JP6569101B2 - カーボンナノファイバーの製造方法 - Google Patents

カーボンナノファイバーの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6569101B2
JP6569101B2 JP2015023070A JP2015023070A JP6569101B2 JP 6569101 B2 JP6569101 B2 JP 6569101B2 JP 2015023070 A JP2015023070 A JP 2015023070A JP 2015023070 A JP2015023070 A JP 2015023070A JP 6569101 B2 JP6569101 B2 JP 6569101B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon nanofibers
carbon
microwaves
irradiated
reactor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015023070A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016145435A (ja
Inventor
紳 向井
紳 向井
荻野 勲
勲 荻野
振一郎 岩村
振一郎 岩村
俊輔 鎌足
俊輔 鎌足
東吾 山口
東吾 山口
翔悟 西川
翔悟 西川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Carbon Co Ltd
Hokkaido University NUC
Original Assignee
Asahi Carbon Co Ltd
Hokkaido University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Carbon Co Ltd, Hokkaido University NUC filed Critical Asahi Carbon Co Ltd
Priority to JP2015023070A priority Critical patent/JP6569101B2/ja
Publication of JP2016145435A publication Critical patent/JP2016145435A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6569101B2 publication Critical patent/JP6569101B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、カーボンナノファイバーの製造方法に関する。
カーボンナノファイバーは、ガラス繊維などに比べて、機械的強度や電気伝導性、熱伝導性などの点で非常に優れている。このため、カーボンナノファイバーは、プラスチック強化材料やガス吸蔵材料、電極材料などの幅広い用途に使用されている。
カーボンナノファイバーの製造方法としては、合成繊維や石油ピッチ繊維などの有機繊維を炭化する方法と、触媒としての金属微粒子に炭素化合物を接触させてカーボンナノファイバーを成長させる方法(気相法)とがよく知られている。気相法は、カーボンナノファイバーを連続的に大量生産するのに適した方法である。気相法には、有機ガスを原料とする化学気相蒸着法と、液体の有機物を原料とする液パルスインジェクション法(以下「LPI法」という)とが含まれる。
気相法の中でもLPI法は、工業的に利用可能なカーボンナノファイバーの製造方法として期待されている。LPI法では、炭素化合物および触媒(または触媒の前駆体)を含む原料液をパルス状に反応器内に導入することで、反応器内においてカーボンナノファイバーを短時間で効率的に成長させる。LPI法は、原料の種類を選ばずに高い生産効率で、非常に長くかつ高品質のカーボンナノファイバーを製造することができる(例えば、特許文献1〜4参照)。
特開平6−146116号公報 特開平6−146117号公報 特開2004−360108号公報 国際公開第2006/030963号
LPI法などのように触媒としての金属微粒子を用いてカーボンナノファイバーを製造する場合、カーボンナノファイバー内に残存した金属微粒子が導電性などの特性に悪影響を及ぼすことがある。また、カーボンナノファイバーの黒鉛化度を向上させることで、電気伝導率などの特性をさらに向上させることができる。
カーボンナノファイバー内の金属成分を除去する方法としては、強酸または酸化剤を用いた液相系の処理を行うことが考えられる。しかしながら、液相系の処理は、分離工程や乾燥工程、廃液処理工程などを行わなければならず、煩雑である。また、カーボンナノファイバーの黒鉛化度を向上させる方法としては、高温(1700〜3000℃)でアモルファス状の炭素を黒鉛化することが考えられる。しかしながら、高温での熱処理は、エネルギー消費が大きい大規模な設備を要するため、製造コストの増大に繋がる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、金属微粒子などの不純物の含有量が少なく、かつ黒鉛化度が高いカーボンナノファイバーを容易に製造することができる、カーボンナノファイバーの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、LPI法により生成され、かつ黒鉛化度が高いカーボンナノファイバーを提供することも目的とする。
本発明者は、カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することで、カーボンナノファイバーの黒鉛化度の向上およびカーボンナノファイバー中の不純物の除去を実現できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のカーボンナノファイバーの製造方法に関する。
[1]カーボンナノファイバーを準備する工程と、前記カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射して、前記カーボンナノファイバーの黒鉛化度の向上および前記カーボンナノファイバー中の不純物の除去を行う工程と、を含む、カーボンナノファイバーの製造方法。
[2]前記カーボンナノファイバーを準備する工程では、液パルスインジェクション法により前記カーボンナノファイバーを生成する、[1]に記載のカーボンナノファイバーの製造方法。
[3]前記カーボンナノファイバーは、不活性雰囲気下においてマイクロ波を照射される、[1]または[2]に記載のカーボンナノファイバーの製造方法。
[4]前記カーボンナノファイバーは、酸素、水蒸気または二酸化炭素を含む雰囲気下においてマイクロ波を照射される、[1]または[2]に記載のカーボンナノファイバーの製造方法。
[5]前記カーボンナノファイバーは、大気下においてマイクロ波を照射される、[4]に記載のカーボンナノファイバーの製造方法。
また、本発明は、以下のカーボンナノファイバーに関する。
[6]液パルスインジェクション法により生成されたカーボンナノファイバーであって、繊維長が100μm以上であり、かつd002が0.345nm以下である、カーボンナノファイバー。
本発明によれば、金属微粒子などの不純物の含有量が少なく、かつ黒鉛化度が高いカーボンナノファイバーを容易に製造することができる。
図1は、カーボンナノファイバーの生成装置の一例を示す模式図である。 図2A〜Cは、図1に示される生成装置によりカーボンナノファイバーを生成する手順を説明する模式図である。 図3は、カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射するための装置の一例を示す模式図である。 図4は、カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射するための装置の他の例を示す模式図である。 図5Aは、マイクロ波を照射する前のカーボンナノファイバーの透過型電子顕微鏡像であり、図5Bは、マイクロ波を照射した後のカーボンナノファイバーの透過型電子顕微鏡像である。 図6Aは、マイクロ波を照射した後のカーボンナノファイバーの端部のEDSスペクトルであり、図6Bは、マイクロ波を照射した後のカーボンナノファイバーにおけるEDSスペクトルの測定領域を示す透過型電子顕微鏡像である。 図7Aは、照射時間を変えながらマイクロ波を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルであり、図7Bは、照射出力を変えながらマイクロ波を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。 図8Aは、照射エネルギーを固定してマイクロ波を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルであり、図8Bは、空気雰囲気下またはアルゴンガス雰囲気下においてマイクロ波を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。 図9Aは、照射時間を変えながらマイクロ波を照射した場合のカーボンナノファイバーの熱重量曲線であり、図9Bは、空気雰囲気下またはアルゴンガス雰囲気下においてマイクロ波を照射した場合のカーボンナノファイバーの熱重量曲線である。 図10は、カーボンナノファイバー分散液を示す写真である。 図11は、カーボンナノファイバーのR値と電気伝導率との関係を示すグラフである。 図12は、マイクロ波の照射または電気炉での加熱をしたカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。 図13は、マイクロ波を照射したカーボンナノファイバーのX線回折スペクトルである。
本発明に係るカーボンナノファイバーの製造方法は、1)カーボンナノファイバーを準備する第1の工程と、2)準備したカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射する第2の工程とを有する。以下、各工程について説明する。
1)第1の工程
第1の工程では、カーボンナノファイバーを準備する。たとえば、カーボンナノファイバーを生成する。市販のカーボンナノファイバーを購入することでカーボンナノファイバーを準備してもよい。なお、本明細書において「カーボンナノファイバー」とは、繊維径が1〜1000nmの範囲内、好ましくは10〜500nmの範囲内の炭素繊維を意味する。カーボンナノファイバーの長さは、特に限定されないが、例えば1〜1000μmの範囲内である。
カーボンナノファイバーを生成する方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択されうる。前述のとおり、カーボンナノファイバーの生成方法としては、有機繊維を炭化する方法と、触媒としての金属微粒子に炭素化合物を接触させてカーボンナノファイバーを成長させる方法(気相法)とがよく知られている。気相法、その中でも液パルスインジェクション法(LPI法)は、カーボンナノファイバーの工業的生産に適した方法である。以下、LPI法について簡単に説明する。
LPI法では、炭素化合物および触媒(または触媒の前駆体)を含む原料液をパルス状に反応器内に導入することで、反応器内においてカーボンナノファイバーを短時間で効率的に成長させる。
原料液に含まれる炭素化合物は、カーボンナノファイバーを生成するための炭素の供給源である。炭素化合物の種類は特に限定されないが、通常は炭化水素が使用される。炭素化合物の例には、ヘキサンやヘプタン、オクタン、ペンテン、ヘキセンなどの液状の脂肪族炭化水素;ベンゼンやトルエン、ナフタレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素;メタノールやエタノールなどのアルコール;ケトン;エーテルなどが含まれる。これらの炭素化合物は、1種で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、炭素の供給源としては、廃タイヤなどの廃ゴムを熱分解することにより得られる分解油や、動植物由来の精製油およびそれらの廃油、オイルリファイナリーで生じる残渣油などの、炭素化合物を多く含む組成物を使用することもできる。
触媒として用いられる金属の例には、鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、ロジウム、タングステン、パラジウム、白金、シリコンなどが含まれる。これらの金属からなる触媒微粒子は、原料液に、そのまま触媒となる金属微粒子として、または触媒の前駆体である有機金属化合物として添加される。触媒の前駆体として使用される有機金属化合物の例には、フェロセンや鉄アセチルアセトナートなどが含まれる。また、原料液には、さらに助触媒を添加してもよい。助触媒の例には、チオフェンやベンゾチオフェンなどが含まれる。原料液中の触媒または触媒の前駆体の濃度を調整することで、カーボンナノファイバーの成長速度や、カーボンナノファイバーのサイズ(長さおよび繊維径)、カーボンナノファイバーの表面状態などを制御することができる。原料液中の触媒または触媒の前駆体の濃度は、通常0.01〜15質量%であり、好ましくは0.05〜10質量%である。
反応器の形状は、特に限定されない。たとえば、反応器の形状は、円管、角管などである。具体的な例としては、図1に示されるような円管形状が挙げられる。また、反応器は、耐熱性および耐圧性を有することが好ましい。反応器の素材の例には、セラミックス、ステンレス鋼、ガラス、内面がガラスコーティングされた金属などが含まれる。
図1に示される例では、カーボンナノファイバーの生成装置100は、原料液導入口110、キャリアガス導入口120、反応器130、フィルター140、電気炉150およびガス排出口160を有している。反応器130は、カーボンナノファイバーを生成するための円管状の反応器であり、中心軸が鉛直方向に向くように配置されている。原料液導入口110およびキャリアガス導入口120は、反応器130の上側の開口部に設けられており、ガス排出口160は、反応器130の下側の開口部に設けられている。反応器130の端部を除く部分は、電気炉150に取り囲まれている。電気炉150は、反応器130を加熱して、900〜1300℃に加熱された高温領域170を形成する。また、原料液導入口110およびキャリアガス導入口120を設けられた開口部と、高温領域170との間には、原料液から原料ガスを生成するための多孔質体であるフィルター140が配置されている。フィルター140も電気炉150により加熱されている。キャリアガス導入口120から反応器130内にパルス状に導入されたキャリアガスは、原料液に由来する混合物(後述)を反応器130の高温領域170に押し出した後にガス排出口160から排出される。
図1にも示されるように、反応器の少なくとも一部は、カーボンナノファイバーを生成させうる温度(例えば、900〜1300℃)まで加熱される。反応器を加熱する方法は、特に限定されない。たとえば、反応器は、電気炉により加熱される。反応器中には、例えばヘリウムガスやアルゴンガス、窒素ガス、ネオンガス、クリプトンガス、水素ガス、一酸化炭素ガス、塩素ガスなどが充填されていることが好ましい。
加熱された反応器内に原料液をパルス状に導入すると、反応器内において原料液が蒸発することにより、炭素源を含むガスとそのガスに分散した触媒微粒子とからなる混合物(以下「原料ガス」ともいう)が生成される。炭素源は、原料液に含まれる炭素化合物が蒸発または熱分解することにより生成される。炭素源となる炭素化合物の種類は、時間の経過と共に変化する。たとえば、原料液に含まれる炭素化合物がベンゼンである場合、原料ガスに含まれる炭素源は、ベンゼン、プロピレン、エチレン、メタンのように分子量が小さくなる方向へ変化していると考えられる。触媒微粒子は、原料液に含まれているか、または触媒の前駆体である有機金属化合物が熱分解することにより生成される。後者の場合、有機金属化合物が熱分解することにより原子状金属が生成され、この原子状金属が凝集することにより触媒微粒子が生成される。
原料液の導入方法は、特に限定されない。たとえば、原料液の液滴をマイクロシリンジや定量パルスポンプなどを用いて反応器内に滴下したり、スプレー装置などを用いて反応器内に噴霧したりすればよい。前者の場合は、反応器の内壁や反応器内に設置された多孔質体(フィルター)などに液滴が接触することで、原料液が蒸発または熱分解して、炭素源および触媒微粒子を含む原料ガスが生成される。後者の場合は、原料液の微粒子が反応器内においてそれぞれ蒸発または熱分解することで、炭素源および触媒微粒子を含む原料ガスが生成される。原料液の導入量は、反応器内の容量などに応じて適宜設定される。たとえば、反応器の大きさが1〜5L程度の場合、原料液の導入量は、20〜200μL程度である。また、原料液の導入時間は、0.2〜4.0秒程度であり、0.3〜0.6秒の範囲内が好ましい。
原料液を導入した後に、反応器内、好ましくは原料液を導入した領域にキャリアガスをパルス状に導入することが好ましい。これにより、反応器内において生成した原料ガスが、反応器の高温領域に押し出される。キャリアガス(ガスパルス)の導入方法は、特に限定されない。たとえば、所定のタイミングで開閉するバルブなどを用いてキャリアガスを反応器内に供給すればよい。キャリアガスの1パルスあたりの量は、反応器内の容量や、キャリアガス導入口と高温領域との間の距離などに応じて適宜設定される。たとえば、反応器の大きさが1〜5L程度の場合、キャリアガスの1パルスあたりの量は、20〜100mL程度である。また、キャリアガスのパルス幅(1パルスの導入時間)は、0.005〜2.0秒程度であり、0.01〜0.5秒の範囲内が好ましい。
キャリアガスには、カーボンナノファイバーを成長させる温度(例えば、900〜1300℃)で不活性であること、触媒の活性を低下させないこと、およびカーボンナノファイバーと反応しないことが要求される。キャリアガスの種類は、これらの要求を満たすものであれば特に限定されない。キャリアガスの例には、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、ネオンガス、クリプトンガス、水素ガス、一酸化炭素ガス、塩素ガスなどが含まれる。これらのガスは、1種で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
高温(例えば、900〜1300℃)環境下において炭素源と触媒微粒子とが接触すると、触媒の作用により初期繊維が長さ方向に成長する(長さ方向成長)。次いで、熱CVDにより、初期繊維が半径方向に成長する(半径方向成長)。反応器の高温領域内に滞留している原料ガスにおいて、これらの二段階プロセスが順次進行することで、カーボンナノファイバーが生成される。原料ガスを高温領域内に滞留させる時間は、カーボンナノファイバーを長さ方向および半径方向に十分に成長させる観点、および生産効率の観点から適宜設定すればよい。たとえば、反応器の大きさが1〜5L程度の場合、原料ガスを高温領域内に滞留させる時間は、10〜20秒程度である。
原料液の導入、キャリアガスの導入およびカーボンナノファイバーの成長は、一連の工程である。これらの一連の工程を複数回繰り返すことで、カーボンナノファイバーを連続して生成することができる。この場合、原料液の導入間隔は、5〜120秒の範囲内が好ましく、30〜90秒の範囲内がより好ましい。ここで「導入間隔」とは、導入開始時期の間隔を意味する。
ここで、図2A〜Cを参照して、図1に示されるカーボンナノファイバーの生成装置100を用いてカーボンナノファイバーを生成する手順の一例を説明する。図2A〜Cは、カーボンナノファイバーの生成装置100の部分拡大図である。これらの図では、電気炉150を省略している。また、反応器130の温度を色で示している(高温:黒色、低温:白色)。
カーボンナノファイバーの生成を開始する前に、予め反応器130を900〜1300℃に加熱しておく。これに伴い、フィルター140も加熱される。まず、図2Aに示されるように、炭化水素またはアルコール(炭素化合物)および有機金属化合物(触媒の前駆体)を含む原料液210の液滴を、原料液導入口110から反応器130内に滴下する(パルス状に導入する)。原料液210の液滴は、加熱されたフィルター140の上に落ち、一瞬にして蒸発および熱分解される。これにより、炭素源232および触媒微粒子234を含む原料ガス230が生成される。
原料液210の液滴を導入した直後に、図2Bに示されるように、キャリアガス220をキャリアガス導入口120から反応器130内にパルス状に導入する。これに伴い、原料ガス230は、速やかに高温領域170に押し出され、900〜1300℃に加熱される。高温環境下において炭素源232と触媒微粒子234とが接触することで、触媒微粒子234から初期繊維236が長さ方向に成長する。
前述の通り、キャリアガス220は、パルス状に導入される。したがって、高温領域170に到達した原料ガス230は、それ以上反応器130の下部(ガス排出口160)に向かって押し出されることはない。したがって、原料ガス230は、比較的長時間高温領域170に滞留する。その結果、図2Cに示されるように、触媒微粒子234から成長した初期繊維236が熱CVDにより半径方向に成長して、長さ方向および半径方向に十分に成長したカーボンナノファイバー238が生成される。
図2A〜Cに示される操作を順次繰り返すことで、所望の長さおよび太さのカーボンナノファイバー238を連続して大量に製造することができる。必要量のカーボンナノファイバー238を製造した後、電気炉150の電源を切り、反応器130の温度を室温まで下げる。その後、反応器130の下部から、反応器130の下部に堆積したカーボンナノファイバー238を回収する。
以上の手順(LPI法)により、繊維長が100μm以上と長く、かつ繊維径のバラつきが小さいカーボンナノファイバーを高い収率で生成することができる。たとえば、LPI法により、他の生成方法では得ることが容易ではない、繊維長が100μm以上のカーボンナノファイバーを生成することができる。繊維長の上限値は、特に限定されないが、少なくとも500μmのカーボンナノファイバーを生成できることは確認されており、1000μmのカーボンナノファイバーも生成できると考えられる(測定が容易では無いため未確認)。
なお、上記の手順では、繊維径のバラつきを小さくし、かつ繊維長を長くする観点からキャリアガスを間欠的に導入したが、LPI法ではキャリアガスを連続的に導入してもよい(特許文献1〜4参照)。
2)第2の工程
第2の工程では、第1の工程で準備したカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射する。ここで「マイクロ波」とは、波長が100μm〜1mの範囲内であり、周波数が300MHz〜3THzの電磁波を意味する。
本発明者らは、カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することで、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が向上するとともに、カーボンナノファイバー中の不純物が除去されることを見出した(実施例参照)。以前から、電子レンジなどのように、マイクロ波を用いて物質を加熱することは広く行われてきている(マイクロ波加熱)。マイクロ波加熱は、対象物のみを選択的に、かつ対象物については均一に、急速に加熱できることから、化学合成や乾燥、セラミックスの焼結などにも利用されている。カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することで、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が向上するとともに、カーボンナノファイバー中の不純物が除去されるメカニズムは、特に限定されないが、このマイクロ波加熱によるものであると推察される。すなわち、マイクロ波照射により、カーボンナノファイバーが加熱され、電気炉などを用いた場合よりも効率よく黒鉛化度が上昇し、また金属微粒子などの不純物が飛散または昇華によりカーボンナノファイバーから除去されたと考えられる。一方で、本発明者らの実験によれば、カーボンナノファイバーを電気炉を用いて1700℃で加熱しても、黒鉛化度はそれほど上昇しなかった(実施例参照)。また、液体窒素で冷却しながらカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射しても、黒鉛化度の上昇が観察された(実施例参照)。これらのことから、黒鉛化度の上昇については、加熱以外のメカニズムも関係していることが示唆される。
カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射する方法は、特に限定されない。たとえば、図3に示されるように、マイクロ波照射装置300内に石英試験管310を配置して、カーボンナノファイバー238にマイクロ波を照射すればよい。このとき、雰囲気ガス導入口320から石英試験管310内に雰囲気ガス410(例えば、アルゴンガスや空気、水蒸気など)を導入し、ガス排出口330から排出するようにすることで、マイクロ波照射時の雰囲気を調整することもできる。また、カーボンナノファイバー238を石英による汚染から保護するために、カーボンナノファイバー238を保護器340上に配置してもよい。保護器340を構成する材料は、マイクロ波照射の効果を低減させない観点から、アルミナ(Al)や炭素などのマイクロ波を吸収しやすい材料よりも、窒化ホウ素(BN)などのマイクロ波を吸収しにくい材料が好ましい。
また、図4に示されるように、LPI法においてカーボンナノファイバーを生成する場合に、外部に配置された高出力のマイクロ波照射装置300から反応器130の下流部にマイクロ波を照射することで、カーボンナノファイバーの生成と、黒鉛化度の向上および不純物の除去とを一つの反応器130内において連続して行うようにしてもよい。
マイクロ波の照射条件は、特に限定されず、マイクロ波照射装置の出力方式や、マイクロ波の照射ムラの有無、カーボンナノファイバーの量、カーボンナノファイバーのマイクロ波の吸収率などに応じて適宜設定されうる。マイクロ波照射装置の出力は、特に限定されないが大きい方が好ましく、例えば100W以上であり、好ましくは500W以上である。たとえば、マイクロ波照射装置の出力は、100〜1500W程度であればよい。マイクロ波の照射時間も、特に限定されないが、例えば1〜10分程度であればよい。マイクロ波の波長も、特に限定されないが、例えば2.45GHz程度であればよい。マイクロ波の照射は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよいが、平均出力が同じ場合は連続的に照射することが好ましい。
黒鉛化度の上昇および不純物の除去の効果は、雰囲気の影響を受けないため、カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射する時の雰囲気は、特に限定されない。耐酸化性に優れるカーボンナノファイバーを得るためには、アルゴンガス中や窒素ガス中、真空中などの不活性雰囲気下においてカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することが好ましい。このようにすることで、カーボンナノファイバーの表面の酸化が抑制されるため、活性雰囲気下においてマイクロ波を照射した場合よりもカーボンナノファイバーの耐酸化性を向上させることができる(実施例参照)。また、親水性に優れるカーボンナノファイバーを得るためには、酸素ガスや水蒸気、二酸化炭素ガスなどの酸化力の有るガス雰囲気下においてカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することが好ましい。このようにすることで、カーボンナノファイバーの表面に酸素含有官能基が導入されるため、不活性雰囲気下においてマイクロ波を照射した場合よりもカーボンナノファイバーの親水性を向上させることができる(実施例参照)。たとえば、大気(空気)雰囲気下においてカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することで、カーボンナノファイバーの親水性を向上させることができる。
以上のように、本発明に係るカーボンナノファイバーの製造方法では、カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射する。これにより、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が向上し、かつカーボンナノファイバー中の不純物が除去される。たとえば、LPI法で生成されたカーボンナノファイバーにおける(002)面の間隔d002は、0.351nm程度であるが、マイクロ波を照射して黒鉛化度を高めることで、d002は、0.343nm以下、好ましくは0.340nm以下となる。d002の下限値は、特に限定されないが、0.336nm程度である。このように、本発明に係るカーボンナノファイバーの製造方法によれば、煩雑な工程を行うことなく、かつ大規模な設備を設置することなく、金属微粒子などの不純物の含有量が少なく、かつ黒鉛化度が高いカーボンナノファイバーを容易に製造することができる。たとえば、本発明に係るカーボンナノファイバーの製造方法によれば、LPI法により生成されたカーボンナノファイバーであって、繊維長が100μm以上であり、かつd002が0.345nm以下である、カーボンナノファイバーを製造することができる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実験1]
1.カーボンナノファイバーの製造
(1)LPI法によるカーボンナノファイバーの生成
図1に示されるカーボンナノファイバーの生成装置100を用いて、以下の手順でカーボンナノファイバーを生成した。反応器130としては、長さ1200mm、内径85mmのセラミックスチューブ(株式会社ニッカトー)を使用した。
まず、反応器130が室温の状態で、キャリアガス導入口120から窒素ガスを反応器130内に流し、反応器130内の空気を窒素ガスに置換した。次いで、キャリアガス導入口120から水素ガスを反応器130内に流し、反応器130内の窒素ガスを水素ガスに置換した。その後、反応器130内に水素ガスを留めた状態で、電気炉150を用いて反応器130を1200℃まで昇温させ、維持させた。
炭素化合物および触媒の前駆体を含む原料液(炭素化合物:ベンゼン94質量%、触媒の前駆体:フェロセン5質量%、助触媒:チオフェン1質量%)を調製した。この原料液100μLをマイクロシリンジを用いて原料液導入口110からパルス状に反応器130内に導入し、その直後に、水素ガス160mLをキャリアガス導入口120からパルス状に反応器130内に導入した。この原料液の導入および水素ガスの導入の一連の操作を60秒ごとに繰り返した。
最後に、キャリアガス導入口120から窒素ガスを反応器130内に流し、反応器130内の空気を窒素ガスに置換するとともに、反応器130を室温まで冷却した。その後、反応器130の下部に堆積したカーボンナノファイバーを、反応器130の下部から回収した。走査型電子顕微鏡(JSM−5410;日本電子株式会社)を用いて回収したカーボンナノファイバーを観察したところ、繊維長は100〜400μm、繊維径は約100nmであった。
(2)マイクロ波の照射
(1)で得られたカーボンナノファイバー100mgを長さ200mm、内径1インチの石英試験管内に入れた。石英試験管内を空気またはアルゴンガスで満たした後、シリコーン樹脂製の蓋をした。周囲をグラスウール(断熱材)で覆った石英試験管をマイクロ波照射装置内に設置し、マイクロ波(波長2.45GHz、照射出力100〜1800W)を1〜25分間照射した。
2.カーボンナノファイバーの評価
(1)透過型電子顕微鏡による観察
マイクロ波を照射した各カーボンナノファイバーについて、透過型電子顕微鏡(TecnaiG2 20 ST;FEI社)を用いて観察した。図5Aは、マイクロ波を照射する前のカーボンナノファイバーの像であり、図5Bは、アルゴンガス雰囲気下においてマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W)を2分間照射した後のカーボンナノファイバーの像である。図5Bでは、黒鉛結晶に由来する回折像が、鮮明であり、かつ高い配向性を示している。この結果から、マイクロ波を照射することにより、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が向上することがわかる。
また、透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置により、マイクロ波を照射する前後のカーボンナノファイバーについて元素分析を行った。図6Aは、マイクロ波を照射した後のカーボンナノファイバーの端部のEDSスペクトルである。図6Bは、マイクロ波を照射した後のカーボンナノファイバーにおけるEDSスペクトルの測定領域を示す透過型電子顕微鏡像である。マイクロ波を照射する前のカーボンナノファイバーでは、その端部に触媒微粒子に由来する鉄の存在が確認されたが(図示省略)、図6Aに示されるように、マイクロ波を照射した後のカーボンナノファイバーでは、鉄の存在が確認されなかった。この結果から、マイクロ波を照射することにより、カーボンナノファイバー中の不純物が除去されることがわかる。
(2)黒鉛化度の評価
マイクロ波を照射した各カーボンナノファイバーについて、ラマン分光測定装置(HoloLab 5000;Kaiser Optical Systems Inc.)を用いて黒鉛化度を評価した。黒鉛化度の評価は、Gバンド(1590cm−1)のラマン散乱強度Iに対するDバンド(1350cm−1)のラマン散乱強度Iの比R(I/I)を算出することにより行った。黒鉛化度が高いほどR値が小さくなる。
図7Aは、アルゴンガス雰囲気下において照射時間を変えながらマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W)を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。このグラフでは、マイクロ波を2分間照射、マイクロ波を5分間照射、およびマイクロ波を10分間照射したカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値も示している。この結果から、マイクロ波の照射時間が長くなるほど、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が上昇することがわかる。
図7Bは、アルゴンガス雰囲気下において照射出力を変えながらマイクロ波(波長2.45GHz、10分間)を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。このグラフでは、照射出力100Wでマイクロ波を照射、照射出力300Wでマイクロ波を照射、および照射出力750Wでマイクロ波を照射したカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値も示している。この結果から、マイクロ波の照射出力を大きくするほど、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が上昇することがわかる。
図8Aは、アルゴンガス雰囲気下において照射エネルギーを4.5×10Jに固定してマイクロ波(波長2.45GHz)を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。このグラフでは、照射出力300Wで25分間マイクロ波を照射、照射出力750Wで10分間マイクロ波を照射、および照射出力1800Wで4分間マイクロ波を照射したカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値も示している。この結果から、マイクロ波の照射時間よりもマイクロ波の照射出力の方が、黒鉛化度の上昇に対する影響が大きいことが示唆される。
図8Bは、空気雰囲気下またはアルゴンガス雰囲気下においてマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W、10分間)を照射した場合のカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。このグラフでは、空気雰囲気下でマイクロ波を照射、およびアルゴンガス雰囲気下でマイクロ波を照射したカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値も示している。この結果から、黒鉛化度の上昇は、雰囲気の影響を受けないことがわかる。
(3)不純物含有量および耐酸化性の評価
マイクロ波を照射した各カーボンナノファイバーについて、熱重量測定装置(TGA-50;株式会社島津製作所)を用いて不純物含有量および耐酸化性を評価した。不純物含有量の評価は、燃焼後の灰分量比(重量比の最小値)に基づいて行った。不純物含有量が少なくなるほど灰分量比が小さくなる。耐酸化性の評価は、燃焼開始温度(重量減少開始温度)に基づいて行った。耐酸化性が大きいほど燃焼開始温度が高くなる。
図9Aは、アルゴンガス雰囲気下において照射時間を変えながらマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W)を照射した場合のカーボンナノファイバーの熱重量曲線である。このグラフでは、マイクロ波を5分間照射、およびマイクロ波を10分間照射したカーボンナノファイバーの熱重量曲線を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーの熱重量曲線も示している。マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーでは、灰分量比が8.8重量%であったのに対し、マイクロ波を10分間照射したカーボンナノファイバーでは、灰分量比が1.4重量%であった。この結果から、マイクロ波を照射することで、燃焼後の灰分量比が小さくなること、すなわちカーボンナノファイバーの不純物含有量が少なくなることがわかる。また、マイクロ波の照射時間が長くなるほど、燃焼開始温度が高くなること、すなわちカーボンナノファイバーの耐酸化性が上昇することもわかる。
図9Bは、空気雰囲気下またはアルゴンガス雰囲気下においてマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W、10分間)を照射した場合のカーボンナノファイバーの熱重量曲線である。このグラフでは、空気雰囲気下でマイクロ波を照射、およびアルゴンガス雰囲気下でマイクロ波を照射したカーボンナノファイバーの熱重量曲線を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーの熱重量曲線も示している。この結果から、不活性雰囲気下でマイクロ波を照射することにより、カーボンナノファイバー表面の酸化が抑制され、カーボンナノファイバーの耐酸化性がより上昇することがわかる。
(4)親水性の評価
マイクロ波を照射した各カーボンナノファイバーについて、親水性を評価した。親水性の評価は、水20mLにカーボンナノファイバー20mgを加え、超音波処理を5分間行った後の分散状況を目視観察することにより行った。親水性が高くなるほどカーボンナノファイバーは水に分散する。
図10は、超音波処理後のカーボンナノファイバー分散液を示す写真である。左側は、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーを含む分散液であり、中央は、空気雰囲気下でマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W、10分間)を照射したカーボンナノファイバーを含む分散液であり、右側は、アルゴンガス雰囲気下でマイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W、10分間)を照射したカーボンナノファイバーを含む分散液である。図10に示されるように、アルゴンガス雰囲気下でマイクロ波を照射したカーボンナノファイバーを含む分散液では、カーボンナノファイバーの分散が不十分であったのに対し、空気雰囲気下でマイクロ波を照射したカーボンナノファイバーを含む分散液では、カーボンナノファイバーが十分に分散しているのが観察された。マイクロ波の照射条件を変えた場合であっても、同様の結果であった。この結果から、酸素ガスや水蒸気、二酸化炭素ガスなどの酸化力の有るガスを含む雰囲気下でマイクロ波を照射することにより、カーボンナノファイバーの親水性が上昇することがわかる。
(5)電気伝導率の評価
黒鉛化度を評価した各カーボンナノファイバーについて、電気伝導率を評価した。2つの円柱形状の鉄製プローブの底面の間にカーボンナノファイバーを配置し、一方のプローブを他方のプローブに4MPaで押圧した。プローブの底面の直径は、12.5mmである。押圧した状態におけるプローブの底面間の距離(試料の厚み)は、1.1〜1.8mmである。この状態で2つのプローブ間に電圧を印加して電気抵抗を測定し、以下の式(1)によりカーボンナノファイバーの電気伝導率σ(S/m)を算出した。
[上記式(1)において、εは試料の空隙率であり、Lは試料の厚さ(m)であり、Rは電気抵抗(Ω)であり、Aは試料の面積(m)である。]
図11は、空気雰囲気下において照射エネルギーを4.5×10Jに固定してマイクロ波(波長2.45GHz)を照射した場合のカーボンナノファイバーのR値(図8A参照)と電気伝導率との関係を示すグラフである。このグラフから、黒鉛化度が上昇する(R値が小さくなる)と電気伝導率が上昇することがわかる。
(6)まとめ
上記の各評価結果を表1に示す。
以上の結果から、LPI法で生成されたカーボンナノファイバーに対してマイクロ波を照射することで、カーボンナノファイバーの黒鉛化度が向上し、かつカーボンナノファイバー中の不純物が除去されることがわかる。
[実験2]
1.カーボンナノファイバーの製造
(1)LPI法によるカーボンナノファイバーの生成
実験1と同様の手順で、LPI法によりカーボンナノファイバーを生成した。
(2)室温または冷却下におけるマイクロ波の照射
(1)で得られたカーボンナノファイバー100mgを長さ200mm、内径1インチの石英試験管内に入れた。石英試験管内を空気で満たした後、シリコーン樹脂製の蓋をした。石英試験管をマイクロ波照射装置内に設置し、マイクロ波(波長2.45GHz、照射出力750W)を10分間照射した。このとき、ある試験管は周囲をグラスウール(断熱材)で覆った状態で冷却せずにマイクロ波を照射した。別の試験管は液体窒素で冷却した状態でマイクロ波を照射した。
(3)電気炉による加熱
(1)で得られたカーボンナノファイバー100mgを長さ200mm、内径1インチの石英試験管内に入れた。石英試験管内を空気で満たした後、シリコーン樹脂製の蓋をした。石英試験管を電気炉内に設置し、1700℃に10分間加熱した。
2.カーボンナノファイバーの評価(黒鉛化度の評価)
マイクロ波を照射または電気炉で加熱した各カーボンナノファイバーについて、実験1と同様にラマン分光測定装置を用いて黒鉛化度を評価した。
図12は、マイクロ波の照射または電気炉での加熱をしたカーボンナノファイバーのラマンスペクトルである。このグラフでは、室温でマイクロ波(MW)を照射、液体窒素で冷却しながらマイクロ波(MW)を照射、および電気炉で加熱したカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーのラマンスペクトルおよびR値も示している。また、この評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、カーボンナノファイバーを電気炉を用いて1700℃で加熱しても、黒鉛化度はそれほど上昇しなかった。また、液体窒素で冷却しながらカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射しても、黒鉛化度の上昇が観察された。これらのことから、黒鉛化度の上昇については、加熱以外のメカニズムも関係していることが示唆される。
[実験3]
1.カーボンナノファイバーの製造
(1)LPI法によるカーボンナノファイバーの生成
キャリアガスを7.2cm/分の速度で連続導入しながら原料液100μLを原料液導入口110からパルス状に反応器130内に導入した点を除いては実験1と同様の手順で、LPI法によりカーボンナノファイバーを生成した。
(2)マイクロ波の照射
図3に示されるように、長さ200mm、内径1インチの石英試験管310内に窒化ホウ素(BN)製の保護器(BNセル)340を配置した。この保護器340上に(1)で得られたカーボンナノファイバー100mgを配置し、雰囲気ガス導入口320およびガス排出口330を設けられたシリコーン樹脂製の蓋をした。石英試験管310をマイクロ波照射装置300内に設置し、雰囲気ガス導入口320から石英試験管310内にアルゴンガスを導入しながら、マイクロ波(波長2.45GHz、照射出力700Wまたは1800W)を6分間または10分間照射した。
2.カーボンナノファイバーの評価(黒鉛化度の評価)
マイクロ波を照射した各カーボンナノファイバーについて、X線回折装置(CuKα線;株式会社リガク;Ultima IV)を用いて黒鉛化度を評価した。黒鉛化度の評価は、カーボンナノファイバーにおける(002)面の間隔d002を測定することにより行った。黒鉛化度が高いほどd002が小さくなる。
図13は、マイクロ波を照射したカーボンナノファイバーのX線回折スペクトルである。このグラフでは、BNセル上でマイクロ波(1800W)を10分間照射、BNセル上でマイクロ波(1800W)を6分間照射、BNセル上でマイクロ波(700W)を10分間照射、およびBNセル無しでマイクロ波(700W)を10分間照射したカーボンナノファイバーのX線回折スペクトルおよびd002を示している。また、比較のため、マイクロ波を照射していないカーボンナノファイバーのX線回折スペクトルおよびd002も示している。また、この評価結果を表3に示す。
表3に示されるように、BNセルの有無に関係なくカーボンナノファイバーにマイクロ波を照射することで、黒鉛化度が上昇してd002が0.343以下となることがわかる。しかし、図13に示されるように、BNセルが無い場合はC以外のピークが観察されたのに対し、BNセルがある場合はそのようなピークが観察されなかった。このことから、BNセルなどの保護器を用いることでカーボンナノファイバーを石英による汚染から保護できることがわかる。
本発明に係るカーボンナノファイバーの製造方法は、金属微粒子などの不純物の含有量が少なく、かつ黒鉛化度が高いカーボンナノファイバーを容易に製造することができるため、高品質なカーボンナノファイバーの製造方法として有用である。本発明に係る製造方法により製造されたカーボンナノファイバーは、例えば、プラスチック強化材料やガス吸蔵材料、電極材料などの幅広い用途において使用されうる。
100 カーボンナノファイバーの生成装置
110 原料液導入口
120 キャリアガス導入口
130 反応器
140 フィルター
150 電気炉
160 ガス排出口
170 高温領域
210 原料液
220 キャリアガス
230 原料ガス
232 炭素源
234 触媒微粒子
236 初期繊維
238 カーボンナノファイバー
300 マイクロ波照射装置
310 石英試験管
320 雰囲気ガス導入口
330 ガス排出口
340 保護器
410 雰囲気ガス

Claims (2)

  1. 液パルスインジェクション法によりカーボンナノファイバーを生成する工程と、
    前記カーボンナノファイバーにマイクロ波を照射して、前記カーボンナノファイバーの黒鉛化度の向上および前記カーボンナノファイバー中の不純物の除去を行う工程と、
    を含む、カーボンナノファイバーの製造方法。
  2. カーボンナノファイバーを準備する工程と、
    前記カーボンナノファイバー大気下においてマイクロ波を照射して、前記カーボンナノファイバーの黒鉛化度の向上および前記カーボンナノファイバー中の不純物の除去を行う工程と
    を含む、カーボンナノファイバーの製造方法。
JP2015023070A 2015-02-09 2015-02-09 カーボンナノファイバーの製造方法 Active JP6569101B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015023070A JP6569101B2 (ja) 2015-02-09 2015-02-09 カーボンナノファイバーの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015023070A JP6569101B2 (ja) 2015-02-09 2015-02-09 カーボンナノファイバーの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016145435A JP2016145435A (ja) 2016-08-12
JP6569101B2 true JP6569101B2 (ja) 2019-09-04

Family

ID=56686108

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015023070A Active JP6569101B2 (ja) 2015-02-09 2015-02-09 カーボンナノファイバーの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6569101B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7178045B2 (ja) * 2018-12-04 2022-11-25 国立大学法人北海道大学 低欠陥化含窒素炭素材料の製造方法
JP7344508B2 (ja) * 2019-06-27 2023-09-14 国立大学法人北海道大学 低欠陥化炭素材料の製造方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4152677B2 (ja) * 2002-06-13 2008-09-17 日機装株式会社 カーボンナノファイバーの後処理装置及びその後処理方法
JP3860110B2 (ja) * 2002-12-09 2006-12-20 日機装株式会社 カーボンナノファイバーの黒鉛化処理装置
US7150865B2 (en) * 2003-03-31 2006-12-19 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Method for selective enrichment of carbon nanotubes
JP4454353B2 (ja) * 2003-05-09 2010-04-21 昭和電工株式会社 直線性微細炭素繊維及びそれを用いた樹脂複合体
RU2416682C1 (ru) * 2009-07-28 2011-04-20 Марина Владимировна Соболева Способ стабилизации углеродсодержащего волокна и способ получения углеродного волокна
JP5727298B2 (ja) * 2011-05-30 2015-06-03 住友ベークライト株式会社 繊維状炭素の製造方法および製造装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016145435A (ja) 2016-08-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zahid et al. Synthesis of carbon nanomaterials from different pyrolysis techniques: a review
Prasek et al. Methods for carbon nanotubes synthesis
JP4537572B2 (ja) 非担持金属触媒と一重ナノチューブを用いた一重ナノチューブの製法
JP5550833B2 (ja) 高品質単層カーボンナノチューブ成長の方法および装置
KR101274492B1 (ko) 단층 카본 나노튜브의 제조 방법
Kibria et al. Synthesis of narrow-diameter carbon nanotubes from acetylene decomposition over an iron–nickel catalyst supported on alumina
JP7176126B1 (ja) 高分子重合体廃棄物から多層カーボンナノチューブを合成するためのプロセス及び装置
Shudin et al. The role of solid, liquid and gaseous hydrocarbon precursors on chemical vapor deposition grown carbon nanomaterials' growth temperature
JP6492598B2 (ja) カーボンナノチューブの製造方法
Zobir et al. Raman spectroscopic study of carbon nanotubes prepared using Fe/ZnO-palm olein-chemical vapour deposition
JP6569101B2 (ja) カーボンナノファイバーの製造方法
US20080279752A1 (en) Method for producing a single-wall carbon nanotube
Bota et al. Synthesis of single-wall carbon nanotubes by excimer laser ablation
JP2004217511A (ja) フラーレンまたはカーボンナノチューブの製造方法、および装置
JP6020850B2 (ja) 炭素繊維の製造方法および炭素繊維
Mansoor et al. Optimization of ethanol flow rate for improved catalytic activity of Ni particles to synthesize MWCNTs using a CVD reactor
JP5535103B2 (ja) グラファイトナノカーボンファイバー及びその製造方法
KR20120092344A (ko) 금속유기구조체(MOFs)를 이용한 탄소나노튜브 또는 탄소나노섬유의 제조방법 및 이에 따라 제조되는 탄소나노튜브 또는 탄소나노섬유
JP2005279624A (ja) カーボンナノチューブの製造用触媒、製造方法及び製造装置
JP2020531391A (ja) カーボンナノチューブの合成のための方法及び装置
Kalaiselvan et al. Morphology of entangled multiwalled carbon nanotubes by catalytic spray pyrolysis using Madhuca longifolia oil as a precursor
RU2546154C1 (ru) Нанокомпозит на основе азотосодержащих углеродных нанотрубок с инкапсулированными частицами кобальта и никеля и способ его получения
Kure et al. Comparative Study on the Syntheses of Carbon Nanomaterials Using Polyethylene and Risk Husk as Carbon Precursor
Kowalska et al. Morphology and electronic properties of carbon nanotubes grown with Fe catalyst
JP4426244B2 (ja) カーボンナノチューブの製造方法および精製方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20150226

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150227

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171211

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190308

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190702

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190703

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190704

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190710

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190704

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6569101

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250