(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、三次元形状情報取得装置の一例である本実施形態の三次元形状計測装置100の全体構成(外観)を概略的に示した側面図である。図2は、本実施形態の三次元形状計測装置100の機能を説明するための機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る三次元形状計測装置100は、移動可能な移動体1と、移動体1に搭載された三次元形状計測ユニット5と、移動体1から離れた位置に設置された位置追跡部10と、とを備えて構成される。
三次元形状計測ユニット5は、距離計測部(距離情報取得部)20と、位置取得部30と、慣性計測部(慣性情報取得部)40と、画像取得部(画像情報取得部)50と、計算部60とを備えて構成される。
移動体1は、三次元形状計測ユニット5を搭載した状態で構造物等の計測対象に沿って移動する移動手段として機能する。本実施形態の移動体1は、図1に示すように、三次元形状計測ユニット5が載置される台車本体2aと、ハンドル2bと車輪2cとを備えた台車2により構成している。以下、本実施形態に係る三次元形状計測装置100を、台車型の三次元形状計測装置100ということがある。
なお、三次元形状計測の精度向上のために、距離計測部20と、位置取得部30と、慣性計測部40と、画像取得部50との相対位置を高精度に保つ必要がある。そのため、これらは台車本体2aに固定された同一のプレート2d上に固定している。
本実施形態では、作業者等がハンドル2bを保持して移動体1を引っ張ることで、三次元形状計測ユニット5とともに移動体1を図1、図3等に示す矢印方向に移動させる構成としている。しかし、本願がこの構成に限定されることはなく、作業者が移動体1を押して移動させる構成とすることもできる。
位置追跡部10は、距離計測部20に近接して移動体1上に設置された位置取得部30を計測用ターゲットとして、その位置情報を取得(計測)する。したがって、位置追跡部10と位置取得部30とで、距離計測部20の位置情報を取得する位置情報取得部として機能する。また、位置追跡部10は、移動体1とともに移動する位置取得部30の位置情報を、所定時間ごとに取得することで、距離計測部20の追跡手段(追尾手段)としても機能する。
位置追跡部10は、計測用ターゲットである位置取得部30から所定距離離れた位置に設置され、光波、レーザ光などを用いて計測用ターゲットまでの距離や角度などを計測する計測装置(光波測距儀)である。
本実施形態では、位置追跡部10は、作業者が単独作業可能なように、計測用ターゲットを自動的に探すような自動追尾機能付きのトータルステーション(TS:Total Station、以下、「TS」という)11によって構成している。また、位置追跡部10は、TS11で計測した位置情報等の各種情報を三次元形状計測ユニット5側に送信する情報通信装置としての無線通信モデム12を備えている。
本実施形態のように、位置追跡部10にTS11を用いることで、トンネル内などでも精度よく位置情報や姿勢情報を取得することができる。なお、本実施形態では、位置追跡部10のTS11及び無線通信モデム12を、1セットのみ設けて簡素化、低コスト化を図っている。しかし、本願がこの構成に限定されることはなく、2セット以上設けた構成とすることもでき、この場合複数のTS11からの計測情報に基づいて、より精度よく位置情報、姿勢情報を取得することが可能となる。
位置取得部30は、TS11の計測用ターゲットとしての全周プリズム31と、全周プリズム31が移動可能に設けられたガイドレール32(図3参照)とを備えて構成される。
全周プリズム31は、距離計測部20にできる限り近接して移動体1上に搭載され、入射したレーザ光等を入射した方向へ反射させることができる光学要素である。全周プリズム31は、移動体1上に設置されたガイドレール32上を、基準位置(BASIC POINT)P1から参照位置(REFERENCE POINT)P2に移動可能となっている(図4参照)。
なお、全周プリズム31は、ガイドレール32上を作業者等が手作業により移動させる構成とすることができる。または、電動モータその他の駆動手段を利用して自動的に移動させるような構成とすることもできる。
また、位置追跡部10は、所定時間ごとに、基準位置P1における全周プリズム31の位置情報をTS11により計測することで、移動体1とともに移動する距離計測部20を追跡して、その位置情報を定期的に取得する。取得した位置情報は、無線通信モデム12と無線通信モデム63とを介して計算部60に送信される。
本実施形態では、TS11の自動追尾機能を利用して、基準位置P1での全周プリズム31の位置情報の計測が終了した後、自動的に、参照位置P2にある全周プリズム31を探すことができるようにしている。そのため、作業者が全周プリズム31を手動によりガイドレール32上において参照位置P2まで移動させる場合であっても、TS11が自動的に参照位置P2の全周プリズム31を探して距離を計測するように動作する。これにより、作業者は単独であっても、本実施形態に係る三次元形状計測装置100によって計測対象の三次元形状情報を取得することが可能となっている。
距離計測部20は、構造物等の計測対象の複数の計測点までの距離情報を計測(取得)するものであり、本実施形態では、距離計測部20として、2次元(2D)レーザスキャナを用いている。
2Dレーザスキャナは、例えば、180°方向、より好ましくは190°以上の方向に回転して放射状にレーザビームを出射し、計測対象とセンサとの間をレーザパルスが往復する時間を計測することで距離を計測し、同時にレーザビームを発射した方向を計測する。これにより、所定の計測対象点の2次元座標情報を取得するように構成されている。
慣性計測部40は、距離計測部20の相対的な姿勢情報(第1の姿勢情報)や相対的な位置情報(第2の位置情報)に関する情報を取得する。第1の姿勢情報としては、例えば、ピッチ角φp、ロール角φr、ヨー角φyが挙げられる。該姿勢情報は、例えば角速度の計測値を時間積分することにより算出される。
慣性計測部40は、特に限定されることはなく従来公知のものを用いることができる。本実施形態では、3軸ジャイロセンサ等の角速度センサ、3方向加速度センサを備える慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いている。
画像取得部50は、所定の撮像領域を所定間隔で撮像して複数の撮像画像を取得する撮像手段である。撮像画像としては、連続した静止画像であってもよいし、動画等であってもよい。本実施形態では、画像取得部50としてデジタルカメラを用いている。
画像取得部50は、移動体1に1台以上設置する。姿勢算出精度向上のためには2台以上設置することが好ましい。本実施形態では、図4に示すように、2台の画像取得部50を、互いの視野が重複しないように移動体1上に設置している。これにより、撮像画像中に動く物体が映りこむことによる精度低下を防ぐことができる。画像取得部50で撮像された撮像画像は、計算部60に出力される。
計算部60は、距離計測部20、慣性計測部40、及び画像取得部50と、接続コード等で接続され、各部で取得された各種情報が計算部60に入力される。計算部60は、入力された各種情報に基づいて、計測対象の三次元形状情報を算出して出力する。なお、各部と計算部60とは、無線LAN等で無線により接続された構成とすることもできる。
計算部60は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ、SDカード、又は外付けハードディスク等の記録媒体からなる記憶部(メモリ)とを備えた計算装置からなる。本実施形態では、計算部60として、いわゆるデスクトップ型のパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)61を用いている。
計算部60は、ROMに予め記憶されている三次元形状計測プログラムに従って、例えばRAMをワークメモリとして用いて、三次元形状計測装置100全体の作動制御を行うことができる。
計算部60(PC61)には、バッテリ等からなる電源62と、無線通信モデム63と、ノート型PC64とが接続されている。
電源62は、計算部60(PC61)に電力を供給する。また、電源62は、無線通信モデム63、ノート型PC64、距離計測部20、慣性計測部40、画像取得部50等と接続し、これらに電力を供給する構成とすることもできる。
無線通信モデム63は、位置追跡部10の無線通信モデム12から送信される計測情報を受信し、計算部60(PC61)に出力する。
なお、無線通信モデム63等を介して、PC61から計測現場から離れた管理センタ或いは作業現場事務所等のPC等へ各種情報を送信するように構成することもできる。また、無線通信モデム63や無線通信モデム12などを介して、管理センタ或いは作業現場事務所等のPCから、位置追跡部10、距離計測部20、慣性計測部40等の各種制御を遠隔操作等により行うことができるように構成することもできる。
ノート型PC64は、計算部60と有線又は無線により接続され、計算部60で算出された三次元形状情報等を表示する表示部としての液晶ディスプレイ65、計算部60に対して計測開始指示やパラメータ等、各種指示を入力する入力部としてのキーボード66やマウス等を備えている。本実施形態では、液晶ディスプレイ65を表示部としているが、音声を発するスピーカや光を発する可視光レーザ光源等を表示部とすることもできる。
次に、計算部60の機能について図2を参照しながら説明する。計算部60は、位置計算部71と、姿勢計算部72と、形状計算部73と、照合計算部74と、設計情報記憶部75と、計算結果出力部76とを備えている。位置計算部71、姿勢計算部72、形状計算部73、照合計算部74、設計情報記憶部75、及び計算結果出力部76は、上述したCPUや記憶部によって実現される。
位置計算部71は、位置追跡部10で計測した位置情報を基準として、慣性計測部40で取得した相対的な位置変化(以下、「第2の位置情報」という)によって補間することで、距離計測部20の絶対的な位置情報(絶対位置情報)をより高頻度に算出することができる。
姿勢計算部72は、位置追跡部10で取得(追跡)した複数の地点での距離計測部20の位置情報と、慣性計測部40で取得した第1の姿勢情報と、画像取得部50で撮像された複数の撮像画像を解析して得られた第2の姿勢情報とに基づいて、相対的な姿勢変化を算出し、予め計測した絶対姿勢情報の初期値と合算して距離計測部20の絶対的な姿勢情報(絶対姿勢情報)を算出する。
形状計算部73は、位置計算部71で算出された絶対位置情報及び姿勢計算部72で算出された絶対姿勢情報に基づいて、距離計測部20で取得した複数の計測点の距離情報を、共通する1つの座標系に座標変換し、計測対象の三次元形状情報を算出する。
設計情報記憶部75には、三次元形状の計測対象の設計情報が予め記憶されている。照合計算部74は、形状計算部73で算出された三次元形状情報(実測値)と、設計情報記憶部75から取得した設計情報とを照合し、差異を算出する。
計算結果出力部76は、照合計算部74で算出された三次元形状情報(実測値)と、設計情報との差異を表す画像や値、実測値に基づく三次元画像等を編集し、ノート型PC64の液晶ディスプレイ65に表示する。また、音声情報を編集して、スピーカから音声を発生させたり、光源を制御して光を発生させたりすることもできる。
上述のような構成の本実施形態に係る三次元形状計測装置100では、図3に示すように、作業者が移動体1を移動させながら、距離計測部20により構造物等の計測対象の表面形状情報(二次元座標情報)を計測する。距離計測部20によって移動体1の位置に応じて取得される表面形状情報と、位置追跡部10、慣性計測部40、及び画像取得部50により取得される移動体1(距離計測部20)の絶対位置情報及び絶対姿勢情報と、を関連付けることで、計測対象の三次元形状情報を取得するようになっている。
図4を用いて、座標変換における三次元形状情報の取得原理について説明する。距離計測部20で計測した二次元座標情報は、まずレーザスキャナ座標系(センサ座標系:Σs)にて記録される。本実施例では距離計測部20が移動体1に固定されているため、センサ座標系Σsをそのまま移動体座標系(Σo)として用いることができる。更に、計測対象である構造物の座標系である構造物座標系に対する位置情報及び姿勢情報に基づいて、最終的に構造物座標系(ΣI)に変換されるようになっている。
以下、本実施形態の三次元形状計測装置100を用いた三次元形状計測の動作(三次元形状計測方法)を、図7のフローチャートに従って説明する。
ステップS1では、位置追跡部10及び慣性計測部40により、それぞれ距離計測部20の初期の位置情報及び姿勢情報を取得する。そのために、図4に示すように、三次元形状計測装置100の静止状態で、位置追跡部10のTS11によって基準位置P1に配置した全周プリズム31の位置情報Ip1=(Ix1,Iy1,Iz1)を取得する。次に、ガイドレール32上の基準位置P1とは異なる参照位置P2へ全周プリズム31を移動させ、その位置情報Ip2=(Ix2,Iy2,Iz2)を取得する。計測された位置情報は、無線通信モデム12,63を介して位置追跡部10から計算部60に入力される。
また、慣性計測部40の角速度センサ及び加速度センサによって、第2の位置情報及び第1の姿勢情報としての角速度及び加速度が随時計測され、計算部60に入力される。
ステップS2では、位置計算部71及び姿勢計算部72が、位置追跡部10からの位置情報、及び慣性計測部40からの第1の姿勢情報に基づいて、距離計測部20の初期の位置情報及び姿勢情報を計算する。
以下、ステップS2の処理を、図4を用いて具体的に説明する。位置計算部71が、基準位置P1の位置情報Ip1と、基準位置P1に対する距離計測部20の位置関係、つまり、距離計測部20の計測中心Oから基準位置P1までの距離0p1=(0x1,0y1,0z1)に基づいて、距離計測部20の初期の位置情報(絶対位置情報)Ip0(x0,y0,z0)を算出する。
一方、姿勢計算部72は慣性計測部40から入力された角速度センサ及び加速度センサの計測値から、現在のロール角(ロール絶対角度)φr、ピッチ角(ピッチ絶対角度)φpを取得する。さらに姿勢計算部72は、基準位置P1での位置情報Ip1=(Ix1,Iy1,Iz1)、参照位置P2での位置情報Ip2=(Ix2,Iy2,Iz2)、及びロール角(ロール絶対角度)φr、ピッチ角(ピッチ絶対角度)φpに基づいて、下記計算式(1)を用いて、ヨー角(ヨー絶対角度)φyを算出する。
上記計算式(1)において、IΔx、IΔyは下記計算式(2)、0Δx’、0Δy’は下記計算式(3)を用いて算出する。
ただし、上記計算式(3)中、0Δx、0Δy、0Δzは、距離計測部20の計測中心Oから基準位置P1,参照位置P2までの距離を、それぞれ0p1=(0x1,0y1,0z1)、0p2=(0x2,0y2,0z2)としたとき、下記計算式(4)を用いて算出する。
以上により、距離計測部20の計測中心Oの初期の第1の姿勢情報(絶対姿勢情報)θo=(φro,φpo,φyo)を取得することができる。
次に、ステップS3では、移動体1を移動させながら、距離計測部20にて、計測中心Oから計測対象の所定の計測点までの距離を計測して距離情報を取得する。また、位置追跡部10のTS11にて位置情報を取得し、慣性計測部40にて姿勢情報を取得し、画像取得部50にて撮像画像を取得する。これらの情報は、所定間隔で計算部60に入力される。
ステップS4では、位置計算部71が、位置情報及び姿勢情報に基づいて距離計測部20の絶対位置を算出する。以下、ステップS4の処理の詳細を説明する。なお、図5(a)に、位置情報及び第1の姿勢情報(相対的な位置変化情報)の入力タイミングと、位置情報の補正タイミングとをグラフ化したものを示す。図5(a)中、「TS」は位置追跡部10のTS11からの位置情報の入力タイミングを、「IMU」は慣性計測部40からの姿勢情報の入力タイミングを、「位置」は位置情報の補正イメージを示す。
まず、位置計算部71は、慣性計測部(IMU)40から入力される姿勢情報(本実施形態では、加速度センサからの加速度情報)を積分することにより、相対位置変化ΔPIを算出する。慣性計測部40からの姿勢情報は、図5(a)に示すように、高速に(例えば数十ミリ秒オーダー)入力されるため、相対位置変化ΔPIも高速に更新される。しかしながら、相対位置変化ΔPIは経時誤差を含んでいる。
位置計算部71は、この経時誤差を線形補正するため、相対位置変化ΔPIから経時誤差係数Edp×経過時間tを差し引く。この経時誤差係数Edpは、予備実験またはセンサの仕様に基づいて予め算出しておく。このようにして得られた線形補正後の相対姿勢変化ΔPIを、Pに代入する(後述の計算式(5)に相対位置変化ΔPIを代入して絶対位置情報Pを算出する)。
次に、位置追跡部10のTS11から入力される位置取得部30の絶対位置情報PRを取得する。図5(a)に示すように、TS11からの絶対位置情報PRは比較的低速(例えば数秒オーダー)で更新される。絶対位置情報PRが更新されたら即座に、線形補正後の相対姿勢変化ΔPIの現在値をΔPIcとして他のメモリに記憶し、かつ経過時間t=0とする。
位置計算部71は、下記計算式(5)を用いて、計測中心Oの絶対位置情報Pを算出する。下記式(5)中、PRは絶対位置情報を、ΔPIは現在の相対姿勢変化を、ΔPIcは前回の絶対位置情報PR取得時の相対姿勢変化を、Edpは経時誤差係数を、tは絶対位置情報PR取得時からの経過時間を示す。
P = PR+ΔPI−ΔPIc−Edp×t (5)
次に、ステップS5では、姿勢計算部72が、位置情報、第1の姿勢情報、及び第2の姿勢情報に基づいて、距離計測部20(計測中心O)の相対的な姿勢変化を算出する。以下、ステップS5の処理の詳細を説明する。なお、図5(b)に、初期の位置情報、第1の姿勢情報、及び第2の姿勢情報の入力タイミングと、姿勢情報の補正イメージとをグラフ化したものを示す。図5(b)中、「TS」は位置追跡部10のTS11からの位置情報(初期姿勢θ0のヨー角φy取得用)の入力タイミングを、「IMU」は慣性計測部(IMU)40からの第1の姿勢情報の入力タイミングを、「SfM」は画像取得部50での撮像画像に基づく第2の姿勢情報の入力タイミングを、「姿勢」は姿勢情報の補正イメージを示す。
姿勢計算部72は、慣性計測部(IMU)40から入力される第1の姿勢情報(本実施形態では、角速度センサであるジャイロセンサからの角速度)を積分することにより、第1の相対姿勢変化ΔθIを取得する。ΔθIは高速に(例えば数十ミリ秒オーダーで)更新される。しかしながら、第1の相対姿勢変化ΔθIは経時誤差を含んでいる。この経時誤差が所定量変化するたびに、以下のように画像取得部50での撮像画像の取得と、撮像画像に基づく第2の姿勢情報を用いた第1の姿勢情報の補正とを行っている。
姿勢計算部72では、この第1の相対姿勢変化ΔθIの経時誤差を線形補正するため、ΔθIから経時誤差係数Ed×経過時間tを差し引く。この経時誤差係数Edも、予備実験またはセンサの仕様に基づいて予め算出しておく。このようにして得られた線形補正後の第1の相対姿勢変化ΔθIを、相対姿勢Δθに代入する(後述の計算式(6)に第1の相対姿勢ΔθIを代入して相対姿勢Δθを算出する)。
次に、姿勢計算部72は、画像取得部50によって得られた複数の撮像画像(連続画像や動画像)に基づいて、既存の画像処理技術を用いて回転やスケールに不変な特徴点を抽出する。この画像処理技術としては、例えばSIFT(Scale-invariant feature transform)、SURF(Speed-Upped Robust Feature)、AKAZE(Accelerated KAZE)等が挙げられる。
抽出した特徴点を、既存の画像処理技術で解析することにより、第2の姿勢情報としての第2の相対姿勢変化ΔθVを取得する。この画像処理技術としては、例えば、SfM(Structure from Motion)、VisualSLAM、オプティカルフロー等が挙げられる。本実施形態では、実時間SfMを用いている。
実時間SfMを用いた第2の姿勢変化の算出手順を以下に説明する。まず、2台の画像取得部50によって、それぞれ同時に撮像画像を取得する。画像取得部50ごとに、一定時間内に取得した複数の撮像画像に対して、上記特徴点の抽出を行った後、SfMを実行し、ヨー角φyを算出する。
次に、2台の画像取得部50のSfMの結果の差分を算出する。この差分が、一定値以上の場合は、予め指定した一方の画像取得部50のヨー角φyを第2の姿勢変化ΔθVとして採用する。一方、差分が一定値未満の場合は、2つの画像取得部50のヨー角φyの平均値を第2の姿勢変化ΔθVとして採用する。
なお、画像取得部50が3台以上の場合は、SfM結果の平均μ及び標準偏差σを算出する。これらに基づいて、棄却検定を実行する。棄却検定としては、例えば、μ±ασ(αは、予め設定した1〜9程度の値)の範囲外となる値を除外する。棄却されなかったヨー角φyの平均値を算出し、第2の姿勢変化ΔθVとして採用する。
また、画像取得部50が1台の場合は、この1台の画像取得部50でのSfM結果のヨー角φyを第2の姿勢変化ΔθVとして採用する。
ここで、第2の相対姿勢変化ΔθVは比較的低速(例えば数十秒オーダー)で更新される(図5(b)参照)。更新速度を速めるために、時間的に近傍の撮像画像に限定して解析を行った場合、第2の相対姿勢変化ΔθVは累積誤差を含むことがある。この累積誤差を低減するために、位置追跡部10のTS11から取得した相対位置変化を、第2の相対姿勢変化ΔθV算出における制約条件として利用して解析することもできる。
第2の相対姿勢変化ΔθVが更新されたら即座に、第1の相対姿勢変化ΔθIの現在値をΔθIcとして他のメモリに記憶し、かつ経過時間t=0とする。
姿勢計算部72は、下記計算式(6)を用いて、相対姿勢Δθを算出する。下記式(6)中、ΔθVは第2の姿勢変化を、ΔθIは第1の姿勢変化を、ΔθIcは前回の第2の姿勢変化取得時の第1の相対姿勢変化を、Edは経時誤差係数を、tは第2の姿勢変化取得時からの経過時間を示す。
Δθ = ΔθV+ΔθI−ΔθIc−Ed×t (6)
次にステップS6において、下記計算式(7)を用いて、計算式(6)で算出した相対姿勢変化Δθを、ステップS1で算出した初期の姿勢情報(絶対姿勢情報)θoに加算することで、絶対姿勢情報θ=(φr,φp,φy)を時系列で取得することができる。
θ = Δθ+θo (7)
以上のように、慣性計測部40で取得した第1の相対姿勢変化を線形補正し、さらに、画像取得部50で取得した撮像画像の解析による第2の相対姿勢変化で補正することで、経時変化を抑制して、絶対姿勢情報θをより高精度に取得することができる。
図6に、移動体が静止している状態において、慣性計測部40の角速度センサとして光ファイバジャイロを用いて取得した姿勢情報の計測値(実測値)aと、該計測値を線形補正した後の計測値bと、SfM解析によって得られた第2の姿勢情報で計測値bを補正した後の計測値cとの一例をグラフで示す。
図6の例では、線形補正では、初期値と2時間経過時の生データとを直線で結んだときの傾きを0とするように補正した。また、SfM解析による補正では、線形補正後の相対姿勢変化を、3分ごとに画像取得部50からの撮像画像をSfM解析して取得した第2の相対姿勢変化に置換することで補正した。このシミュレーション例では、SfM解析で補正したヨー角φyの精度が±0.25度となり、線形補正のみの場合と比較して高い精度を実現することができる。
次に、ステップS7では、形状計算部73により、計測対象の三次元形状情報を算出する。まず、形状計算部73は、位置追跡部10を基準とする絶対位置情報Pの座標系を、予め決められた設計情報と同じ構造物座標系ΣIに変換する。座標系の変換は、前述したような既存の座標変換技術により行うことができる。
次に、形状計算部73は、PC61等によって各計測値に付与されたタイムスタンプに基づいて、絶対位置情報P、絶対姿勢情報θ、及び距離情報(距離情報D)を関連付ける。例えば、時刻をtとしたとき、ある時刻tに最も近い時刻の絶対位置情報P、絶対姿勢情報θ、及び距離情報Dを時刻tに関連付けることによって互いを関連付ける。
関連付けの他の例として、時刻tに最も近い時刻の絶対位置情報P、絶対姿勢情報θ、及び距離情報Dを、それぞれ2時刻ずつ抽出し、その2つの値に基づいてt時点での値を線形補間または線形補外によって算出する。これにより、絶対位置情報P、絶対姿勢情報θ、及び距離情報Dを関連付ける。
以上のように関連付けを行ったら距離計測部20で計測した計測対象の各計測点の位置を算出する。時刻tごとに、絶対位置情報Pを絶対姿勢情報θの方向に距離情報Dだけずらした位置を、計測点の構造物座標系ΣIにおける位置座標とする。以上により、計測対象の三次元形状情報を取得することができる。
ステップS8では、照合計算部74が、ステップS7で算出された三次元形状情報と設計情報とを照合して、その差異を算出する。例えば、三次元形状情報に基づいて、図3に示すように、作業者が、予め指定した立方体Cに内包される計測点の位置座標を、計測対象の断面形状として抽出する。この抽出した断面形状の数値を設計情報記憶部75の設計情報の数値と照合し、その差異を算出する。
なお、計測対象が、トンネルなどの長尺な構造物の場合は、線形(構造物の長手方向を示す曲線)を予め入力することで、線形に沿って等間隔に立方体Cを生成することもできる。
次にステップS9において、計算結果出力部76が、ステップS8で算出した差異に基づいて表示画像を編集し、液晶ディスプレイ65に表示する。
以上、本実施形態に係る三次元形状計測装置100及び三次元形状計測方法によれば、位置追跡部10での位置情報を、慣性計測部40での第2の位置情報に基づいて補間して絶対位置情報を算出している。また、画像取得部50からの複数の撮像画像をSfM等で解析することにより算出された第2の姿勢情報を、慣性計測部40で得られた第1の姿勢情報に基づいて補正することで絶対姿勢情報を算出している。これらにより、距離計測部20の絶対位置情報及び絶対姿勢情報を高速かつ高精度に取得することができ、距離計測部20による三次元形状の計測を、より速く、より高精度に計測することが可能となる。
また、計算部60の姿勢計算部72では、第1の姿勢情報の経時誤差が所定量となるごとに、画像取得部50から撮像画像を取得し、該撮像画像を解析して第2の姿勢情報を算出し、該第2の姿勢情報に基づいて第1の姿勢情報を補正し、絶対姿勢情報を算出している。また位置追跡部10からの通信が遮られる等の要因によって一定時間以上にわたって位置情報が取得できないときは、画像取得部50からの撮像画像に基づいて第3の位置情報を取得することもできる。これにより、絶対姿勢情報及び絶対位置情報の経時誤差の増大を抑制して、より高精度に三次元形状を計測することが可能となる。
また、計算部60の照合計算部74において、三次元形状情報と、設計情報とを照合して差異を算出している。これにより、例えば、現場打設コンクリートや配筋や掘削部の出来形の品質を定量的に評価することができ、品質向上を図ることができる。
また、計算部60の計算結果出力部76により、三次元形状情報や、三次元形状情報と予め設定された設計情報との照合結果(差異)を液晶ディスプレイ65等の表示部に表示している。これにより、実測値と設計情報との差異を容易に把握することができる。
また、本実施形態では、位置情報を補間するための経時誤差係数Edpや姿勢情報を補正するための経時誤差係数Edを、予備実験等に基づいて予め算出している。例えば、位置追跡部10によって取得された位置情報の経時変化及び慣性計測部40によって取得された第1の姿勢情報の経時変化を予め取得し、位置情報の経時変化が所定量以下であり、かつ第1の姿勢情報の経時変化が所定量以上であるときに、第1の姿勢情報の経時変化に基づいて、慣性計測部40の経時誤差量を計算し、経時誤差係数Edとする。このように経時誤差量、第1の姿勢情報及び第2の姿勢情報に基づいて、絶対姿勢情報を計算することで、慣性計測部40の経時誤差を補間して、絶対姿勢情報を高精度に取得することができる。また、位置情報、経時誤差量、及び第1の姿勢情報に基づいて、絶対位置情報を計算することで、位置追跡部10の経時誤差を補間して、絶対位置情報を高精度に取得することができる。
また、本実施形態の三次元形状計測方法を実行させるためのプログラムを、コンピュータにインストールすることで、位置追跡部10、距離計測部20、慣性計測部40及び画像取得部50から入力される各種情報に基づいて、三次元形状の計測を、より速く、より高精度に計測することが可能となる。また、本プログラムをインストールしたコンピュータに、既存の距離計測部、慣性計測部、位置追跡部等を有線又は無線で接続することで、本発明の三次元計測装置、三次元計測方法を実現することができる。
また、本実施形態に係る三次元形状計測装置100は、三次元形状計測ユニット5が移動体1によって移動可能であるため、レーザ光が計測対象に対して直角に近い状態で当たらないといった照射角度の問題や、計測対象までの距離の相違に起因する計測情報疎密の発生の問題を解消することができる。また、三次元形状計測ユニット5と構造物との間に障害物があっても、これを避けて計測することができるため、計測に死角が生じ難く、広い範囲に亘って抜けの無い精度の高い三次元形状計測(取得)を行うことができる。したがって、三次元形状計測装置100の計測精度を向上させることができる。
また、移動体1として台車を用いていることから、比較的広大な範囲であっても短時間で精度の高い三次元形状計測を行うことができる。そのため、作業時間の軽減や工期の短縮にも貢献することができる。
なお、本実施形態では、移動体1として台車2を利用して説明したが、本願がこれに限定されるものではない。例えば、移動体1として、電動カートや軽自動車等の車両、重機、レール上を移動するトロッコ、貨車等に、三次元形状計測ユニット5を搭載して用いることもできる。
次に、本実施形態に係る台車型の三次元形状計測装置100の利用例(実施例)について具体的に説明する。
本実施形態に係る台車型の三次元形状計測装置100は、トンネル覆工ボリューム予想に好適に利用することができる。それには、例えば、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)等における一次覆工(コンクリート吹付け工事)後の3次元表面形状を本実施形態に係る三次元形状計測装置100で計測する。照合計算部74において、計測した三次元形状を二次覆工(仕上げ形状)の設計情報と比較し、差異を求める。
ここで、トンネルの計測情報と設計情報との差異を三次元鳥瞰図や二次元展開図で表示するための手順を具体的に説明する。この場合、照合計算部74では、計測点(距離計測部20で計測された点の位置座標)1点1点ごとに、以下の手順で算出する。なお事前準備として予め、設計情報記憶部75の設計情報を非構造格子(ポリゴンメッシュ)で表現しておく。
(1)準備:予め格子の各面(ポリゴン)全てに対して木構造(例えばkd−tree等)を構築しておく。
(2)最近傍点候補選定1:重心が計測点に最も近いポリゴンから順に複数(例えば10個程度)、木構造を利用して高速に探索する。
(3)最近傍点候補選定2:(2)で探索された各ポリゴンに計測点から垂線をおろし、ポリゴンと垂線の交点の三次元座標を求める。
(4)最近傍点候補選定3:(3)の各交点から計測点までの距離を計算し、それが最も短くなるポリゴンを選定する。
(5)最近傍点の決定:(4)で選定されたポリゴンの各頂点と計測点との距離を求め、それが最小となる頂点を選定する。
(6)選定された頂点と計測点との距離を、計測情報と設計情報の差異とする。
(7)差異の統計値(最大、最小、平均など)を算出し、記憶部に記憶する。
この算出結果に基づいて、計算結果出力部76が表示画像を編集し、図8に示すように、液晶ディスプレイ65に表示する。図8は、トンネルの距離計測結果の三次元鳥瞰図65a、横断図65b、及び二次元展開図65cを表示した例を示す。三次元鳥瞰図65a及び二次元展開図65cでは、計測結果と設計情報との差異を色分け表示することで、差異をより分かり易くすることができる。また、二次元展開図65cでは、1回の計測断面情報を縦1列の直線状に表示し、それを横方向に連ねることで生成している。
また、三次元鳥瞰図65aは、回転、移動、拡大縮小等を可能とすることで、差異をより把握し易くすることができる。図9は、三次元鳥瞰図65aの拡大図を示す。この図9に示すように、差異を拡大して表示することで、実際には目に見えない程度の差異であっても、差異が協調して表示され、差異が大きい箇所等を見た目で分かり易くすることができる。
また、図10に、トンネルの横断図65bの表示例を示す。図10の横断図65bには、設計情報(設計図)と、計測情報とが表示されている。計測情報は、一次覆工完了時と二次覆工完了時の2回計測しており、これらの計測情報に基づいて横断図を編集して表示することで、以下のような用途に用いることができる。
第1の用途として、一次覆工完了時において、図10の横断図65bに示すように、一次覆工形状(計測情報)と二次覆工形状(設計情報)とを表示し、その差異を示す寸法を放射状に表示する。この差異に基づいて、さらに、二次覆工の生コンクリート打設数量を算出し、液晶ディスプレイ65やプリンタに出力する。この数量を活用することで、二次覆工工事の材料や工程の管理を合理化することができる。
第2の用途として、二次覆工完了時において、二次覆工形状(計測情報)と、設計形状(設計情報)との差異を計算する。この差異の大きさを数値または色分けで横断図に表示することで二次覆工の出来形品質を確認することができる。
第3の用途として、一次覆工前の掘削時において、掘削中に掘削出来形(計測情報)と掘削設計形状(設計情報)とを比較してリアルタイムに差異を計測する。これにより、例えば差異の統計値(最大、最小、平均など)が設定値を超えたタイミングで、可視光レーザを照射させたり発光させたり音を発生させたりして注意喚起することで、掘削作業者に掘削あるいは埋戻しが必要な箇所を知らせることができ、掘削作業の品質向上に貢献することができる。
さらに、本実施形態の台車型の三次元形状計測装置100は、トンネル建築限界チェックにも好適に利用することができる。より具体的には、計測したトンネルの三次元形状と、設計図上の建築限界とを照合計算部74で比較する。そして、計算結果出力部76にて差異を色分けする等して液晶ディスプレイ65等に表示したり、建築限界を超えている箇所では表示部としてのスピーカや可視光レーザ光源から、音や光を発生させたりすることで、建築限界のチェックを効率化する。なお建築限界の設計情報は3次元CADでなく断面図でしか入手できないことが多いため、照合計算部74では、本装置の位置や姿勢に合わせて設計情報を変更して照合に使用することも可能である。
(第2の実施形態)
次に、移動体として背負子を用いて第2の実施形態に係る三次元形状計測装置について説明する。図11は、第2の実施形態に係る三次元形状計測装置を作業者が背負った状態を示す概略図である。
図11に示すように、第2の実施形態に係る三次元形状計測装置100Aは、背負子3からなる移動体1上に、2つの距離計測部20A1,20A2と、全周プリズム31等を有する位置取得部30と、慣性計測部40と、二台の画像取得部50と、計算部60であるPC61と、電源62と、無線通信モデム63と、表示部としてのノート型PC64と、等を備えた三次元形状計測ユニット5Aを搭載して構成されるとともに、移動体1から離れた位置に設置した位置追跡部10を備えている。
第2の実施形態に係る三次元形状計測装置100Aは、背負子3からなる移動体1によって作業者の背中に背負って使用すること、2つの距離計測部20A1,20A2を用いること以外は、第1の実施形態の係る三次元形状計測装置100と同様の構成及び作用を有している。そのため、以下では第1の実施形態とは異なる構成及び作用等を説明する。
移動体1としての背負子3は、片持ち梁状のフレーム本体3aに、作業者の肩に掛ける肩ベルト3bが取り付けられている。フレーム本体3aは、たわみが0.01mm以下になる強度で設計することが望ましい。また、作業者が操作や画像の確認をしながら計測作業を行えるように、フレーム本体3aの側面から前方に突出形成されたアーム3cに、ノート型PC64を載置することもできる。
本実施形態では、ノート型PC64への計測結果表示までの時間を縮める目的で、移動体1である背負子3に計算部60(PC61)を搭載している。しかし、本願がこれに限定されることはなく、三次元形状計測ユニット5Aの軽量化を図る場合には、他の人が背負う背負子に計算部60を設置する構成とすることもできる。また、通信環境が整っている現場では、事務所や管理センタに計算部60を設置することもできる。また、ノート型PC64を計算部60として用いることもできる。また、ノート型PC64もアーム3cも背負子3に設置せずに、他の人の背負子や事務所、管理センタに設置することもできる。
本実施形態では、天井と地面の両方を計測する目的で、2つの距離計測部20A1,20A2を用い、一方の距離計測部20A1を天井方向に向けて設置し、他方の距離計測部20A2を地面方向に向けて設置している。なお、距離計測部20A1,20A2の設置形態や設置数が本実施形態に限定されることはなく、計測対象や計測環境等によって適宜の設置形態や設置数とすることができる。
画像取得部50は、撮像視野に人などの移動体が映りこむことによる精度低下を避けるため、できるだけ高い位置に取り付けることが望ましい。ただし天井の低いところでも使用できるように、作業者の肩上から1m以下となる位置に取り付けることが望ましい。
位置取得部30についても、人や障害物に遮られることを極力避けるため、できるだけ高い位置に取り付けることが望ましい。ただし高すぎても天井の低いところで使用できない場合や剛性の低下、質量の増加等が懸念されるため、作業者の肩上から1m以下にすることが望ましい。
本実施形態の位置取得部30の全周プリズム31も、図1と同様に基準位置P1から参照位置P2に移動可能となっているが、この基準位置P1から参照位置P2までの距離(ベクトルP1−P2の絶対値)は、長いほど初期姿勢情報の精度が向上する。幅の狭い階段等などでの安全性を考慮して、当該距離を0.3〜0.6mとすることが望ましい。
また、本実施形態においても、三次元形状計測の精度向上のために、距離計測部20A1,20A2、位置取得部30、慣性計測部40、及び画像取得部50は、同一のプレート3d上に配置し、各々の相対位置を高精度に保っている。
以上、第2の実施形態に係る三次元形状計測装置100Aでも、画像取得部50からの撮像画像に基づいて取得した第2の姿勢情報に基づいて第1の姿勢情報を補正することで、より速く、より高精度に三次元形状を計測することができる。また位置追跡部10からの通信が遮られる等の要因によって一定時間以上にわたって位置情報が取得できないときは、画像取得部50からの撮像画像に基づいて第3の位置情報を取得して位置情報を補正することで、高精度に三次元形状を計測することもできる。
また、作業者が背中に背負って移動しながら計測対象の三次元形状を計測することができるため、集合住宅やオフィスビルの基礎工事現場など高低差が多い場所であっても、移動しながらの計測を容易に行うことができる。
次に、本実施形態に係る背負子型の三次元形状計測装置100Aの利用例(実施例)について具体的に説明する。
本実施形態に係る背負子型の三次元形状計測装置100Aは、例えば、山留め壁やトンネル切羽の変位変状モニタリングに好適に利用することができる。この場合、三次元形状計測装置100Aによって定期的に山留め壁やトンネル切羽の三次元形状を計測して過去の計測値と比較し、山留め壁の傾き、滑動、変形など、経時的な変化を把握する。その変化を色分けする等してディスプレイ等に表示したり、変化量が設定値を超えている箇所では音や光を発生させたりすることで、変状を即座に把握し事故を防ぐことができる。
また、本実施形態に係る背負子型の三次元形状計測装置100Aは、配筋の本数とピッチ確認にも好適に利用することができる。この場合、配筋の三次元設計図面(設計情報)及び基準点(親墨)位置を予め設計情報記憶部75に記憶しておく。計測によって形状計算部73で算出された配筋の三次元形状に円柱を当てはめることで、その本数とピッチを計算する。得られた本数とピッチを設計図面とを比較し、差異を色分けする等してディスプレイ等に表示したり、音や光を発生させたりすることで、配筋のケアレスミスを防ぐことができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、上記各実施形態では、TS11の計測用ターゲットとして全周プリズム31を用いているが、本願がこれに限定されることはなく、計測用ターゲットとして、例えば、球状プリズム、面状プリズム、ARマーカ等を用いることもできる。
また、上記各実施形態では、TS11で取得した位置情報に基づいて、位置計算部71が初期の位置情報や初期の姿勢情報のヨー角度を算出しているが、本願がこれに限定されることはない。TS11内の計算部で、計測値に基づいて初期の位置情報や初期の姿勢情報のヨー角度を算出し、算出結果を計算部60に出力するように構成することもできる。
また、本願の位置情報取得部が、TS11(位置追跡部10)及び全周プリズム31等の計測ターゲット(位置取得部30)を用いた構成に限定されることはなく、例えば、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いることができる。具体的には、位置取得部30として移動体1にGNSS受信機(例えば、GPS受信機)を搭載し、図1に二点鎖線で示す位置取得部30としての衛星13からGNSS送信機(例えば、GPS送信機)を介して送信される信号を受信することで位置情報及び姿勢情報を取得する。これにより、特に屋外での位置情報の取得を精度よく行うことができる。なお、GNSSを用いる場合は、位置取得部30を2以上設置した構成とすることもできる。
また、位置情報取得部として、いわゆる屋内GPSと呼ばれるIMES(Indoor MEssaging System)を用いることもでき、トンネル内や屋内であっても位置情報の取得を精度よく行うことができる。
また、位置情報取得部として、モーションキャプチャやデジタルビデオカメラ(位置追跡部10)とマーカ(位置取得部30)との組み合わせを用いることもできる。
また、上記各実施形態では、距離計測部20,20A1,20A2として2Dレーザスキャナを用いているが、三次元形状計測装置100の所定の位置から計測対象の所定の複数の計測点までの距離情報を取得できれば、2Dレーザスキャナに限定されることはない。例えば、点群情報を取得する1次元(1D)レーザスキャナ、三次元の座標情報を取得する3次元(3D)レーザスキャナ等を用いることもできる。
上記各実施形態では、画像取得部50をデジタルカメラで構成しているが、撮像機能を有するものであれば、デジタルカメラに限定されることはない。例えば、デジタルビデオカメラ、撮像機能を備えたスマートフォン、携帯電話機、PDA(Personal Data Assistant)、タブレット端末等を用いることもできる。
また、上記各実施形態では、計算部60によって画像取得部50で取得した撮像画像に基づいて第2の姿勢情報を算出しているが、本願がこれに限定されることはない。画像取得部50のICチップ等を、計算部として使用し、該計算部で第2の姿勢情報を計算し、計算部60に出力する構成とすることもできる。
また、上記各実施形態において、画像取得部50を2台以上用いる場合にはそれぞれの視野が重複しないように配置しているが、視野が重複するように配置することによって、SfM解析におけるカメラ間距離(基線長)を一部固定して姿勢算出精度を高めることもできる。
また、上記各実施形態では、三次元形状計測の精度向上のために、計測機器(距離計測部20、位置取得部30、慣性計測部40、画像取得部50)を同一のプレート2d,3d上に固定しているが、例えばプレート2d,3d上に直動機構や回転機構を介してこれらの計測機器を固定し、かつこれらの機構による相対的な位置姿勢変化をロータリーエンコーダ等で計測することで、これらの計測機器の相対位置姿勢を容易に変更可能かつ高精度に把握可能な構成とすることもできる。
また、上記各本実施形態では、計算部60をデスクトップ型のPC61で構成しているが、本願がこれに限定されることはなく、ノート型PC、タブレット型PC等で構成することもできる。また、本実施形態では、ノート型PC64の液晶ディスプレイ65、スピーカ等を表示部とし、キーボード、マウス等を入力部としている。しかし、本願がこれに限定されることはなく、PC61に、単体の液晶モニタ、スピーカ等を接続して表示部とし、キーボード、マウス等を接続して入力部とした構成とすることもできる。入力部をマイクやタッチパッドやタッチパネルモニタとすることもできる。ノート型PC64をタブレット端末やウェアラブル装置(眼鏡型や時計型等)で置き換えることもできる。
また、上記各実施形態では、情報通信装置として、無線通信モデム63,12を用いているが、本願がこれに限定されるものではなく、有線モデムを用いることもできる。