JP6592388B2 - アルミニウム合金軟質箔 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金軟質箔(以下、適宜「軟質箔」という)に関するものであり、詳細には、強度に優れたアルミニウム合金軟質箔に関するものである。
アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔は、日用品、食料品、薬品等の包装用途、建築材、車両、船舶等の断熱用途、コンデンサ、基板等の電気機器用途といった非常に広い用途に使用されている。
そして、このようなアルミニウム箔及びアルミニウム合金箔について、強度を優れたものとするため、様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、重量%で、Fe:0.7〜2.0%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金につき、熱間圧延後、冷間圧延中において中間焼鈍を行わずに箔製品まで加工率97%以上の強加工した後、300〜450℃の範囲で仕上げ焼鈍を施すことを特徴とするアルミニウム箔の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、重量%で、Fe:0.8〜2.0%を含有すると共に、Si:0.15%以下に規制し、且つFe/Si比を15以上に調整し、不可避的不純物元素をそれぞれ0.05%以下に規制し、結晶粒径が15μm以下であることを特徴とするアルミニウム箔が提案されている。
特開平2−80541号公報 特開平3−120332号公報
特許文献1、2に提案された技術は、いずれも強度の向上を課題の一つとして掲げているため、ある程度、高い強度のアルミニウム合金軟質箔を得ることができる。
しかしながら、アルミニウム合金軟質箔の強度の向上に対する要望は強く、更なる強度の向上が求められている。
そこで、本発明は、強度に優れたアルミニウム合金軟質箔を提供することを課題とする。
本発明者は、アルミニウム合金軟質箔の強度を高くするために、亜結晶粒(subgrain)組織を含む傾角が5°を超える結晶粒(以下、適宜「サブグレインを含む結晶粒」という)に着目するとともに、このサブグレインを含む結晶粒と軟質箔の強度との関連性を数多くの実験結果から導き出すことにより、本発明を創出するに至った。
すなわち、本発明に係るアルミニウム合金軟質箔は、Fe:0.70〜1.40質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、表面において、傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径は3.5μm以下であることを特徴とする。
このアルミニウム合金軟質箔によれば、所定量のFeを含有し、傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径を所定値以下としていることから、強度に優れたものとなる。
本発明に係るアルミニウム合金軟質箔は、合金成分の含有量を所定範囲とし、傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径を所定値以下とすることによって、優れた強度を発揮することができる。
サブグレインを含む結晶粒の組織状態を確認するための箔表面の画像(供試材1の画像)である。 サブグレインを含む結晶粒についてEBSD法により結晶粒解析した結果(供試材1の結果)である。
以下、本発明に係るアルミニウム合金軟質箔を実施するための形態について、詳細に説明する。
[アルミニウム合金軟質箔]
本実施形態に係る軟質箔は、所定量のFeを含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、表面において、傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径が所定値以下である。
そして、本実施形態に係る軟質箔の厚さは特に限定されないものの、例えば、5〜100μmであり、好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。また、本実施形態に係る軟質箔を日用品、食料品、薬品等の包装用途に適用する場合、厚さは10μm以下が特に好ましい。なお、本実施形態に係る軟質箔は、後記のとおり中間焼鈍を行わずに製造する直通材である。
以下、本実施形態に係る軟質箔の合金成分の含有量、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径について、数値限定した理由を説明する。
(Fe:0.70〜1.40質量%)
Feは、強度を付与するための成分であって、Al−Fe系金属間化合物を形成させるとともに、軟質箔にサブグレインを含む結晶粒を形成させ、且つ微細にするために添加する。Feの含有量が0.70質量%未満では、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が大きくなってしまい、十分な強度が得られない。一方、Feの含有量が1.40質量%を超えると、粗大なAl−Fe系金属間化合物が多くなり、重合箔圧延が困難になる可能性が高くなる。
したがって、Feの含有量は0.70〜1.40質量%である。
なお、Feの含有量は、サブグレインを含む結晶粒をより微細にする観点から、好ましくは0.80質量%以上である。また、Feの含有量は、箔圧延をより行い易くする観点から、好ましくは1.30質量%以下である。
(残部:Al及び不可避的不純物)
本実施形態に係る軟質箔は、JIS H 4000:2014の合金番号8079や8021に規定される範囲内で、Fe以外の元素を不可避的不純物として含んでもよい。この不可避的不純物の元素として、具体的には、Si、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Ti、Zr、V、Ni、Sn、In、Ga等が挙げられる。これらの元素の含有量は個々に、Si:0.2質量%以下、Cu:0.03質量%以下、Mg:0.01質量%以下(好ましくはMg:0.005質量%以下)、前記Si、Cu、Mg以外の元素の含有量は個々に0.05質量%以下、それら合計で0.15質量%以下に規制されることが好ましく、この範囲内であれば、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加された場合であっても、本発明の効果を妨げない。
(傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径:3.5μm以下)
本実施形態に係る軟質箔の強度を優れたものとするためには、表面における傾角が5°を超える結晶粒(サブグレインを含む結晶粒)の平均結晶粒径を小さくする必要がある。
ここで、「傾角が5°を超える結晶粒」とは、軟質箔の表面において、傾角(隣接する結晶粒同士の結晶方位差)が5°を超える粒界で囲まれた結晶粒であり、サブグレイン(傾角が5°を超えて15°以下の結晶粒)だけでなく、傾角が15°を超える結晶粒をも含むものである。このように「傾角が5°を超える結晶粒」について規定した理由は、軟質箔の強度が、「傾角が15°を超える結晶粒」ではなく、サブグレインを含んだ「傾角が5°を超える結晶粒」の平均結晶粒径に強く依存していることを数多くの実験結果から突き止めたからである。
なお、結晶構造上、傾角の最大値は65°である。
そして、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が3.5μmを超えると、所望の強度を得ることができない。
したがって、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径は3.5μm以下である。
なお、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径は、軟質箔の強度をより向上させるという観点から、3.3μm以下が好ましく、3.0μm以下がより好ましい。
このサブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径は、前記したように、合金成分の含有量を所定範囲とするとともに、後記するように、中間焼鈍を実施することなく所定範囲の温度で仕上げ焼鈍を行うことによって制御することができる。
そして、Feの含有量を多くするとともに仕上げ焼鈍の温度を低くすることによって、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径を小さくできるものの、2.0μm未満にするのは困難である。よって、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径の下限は特に限定されないものの、2.0μm以上である。
なお、アルミニウム合金板の結晶粒径の測定は、通常、板表面に対してバフ研磨、電解研磨、及び、電解エッチングを施した後、光学顕微鏡を用いて偏光観察(例えば、観察倍率100倍)する「バーカー法」によって実施されることが多い。
しかしながら、厚さが10μm以下の薄い軟質箔に対しては、前記のような物理的前処理が困難であり、且つ、結晶粒径が小さいため、バーカー法では精度よく測定することはできない。また、バーカー法では、原則として、再結晶粒、すなわち「傾角が15°を超える結晶粒」の測定となる。
そこで、本発明者は、前処理が容易であるとともに、所望の傾角(本発明では5°を超える傾角)の結晶粒径を高精度で測定することが可能なEBSD法(Electron Back Scatter Diffraction)を測定法として採用した。
例えば、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径の測定は、軟質箔の表面をイオンエッチングした後、走査型電子顕微鏡を用いて軟質箔の表面を確認し、EBSD法によって算出することができる。
(金属間化合物)
本実施形態に係る軟質箔は、箔表面において、微細な金属間化合物(円相当径が0.03μmを超え0.40μm以下のAl−Fe系金属間化合物)が100×10〜200×10個/mmであるのが好ましい。微細な金属間化合物が100×10個/mm未満であると、仕上げ焼鈍時に界面移動が生じ、サブグレインを含む結晶粒が粗大化してしまうおそれがあるからである。また、微細な金属間化合物が200×10個/mmを超えると、後記の粗大な金属間化合物の存在と相まって、ピンホール等が発生し易くなるおそれがあるからである。
本実施形態に係る軟質箔は、箔表面において、粗大な金属間化合物(円相当径が2.0μmを超えるAl−Fe系金属間化合物)が20×10個/mm以下であるのが好ましい。粗大な金属間化合物が20×10個/mmを超えると、ピンホール等が発生し易くなるおそれがあるからである。一方、粗大な金属間化合物の個数密度の下限については特に限定されないものの、例えば、8×10個/mm以上である。
微細な金属間化合物や粗大な金属間化合物の個数密度は、前記した合金成分の含有量を所定範囲とするとともに、後記するように、所定範囲の温度と時間で均質化熱処理を行うことによって制御することができる。
なお、微細な金属間化合物、粗大な金属間化合物の個数密度の測定は、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて実施することができる。
本実施形態に係る軟質箔は、以上説明したとおりであるが、その他の明示していない特性等については、従来公知のものであればよく、前記特性によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。
[アルミニウム合金軟質箔の製造方法]
次に、本実施形態に係る軟質箔の製造方法を説明する。
本実施形態に係る軟質箔は、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、箔圧延工程と、重合箔圧延工程と、仕上げ焼鈍工程と、を含み、この順に行う。ただし、中間焼鈍は行わない。
以下、各工程について説明する。
(鋳造工程)
鋳造工程は、前記の成分組成であるアルミニウム合金を定法により溶解、鋳造して、アルミニウム合金鋳塊を作製する工程である。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程は、アルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理する工程である。均質化熱処理は、鋳塊に熱間圧延を実施するために施されるものであり、本発明においては、Al−Fe系の微細な金属間化合物を析出させるためのものである。
均質化熱処理の均熱温度が400℃未満では、固溶元素の拡散速度が極端に低下し、所望の金属間化合物分布とならないとともに、熱間圧延が困難となる。一方、均熱温度が500℃を超えると、微細な金属間化合物の数が減少する。
均質化熱処理の保持時間は、微細な金属間化合物の形成を促進させるために、長い方が好ましい。保持時間が2時間末満では、微細な金属間化合物の形成が促進され難く、サブグレインを含む結晶粒が十分に小さくならない。また、鋳塊の幅方向及び長さ方向の組織の均一性に欠けるため好ましくない。一方、保持時間が24時間を超えると、経済性の観点から好ましくない。
したがって、均質化熱処理は、400〜500℃の均熱温度で2〜24時間保特することが好ましい。
なお、均質化熱処理の保持時間は、経済性の観点から20時間以下とするのが好ましく、微細な金属間化合物の形成を促進させる観点、並びに、鋳塊の幅方向及び長さ方向の組織の均一性をより向上させる観点から、4時間以上とするのが好ましい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程は、均質化熱処理したアルミニウム鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする工程であり、熱間粗圧延及び熱間仕上げ圧延を含む。
熱間圧延の条件は特に限定されないが、例えば、開始温度が400〜500℃とし、終了温度を390〜440℃とする熱間粗圧延と、終了温度が300℃以上であって、板厚を3mm以下(好ましくは2.5mm以下)とする熱間仕上げ圧延と、を施すという条件とすればよい。
(冷間圧延工程、箔圧延工程)
冷間圧延工程、及び箔圧延工程は、熱間圧延板を焼鈍することなく、冷間圧延、及び箔圧延を施して硬質箔とする工程である。そして、この冷間圧延工程、及び箔圧延工程では、熱間圧延板に大きな塑性ひずみを付与することによって、結晶粒を微細化させることができる。冷間圧延工程、及び箔圧延工程において施す圧延処理について、熱間圧延後の板厚をtmmとし、箔圧延後(言い換えると重合箔圧延前)の箔厚をtmmとした場合、ln(t/t)の値が4.0未満であると、材料中に十分な塑性ひずみを付与することができず、箔表面において所望の組織とすることができない。
したがって、冷間圧延工程、及び箔圧延工程において施す圧延処理は、熱間圧延後の板厚をtmmとし、箔圧延後の箔厚をtmmとした場合、ln(t/t)の値が4.0以上となる条件で行うのが好ましい。
(重合箔圧延工程)
重合箔圧延工程は、箔圧延後の硬質箔を重合圧延する工程である。そして、重合箔圧延とは、箔圧延の最終パスにおいて箔を2枚重ねてロールに供給し、圧延するものである。
重合箔圧延の条件は特に規定されるものでなく、硬質箔が所望の箔厚になるまで圧延を行えばよい。重合箔圧延は、一例として、圧延率が30〜60%となる条件で行う。また、重合箔圧延後の箔厚は、一例として、5〜40μmである。
(仕上げ焼鈍工程)
仕上げ焼鈍工程は、重合箔圧延後の硬質箔に対して脱脂等を目的として焼鈍を施し軟質箔とする工程である。そして、この仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度を低くすることによって、サブグレインを含む結晶粒を小さくすることができる。なお、紙、樹脂フィルム等と貼り合わせて使用する軟質箔は、成形加工性を向上させるために再結晶組織を形成させる必要がないため、この仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度は低くてもよい。
仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度が275℃を超えると、サブグレインを含む結晶粒が粗大となるとともに傾角が15°を超える再結晶粒径の比率が高まり、軟質箔の強度が低下し易い。一方、仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度が220℃未満であると、箔表面に付着している圧延油を適切には除去できない。
したがって、仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度は、220〜275℃が好ましい。
なお、仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度は、軟質箔の強度をより向上させるという観点から、260℃以下がより好ましく、250℃以下が特に好ましい。また、仕上げ焼鈍工程の焼鈍温度は、圧延油をより適切に除去する観点から、240℃以上がより好ましい。
仕上げ焼鈍工程の焼鈍時間は、特に限定されないものの、2〜100時間であればよい。
(その他の工程)
本実施形態に係る軟質箔の製造方法は、以上に説明したとおりであるが、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、鋳塊を面削する表面平滑化工程や、板や箔の表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
また、前記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、前記各工程での処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。
次に、本発明に係る軟質箔について、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
[供試材作製]
表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、500mm厚に半連続鋳造にて鋳造して表1に示す組成の鋳塊とした。この鋳塊に面削を施した後、均質化熱処理を施し、2.3mmの厚さまで熱間圧延を実施した。そして、冷間圧延、及び箔圧延を施し、厚さが10〜20μmの硬質箔を製造した。その後、表1の厚さになるように重合箔圧延を施し、さらに、仕上げ焼鈍を施し、供試材(軟質箔)を製造した。
均質化熱処理については、〔1〕480℃×8時間、〔2〕540℃×4時間、〔3〕590℃×4時間、の3つの条件で実施した。
そして、供試材1〜4、7、9の均質化熱処理は〔1〕の条件、供試材5、6、10の均質化熱処理は〔2〕の条件、供試材8の均質化熱処理は〔3〕の条件で実施した。
仕上げ焼鈍については、〔1〕245℃×36時間、〔2〕380℃×10時間、の2つの条件で実施した。
そして、供試材1〜6、8、10の仕上げ焼鈍は〔1〕の条件、供試材7、9の仕上げ焼鈍は〔2〕の条件で実施した。
なお、供試材1〜4、7、9は中間焼鈍を実施しておらず、これらの熱間圧延の終了温度は300〜330℃であった。一方、供試材5は390℃×4hrの中間焼鈍(中間焼鈍時の板厚0.45mm)、供試材6は420℃×4hr(中間焼鈍時の板厚0.45mm)、供試材8、10は420℃×4hr(中間焼鈍時の板厚0.60mm)の中間焼鈍を冷間圧延の途中で実施した。なお、供試材5、6、8、10の熱間圧延の終了温度は270℃であった。
[測定項目、評価項目]
(傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径)
傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径の測定は、以下の手順で行った。
(1)供試材である箔を有機溶剤に浸漬させることにより表面の油分を軽く除去した。
(2)日本電子株式会社製、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis、型式JPS−9010MC)を用い、加速電圧600V、電流13mAにて500秒間のイオンエッチングを箔の表面に施した。
(3)日本電子株式会社製、FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope、型式JSM−700F)を用い、加速電圧20KVの条件の下、株式会社TSLソリューションズ製の測定ソフトであるTSL−OIM(Orientation Imaging Microscope)−Data Collectionバージョン5にて箔表面を測定した。測定は、200倍(0.5μmステップ、400μm×200μm)で行った。
(4)測定データを、株式会社TSLソリューションズ製の解析ソフトであるTSL−OIM(Orientation Imaging Microscope)−Analysisバージョン7にて解析を行った。
(5)まず、サブグレインを含む結晶粒の定義として、Grain Tolerance Angle:5°、ピクセル(ステップ):2と規定し、2ピクセル間で方位差が5°以下の場合は、それらのピクセルは同一結晶粒であるとした。
(6)Unique Grain Color Quick Map にて結晶粒観察を行うとともに、Grain Size Quick Chart にて得られた結晶粒径−存在分率の値を、絶対値表示のNumber Fractionのモードで再プロットし、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径を求めた。これは、各結晶粒中のピクセル数×ステップ寸法よって、測定視野中の全結晶粒の個々の面積を求め、その後、各結晶粒の円相当径を算出し、その各結晶粒の円相当径に存在分率(=1/測定視野中の全結晶粒の個数)を乗じ、合計して算出したものである。
前記(1)〜(6)の方法に基づいて得られた供試材1の測定結果を図1、2に示す。
図1は、前記(1)〜(5)の方法に基づいて得られた供試材1の「サブグレインを含む結晶粒」の組織状態を示す箔表面の画像である。この図1の画像から、供試材1の「サブグレインを含む結晶粒」が微細であることを確認することができる。
図2は、前記(6)の方法によって、図1の画像を結晶粒解析した結果である。詳細には、図2の左側のグラフは、横軸を「Grain Size(Diameter)[microns]」(結晶粒の円相当径)、縦軸を「Number Fraction」(存在分率)として解析結果(図2の右側)をプロットしたグラフである。そして、図2の「Average Number」は、供試材1のサブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径を示しており、各結晶粒の個々の円相当径の値に対して、各結晶粒の存在分率(=1/測定視野中の全結晶粒の個数)の値を乗じ、合計して算出したものである。
(引張強さ)
引張強さの測定は、軽金属協会規格LIS AT5に準じてB型試験片を用いて実施した。すなわち、軟質箔である供試材から、引張方向が圧延方向と平行になるように15mm幅×約200mm長さの短冊型試験片を切り出し、チャック間距離100mmを標点距離として実施した。試験には、Instron社製 5965 デュアルコラム卓上型試験システム(荷重容量5kN)を用い1kNレンジにて試験を行い、付属ソフトであるBluehillにて測定・解析を行った。
なお、引張強さは、80N/mm以上を合格と評価した。
(金属間化合物)
金属間化合物の個数密度の測定には、日本電子株式会社製、FE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope、型式JSM−7001F)を用い、加速電圧を15KVとした。そして、付属の分析システム“Analysis Station 3,8,0,31”と、粒子解析ソフト“EX−35110 粒子解析ソフトウエアVer.3.84”と、を用い、FE−SEMで得られた組成像におけるAl−Fe系金属間化合物の個数密度を算出した。
なお、円相当径が2.0μmを超えるAl−Fe系金属間化合物の個数密度を測定する際の測定倍率は1000倍とし、1視野90μm×150μmにつき合計30視野で測定した後、30視野で測定した個数密度から平均値を算出した。一方、円相当径が0.03μmを超え0.40μm以下のAl−Fe系金属間化合物の個数密度を測定する際の測定倍率は5000倍とし、1視野18μm×30μmにつき合計30視野で測定した後、30視野で測定した個数密度から平均値を算出した。
アルミニウム合金の成分、及び、測定項目、評価項目の結果を表1に示す。
なお、表1において、傾角が5°を超える結晶粒を「サブグレインを含む結晶粒」と示し、円相当径が0.03μmを超え0.40μm以下のAl−Fe系金属間化合物を「微細な金属間化合物」と示し、円相当径が2.0μmを超えるAl−Fe系金属間化合物を「粗大な金属間化合物」と示した。
また、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径は、前記の方法によって得られた値の小数点第2位を四捨五入した値である。
[結果の検討]
供試材1〜4については、本発明の規定する要件を満たしていることから、引張強さは80N/mm以上となり、軟質箔として優れた強度を発揮できることがわかった。
一方、供試材5〜10については、本発明の規定する要件を満たしていないことから、以下の結果となった。
供試材5については、Feの含有量が少なかったことから、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が大きくなり、引張強さが不合格という結果となった。
供試材6については、中間焼鈍を施していたことから、結晶粒が微細化せず、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が大きくなり、引張強さが不合格という結果となった。
供試材7については、仕上げ焼鈍の焼鈍温度が高かったことから、再結晶化が進みサブグレインの比率が減少したことにより、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が大きくなり、引張強さが不合格という結果となった。
供試材8については、中間焼鈍を施していたことから、結晶粒が微細化せず、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が大きくなり、引張強さが不合格という結果となった。
供試材9については、仕上げ焼鈍の焼鈍温度が高かったことから、再結晶化が進みサブグレインの比率が減少したことにより、サブグレインを含む結晶粒の平均結晶粒径が大きくなり、引張強さが不合格という結果となった。
供試材10については、Feの含有量が多かったが、中間焼鈍を施したために、困難であったものの重合箔圧延を施すことはできた。しかしながら、供試材10は、重合箔圧延で箔切れが多発したため、軟質箔として評価するに値しないと判断した。よって、供試材10については、引張強さ、及び、金属間化合物の個数密度の測定については実施しなかった。
なお、供試材7、9は、特許文献1、2に記載されている従来の軟質箔を想定したものである。
以上の結果より、本発明に係るアルミニウム合金軟質箔は、従来の軟質箔と比較して、強度に優れた軟質箔であることが確認できた。

Claims (1)

  1. Fe:0.70〜1.40質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、
    表面において、傾角が5°を超える結晶粒の平均結晶粒径は3.5μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金軟質箔。
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