JP6553409B2 - 風味改善剤 - Google Patents
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Description
しかし、飲食品の製造時における加熱殺菌や保存料添加などの食品加工工程中や、該飲食品の保存期間中に、苦味や渋味、あるいはエグ味などのその風味バランスを崩す風味、すなわち雑味が生成してしまうことがある。
このような場合、それらの雑味を取り除く加工、例えば蒸留や溶出などをすればよいが、そのような操作は、微量成分を取り除くことであるから極めて煩雑で、また、飲食品の基本風味まで減少させてしまうおそれがある。
このような場合は、その特定の風味を有する食品成分を配合しない、或は取り除く加工をすればいいが、他の風味まで削ることになってしまい、飲食品の風味バランスをさらに崩してしまうことになってしまう。
この畜肉臭は上記のような雑味でもなく、また、強すぎる特定の風味でもないが、これが課題となってきたのは、最近、畜肉や魚介類の生臭さが敬遠され、臭いの少ない風味が好まれる傾向にあるためである。
この傾向は、畜肉や魚介類に限らず、チーズや牛乳などの乳くささ、ビーフエキスや酵母エキス類などのエキス臭、さらには呉汁や豆乳などの大豆臭などのように本来、その食品の主要な風味ともいえる風味についても問題になることがある。
さらに畜肉や乳製品においては、その産地や飼育環境、特に飼料により風味に差を生じるものであるところ、日本においては外国産の畜肉、とくに牧草のみで飼育されたグラスフェッドビーフの肉や乳製品で、牧草臭ともいわれる独特の臭いが気になるという声も多くなってきている。
そのため、肉製品や乳製品のマスキング剤として、スクラロース(特許文献5)、昆布抽出液(特許文献6)、アルギニン(特許文献7)、アリイン(特許文献8)、特定の酵母エキス(特許文献9)などが提案されている。
また、これらのマスキング剤の効果は弱いものであるため、必要とする添加量がやや多く、食感に影響を与える場合があった。
飲食品に塩味を付与するには、通常、食塩、すなわち塩化ナトリウムを使用するが、その主要構成成分であるナトリウムの過剰摂取は、高血圧をはじめとする多くの健康疾患の危険因子であることから、塩化ナトリウムの摂取量抑制が推奨され、そのため塩化ナトリウム含量を減じた様々な減塩飲食品が開発され、市販されている。しかし、ただ塩化ナトリウム添加量を減じただけでは、当然基本味の1つである塩味が減ってしまい、飲食品がうす味となり、美味しさが損なわれてしまう。
そのため、飲食品の塩味を維持したまま、塩化ナトリウム含量を減じる方法の検討が多数行なわれてきた。
塩味強化剤とは、それ自体は塩味を示さないか、あるいはごく薄い塩味であるが、塩化ナトリウムに極少量添加することで、塩化ナトリウムの塩味を強く感じさせる効果を示す風味改善剤であり、添加することによって、少ない塩化ナトリウム含量の飲食品に、それより塩化ナトリウム含量の高い飲食品と同等の塩味を持たせることができるものである。
塩味強化剤を使用する方法によれば、大きな味質の変化を伴わずに飲食品の塩化ナトリウム含量を低下させることが可能である。そのため、塩味強化剤として、カプサイシン(例えば特許文献10参照)、トレハロース(例えば特許文献11参照)、蛋白質の加水分解物(例えば特許文献12参照)、特定の界面活性剤(例えば特許文献13参照)など多くの物質が提案されている。
また、本発明の目的は、飲食品の味質を変えることなく、極少量の使用であっても十分な効果を得ることのできる風味改善剤(塩味強化剤)、塩化ナトリウムと同等の味質であって、塩味が強化された食塩組成物、さらには、飲食品の味質を維持したまま、塩化ナトリウム含量あたりの塩味が強化された飲食品、さらには、飲食品の味質を維持したまま、飲食品の塩味を増強することのできる飲食品の風味改善方法(塩味強化方法)を提供することにある。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、グリセリンを有効成分として含有するマスキング剤、塩味強化剤などの風味改善剤を提供するものである。
また本発明は、上記風味改善剤を使用した飲食品を提供するものである。
また本発明は、上記風味改善剤(マスキング剤)を飲食品に添加することを特徴とする飲食品のマスキング方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記風味改善剤(塩味強化剤)と塩化ナトリウムからなる食塩組成物を提供するものである。
さらに、本発明は、上記食塩組成物を含有する飲食品を提供するものである。
さらに、本発明は、上記風味改善剤(塩味強化剤)を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の食塩味強化方法を提供するものである。
また、本発明のマスキング方法によれば、飲食品や医薬品に含まれる雑味や強すぎる風味を、その基本風味を変えることなくマスキングすることができる。
さらに、本発明の風味改善剤は塩味強化剤として、極少量の使用であっても、飲食品の味質を変えることなく、塩味を増強することができる。
また、本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウムと同等の味質であり、且つ塩味が強化されている。
また、本発明の上記食塩組成物を含有する飲食品は、塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品として好ましく使用できる。
さらに、本発明の塩味強化方法によれば、飲食品の塩味をその味質を変えることなく極少量の添加で強化することができ、よって簡単に塩味や美味しさを兼ね備えた減塩飲食品を得ることができる。
まず、本発明の風味改善剤で使用するグリセリンについて詳述する。
グリセリンとは、1,2,3-プロパントリオール又はグリセロールともいわれる脂質の主要成分で、トリグリセリン脂肪酸エステルの代謝産物、あるいは分解物として存在する。
なお、市販のグリセリンは、使いやすい粘性にするために加水してあることが多いが問題なく使用することができる。
本発明の風味改善剤は、上記グリセリンをそのまま単独で使用してもよく、また各種の添加剤と混合して、常法により粉体、顆粒状、錠剤、液剤などの形状に製剤化して用いてもよい。これらの製剤中の上記グリセリンの含有量は、好ましくは0.05〜100質量%、より好ましくは1〜90質量%、更に好ましくは3〜70質量%、最も好ましくは5〜50質量%である。
グリセリンを液剤の形状に製剤化する場合は、グリセリンを液体に溶解または分散させればよい。グリセリンを溶解または分散させる液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。
例えば、本発明の風味改善剤は、飲食品の雑味や、飲食品の風味としては強すぎる風味を、その食感や基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加で、マスキングすることのできるマスキング剤として好適に使用できる。
上記雑味や、強すぎる風味としては、例えば苦味、渋味、収れん味、辛味、酸味、また、缶詰臭、レトルト臭、畜肉臭、魚臭、牧草臭、大豆臭、酵母エキス臭などが挙げられる。中でも本発明のマスキング剤は、食肉製品や畜肉加工食品における畜肉臭や牧草臭、あるいは乳や乳製品における牧草臭のマスキングに特に適している。
なお、上記畜肉又は獣肉の種類としては牛、豚、鶏、羊、馬、鹿、兎、猪、熊等の畜肉や獣肉を挙げることができ、魚肉の種類としてはサケ、スケトウダラ、ホキ、タイ、マグロ、カジキ、イワシ、サバ、アジ、サンマ、ウナギ、ハモ、タチウオ、コイ、フナ等の魚類をはじめ、アザラシ、鯨等の海獣類等の海産魚介類、タコ、イカ等の軟体動物類、オキアミ、イセエビ、エビ等の海産甲殻類等を挙げることができる。
また上記乳や乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、クリームチーズ、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、ホイップクリーム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料等、脱脂粉乳、蛋白質濃縮ホエイパウダー、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエープロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン等が挙げられる。
本発明の風味改善剤の好ましい添加量は、一般的には、飲食品100質量部に対し、風味改善剤に含まれるグリセリンの純分として、好ましくは0.000001〜0.1質量部、より好ましくは0.000005〜0.05質量部、さらに好ましくは0.000005〜0.01質量部である。
なお、飲食品が食肉製品や畜肉加工食品である場合の、飲食品に対する本発明の風味改善剤の好ましい添加量は、飲食品100質量部に対し、風味改善剤に含まれるグリセリンの純分として、好ましくは0.000001〜0.05質量部、より好ましくは0.000005〜0.01質量部、さらに好ましくは0.00005〜0.005質量部である。
また、飲食品が乳や乳製品である場合の、飲食品に対する本発明の風味改善剤の好ましい添加量は、乳や乳製品100質量部に対し、風味改善剤に含まれるグリセリンの純分として、好ましくは0.00001〜0.1、より好ましくは0.00005〜0.05質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.01質量部である。
なお、本発明の風味改善剤の添加の対象となる飲食品の種類については、塩味を有する飲食品であれば特に制限されず、例えばマスキング剤として使用する場合の飲食品と同様の飲食品に使用することができる。
本発明の食塩組成物は、塩化ナトリウム、及び上記風味改善剤(塩味強化剤)からなるものであり、従来の塩化ナトリウムのみからなる食塩と同等の味質を維持したまま塩味が強化された調味料である。
本発明の食塩組成物における、塩化ナトリウムと風味改善剤(塩味強化剤)との比率は、塩化ナトリウム100質量部に対し、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるグリセリンの純分として、好ましくは0.0001〜1.5質量部、より好ましくは0.001〜0.5質量部、さらに好ましくは0.003〜0.3質量部である。
風味改善剤(塩味強化剤)の比率が0.0001質量部未満では、塩味強化効果が認められ難く、1.5質量部を超えると塩味強化効果も弱まると共に味質に悪影響を及ぼすおそれがある。
該塩化ナトリウム代替物としては、塩化カリウム、有機酸のアルカリ金属塩などがあげられ、なかでも本発明の食塩組成物では、同等の味質と塩味を維持したまま、塩化ナトリウムをより多く置換することが可能である点で、塩化カリウムを使用することが好ましい。
本発明の飲食品は、本発明の風味改善剤を使用した飲食品、もしくは、上記本発明の食塩組成物を含有する飲食品である。
なお、飲食品の種類や、飲食品における上記本発明の風味改善剤の使用量は、上述のとおりである。
飲食品における上記本発明の風味改善剤の添加方法は特に制限されず、飲食品の製造時、加工時、調理時、飲食時等に、飲食品又はその素材に混合、散布、噴霧、溶解等、任意の手段により行なわれる。
なお、上記畜肉、獣肉又は魚肉の種類、さらには上記食肉製品や畜肉加工食品の種類については上述のとおりである。
また、上記畜肉、獣肉又は魚肉の形態としては、ブロック、スライス、切り身、サイの目、ミンチ、スティック、細切、スリ身その他の肉塊や骨付きの肉塊等が用いられるが、高い風味改善効果が得られる点から、ブロック、スライス、サイの目、スティック、細切であることが好ましく、特に好ましくは表面から内部まで均質な風味改善効果が得られる点でスライス品を使用する。
また、上記畜肉、獣肉又は魚肉は、生肉に限られず、冷凍品、冷凍解凍品、冷蔵品、チルド品であってもよく、また、成形肉や脂肪注入肉であってもよい。また、上記畜肉、獣肉又は魚肉は、2種以上の畜肉、獣肉又は魚肉を混合して用いてもよい。
また、ミンチ肉や成形肉を製造する際に本発明のマスキング剤を添加する方法、ピックル液に本発明のマスキング剤を添加する方法によっても可能である。
液中のグリセリンの濃度が0.00001質量%未満であると、畜肉、獣肉又は魚肉に対する上記グリセリンの添加量を上述の好ましい範囲とすることができず、0.5質量%を超えると畜肉、獣肉又は魚肉中にグリセリンの濃度勾配を生じ、得られる肉製品の食感が均質でなくなってしまうおそれがある。
また、浸漬液、バッター液又は煮込み汁を使用する方法の場合、液と畜肉、獣肉又は魚肉との好ましい接触時間は1分〜24時間であり、より好ましくは10分〜2時間である。
なお、上記乳や乳製品の種類については上述のとおりである。
上記乳や乳製品、あるいは、乳や乳製品を使用した飲食品に対する、本発明のマスキング剤の具体的な添加方法としては、乳や乳製品に直接本発明のマスキング剤を添加する方法、乳や乳製品を使用した飲食品の製造時に、本発明のマスキング剤を添加する方法、さらには、乳や乳製品を使用した飲食品に対し、本発明のマスキング剤を散布、噴霧、注入する方法、等が挙げられる。
本発明の食塩組成物を含有する本発明の飲食品における、本発明の食塩組成物の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や求める塩味の強さに応じて適宜決定される。
なお、本発明でいうところの飲食品としては、特に限定されるものではなく、一般に塩化ナトリウムのみからなる食塩を使用する食品であれば問題なく使用することができ、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャツプ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ、ハーブ塩、調味塩等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、スープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、ハム、ソーセージ、チーズ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、煎餅等の菓子スナック類、食パン、菓子パン、クッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、おにぎり等の調理食品等があげられる。
なお、食塩を含有しない飲食品であっても、飲食時に食塩が含まれる食品であれば使用することができる。
換言すれば、本発明の食塩組成物を、従来の飲食品に含まれる食塩を置換使用する場合、その添加量を減少させたとしても、従来の飲食品と同等の塩味と同等の味質を有する飲食品とすることができ、本発明の食塩組成物を含有する飲食品は、減塩飲食品として極めて好ましく使用することができる。
そのため、本発明の減塩飲食品は、従来の単に塩化ナトリウム含量を減じただけの減塩飲食品や、塩化ナトリウムの一部又は全部を塩化ナトリウム代替品で置換した減塩飲食品に比べ、極めて味質が良好である減塩飲食品であり、また従来の塩味増強物質を使用して塩化ナトリウム含量を減じた減塩飲食品に比べ、塩化ナトリウム含量をさらに少なくすることが可能な減塩飲食品である。
なお、本発明において、減塩飲食品とは、通常の飲食品よりも塩化ナトリウム含量が10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70%質量%減じた食品である。塩化ナトリウム含量を減じた割合が10%質量未満であると、減塩飲食品といえるほどの意味がなく、90質量%を超えて減ずると、本発明の食塩組成物によっても、同等の強さの塩味を得難くなってしまう。
本発明の飲食品が減塩飲食品である場合、本発明の飲食品における本発明の食塩組成物の含有量は、上記理由から、塩化ナトリウム含量が通常の飲食品の含量に比べて、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%減じた量となるような含有量であることが好ましい。
本発明の飲食品のマスキング方法は、上記本発明の風味改善剤をマスキング剤として、飲食品に添加するものであり、飲食品の基本風味を維持したまま、飲食品の雑味や強すぎる風味をマスキングするものである。
本発明の風味改善剤をマスキング剤として飲食品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる飲食品の加工時、調理時、飲食時等に、飲食品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
本発明の風味改善剤(マスキング剤)の、飲食品への添加量は、上述のとおりである。
本発明の飲食品の塩味強化方法は、飲食品に対し、上記本発明の風味改善剤を塩味強化剤として添加するものであり、飲食品の味質を維持したまま塩味を強化するものである。
本発明の風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量は、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるグリセリンの純分として、一般的には、飲食品100質量部に対して、好ましくは0.0000001〜0.1質量部、より好ましくは0.000001〜0.05質量部、さらに好ましくは0.000005〜0.01質量部である。
その場合、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量は、風味改善剤(塩味強化剤)に含まれるグリセリンの純分として、一般的には、すなわち下述の飲食品が減塩飲食品である場合を除き、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1.5質量部、より好ましくは0.001〜0.5質量部、さらに好ましくは0.003〜0.3質量部である。
風味改善剤(塩味強化剤)の飲食品への添加量が、グリセリンの純分として、0.0001質量部未満、又は、1.5質量部を超えると、塩味強化効果が認められ難く、また0.15質量部を超えると、飲食品の味質に悪影響を与えるおそれがある。
すなわち、本発明の塩味強化方法においては、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を添加する飲食品は減塩飲食品であることが好ましい。なお、この場合、得られた飲食品もまた減塩飲食品である。
具体的には、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を飲食品の製造時に添加する場合、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を使用することによって塩化ナトリウム含量を減じることで、本来うす味で美味しさに乏しい減塩飲食品を、通常の塩化ナトリウム含量の飲食品と同等の強さの塩味と味質を有する飲食品とすることができる。
また、本発明の風味改善剤(塩味強化剤)を飲食品に添加する場合、塩化ナトリウム含有量が少ないためにうす味で美味しさに乏しい減塩飲食品に対して使用することで、減塩飲食品を、塩化ナトリウム含量が少ないにもかかわらず、通常の塩化ナトリウム含量の飲食品と同等の強さの塩味と味質を有する飲食品とすることができる。
塩化ナトリウムに対する風味改善剤(塩味強化剤)の添加量が、グリセリンの純分として、0.0001質量部未満、又は、3.75質量部を超えると、塩味強化効果が認められ難いため、うす味で美味しさに乏しい減塩飲食品となってしまうおそれがあり、また3.75質量部を超えると、飲食品の味質に悪影響を与えるおそれがある。
上記医薬品としては、経口医薬品であれば特に限定されるものではなく、例えば、カゼ薬、胃腸薬、頭痛薬、歯磨き剤等があげられる。
医薬品に対する本発明のマスキング剤の添加量、添加方法は上述の飲食品に対する添加量や添加方法と同様である。
グリセリンを準備し、塩化ナトリウム100質量部に対し、それぞれ、0.0001質量部、0.001質量部、0.01質量部、0.1質量部、0.5質量部、1.5質量部、10質量部添加、混合して食塩組成物を製造し、下記の塩味強度・味質評価を行なった。
9人のパネラーに対し、上記実験例1で得られた食塩組成物と、対照として用意した塩化ナトリウム100%からなる食塩を舐めさせ、その塩味強度、味質について、下記パネラー評価基準により4段階評価させ、その合計点数について下記<評価基準>で5段階評価を行ない、その結果をそれぞれ表1、表2に記載した。
対照に比べあきらかに強化された塩味を感じる・・ 2点
対照に比べ若干強化された塩味を感じる・・・・・ 1点
対照とほぼ同じ程度の塩味を感じる・・・・・・・ 0点
対照より弱い塩味を感じる・・・・・・・・・・ −1点
<パネラーの味質評価基準>
塩化ナトリウム以外の風味を全く感じない・・・・・・・・2点
塩化ナトリウム以外の風味を感じるが、塩味として違和感ない・・・・1点
塩化ナトリウム以外の風味を感じ、且つ塩味として違和感がある・・・0点
耐えがたい異味を感じる・・・・・・・・・−1点
<評価基準>
◎ :9人のパネラーの合計点が 15〜18点
○ :9人のパネラーの合計点が 9〜14点
△ :9人のパネラーの合計点が 5〜 8点
× :9人のパネラーの合計点が 0〜 4点
××:9人のパネラーの合計点が 0点未満
すなわち、グリセリンは塩味強化剤として極めて好適に使用できることがわかる。
〔実施例1〕
グリセリンを準備し、下述の評価試験1(苦味)、評価試験2(渋味)、評価試験3(収斂味)、評価試験4(辛味)、評価試験5(酸味)、評価試験6(塩味)に供した。
塩酸キニーネの0.02質量%水溶液を2カップ用意し、一方に塩酸キニーネ水溶液100質量部に対しグリセリン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の苦味の比較をすると、グリセリンを添加した塩酸キニーネ水溶液は無添加の塩酸キニーネ水溶液に比べ、苦味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
茶ポリフェノールの0.1質量%水溶液を2カップ用意し、一方に茶ポリフェノール水溶液100質量部に対しグリセリン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の渋味の比較をすると、グリセリンを添加した茶ポリフェノール水溶液は無添加の茶ポリフェノール水溶液に比べ、渋味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
塩化マグネシウムの0.1質量%水溶液を2カップ用意し、一方に塩化マグネシウム水溶液100質量部に対しグリセリン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の収斂味の比較をすると、グリセリンを添加した塩化マグネシウム水溶液は無添加の塩化マグネシウム水溶液に比べ、収斂味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
「おろし本わさび」(ヱスビー食品製)の2質量%水溶液を2カップ用意し、一方に該わさび水溶液100質量部に対しグリセリン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の辛味の比較をすると、グリセリンを添加したわさび水溶液は無添加のわさび水溶液に比べ、辛味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
クエン酸0.7質量%水溶液を2カップ用意し、一方にクエン酸水溶液100質量部に対しグリセリン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の酸味の比較をすると、グリセリンを添加したクエン酸水溶液は無添加のクエン酸水溶液に比べ、酸味だけが低減されており、たいへん飲みやすくなっていた。
2質量%の食塩水を2カップ用意し、一方に該食塩水100質量部に対しグリセリン0.001質量部を添加溶解し、もう一方は無添加とした。ここで両者の塩味の比較をすると、グリセリンを添加した食塩水は無添加の食塩水にくらべ塩味が強化されていた。
〔実施例2〜8〕
グリセリン及び水を[表3]に記載した配合で溶解・混合し、本発明の風味改善剤A〜Cを調製した。(実施例2〜4)
さらに得られた風味改善剤を用いて、下記の配合・製法にしたがい、ハンバーグ(実施例5)、クリームチーズソース(実施例6)、豆乳(実施例7)、めんつゆ(実施例8)を製造した。
オーストラリア産牛挽肉60質量部、みじん切りローストオニオン25質量部、全卵(正味)6質量部、牛乳6質量部、パン粉2.34質量部、塩化ナトリウムのみからなる食塩0.6質量部、胡椒0.06質量部、及び風味改善剤A0.005質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーを使用して低速1分混合し、得られた混合物を160gに分割して楕円形にまるめ、これを固定オーブン(設定温度:190℃)で10分間焼成し、飲食品100質量部に対しグリセリンを純分として0.00015質量部含有する、本発明の飲食品である本発明の飲食品であるハンバーグを得た。
一方、風味改善剤Aを無添加とした以外は同様の配合・製法で比較用のハンバーグを得た
両ハンバーグを比較試食したところ、本発明のハンバーグは、比較用のハンバーグと比べ、食感や基本風味バランスを変えることなく、畜肉臭と牧草臭が低減されており、極めて食べやすいものであった。
ニュージーランド産クリームチーズ(ニュージーランドクリームチーズ:アンカー社製)75質量部に、牛乳25質量部を少量ずつ加え、なめらかになるまで混合した。次に、上記風味改善剤Bを0.003質量部添加し、さらに均質になるまで混合し、飲食品100質量部に対しグリセリンを純分として0.0012質量部含有する、乳・乳製品からなる本発明の飲食品であるクリームチーズソースを得た。
一方、風味改善剤Bを無添加とした以外は同様の配合・製法で比較用のクリームチーズソースを得た。
両クリームチーズソースを比較試食したところ、本発明のクリームチーズソースは、比較用のクリームチーズソースと比べ、食感や基本風味バランスを変えることなく牧草臭が低減されており、極めて食べやすいものであった。
豆乳(おいしい無調整豆乳:キッコーマン飲料製)100質量部に、上記風味改善剤Cを0.001質量部添加、均質になるまで混合し、飲食品100質量部に対しグリセリンを純分として0.00001質量部含有する、本発明の飲食品である豆乳を得た。
一方、風味改善剤Cを無添加とした比較用の豆乳を用意した。
両豆乳を比較試食したところ、本発明の豆乳は、比較用の豆乳と比べ、食感や基本風味バランスを変えることなく豆臭さが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
鍋にみりん28.8質量部をいれ、火にかけて軽く沸騰させ、続いて水100質量部、醤油28.8質量部を加え、よく混ぜ合わせ沸騰させた。ここへかつお削り節5質量部を加え再び沸騰したら火を止め、濾し器で濾し、通常めんつゆを得た。(塩化ナトリウム含量=2.6質量%)
一方上記醤油を減塩醤油に変更した以外は同様の製法で減塩めんつゆAを得た。(塩化ナトリウム含量=1.3質量%)
ここで、上記減塩めんつゆA100質量部に対し、風味改善剤Aを0.1質量部添加し、十分溶解・混合し、飲食品100質量部に対しグリセリンを純分として0.003質量部含有する、本発明の飲食品である減塩めんつゆBを得た。
ここで、上記本発明の減塩めんつゆAと、上記通常めんつゆを比較試食したところ、本発明の減塩めんつゆAは、比較用の通常めんつゆと、塩味強度も含め風味バランスは全く変わりがなかった。
さらに得られた風味改善剤を用いて下記の配合・製法にしたがい、食塩組成物及びポタージュスープを製造した。(実施例9、10)
〔実施例9〕
塩化ナトリウム100質量部に対し風味改善剤A3.5質量部を添加して十分混合し、塩化ナトリウム100質量部に対しグリセリンを純分として0.105質量部含有する、本発明の食塩組成物Aとした。
さらに、該本発明の食塩組成物Aを使用して、下記の配合で定法により、塩化ナトリウム含量が0.9%であり、グリセリンを、飲食品100質量部に対し純分として0.0007質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.076質量部含有するポタージュスープ1を製造した。
一方、上記グリセリンを全く使用しない、塩化ナトリウム100%からなる食塩を使用した以外は、ポタージュスープ1と同様の配合・製法で製造された塩化ナトリウム含量が0.93質量%のポタージュスープ2を対照として用意した。
ここで、この2種のポタージュスープを比較試食したところ、本発明の飲食品であるポタージュスープ1は、グリセリンを使用しないポタージュスープ2より明らかに塩味が強いが、異味は全く感じられず、味質を変えないまま、塩味を強化されたものであった。
<ポタージュスープ配合>
スイートコーン(塩化ナトリウム含量0.5%)30質量部、牛乳5質量部、脱脂粉乳(塩化ナトリウム含量1.5%)5質量部、無塩バター1質量部、食塩組成物A0.7質量部、薄力粉1質量部、糊化澱粉1質量部、ホワイトペッパー0.1質量部、水56.2質量部
塩化ナトリウム55質量部、塩化カリウム45質量部に対し風味改善剤A3.5質量部を添加して十分混合し、塩化ナトリウム100質量部に対しグリセリンを純分として0.19質量部含有する、本発明の食塩組成物Bとした。
さらに、本発明の食塩組成物Bを使用した以外は実施例9のポタージュスープ1と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.60質量%であり、グリセリンを、飲食品100質量部に対し純分として0.0007質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.12質量部含有する、塩化ナトリウム含量を通常の35質量%カットした減塩飲食品であるポタージュスープ3を製造した。そして実施例9と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ3は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、同等の味質であった。
上記実施例9のポタージュスープ1の配合で、食塩組成物Aの添加量を0.7質量部から0.37質量部とし、水56.2質量部を56.53質量部とした以外は実施例8のポタージュスープ1と同様の配合・製法で、塩化ナトリウム含量が0.59質量%であり、グリセリンを、飲食品100質量部に対し純分として0.00037質量部含有し、飲食品に含まれる塩化ナトリウム100質量部に対し、純分として0.063質量部含有する、塩化ナトリウム含量を通常の35質量%カットした減塩飲食品であるポタージュスープ4を製造した。そして実施例9と同様、ポタージュスープ2と比較試食したところ、本発明の減塩飲食品であるポタージュスープ4は、通常の塩化ナトリウム含量であるポタージュスープ2とほぼ同等の強さの塩味であり、且つ、同等の味質であった。
Claims (11)
- グリセリンを有効成分として含有し、畜肉臭のマスキング剤である風味改善剤。
- グリセリンを有効成分として含有し、牧草臭のマスキング剤である風味改善剤。
- グリセリンを有効成分として含有し、塩味強化剤である風味改善剤。
- 塩化ナトリウムとグリセリンとを含有する食塩組成物であって、塩化ナトリウム100質量部に対しグリセリンを0.0001〜1.5質量部含有する、食塩組成物。
- 塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで置換したことを特徴とする請求項4記載の食塩組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の風味改善剤を使用した飲食品であって、
前記飲食品が食肉製品又は畜肉加工食品であり、
前記飲食品100質量部に対し、風味改善剤に含まれるグリセリンの純分として、0.000001〜0.1質量部である、飲食品。 - 請求項4又は5記載の食塩組成物を含有する飲食品。
- 減塩飲食品であることを特徴とする請求項7記載の飲食品。
- 請求項1又は2記載の風味改善剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の畜肉臭又は牧草臭のマスキング方法。
- 請求項3記載の風味改善剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の塩味強化方法。
- 飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項10記載の飲食品の塩味強化方法。
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