以下、本発明の実施の形態によるサスペンション制御装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、鉄道車両1(車両)は、例えば乗客、乗員等が乗車する車体2と、車体2の下側に設けられた前側および後側の台車3(1台のみ図示)とを有している。これらの台車3は、車体2の前部側と後部側とに離間して配置され、各台車3にはそれぞれ4個の車輪4が設けられている。鉄道車両1は、各車輪4が左右のレール5上を回転することにより、レール5に沿って走行駆動する。
台車3と車輪4との間には、車輪4(輪軸)からの振動や衝撃を緩和する軸ばね6が設けられている。また、車体2と台車3との間には、枕ばねとしての空気ばね7が複数設けられると共に、空気ばね7と並列に上下動力発生機構としての上下動アクティブサスペンション8が複数設けられている。空気ばね7および上下動アクティブサスペンション8は、台車3の左右両側に配置され、台車3に2個ずつ設けられている。このため、空気ばね7および上下動アクティブサスペンション8は、鉄道車両1全体で合計4個設けられている。
各上下動アクティブサスペンション8は、アクチュエータ8Aによって振動とは逆の力(制振力)を発生させるアクティブダンパによって構成されている。アクティブダンパは、シリンダ内で往復動するピストンを備えている。また、アクティブダンパは、動力源に作動油や圧縮空気を使用する油圧式や空圧式でもよく、電動アクチュエータを使用する電動式でもよく、リニアモータ等のように電磁力を用いる電磁式でもよい。この上下動アクティブサスペンション8は、台車3に対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような力を発生する。これにより、上下動アクティブサスペンション8は、車体2の上下方向の振動を低減する。
また、車体2と台車3との間は、車両1の左右方向に沿って左右動力発生機構としての左右動アクティブサスペンション9が設けられている。左右動アクティブサスペンション9は、上下動アクティブサスペンション8と同様に、能動動作するアクティブダンパを用いて構成されている。このため、左右動アクティブサスペンション9は、アクチュエータ9Aによって振動とは逆の力(制振力)を発生させる。この左右動アクティブサスペンション9は、台車3に対する車体2の左右方向の振動に対して、振動を低減させるような力を発生する。これにより、左右動アクティブサスペンション9は、車体2の左右方向の振動を低減する。
車体振動センサ10は、例えばばね上側となる車体2に設けられ、車体2の上下方向の振動、左右方向の振動、ロール振動、スウェ振動、ヨー振動等を検出する。即ち、車体振動センサ10は、車体2の振動状態を検出する車体状態検出部を構成している。この車体振動センサ10は、例えば車両1の進行方向に対して左右方向に作用する車体2の左右加速度センサ、前後方向に作用する車体2の前後加速度センサ、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向等の振動を検出する角速度センサ等によって構成されている。
なお、車体振動センサ10は、上下方向の振動、左右方向の振動、ロール振動、ピッチ振動、ヨー振動、スウェ振動、バウンス振動等を一緒に計測可能な複合センサであるものとした。本発明はこれに限らず、これらの振動は別個のセンサで個別に計測してもよい。
第1のコントローラ11は、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動アクティブサスペンション8が発生すべき力(制振力)を演算する。第1のコントローラ11は、上下動アクティブサスペンション8のアクチュエータ8Aに出力すべき目標電流値等のような制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動アクティブサスペンション8の制振力を制御する。具体的には、コントローラ11は、車体2の上下方向の振動やロール振動を低減すべく、サンプリング時間毎に例えばスカイフック理論(スカイフック制御則)に基づいて上下動アクティブサスペンション8の制振力を制御する。そして、上下動アクティブサスペンション8は、アクチュエータ8Aに供給された制御指令信号に従って制振力が連続的に、または複数段で可変に制御される。
また、第1のコントローラ11は、例えばCAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)等の各種のネットワークを介して、第2のコントローラ12に接続されている。これにより、第1のコントローラ11および第2のコントローラ12は、互いの状態を通信により伝達している。
第1のコントローラ11は、第2のコントローラ12からの信号に基づいて、例えば左右動アクティブサスペンション9のストローク量X等を取得する。第1のコントローラ11は、後述の協調制御プログラムを実行し、左右動アクティブサスペンション9のストローク量X等に応じて、上下動アクティブサスペンション8のゲインを調整する。
第2のコントローラ12は、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動アクティブサスペンション9が発生すべき力(制振力)を演算する。第2のコントローラ12は、左右動アクティブサスペンション9のアクチュエータ9Aに出力すべき目標電流値等のような制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動アクティブサスペンション9の制振力を制御する。具体的には、コントローラ12は、車体2の左右方向の振動やロール振動を低減すべく、サンプリング時間毎にスカイフック理論等のような各種の制御則に基づいて左右動アクティブサスペンション9の制振力を制御する。そして、左右動アクティブサスペンション9は、アクチュエータに供給された制御指令信号に従って制振力が連続的に、または複数段で可変に制御される。
次に、第1のコントローラ11が実行する上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9の協調制御プログラムについて、図1ないし図3を用いて説明する。なお、図2に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ1はストローク量取得部の一例を示している。このステップ1では、第1のコントローラ11は、第2のコントローラ12からの信号に基づいて、左右動アクティブサスペンション9のストローク量Xを取得する。なお、第1のコントローラ11は、左右動アクティブサスペンション9に設けられたセンサ等によって、左右動アクティブサスペンション9のストローク量Xを直接的に取得してもよい。
続くステップ2はストローク量判定部の一例を示している。このステップ2では、左右動アクティブサスペンション9のストローク量Xが予め決められた閾値±Xdを超えているか否かを判定する(−Xd>X,X>Xd)。具体的には、例えばストローク距離の80%のように、予め決められた所定の長さ(Xd)を超えて、左右動アクティブサスペンション9がストロークしたか否かを判定する(|X|>Xd)。
ステップ2で「YES」と判定したときには、左右動アクティブサスペンション9が伸び側または縮み側のストローク限界付近で動作しており、ロール振動に対して十分な制振力が発生できない可能性がある。このため、ステップ3に移行して、第1のコントローラ11は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを上昇させる(図3参照)。これにより、ロール振動に対して、左右動アクティブサスペンション9では不足する制振力を、車体2の左側と右側に設けられた2つの上下動アクティブサスペンション8の制振力によって補うことができる。
一方、ステップ2で「NO」と判定したときには、左右動アクティブサスペンション9がストローク限界から離れた位置で動作しており、ロール振動に対して十分な制振力が発生可能と考えられる。このため、ステップ4に移行して、第1のコントローラ11は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを低下させる(図3参照)。これにより、上下動アクティブサスペンション8の制振力の影響を低下させた状態で、左右動アクティブサスペンション9の制振力によってロール振動を抑制することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、第1のコントローラ11は、左右動アクティブサスペンション9の状態に応じて、上下動アクティブサスペンション8の発生力(制振力)を決定する。ここで、左右動アクティブサスペンション9がストローク限界まで伸長または縮小した場合、振動を抑える力を発生することができないため、乗り心地が悪化する。これに対し、第1のコントローラ11は、左右動アクティブサスペンション9のストローク量Xからロール振動に十分な制振力を発生することができない場合は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に対するゲインを高める。これにより、左右動アクティブサスペンション9がロール振動を抑えるために十分な力が発生することができない状態の場合でも、ロール振動を抑制することができるため、乗り心地を向上することができる。
次に、図1は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、第1の実施の形態による協調制御を、上下動セミアクティブサスペンションに適用したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態による鉄道車両21は、第1の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動セミアクティブサスペンション22、左右動アクティブサスペンション9、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ23,12等を備えている。
ここで、上下動セミアクティブサスペンション22は、それぞれの減衰力を個別に調整可能なセミアクティブダンパを用いて構成されている。即ち、上下動セミアクティブサスペンション22は、アクチュエータ22Aにより作動流体の流れを制御するセミアクティブダンパによって構成されている。セミアクティブダンパは、例えば作動流体として作動油を用いる油圧式でもよく、作動流体として空気を用いる空圧式のいずれでもよい。この上下動セミアクティブサスペンション22は、第1のコントローラ23からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、上下動セミアクティブサスペンション22は、車体2の上下方向の振動を低減する。
第1のコントローラ23は、第1の実施の形態による第1のコントローラ11とほぼ同様に構成されている。但し、車両21は、上下動アクティブサスペンション8に代えて、上下動セミアクティブサスペンション22を備えている。このため、第1のコントローラ23は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動セミアクティブサスペンション22が発生すべき減衰力を演算する。第1のコントローラ23は、上下動セミアクティブサスペンション22のアクチュエータ22Aに出力すべき目標電流値等のような制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動セミアクティブサスペンション22の減衰力を制御する。そして、上下動セミアクティブサスペンション22は、アクチュエータ22Aに供給された制御指令信号に従って、減衰力がハードとソフトの間で連続的に、または複数段で可変に制御される。
また、第1のコントローラ23は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ12に接続されている。第1のコントローラ23は、第2のコントローラ12からの信号に基づいて、例えば左右動アクティブサスペンション9のストローク量X等を取得する。第1のコントローラ23は、図2に示す協調制御プログラムとほぼ同様な協調制御プログラムを実行し、左右動アクティブサスペンション9のストローク量X等に応じて、上下動セミアクティブサスペンション22のゲインを調整する。
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図1、図4および図5は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、左右動セミアクティブサスペンションのピストン速度に応じて、上下動アクティブサスペンションのロール振動に対するゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施の形態による鉄道車両31は、第1の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動アクティブサスペンション8、左右動セミアクティブサスペンション32、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ33,34等を備えている。
ここで、左右動セミアクティブサスペンション32は、減衰力を調整可能なセミアクティブダンパを用いて構成されている。このため、左右動セミアクティブサスペンション32は、例えば第2の実施の形態による上下動セミアクティブサスペンション22と同様に、アクチュエータ32Aにより作動流体の流れを制御する。この左右動セミアクティブサスペンション32は、第2のコントローラ12からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の左右方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、左右動セミアクティブサスペンション32は、車体2の左右方向の振動を低減する。
第1のコントローラ33は、第1の実施の形態による第1のコントローラ11とほぼ同様に構成されている。このため、第1のコントローラ33は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動アクティブサスペンション8が発生すべき制振力を演算する。第1のコントローラ33は、上下動アクティブサスペンション8のアクチュエータ8Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動アクティブサスペンション8の制振力を制御する。
また、第1のコントローラ33は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ34に接続されている。第1のコントローラ33は、第2のコントローラ34からの信号に基づいて、例えば左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPを取得する。第1のコントローラ33は、後述の協調制御プログラムを実行し、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPに応じて、上下動アクティブサスペンション8の制振力を調整する。
第2のコントローラ34は、第2の実施の形態による第2のコントローラ12とほぼ同様に構成されている。但し、左右動セミアクティブサスペンション32は、セミアクティブダンパによって構成されている。このため、第2のコントローラ34は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動セミアクティブサスペンション32が発生すべき減衰力を演算する。第2のコントローラ34は、左右動セミアクティブサスペンション32のアクチュエータ32Aに出力すべき目標電流値等のような制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動セミアクティブサスペンション32の減衰力を制御する。そして、左右動セミアクティブサスペンション32は、アクチュエータ32Aに供給された制御指令信号に従って、減衰力がハードとソフトの間で連続的に、または複数段で可変に制御される。
次に、第1のコントローラ33が実行する上下動アクティブサスペンション8と左右動セミアクティブサスペンション32の協調制御プログラムについて、図1、図4および図5を用いて説明する。なお、図4に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ11はピストン速度取得部の一例を示している。このステップ11では、第1のコントローラ33は、第2のコントローラ34からの信号に基づいて、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPを取得する。なお、第1のコントローラ11は、左右動セミアクティブサスペンション32に設けられたセンサ等によって、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPを直接的に取得してもよい。
続くステップ12はピストン速度判定部の一例を示している。ステップ12では、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPが予め決められた閾値±VPdよりも低いか否かを判定する(|VP|>VPd)。このとき、閾値VPdは、例えばセミアクティブダンパからなる左右動セミアクティブサスペンション32が、ロール振動を低減させるために十分な減衰力を発生できないピストン速度の値に設定されている。なお、閾値VPdは、一定値に限らず、必要な減衰力に応じて変化させてもよい。
ステップ12で「YES」と判定したときには、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPが所望の減衰力が発生できない程度まで低下している。このため、ステップ13に移行して、第1のコントローラ33は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを上昇させる(図5参照)。これにより、ロール振動に対して、左右動セミアクティブサスペンション32では不足する減衰力を、車体2の左側と右側に設けられた2つの上下動アクティブサスペンション8の制振力によって補うことができる。
一方、ステップ12で「NO」と判定したときには、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VPが所望の減衰力が発生できる程度まで上昇している。このため、ステップ14に移行して、第1のコントローラ33は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを低下させる(図5参照)。これにより、上下動アクティブサスペンション8の制振力の影響を低下させた状態で、左右動セミアクティブサスペンション32の減衰力によってロール振動を抑制することができる。
かくして、第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施の形態では、セミアクティブダンパからなる左右動セミアクティブサスペンション32の伸縮速度(ピストン速度VP)が低下して、発生する減衰力が不足するときでも、上下動アクティブサスペンション8の制振力によって補うことができる。
次に、図1は本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、第3の実施の形態による協調制御を、上下動セミアクティブサスペンションに適用したことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第3の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第4の実施の形態による鉄道車両41は、第3の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動セミアクティブサスペンション42、左右動セミアクティブサスペンション32、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ43,34等を備えている。
ここで、上下動セミアクティブサスペンション42は、第2の実施の形態による上下動セミアクティブサスペンション22とほぼ同様に構成されている。即ち、上下動セミアクティブサスペンション42は、アクチュエータ42Aにより作動流体の流れを制御するセミアクティブダンパによって構成されている。この上下動セミアクティブサスペンション42は、第1のコントローラ43からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。これにより、上下動セミアクティブサスペンション42は、車体2の上下方向の振動を低減する。
第1のコントローラ43は、第3の実施の形態による第1のコントローラ33とほぼ同様に構成されている。但し、上下動セミアクティブサスペンション42は、セミアクティブダンパによって構成されている。このため、第1のコントローラ43は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動セミアクティブサスペンション42が発生すべき減衰力を演算する。具体的には、第1のコントローラ43は、上下動セミアクティブサスペンション42のアクチュエータ42Aに出力すべき制御指令信号を演算処理し、上下動セミアクティブサスペンション42の減衰力を制御する。
また、第1のコントローラ43は、第2のコントローラ34からの信号に基づいて、例えば左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VP等を取得する。第1のコントローラ43は、図4に示す協調制御プログラムとほぼ同様な協調制御プログラムを実行し、左右動セミアクティブサスペンション32のピストン速度VP等に応じて、上下動セミアクティブサスペンション42のゲインを調整する。
かくして、第4の実施の形態でも、第3の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図6ないし図8は本発明の第5の実施の形態を示している。第5の実施の形態の特徴は、車両の走行速度に応じて、上下動アクティブサスペンションおよび左右動アクティブサスペンションのゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第5の実施の形態による鉄道車両51は、第1の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動アクティブサスペンション8、左右動アクティブサスペンション9、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ53,54等を備えている。これに加えて、車両51は、走行速度Vを取得する走行速度取得部52を備えている。
走行速度取得部52は、速度センサ等によって走行速度Vを直接的に取得してもよい。また、走行速度取得部52は、車両51に連結された他の車両や外部の指令センタ等から送信される信号に基づいて、走行速度Vを間接的に取得してもよい。
第1のコントローラ53は、第1の実施の形態による第1のコントローラ11とほぼ同様に構成されている。このため、第1のコントローラ53は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動アクティブサスペンション8が発生すべき制振力を演算する。第1のコントローラ53は、上下動アクティブサスペンション8のアクチュエータ8Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動アクティブサスペンション8の制振力を制御する。
また、第1のコントローラ53は、後述の協調制御プログラムを実行し、車両51の走行速度Vに応じて、上下動アクティブサスペンション8の制振力を調整する。これに加え、第1のコントローラ53は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ54に接続されている。第1のコントローラ53は、車両51の走行速度Vに応じて、第2のコントローラ54に向けて左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整するための協調制御信号を出力する。
第2のコントローラ54は、第1の実施の形態による第2のコントローラ12とほぼ同様に構成されている。このため、第2のコントローラ54は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動アクティブサスペンション9が発生すべき制振力を演算する。第2のコントローラ54は、左右動アクティブサスペンション9のアクチュエータ9Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動アクティブサスペンション9の制振力を制御する。また、第2のコントローラ54は、第1のコントローラ53からの協調制御信号に基づいて、左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整する。
次に、第1,第2のコントローラ53,54が実行する上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9の協調制御プログラムについて、図6ないし図8を用いて説明する。なお、図7に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ21は走行速度判定部の一例を示している。このステップ21では、走行速度取得部52によって取得した車両51の走行速度Vが予め決められた閾値Vd以上か否かを判定する(V≧Vd)。このとき、閾値Vdは、高速走行の速度(例えば200km/h以上)と低速走行の速度(例えば160km/h以下)が既知であるときに、これらのうち高速走行か否かを判定可能な値(例えば180km/h)に基づいて設定されている。
ステップ21で「YES」と判定したときには、走行速度Vが閾値Vd以上であり、車両51は高速走行している。このとき、第1のコントローラ53は、第2のコントローラ54に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ22では、第2のコントローラ54は、左右動アクティブサスペンション9のスウェ振動およびヨー振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ23では、第2のコントローラ54は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを低下させる。これに加えて、ステップ24では、第1のコントローラ53は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ25では、第1のコントローラ53は、上下動アクティブサスペンション8のバウンス振動およびピッチ振動に関するゲインを低下させる(図8参照)。
一方、ステップ21で「NO」と判定したときには、走行速度Vが閾値Vdよりも低く、車両51は低速走行している。このため、ステップ26では、第1のコントローラ53は、上下動アクティブサスペンション8のバウンス振動およびピッチ振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ27では、第1のコントローラ53は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを低下させる。これに加え、第1のコントローラ53は、第2のコントローラ54に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ28では、第2のコントローラ54は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ29では、第2のコントローラ54は、左右動アクティブサスペンション9のスウェ振動およびヨー振動に関するゲインを低下させる(図8参照)。
かくして、第5の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第5の実施の形態では、車両51の走行速度Vに応じて、上下動アクティブサスペンション8および左右動アクティブサスペンション9のゲインを切り換える構成とした。
例えば、新幹線等のような高速走行車両では、高速で走行することを前提に線路の整備が行われている。このため、車両51が高速走行用の区間を走行しているときには、空気力加振等の影響により、左右方向の振動が支配的である。即ち、高速走行時は、上下動アクティブサスペンション8に比べて、左右動アクティブサスペンション9の仕事量が大きい。
この点を考慮して、高速走行時では、左右動アクティブサスペンション9は、左右振動(スウェ振動およびヨー振動)のゲインを高め、ロール振動に対するゲインを下げる(図7、図8参照)。その代わり、上下動アクティブサスペンション8は、仕事量が少ないから、ロール振動に対するゲインを高める。この結果、左右動アクティブサスペンション9はスウェ振動およびヨー振動に注力し、ロール振動は、上下動アクティブサスペンション8によって低減させることができる。
一方、低速走行時では、左右動アクティブサスペンション9に比べて、上下動アクティブサスペンション8の仕事量が大きい。そのため、上下動アクティブサスペンション8は、上下振動(バウンス振動およびピッチ振動)に対するゲインを高め、ロール振動に対するゲインを下げる。その代わり、左右動アクティブサスペンション9は、仕事量が少ないから、ロール振動に対するゲインを高める。
これにより、走行速度Vに応じて上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9のロール振動に対するゲインを調整して、振動成分に対して役割分担を明確にすることができる。この結果、走行速度Vに応じた最適な制御を行うことができ、乗り心地を向上することができる。
次に、図9および図10は本発明の第6の実施の形態を示している。第6の実施の形態の特徴は、車両の走行位置に応じて、上下動アクティブサスペンションおよび左右動アクティブサスペンションのゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第6の実施の形態では、前述した第5の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第6の実施の形態による鉄道車両61は、第1の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動アクティブサスペンション8、左右動アクティブサスペンション9、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ63,64等を備えている。これに加えて、車両51は、現在の走行位置Pを取得する位置情報取得部62を備えている。
位置情報取得部62は、例えばモニタ装置から得られるキロ程情報に基づいて走行位置を取得してもよく、GPS(Global Positioning System)から得られる位置情報に基づいて走行位置を取得してもよい。
第1のコントローラ63は、第5の実施の形態による第1のコントローラ53とほぼ同様に構成されている。第2のコントローラ64は、第5の実施の形態による第2のコントローラ54とほぼ同様に構成されている。
但し、第1のコントローラ63は、後述の協調制御プログラムを実行し、車両61の走行位置に応じて、上下動アクティブサスペンション8の制振力を調整する。これに加え、第1のコントローラ63は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ64に接続されている。第1のコントローラ63は、車両61の走行位置に応じて、第2のコントローラ64に向けて左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整するための協調制御信号を出力する。第2のコントローラ64は、第1のコントローラ53からの協調制御信号に基づいて、左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整する。
次に、第1,第2のコントローラ63,64が実行する上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9の協調制御プログラムについて、図9および図10を用いて説明する。なお、図10に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ31は走行位置判定部の一例を示している。このステップ31では、位置情報取得部62によって取得した車両61の走行位置が、左右振動が支配的な区間内か否かを判定する。このとき、左右振動が支配的な区間は、例えば高速走行用に整備された区間である。
ステップ31で「YES」と判定したときには、車両61は左右振動が支配的な区間内を走行している。このとき、第1のコントローラ63は、第2のコントローラ64に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ32では、第2のコントローラ64は、左右動アクティブサスペンション9のスウェ振動およびヨー振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ33では、第2のコントローラ64は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを低下させる。これに加えて、ステップ34では、第1のコントローラ63は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ35では、第1のコントローラ63は、上下動アクティブサスペンション8のバウンス振動およびピッチ振動に関するゲインを低下させる。
一方、ステップ31で「NO」と判定したときには、車両61は左右振動が支配的な区間外を走行している。このため、ステップ36では、第1のコントローラ63は、上下動アクティブサスペンション8のバウンス振動およびピッチ振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ37では、第1のコントローラ63は、上下動アクティブサスペンション8のロール振動に関するゲインを低下させる。これに加え、第1のコントローラ63は、第2のコントローラ64に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ38では、第2のコントローラ64は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを上昇させる。続くステップ39では、第2のコントローラ64は、左右動アクティブサスペンション9のスウェ振動およびヨー振動に関するゲインを低下させる。
かくして、第6の実施の形態でも、第5の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。第5の実施の形態では、走行速度Vに応じて上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整しているが、区間毎に走行速度が明確に定められていることがある。このように、走行速度が明確に定められている区間では、第6の実施の形態のように、走行位置に応じて上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整してもよい。
次に、図6および図11は本発明の第7の実施の形態を示している。第7の実施の形態の特徴は、車両の走行速度に応じて、上下動セミアクティブサスペンションおよび左右動セミアクティブサスペンションのゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第7の実施の形態では、前述した第5の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第7の実施の形態による鉄道車両71は、第5の実施の形態による鉄道車両51とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動セミアクティブサスペンション72、左右動セミアクティブサスペンション73、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ74,75等を備えている。
上下動セミアクティブサスペンション72は、第2の実施の形態による上下動セミアクティブサスペンション22とほぼ同様に構成されている。即ち、上下動セミアクティブサスペンション72は、アクチュエータ72Aにより作動流体の流れを制御するセミアクティブダンパによって構成されている。この上下動セミアクティブサスペンション72は、第1のコントローラ74からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。
左右動セミアクティブサスペンション73は、第3の実施の形態による左右動セミアクティブサスペンション32とほぼ同様に構成されている。即ち、左右動セミアクティブサスペンション73は、アクチュエータ73Aにより作動流体の流れを制御するセミアクティブダンパによって構成されている。この左右動セミアクティブサスペンション73は、第2のコントローラ75からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の左右方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。
第1のコントローラ74は、第5の実施の形態による第1のコントローラ53とほぼ同様に構成されている。このため、第1のコントローラ74は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動セミアクティブサスペンション72が発生すべき減衰力を演算する。第1のコントローラ74は、上下動セミアクティブサスペンション72のアクチュエータ72Aに出力すべき目標電流値等のような制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動セミアクティブサスペンション72の減衰力を制御する。
また、第1のコントローラ74は、後述の協調制御プログラムを実行し、車両51の走行速度Vに応じて、上下動セミアクティブサスペンション72の減衰力を調整する。これに加え、第1のコントローラ74は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ75に接続されている。第1のコントローラ74は、車両71の走行速度Vに応じて、第2のコントローラ75に向けて左右動セミアクティブサスペンション73のゲインを調整するための協調制御信号を出力する。
第2のコントローラ75は、第5の実施の形態による第2のコントローラ54とほぼ同様に構成されている。このため、第2のコントローラ75は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動セミアクティブサスペンション73が発生すべき減衰力を演算する。第2のコントローラ75は、左右動セミアクティブサスペンション73のアクチュエータ73Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動セミアクティブサスペンション73の減衰力を制御する。また、第2のコントローラ75は、第1のコントローラ74からの協調制御信号に基づいて、左右動セミアクティブサスペンション73のゲインを調整する。
次に、第1,第2のコントローラ74,75が実行する上下動セミアクティブサスペンション72と左右動セミアクティブサスペンション73の協調制御プログラムについて、図6および図11を用いて説明する。なお、図11に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ41は走行速度判定部の一例を示している。このステップ41では、第1のコントローラ74は、走行速度取得部52によって取得した車両71の走行速度Vが予め決められた閾値Vd以上か否かを判定する(V≧Vd)。
ステップ41で「YES」と判定したときには、走行速度Vが閾値Vd以上であり、車両71は高速走行している。このとき、上下動セミアクティブサスペンション72に比べて、左右動セミアクティブサスペンション73の方が大きな減衰力が発生可能と考えられる。このため、第1のコントローラ74は、第2のコントローラ75に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ42では、第2のコントローラ75は、左右動セミアクティブサスペンション73のロール振動に関するゲインを上昇させる。これに加えて、ステップ43では、第1のコントローラ74は、上下動セミアクティブサスペンション72のロール振動に関するゲインを低下させる。
一方、ステップ41で「NO」と判定したときには、走行速度Vが閾値Vdよりも低く、車両71は低速走行している。このとき、左右動セミアクティブサスペンション73に比べて、上下動セミアクティブサスペンション72の方が大きな減衰力が発生可能と考えられる。このため、ステップ44では、第1のコントローラ74は、上下動セミアクティブサスペンション72のロール振動に関するゲインを上昇させる。これに加え、第1のコントローラ74は、第2のコントローラ75に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ45では、第2のコントローラ75は、左右動セミアクティブサスペンション73のロール振動に関するゲインを低下させる。
かくして、上下動セミアクティブサスペンション72および左右動セミアクティブサスペンション73がセミアクティブダンパの場合は、ダンパが伸縮することによって力を発生することができる。このため、振動が小さい方向のセミアクティブダンパが発生することができる力は小さい。
この点を考慮して、第7の実施の形態では、高速走行時には、左右動セミアクティブサスペンション73は左右振動とロール振動に対するゲインを高め、上下動セミアクティブサスペンション72はロール振動に対するゲインを下げる。一方、低速走行時には、上下動セミアクティブサスペンション72は上下振動とロール振動に対するゲインを高め、左右動セミアクティブサスペンション73はロール振動に対するゲインを下げる。
これにより、走行速度Vに応じて上下動セミアクティブサスペンション72と左右動セミアクティブサスペンション73のロール振動に対するゲインを調整して、力を発生することができる方向のセミアクティブサスペンション72,73がロール振動の役割を担うことができる。この結果、最適な制御を行い、乗り心地を向上することができる。従って、第7の実施の形態でも、第5の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図9および図12は本発明の第8の実施の形態を示している。第8の実施の形態の特徴は、車両の走行位置に応じて、上下動セミアクティブサスペンションおよび左右動セミアクティブサスペンションのゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第8の実施の形態では、前述した第6の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第8の実施の形態による鉄道車両81は、第6の実施の形態による鉄道車両61とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動セミアクティブサスペンション82、左右動セミアクティブサスペンション83、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ84,85等を備えている。
上下動セミアクティブサスペンション82は、第2の実施の形態による上下動セミアクティブサスペンション22とほぼ同様に構成されている。即ち、上下動セミアクティブサスペンション82は、アクチュエータ82Aにより作動流体の流れを制御するセミアクティブダンパによって構成されている。この上下動セミアクティブサスペンション82は、第1のコントローラ84からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。
左右動セミアクティブサスペンション83は、第3の実施の形態による左右動セミアクティブサスペンション32とほぼ同様に構成されている。即ち、左右動セミアクティブサスペンション83は、アクチュエータ83Aにより作動流体の流れを制御するセミアクティブダンパによって構成されている。この左右動セミアクティブサスペンション83は、第2のコントローラ85からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の左右方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。
第1のコントローラ84は、第6の実施の形態による第1のコントローラ63とほぼ同様に構成されている。このため、第1のコントローラ84は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動セミアクティブサスペンション82が発生すべき減衰力を演算する。第1のコントローラ84は、上下動セミアクティブサスペンション82のアクチュエータ82Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動セミアクティブサスペンション82の減衰力を制御する。
また、第1のコントローラ84は、後述の協調制御プログラムを実行し、車両51の走行位置に応じて、上下動セミアクティブサスペンション82の減衰力を調整する。これに加え、第1のコントローラ84は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ85に接続されている。第1のコントローラ84は、車両81の走行位置に応じて、第2のコントローラ85に向けて左右動セミアクティブサスペンション83のゲインを調整するための協調制御信号を出力する。
第2のコントローラ85は、第6の実施の形態による第2のコントローラ64とほぼ同様に構成されている。このため、第2のコントローラ85は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動セミアクティブサスペンション73が発生すべき減衰力を演算する。第2のコントローラ85は、左右動セミアクティブサスペンション83のアクチュエータ83Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動セミアクティブサスペンション83の減衰力を制御する。また、第2のコントローラ85は、第1のコントローラ84からの協調制御信号に基づいて、左右動セミアクティブサスペンション83のゲインを調整する。
次に、第1,第2のコントローラ84,85が実行する上下動セミアクティブサスペンション82と左右動セミアクティブサスペンション83の協調制御プログラムについて、図9および図12を用いて説明する。なお、図12に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ51は走行位置判定部の一例を示している。このステップ51では、第1のコントローラ84は、位置情報取得部62によって取得した車両81の走行位置が、左右振動が支配的な区間内か否かを判定する。
ステップ51で「YES」と判定したときには、車両81は左右振動が支配的な区間内を走行している。このとき、上下動セミアクティブサスペンション72に比べて、左右動セミアクティブサスペンション83の方が大きな減衰力が発生可能と考えられる。このため、第1のコントローラ84は、第2のコントローラ85に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ52では、第2のコントローラ85は、左右動セミアクティブサスペンション83のロール振動に関するゲインを上昇させる。これに加えて、ステップ53では、第1のコントローラ84は、上下動セミアクティブサスペンション82のロール振動に関するゲインを低下させる。
一方、ステップ51で「NO」と判定したときには、車両81は左右振動が支配的な区間外を走行している。このとき、左右動セミアクティブサスペンション83に比べて、上下動セミアクティブサスペンション82の方が大きな減衰力が発生可能と考えられる。このため、ステップ54では、第1のコントローラ84は、上下動セミアクティブサスペンション82のロール振動に関するゲインを上昇させる。これに加え、第1のコントローラ84は、第2のコントローラ85に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ55では、第2のコントローラ85は、左右動セミアクティブサスペンション83のロール振動に関するゲインを低下させる。
かくして、第8の実施の形態でも、第6,第7の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図1、図13および図14は本発明の第9の実施の形態を示している。第9の実施の形態の特徴は、上下動アクティブサスペンションが失陥した場合に、左右動アクティブサスペンションのゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第9の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第9の実施の形態による鉄道車両91は、第1の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動アクティブサスペンション8、左右動アクティブサスペンション9、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ92,93等を備えている。
第1のコントローラ92は、第1の実施の形態による第1のコントローラ11とほぼ同様に構成されている。このため、第1のコントローラ92は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動アクティブサスペンション8が発生すべき制振力を演算する。第1のコントローラ92は、上下動アクティブサスペンション8のアクチュエータ8Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動アクティブサスペンション8の制振力を制御する。
また、第1のコントローラ92は、例えばアクチュエータ8Aに流れる電流値等に基づいて、上下動アクティブサスペンション8が失陥(OFF状態)しているか否かを把握する。これに加え、第1のコントローラ92は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ93に接続されている。第1のコントローラ92は、図13に示す協調制御プログラムを実行し、上下動アクティブサスペンション8が失陥しているか否かに応じて、第2のコントローラ93に向けて左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整するための協調制御信号を出力する。
第2のコントローラ93は、第1の実施の形態による第2のコントローラ12とほぼ同様に構成されている。このため、第2のコントローラ93は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動アクティブサスペンション9が発生すべき制振力を演算する。第2のコントローラ93は、左右動アクティブサスペンション9のアクチュエータ9Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動アクティブサスペンション9の制振力を制御する。また、第2のコントローラ93は、第1のコントローラ92からの協調制御信号に基づいて、左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整する。
次に、第1,第2のコントローラ92,93が実行する上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9の協調制御プログラムについて、図1、図13および図14を用いて説明する。なお、図13に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ61は失陥状態判定部の一例を示している。このステップ61では、第1のコントローラ92は、上下動アクティブサスペンション8が失陥しているか否を判定する。
ステップ61で「YES」と判定したときには、上下動アクティブサスペンション8に不具合が生じて、上下動アクティブサスペンション8は所望の制振力が発生不能な状態(OFF状態)であると考えられる。このとき、第1のコントローラ92は、第2のコントローラ93に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ62では、第2のコントローラ93は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを上昇させる(図14参照)。
一方、ステップ61で「NO」と判定したときには、上下動アクティブサスペンション8は所望の制振力が発生可能な状態(ON状態)であると考えられる。このため、上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9とを、それぞれ通常通りに制御するために、そのままのゲインを維持して協調制御処理を終了する。このとき、上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9とは、それぞれ車体2の振動を抑制する制振力を発生させる。
かくして、第9の実施の形態では、上下動アクティブサスペンション8が失陥した場合に、左右動アクティブサスペンション9は車体2の左右振動およびヨー振動だけでなく、ロール振動も抑制するよう制御を行うように制御則を変更する。これにより、上下動アクティブサスペンション8が制御不能になっても、ロール振動を抑制することができる。このため、上下動アクティブサスペンション8に不具合が生じたときでも、乗り心地の悪化を抑制することができる。
なお、第9の実施の形態では、上下動アクティブサスペンション8が失陥したときに、ロール振動に対する制御ゲインを上昇または低下させる方式とした。本発明はこれに限らず、上下動アクティブサスペンション8が正常なときに、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に対する制御ゲインが0だったものを、上下動アクティブサスペンション8が失陥したときに、ロール振動の制御が可能なゲインに変更する方式でもよい。
また、第9の実施の形態では、上下動アクティブサスペンション8および左右動アクティブサスペンション9はいずれもアクティブダンパによって構成されるものとした。本発明はこれに限らず、セミアクティブダンパからなる上下動セミアクティブサスペンションと、アクティブダンパからなる左右動アクティブサスペンションとを備えた鉄道車両に適用してもよい。
同様に、アクティブダンパからなる上下動アクティブサスペンションと、セミアクティブダンパからなる左右動セミアクティブサスペンションとを備えた鉄道車両に適用してもよい。但し、左右動セミアクティブサスペンションは、ピストン伸縮方向と反対向きの力しか発生することができない。このため、必ずしもロール振動を抑制する力の向きと左右動セミアクティブサスペンションが発生する力の向きとが一致しない。従って、第9の実施の形態に比べて、効果は限定的である。しかしながら、この場合でも、上下動アクティブサスペンションと左右動セミアクティブサスペンションとが連携しない構成に比べて、ロール振動を低減することができる。
次に、図1、図15および図16は本発明の第10の実施の形態を示している。第10の実施の形態の特徴は、上下動セミアクティブサスペンションが失陥したか否かに加えて、上下動セミアクティブサスペンションが発生する減衰力の向きを考慮して、上下動セミアクティブサスペンションおよび左右動アクティブサスペンションのゲインを切り換える構成としたことにある。なお、第10の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第10の実施の形態による鉄道車両101は、第1の実施の形態による鉄道車両1とほぼ同様に、車体2、台車3、車輪4、上下動セミアクティブサスペンション102、左右動アクティブサスペンション9、車体振動センサ10、第1,第2のコントローラ103,104等を備えている。
上下動セミアクティブサスペンション102は、第2の実施の形態による上下動セミアクティブサスペンション22と同様に構成されている。即ち、上下動セミアクティブサスペンション102は、アクチュエータ102Aにより作動流体の流れを制御する。この上下動セミアクティブサスペンション102は、第1のコントローラ103からの制御指令に基づいて、台車3に対する車体2の上下方向の振動に対して、振動を低減させるような減衰力を発生する。
第1のコントローラ103は、第9の実施の形態による第1のコントローラ92とほぼ同様に構成されている。このため、第1のコントローラ103は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、上下動セミアクティブサスペンション102が発生すべき減衰力を演算する。第1のコントローラ103は、上下動セミアクティブサスペンション102のアクチュエータ102Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、上下動セミアクティブサスペンション102の減衰力を制御する。
また、第1のコントローラ103は、例えばアクチュエータ102Aに流れる電流値等に基づいて、上下動セミアクティブサスペンション102が失陥しているか否かを把握する。これに加え、第1のコントローラ103は、各種のネットワークを介して第2のコントローラ104に接続されている。第1のコントローラ103は、図15に示す協調制御プログラムを実行し、上下動セミアクティブサスペンション102が失陥しているか否か、および、上下動セミアクティブサスペンション102の減衰力の方向等に応じて、第2のコントローラ104に向けて左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整するための協調制御信号を出力する。
第2のコントローラ104は、第1の実施の形態による第2のコントローラ12とほぼ同様に構成されている。このため、第2のコントローラ104は、車体振動センサ10からの検出信号に基づいて、車体2の振動を制御するために、左右動アクティブサスペンション9が発生すべき制振力を演算する。第2のコントローラ104は、左右動アクティブサスペンション9のアクチュエータ9Aに出力すべき制御指令信号(制御指令)を演算処理し、左右動アクティブサスペンション9の制振力を制御する。また、第2のコントローラ104は、第1のコントローラ103からの協調制御信号に基づいて、左右動アクティブサスペンション9のゲインを調整する。
次に、第1,第2のコントローラ103,104が実行する上下動セミアクティブサスペンション102と左右動アクティブサスペンション9の協調制御プログラムについて、図1、図15および図16を用いて説明する。なお、図15に示す協調制御プログラムは、予め決められた制御周期毎に繰り返し実行されるものである。
まず、ステップ71は失陥状態判定部の一例を示している。このステップ71では、第1のコントローラ103は、上下動セミアクティブサスペンション102が失陥しているか否を判定する。ステップ71で「YES」と判定したときには、第1のコントローラ103は、第2のコントローラ104に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ72では、第2のコントローラ104は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを上昇させる(図16参照)。
一方、ステップ71で「NO」と判定したときには、ステップ73に移行する。ステップ73は、減衰力方向判定部の一例を示している。このステップ73では、第1のコントローラ103は、ロール振動を抑える力の向きと、上下動セミアクティブサスペンション102が発生する力の向きが一致しているか否かを判定する。ここで、上下動セミアクティブサスペンション102は、ピストン伸縮方向と反対向きの力しか発生することができない。このため、ステップ73では、ロール振動を抑える力の向きと、上下動セミアクティブサスペンション102のピストン伸縮方向とが互いに逆向きであるか否かを判定する。
ステップ73で「YES」と判定したときには、ロール振動を抑える力の向きと、上下動セミアクティブサスペンション102が発生する力の向きとが一致している。このとき、セミアクティブダンパからなる上下動セミアクティブサスペンション102は、ロール振動の抑制が可能である。このため、ステップ74に移行して、第1のコントローラ103は、上下動セミアクティブサスペンション102のロール振動に関するゲインを上昇させる(図16参照)。
一方、ステップ73で「NO」と判定したときには、ロール振動を抑える力の向きと、上下動セミアクティブサスペンション102が発生する力の向きとが一致しておらず、セミアクティブダンパからなる上下動セミアクティブサスペンション102は、ロール振動を抑制することができない。このため、ステップ75に移行して、第1のコントローラ103は、上下動セミアクティブサスペンション102のロール振動に関するゲインを低下させる。これに加えて、第1のコントローラ103は、第2のコントローラ104に協調制御信号を出力する。これにより、ステップ72に移行して、第2のコントローラ104は、左右動アクティブサスペンション9のロール振動に関するゲインを上昇させる(図16参照)。
かくして、第10の実施の形態では、第9の実施の形態と同様に、上下動セミアクティブサスペンション102が制御不能になった場合に、左右動アクティブサスペンション9によってロール振動を抑制する制御を行う。このため、第10の実施の形態でも、第9の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
但し、第10の実施の形態では、上下動セミアクティブサスペンション102はセミアクティブダンパによって構成されているから、上下動セミアクティブサスペンション102が制御可能な状態でも、ロール振動を抑制することができない状態がある。
例えば、車体2の上下振動やピッチ振動が支配的な状況であれば、ロール振動を抑制するために発生する力の向きが、上下動セミアクティブサスペンション102が発生する力の向きと異なる場合がある。その場合、上下動セミアクティブサスペンション102は、ロール振動に関しては減衰力が小さくなるような制御を行うことしかできず、ロール振動を抑制することができない。
そのため、ロール振動を抑制するために発生する力の向きが、上下動セミアクティブサスペンション102が発生する力の向きと異なる場合は、上下動セミアクティブサスペンション102はロール制御を停止し、代わりに左右動アクティブサスペンション9がロール制御を行う。これにより、上下動セミアクティブサスペンション102をセミアクティブダンパによって構成したときでも、左右動アクティブサスペンション9と協調して、ロール振動を抑制することができる。
なお、上下動セミアクティブサスペンション102の状態に応じて、上下動セミアクティブサスペンション102および左右動アクティブサスペンション9の制御を切り換えるためには、上下動セミアクティブサスペンション102の伸縮方向、つまりピストン速度の正負が分かるシステムでなければならない。これらの情報は、車体加速度から推定する方式でもよく、上下動セミアクティブサスペンション102にストロークセンサを取り付けて計測する方式でもよい。
また、第9,第10の実施の形態では、上下動アクティブサスペンション8や上下動セミアクティブサスペンション102が振動を抑えるために十分な力を発生することができない場合に、左右動アクティブサスペンション9によって振動を抑制する構成とした。本発明はこれに限らず、左右動アクティブサスペンションや左右動セミアクティブサスペンションが振動を抑えるために十分な力を発生することができない場合に、上下動アクティブサスペンションによって振動を抑制する構成としてもよい。
また、第1の実施の形態では、上下動アクティブサスペンション8の動作と左右動アクティブサスペンション9の動作がいずれも既知であるものとしたが、本発明はこれに限らない。図17に示す第1の変形例による鉄道車両111のように、例えば、左右動アクティブサスペンション9の動作状態が不明な場合でも、左右動アクティブサスペンション9の状態を推定して、上下動アクティブサスペンション8を制御する構成としてもよい。具体的には、左右動アクティブサスペンション9の状態を推定することによって、左右動アクティブサスペンション9が力を発生し難い状況では、上下動アクティブサスペンション8がロール制御を補う等のような協調制御が可能である。そのためには、左右動アクティブサスペンション9のストローク状態を推定する必要があるが、この推定にはカルマンフィルタ112を用いた状態推定が考えられる。カルマンフィルタ112は、例えば車体振動センサ10からの信号と、上下動アクティブサスペンション8の状態とに基づいて、左右動アクティブサスペンション9のストローク状態を推定する。左右動アクティブサスペンション9のストロークが推定できれば、第1のコントローラ11は、左右動アクティブサスペンション9に協調させて、上下動アクティブサスペンション8を制御することができる。この構成は、第2ないし第4の実施の形態にも適用することができる。
また、第1の実施の形態では、第1,第2のコントローラ11,12によって上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9を別個に制御するものとしたが、本発明はこれに限らない。図18に示す第2の変形例による鉄道車両121のように、第1,第2のコントローラを統合した単一のコントローラ122によって、上下動アクティブサスペンション8と左右動アクティブサスペンション9の両方を制御する構成としてもよい。この場合、コントローラ122は、上下動アクティブサスペンション8の発生力を制御するための上下動制御コントローラ123と、左右動アクティブサスペンション9の発生力を制御するための左右動制御コントローラ124とを備えている。この構成は、第2ないし第9の実施の形態にも適用することができる。
また、前記第1の実施の形態では、第1,第2のコントローラ11,12は、スカイフック制御則によって上下動アクティブサスペンション8および左右動アクティブサスペンション9を制御する構成とした。本発明はこれに限らず、例えばLQG制御則、H∞制御則等のような他の制御則に基づいて、上下動アクティブサスペンションおよび左右動アクティブサスペンションを制御してもよい。この構成は、第2ないし第10の実施の形態にも適用することができる。
前記第1の実施の形態では、上下動アクティブサスペンション8および左右動アクティブサスペンション9によって車体2のロール振動を協調制御する構成とした。本発明はこれに限らず、上下動アクティブサスペンション8および左右動アクティブサスペンション9によって他の振動を協調制御してもよい。この構成は、第2ないし第10の実施の形態にも適用することができる。
前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
次に、他の実施形態について記載する。上下動制御コントローラは、左右動力発生機構の状態に応じて、上下動力発生機構の発生力を決定する。このため、左右動力発生機構によって、車体の振動を抑制できないときには、上下動力発生機構の発生力によって、車体の振動を抑制することができ、車両の乗り心地を向上することができる。
上下動力発生機構および左右動力発生機構は、アクチュエータにより作動流体の流れを制御する上下動制御ダンパおよび左右動制御ダンパによって構成した。このため、上下動制御コントローラは、左右動制御ダンパの状態に応じて、上下動制御ダンパの発生力を決定することができる。
左右動制御コントローラは、上下動力発生機構による上下方向振動の発生力が不足するときは左右動力発生機構の発生力を高めるよう制御する。このため、上下動力発生機構による上下方向振動の発生力が不足して車体の振動を抑制できないときには、左右動力発生機構の発生力を高めて、車体の振動を抑制することができる。
上下動制御コントローラは、左右動力発生機構による左右方向振動の発生力が不足するときは上下動力発生機構の発生力を高めるよう制御する。このため、左右動力発生機構による左右方向振動の発生力が不足して車体の振動を抑制できないときには、上下動力発生機構の発生力を高めて、車体の振動を抑制することができる。
左右動制御コントローラは、車両の走行速度が高速のときは、左右動力発生機構の発生力を高めるようにし、上下動制御コントローラは、高速走行時よりも低速の低速走行時は、上下動力発生機構の発生力を高めるようにする。ここで、高速走行時には、空気力加振等の影響により、左右方向の振動が支配的である。このとき、左右動制御コントローラは左右動力発生機構の発生力を高めるから、高速走行時に発生する左右方向の振動を、左右動力発生機構の発生力によって抑えることができる。
一方、低速走行時には、上下方向の振動が支配的になる。このとき、上下動制御コントローラは上下動力発生機構の発生力を高めるから、低速走行時に発生する上下方向の振動を、上下動力発生機構の発生力によって抑えることができる。
発生力はゲインを変化させることにより調整されるから、上下動力発生機構の制御と左右動力発生機構の制御とを維持しつつ、一方の発生力によって振動抑制が不足するときに、他方の発生力によって振動抑制を補うことができ、両者を協調制御することができる。
以上の説明した実施形態に基づくサスペンション制御装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
サスペンション制御装置の第1態様としては、車体と台車とを有する車両に設けられるサスペンション制御装置は、前記車体と前記台車との間に設けられるための上下動力発生機構であって、上下方向の振動に対して力を発生させる上下動力発生機構と、前記車体と前記台車との間に設けられるための左右動力発生機構であって、左右方向の振動に対して力を発生させる左右動力発生機構と、前記上下動力発生機構が発生させる力を制御する上下動制御コントローラと、前記左右動力発生機構が発生させる力を制御する左右動制御コントローラと、を備え、前記上下動制御コントローラは、前記左右動力発生機構の状態に応じて、前記上下動力発生機構が発生させる力を決定する。
第2の態様としては、第1の態様において、前記上下動力発生機構および前記左右動力発生機構は、アクチュエータにより作動流体の流れを制御する上下動制御ダンパおよび左右動制御ダンパである。
第3の態様としては、第1の態様において、前記左右動制御コントローラは、前記上下方向の振動に対して前記上下動力発生機構が発生させる力が不足するときは前記左右動力発生機構が発生させる力を高めるように、前記左右動力発生機構制御する。
第4の態様としては、第1の態様において、前記上下動制御コントローラは、前記左右方向の振動に対して前記左右動力発生機構が発生させる力が不足するときは前記上下動力発生機構が発生させる力を高めるように、前記上下動力発生機構を制御する。
第5の態様としては、第1の態様において、前記左右動制御コントローラは、前記車両の走行速度が所定速度以上に高速のときは、前記左右動力発生機構が発生させる力を高め、前記上下動制御コントローラは、前記車両の走行速度が前記所定速度よりも低速のときは、前記上下動力発生機構が発生させる力を高める。
第6の態様としては、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記上下動力発生機構が発生させる力、および、前記左右動力発生機構が発生させる力は、ゲインを変化させることにより調整される。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
本願は、2016年2月24日出願の日本特許出願番号2016−033330号に基づく優先権を主張する。2016年2月24日出願の日本特許出願番号2016−033330号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含む全ての開示内容は、参照により全体として本願に組み込まれる。