JP6596859B2 - パン類の製造方法 - Google Patents
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(1)中種法によるパン類の製造方法において本捏工程に以下の手順を含むことを特徴とする、パン類の製造方法、
1.中種に対し、穀粉類、イースト、水及び、食塩を穀粉100重量部当たり0.3重量部以下、を混合する工程
2.食用油脂類、卵黄及び糖類を含有する可塑性油脂混合物を混合する工程
(2)可塑性油脂混合物の比容積が1.1〜1.7cm3/gである、(1)に記載の製造方法、
(3)可塑性油脂混合物が食塩0.3重量部以上を含む、(1)ないし(2)に記載の製造方法、
(4)可塑性油脂混合物の混合後にさらに食塩0.3重量部以上を混合する、(1)ないし(3)に記載の製造方法、
(5)可塑性油脂混合物の混合後にさらに穀粉100重量部あたり5〜40重量部の水を混合する、(1)ないし(4)に記載の製造方法、
(6)加水量の合計が穀粉100重量部あたり55〜90重量部である、(5)に記載の製造方法、である。
本発明のパン類とは、小麦粉などの穀粉類、イースト、食塩及び水を主原料とし、糖類、乳製品、卵製品、食用油脂類などの副原料を添加し、混捏した生地を発酵、成形し、焼成、蒸し、フライ等の加熱により製造されるものを指し、菓子パン、食パン、テーブルロール、フランスパン、クロワッサン、デニッシュペストリー、イーストドーナツに例示される。
本発明のパン類は中種法により製造する。すなわちまず、穀粉、イースト、水を主とする中種原材料を混合し、2〜4時間醗酵して中種を得る。糖を配合した加糖中種とすることもできる。中種原材料としてはこれらの他にイーストフード、卵などを適宜用いることができる。また、一般的な製法と同様、中種には食塩を配合しない。
通常公知の方法においては、中種に穀粉、食塩、糖類、脱脂粉乳、水などの本捏原材料を混合、ミキシングし、さらに食用油脂類を混合して本捏生地を得るが、本発明においては以下の手順で本捏工程を行う。
(1)中種に対し、穀粉類、イースト、水及び、食塩を穀粉100重量部当たり0.3重量部以下、を混合する
(2)食用油脂類、卵黄及び糖類を含有する可塑性油脂混合物を混合する
まず中種に対し、少なくとも穀粉類、イースト、水を加える。脱脂粉乳はここで加える。なお、この段階での食塩の混合量は、穀粉類100重量部に対し0.3重量部以下とする必要がある。望ましくはここで一度に、あるいは数回に分けてミキシングする。続いて、食用油脂類、卵黄及び糖類を含有する可塑性油脂混合物を一度に、あるいは数回に分けて混合する。この可塑性油脂混合物には、穀粉類100重量部に対し0.3重量部以上の食塩を含有させることができる。
食塩は通常のパン類と同様、穀粉100重量部に対して0.8〜2重量部程度を配合する。なお、ここでの食塩とは、通常一般のベーカリー配合において単独の原材料として添加される食塩のことを示し、マーガリン等の原材料に予め含まれる食塩分とは別に算出して配合するものをいう。ここで本発明においては、本捏工程の開始段階において、中種に対し穀粉類、イースト、水とともに添加する食塩を穀粉100重量部あたり0.3重量部以下とすることを特徴とする。残りの食塩の添加方法としては、以下のいずれかの方法が例示できる。
(a)全量を、可塑性油脂混合物に混合して加える
(b)一部を可塑性油脂混合物に混合して加え、残りをその後から加える
(c)全量を、可塑性油脂混合物の混合後に加える
ここで、可塑性油脂混合物の混合より後から添加する食塩の量を0.3重量部以上、好ましくは0.5重量部以上とすることで、よりソフトで口溶けの良いパン類が得られやすくなる。ただし配合によっては生地作業性が低下する場合があるため、添加時期や量は適宜調整することができる。
本発明の可塑性油脂混合物とは、食用油脂類、卵黄及び糖類を含有する組成物である。本発明においては、配合する可塑性油脂の全量ないしは一部を、少なくとも卵黄と糖類を加えクリーミングした状態で中種に混合する。この可塑性油脂混合物中には他にも食塩、粉乳類などを適宜加えることができ、混合工程にはミキサー、ビーター、ホイッパー、フードプロセッサー、へら、泡立て器などを適宜用いることができる。均一に混合するだけでも良いが、ホイッパー、泡立て器などを用いて起泡させることで、きめ細かい内相の形成に寄与し、よりソフトな食感のパン類を得ることができる。ここでの起泡させた可塑性油脂混合物の比容積は配合比により異なるが、好ましくは1.1〜1.7cm3/g、より好ましくは1.1〜1.5cm3/gとすることが望ましい。これより小さいと、内相のきめ細かさとソフトな食感が得られにくくなる場合がある。一方、卵黄の割合を増やすことで更に比容積を上げることもできるが、あまり大きいと生地への混合が困難となる場合がある。
本発明の可塑性油脂混合物に配合する食用油脂類としては、ショートニング、マーガリン、バター、コンパウンドマーガリン、ファットスプレッド、各種製パン練り込み用油脂組成物に例示される可塑性油脂類を使用することができる。これらの可塑性油脂類の原料としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示できる。また、本発明においては、前記可塑性油脂に加えて、液体ショートニングなどの流動性油脂類、各種乳化油脂類など、通常公知のパン類製造に用いられる食用油脂類を必要に応じて使用することができる。食用油脂類の配合全量は穀粉100重量部あたり5重量部以上、より好ましくは10重量部以上することで、しっとりしたソフトな食感が得られやすくなる。
可塑性油脂混合物に配合する卵黄とは鶏卵の卵黄成分を含むことを意味し、卵黄ないしは全卵を配合することができる。液状の卵黄、液状の全卵の他にも、加糖卵、冷凍卵、加糖卵、乾燥卵等をいずれも使用することができ、可塑性油脂100重量部あたり生卵黄換算で30〜200重量部の配合が例示できる。またこれとは別途、中種にも全卵ないし卵黄を適宜配合することができる。
本発明においては通常のパン類に用いられる糖類を何れも用いることができ、砂糖、グラニュー糖、三温糖、黒糖、オリゴ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、液糖、水飴などから選択される1種類、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて用いることができ、穀粉100重量部あたり3〜35重量部の配合が例示できる。本発明における糖類の配合は、まず中種生地に5〜15部程度加え(加糖中種法)、本捏工程でさらに可塑性油脂混合物に配合して加える方法が好ましい。これにより、作業性を維持したまま多くの糖類を配合することができ、しっとりソフトなパンが得られやすくなる。
穀粉類としては、通常のパン類の製造と同様、強力粉、薄力粉、中力粉などの小麦粉類の他、ライ麦粉、全粒粉、米粉などの穀物の粉や各種澱粉、加工澱粉類から選ばれる1種類、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。
イースト(パン酵母)は通常一般のパン類製造に用いられる生イースト、ドライイーストなどのイースト類を何れも用いることができる。耐糖性の強い酵母菌株を用いてもよい。
強力粉70部、生イースト3部、イーストフード0.1部、砂糖(上白糖)10部、全卵10部に水32部を加え、縦型ミキサーを使用して低速3分、中速2分ミキシングを行い、ついで2時間30分発酵させ、中種を調製した。
別途、市販の製パン練り込み用マーガリン(製品名:デリソフト、不二製油株式会社製)20部、卵黄10部、砂糖20部、市販加糖卵黄調製品(製品名:プロダッシュ800、不二製油株式会社製)15部、食塩0.8部を卓上ミキサーで混合、ホイップし、比容積1.4cm3/gの可塑性油脂混合物を調製した。
中種に強力粉30部、イースト1部、脱脂粉乳3部、水20部を加え低速で2分、さらに高速で3分ミキシングし、次に、先に調製した可塑性油脂混合物65.8部を加え、低速3分、中速2分ミキシングし、本捏生地を得た。40分の発酵後45gに分割し、60分間のベンチタイムをとり、バンズ形状に成形し、温度32℃、湿度80%にて60分間ホイロの後、上火200℃/下火200℃、15分焼成を行い、菓子パンを得た。
実施例1と同様に中種を調製し、中種に強力粉30部、イースト1部、脱脂粉乳3部、水20部を加え低速で2分、さらに高速で3分ミキシングした。
別途、市販の製パン練り込み用マーガリン20部、卵黄10部、砂糖20部、加糖卵黄調製品15部を卓上ミキサーで混合、ホイップし、比容積1.3cm3/gの可塑性油脂混合物(食塩無添加)を調製した。
中種に強力粉30部、イースト1部、脱脂粉乳3部、水20部を加え低速で2分、さらに高速で3分ミキシングし、続いて、先に調製した可塑性油脂混合物(食塩無添加)65部を加え、中速1分ミキシングの後、食塩0.8部を加えてさらに中速4分ミキシングし、本捏生地を得た。以降は実施例1と同様に発酵、分割、ベンチタイムの後、成形、ホイロ、焼成し、菓子パンを得た。
実施例1と同様に中種を調製し、中種に強力粉30部、イースト1部、脱脂粉乳3部、水20部を加え低速で2分、さらに高速で3分ミキシングし、次に実施例1の可塑性油脂混合物(食塩含有)65.8部を加え、低速3分、中速2分ミキシングの後、さらに水25部を少しずつ加えながら中速2分、高速2分ミキシングし、本捏生地を得た。以降は実施例1と同様に発酵、分割、ベンチタイムの後、成形、ホイロ、焼成し、菓子パンを得た。
実施例1と同様に中種を調製し、中種に強力粉30部、イースト1部、脱脂粉乳3部、水20部を加え低速で2分、さらに高速で3分ミキシングし、次に実施例2の可塑性油脂混合物(食塩無添加)65部を加え、中速1分ミキシングの後、食塩0.8部を加えてさらに中速4分ミキシングした。最後に水25部を少しずつ加えながら中速2分、高速2分ミキシングし、本捏生地を得た。以降は実施例1と同様に発酵、分割、ベンチタイムの後、成形、ホイロ、焼成し、菓子パンを得た。
実施例1と同様に中種を調製し、中種に強力粉30部、イースト1部、脱脂粉乳3部、水20部、食塩0.8部を加えミキシングした後、実施例2の可塑性油脂混合物(食塩無添加)65部を加えて混合し、本捏生地を得た。以降は実施例1と同様に発酵、分割、ベンチタイムの後、成形、ホイロ、焼成し、菓子パンを得た。
なお、常温は20℃・1日後、冷蔵は4℃・1日後、冷凍は−20℃で一昼夜凍結後の評価とした。
<官能評価基準>
+3:きわめて優れる
+2:優れる
+1:やや良
0:コントロールと同等
−1:やや劣る
−2:劣る
食塩を可塑性油脂混合物に配合して加えることで、いずれの温度帯においてもコントロールに比較してきめ細かくソフトな食感のパンが得られた。また、食塩無添加の可塑性油脂混合物を混合した後から食塩を添加、混合することにより、さらに顕著にきめ細かくソフトな食感のパンが得られた。また、さらに本捏工程の最終段階で加水することで、ソフトな食感が維持されたままでしっとり・もちもち食感が付与され、きわめて食べやすく嗜好性の高いパンが得られた。
Claims (5)
- 中種法によるパン類の製造方法において、本捏工程に(1)〜(2)の手順を含み、可塑性油脂混合物の混合後に、さらに食塩0.3重量部以上を混合する、パン類の製造方法。
(1)中種に対し、穀粉類、イースト、水及び、食塩を穀粉100重量部当たり0.3重量部以下、を混合する工程
(2)食用油脂類、卵黄及び糖類を含有する可塑性油脂混合物を混合する工程 - 可塑性油脂混合物の比容積が1.1〜1.7cm3/gである、請求項1に記載の製造方法。
- 可塑性油脂混合物が食塩0.3重量部以上を含む、請求項1ないし2いずれか1項に記載の製造方法。
- 可塑性油脂混合物の混合後に、さらに穀粉100重量部あたり5〜40重量部の水を混合する、請求項1ないし3いずれか1項に記載の製造方法。
- 加水量の合計が、穀粉100重量部あたり55〜90重量部である、請求項4に記載の製造方法。
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