以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内方とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。ここで、図1に示す空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向、つまり車両装着時の方向が規定されている。また、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を有する。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車幅方向外側となるサイドウォール部に装着方向表示部を設けることを義務付けている。空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。また、タイヤ幅方向におけるトレッド部2の端部から、タイヤ径方向内方側の所定の位置までは、サイドウォール部16が配設されている。つまり、サイドウォール部16は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2ヶ所に配設されている。
さらに、それぞれのサイドウォール部16のタイヤ径方向内方側には、ビード部10が位置しており、ビード部10は、サイドウォール部16と同様に、タイヤ赤道線5の両側2ヶ所に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外方にはビードフィラー12が設けられている。
また、トレッド部2のタイヤ径方向内方には、複数のベルト層14が設けられている。ベルト層14は、複数の交差ベルト141、142とベルトカバー143とが積層されることによって設けられている。このうち、交差ベルト141、142は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20°以上55°以下のベルト角度を有して構成される。また、複数の交差ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義されるベルトコードが互いに異なっており、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。また、ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチール、或いは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0°以上10°以下のベルト角度を有する。このベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
このベルト層14のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部16のタイヤ赤道線5側には、ラジアルプライのテキスタイルコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このカーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外方に巻き返されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されており、タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角であるカーカス角度が、絶対値で80°以上95°以下となって形成されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ15がカーカス層13に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。トレッド部2が有するトレッド面3には、タイヤ周方向に延びる1本の周方向溝30が形成されている。この周方向溝30は、トレッド面3におけるタイヤ赤道線5よりも車両装着方向内側に位置している。即ち、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両に装着する際におけるタイヤ幅方向の向きが定められており、周方向溝30は、車両への空気入りタイヤ1の装着時においてタイヤ赤道線5よりも、車両幅方向における内側に配設されている。なお、周方向溝30は、周方向溝30の全てがタイヤ赤道線5よりも車両幅方向における内側に位置していなくてもよく、周方向溝30の一部がタイヤ赤道線5にかかっていてもよい。周方向溝30は、周方向溝30のタイヤ幅方向における中心が、タイヤ赤道線5よりも車両幅方向内側に位置していればよい。
周方向溝30は、溝幅が接地幅に対して8%以上15%以下になっており、溝深さが6.0mm以上12.0mm以下になっている。また、タイヤ幅方向における周方向溝30の配設位置は、タイヤ赤道線5から、接地端Eのうち車両幅方向内側に位置する接地端Eである内側接地端Einまでのタイヤ幅方向における幅Winを100%とした際における、タイヤ赤道線5から25%以上65%以下の範囲内の位置に配設されているのが好ましい。
なお、この場合における接地幅は、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して、規定内圧、例えば、規定荷重に対応した空気圧の内圧条件、及び規定荷重、例えば最大負荷能力の75%荷重の条件で、平板上に垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面におけるタイヤ幅方向の接地端E間の最長直線距離をいう。
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
トレッド面3は、接地面に該当する領域のみならず、タイヤ幅方向における接地面の外側の部分にも形成されており、即ち、トレッド面3は、タイヤ幅方向における接地端Eの内外に亘って形成されている。このトレッド面3には、当該トレッド面3における接地面内に、或いはトレッド面3における接地面内外に亘って、細溝40が複数形成されている。この複数の細溝40は、全て溝深さの最大深さが4.0mm以上12.0mm以下になっている。細溝40は、周方向溝30よりも車両幅方向外側に位置する第1細溝41と第2細溝42、及び周方向溝30よりも車両幅方向内側に位置する第3細溝43と第4細溝44を有している。このうち、第1細溝41は、タイヤ幅方向とタイヤ周方向との双方に対して傾斜しており、トレッド面3における接地面内外に亘って形成されている。このため、第1細溝41は、一端がトレッド面3内で終端し、他端側はタイヤ幅方向における接地端Eのうち車両幅方向外側に位置する接地端Eである外側接地端Eoutを跨いで形成されている。また、第2細溝42は、第1細溝41と同様にタイヤ幅方向とタイヤ周方向との双方に対して傾斜し、且つ、タイヤ周方向に対する傾斜方向が第1細溝41の傾斜方向と反対方向になっている。この第2細溝42は、一端がトレッド面3内で終端し、他端が周方向溝30に連通して周方向溝30に開口している。第2細溝42における、トレッド面3内で終端している側の端部56は、接地面内に位置していてもよく、タイヤ幅方向における接地面の外側に位置していてもよい。即ち、第2細溝42は、トレッド面3における接地面内のみに形成されていてもよく、内側接地端Eoutを跨いで接地面内外に亘って形成されていてもよい。
第1細溝41は、トレッド面3における外側接地端Eoutが位置する側から、周方向溝30が位置する側に向かいつつ、タイヤ周方向にも向かう方向に傾斜する形状で、複数がタイヤ周方向に並んで形成されている。また、第2細溝42は、周方向溝30が位置する側から、外側接地端Eoutが位置する側に向かいつつ、タイヤ周方向にも向かう方向に傾斜する形状で、複数がタイヤ周方向に並んで形成されている。また、これらの第1細溝41と第2細溝42とは、第1細溝41が外側接地端Eout側から周方向溝30側に向う際におけるタイヤ周方向の向きと、第2細溝42が周方向溝30側から外側接地端Eout側に向う際におけるタイヤ周方向の向きとが同じ向きになっている。このため、第1細溝41と第2細溝42とは、タイヤ周方向に対する傾斜方向が互いに反対方向になっている。
また、第1細溝41におけるトレッド面3内に終端している側の端部56は、第2細溝42におけるトレッド面3内に終端している側の端部56よりもタイヤ幅方向における周方向溝30寄りの位置に位置している。つまり、第1細溝41と第2細溝42とは、タイヤ幅方向において同じ位置になる部分を有しつつ、それぞれ複数がタイヤ周方向に並んで配設されている。このため、第1細溝41と第2細溝42とは、互いに交差しており、第1細溝41は、少なくとも2本の第2細溝42と交差し、第2細溝42は、少なくとも2本の第1細溝41と交差している。本実施形態では、第1細溝41は3本の第2細溝42と交差し、第2細溝42も3本の第1細溝41と交差している。
また、タイヤ幅方向に向かいつつタイヤ周方向に向かう方向に傾斜している第1細溝41と第2細溝42とは、共に湾曲して曲率を有して形成されている。具体的には、第1細溝41は、周方向溝30寄りの端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ1が、車両幅方向外側に位置する端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ2よりも小さくなる方向に湾曲している。また、第2細溝42は、周方向溝30寄りの端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ4が、車両幅方向外側に位置する端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ3よりも大きくなる方向に湾曲している。即ち、第1細溝41と第2細溝42とは、外側接地端Eoutを跨いでいる側、或いは周方向溝30に開口している側の端部56のタイヤ周方向に対する角度θ2、θ4よりも、トレッド面3内で終端している側の端部56のタイヤ周方向に対する角度θ1、θ3の方が小さくなっている。
なお、これらのタイヤ周方向に対する細溝40は、それぞれ湾曲する細溝40における端部56付近での細溝40の接線の、タイヤ周方向に対する相対角度になっている。また、タイヤ周方向に対する細溝40の角度のうち、θ1とθ3は0°以上25°以下になっており、θ2とθ4は20°以上60°以下になっている。
トレッド面3における第1細溝41や第2細溝42が交差している領域は、第1細溝41と第2細溝42が交差しているため、トレッド面3における周方向溝30よりも車両幅方向外側の部分には、これらの細溝40や周方向溝30によって区画されたブロック部21が複数設けられている。即ち、トレッド面3に形成される複数のブロック部21は、少なくとも一部が細溝40によって区画されることによって形成されている。
この複数のブロック部21のうち、周方向溝30に隣接するブロック部21である周方向溝側ブロック部22には、一端が細溝40に開口し、他端が周方向溝30に開口する浅溝60が複数形成されている。同様に、複数のブロック部21のうち、外側接地端Eoutが通るブロック部21である接地端側ブロック部23には、一端が細溝40に開口し、他端側が外側接地端Eoutを跨ぐ浅溝60が形成されている。なお、浅溝60は、溝幅が0.5mm以上3.0mm以下になっており、溝深さが1.0mm以上5.0mm以下になっている。
これらのように浅溝60が形成されるブロック部21は、浅溝60が形成されるブロック部21同士が隣り合うことなく断続的に配設されている。つまり、浅溝60が形成されるブロック部21同士の間には、浅溝60が形成されないブロック部21が1つ以上配置されており、これにより、浅溝60が形成されるブロック部21同士は離間している。
細溝40が有する第1細溝41や第2細溝42は、これらのように周方向溝30よりも車両幅方向外側に配設されているのに対し、第3細溝43と第4細溝44とは、周方向溝30よりも車両幅方向内側に配設されている。このうち、第3細溝43は、タイヤ幅方向とタイヤ周方向との双方に対して傾斜し、且つ、一端が周方向溝30に開口し、他端がトレッド面3内で終端している。この第3細溝43における、トレッド面3内で終端している側の端部56は、接地面内に位置していてもよく、タイヤ幅方向における接地面の外側に位置していてもよい。即ち、第3細溝43は、トレッド面3における接地面内のみに形成されていてもよく、内側接地端Einを跨いで接地面内外に亘って形成されていてもよい。
また、第4細溝44は、タイヤ幅方向とタイヤ周方向との双方に対して傾斜し、且つ、タイヤ周方向に対する傾斜方向が第3細溝43の傾斜方向と反対方向になっており、トレッド面3における接地面内外に亘って形成されている。このため第4細溝44は、内側接地端Einを跨いでおり、周方向溝30寄りに位置する端部56が周方向溝30に接続されずにトレッド面3内で終端している。これらのように、タイヤ周方向に対する傾斜方向が互いに反対方向になっている第3細溝43と第4細溝44とは、タイヤ周方向において交互に配置されている。
第3細溝43と第4細溝44とは、少なくとも一端がトレッド面3内に形成されているため、陸部20における周方向溝30よりも車両幅方向内側の部分にはブロック部21は形成されておらず、周方向溝30よりも車両幅方向内側には、タイヤ周方向に延びるリブ25が形成されている。
これらの第3細溝43と第4細溝44とは、湾曲して曲率を有して形成されており、周方向溝30に開口する第3細溝43は、周方向溝30に開口する第2細溝42に対して、連続する位置に配設され、第2細溝42と連続する形状で形成されている。即ち、第3細溝43は、周方向溝30を挟んで第2細溝42と連続するような形状で形成されている。
これらのように、トレッド面3に周方向溝30と細溝40とが形成される本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、規定リムに組み込んで規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した状態における接地面内の溝面積比が、20%以下になっている。なお、この場合における溝面積比は、接地面と溝面積とを合わせた面積に対する溝面積の比率になっている。
図3は、図2に示す第1細溝の溝深さを説明するための断面模式図である。図4は、図2に示す第2細溝の溝深さを説明するための断面模式図である。各細溝40は、深さが長手方向における位置によって変化して形成されている。詳しくは、細溝40は、長手方向における中央部55で深さが最も深く、少なくとも一方の端部56で深さが最も浅くなっており、中央部55での最大深さが、4.0mm以上12.0mm以下になっている。なお、この場合における中央部55は、一点を指すものではなく、所定の範囲を指しており、具体的には、中央部55は、細溝40の長手方向における中心位置から両端部56に向かって、細溝40の長さの25%の範囲となっている。つまり、中央部55は、細溝40の長手方向における中心位置から±25%の範囲となっている。
長手方向における位置によって深さが変化する細溝40は、例えば、第1細溝41の長手方向の両側の端部56がトレッド面3内で終端している場合には、溝深さは、図3に示すように中央部55付近で最も深く、両側の端部56に向かうに従って浅くなり、端部56の位置で溝深さが最小の深さになる。
また、第2細溝42のように、一方の端部56が周方向溝30に接続されている場合には、この接続部分から、他方の端部56までの長さを第2細溝42の長さとし、その長さの中央付近が、図4に示すように第2細溝42の中央部55となる。第2細溝42は、中央部55付近から両側の端部56に向かうに従って浅くなり、トレッド面3内で終端している側の端部56の位置で、溝深さが最小の深さになる。一方、第2細溝42における周方向溝30に接続されている側の端部56では、溝深さが所定の深さとなり、第2細溝42は、この周方向溝30に接続されている部分で周方向溝30に開口している。
図5は、図2に示す細溝の平面詳細図である。図6は、図5のB−B断面図である。細溝40は、開口部50から溝底51に向かうに従って溝幅Gwが狭くなっている。即ち、細溝40は、長手方向に見た場合における形状が、略V字状に形成されている。また、細溝40は、開口部50側の溝幅Gwが、細溝40の長手方向における中央部55で最も広く、少なくとも一方の端部56で最も狭くなっている。このように、細溝40の長手方向における位置によって変化する開口部50側の溝幅Gwは、細溝40の中央部55付近での最大溝幅Gwが、0.5mm以上7.0mm以下になっている。
なお、細溝40は、全ての細溝40で開口部50から溝底51に向かうに従って溝幅Gwが狭くなるように形成する必要はなく、例えば、第3細溝43と第4細溝44とは、溝深さ方向において溝幅Gwがほぼ一定であってもよい。細溝40は、少なくとも第1細溝41と第2細溝42とが、開口部50から溝底51に向かうに従って溝幅Gwが狭くなるように形成されていればよい。また、細溝40は、溝幅方向における中心に対して線対称に形成されていなくてもよく、例えば、長手方向に見た際に、溝幅方向における開口部50の中心と溝底51の中心とが溝幅方向にずれていてもよい。
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。一方、トレッド面3には、周方向溝30は1本のみが形成されており、トレッド面3に形成される周方向溝30以外の溝は、細溝40と浅溝60のみになっている。このため、トレッド面3は接地面積が大きくなっており、また、陸部20の剛性も高くなっているため、車両走行時における操縦安定性が高くなっている。また、トレッド面3は、接地面内の溝面積比が20%以下であるため、これによっても接地面積が大きく、陸部20の剛性が高くなるため、操縦安定性が高くなる。
また、車両のレーンチェンジ時やコーナリング時には、トレッド面3における車両幅方向外側寄りの領域に、比較的大きな荷重がかかり易くなるが、周方向溝30は、タイヤ赤道線5よりも車両幅方向における内側に配設されている。このため、車両の走行時に大きな荷重がかかり易い、車両幅方向外側寄りの接地面積が大きく、陸部20の剛性が高くなっているため、これにより、車両走行時における操縦安定性が、より高くなっている。
また、トレッド面3に形成される細溝40は、それぞれ2本以上の他の細溝40と交差しているため、雨天走行時に接地面と路面との間の水が細溝40内に入り込んだ際に、この水を次々に他の細溝40に流すことができる。これにより、排水性を向上させることができ、ウェット性能を高めることができる。これらの結果、操縦安定性とウェット性能とを両立することができる。
また、周方向溝30は、溝幅が接地幅に対して8%以上15%以下の範囲内で、溝深さが6.0mm以上12.0mm以下の範囲内で形成されているため、排水性と操縦安定性とを両立することができる。つまり、周方向溝30の溝幅が接地幅の8%未満であったり、溝深さが6.0mm未満である場合には、溝幅が狭すぎたり溝深さが浅すぎたりするため、十分な排水性を得ることが困難になる。また、周方向溝30の溝幅が接地幅の15%より大きかったり、溝深さが12.0mmより深かったりする場合には、接地面積が低下したり、陸部20の剛性が低下したりすることにより、操縦安定性が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、周方向溝30は、溝幅が接地幅に対して8%以上15%以下の範囲内で、溝深さが6.0mm以上12.0mm以下の範囲内で形成されているため、十分な排水性を確保しつつ、接地面積や陸部20の剛性を確保することができ、排水性と操縦安定性とを両立することができる。
また、細溝40は、最大溝深さが4.0mm以上12.0mm以下の範囲内で形成されているため、排水性と操縦安定性とを両立することができる。つまり、細溝40の最大溝深さが4.0mm未満である場合には、最大溝深さが浅すぎるため、十分な排水性を得ることが困難になる。また、細溝40の最大溝深さが12.0mmより深い場合には、陸部20の剛性が低下することにより、操縦安定性が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、細溝40は、最大溝深さが4.0mm以上12.0mm以下の範囲内で形成されているため、十分な排水性を確保しつつ、接地面積や陸部20の剛性を確保することができ、排水性と操縦安定性とを両立することができる。
また、細溝40が有する第1細溝41は、外側接地端Eoutを跨いでいるため、第1細溝41は、第1細溝41に入り込んだ水を外側接地端Eoutから外部に排水することができる。また、細溝40が有する第2細溝42は、周方向溝30に開口しているため、第2細溝42は、第2細溝42に入り込んだ水を周方向溝30に向けて排水することができる。これらにより、接地面と路面との間の水を、次々と第1細溝41内や第2細溝42内に入り込ませることができ、接地面と路面との間から排除することができる。この結果、ウェット制動性能を向上させることができる。
また、第1細溝41や第2細溝42は、トレッド面3内で終端している側の端部56側よりも、外側接地端Eout側や周方向溝30に開口している端部56側の方が、タイヤ周方向に対する角度が大きくなっているため、第1細溝41内や第2細溝42内の水を、より確実に排水することができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、第1細溝41は、周方向溝30寄りの端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ1が、0°以上25°以下になっているため、空気入りタイヤ1がタイヤ周方向に回転をする際に、接地面と路面との間の水をより確実に捕えることができ、排水性を確保することができる。同様に、第2細溝42も、車両幅方向外側に位置する端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ3が、0°以上25°以下になっているため、空気入りタイヤ1がタイヤ周方向に回転をする際に、接地面と路面との間の水をより確実に捕えることができ、排水性を確保することができる。
また、第1細溝41は、車両幅方向外側に位置する端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ2が、20°以上60°以下になっているため、偏摩耗を抑えつつ、排水性を確保することができる。つまり、第1細溝41の角度θ2が、20°未満の場合には、接地端Eout付近のブロック部21の剛性が低くなり過ぎる虞があり、これに起因して偏摩耗が発生する虞がある。一方、第1細溝41の角度θ2が、60°より大きい場合には、タイヤ周方向に対する角度が大き過ぎるため、排水性が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、第1細溝41は、車両幅方向外側に位置する端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ2が、20°以上60°以下になっているため、偏摩耗を抑えつつ、排水性を確保することができる。同様に、第2細溝42も、周方向溝30寄りの端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ4が、20°以上60°以下になっているため、偏摩耗を抑えつつ、排水性を確保することができる。
また、少なくとも一部が細溝40によって区画された複数のブロック部21のうち、周方向溝側ブロック部22には、一端が細溝40に開口し、他端が周方向溝30に開口する浅溝60が形成されているため、細溝40内の水を、周方向溝30に向けてより確実に排水することができる。同様に、接地端側ブロック部23にも、一端が細溝40に開口し、他端側が外側接地端Eoutを跨ぐ浅溝60が形成されているため、細溝40内の水を、車両幅方向外側に向けてより確実に排水することができる。これらの結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、浅溝60が形成されるブロック部21同士の間に浅溝60が形成されないブロック部21が配置されることにより、浅溝60が形成されるブロック部21同士が離間しているため、ブロック部21の剛性をタイヤ周方向において変化させることができる。この結果、ピッチバリエーションを設けることができ、車両走行時におけるパターンノイズを低減することができる。
また、浅溝60は、溝幅が0.5mm以上3.0mm以下の範囲内で、溝深さが1.0mm以上5.0mm以下の範囲内で形成されているため、排水性と操縦安定性とを両立することができる。つまり、浅溝60の溝幅が0.5mm未満であったり、溝深さが1.0mm未満である場合には、溝幅が狭すぎたり溝深さが浅すぎたりするため、十分な排水性を得ることが困難になる。また、浅溝60の溝幅が3.0mmより大きかったり、溝深さが5.0mmより深かったりする場合には、接地面積が低下したり、ブロック部21の剛性が低下したりすることにより、操縦安定性が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、浅溝60は、溝幅が0.5mm以上3.0mm以下の範囲内で、溝深さが1.0mm以上5.0mm以下の範囲内で形成されているため、十分な排水性を確保しつつ、接地面積やブロック部21の剛性を確保することができ、排水性と操縦安定性とを両立することができる。
また、細溝40が有する第3細溝43は、一端が周方向溝30に開口しているため、第3細溝43は、第3細溝43に入り込んだ水を周方向溝30に向けて排水することができる。また、細溝40が有する第4細溝44は、内側接地端Einを跨いでいるため、第4細溝44は、第4細溝44に入り込んだ水を内側接地端Einから外部に排水することができる。これらにより、接地面と路面との間の水を、次々と第3細溝43内や第4細溝44に入り込ませることでき、接地面と路面との間から排除することができる。この結果、ウェット制動性能を向上させることができる。
また、第3細溝43と第4細溝44とは、タイヤ周方向に対する傾斜方向が互いに反対方向に形成されて、タイヤ周方向において交互に配置されているため、空気入りタイヤ1の回転方向に対する排水性等の性能差を小さくすることができる。
また、細溝40は、開口部50から溝底51に向かうに従って溝幅Gwが狭くなるように形成されており、開口部50側の溝幅Gwが、細溝40の長手方向における中央部55で最も広く、少なくとも一方の端部56で最も狭くなるように、長手方向における位置によって変化するため、ブロック部21の剛性を確保しつつ、排水性を向上させることができる。つまり、細溝40は、溝底51側の溝幅Gwを狭くすることにより、ブロック部21の剛性を確保でき、開口部50側の溝幅Gwを広くすることにより開口面積を大きくすることができ、排水性を向上させることができる。これらの結果、操縦安定性を確保しつつ、ウェット制動性能を向上させることができる。
また、細溝40は、開口部50側の最大溝幅Gwが0.5mm以上7.0mm以下の範囲内であるため、排水性と操縦安定性とを両立することができる。つまり、開口部50側の最大溝幅Gwが、0.5mm未満である場合には、最大溝幅Gwが狭すぎるため、十分な排水性を得ることが困難になる。また、開口部50側の最大溝幅Gwが、7.0mmより大きい場合には、ブロック部21の剛性が低下することにより、操縦安定性が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、細溝40の開口部50側の最大溝幅Gwが0.5mm以上7.0mm以下であるため、十分な排水性を確保しつつ、ブロック部21の剛性を確保することができ、排水性と操縦安定性とを両立することができる。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、細溝40は開口部50から溝底51に向かうに従って溝幅Gwが狭くなるように形成されているが、細溝40は、溝深さの方向において溝幅Gwがほぼ一定で形成されていてもよい。この場合、細溝40の溝幅Gwは、0.5mm以上3.0mm以下であるのが好ましい。つまり、細溝40の溝幅Gwが0.5mm未満である場合には、溝幅Gwが狭すぎるため、十分な排水性を得ることが困難になる。また、細溝40の溝幅Gwが3.0mmより大きい場合には、接地面積が低下したり、陸部20の剛性が低下したりすることにより、操縦安定性が低下する虞がある。これに対し、細溝40の溝幅Gwを0.5mm以上3.0mm以下の範囲内にした場合には、十分な排水性を確保しつつ、接地面積や陸部20の剛性を確保することができる。これにより、排水性と操縦安定性とを両立することができる。
また、細溝40の溝幅Gwを一定にした場合には、細溝40の開口部50に面取り58を形成するのが好ましい。図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、細溝の平面詳細図である。図8は、図7のC−C断面図である。細溝40に面取り58を形成する場合には、面取り58は、細溝40の長手方向における位置によって面取り幅Cwを変化させるのが好ましい。詳しくは、面取り58の面取り幅Cwは、細溝40の長手方向における中央部55で最も広く、少なくとも一方の端部56で最も狭くなるようにする。このように、細溝40の長手方向における位置によって面取り58の面取り幅Cwを変化させる場合には、細溝40の中央部55付近での最大面取り幅Cwを、細溝40の溝幅Gwの80%以上400%以下にするのが好ましい。また、面取り58の面取り深さCdは、細溝40の長手方向におけるいずれの位置においても、その位置での溝深さGdの50%以下とするのが好ましい。
なお、細溝40の面取り58は、全ての細溝40に形成する必要はなく、例えば、第3細溝43と第4細溝44とには形成せずに、第1細溝41と第2細溝42のみに形成してもよい。
これらのように、細溝40の溝幅Gwを一定にすると共に細溝40に面取り58を形成し、面取り58は、面取り幅Cwが、細溝40の長手方向における中央部55で最も広く、少なくとも一方の端部56で最も狭くなるように、長手方向における位置によって変化させることにより、ブロック部21の剛性を確保しつつ、排水性を向上させることができる。つまり、細溝40の溝幅Gwは大きくしないため、ブロック部21の剛性を確保でき、細溝40の開口部50に面取り58を形成することにより、実質的な開口面積を大きくすることができ、排水性を向上させることができる。これらの結果、操縦安定性を確保しつつ、ウェット制動性能を向上させることができる。
また、細溝40の面取り58は、最大面取り幅Cwを細溝40の溝幅Gwの80%以上400%以下にすることにより、排水性と操縦安定性とを両立することができる。つまり、最大面取り幅Cwが細溝40の溝幅Gwの80%未満である場合には、最大面取り幅Cwが狭すぎるため、十分な排水性を得ることが困難になる。また、最大面取り幅Cwが細溝40の溝幅Gwの400%より大きい場合には、ブロック部21の剛性が低下することにより、操縦安定性が低下する虞がある。これに対し、細溝40の面取り58を、最大面取り幅Cwが細溝40の溝幅Gwの80%以上400%以下になるように形成することにより、十分な排水性を確保しつつ、ブロック部21の剛性を確保することができ、排水性と操縦安定性とを両立することができる。
〔実施例〕
図9A、図9Bは、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、比較例の空気入りタイヤ1と本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ドライ操縦安定性とウェット制動性能について行った。
これらの評価試験は、195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤ1を15×6JサイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みし、空気圧を230kPaに調整し、国産2000ccの乗用車に装着してテスト走行することにより行った。各試験項目の評価方法は、ドライ操縦安定性については、評価試験を行う空気入りタイヤ1を装着した車両をパネラーが運転し、パネラーによるフィーリング評価を実施することにより行った。ドライ操縦安定性は、後述する比較例1を100とする評点で表示され、数値が大きいほどドライ操縦安定性に優れていることを示している。また、ウェット制動性能については、水深1mmの平坦路にて、初速100km/hからの制動評価を実施することにより行った。ウェット制動性能は、後述する比較例1を100とする評点で表示され、数値が大きいほどウェット制動性能に優れていることを示している。
評価試験は、比較例1〜3の3種類の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜6の6種類の空気入りタイヤ1にて行った。評価試験を行う空気入りタイヤ1は、全てトレッド面3に1本の周方向溝30と、車両幅方向外側の領域に複数の細溝40とを有しており、細溝40は、タイヤ周方向におけるピッチ数が20になるパターンで形成されている。また、細溝40は、第1細溝41の周方向溝30寄りの端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ1が10°で、車両幅方向外側に位置する端部56側のタイヤ周方向に対する角度θ2が42°となって形成されている。これらの空気入りタイヤ1のうち、比較例1は、周方向溝30がタイヤ赤道線5からタイヤ幅方向にオフセットされておらず、比較例2は、細溝40同士が交差しておらず、比較例3は、接地面内の溝面積比が25%になっている。
一方、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜6は、全て周方向溝30がタイヤ赤道線5に対して車両幅方向内側オフセットされ、細溝40同士が交差しており、接地面内の溝面積比が15%になっている。さらに、実施例1〜6に係る空気入りタイヤ1は、細溝40が長手方向における位置によって変化しているか否かや、細溝40がV字状であるか否か、細溝40同士が交差しているか否か、細溝40の一端が接地端または周方向溝30に開口しているか否か、浅溝60の有無がそれぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図9A及び図9Bに示すように、実施例1〜6の空気入りタイヤ1は、比較例1〜3の空気入りタイヤ1に対して、ドライ操縦安定性及びウェット制動性能が向上しているのが分かった。即ち、実施例1〜6の空気入りタイヤ1は、操縦安定性とウェット性能とを両立することができる。