本発明の実施形態に係る行先階登録装置、エレベータの群管理システム、及びエレベータシステムについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
(実施形態1)
1−1.エレベータシステムの概要
本実施形態に係るエレベータシステムの概要について説明する。図1は、実施形態1に係るエレベータシステムの配置を示す概略図である。
本実施形態に係るエレベータシステムは、図1に示すように、複数のエレベータ1A〜1Fと、行先階登録装置2A,2Bと、ホールスピーカ3A,3Bとを備える。エレベータの群管理システムは、エレベータ(A号機〜F号機。以下適宜「号機」という)1A〜1Fの走行および運行を統合的に制御する。本実施形態では、一例としてA号機からF号機の6台のエレベータ1A〜1Fが設けられている。各エレベータ1A〜1Fの乗降口がエレベータホールに設けられており、利用者はエレベータホールからエレベータ1A〜1Fに乗車する。
本実施形態に係るエレベータの群管理システムは、行先階登録方式を採用する。行先階登録方式は、利用者がエレベータ1A〜1Fの乗車する前に、利用者の目的の階床である行先階があらかじめ登録される方式である。本実施形態では、行先階登録装置2A,2Bが、エレベータホールの入口の近傍に設置されているものとする。以下、行先階登録装置2A,2Bを総称して「行先階登録装置2」という場合がある。
図2は、本システムにおける行先階登録装置を説明するための図である。図2(a)は、行先階登録装置2の外観を示す。行先階登録装置2は、インジケータ21と、表示部22と、タッチパネル23と、キーパッド24と、音声出力部25とを備える。
図2(b)は、表示部22の表示例を示す。図2(b)に示すように、表示部22は、例えば「行先階を入力してください」というメッセージや、テンキーを示すアイコンG1(以下、「テンキーアイコン」という。)を表示する。このような表示を視認した利用者は、タッチパネル23にタッチすることで、行先階を入力する操作を行える。本システムでは、行先階登録装置2において入力された行先階が、複数台のエレベータ1A〜1Fの内のいずれかのエレベータに割り当てられる(以下、利用者の行先階が割り当てられたエレベータを「割当号機」という。)。また、表示部22は、「車いす仕様をご希望の方は、下の車いすボタンを押した後、行先階を入力してください」というメッセージや、車いすのマークが付されたボタンG2(以下、「車いすボタン」という。)を表示する。本システムでは、利用者が行先階の入力操作時に車いすボタンG2にタッチすると、割当号機において、車いす使用者に適した運行が行われる。
本実施形態では、行先階登録装置2において、表示部22の表示を視認することが困難な視覚障害者のために、触覚に基づき操作可能なキーパッド24が設けられている。本システムでは、キーパッド24が操作されると、利用者が視覚障害者であるとみなして、音声出力部25から音声アナウンスが行われたり、割当号機において視覚障害者に適した運行が行われたりする。以下、本システムの構成について説明する。
1−2.エレベータの群管理システムの構成
本実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成について、図1〜3を参照して説明する。図3は、実施形態1に係るエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係るエレベータの群管理システムは、エレベータ1A〜1F毎に設けられた号機制御装置5A〜5Fと、複数の行先階登録装置2A,2Bと、複数のホールスピーカ3A,3Bと、群管理制御装置4とを備える。
各エレベータ(各号機)1A〜1Fは、かご、巻上機(モータ)、釣合おもり、制御部等を有する。
エレベータ1A〜1Fの内で、エレベータ1A,1Bは、スピーカ11(音声案内部)などの、身体障害者(視覚障害者や車いす使用者)に適した運行が可能な仕様を有する専用機である。スピーカ11は、例えば、エレベータ1A,1Bが視覚障害者の行先階の到着したときに、所定のアナウンスやメロディ音などの音声情報を出力する。図1に示すように、エレベータ1A,1Bは、それぞれエレベータ1A〜1Fの内で、行先階登録装置2A,2Bの設置位置に最も近い位置に設置されている。
ホールスピーカ3A,3Bは、それぞれ図1に示すように、エレベータ1A,1Bの乗降口の近傍に設置されている。ホールスピーカ3A,3Bは、それぞれエレベータ1A,1Bに視覚障害者の行先階が割り当てられたときに、視覚障害者にエレベータ1A,1Bの位置を案内するために、所定のアナウンスやメロディ音などの音声情報を出力する。
1−3.群管理制御装置の構成
群管理制御装置4は、行先階登録装置2によって登録される行先階を、複数のエレベータ1A〜1Fのうちのいずれかのエレベータに割り当てる制御を行う。群管理制御装置4は、図3に示すように、記憶部40と、群管理制御部41と、入出力インタフェース42とを備える。群管理制御装置4は、利用者の属性に応じてエレベータ1A〜1Fの運行を制御する群管理制御装置の一例である。
記憶部40は、群管理制御装置4の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。プログラムは、本実施形態の各種機能を実現するためのプログラムを含む。例えば、記憶部40は、行先階登録装置2A,2Bの設置場所から各エレベータ1A〜1Fまでの距離や移動時間(例えば閑散時と混雑時とのそれぞれにおける移動時間)、各エレベータ1A〜1Fの仕様などのデータを格納している。記憶部40は、例えばハードディスク(HDD)や半導体記憶装置(SSD)で構成される。
群管理制御部41は、群管理制御装置4の動作全体を制御する。群管理制御部41は、記憶部40から読み出した上記プログラムに基づいて種々のデータ等を利用して演算処理を行うことにより、群管理制御装置4における後述する各種の機能を実現する。群管理制御部41は、例えばCPU、MPUで構成される。群管理制御部41は、専用に設計された電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路(ASIC,FPGA等)で構成されてもよい。群管理制御部41の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
入出力インタフェース42は、行先階登録装置2A,2B及び号機制御装置5A〜5Fとの間で各種信号を送受信するためのインタフェース回路である。入出力インタフェース42は、群管理制御部41から出力される信号を所定の形式の信号に変換して出力する。また、入出力インタフェース42は、行先階登録装置2A,2B及び号機制御装置5A〜5Fから入力された信号を所定の形式の信号に変換して群管理制御部41に出力する。入出力インタフェース42は、各種装置と有線接続を介して通信してもよいし、無線接続を介して通信してもよい。
1−4.号機制御装置の構成
号機制御装置5A〜5Fは、群管理制御装置4からの制御信号にしたがって、対応するエレベータ1A〜1Fをそれぞれ駆動する制御装置である。また、号機制御装置5A〜5Fはそれぞれ、対応するエレベータ1A〜1Fのかごの位置、走行方向、ドアの開閉状態、荷重等を含むかご状態を検知して、検知したかご状態を示す情報を含むかご状態信号を群管理制御装置4に出力する。なお、以下では、号機制御装置5A〜5Fを総称して「号機制御装置5」という場合がある。
号機制御装置5A〜5Fの内で、エレベータ(専用機)1A,1Bの号機制御装置5A,5Bは、それぞれ群管理制御装置4からの制御信号に従い、エレベータ1A,1Bの種々の運行状態を設定する運行モードを切替え制御する。エレベータ1A,1Bの運行モードには、通常モードと配慮運転モードとがある。通常モードは、エレベータ1A,1Bにおいて、専用機以外のエレベータ1C〜1Fと同様の運行を行う運行モードである。配慮運転モードは、エレベータ1A,1Bにおいて、身体障害者の乗車に配慮した運転を行うための、エレベータの運行モードである。配慮運転モードでは、例えば、特定の階床(身体障害者の出発階及び行先階)においてドアの開放期間を通常時よりも長くしたり、スピーカ11から上記の音声出力をしたりするように、種々の制御がなされる。号機制御装置5の構成の詳細については後述する。
1−5.行先階登録装置の構成
行先階登録装置2の構成について、図2、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本システムにおける行先階登録装置2の構成を示すブロック図である。図5は、行先階登録装置2におけるキーパッドの構成例を示す図である。
行先階登録装置2は、行先階登録方式において利用者の行先階を群管理制御装置4に登録するための装置である。行先階登録装置2は、図4に示すように、制御部20と、インジケータ21と、表示部22と、タッチパネル23と、キーパッド24と、音声出力部25と、記憶部26と、入出力インタフェース27とを備える。
制御部20は、行先階登録装置2の動作全体を制御する。制御部20は、記憶部26から読み出した上記プログラムに基づいて種々のデータ等を利用して演算処理を行うことにより、行先階登録装置2における後述する各種の機能を実現する。制御部20は、例えばCPU、MPUで構成される。制御部20は、専用に設計された電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路(ASIC,FPGA等)で構成されてもよい。制御部20の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
インジケータ21は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。インジケータ21は、タッチパネル23の操作結果(入力された階床数など)を示す情報を表示する。
表示部22は、例えば平面型や曲面型の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。表示部22は、制御部20が生成する画像信号に基づいて、種々の画像を表示する。例えば、表示部22は、図2(b)に示すように、テンキーアイコンG1や車いすボタンG2などを含む画像を表示する。
タッチパネル23は、表示部22の表示面に重畳して設けられたタッチセンサである。タッチパネル23は、表示部22によって表示された画像に対するタッチ操作を受け付け(図2(b)参照)、所定の信号を制御部20に出力する。
表示部22とタッチパネル23とは、タッチパネル式表示デバイスである表示操作部28を構成する。表示操作部28において、表示部22とタッチパネル23とは一体的に形成されてもよいし、別体で形成されてもよい。なお、表示操作部28には、テンキーアイコンG1等の表示領域を触覚で識別可能にするための特別の構成は、特に設けられていない。表示操作部28は、表示部22に表示された画像に対するタッチ操作に基づき利用者の行先階の入力を受け付ける第1の操作部の一例である。
図2(b)において、表示部22が表示するテンキーアイコンG1は、「0」〜「9」の数字に対応する複数の数字ボタンと、「確定」と表記された確定ボタンと、「削除」と表記された削除ボタンとを有する。本実施形態では、利用者がテンキーアイコンG1における数字ボタンをタッチすることにより、タッチした数字ボタンに対応する数字がインジケータ21に表示される。確定ボタン及び削除ボタンは、それぞれ「0」の数字ボタンの両隣に配置されている。確定ボタンのタッチ操作により、インジケータ21に表示された数の階床を行先階として確定する機能が実現される。また、削除ボタンのタッチ操作により、インジケータ21に表示された数字を取り消す機能が実現される。なお、インジケータ21と表示部22は、一体的に形成されてもよい。
図2(a)に示すように、キーパッド24は、「0」〜「9」の数字に対応する複数の押しボタンを有する押圧式の操作部材である。キーパッド24は、各押しボタンに対する押圧操作を検知して、そのボタンに対応する数字を示す所定の信号を制御部20に出力する。キーパッド24は、表示部22に併設されている。本実施形態では一例として、キーパッド24における「0」〜「9」の数字に対応する押しボタンの配置は、図2(b)に示すテンキーアイコンG1と同様の配置とする。また、本実施形態において、キーパッド24は、テンキーアイコンG1における確定ボタン及び削除ボタンと同様の配置(「0」の押しボタンの両隣)において、確定押しボタン及び削除押しボタンを有する。キーパッド24では、確定押しボタン及び削除押しボタンの押圧操作により、テンキーアイコンG1における確定ボタン及び削除ボタンと同様の機能が実現される。
図5(a)は、本実施形態におけるキーパッド24の外観を示す。図5(a)に示すように、キーパッド24における押しボタンの主面には、点字形状の凸部24aが形成されている。凸部24aは、「0」〜「9」の数字に対応する押しボタン上で、それぞれの数字を点字で表すように形成されている。また、確定押しボタンの主面には点字で「OK」を示す凸部24oが形成され、削除押しボタンの主面には点字で「NG」を示す凸部24nが形成されている。このため、利用者はキーパッド24を操作する際、凸部24aを触ることにより、操作対象(入力される数字やその確定/削除のための操作)を触覚で識別可能である。
また、図5(a)に示すように、本実施形態に係るキーパッド24の各押しボタンは、数字の印字などの、視認可能な数字の識別表示を付さずに構成されている。これにより、キーパッド24が視覚的に目立たず、また健常者にとっては、各ボタンが何の数字を示すかを把握しにくいため、視覚障害者専用のキーパッド24の各ボタンに対する健常者等による操作を抑制することができる。また、キーパッド24の押圧操作時の押し込み量を小さくするために、突出部24pは、例えば基準面24sに対して1mm〜1cm以内の所定量、突出する形状を有する。これにより、キーパッド24が立体視的に目立たず、健常者等が意図的にキーパッド24を操作する可能性を低減できる。キーパッド24は抵抗式のタッチパッドなどで構成されてもよい。
図5(b),(c)は、第1及び第2の変形例に係るキーパッド24’,24”の外観を示す。図5(a)に示すキーパッド24の凸部24aは、「0」〜「9」の全ての数字、並びに「確定(OK)」及び「削除(NG)」を点字で表すように形成されているが、全ての数字等が点字で表されなくてもよい。図5(b)に示すキーパッド24’では、凸部24bが「5」の押しボタンにのみ、「5」の数字を点字形状で表すように形成されている。「5」の押しボタンはキーパッド24’の中央に位置している。このため、利用者(視覚障害者)は、凸部24bの周囲の押しボタンの形状を触ることによって、「5」以外の押しボタンの相対的な位置についても、触覚的に識別することができる。なお、確定押しボタンや削除押しボタンの使用が必要となるときには、適宜、「キーパッドの右下隅のボタンを押すと確定できます」や、「キーパッドの左下隅のボタンを押すと削除できます」などの音声アナウンスが音声出力部25から出力されるようにしてもよい。
また、図5(a),(b)に示すキーパッド24,24’の凸部24a,24o,24n,24bは点字形状で形成されているが、点字形状以外の形状で凸部が形成されてもよい。図5(c)に示すキーパッド24”は、凸部24c,24o’,24n’を有する。凸部24cは、特に点字を表す形状ではなく、「5」の押しボタン上に形成されている。凸部24cの高さは、0.1mm〜1mmである。一般的に、キーパッドの「5」の押しボタン上に、操作位置を触覚で識別可能にするための凸部が設けられることがあり、利用者(視覚障害者)は、凸部24cの設けられた位置によってキーパッド24”の位置を触覚に基づいて認識可能である。
また、凸部24o’は、確定押しボタン上に0.1mm〜1mmの高さにおいて「○」印の凸形状で形成されている。凸部24n’は、削除押しボタン上に0.1mm〜1mmの高さにおいて「×」印の凸形状で形成されている。利用者(視覚障害者)は、凸部24o’,24n’の形状を触覚で識別することにより、確定押しボタン及び削除押しボタンを操作可能である。
キーパッド24,24’,24”は、それぞれ触覚で操作対象を識別可能な操作部材に対する押圧操作に基づき利用者の行先階の入力を受け付ける第2の操作部の一例である。キーパッド24,24’,24”における各凸部24a,24b,24c,24o,24n,24o’,24n’は、適宜、組み合わされてもよい。
図4に戻り、音声出力部25は、制御部20からの制御信号に基づいて、所定の情報を有する音声を出力する。音声出力部25は、例えば音声合成装置で構成される。なお、音声出力部25は、音声アナウンスに限らず、メロディ音やブザー音などを出力してもよい。
記憶部26は、行先階登録装置2の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。プログラムは、本実施形態の各種機能を実現するためのプログラムを含む。例えば、記憶部26は、当該記憶部26を含む行先階登録装置2の識別情報を示す行先階登録装置IDを記録している。記憶部26は、例えばフラッシュメモリで構成される。
入出力インタフェース27は、群管理制御装置4やホールスピーカ3A,3Bとの間で各種信号を送受信するためのインタフェース回路である。入出力インタフェース27は、制御部20から出力される信号を所定の形式の信号に変換して出力する。また、入出力インタフェース27は、群管理制御装置4から入力された信号を所定の形式の信号に変換して制御部20に出力する。入出力インタフェース27は、群管理制御装置4と有線接続を介して通信してもよいし、無線接続を介して通信してもよい。入出力インタフェース27は、群管理制御装置4に各種情報を送受信する通信部の一例である。
1−6.号機制御装置の構成の詳細
各エレベータ1A〜1Fに対する号機制御装置5A〜5Fは、群管理制御装置4からの制御信号に基づいて、巻上機(モータ)の動作等を制御することにより、かごの上昇、下降、停止等を制御する。号機制御装置5の構成の詳細について、図6を参照して説明する。図6は、本システムにおける号機制御装置5の構成を示すブロック図である。
号機制御装置5は、図6に示すように、制御部50と、記憶部51と、入出力インタフェース52とを備える。
制御部50は、号機制御装置5の動作全体を制御する。制御部50は、記憶部51から読み出した上記プログラムに基づいて種々のデータ等を利用して演算処理を行うことにより、号機制御装置5における後述する各種の機能を実現する。制御部50は、例えばCPU、MPUで構成される。制御部50は、専用に設計された電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路(ASIC,FPGA等)で構成されてもよい。制御部50の機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
記憶部51は、行先階登録装置2の機能を実現するために必要なプログラム及びデータを記憶する記憶媒体である。プログラムは、本実施形態の各種機能を実現するためのプログラムを含む。記憶部51は、例えばフラッシュメモリで構成される。
入出力インタフェース52は、群管理制御装置4やエレベータとの間で各種信号を送受信するためのインタフェース回路である。入出力インタフェース52は、制御部50から出力される信号を所定の形式の信号に変換して出力する。また、入出力インタフェース52は、号機制御装置5A〜5F毎に対応するエレベータ1A〜1Fや、群管理制御装置4から入力された信号を所定の形式の信号に変換して制御部50に出力する。入出力インタフェース52は、群管理制御装置4と有線接続を介して通信してもよいし、無線接続を介して通信してもよい。
2.動作
2−1.動作の概要
本実施形態に係る行先階登録装置2及びエレベータの群管理システムの動作の概要について、図1,2を用いて説明する。
本実施形態に係る行先階登録装置2は、図2(b)に示すようにテンキーアイコンG1及び車いすボタンG2を含む画像を表示部22に表示する。テンキーアイコンG1などが表示される表示部22の近傍には、図2(a)に示すようにキーパッド24が併設されている。このように併設する目的は、キーパッド24の操作と同一の機能をテンキーアイコンG1の操作でも実現すること等ではなく、キーパッド24とテンキーアイコンG1のいずれが操作されたかに基づき、利用者属性に応じてエレベータ案内機能を切替えることにある。
本システムは、キーパッド24が操作された場合、利用者が視覚障害者であるとみなして、音声出力部25やホールスピーカ3A,3Bからの音声案内など、視覚障害者に適した案内を行う。キーパッド24は凸部24aによって触覚で数字を識別可能であるため、視覚障害者にとって操作し易い。しかし、キーパッド24には、数字の印字等がないため、健常者はキーパッド24を利用しにくい。一方、本システムは、表示部22上のテンキーアイコンG1などに対するタッチ操作がされた場合、利用者が視覚障害者ではないとみなして、インジケータ21や表示部22による案内表示など、視覚障害者以外の者に適した案内を行う。表示操作部28におけるテンキーアイコンG1は視覚で数字を識別可能であるため、視覚障害者以外の者にとって操作し易い。また、視覚障害者以外の者の利用者属性を判断するため、表示部22の画面上に車いすボタンG2が設けられている。以下、本システムにおける行先階登録装置2及び群管理制御装置4の動作について説明する。
2−2.行先階登録装置の動作
図7〜10を参照して、行先階登録装置2の動作について説明する。図7は、行先階登録装置2による行先階登録処理を示すフローチャートである。図8は、図7の行先階登録処理に続く残りの行先階登録処理を示すフローチャートである。図9は、行先階登録処理における健常者に対する表示部22の表示例を示す図である。図10は、行先階登録処理における車いす使用者に対する表示部22の表示例を示す図である。図7,8のフローチャートに基づく処理は、所定の周期(例えば0.5秒)で繰り返し行われる。
行先階登録処理は、行先階登録装置2において、利用者による行先階の入力操作を受け付けるとともに、行先階が割り当てられたエレベータを利用者に報知する処理である。行先階登録処理は、行先階登録装置2の制御部20によって実行される。
まず、制御部20は、タッチパネル23の出力信号に基づいて、表示部22によって表示された車いすボタンG2(図9(a)参照)に対するタッチ操作が行われたか否かを判断する(S1)。
制御部20は、車いすボタンG2に対するタッチ操作が行われていないと判断したとき(S1でNO)、タッチパネル23の出力信号に基づいて、表示部22によって表示されたテンキーアイコンG1に対するタッチ操作が行われたか否かを判断する(S2)。
さらに、制御部20は、テンキーアイコンG1に対するタッチ操作が行われていないと判断したとき(S2でNO)、図8に示すように、キーパッド24の出力信号に基づいて、キーパッド24に対する押圧操作が行われたか否かを判断する(S11)。
制御部20は、キーパッド24に対する押圧操作が行われていないと判断したとき(S11でNO)、本フローチャートの処理を終了する。
上記の処理は、利用者の利用者属性(健常者、車いす使用者又は視覚障害者)を判別するための処理であり、利用者が行先階登録装置2に行先階を入力する際に行う操作に基づいて行われる。以下、利用者が健常者、車いす使用者又は視覚障害者である場合のそれぞれにおいて実行される処理について説明する。
(1)利用者が健常者である場合
まず、利用者が健常者である場合に実行される処理について説明する。
制御部20は、車いすボタンG2へのタッチ操作がされず(S1でNO)、テンキーアイコンG1のタッチ操作がなされたと判断した場合(S2でYES)、健常者属性の属性情報及び入力された行先階を示す行先階情報と行先階登録装置IDとを群管理制御装置4に送信する(S3)。健常者属性は、利用者が健常者であることを示す。図9(a)は、ステップS2における表示部22の表示例を示し、図9(b)は、ステップS2におけるインジケータ21の表示例を示す。
図9(a)に示すように、テンキーアイコンG1における「8」のボタンがタッチ操作されると(図9(a)の例では、タッチされたことを破線の枠線で示している。)、図9(b)に示すように、インジケータ21に「8」が表示される。このとき、テンキーアイコンG1における確定ボタンがタッチ操作されると、「8階」が行先階として確定する。これにより、確定された行先階「8階」を示す行先階情報が、健常者属性を示す属性情報とともに、ステップS3において群管理制御装置4に送信される。
群管理制御装置4は、健常者属性を示す属性情報とともに行先階情報及び行先階登録装置IDを受信すると、これに応答して、行先階情報が示す行先階が割り当てられた割当号機を示す割当号機情報を行先階登録装置2に送信する。群管理制御装置4の動作の詳細については後述する。
次に、行先階登録装置2の制御部20は、入出力インタフェース27(図4参照)を介して群管理制御装置4から割当号機情報を受信したか否かを判断する(S4)。
制御部20は、群管理制御装置4から割当号機情報を受信するまでステップS4の判断を繰り返し行い(S4でNO)、群管理制御装置4から割当号機情報を受信すると(S4でYES)、受信した割当号機情報が示す割当号機を利用者に案内するための案内画像を生成して、表示部22に表示させる(S5)。図9(c)は、ステップS5における表示部22の表示例を示す。
図9(c)の表示例で、表示部22は「D号機の前でお待ちください」と表示している。これにより、利用者の行先階に対して、D号機(エレベータ1D(図1参照))が割り当てられたことを示す。利用者は、視覚により、自身の行先階が割り当てられた割当号機を認識することができる。
制御部20は、例えば、表示部22に所定時間(例えば3秒)、図9(c)に示す案内画像を表示させ、その後に案内画像を消去させ、本処理を終了する。
(2)利用者が車いす使用者である場合
次に、利用者が車いす使用者である場合に実行される処理について説明する。
制御部20は、車いすボタンG2のタッチ操作がなされたと判断した場合(S1でYES)、テンキーアイコンG1のタッチ操作がなされたか否かを判断する(S6)。ステップS6の処理は、車いす使用者による行先階の入力を受け付けるための処理である。図10(a)は、ステップS6における表示部22の表示例を示す。
図10(a)に示す表示例では、車いすボタンG2のタッチ操作がなされた後の状態である(図9(a)の例と同様に、タッチされたことを破線の枠線で示している。)。制御部20は、車いすボタンG2のタッチ操作後にテンキーアイコンG1のタッチ操作がなされていない場合(S6でNO)、図7のステップS6の処理を繰り返す。なお、制御部20は、車いすボタンのタッチ操作後の所定期間中(例えば10秒)に、テンキーアイコンG1のタッチ操作がなされなかった場合、ステップS1以降の処理を再度、行ってもよい。
制御部20は、テンキーアイコンG1のタッチ操作がなされたと判断した場合(S6でYES)、タッチ操作によって入力された行先階を示す行先階情報、行先階登録装置IDおよび車いす使用者属性を示す属性情報を群管理制御装置4に送信する(S7)。車いす使用者属性は、利用者が車いす使用者であることを示す。
群管理制御装置4は、車いす使用者属性を示す属性情報とともに行先階情報及び行先階登録装置IDを受信すると、後述するように、配慮運転モードで運転可能な専用機の中のいずれかの号機に行先階情報が示す行先階を割り当てて、割当号機情報を行先階登録装置IDが示す行先階登録装置2に送信する。
次に、行先階登録装置2の制御部20は、入出力インタフェース27(図4参照)を介して群管理制御装置4から割当号機情報を受信したか否かを判断する(S8)。
制御部20は、群管理制御装置4から割当号機情報を受信するまでステップS8の判断を繰り返し行い(S8でNO)、群管理制御装置4から割当号機情報を受信すると(S8でYES)、受信した割当号機情報が示す割当号機を利用者に案内するための案内画像を生成して、表示部22に表示させる(S9)。図10(b)は、ステップS9における表示部22の表示例を示す。
図10(b)の表示例は、表示部22は「配慮運転モードです」及び「A号機の前でお待ちください」と表示している。これにより、利用者の行先階に対して、A号機(エレベータ1A(図1参照))が割り当てられたこと、及びA号機が配慮運転モードで運転されることを示す。利用者は、視覚により、自身の行先階が割り当てられた割当号機を認識することができる。
制御部20は、例えば、表示部22に所定時間(例えば3秒)、図10(b)に示す案内画像を表示させ、その後に案内画像を消去させ、本処理を終了する。
(3)利用者が視覚障害者である場合
以下、利用者が視覚障害者である場合に実行される処理について説明する。
図8に戻り、制御部20は、キーパッド24に対する押圧操作が行われたと判断すると(S11でYES)。音声出力部25から、押圧操作で入力された行先階を確認するための確認情報を音声アナウンスで出力する(S12)。例えば、キーパッド24において「9」の押しボタンが押されると、ステップS12において、音声出力部25から「9階」という音声アナウンス、及び「宜しければ、キーパッドの確認ボタンを押して確定してください」という音声アナウンスが行われる。
次に、制御部20は、音声出力部25の音声アナウンスから所定期間(例えば10秒)内に、キーパッド24の押圧による確認操作がなされたか否かを判断する(S13)。確認操作とは、例えばキーパッド24における確認ボタンを押す操作である。確認操作は、キーパッド24の中のいずれかの押しボタンを押す操作であってもよい。制御部20は、所定期間内に確認操作がなされなかったと判断した場合(S13でNO)、ステップS11以降の処理を再度、行う。なお、制御部20は、キーパッド24の押しボタン操作後の所定期間中(例えば10秒)に、確認ボタンの操作がなされなかった場合、ステップS1以降の処理を再度、行ってもよい。
制御部20は、所定期間内に確認操作がなされたと判断した場合(S13でYES)、キーパッド24から入力された行先階を示す行先階情報、行先階登録装置IDおよび視覚障害者属性を示す属性情報を群管理制御装置4に送信する(S14)。視覚障害者属性は、利用者が視覚障害者であることを示す。例えば、ステップS12において「9階」という音声アナウンスがされた後に確定操作がなされると、制御部20は、9階を行先階として示す行先階情報を、視覚障害者属性を示す属性情報とともに群管理制御装置4に送信する(S14)。このとき、制御部20は、音声出力部25に「9階が登録されました」などの音声を出力させてもよい。
群管理制御装置4は、視覚障害者属性を示す属性情報とともに行先階情報及び行先階登録装置IDを受信すると、例えば記憶部40に記録されている距離を参照して行先階登録装置IDが示す行先階登録装置2から最寄りの専用機(割当号機)に行先階情報が示す行先階を割り当てて、割当号機情報を当該行先階登録装置2に送信する。
次に、行先階登録装置2の制御部20は、入出力インタフェース27(図4参照)を介して群管理制御装置4から割当号機情報を受信したか否かを判断する(S15a)。
制御部20は、群管理制御装置4から割当号機情報を受信するまでステップS15aの判断を繰り返し行い(S15aでNO)、群管理制御装置4から割当号機情報を受信すると(S15aでYES)、割当号機情報に基づき当該制御部20を含む行先階登録装置2から最寄りの割当号機(専用機)を利用者に案内するためのメッセージを含む案内情報を生成して、生成した案内情報を音声出力部25にアナウンスさせる(S15)。最寄りの割当号機(専用機)は、行先階登録装置2A,2Bのそれぞれの設置位置に対して、最も近い位置に設置されているエレベータ1A,1Bである(図1参照)。例えば、行先階の登録が行先階登録装置2Aで行われた場合には、音声出力部25は、案内情報として「A号機の前でお待ちください」という音声アナウンスを出力する。このとき、制御部20は、表示部22に、図10(b)と同様の画像を表示させてもよい。
次に、制御部20は、ホールスピーカ3A,3Bの内で、最寄りの割当号機(専用機)に対応するホールスピーカに、所定のアナウンスやメロディ音などの音声情報を出力させる(S16)。これにより、視覚障害者の行先階が割り当てられたエレベータの近傍にあるホールスピーカから音声情報が出力され、視覚障害者に乗車すべきエレベータの位置を案内することができる。
制御部20は、音声情報の出力後に、表示部22に案内画像を消去させ、本処理を終了する。
以上の処理によると、健常者や車いす使用者が画像に対するタッチ操作により視覚で操作し易い表示操作部28と、視覚障害者が触覚で操作し易いキーパッド24とのうちのいずれから行先階が入力されたかに基づいて、それぞれの利用者属性に応じたエレベータの運行や案内が行われる。このため、視覚障害者を含む利用者にとってエレベータを利用しやすくすることができる。
また、以上の処理では、利用者情報における属性情報に基づいて、視覚障害者などの特定の利用者には音声によって行先階に関する情報が報知され(図8のステップS12)、他の利用者の操作時には音声による行先階の報知が省略される。これにより、視覚障害者のための音声アナウンスが多発する煩わしい事態を回避できる。
また、本実施形態では、キーパッド24には視認可能な数字の識別表示が付されていない。そのため、視覚に頼る利用者にとって、キーパッド24は操作し難くなっている。これにより、健常者や車いす使用者が、キーパッド24を用いて行先階を入力することを抑制することができる
また、本実施形態では、表示部22に表示されたテンキーアイコンG1において数字ボタンをタッチしてから確定ボタンにタッチするという、少なくとも二回のタッチ操作をしなければ、表示操作部28で行先階の入力が確定しない。これにより、視覚障害者が表示操作部28でテンキーアイコンG1の数字ボタンに触れた場合でも、行先階の入力が確定される可能性は少ない。よって、無駄な呼びが発生することが抑制されると共に視覚障害者に対して割当号機の音声案内などがされない事態を起こり難くすることができる。
2−3.群管理制御装置の動作
群管理制御装置4の動作について、図11を参照して説明する。
図11は、群管理制御装置4によるエレベータの割当処理を示すフローチャートである。エレベータの割当処理は、行先階登録装置2において登録された行先階を、群管理制御装置4において、複数のエレベータ1A〜1Fのうちのいずれかのエレベータに割り当てる処理である。図11に示すエレベータの割当処理は、図7,8に示す行先階登録装置2において行われた行先階登録処理に基づいて、群管理制御装置4の群管理制御部41によって実行される。
まず、群管理制御部41は、入出力インタフェース42(図3参照)を介して、図7のステップS3,S6又は図8のステップS14において行先階登録装置2が送信した行先階情報、行先階登録装置ID及び利用者に関する属性情報を受信したか否かを判断する(S21)。群管理制御部41は、行先階情報、行先階登録装置ID及び属性情報を受信していないと判断した場合(S21でNO)、本処理を繰り返し実行する。
群管理制御部41は、行先階情報、行先階登録装置ID及び属性情報を受信したと判断した場合(S21でYES)、受信した属性情報に基づいて、利用者が視覚障害者であるか否かを判断する(S22)。
群管理制御部41は、利用者が視覚障害者でないと判断した場合(S22でNO)、受信した属性情報に基づいて、利用者が車いす使用者であるか否か判断する(S23)。例えば、図7のステップS3の処理の実行時には、行先階登録装置2から健常者属性を示す属性情報が群管理制御装置4に送信される。この場合、群管理制御部41は、利用者が視覚障害者でないと判断し(S22でNO)、さらに車いす使用者でもないと判断し(S23でNO)、ステップS24に進む。
ステップS24において、群管理制御部41は、複数のエレベータ1A〜1Fの中からいずれかのエレベータに、受信した行先階情報が示す行先階を割り当てて、割当号機を決定する。ステップS24の処理は、例えば以下のように行われる。
まず、群管理制御部41は、エレベータ1A〜1Fにおける各エレベータの運行情報に基づいて、行先階を割り当てるべきエレベータ(割当号機)を選択するための評価値を、エレベータ毎に算出する。ここで、各エレベータの運行情報は、例えば、各エレベータのかご状態(かごの位置、走行方向、ドアの開閉状態、荷重等を含む)、予測される待ち時間(割当号機が出発階に到着するまでの時間)、予測されるサービス完了時間(割当号機が行き先階に到着するまでの時間)、かごの予定される停止回数(サービス完了までの間に予定されるエレベータの停止回数)などを示す情報を含む。上記評価値の算出後、群管理制御部41は、エレベータ1A〜1Fのうちから最も高い評価値を有するエレベータを選択し、行先階を、選択したエレベータに割り当てる。群管理制御部41は、この他、一般的に知られている従来の方法を用いて行先階をいずれかのエレベータに割り当ててもよい。
次に、群管理制御部41は、号機制御装置5A〜5Fの中で割当号機を制御する号機制御装置に、行先階呼び情報(出発階情報及び行先階情報)を送信する(S25)。出発階情報は、行先階登録装置2の設置階を出発階として示す情報である。ステップS23において行先階呼び情報を受信した号機制御装置は、行先階登録装置2の設置階(出発階)から行先階情報が示す行先階に運行するように、割当号機を制御する。
次に、群管理制御部41は、行先階登録装置IDに基づき行先階情報の送信元の行先階登録装置2に、割当号機を示す割当号機情報を送信し(S26)、エレベータの割当処理を終了する。これにより、この行先階登録装置2は、割当号機を示す画像を表示する。
利用者が車いす使用者であると判断した場合(S23でYES)、群管理制御部41は、号機制御装置5A〜5Fの内の専用機の号機制御装置5A又は5Bに対する車いす使用者用の配慮運転命令を生成する(S27)。車いす使用者用の配慮運転命令は、車いす使用者用の配慮運転モードで専用機を運行することを要求する命令である。車いす使用者用の配慮運転モードでは、例えば、車いす使用者の出発階及び行先階においてドアの開放期間が通常時よりも長くなる。
次に、群管理制御部41は、複数の専用機1A,1Bのうち、上記の評価値に基づいて最適なエレベータに、受信した行先階情報が示す行先階を割り当てる(割当号機を決定する)(S28)。本ステップS28では、配慮運転モードでエレベータの運行を行うために、群管理制御部41は、複数のエレベータ1A〜1Fから専用機1A,1Bに制限した範囲内で割当号機を決定する。
次に、群管理制御部41は、決定した割当号機の号機制御装置に、行先階呼び情報と車いす使用者用の配慮運転命令を送信する(S29)。ステップS29において行先階呼び情報と車いす使用者用の配慮運転命令を受信した号機制御装置は、行先階登録装置2の設置階及び行先階情報が示す行先階については、車いす使用者用の配慮運転モードで運行するように、専用機を制御する。
次に、群管理制御部41は、行先階登録装置IDに基づき行先階情報の送信元の行先階登録装置2に、割当号機を示す割当号機情報を送信し(S30)、本割当処理を終了する。これにより、この行先階登録装置2は、割当号機を示す画像を表示する。
ステップS22において、利用者が視覚障害者であると判断した場合(S22でYES)、群管理制御部41は、号機制御装置5A〜5Fの内の専用機の号機制御装置5A又は5Bに対する視覚障害者用の配慮運転命令を生成する(S31)。視覚障害者用の配慮運転命令は、視覚障害者用の配慮運転モードで専用機を運行することを要求する命令である。視覚障害者用の配慮運転モードでは、例えば、号機制御装置は、視覚障害者の出発階及び行先階においてドアの開放期間が通常時よりも長くしたり、行先階までの全停止階において所定の音声情報をスピーカ11(図3参照)から出力させたりする。これにより、視覚障害者は、エレベータの乗車時に常に停止階を確認できる。そのため、視覚障害者に、停止階が判らないという不安を生じさせないようにすることができる。
次に、群管理制御部41は、専用機の号機制御装置5A,5Bの内で、行先階情報の送信元の行先階登録装置の最寄りの専用機を制御する号機制御装置に、行先階呼び情報と視覚障害者用の配慮運転命令を送信する(S32)。ステップS32において行先階呼び情報と視覚障害者用の配慮運転命令を受信した号機制御装置は、行先階登録装置2の設置階から行先階情報が示す行先階まで、視覚障害者用の配慮運転モードで運行するように、専用機を制御する。
次に、群管理制御部41は、行先階登録装置IDに基づき行先階情報の送信元の行先階登録装置2に、割当号機を示す割当号機情報を送信し(S33)、エレベータの割当処理を終了する。割当号機情報を受信した行先階登録装置2は、割当号機を示す情報を音声で出力する。
以上の処理によると、行先階登録装置2からの行先階情報及び属性情報に基づいてエレベータ1A〜1Fの運行制御が行われる。これにより、視覚障害者とそれ以外の者のそれぞれにとって、エレベータを利用しやすくすることができる。
3.まとめ
以上のように、本実施形態に係る行先階登録装置2は、利用者の属性に応じてエレベータ1A〜1Fの運行を制御する群管理制御装置4に利用者の行先階を示す行先階情報を登録する。行先階登録装置2は、表示操作部28と、キーパッド24と、入出力インタフェース27と、制御部20とを備える。表示操作部28は、視覚で操作対象を識別可能なテンキーアイコンG1に対する操作に基づき、利用者の行先階の入力を受け付ける。キーパッド24は、触覚で操作対象を識別可能な押しボタンを有し、押しボタンに対する操作に基づき、利用者の行先階の入力を受け付ける。制御部20は、入出力インタフェース27の通信動作を制御する。制御部20は、表示操作部28で行先階が入力されたとき、入力された行先階を示す行先階情報と、健常者を表す第1の利用者属性を示す属性情報とを群管理制御装置4に送信する。制御部20は、キーパッド24で行先階が入力されたとき、入力された行先階を示す行先階情報と、第1の利用者属性とは別の視覚障害者を表す第2の利用者属性を示す属性情報とを群管理制御装置4に送信する。
これにより、視覚障害者にとって触覚で操作し易いキーパッド24と、視覚に頼る利用者にとって操作し易い表示操作部28とのうちのいずれから行先階が入力されたかに基づいて、視覚障害者とそれ以外の者の利用者属性に応じたエレベータの運行が行われる。このため、行先階登録装置2により、視覚障害者を含む利用者にとってエレベータを利用しやすくすることができる。
また、本実施形態では、行先階登録装置2は、音声によって利用者の行先階に関する情報を報知する音声出力部25をさらに備える。制御部20は、第2の操作部が操作されたときにのみ、音声出力部25による報知を行う。
これにより、例えば視覚障害者などの特定の利用者には音声によって階床情報が報知され、他の利用者の操作時には音声による報知が省略される。このため、視覚障害者のために音声出力がされながら、音声出力が多発する煩わしい事態を回避でき、視覚障害者を含む利用者にとって行先階登録装置2を利用しやすくすることができる。
また、本実施形態では、タッチパネル23は、利用者の行先階の入力とともに、第1及び第2の利用者属性とは別の第3の利用者属性(車いす使用者など)の入力を受け付ける。制御部20は、タッチパネル23から行先階とともに第3の利用者属性が入力されたとき、入力された行先階を示す行先階情報と第3の利用者属性を示す情報とを、入出力インタフェース17を介して群管理制御装置4に送信する。
これにより、視覚障害者以外で特別なエレベータの運行が必要な利用者は、表示部22の視認に基づきタッチパネル23を操作することで、第3の利用者属性を示す情報を群管理制御装置4に送信することができる。
また、本実施形態では、キーパッド24は、押しボタンの主面に、視認可能な数字の識別表示が付されずに構成される。
これにより、視覚障害者以外の利用者が誤って視覚障害者用のキーパッド24を操作することを抑制できる。
また、本実施形態では、キーパッド24は、点字を表す立体形状を有する。
このため、キーパッド24は、触覚で点字を識別できる利用者にとって利用し易い。なお、キーパッド24は、点字を表す立体形状に限らず、例えば高さ0.1〜1mmの突起部など、触覚で操作位置を識別可能な形状を有してもよい。
また、本実施形態では、表示操作部28は、画像を表示する表示部22を備える。表示操作部28は、表示した画像に対する操作に基づき、利用者の行先階の入力を受け付ける。
これにより、表示操作部28では、画像を認識することが困難な利用者(視覚障害者)による操作に基づき、利用者の行先階が入力される可能性が低いため、視覚障害者が誤って表示操作部28を操作することを抑制できる。
また、本実施形態に係るエレベータの群管理システムは、行先階登録装置2と、利用者の属性に応じて複数のエレベータ1A〜1Fの運行を制御する群管理制御装置4とを備える。
本実施形態では、複数のエレベータ1A〜1Fは、所定の仕様を有する少なくとも1つの専用機を含む。群管理制御装置4は、行先階登録装置2から第1の利用者属性とは別の利用者属性を示す属性情報とともに行先階情報を受信した場合、利用者の行先階を割り当てるエレベータを、専用機1A,1Bに制限する。
これにより、利用者情報に基づいて、視覚障害者などの、健常者(第1の利用者属性)以外の者が乗車することとなるエレベータを専用機1A,1Bにすることができ、視覚障害者を含む利用者にとってエレベータを利用しやすくできる。
また、本実施形態では、専用機1A,1Bは、群管理制御装置4によって、視覚障害者(第2の利用者属性)を示す属性情報とともに受信した行先階情報が示す行先階が割り当てられたときに、当該行先階に関する音声案内を行うスピーカ11A,11Bを備える。
スピーカ11A,11Bの音声案内により、視覚障害者は自身の行先階に関する情報を専用機1A,1Bの乗車時に確認することができる。
また、本実施形態では、専用機1A,1Bは、複数のエレベータ1A〜1Fの内で、行先階登録装置2A,2Bに最も近い位置に設置されている。
これにより、視覚障害者などの利用者を、行先階登録装置2A,2Bから最も近い専用機1A,1Bに案内できる。
(その他の実施形態)
上記実施形態1では、利用者情報における属性情報において、視覚障害者、車いす使用者、及び健常者のうちのいずれかの利用者属性が設定されたが、これに限らず、例えば聴覚障害者などの他の身体障害者や、老人、妊婦などを示す種々の利用者属性が設定されてもよい。群管理制御装置4は、利用者がこれらの利用者属性を有する場合においても、視覚障害者や車いす使用者のための配慮運転モードと同様の運行モードでエレベータを運行するように、号機制御装置を制御してもよい。この場合、行先階登録装置2は、適宜、群管理制御装置4に種々の利用者属性を示す属性情報を送信する。
また、上記実施形態1では、図11のステップS28において、群管理制御装置4が車いす使用者に対する割当号機を決定したが、これに限らず、車いす使用者に対する割当号機は、視覚障害者の場合と同様に行先階登録装置2の最寄りの専用機に設定されてもよい。また、エレベータホールの混雑時に、車いす使用者に対する割当号機が最寄りの専用機に設定されてもよい。この場合、エレベータホールが混雑しているか否かは、例えば群管理制御装置4が行先階情報の登録状況に基づき判断する。
また、上記実施形態1では、表示部22はテンキーアイコンG1とともに車いすボタンG2を表示したが、車いすボタンG2を表示しなくてもよい。この場合、本システムにおける専用機1A,1Bは、特に車いす使用者用の配慮運転モードでは運行されない。
また、上記実施形態1では、図7のステップS1,S2及び図8のステップS11の処理が順次、繰り返されたが、ステップS1,S2,S11の処理は、別の順序で繰り返されてもよいし、パラレルに実行されてもよい。
また、上記実施形態1では、図7のステップS1,S6では、テンキーアイコンG1による行先階の入力操作前に車いすボタンG2の操作の有無が判断された。しかし、これに限らず、車いすボタンG2の操作の有無の判断は、行先階の入力操作中に行われてもよい。
また、上記実施形態1では、利用者が視覚障害者である場合(図8参照)、行先階登録装置2は、群管理制御装置4から割当号機情報を受信してから(S15a)、割当号機情報に基づき最寄りのエレベータの案内情報を生成した(S15)。しかし、これに限らず、行先階登録装置2は、図8のステップS14において各種情報を群管理制御装置4に送信後に、割当号機情報を特に受信することなく、当該行先階登録装置2の最寄りのエレベータ(例えば行先階登録装置2Bの場合、エレベータ1B)の案内情報を生成してもよい。
また、上記実施形態1では、第1の操作部の一例として、タッチ操作による表示操作部28について説明した。第1の操作部は表示操作部28に限らず、視覚で操作対象を識別可能であればよい。例えば、第1の操作部は、表示部の画像上で、テンキーアイコンなどをカーソル等で操作する方向キーやポインティングデバイス等であってもよい。また、第1の操作部は、表示部の画像以外により視覚で操作対象を識別可能であってもよく、例えば、数字の印字等がなされたキーパッドやボタン、キーボードであってもよい。
また、上記実施形態1では、第2の操作部の一例として、キーパッド24について説明した。第2の操作部はキーパッド24に限らず、例えば超音波振動によりタッチ位置においてざらつき感などの特有の触感を与える方式のタッチパネルであってもよい。なお、第1の操作部がタッチパネルである場合においても、タッチ位置に特有の触感を与える方式が採用されてもよいが、この場合には触覚で操作対象は識別できないように種々の設定がされてもよい。これにより、視覚障害者が第1の操作部を誤操作することを抑制できる。
また、上記実施形態1では、群管理制御装置4は6台のエレベータ1A〜1Fの運行を制御したが、6台のエレベータ1A〜1Fに限らず、任意の複数台のエレベータの運行を制御してもよいし、1台のエレベータの運行を制御してもよい。