン72の大径部の端面とによって形成される空間である。ピストン室73には、供給通路6を介してコモンレール5からの高圧燃料が供給されて充填される。さらにピストン室73には、ピストン72を常に供給通路6側に向けて引く張力が生じるようにスプリング76が設けられる。
増圧室74は、ハウジング71の小径内周面と、ハウジング71の小径部の端面と、ピストン72の小径部の端面とによって形成される空間である。増圧室74は、ピストン内通路721を介して、ピストン室73と連結されており、ピストン室73の燃料が増圧室74に供給される。また、増圧室74は噴射通路8とも連結されている。
増圧制御室75は、ピストン室73と増圧室74との間に設けられ、ハウジング71の大径内周面と、ピストン72の小径外周面とによって区画された空間である。
増圧制御室75は、コモンレール5または燃料タンク1に選択的に連結される。ここで、増圧制御室75とコモンレール5とが必ずしも直接的につながっている必要はなく、コモンレール5の燃料が増圧制御室75に供給される状態が形成されていればよい。また同様に、増圧制御室75と、燃料タンク1とが必ずしも直接的につながっている必要はなく、増圧制御室75の燃料を燃料タンク1に排出できる状態が形成されていればよい。本実施形態においては、増圧制御室75は第2三方弁通路79、第1三方弁通路78、ピストン室73及び供給通路6を介してコモンレール5と連結され、増圧制御室75は第2三方弁通路79及びリターン通路10を介して燃料タンク1と連結される。
図2Aに示すように、増圧制御室75がコモンレール5と連結された時は、増圧制御室75にはコモンレール5からの高圧の燃料が供給される。一方で図2Bに示すように、増圧制御室75が燃料タンク1と連結されている時は、増圧制御室75内の燃料が燃料タンク1へと排出され、増圧制御室75の内部の燃料圧力が低下する。
三方弁77は、本実施形態においてはスプール式の電磁弁である。三方弁77に設けられたアクチュエータ17によって、三方弁77が駆動されることにより、増圧装置7が、増圧制御室75とコモンレール5とが連結される状態(図2A)と、増圧制御室75と燃料タンク1とが連結される状態(図2B)とに切り替えられる。アクチュエータ17は、制御ユニット20から出力された信号により制御される。
次に、増圧装置7の動作について図2Aから図3Bを参照して説明する。図3Aは制御ユニット20が増圧装置7に向けて発信する信号の時間変化を表すタイミングチャートであり、図3Bは増圧装置7からインジェクタ9に向けて吐出される燃料の圧力の時間変化を表すタイミングチャートである。
まず、初期状態(時期Tstよりも前の状態)においては、図2Aのように、三方弁77が供給通路6を介してコモンレール5と増圧制御室75とを連結している。この時は、ピストン室73と増圧制御室75とには、コモンレール5から高圧の燃料が供給される。このためピストン室73と増圧制御室75との燃料圧力が釣り合う。そして、ピストン室73に配置されているスプリング76の張力によってピストン72が供給通路6側に配置される。
次に、時期Tstにおいて、制御ユニット20は、増圧装置7を駆動させるための信号である増圧信号を、OFFからONに切り替え、アクチュエータ17を駆動させる。増圧信号がONにされると、増圧制御室75はリターン通路10を介して、燃料タンク1に連結されるので、増圧制御室75の燃料が燃料タンク1に排出されることにより、増圧制御室75の燃料圧力が低下する。その結果、ピストン室73の燃料が増圧制御室75の燃料よりも高圧になるため、ピストン室73に充填された燃料が、ピストン72を噴射通路8側に押す向きに力を与え、ピストン72は噴射通路8側に移動しはじめる。
次いで、図2Bに示されるようにピストン72が噴射通路8側に動き出すと、増圧室74の体積が縮小し、増圧室74に充填された燃料が噴射通路8に吐出される。ここで、ピストン72の大径部の断面積S0は、ピストン72の小径部の断面積S1に比べて大きいため、パスカルの原理に基づいて、増圧室74の燃料圧力P1は、ピストン室73の燃料圧力P0のS0/S1倍に増圧される。以下の説明では、この燃料圧力の比S0/S1を増圧比αと称する。例えば、本実施形態においては、増圧比αは2である。なお、ピストン内通路721には、逆止弁722が設けられているため、増圧室74の縮小に伴い、燃料がピストン室73に逆流することはほぼない。
ところで、ピストン72が噴射通路8側に動き出した瞬間に、噴射通路8へ吐出される燃料の圧力がα倍されるのではなく、噴射通路8へ吐出される燃料の圧力は、時間の経過とともに徐々に増大する。即ち、ピストン72が噴射通路8側に動き出した後、時間の経過とともに徐々にピストン72が加速し、ピストン72の加速に伴って、噴射通路8から吐出される燃料の圧力が増大する。しばらくするとピストン72の加速が終わり、ピストン72は噴射通路8に向けて等速で動く。このようにピストン72が等速で動いている間に噴射通路8から吐出される燃料の圧力が、ピストン室73に供給される燃料の圧力のα倍になる。以下では、制御ユニット20が増圧信号をONに切り替えてから、噴射通路8へ吐出される燃料の圧力がピストン室73に供給される燃料の圧力のα倍になるまでの時間を、加速応答遅れΔTaと呼称する。時期Tstから、増圧信号がOFFに切り替えられる時期Tenまでの期間に、ピストン72は図2Aの状態から図2Bの状態へ移り変わる。
次に、時期Tenにおいて、制御ユニット20は、増圧信号をONからOFFに切り替え、アクチュエータ17の通電を止める。時期Ten以降、増圧制御室75は、ピストン室73を介してコモンレール5に連結されるので、増圧制御室75にコモンレール5から高圧の燃料が供給され、増圧制御室75の燃料圧力が増大する。その結果、ピストン72が増圧室74内の燃料を押し出す力が弱まり、時間の経過に伴って、増圧室74から吐出される燃料の圧力が低下していく。そして、時期Tenからしばらく時間が経過すると、ピストン72の減速が終わり、噴射通路8側に向けた移動がなくなるため、増圧室74内の燃料の増圧が終了する。ピストン72の移動が終了した時に噴射通路8から吐出される燃料の圧力は、ピストン室73に供給される燃料の圧力、すなわち、コモンレール5内の燃料の圧力と等しくなる。以下では、制御ユニット20が増圧信号をOFFに切り替えてから、噴射通路8へ吐出される燃料の圧力がコモンレール5内の燃料の圧力と等しくなるまでにかかる時間を、減速応答遅れΔTdと呼称する。なお、ピストン72が噴射通路8側への移動を終了した時に、ピストン72は最も噴射通路8に近づくので、増圧装置7は図2Bの状態になる。
ピストン72が噴射通路8側への移動を終了した後、さらに時間が経過すると、スプリング76の張力によってピストン72は供給通路6側に移動させられて、最終的に増圧装置7は図2Aの初期状態に戻る。ピストン72が供給通路6側に移動している間に、増圧室74の容積が増大し、増圧室74にはピストン室73からピストン内通路721を介して燃料が再び供給される。以上のように、燃料噴射の時期がやってくるたびに、増圧装置7を駆動させる、すなわちピストン72を往復させることによって、燃料噴射圧を高めることができる。
次に、インジェクタ9から噴射される燃料の圧力の時間変化について、図4を参照しながら説明する。図4は、燃料を増圧することなく燃料を噴射した場合のタイミングチャートである。図4のグラフは、上から順に、燃料を噴射するために制御ユニット20からインジェクタ9に向けて発信される噴射信号、燃料を増圧させるために制御ユニット20から増圧装置7に向けて発信される増圧信号、インジェクタ9内の燃料の圧力である燃料噴射圧Pinj(実線)及び、コモンレール5内の燃料の圧力であるコモンレール圧Pcr(破線)、インジェクタ9から噴射される単位時間当たりの燃料の量(以下、「燃料噴射率Rf」と称する)の時間変化を表している。
先ず燃料を噴射していない、時期τstよりも前の状態においては、コモンレール圧Pcrは、Pcr0の値であったとする。燃料を噴射していない状態においては、噴射信号はOFFの状態であり、インジェクタ9は、増圧装置7を介してコモンレール5と連結されているため、燃料噴射圧Pinj(実線)とコモンレール圧Pcr(破線)は、等しい圧力Pcr0である。
時期τstにおいて、制御ユニット20は噴射信号をOFFからONに切り替える。この時には、インジェクタ9から燃料が噴射され始め、燃料の噴射に伴って、燃料噴射率Rfが増加し、燃料噴射圧Pinj及び、コモンレール圧Pcrは低下する。
ここで、燃料噴射圧Pinjとコモンレール圧Pcrの変化について説明する。まず燃料噴射圧Pinjは、コモンレール5から供給される燃料によって、コモンレール圧Pcrに近づけられる作用と、インジェクタ9から燃料が噴射されることにより、インジェクタ9内の燃料が膨張して燃料噴射圧Pinjが低下する作用と、の2つの作用を受ける。このため、燃料噴射率Rfが増大すると、燃料噴射圧Pinjが低下する作用のみが強くなるため、インジェクタ9の燃料の圧力(燃料噴射圧Pinj)は低下する。他方、コモンレール圧Pcrは、コモンレール5から増圧装置7を介してインジェクタ9に向けて燃料が供給されているため緩やかに低下する。サプライポンプ3からコモンレール5に向けて燃料が供給されていない場合を仮定すると、コモンレール5の燃料の体積は減少し続けるので、コモンレール圧Pcrは時間の経過とともに減少し続ける。
図4から明らかなように、燃料噴射圧Pinjの圧力低下は、コモンレール圧Pcrの圧力低下よりも大きい。この理由は、燃料噴射に伴って燃料が膨張した量が大きいほど、圧力の変動が大きいからである。例えば、インジェクタ9に貯留されている燃料の体積は、コモンレール5に貯留されている燃料の体積よりも小さく、燃料噴射に伴う燃料体積の変化が大きくなるので、燃料噴射圧Pinjの変化は、コモンレール圧Pcrの変化よりも大きくなる。
時期τenにおいて、制御ユニット20は噴射信号をONからOFFに切り替える。この時には、インジェクタ9から噴射される燃料は0に向かって減少していくので、燃料噴射率Rfが小さくなり始める。燃料噴射率Rfが減少すると、燃料噴射圧Pinjが低下する作用が弱くなるため、燃料噴射圧Pinjはコモンレール圧Pcrに向けて増大する。他方、コモンレール圧Pcrは、サプライポンプ3から燃料が供給されていない限りは、低下を続ける。
時期τenからしばらく時間が経過すると、燃料噴射が終了し、燃料噴射率Rfが0になる。この時のコモンレール圧PcrがPcr1であったとすると、燃料噴射圧Pinjは再びコモンレール圧Pcrと同じ圧力になるので、燃料噴射圧PinjもPcr1になる。時期τenから、燃料噴射率Rfが0になるまでの時間を、以下では「噴射応答遅れΔτd」と称する。
次に、燃料噴射圧Pinjに基づいて、実際の燃料噴射量を算出する方法について説明する。制御ユニット20が噴射指令を1回ONにするときに、インジェクタ9から噴射された燃料の量(以下「燃料噴射量Q」と称する。)は、直接的に測定することができないため、燃料噴射圧Pinjを用いて算出する。燃料噴射量Qは、単位時間当たりの燃料噴射量である燃料噴射率Rfを、時間積分した量である。そこで、燃料噴射量Qを求めるためにまず燃料噴射率Rfを算出する。
上述のとおり、燃料噴射率Rfが増大すると、燃料噴射圧Pinjの圧力は低下するのであるから、インジェクタ9に対して供給された燃料の圧力を供給圧力Psupとすると、燃料噴射率Rfは供給圧力Psupから燃料噴射圧Pinjを減算した値にほぼ比例する。上述した例においては、供給圧力Psupはコモンレール圧Pcrと同一であるので、供給圧力Psupは図4の破線によって示される。すなわち、コモンレール圧Pcrから燃料噴射圧Pinjを減算した値によって燃料噴射率Rfが算出できる。
燃料噴射量Qは燃料噴射率Rfを時間積分することにより求められる。例えば、図4においては噴射率のグラフの斜線で囲われた領域の面積である。ところで、噴射率のグラフの斜線で囲われた領域の面積は、供給圧力Psup(破線)と燃料噴射圧Pinj(実線)で囲まれた領域の面積に比例する。したがって、供給圧力Psup(破線)と燃料噴射圧Pinj(実線)で囲まれた領域の面積を算出することにより、燃料噴射量Qを算出することができる。
以上のように、増圧装置7を駆動させることなく燃料を噴射する場合には、供給圧力Psupがコモンレール圧Pcrと等しいため、燃料噴射量Qを燃料噴射圧Pinjから算出することができる。しかしながら、増圧装置7を駆動させながら燃料を噴射する場合には、供給圧力Psupは、コモンレール圧Pcrではなく増圧装置7から吐出された燃料の圧力になる。このような増圧装置7から吐出された燃料の圧力は、増圧装置7の駆動に応じて変動するため、供給圧力Psupを算出することが困難であり、燃料噴射量Qを算出することが困難であった。
次に、図5を参照しながら、増圧装置7を用いて増圧した燃料を噴射する時の動作について説明する。図5は、燃料が噴射される前に増圧が開始され、燃料が噴射された後に増圧が終了する場合のタイミングチャートである。
本実施形態においては、増圧装置7から吐出される燃料の圧力がコモンレール圧Pcrのα倍になってから燃料噴射を開始し、燃料噴射が終了してから、増圧を終了する。つまり、燃料噴射をしている間、供給圧力Psupはコモンレール圧Pcrのα倍になっている。供給圧力Psupは図5の点線で表現され、燃料噴射圧Pinjは、図5の実線で表現される。
燃料噴射圧Pinjは、時期τstにおいて燃料が噴射される直前までは、増圧装置7から吐出される燃料の圧力と等しい。時期τst以降は燃料噴射に伴って燃料噴射圧Pinjが減少し、時期τen以降は燃料噴射圧Pinjが増圧装置7から吐出される燃料の圧力に近づく。図5の場合には、供給圧力Psupはコモンレール圧Pcrのα倍なので、図4と同様に燃料噴射量Qを算出することができる。
ところで、図5の破線は増圧装置7を駆動させることなく燃料を噴射した場合、即ち図4の燃料噴射圧Pinj及び燃料噴射率Rfを表している。図4の斜線部分の面積よりも図5の斜線部分の面積の方が大きいことから、図5のように増圧装置7を駆動させながら燃料を噴射することによってより多くの燃料を噴射できることがわかる。
次に、図6を用いて、燃料噴射が開始した後に増圧装置7を駆動させる2つの例について説明する。図6は、燃料を噴射している間に増圧を行った場合のタイミングチャートである。図6の実線は、噴射信号がONになった後に増圧信号をONにし、その後噴射信号をOFFにした例を示し、図6の一点鎖線は、噴射信号がOFFになったと同時に増圧信号をONにした例を示す。
まず、噴射信号がONになった後に増圧信号をONにし、その後噴射信号をOFFにした場合について説明する。図6の上から4つ目のグラフのうち、点線は供給圧力Psupを表し、実線は燃料噴射圧Pinjを表す。時期τstにおいて燃料噴射が開始されてから、増圧装置7が駆動されるまでは、供給圧力Psupはコモンレール圧Pcrと同じ圧力値になる。本実施形態において、コモンレール圧Pcrは燃料の噴射に伴って緩やかに低下するので、供給圧力Psupも緩やかに低下する。燃料噴射圧Pinjは燃料が噴射されるのに伴って図4のグラフと同じように低下する。
時期Tst1になると、増圧信号がONにされる。この時、コモンレールから供給された燃料が、増圧装置7によって増圧されることにより、増圧装置7から吐出される燃料の圧力である供給圧力Psupは、加速応答遅れΔTaの時間をかけて増大する。その結果、燃料噴射圧Pinjは、供給圧力Psupの増大により増加する作用と、燃料の噴射により減少する作用とを受ける。本実施形態においては、燃料噴射圧Pinjは減少する。
次に時期Tst1+ΔTaになると、供給圧力Psupの増加は止まり、燃料の噴射に起因して、供給圧力Psupは緩やかに低下し始める。
さらに時間が経過し、時期τenになると、噴射信号がOFFになる。供給圧力Psupは引き続き緩やかに低下し、燃料噴射圧Pinjは増圧装置7から高圧の燃料が供給されるため供給圧力Psupに近づくようになる。
燃料噴射が終了する時期τen+Δτdでは、燃料噴射圧Pinjは供給圧力Psupと一致するようになり、インジェクタ9から燃料が噴射されなくなる。最後に、時期τen+Δτdよりも後の、時期Tenにおいて増圧信号がOFFになり、供給圧力Psup及び燃料噴射圧Pinjが増圧前のコモンレール圧Pcrに戻る。
続いて、噴射信号がOFFになったと同時に増圧信号をONにした場合について説明する。図6の二点鎖線は、時期τenにおいて噴射信号をOFFにすると同時に、増圧信号をONにする場合の供給圧力Psupを表し、一点鎖線は同様の場合の燃料噴射圧Pinjを表す。
噴射信号がOFFになったと同時に増圧信号をONにした場合には、時期τenにおいて、噴射信号がOFFになることにより燃料噴射圧Pinjが供給圧力Psupに近づくのと同時に、増圧信号がONになることによって供給圧力Psupが増圧されるので、燃料噴射圧Pinjは、より急激に上昇する。そして、時期τen+Δτdになり、燃料噴射が終了すると、燃料噴射圧Pinjは供給圧力Psupに等しい値になる。
さて、図6の実線と鎖線との比較からわかるように、増圧信号をONにする時期が変わると、供給圧力Psup、燃料噴射圧Pinjの形が変わることにより、燃料噴射率Rfの形も変わる。例えば、燃料噴射率Rfの時間変化を表す図6の一番下のグラフを参照すると、本実施形態における実線のグラフがピークになる時期は、鎖線のグラフがピークになる時期よりも早く、燃料噴射率Rfの形状が変わっていることがわかる。増圧装置7を駆動させる場合に正しく燃料噴射率Rfを算出するためには、供給圧力Psup及び燃料噴射圧Pinjの時間変化に関する波形がわかっていなければならない。ここで、燃料噴射圧Pinjは直接的に計測できることから、燃料噴射率Rfを算出するためには、直接的には計測できない供給圧力Psupを算出することが必要である。
そこで、本実施形態においては、燃料を噴射しない場合の燃料噴射圧Pinjの波形を予め制御ユニット20に記憶させておく。そして、制御ユニット20は記憶された燃料噴射圧Pinjの波形に基づいて供給圧力Psupの波形を算出し、直接的に計測することによって得られた燃料噴射圧Pinjと供給圧力Psupとの差分から、燃料噴射率Rf及び燃料噴射量Qを算出する。以下では、燃料を噴射しない場合の燃料噴射圧Pinjを、「無噴射圧力Pinj_0」と呼称する。図6の上から3つ目のグラフは、時刻τstから時刻τenのすべての時間において、噴射信号がOFFである前提における燃料噴射圧Pinjの時間変化、即ち、無噴射圧力Pinj_0の時間変化を示す。さて、図6の上から3つ目以外のグラフは、噴射信号がONになることが前提のグラフであるのに対し、無噴射圧力Pinj_0のグラフだけは噴射信号が常時OFFであることが前提のグラフである。つまり、無噴射圧力Pinj_0のグラフだけは前提が異なるが、便宜上他のグラフと同列に表記した。
ところで、無噴射圧力Pinj_0と、供給圧力Psupとは相関がある一方で、同一ではない。図7は、図5のように、噴射信号がONになる前に増圧信号がONになり、噴射信号がOFFになった後に増圧信号がOFFになる状況において、無噴射圧力Pinj_0の時間変化と、供給圧力Psupの時間変化とを比較したグラフである。図7の実線は供給圧力Psup、鎖線は無噴射圧力Pinj_0、点線は燃料噴射時の燃料噴射圧Pinjを表している。供給圧力Psupと無噴射圧力Pinj_0とを比較すると、供給圧力Psupは燃料噴射に伴うコモンレール圧Pcrの圧力低下の効果が考慮されているのに対し、無噴射圧力Pinj_0はコモンレール圧Pcrの圧力低下の効果が考慮されていないため、供給圧力Psupは無噴射圧力Pinj_0よりも圧力が小さくなる。
従って、本実施形態において、無噴射圧力Pinj_0に基づいて燃料噴射率Rf及び燃料噴射量Qを算出する場合には、このような無噴射圧力Pinj_0とコモンレール圧Pcrとの差をなくすような補正が行われる。例えば、燃料噴射が終了した時期をτfin、燃料噴射が終了した時期における無噴射圧力Pinj_0と燃料噴射圧Pinjとの差圧を噴射差圧ΔP、燃料が噴射されている期間、即ちτstからτfinまでの時間の長さを噴射期間Δτとする。コモンレール圧Pcrは、時間Δτをかけて一定の速さでΔPだけ圧力が低下したと仮定すると、時期tにおける供給圧力Psupは以下のように表現できる。そして、供給圧力Psupと燃料噴射圧Pinjとの差分を積分することにより、燃料噴射量Qを算出できる。
(1)時期tがτst以下のとき
Psup(t)=Pinj_0(t)
(2)時期tがτst以上、τfin以下のとき
Psup(t)=Pinj_0(t)−ΔP×(t−τst)/Δt
(3)時期tがτfin以上のとき
Psup(t)=Pinj_0(t)−ΔP
さて、無噴射圧力Pinj_0の波形は、噴射信号を切り替える時期と、増圧信号を切り替える時期との時間差に応じて変わる。したがって、本実施形態においては、燃料噴射圧Pinjの波形は、噴射信号と増圧信号の時間差ごとに記憶されている。以下では、噴射信号がOFFからONに切り替えられる時期τstから、増圧信号がOFFからONに切り替えられる時期Tstまでの時間差、即ちTst−τstを、「開始時間差Δtst」と呼称する。同様に、噴射信号がONからOFFに切り替えられる時期τenから、増圧信号がONからOFFに切り替えられる時期Tenまでの時間差、即ちTen−τenを、「終了時間差Δten」と呼称する。
ところで無噴射圧力Pinj_0は、開始時間差Δtst及び終了時間差Δtenだけでなく、コモンレール圧Pcrに応じて変わる。ここで、コモンレール圧Pcrと無噴射圧力Pinj_0とは、比例の関係であるため、コモンレール圧Pcrが変化する場合は、無噴射圧力Pinj_0の波形は、基本的には相似形に変形する。したがって、開始時間差Δtst、終了時間差Δtenに応じた無噴射圧力Pinj_0の波形の変化は、コモンレール圧Pcrに応じた波形の変化よりも複雑であるため、少なくとも開始時間差Δtst、終了時間差Δtenに対応する無噴射圧力Pinj_0を記憶しておくことが好ましい。
図8は、増圧信号と噴射信号の関係を模式的に表現した図である。図8の横軸は、開始時間差Δtstであり、図8の縦軸は終了時間差Δtenを表している。例えば、図8の原点は、開始時間差Δtstが0かつ終了時間差Δtenが0、即ち、増圧信号と噴射信号が同時にOFFからONにされ、増圧信号と噴射信号が同時にONからOFFにされた場合を表す。
図8のグラフは、噴射信号を切り換える時期を基準に、4つの領域に分けられる。第1の領域は、Δtst<0かつΔten>0、即ち、Tst<τstかつTen>τenの領域(図8左上の領域)である。この第1の領域においては、燃料噴射を行っている間は増圧装置7が駆動され続ける状態、すなわち、図5のような状態を表している。以下では、この第1の領域を、全域増圧領域と呼称する。
第2の領域は、Δtst>0かつΔten>0、即ち、Tst>τstかつTen>τenの領域(図8右上の領域)である。この第2の領域においては、燃料噴射が開始された時点では増圧装置7は駆動されていないが、燃料噴射を行っている間に増圧装置7による燃料の増圧が始まる状態、すなわち、図6のような状態を表している。以下では、この第2の領域を、噴射中増圧領域と呼称する。
第3の領域は、Δtst<0かつΔten<0、即ち、Tst<τstかつTen<τenの領域(図8左下の領域)である。この第3の領域においては、燃料噴射が開始される前に増圧信号をONに切り替え、噴射信号がOFFになる前に増圧信号をOFFに切り替える。以下では、この第3の領域を噴射前増圧領域と呼称する。
第4の領域は、Δtst>0かつΔten<0、即ち、Tst>τstかつTen<τenの領域(図8右下の領域)である。この第4の領域においては、燃料噴射が開始された後に増圧信号をONに切り替え、噴射信号をOFFに切り替える前に増圧信号をOFFに切り替える。以下では、この第4の領域を部分増圧領域と呼称する。
本実施形態においては、以上の第1の領域から第4の領域までのそれぞれから選ばれた点と、Δtst=0かつΔten=0、即ち、Tst=τstかつTen=τenとなるような点(以下では、このような点を「学習点」と呼称する)の合計5つの点について、無噴射圧力Pinj_0を記憶する。図9は、本実施形態における学習点(点aから点e)を表した模式図である。なお、点aから点eのいずれにも該当しない点の無噴射圧力Pinj_0は、その点に最も近い学習点の無噴射圧力Pinj_0を補間することによって算出できる。
次に、本発明の第1実施形態における制御について説明する。図10は第1実施形態において、燃料噴射を行うためのルーチンを表すフローチャートである。このフローチャートは、一定の周期で繰り返し実行される。
ステップS101において、噴射要求があったか否かを判別する。噴射要求があった時には、燃料噴射を行うためステップS102に進む。噴射要求がなかった時には、制御ユニット20は燃料噴射を行うことなく、本ルーチンを終了する。
ステップS102において、制御ユニット20は、内燃機関100の負荷(以下では「機関負荷」と称する。)Kl、内燃機関100の回転数(以下では「機関回転数」と称する。)Neなどの運転状態に基づいて、サプライポンプ3、増圧装置7、インジェクタ9を制御して燃料を噴射させる通常噴射制御を実施する。この通常噴射制御の詳細については、図11から図14を参照して後述する。ステップS102の制御が終了すると、制御ユニット20は本ルーチンの処理を終了する。
次に、本発明の第1実施形態における通常噴射制御について説明する。図11は、本発明の第1実施形態における通常噴射制御のルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、ステップS102が実行されるたびに呼び出される。ここで、通常噴射制御とは、内燃機関100に動力を与え、車両を走行させるための燃料噴射を実施するための制御である。
ステップS103において、燃料噴射に関する設定が行われた場合にセットされる噴射設定フラグFsetが、セットされているか否かを判別する。噴射設定フラグFsetがセットされている場合には、燃料噴射の設定は不要なので、ステップS106に進む。噴射設定フラグFsetがセットされていない場合には、燃料噴射の設定が必要なので、ステップS104に進む。なお、噴射設定フラグFsetの初期状態はリセット状態である。
ステップS104において、制御ユニット20は、機関負荷Klに応じた燃料噴射量を噴射する通常噴射を実施するべく、コモンレール圧Pcr、増圧装置7、インジェクタ9の動作を設定する通常噴射設定処理を実施する。この通常噴射設定処理の詳細については、図12を参照して後述する。本実施形態において、ステップS104における燃料噴射の設定は、燃料噴射が行われるごとに1回だけ行われる。
ステップS105において、制御ユニット20は、燃料の噴射の設定が終了したときにセットされる、噴射設定フラグFsetをセットする。噴射設定フラグFsetがセットされることにより、本ルーチンが実行されるたびに、燃料噴射が設定されることが無くなる。
ステップS106において、制御ユニット20は、クランク角センサ16から得られたクランク角tを計測し、ステップS107において、制御ユニット20は、クランク角tを参照して、増圧信号及び噴射信号を出力するか否かを判別し、コモンレール圧Pcr_tに基づいて、サプライポンプ3を制御する。本実施形態においては、クランク角tがτstになった時には、噴射信号をONに切り替え、τenになった時には、増圧信号をOFFに切り替える。同様に、クランク角tがTstになった時には噴射信号をONに切り替え、クランク角tがTenになった時には噴射信号をOFFに切り替える。
ステップS108において、制御ユニット20は、噴射圧センサ91から得ることができる、燃料噴射圧の実測値Pinj_sに基づいて、燃料噴射圧Pinj(t)を算出し、記録する。本実施形態においては、制御ユニット20は、クランク角tごとに燃料噴射圧Pinj(t)を記憶する。
ステップS109において、制御ユニット20は、ステップS106において得られたクランク角tと、予め定められている燃料噴射の終了時期を表す噴射終了時期τfinと、に基づいて、燃料噴射が終了したか否かを判別する。クランク角tが噴射終了時期τfinよりも長くなり、燃料の噴射が終了したと判別できた場合には、ステップS112に進み、クランク角tが噴射終了時期τfin以下であり、燃料の噴射が継続されていると判別できた場合には、本ルーチンの処理を終了する。
ステップS110において、制御ユニット20は実際にインジェクタ9から噴射された燃料の量である、燃料噴射量Qを算出する。本実施例における具体的な燃料噴射量Qの求め方は、後程説明する。
ステップS111において、制御ユニット20は噴射設定フラグFsetをリセットする。即ち、燃料の噴射が終わったので、制御ユニット20は、次回の燃料の噴射については新たに噴射を設定し直す。ステップS111の処理が終了すると、制御ユニット20は本ルーチンの処理を終了する。
次に、本発明の第1実施形態における、通常噴射設定処理について説明する。図12は、通常噴射設定処理に関するルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、図11のステップS104が実行されるたびに呼び出される。
ステップS112において、アクセルペダル踏込量センサ15によって計測されたアクセルペダルの踏込量に基づいて、機関負荷Klを計測する。さらに、制御ユニット20は、クランク角センサ16によって計測されたクランク角センサの回転数に基づいて、機関回転数Neを計測する。
ステップS113において、制御ユニット20は、ステップS104において計測した、機関負荷Klに基づいて、目標とする燃料噴射量(以下では「要求噴射量」と称する)Qvを算出する。
ステップS114において、制御ユニット20は、増圧装置7を駆動させるか否かを判別する。制御ユニット20は、機関回転数Ne及び要求噴射量Qvに対応して、増圧装置7を駆動させる領域が設定されたマップを記憶している。図13は、増圧装置7を駆動させる領域が設定されたマップの例である。本実施形態においては、増圧装置7を駆動させることなく噴射できる燃料の量が、要求噴射量Qvよりも少ない領域は、増圧装置7を駆動させるようにマップが設定されている。本実施形態においては、機関回転数Neとの要求噴射量Qvが、図13の斜線部によって表現されている領域Aに含まれる場合には、増圧装置7を駆動させ、図13の領域Aに含まれない場合には、増圧装置7を駆動させない。ステップS114において、増圧装置7を駆動させる場合には、増圧装置7を駆動させるためにステップS115に進み、増圧装置7を駆動させない場合には、ステップS116に進む。
ステップS115において、制御ユニット20は、機関回転数Ne及び要求噴射量Qvに基づいて、コモンレール圧Pcrの目標値である、目標コモンレール圧Pcr_t、開始時間差Δtst及び終了時間差Δtenを読み込む。本実施形態においては、制御ユニット20は、機関回転数Ne及び要求噴射量Qvに対応した、コモンレール圧Pcrと、開始時間差Δtstと、終了時間差Δtenとを記憶する。この記憶されたコモンレール圧Pcrと、開始時間差Δtstと、終了時間差Δtenの条件に基づいて、燃料を噴射した場合に噴射される燃料噴射量Qを、「記憶燃料噴射量Qm」と称する。
ここで、本実施形態における記憶燃料噴射量Qmについて詳しく説明する。まず、制御ユニット20は、ある機関回転数Ne及び要求噴射量Qvに対応して、理想的な(例えば、劣化しておらず、モデル通りに駆動する)増圧装置7を用いて燃料を増圧したときの記憶燃料噴射量Qmが予め記憶されている。本実施形態において、記憶燃料噴射量Qmを算出するための基準となるコモンレール圧Pcrの条件、噴射信号の条件、増圧信号7の条件(以下、「基準噴射条件」と称する)は以下のように定義する。
・基準となるコモンレール圧Pcrb。
・噴射信号をOFFからONに切り替える基準となる時期τstb。
・噴射信号をONからOFFに切り替える基準となる時期τenb。
・増圧信号をOFFからONに切り替える基準となる時期Tstb。
・増圧信号をONからOFFに切り替える基準となる時期Tenb。
ところで、実際の増圧装置7は、使用に伴う劣化による特性の変化、個体差による特性の違いに起因して、理想の増圧装置7とは相違する。このため、上述した基準噴射条件に基づいて燃料を噴射したとしても、実際の燃料噴射量Qと記憶燃料噴射量Qmとの間に誤差が生じる。この誤差を低減するために、増圧装置7毎に、基準噴射条件が補正される。このような基準噴射条件を補正するための補正値を「補正値K」と称し、実際の燃料噴射量を「実測燃料噴射量Qr」と称する。
本実施形態においては、増圧装置7の特性が変わると、燃料噴射時の圧力波形が変わる。上述のとおり、圧力波形は、コモンレール圧Pcr、開始時間差Δtst、終了時間差Δtenごとに相違する。したがって、圧力波形と同じように、増圧装置7の特性の変化を補正するための補正値Kも、コモンレール圧Pcr、開始時間差Δtstと終了時間差Δtenごとに相違するため、補正値Kはコモンレール圧Pcr、開始時間差Δtstと終了時間差Δtenごとに記憶される。
ところで、本実施形態においては、噴射信号をONからOFFに切り替える基準となる時期τenbのみが補正される。即ち、補正値をKと表現すると、噴射信号をONからOFFに切り替える時期τenは、τen=τenb×Kと表現される。以上をまとめると、本実施形態においては、増圧装置7、機関回転数Ne及び要求噴射量Qvごとに、記憶燃料噴射量Qmと、基準噴射条件(Pcrb、τstb、τenb、Tstb、Tenb)が記憶されている。そして、(Pcrb、Δtst=Tstb−τstb、Δten=Tenb−τenb)ごとに補正値Kが記憶されている。なお、τstb、τenb、Tstb、Tenbの少なくとも一つを補正すれば、実測燃料噴射量Qrと記憶燃料噴射量Qmとを近づけることができる。
図12のフローチャートの説明に戻り、ステップS115において、制御ユニット20は、要求噴射量Qvと記憶燃料噴射量Qmとが一致するような、コモンレール圧Pcr、開始時間差Δtst、及び終了時間差Δtenを設定する。本実施形態においては、制御ユニット20は、Pcr=Pcrb、Δtst=Tstb−τstb、Δten=Tenb−τenb×Kに設定する。制御ユニット20が、ステップS115を終了すると、本ルーチンを終了し、ステップS105に戻る。
ステップS116において、制御ユニット20は、目標コモンレール圧Pcr_tを読み込む。ステップS116においては、増圧装置7は駆動されることなく燃料が噴射されるので、Tst及びTenは設定されていない。本実施形態においては、目標コモンレール圧Pcr_tを、機関回転数Ne及び要求噴射量Qvに対応するコモンレール圧Pcrbに設定する。そして、増圧装置7を駆動させることなく、要求噴射量Qvの燃料を噴射できるような、τst及びτenを設定する。噴射信号をOFFからONにする時期τst、及び噴射信号をONからOFFにする時期τenを設定する。制御ユニット20がステップS116の処理を終了すると、本ルーチンを終了し、ステップS105に戻る。なお、制御ユニット20は、コモンレール圧Pcrを制御することによって、燃料噴射量Qを制御しても良い。
最後に、本発明の第1実施形態における、実測燃料噴射量Qrの算出方法について説明する。図14は、本発明の第1実施形態における制御ユニット20が実測燃料噴射量Qrを算出するためのルーチンを表したフローチャートである。本ルーチンは、ステップS110が実行されるたびに呼び出される。
ステップS117において、制御ユニット20は、クランク角tごとに予め記憶されている供給圧力Psup(t)の値を読み込む。続いて、ステップS118において、制御ユニット20は、クランク角tごとに記憶した燃料噴射圧Pinj(t)の値を読み込む。即ち、ステップS117及びステップS118においては、クランク角tに対する供給圧力Psupと燃料噴射圧Pinjの値を読み込む。
ステップS119において、制御ユニット20は、クランク角tごとに供給圧力Psup(t)から燃料噴射圧Pinj(t)を減算し、比例係数jを乗じることにより、燃料噴射率Rf(t)を算出する。すなわち、燃料噴射率Rfの波形を算出する。ところで、本実施形態において供給圧力Psupは、燃料の噴射を行わない時の燃料噴射圧Pinjに基づいて定められる波形を補正することにより得られた値である。したがって、供給圧力Psupから燃料噴射圧Pinjを減算するということは、実質的には、燃料噴射を行わない場合に測定された無噴射圧力Pinj_0から、燃料噴射を行う場合に測定された燃料噴射圧Pinjを減算することである。なお、本実施形態において、燃料噴射率Rfを算出するための係数jは、予め実験的に求められた定数である。
ステップS120において、制御ユニット20は、クランク角tについて燃料噴射率Rf(t)を積分することにより、実測燃料噴射量Qrを算出する。実測燃料噴射量Qrの算出が終了すると、制御ユニット20は本ルーチンを終了し、図11のステップS111に進み、図11のルーチンも終了する。
以上のように、本発明の第1実施形態によると、内燃機関100は、燃料を噴射するインジェクタ9(燃料噴射装置)と、インジェクタ9(燃料噴射装置)の上流に設けられ、インジェクタ9(燃料噴射装置)に供給される燃料を増圧する増圧装置7と、を備える。このような内燃機関100を制御する制御ユニット20(制御装置)は、インジェクタ9(燃料噴射装置)が燃料を噴射することなく、増圧装置7が燃料を増圧させる場合の、インジェクタ9(燃料噴射装置)内の燃料の圧力を無噴射圧力Pinj_0(t)とする。増圧装置7の駆動に伴って、インジェクタ9(燃料噴射装置)による燃料噴射を行う場合の、インジェクタ9(燃料噴射装置)内の燃料の圧力を燃料噴射圧Pinj(t)とする。この場合に、制御ユニット20は、無噴射圧力Pinj_0(t)と燃料噴射圧Pinj(t)と、の差分に基づいて、実際の燃料噴射量である実測燃料噴射量Qrを算出する。
以上のように、本発明の第1実施形態によると、燃料を噴射するのと同時に燃料噴射圧Pinj(t)を計測し、予め記憶してあった供給圧力Psup(t)との差分を算出することにより、実測燃料噴射量Qrを算出する。この結果、増圧装置7が適用された内燃機関100であっても、精度よく燃料噴射量Qを求めることができる。
また、本発明の第1実施形態によると、制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、コモンレール圧Pcr(増圧装置7に供給される燃料の圧力)と、インジェクタ9(燃料噴射装置)の燃料噴射時期τstbまたは燃料噴射時期τenbと、増圧装置7の増圧時期Tstbまたは増圧時期Tenbとに基づいて定められた燃料噴射量である、記憶燃料噴射量Qmを記憶している。そして、実測燃料噴射量Qr(実燃料噴射量)と、記憶燃料噴射量Qmとが近づくように、時期τstb、時期τenb、時期Tstb、時期Tenb(燃料噴射時期または増圧時期)の少なくとも一方を、補正値Kを用いて補正する。そして、制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、補正されたτstbまたはτenb(燃料噴射時期)に基づいてインジェクタ9(燃料噴射装置)を制御するか、または、補正されたTstbまたはTenb(増圧時期)に基づいて増圧装置7を制御する。
以上のように、本発明の第1実施形態によると、要求噴射量Qvに実測燃料噴射量Qrが近づくように、増圧装置7またはインジェクタ9が補正されるので、燃料噴射量Qの制御精度が高まる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して説明する。本発明の第1実施形態との違いは、第2実施形態は内燃機関100がアイドル運転状態である場合には、制御ユニット20が記憶している、記憶燃料噴射量Qmだけの燃料を噴射するための、増圧時期または噴射時期の補正値Kを制御ユニット20が更新する点である。
まず、本発明の第2実施形態に関する噴射制御について説明する。図15は第2実施形態に関する噴射制御のルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、一定期間ごとに周期的に実行される。
ステップS201において、制御ユニット20は、補正値Kの更新が必要な場合に、他ルーチンから出力される学習要求があるか否かを判別する。学習要求がある場合には、補正値Kを更新するためにステップS202に進み、学習要求が無い場合には、通常通りの燃料噴射を行うためにステップS101に進む。ステップS101以降は、第1実施形態と同様であるため、以下では説明を省略する。なお、本実施形態においては、学習要求は車両の走行距離が予め定められた距離に到達したときに制御ユニット20によって発信される。
ステップS202において、制御ユニット20は運転状態、すなわち、機関負荷Kl及び機関回転数Neを計測し、さらに機関負荷Kl及び機関回転数Neに基づいて、要求噴射量Qv及び目標コモンレール圧Pcr_tを算出する。そして、ステップS203において、制御ユニット20はステップS202において取得した機関負荷Kl、機関回転数Ne、要求噴射量Qv及び目標コモンレール圧Pcr_tに基づいて、内燃機関100がアイドル運転状態であるか否かを判別する。本実施形態においては、機関負荷Klがあらかじめ定められた値よりも小さく、かつ、機関回転数Neがあらかじめ定められた値よりも小さい場合には、アイドル運転状態であると判別する。制御ユニット20が内燃機関100はアイドル運転状態であると判別した場合には、補正値Kを更新するためにステップS204に進み、制御ユニット20が内燃機関100はアイドル運転状態ではないと判別した場合には、補正値Kは更新できないと判別し、ステップS101に進む。
ステップS204において、制御ユニット20は、補正値Kを更新するための学習制御を行う。特に、ステップS204は、アイドル運転状態の時に実行されるので、ステップS204を「低負荷学習制御」と称する。ステップS204の詳細については、次のフローチャートを参照しながら説明する。制御ユニット20がステップS204の処理を終了すると、本ルーチンの処理を終了する。
図16は、本発明の第2実施形態における、低負荷学習制御のルーチンを表すフローチャートである。図16のフローチャートは、ステップS204が実行されるたびに呼び出される。
ステップS205において、制御ユニット20は、燃料噴射圧Pinjが測定されたことを示す噴射測定フラグFinjがリセット状態か否かを判別する。噴射測定フラグFinjがリセット状態である場合には、燃料噴射圧Pinjを測定するためにステップS206に進み、噴射測定フラグFinjがセット状態である場合には、燃料噴射圧Pinjの測定が不要と判別し、ステップS216に進む。なお、噴射測定フラグFinjの初期状態は、リセット状態である。
ステップS206において、制御ユニット20は、燃料噴射の設定が終わっている場合にセットされる噴射設定フラグFsetがリセット状態か否かを判別する。噴射設定フラグFsetがリセット状態である場合には、制御ユニット20は燃料噴射の設定が終わっていないと判別し、ステップS210に進む。噴射設定フラグFsetがセット状態である場合には、制御ユニット20は燃料噴射の設定が終わったと判別し、ステップS210に進む。
ステップS207において、制御ユニット20は、次に更新する学習点である点Nlearnを読み込む。例えば、本実施形態においては、制御ユニット20は図9の学習点aからeのうち、一つの学習点を選択する。
ステップS208において、制御ユニット20は、点Nlearnに対応する時期で増圧装置7を駆動し、点Nlearnに対応する時期で燃料を噴射するように、増圧装置7の駆動時期及び燃料噴射時期を設定する。補正値Kを更新するための燃料噴射を、以下では「学習噴射」と称する。そして、ステップS209において、制御ユニット20は燃料噴射の設定が終了したので、噴射設定フラグFsetをセットする。
ステップS210において、制御ユニット20は、クランク角センサ16によってクランク角tを計測する。そして、ステップS211において、制御ユニット20はクランク角tとステップS208において設定された時期と、に基づいて、増圧装置7及びインジェクタ9を制御する。さらに、ステップS212において、制御ユニット20は、噴射圧センサ91によって燃料噴射圧Pinj(t)を計測し、記憶する。
ステップS213において、制御ユニット20は、燃料噴射の終了時期を表す噴射終了時期τfinに基づいて、燃料噴射が終了したか否かを判別する。クランク角tが噴射終了時期τfinよりも長くなり、燃料の噴射が終了したと判別できた場合には、ステップS214に進み、クランク角tが噴射終了時期τfin以下であり、燃料の噴射が継続されていると判別できた場合には、本ルーチンの処理を終了する。
ステップS214において、制御ユニット20は燃料噴射が終わったので、噴射設定フラグFsetをリセットし、次回に燃料噴射を行う場合には、燃料噴射の設定が行われるようにする。次いで、ステップS215において、制御ユニット20は、燃料噴射圧Pinj(t)の計測及び記憶が終了したので、噴射測定フラグFinjをセットする。
ステップS216において、制御ユニット20は、燃料噴射圧Pinj(t)をセットしてから、アイドル運転状態が維持されたまま燃料が噴射された回数(以下では、「アイドル維持回数Nwait」と呼称する)をクリアする。本実施形態においては、燃料噴射圧Pinj(t)を測定した後に、燃料を噴射することなく増圧装置7を駆動させる場合のインジェクタ9内の燃料圧力を測定する。しかし、燃料噴射圧Pinj(t)を測定した直後はコモンレール5内の燃料の圧力が下がってしまうため、燃料を噴射することなく増圧装置7を駆動した場合のインジェクタ9が正しく測定できないことがある。そこで、本実施形態においては、ステップS212において燃料噴射圧Pinj(t)を測定した後に、しばらく時間が経過してから、噴射することなく増圧装置7を駆動させる場合のインジェクタ9の圧力を測定する。ステップS216において用いられたアイドル維持回数Nwaitは、燃料噴射圧Pinj(t)を測定した後に経過した時間を測定するために用意された変数であり、アイドル運転状態が維持されたまま燃料が噴射される毎にインクリメントされる。ステップS216の処理が終了すると、制御ユニット20は本ルーチンの処理を終了する。
ステップS217において、制御ユニット20は燃料噴射圧Pinj(t)を測定してから、十分な時間が経過したか否かを判別するために、アイドル維持回数Nwaitが、予め定められた定数である、最大アイドル維持回数Nwmax未満か否かを判別する。アイドル維持回数Nwaitが最大アイドル維持回数Nwmax未満である場合には、制御ユニット20は、燃料噴射圧Pinj(t)を測定してから十分な時間が経過していないと判別し、ステップS218に進む。アイドル維持回数Nwaitが最大アイドル維持回数Nwmax以上である場合には、制御ユニット20は、燃料噴射圧Pinj(t)を測定してから十分な時間が経過したと判別し、燃料を噴射しない場合のインジェクタ9内の燃料の圧力を測定するためにステップS226に進む。
ステップS218において、制御ユニット20は噴射設定フラグFsetがリセット状態か否かを判別する。噴射設定フラグFsetがリセット状態の場合は、燃料噴射の設定を行うためステップS219に進み、噴射設定フラグFsetがセットされている場合は、燃料噴射の設定を省略してステップS221に進む。
ステップS219において、制御ユニット20はアイドル運転を行うための燃料噴射の設定を行う。即ち、制御ユニット20はアイドル運転を維持するための要求噴射量Qvを算出し、要求噴射量Qvに対応する目標コモンレール圧Pcr_t及び燃料噴射時期を設定する。アイドル運転を維持する場合には、要求噴射量Qvは比較的小さいため、増圧装置7を用いて燃料の圧力を高めることはせず、サプライポンプ3及びインジェクタ9が制御される。ステップS219において、制御ユニット20が燃料噴射の設定を実行すると、ステップS220において、制御ユニット20は噴射設定フラグFsetをセットする。
ステップS221において、制御ユニット20はクランク角tを計測する。その後、ステップS222において、制御ユニット20は、ステップS219において設定した時期と、クランク角tとに基づいて、燃料を噴射する。ステップS219における燃料噴射によって、内燃機関100はアイドル運転が維持される。
ステップS223において、制御ユニット20は燃料の噴射が終了したか否かを判別するため、クランク角tが噴射終了時期τfinより大きいか否かを判別する。クランク角tが噴射終了時期τfinよりも大きい場合は、ステップS224において噴射設定フラグFsetをリセットした後、ステップS225においてアイドル維持回数Nwaitをインクリメントし、本ルーチンの処理を終了する。クランク角tが噴射終了時期τfin以下である場合は、制御ユニット20は燃料噴射が継続中であると判別し、本ルーチンの処理を終了する。
ステップS226において、制御ユニット20は噴射設定フラグFsetがリセット状態であるか否かを判別する。制御ユニット20は、噴射設定フラグFsetがセットされていない場合には、燃料噴射を設定するためステップS227に進み、噴射設定フラグFsetがセットされている場合には、燃料噴射の設定を省略して、ステップS232に進む。
ステップS227において、制御ユニット20は点Nlearnに対応する時期で増圧装置7を駆動し、燃料を噴射しないように、増圧装置7の駆動時期を設定する。補正値Kを更新するための燃料の増圧を、以下では「学習増圧」と称する。そして、ステップS228において、制御ユニット20は燃料増圧の設定が終了したので、噴射設定フラグFsetをセットする。
ステップS229において、制御ユニット20はクランク角tを計測する。その後、ステップS230において、制御ユニット20は、ステップS227において設定した時期と、クランク角tとに基づいて、燃料を増圧する。次いで、ステップS231において制御ユニット20はインジェクタ9内の燃料の圧力を測定し、記憶する。以下では、クランク角がtである時に、燃料を噴射することなく燃料を増圧した場合に噴射圧センサ91によって検出された燃料の圧力を、「無噴射圧力Pinj_0(t)」と呼称する。
ステップS232において、制御ユニット20はクランク角tが噴射終了時期τfinより大きいか否かを判別する。クランク角tが噴射終了時期τfinより大きい場合には、補正値Kを更新するためにステップS233に進み、クランク角tが噴射終了時期τfin以下である場合には、制御ユニット20は燃料噴射が継続中と判別し、本ルーチンの処理を終了する。
ステップS233において、燃料の噴射が終了したので、制御ユニット20は噴射設定フラグFsetをリセットする。その後、ステップS234において、制御ユニット20は補正値Kを更新する。ステップS234については後ほど図17を参照しながら説明する。ステップS235においては、制御ユニット20は噴射測定フラグFinjをリセットし、初期状態にもどす。
ステップS236において、制御ユニット20は、点Nlearnにおける補正値Kの更新が終了したので、点Nlearnをインクリメントする。即ち、次に本ルーチンが呼び出される時には、ステップS207において別の学習点が選択されることになる。次に、ステップS237において、制御ユニット20は、点Nlearnが、学習点の総数である学習点総数Nlmaxより大きいか否かを判別する。例えば、本実施形態においては、学習点はaからeまで合計5個あるので、学習点総数Nlmaxは5である。ステップS237において、点Nlearnが学習点総数Nlmaxより大きい場合は、すべての学習点における補正値Kの更新が終了したことになるので、ステップS238において点Nlearnを1にして初期状態にし、本ルーチンを終了する。ステップS237において、点Nlearnが学習点総数Nlmax以下である場合には、制御ユニット20は補正値Kの更新が終わっていない学習点が残っていると判別し、本ルーチンの処理を終了する。
最後に本発明の第2実施形態における、補正値Kを更新するための制御について説明する。図17は、本発明の第2実施形態における補正値Kの更新を行うためのルーチンを表すフローチャートである。図17のルーチンは、図16のフローチャートのステップS234が実行されるたびに呼び出される。
ステップS239において、制御ユニット20はステップS231において記憶した燃料噴射圧Pinj_0(t)及び、ステップS212において記憶した燃料噴射圧Pinj(t)を読み込む。即ち、燃料噴射圧Pinj0及び燃料噴射圧Pinjの波形を読み込む。
ステップS240において、制御ユニット20は燃料の噴射によって生じるコモンレール圧Pcrの圧力低下である、噴射差圧ΔPを算出するため、燃料噴射が終わったときの燃料噴射圧Pinj_0と、燃料噴射圧Pinjとの差圧を算出する。即ち、ΔP=Pinj_0(τfin)−Pinj(τfin)である(図7参照)。
ステップS241において、制御ユニット20は噴射差圧ΔPに基づいて燃料噴射圧Pinj_0(t)を補正することにより、供給圧力Psup(t)を算出する。本実施形態における供給圧力Psupの算出方法は、上述のとおりであるので、ここでは説明を省略する。なお、本実施形態においては、制御ユニット20は通常噴射時にステップS114で使用するための供給圧力Psup(t)を記憶している。
ステップS242において、制御ユニット20は供給圧力Psup(t)に基づいて燃料噴射率Rf(t)を算出し、ステップS243において、制御ユニット20は燃料噴射率Rf(t)を時間に関して積分することにより、実測燃料噴射量Qrを算出する。
ステップS244において、制御ユニット20は要求噴射量Qvと実測燃料噴射量Qrとの比である実測増量比Rrを算出する。本実施形態において、内燃機関100はアイドル運転中であるため、通常は増圧装置7を駆動させない。したがって、アイドル運転中の要求噴射量Qvは、増圧装置7を駆動させることなく燃料を噴射した場合の燃料噴射量である。その一方で、ステップS243において算出された実測燃料噴射量Qrは、増圧装置7を駆動しながら燃料噴射をした場合の燃料噴射量である。つまり、増圧装置7の駆動に関する前提が相違するため、要求噴射量Qvと実測燃料噴射量Qrとを直接比較することによって、実測燃料噴射量Qrの誤差を算出することができない。したがって、本実施形態においては、増圧装置7を駆動させない場合の燃料噴射量と、増圧装置7を駆動させた場合の燃料噴射量との比である、燃料噴射量Qの増量比を、記憶された増量比と比較することによって、燃料噴射量Qrの誤差を算出する。ステップS244において、制御ユニット20は、要求噴射量Qvと実測燃料噴射量Qrとの比を算出し、この要求噴射量Qvと実測燃料噴射量Qrとの比を、「実測増量比Rr」と呼称する。
次いで、ステップS245において、制御ユニット20は、学習点ごとに記憶されている、増圧装置7を駆動させることに起因する燃料圧力の増加比率である、記憶増量比Rmを読み込む。
ステップS246において、制御ユニット20は実測増量比Rrが、記憶増量比Rmと予め定められた許容範囲Eとの差分よりも小さいか否かが判別される。実測増量比Rrが、記憶増量比Rmと許容範囲Eとの差分よりも小さい場合は、実測燃料噴射量Qrが記憶燃料噴射量Qmよりも小さいために補正が必要と判別し、ステップS247に進む。実測増量比Rrが、記憶増量比Rmと許容範囲Eとの差分以上である場合は、ステップS248に進む。
ステップS247において、制御ユニット20は補正値Kを増加させる補正をする。本実施形態においては、上述のとおり噴射信号をONからOFFに切り替える時期τenを補正値Kによって補正している。制御ユニット20が補正値Kを大きくするということは、τenが大きくなるということであり、即ち、実測燃料噴射量Qrが増大するということである。したがって、補正値Kを大きくすることによって、実測燃料噴射量Qrを記憶燃料噴射量Qmに近づけることができる。本実施形態においては、補正値KをΔKだけ増大させる。本実施形態においては、ΔKの値は予め定められた値である。ステップS247の処理が終了すると、制御ユニット20は本ルーチンを終了する。
ステップS248において、制御ユニット20は実測増量比Rrが、記憶増量比Rmと許容範囲Eとの合計値よりも大きいか否かが判別される。実測増量比Rrが、記憶増量比Rmと許容範囲Eとの合計値よりも大きい場合は、実測燃料噴射量Qrが記憶燃料噴射量Qmよりも大きいために補正が必要と判別し、ステップS249に進む。実測増量比Rrが、記憶増量比Rmと許容範囲Eとの合計値以下の場合は、制御ユニット20は、補正は不要と判別し、本ルーチンの処理を終了する。
ステップS249において、制御ユニット20は補正値Kを減少させる補正をする。制御ユニット20が補正値Kを小さくするということは、τenが小さくなるということであり、即ち、実測燃料噴射量Qrが減少するということである。したがって、補正値Kを小さくすることによって、実測燃料噴射量Qrを記憶噴射量Qmに近づけることができる。本実施形態においては、補正値KをΔKだけ減少させる。本実施形態においては、ΔKの値は予め定められた値である。ステップS249の処理が終了すると、制御ユニット20は本ルーチンを終了する。
以上説明した本実施形態における制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、インジェクタ9(燃料噴射装置)から燃料を噴射させるために、噴射信号をOFFからONに切り替え、インジェクタ9(燃料噴射装置)から燃料の噴射を止めさせるために、噴射信号をONからOFFに切り替える。制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、増圧装置7に燃料を増圧させるために、増圧信号をOFFからONに切り替え、増圧装置7に燃料の増圧を止めさせるために、増圧信号をONからOFFに切り替える。そして、噴射信号がOFFからONに切り替えられる時期τstと、増圧信号がOFFからONに切り替えられる時期Tstとの時間差を開始時間差Δtstと称し、噴射信号がONからOFFに切り替えられる時期τenと増圧信号がONからOFFに切り替えられる時期Tenとの時間差を終了時間差Δtenと称する。この場合、本発明の第2実施形態によると、制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、コモンレール圧Pcr(増圧装置7に供給される燃料の圧力)と、開始時間差Δtstと、終了時間差Δtenごとに、記憶燃料噴射量Q及び補正値Kを記憶する。そして、制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、コモンレール圧Pcr(増圧装置7に供給される燃料の圧力)と、開始時間差Δtstと終了時間差Δtenごとに、実測燃料噴射量Qr(実燃料噴射量)を算出する。制御ユニット20(内燃機関の制御装置)は、算出された実測燃料噴射量Qr(実燃料噴射量)と記憶燃料噴射量Qmとに基づいて、補正値Kを更新する。
このような第2実施形態においては、増圧装置7等の特性が変化した場合であっても、補正値Kが更新されることにより、制御精度の低下を抑制できる。
また、本発明の第2実施形態において、補正値Kは、噴射信号がONからOFFに切り替えられる時期τenを補正するための補正値Kである。燃料噴射を終了し始める時期τenを補正することにより、燃料を供給する時間を直接的に補正できるので、直接的に燃料供給量を制御できる点で、増圧期間(TstまたはTen)を制御する場合に比べて、制御精度が高まる。さらに、燃料噴射を開始し始める時期τstを補正する場合に比べて、燃料噴射を終了し始める時期τenを補正すると、燃費に対する影響を小さくできる。
また、本発明の第2実施形態においては、制御ユニット20は内燃機関100がアイドル運転状態である時に、無噴射圧力Pinj_0(t)及び燃料噴射圧Pinj(t)(噴射圧力)をそれぞれ測定する。そして、測定された燃料噴射圧Pinj(t)(噴射圧力)及び無噴射圧力Pinj_0(t)との差分に基づいて、補正値Kを更新する。アイドル運転状態においては、車両の走行に影響を与えることなく、補正値Kを更新するための燃料噴射及び燃料の増圧を行うことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態と第2実施形態との差異は、第2実施形態は内燃機関100がアイドル運転状態の時に限り補正値Kを更新していたが、第3実施形態は内燃機関100がアイドル運転状態でない場合であっても補正値Kを更新する点である。以下では、第2実施形態と重複する部分の説明は省略する。
図18は、本発明の第3実施形態における、燃料噴射制御のルーチンを表すフローチャートである。第3実施形態において、制御ユニット20は、第2実施形態における図14のルーチンの代わりに、本ルーチンを実行する。制御ユニット20は、本フローチャートを一定の周期で繰り返し実行する。
ステップS201からステップS202は、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。ステップS203において、制御ユニット20は内燃機関100がアイドル運転中であるか否かを判別する。内燃機関100がアイドル運転中である場合には、機関負荷Klが低い領域における補正値Kを更新するためにステップS204へ進む。制御ユニット20はステップS204の処理が終了すると、本ルーチンの処理を終了する。ステップS203において、内燃機関100がアイドル運転中でないと判別した場合には、ステップS101において噴射要求があるか否かを判別し、噴射要求があった場合には、増圧装置7が駆動される領域か否かを判別するため、ステップS301に進む。
ステップS301において、制御ユニット20は内燃機関100の運転状態、即ち、機関回転数Neと要求噴射量Qvとが増圧装置7を用いる領域に含まれるか否かを判別する。本実施形態においては図13のようなマップを用い、機関回転数Neと要求噴射量Qvが図13の斜線部の領域に含まれる場合には、制御ユニット20は増圧装置7を駆動させると判別する。制御ユニット20が増圧装置7を駆動させる場合には、増圧時の燃料噴射圧Pinjを測定するためにステップS302に進み、制御ユニット20が増圧装置7を駆動させない場合には、補正値Kを更新するために増圧装置7を駆動させるのは不可能と判別し、ステップS102において、通常の制御を行う。
ステップS302において、制御ユニット20は機関負荷Klが高い領域における補正値Kを更新するための学習制御を行う。特にステップS302は、機関負荷Klが高いときに実行されるので、ステップS302を「高負荷学習制御」と称する。ステップS302の詳細については、次の図19を参照しながら説明する。制御ユニット20がステップS302の処理を終了すると、本ルーチンの処理を終了する。
図19は、本発明の第3実施形態における、高負荷学習制御のルーチンを表すフローチャートである。図19のフローチャートは、ステップS302が実行されるたびに呼び出される。
ステップS205において、補正値Kを更新するために、ある定められた学習点における燃料噴射圧Pinjが測定された場合にセットされる噴射測定フラグFinjがリセット状態か否かが判別される。噴射測定フラグFinjがリセットされている場合は、燃料噴射圧Pinjを計測するためにステップS206に進み、噴射測定フラグFinjがセットされている場合は、無噴射圧力Pinj_0を測定するためにステップS226に進む。
ステップS206において噴射設定フラグFsetがリセット状態である時には、ステップS207に進み、点Nlearnを読み込み、ステップS303において、制御ユニット20は燃料噴射の設定を行う。ここで、ステップS207において読み込んだ学習点に対応する時期で燃料を噴射し、増圧装置7を駆動させなければならない。増圧装置7を駆動させることによって、燃料の圧力は増圧比α倍になる。このため、コモンレール5の燃料の圧力が増圧比α倍された結果、インジェクタ9には目標の圧力の燃料が供給されるように、制御ユニット20はコモンレール圧Pcr_tを設定する。ステップS303において、燃料噴射に関する設定が終わると、制御ユニット20は噴射の設定が終了したことを示す噴射設定フラグFsetをセットする。ステップS209からステップS215までは、第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
ステップS226において、噴射設定フラグFsetがリセット状態である場合には、増圧装置7を駆動させる時期を設定するために、ステップS304に進む。ステップS304において、制御ユニット20は、燃料を噴射させることなく増圧装置7を駆動させるように、増圧信号をONにする時期及び、増圧信号をOFFにする時期を設定する。ところで、第3実施形態においては、走行時であるため、本来燃料を噴射するべき時期で、噴射することなく増圧装置7を駆動させると、車両の出力が低下し、車両の走行に影響するおそれがある。したがって、本実施形態においては、ステップS304において、増圧装置7の駆動による車両への影響を小さくするために、クランク角tが本来燃料噴射を行う時期とは逆の位相の時に増圧装置7を駆動する。このようにすることにより、次回の燃料噴射までには、コモンレール圧Pcrや燃料噴射圧Pinjが正常な値に戻り、車両への影響を抑えられる。
特に本実施形態においては、無噴射圧力Pinj_0(t)を測定するための、増圧装置7の増圧時期を、逆の位相を有する気筒において燃料が噴射される時期に合わせている。制御ユニット20がステップS304における設定を終了すると、ステップS228に進む。ステップS228からステップS233までは、第2実施形態と説明が重複するので、説明を省略する。
ステップS232において、制御ユニット20が、クランク角tが、噴射終了時期τfinより大きいと判別した後、ステップS233に進み、噴射設定フラグFsetをリセットし、ステップS305に進む。
ステップS305において、制御ユニット20は、補正値Kを更新する。第3実施形態の補正値Kの更新方法は、第2実施形態の補正値Kの更新方法と相違するため、後程フローチャートを用いて説明する。ステップS305以下、ステップS235からステップS238までは第2実施形態と説明が重複するため、説明を省略する。
図20は、本発明の第3実施形態における、補正値Kを更新するためのルーチンを表すフローチャートである。図20のルーチンは、図19のフローチャートのステップS305が実行されるたびに呼び出される。
ステップS239からステップS243までにおいて、制御ユニット20は、第2実施形態と同様に、実測燃料噴射量Qrを算出し、次いで、ステップS306に進む。
ステップS306において、実測燃料噴射量Qrと記憶燃料噴射量Qmとの差分を算出する。以下では、実測燃料噴射量Qrと記憶燃料噴射量Qmとの差分を、「噴射量誤差ΔQ」と称する。ところで、本実施形態においては記憶燃料噴射量Qmと、要求噴射量Qvとはいずれも増圧装置7を駆動させながら燃料を噴射する場合の燃料噴射量であるため、記憶燃料噴射量Qmと要求噴射量Qvとは一致する。したがって、ステップS306において、制御ユニット20は、実測燃料噴射量Qrと、要求噴射量Qvとの差分を、噴射量誤差ΔQとしても良い。
ステップS307において、制御ユニット20は、噴射量誤差ΔQが予め定められた下限値(「許容下限値Elow」と呼称する)よりも小さいか否かを判別する。噴射量誤差ΔQが許容下限値Elowよりも小さい場合には、実測燃料噴射量Qrが記憶燃料噴射量Qmよりも小さいために補正が必要と判別し、ステップS247に進み、補正値Kを増加させ、本ルーチンを終了する。噴射量誤差ΔQが許容下限値Elow以上である場合には、ステップS308に進む。
ステップS308において、制御ユニット20は、噴射量誤差ΔQが予め定められた上限値(「許容上限値Ehigh」と呼称する)よりも大きいか否かを判別する。噴射量誤差ΔQが許容上限値Ehighよりも大きい場合には、実測燃料噴射量Qrが記憶燃料噴射量Qmよりも大きいために補正が必要と判別し、ステップS249に進み、補正値Kを減少させ、本ルーチンを終了する。噴射量誤差ΔQが、許容上限値Ehigh以下である場合は、制御ユニット20は、補正は不要と判別し、本ルーチンの処理を終了する。
以上のように本発明の第3実施形態においては、通常走行時に燃料を噴射することなく増圧装置7を駆動させることによって、補正値Kを更新することができる。
以上のように、本発明の第3実施形態においては、制御ユニット20は、内燃機関100が増圧装置7を使用可能な運転状態である時に、増圧装置7を駆動させながら燃料を噴射させることにより、燃料噴射圧Pinj(t)(噴射圧力)を測定する。また、制御ユニット20は、インジェクタ9(燃料噴射装置)が燃料を噴射させない時期に、燃料を噴射することなく増圧装置7を駆動させることにより、無噴射圧力Pinj_0(t)を測定する。そして、制御ユニット20は、無噴射圧力Pinj_0(t)及び燃料噴射圧Pinj(t)(噴射圧力)に基づいて補正値Kを更新する。このような第3実施形態においては、車両の走行を阻害することなく、機関負荷Klが比較的高い領域における補正値Kを更新できる。
なお、第2実施形態及び第3実施形態においては、学習点aからeの5つの学習点について、補正値Kを記録していたが、各学習点に当てはまらない点については、すでに明らかになっている学習点における補正値Kの値を補間することによって補正値Kの値を算出できる。
なお、第2実施形態及び第3実施形態においては、機関負荷Klが異なる領域において補正値Kの補正値を記憶している。第2実施形態の機関負荷Klと第3実施形態の機関負荷Klの間の負荷である時には、補正値Kは記憶されていないが、第2実施形態において得られた補正値Kと、第3実施形態によって得られた補正値Kとを補間することにより、補正値Kの値を算出できる。
なお、本実施形態においては、単一の気筒について補正値Kを補正していたが、内燃機関100が複数の気筒を有している場合は、増圧装置7の特性が気筒ごとに相違することが考えられるため、気筒ごと別々に補正値Kを記憶しておいても良い。
なお、本実施形態においては、図17のように実測増量比Rrを算出することにより、補正値Kを補正していたが、実測燃料噴射量Qrと記憶燃料噴射量Qmとの誤差に基づいて補正値Kを補正しても良い。