先ず、本発明に係る検眼装置の一実施例としての実施例1の眼屈折力測定装置10を、図1から図13を用いて説明する。図1に示す眼屈折力測定装置10は、基本的に被検眼E(図3等参照)の眼屈折力を測定するものである。この眼屈折力測定装置10は、実施例1では、他覚測定により被検眼Eの眼屈折力を含む光学特性(眼特性)を測定する他覚測定機能と、自覚測定により被検眼Eの眼屈折力を含む光学特性(眼特性)を測定する自覚測定機能と、を有する。そして、眼屈折力測定装置10は、本発明の検眼用チャートを用いた自覚測定方法を実行することが可能とされている。その被検眼Eについては、図3において、眼底(網膜)Efおよび角膜(前眼部)Ecを模式的に示す。
この眼屈折力測定装置10は、ベース11に駆動部12(図2参照)を介して装置本体部13が移動可能に設けられて構成される。その装置本体部13には、内方に後述する眼屈折力測定装置10の光学系(図3参照)が設けられ、外方に表示部14、顎受部15および額当部16が設けられる。
その表示部14は、液晶ディスプレイで形成されており、後述する制御部21(図2参照)の制御下で、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)の画像(前眼部像E´)や各種の操作画面や測定結果等を表示面14aに表示させる(図6、図7参照)。表示部14は、実施例1では、タッチパネルの機能を搭載しており、眼屈折力を含む光学特性(眼特性)を測定するための操作や、前眼部(角膜Ec)を撮影するための操作や、装置本体部13を移動するための操作や、自覚測定と他覚測定との切り替えの操作や、自覚測定のための視標を切り替える操作等を行うことが可能とされている。また、表示部14は、タッチパネルの機能を利用して、上述した各操作のためのアイコンとしての各種の記号(図6、図7参照)を表示し、当該各記号に触れることによる操作を可能とする。なお、測定を行うための操作は、ベース11や装置本体部13や表示部14の周縁部に測定スイッチを設けて、当該測定スイッチの操作により行うものであってもよい。また、装置本体部13を移動するための操作は、ベース11や装置本体部13や表示部14の周縁部にコントロールレバーや移動操作スイッチを設けて、当該コントロールレバーや当該移動操作スイッチの操作により行うものであってもよい。
顎受部15および額当部16は、測定時に装置本体部13に対して被検者(患者)の顔、すなわち被検眼Eの位置を固定するものであり、ベース11に固定されて設けられる。その顎受部15は、被検者が顎を載せる箇所となり、額当部16は、当該被検者が額を宛がう箇所となる。装置本体部13では、顎受部15と額当部16とにより被検者の顔を固定すると、当該被検者の被検眼Eが後述するケラトリングパターン37およびその中心に位置する対物レンズ31q(図3および図5参照)に対向される。このため、眼屈折力測定装置10の光学系による被検眼Eの適切な測定(他覚測定および自覚測定)が可能となる。
この眼屈折力測定装置10では、表示部14と、顎受部15および額当部16と、が、装置本体部13を挟んで両側に設けられ、通常の使用時(図1参照)において、表示部14(その表示面14a)が検者の側となり、顎受部15および額当部16が被検者の側となる。その表示部14は、図示は略すが、装置本体部13に回転自在に支持され、表示面14aの向きを変更すること、例えば、表示面14aを被検者側に向けることや、表示面14aを側方(X軸方向)に向けることが可能とされている。その装置本体部13は、駆動部12により、ベース11に対して移動すること、すなわち顎受部15と額当部16とにより固定された被検眼E(被検者の顔)に対して移動することが可能とされている。
その駆動部12は、装置本体部13をベース11に対して、上下方向(Y軸方向)と、前後方向(Z軸方向(通常の使用時に表示部14と、顎受部15および額当部16と、が並ぶ方向))と、それらに直交する左右方向(X軸方向)と、に移動させる。なお、実施例1では、上下方向の上側をY軸方向の正側とし、前後方向の被検者側(図1を正面視して左奥側)をZ軸方向の正側とし、左右方向において図1を正面視して左手前側をX軸方向の正側とする(図1の矢印参照)。実施例1では、駆動部12は、図2に示すように、Xモータ12aとYモータ12bとZモータ12cとを有し、それぞれを駆動させるためのXドライバ12dとYドライバ12eとZドライバ12fとを有する。
Xモータ12aは、ベース11に対して装置本体部13をX軸方向(左右方向)へと移動(変位)させる。換言すると、Xモータ12aは、駆動部12において、装置本体部13をX軸方向(左右方向)への移動させるための構成となる。このXモータ12aは、制御部21によりXドライバ12dが制御されることで適宜駆動される。
Yモータ12bは、ベース11に対して装置本体部13をY軸方向(上下方向)へと移動(変位)させる。換言すると、Yモータ12bは、駆動部12において、装置本体部13をY軸方向(上下方向)への移動させるための箇所となる。このYモータ12bは、制御部21によりYドライバ12eが制御されることで適宜駆動される。
Zモータ12cは、ベース11に対して装置本体部13をZ軸方向(前後方向)へと移動(変位)させる。換言すると、Zモータ12cは、駆動部12において、装置本体部13をZ軸方向(前後方向)への移動させるための箇所となる。このZモータ12cは、制御部21によりZドライバ12fが制御されることで適宜駆動される。
このため、駆動部12は、Xモータ12aとYモータ12bとZモータ12cとを適宜駆動することにより、ベース11に対して装置本体部13を上下方向(Y軸方向)、前後方向(Z軸方向)、および左右方向(X軸方向)に適宜移動させる。換言すると、制御部21は、駆動部12を適宜駆動制御する、すなわちXドライバ12dとYドライバ12eとZドライバ12fとを介してXモータ12aとYモータ12bとZモータ12cとを適宜駆動することにより、ベース11に固定された顎受部15および額当部16に対して装置本体部13を適宜移動させることができる。
その制御部21は、眼屈折力測定装置10における電気制御系を構成しており、内蔵する記憶部21aに格納されたプログラムにより眼屈折力測定装置10の各部を統括的に制御する。制御部21は、後述するように、合焦判断回路22からの検出結果(その信号)やアライメント判定回路23からの検出結果(その信号)に基づいて、駆動部12を適宜駆動制御してベース11に対する装置本体部13の位置を調整する。また、制御部21は、後述する前眼部観察光学系32(図3参照)の撮像素子32gが取得した画像に基づいて表示部14(その表示面14a)にその画像を表示させる。さらに、制御部21は、後述する視標光源31a、グレア用光源31x、表示方向光源31y、前眼部照明光源32a、レフ測定用光源33a、XY方向検出用光源35a、ケラトリング状指標投影光源36、Z方向検出用光源38aに、それぞれに対応する点灯制御を行うためのドライバ(駆動機構)を介して接続されており、これらの各光源の発光を適宜制御する。
ついで、制御部21は、後述する視標切替部31d(図3参照)の切替駆動部31sに接続されており、当該視標切替部31dのターレット部31r(図3参照)に保持された視標を切り替えるべく切替駆動部31sを駆動制御する。加えて、制御部21は、後述する合焦レンズ31h(図3参照)を適宜移動させるべく視標合焦機構31Dを駆動制御し、指標ユニット33U(図3参照)を適宜移動させるべく指標移動機構33Dを駆動制御し、合焦レンズ34e(図3参照)を適宜移動させるべく指標合焦機構34Dを駆動制御する。また、制御部21は、後述するVCCレンズ31k(図3参照)における1対のレンズの相対的な姿勢および一体的な姿勢を調整すべくその駆動部(図示せず)を駆動制御する。さらに、制御部21は、後述するシャッター32c(図3参照)を開いた状態と閉じた状態とで切り替えるべく当該シャッター32cを駆動制御する。制御部21は、後述する応答部17に接続されており、そこで為された応答操作に応じた情報を、表示部14(その表示面14a)に表示させて報知する。その報知は、応答部17への応答操作の内容を検者に認識させるものであれば、例えば音や振動を用いるものであってもよい。また、制御部21は、応答部17に為された応答操作に応じた情報を、実行している測定内容と関連付けて記憶部21a等に記憶する。
次に、眼屈折力測定装置10の制御系の構成を、図2を用いて説明する。眼屈折力測定装置10は、図2に示すように、上述した制御部21に加えて、合焦判断回路22とアライメント判定回路23とを有する。その制御部21には、撮像素子32gが接続されており、その撮像素子32gの受光に基づく信号、すなわち被検眼Eの前眼部像E´(図6、図7参照)や、後述する眼屈折力測定(レフ測定)用リング状指標像(その画像)や、ケラトリング状指標像(その画像)や、XYアライメント指標光の輝点像(その画像)や、Z方向検出輝点像(その画像)としての信号が伝送される。そして、制御部21は、表示部14に接続されており、撮像素子32gからの受光信号に基づいて適宜画像信号を生成し、撮像素子32gからの受光信号に基づく画像を表示部14(その表示面14a)に適宜表示させる(図6、図7参照)。制御部21は、シャッター32cに接続されており、上述したように当該シャッター32cを駆動制御する。制御部21は、駆動部12(そのXドライバ12d、Yドライバ12eおよびZドライバ12f)に接続されており、上述したように駆動部12を適宜駆動制御することによりベース11に対して装置本体部13を適宜移動させる。制御部21は、表示部14への操作に基づいて、あるいは記憶部21aに格納されたプログラムに従って、上述した各動作を適宜実行する。
合焦判断回路22は、撮像素子32gからの検出信号に基づいて、後述する眼屈折力測定装置10の光学的な構成(装置本体部13)が被検眼Eの眼底Ef(図3参照)に合焦しているか否か、すなわち前後方向(Z軸方向)のズレ量が許容範囲内であるか否かを検出する。この合焦判断回路22では、その合焦(ズレ量)の判断に、撮像素子32gで取得した後述するケラトリング状指標投影光源36により形成されるケラトリング状指標像(その画像)と、後述するZ方向検出平行投影系38により形成されるZ方向検出輝点標(その画像)と、の信号を用いる。そして、合焦判断回路22は、その検出結果(その信号)を制御部21に出力する。すると、制御部21は、合焦判断回路22からの検出結果(その信号)に基づいて装置本体部13をベース11に対してZ軸方向(前後方向)に移動させ、当該合焦判断回路22から合焦完了(ズレ量が許容範囲内である旨)を示す信号を受けるまでその移動を行うことにより、Zアライメントを自動で行うことができる。
アライメント判定回路23は、撮像素子32gからの検出信号に基づいて、後述する眼屈折力測定装置10の光学的な構成(装置本体部13)の主光軸O1と被検眼Eの光軸とのX−Y方向のズレ量が許容範囲内であるか否かを検出する。そのズレ量は、例えば、左右方向(X軸方向)でのズレ量およびその方向と、上下方向(Y軸方向)でのズレ量およびその方向と、で表すことができる。このアライメント判定回路23では、そのズレ量の判断に、撮像素子32gで取得した後述するXYアライメント光投影光学系35で形成したXYアライメント指標像(輝点像)(その画像)の信号を用いる。そして、アライメント判定回路23は、その検出結果(その信号)を制御部21に出力する。すると、制御部21は、アライメント判定回路23からの検出結果(その信号)に基づいて装置本体部13をベース11に対してX軸方向(左右方向)およびY軸方向(上下方向)に移動させ、当該アライメント判定回路23からズレ量が許容範囲内である旨を示す信号を受けるまでその移動を行うことにより、X−Yアライメントを自動で行うことができる。
その装置本体部13には、上述したように、外形形状を形作る筐体13aの内方に眼屈折力測定装置10における光学系の構成が設けられている。この眼屈折力測定装置10は、被検眼Eの光学特性(眼特性)を測定することが可能とされており、実施例1では、被検眼Eの眼屈折力(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)と、被検眼Eの角膜Ecの形状と、を測定することが可能とされている。眼屈折力測定装置10は、被検眼Eの眼屈折力および角膜Ecの形状を他覚測定により測定することが可能とされているとともに(他覚測定機能)、被検眼Eの眼屈折力を自覚測定により測定することが可能とされている(自覚測定機能)。その自覚測定とは、見え方を被検者に問う等により被検者自身が感じ取ったことに基づいて測定を行うものであり、他覚測定とは、被検者が感じ取ったことに基づくことなく測定を行うものである。そして、眼屈折力測定装置10では、装置本体部13(その筐体13a)内の光学系の構成により、上記した測定が可能とされている。
次に、図3を用いて、眼屈折力測定装置10の光学的な構成を説明する。眼屈折力測定装置10は、図3に示すように、視標投影光学系31と前眼部観察光学系32とレフ測定投影光学系33とレフ測定受光光学系34とXYアライメント光投影光学系35とを備える。
その視標投影光学系31は、被検眼Eを固視・雲霧させるために、その被検眼Eの眼底Efに固視のための視標(固視標)を投影する。また、視標投影光学系31は、自覚測定を行うために、被検者に見え方を問うべく被検眼Eの眼底Efに被検者に注視させるための視標(自覚視標)を投影する。前眼部観察光学系32は、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)を観察する。レフ測定投影光学系33は、被検眼Eの眼屈折力を測定するために、眼屈折力測定(レフ測定)用リング状指標としてのパターン光束(測定光)を、その被検眼Eの眼底Efに投影する。レフ測定受光光学系34は、被検眼Eの眼底Efから反射された眼屈折力測定(レフ測定)用リング状指標を撮像素子32gに受光させる。このレフ測定投影光学系33およびレフ測定受光光学系34は、前眼部観察光学系32および後述するケラトリング状指標投影光源36とともに、角膜形状・眼屈折力測定光学系を構成する。XYアライメント光投影光学系35は、X−Y方向でのアライメント状態を検出するために、指標光を被検眼Eに向けて投影する。
視標投影光学系31は、光軸O2上に、視標光源31aと色補正フィルタ31bとコリメータレンズ31cと視標切替部31dとハーフミラー31eとリレーレンズ31fとミラー31gと合焦レンズ31hとリレーレンズ31iとフィールドレンズ31jとバリアブルクロスシリンダレンズ31k(以下では、VCCレンズ31kともいう)とミラー31mとダイクロイックフィルター31nとダイクロイックフィルター31pと対物レンズ31qとを有する。
その視標切替部31dは、視標投影光学系31により被検眼Eの眼底Efに投影(被検眼Eに呈示)する視標を切り替えるものであり、実施例1では、ターレット部31rと切替駆動部31sとで構成されている。そのターレット部31rは、回転軸31tを回転中心として回転可能に設けられており、その回転方向で見て複数の視標を支持する。そして、ターレット部31rは、回転軸31tを中心として回転することにより、支持する複数の視標のうちのいずれか1つを光軸O2上に位置させることが可能である。切替駆動部31sは、制御部21(図2参照)の制御下で駆動されることにより、回転軸31tを介してターレット部31rを回転させ、ターレット部31rの回転姿勢を変化させる。このため、視標切替部31dでは、制御部21の制御下で、ターレット部31rで支持する複数の視標のうちのいずれか1つを光軸O2上に位置させる。その各視標は、実施例1では、視標光源31aから出射されて色補正フィルタ31bにより補正された光(光束)を透過させることにより、後述する視標投影光学系31による被検眼Eの眼底Efへの呈示を可能としている。
ターレット部31rは、実施例1では、風景チャート31uと、グリッドチャート31v(図4等参照)と、視力チャート31wと、を支持している。その風景チャート31uは、固視のために被検者に注視させるための視標(固視標)であり、注視し易い箇所を含む風景を示すものである。なお、実施例1では、固視標として風景を示す風景チャート31uを用いていたが、固視のために被検者に注視させるための視標であればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。
また、グリッドチャート31vは、図4に示すように、格子状のパターンとされた所謂アムスラーチャートであり、格子状のパターンがどのように見えるのかを当該被検者に確認させる自覚測定としてのグリッドチャートテスト(アムスラーチャートテスト)を行うものである。このため、グリッドチャート31vは、自覚測定のために被検者に注視させるための視標(自覚視標)として機能し、その自覚測定により被検眼Eの光学特性(眼特性)を測定するための検眼用チャートとして機能する。このグリッドチャート31v(アムスラーチャート)は、実施例1では、格子状のパターンの箇所で、視標光源31aから出射されて色補正フィルタ31bにより補正された光(光束)を透過させるものとされており、格子状のパターンの箇所が明るいものとされるとともに、それ以外の箇所が暗いものとされている。なお、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)は、格子状のパターン以外の箇所で上述した光を透過させて、格子状のパターンの箇所が暗いものとされるとともに、それ以外の箇所が明るいものとされているものであってもよい。
グリッドチャート31vは、実施例1では、縦方向および横方向にそれぞれ20個のグリッド(マス目)が並べられて構成されている。そして、実施例1のグリッドチャート31vでは、中心位置に1つの中心注視点D1が設けられているとともに、それを取り巻くように4つの周辺注視点(D2〜D5)が設けられている。その4つの周辺注視点は、中心注視点D1(中心位置)から縦方向および横方向にグリッド5つ分(5マス分)だけずれた位置に設けられており、左上のものを周辺注視点D2とし、右上のものを周辺注視点D3とし、左下のものを周辺注視点D4とし、右下のものを周辺注視点D5としている。すなわち、4つの周辺注視点(D2〜D5)は、中心注視点D1(中心位置)を含む縦線および横線でグリッドチャート31vを4分割した際、左上の分割領域の中心位置に周辺注視点D2が位置し、右上の分割領域の中心位置に周辺注視点D3が位置し、左下の分割領域の中心位置に周辺注視点D4が位置し、右下の分割領域の中心位置に周辺注視点D5が位置している。このグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定、すなわちグリッドチャートテスト(アムスラーチャートテスト)では、格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりしている場合、注視している被検眼Eに網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)を含めた疾患もしくはその周辺の疾患の可能性があるものと判断する。
視力チャート31wは、被検者に見え方を問うこと(自覚測定)により視力検査を行うための自覚視標であり、視力毎に規定の大きさ寸法とされたアルファベットや平仮名等の文字やランドルト環等が表記されている。このため、視力チャート31wは、自覚測定のために被検者に注視させるための視標(自覚視標)として機能し、その自覚測定により被検眼Eの光学特性(眼特性(視力))を測定するための検眼用チャートとして機能する。この視力チャート31wは、表記を形成する箇所で視標光源31aから出射されて色補正フィルタ31bにより補正された光(光束)の透過を阻むものとされ、それ以外の箇所で当該光(光束)を透過させるものとされている。このため、視力チャート31wは、表記の箇所が暗いものとされるとともに、それ以外の箇所が明るいものとされている。なお、視力チャート31wは、表記の箇所で上述した光を透過させて、表記の箇所が明るいものとされるとともに、それ以外の箇所が暗いものとされているものであってもよい。
さらに、ターレット部31rは、図示は略すが、偏光レッドグリーン(R&D)テストチャート、精密立体視テストチャート、立体視テストチャート、十字斜位テストチャート、不等像視テストチャート、回旋斜位テストチャート等の中から、1つもしくは複数を支持するものとすることができる。これらのチャートは、自覚測定のために被検者に注視させるための視標(自覚視標)として機能し、その自覚測定により被検眼Eの光学特性(眼特性)を測定するための検眼用チャートとして機能する。この場合であっても、これらの検眼用チャートは、それぞれの表記を形成する箇所で、視標光源31aから出射されて色補正フィルタ31bにより補正された光(光束)の透過を阻むものとされており、各表記の箇所が暗いものとされるとともに、それ以外の箇所が明るいものとされている。なお、視力チャート31wは、それぞれの表記の箇所で上述した光を透過させて、各表記の箇所が明るいものとされるとともに、それ以外の箇所が暗いものとされているものであってもよい。
視標光源31aは、図3に示すように、ターレット部31rにより支持されて光軸O2上に位置された視標を被検眼Eに投影するための光源であり、実施例1では、白色のLEDが用いられる。合焦レンズ31hは、被検眼Eを固視・雲霧させるべく、視標合焦機構31Dにより視標投影光学系31の光軸O2に沿って移動可能とされる。その視標合焦機構31Dは、制御部21(図2参照)の制御下で駆動されることにより、合焦レンズ31hを光軸O2上の任意の位置に移動させる。VCCレンズ31kは、1対のレンズがそれぞれ独立して回転することが可能とされており、両レンズが互いに逆方向に回転されることにより乱視度数を変更させ、両レンズが同じ方向に一体的に回転されることにより乱視軸角度を変更させる。このVCCレンズ31kは、図示を略す駆動部が制御部21(図2参照)の制御下で駆動されることにより、乱視検査において乱視度数および乱視軸角度が調整される。なお、ダイクロイックフィルター31pと対物レンズ31qとは、それらが設けられた位置が、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)における主光軸O1上とされる。このため、眼屈折力測定装置10では、測定を行う際に、顎受部15および額当部16により顔が固定された被検者の被検眼Eが主光軸O1上に位置される。
加えて、視標投影光学系31では、光軸O2´上に、グレア用光源31xが設けられている。その光軸O2´は、視標投影光学系31において、ハーフミラー31eからリレーレンズ31fを経てミラー31gに至るまでの間における光軸O2をハーフミラー31eから延長したものとされている。その光軸O2´上には、後述するように表示方向光源31yも設けられている。グレア用光源31xは、視標投影光学系31により視標を呈示された被検眼Eに対してグレア光を投影させるものであり、実施例1ではLEDが用いられている。このグレア用光源31xは、被検眼Eに白内障があるか否かを判別するグレアテストを行う際に制御部21(図2参照)の制御下で点灯される。すると、そのグレア用光源31xから出射されたグレア用の光束は、ハーフミラー31eを透過して視標投影光学系31の光軸O2上を進行し、後述するターゲット光束と同様に被検眼Eへと進行する。
この視標投影光学系31では、視標光源31aから白色光を出射し、その白色光を色補正フィルタ31bで所望の色とした後にコリメータレンズ31cにより平行光束とし、視標切替部31d(そこで支持されて光軸O2上に位置された視標)を透過させてターゲット光束とする。そして、視標投影光学系31では、ターゲット光束を、ハーフミラー31eで反射してリレーレンズ31fを通した後にミラー31gで反射して合焦レンズ31hへと進行させる。視標投影光学系31では、ターゲット光束を、合焦レンズ31h、リレーレンズ31i、フィールドレンズ31jおよびVCCレンズ31kを通した後、ミラー31mにより反射し、ダイクロイックフィルター31nを通過させてダイクロイックフィルター31pへと進行させる。そして、視標投影光学系31では、そのターゲット光束をダイクロイックフィルター31pで前眼部観察光学系32における主光軸O1上へと反射して、対物レンズ31qを経て被検眼Eへと進行させる。これにより、視標投影光学系31では、視標切替部31dにより光軸O2上に位置させた視標を、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)における主光軸O1上で、被検眼Eに呈示(投影)することができる。このため、視標投影光学系31は、被検眼Eに対して自覚測定のために注視させる自覚視標としての検眼用チャートを呈示する視標呈示光学系として機能する。
このとき、視標投影光学系31では、グリッドチャート31v(図4参照)を視標投影光学系31の光軸O2上に位置させた場合、当該グリッドチャート31vが所定の大きさ寸法で被検眼Eから30〜40cm(実施例1では30cm)の距離となる位置に設けられたものと等しい状態として、当該被検眼Eにグリッドチャート31vを呈示する。さらに、視標投影光学系31では、被検眼Eに呈示するグリッドチャート31vの大きさ寸法を小さくすることが可能とされている。この視標投影光学系31では、光路上や視標切替部31dのターレット部31r上にマスク部材を着脱自在に設けることにより、呈示するグリッドチャート31vの大きさ寸法を小さくする。なお、視標切替部31dのターレット部31rに、予め異なる大きさ寸法の複数のグリッドチャート31vを設けるものとしてもよい。
視標投影光学系31は、風景チャート31uを経て被検眼Eに投影した固視標としてのターゲット光束を、被検者に固視目標として注視させることにより、当該被検者の視線を固定する。また、視標投影光学系31は、被検者に固視目標として注視させた状態から、ピントが合わない位置まで合焦レンズ31hを移動させることにより、被検眼Eを雲霧状態とする。加えて、視標投影光学系31は、自覚視標としての検眼用チャート(グリッドチャート31v等)を経て被検眼Eに投影した自覚視標としてのターゲット光束を、被検者に注視させることにより、当該自覚視標に応じた自覚測定を行う。その自覚測定においてグリッドチャート31vを用いた場合については、後に詳細に説明する。また、視力チャート31wを用いた場合、視力検査を行うことができ、他の検眼用チャートを用いた場合、当該検眼用チャートに則ったテストを行うことができる。
前眼部観察光学系32は、前眼部照明光源32aを有するとともに、主光軸O1上に、ハーフミラー32bとシャッター32cとリレーレンズ32dとダイクロイックフィルター32eと結像レンズ32fと撮像素子32gとを有し、視標投影光学系31と対物レンズ31qおよびダイクロイックフィルター31pを共用する。撮像素子32gは、二次元固体撮像素子であり、実施例1ではCCD(電荷結合素子)イメージセンサを用いている。
前眼部照明光源32aは、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)を照明するための光源である。この前眼部照明光源32aは、装置本体部13における前後方向の被検者側(Z軸方向の正側)の端部において、後述するケラトリングパターン37を取り囲むように複数個(図3では2つのみ示す)設けられている。各前眼部照明光源32aは、点灯されることで被検眼Eの前眼部(角膜Ec)を直接照明する。
この前眼部観察光学系32では、各前眼部照明光源32aから出射した照明光束で被検眼Eの前眼部(角膜Ec)を照明して、その前眼部で反射された照明光束を対物レンズ31qで取得する。このとき、前眼部観察光学系32では、シャッター32cを開いた状態として、主光軸O1上の光路を開けておく。前眼部観察光学系32では、その反射された照明光束を、対物レンズ31qを経て、ダイクロイックフィルター31pおよびハーフミラー32bを通して、リレーレンズ32dおよびダイクロイックフィルター32eを経て結像レンズ32fにより撮像素子32g(その受光面)上に結像させる。その撮像素子32gは、取得した画像に基づく画像信号を制御部21(図2参照)に出力する。その制御部21は、入力された画像信号に基づいて、前眼部(角膜Ec)の画像を表示部14(図1参照)に表示させる(図6参照)。このため、前眼部観察光学系32では、撮像素子32g(その受光面)上に前眼部(角膜Ec)の像を形成することができ、表示部14に当該前眼部の画像(前眼部像E´)を表示させることができる。なお、アライメント完了後の屈折力測定時には、前眼部観察光学系32の前眼部照明光源32aは消灯され、シャッター32cを閉じた状態とされて主光軸O1上の光路が閉じるものとすることができる。
レフ測定投影光学系33は、光軸O3上に、レフ測定用光源33aとコリメータレンズ33bと円錐プリズム33cとレフ測定リング33dとリレーレンズ33eと瞳リング(瞳リング絞り)33fとフィールドレンズ33gと穴開きプリズム33hとロータリープリズム33iとを有し、視標投影光学系31とダイクロイックフィルター31n、ダイクロイックフィルター31pおよび対物レンズ31qを共用する。その瞳リング33fは、リング状の透過部が設けられた光学部材であり、リレーレンズ33eを経た光束をリング状の光束とする。レフ測定用光源33aと瞳リング33fとは光学的に共役な位置に配置し、レフ測定リング33dと被検眼Eの眼底Efとは光学的に共役な位置に配置している。また、レフ測定用光源33a、コリメータレンズ33b、円錐プリズム33cおよびレフ測定リング33dは、指標ユニット33Uを構成し、この指標ユニット33Uは、指標移動機構33Dによりレフ測定投影光学系33の光軸O3に沿って一体に移動可能とされている。
レフ測定投影光学系33では、レフ測定用光源33aから出射した光束をコリメータレンズ33bで平行光束とし、円錐プリズム33cを経てレフ測定リング33dへと進行させる。その光束は、レフ測定リング33dに形成されたリング状のパターン部分を透過して眼屈折力測定(レフ測定)用リング状指標としてのパターン光束とされる。このレフ測定投影光学系33では、そのパターン光束をリレーレンズ33e、瞳リング33fおよびフィールドレンズ33gを経て穴開きプリズム33hへと進行させ、その穴開きプリズム33hの反射面により反射して、ロータリープリズム33iを経てダイクロイックフィルター31nへと進行させる。そして、レフ測定投影光学系33では、パターン光束をダイクロイックフィルター31nで反射した後にダイクロイックフィルター31pで反射することで、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)の主光軸O1上に進行させる。そして、レフ測定投影光学系33では、パターン光束を、対物レンズ31qにより被検眼Eの眼底Efに結像させる。これにより、レフ測定投影光学系33では、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)における主光軸O1上で、測定光としての眼屈折力測定(レフ測定)用リング状指標のパターン光束を、被検眼Eの眼底Efに向けて投影することができる。
このレフ測定投影光学系33には、対物レンズ31qの前方側にケラトリング状指標投影光源36が設けられている。このケラトリング状指標投影光源36は、ケラトリング(角膜形状測定用リング)パターン37上において被検眼E(角膜Ec)から所定の距離とされて、前眼部観察光学系32の主光軸O1に関して同心状に設けられている。そのケラトリングパターン37は、図5に示すように、全体に板状を呈し、主光軸O1を中心とする中心穴37aと、主光軸O1に関する同心位置で環状を呈する複数のスリット37bと、主光軸O1から等しい位置で対を為す透過穴37cと、を有する。ケラトリングパターン37は、中心穴37aの中心位置が主光軸O1と一致されており、当該中心穴37aから対物レンズ31qを露呈させている。ケラトリング状指標投影光源36は、ケラトリングパターン37のスリット37bに対応して設けられており、その対応するスリット37bを経て被検眼E(角膜Ec)にケラトリング状指標としての光束(測定光)を投影する。その光束は、被検眼Eの角膜Ecに投影されることで、その角膜Ecにケラトリング状指標を形成する。ケラトリング状指標(その光束)は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、上記した前眼部観察光学系32により撮像素子32g上に結像される。このため、前眼部観察光学系32では、表示部14において、前眼部(角膜Ec)の画像に重ねてケラトリング状指標の像(画像)を表示させることができる。
また、レフ測定投影光学系33には、図3に示すように、ケラトリングパターン37の後方側に、Z方向検出平行投影系38が設けられている。そのZ方向検出平行投影系38では、Z方向検出用光源38aと集光レンズ38bとが、ケラトリングパターン37の一対の透過穴37c(図5参照)に対応して設けられている。Z方向検出平行投影系38は、各Z方向検出用光源38aから出射した光束を対応する集光レンズ38bで集光し、ケラトリングパターン37の対応する透過穴37c(図5参照)を経て被検眼Eへと進行させてZ方向検出輝点を形成する。このZ方向検出平行投影系38は、形成したZ方向検出輝点を、上述したケラトリング状指標投影光源36が形成するケラトリング状指標と併せて用いることで、前後方向(Z軸方向)での位置の調節、いわゆるZ方向のアライメントを可能とする。このため、検者は、このZ方向検出輝点とケラトリング状指標との相対的な位置関係を適切なものとするように装置本体部13を移動させることで、Zアライメントを行うことができる。また、オートアライメントモードの場合には、上述したように、合焦判断回路22が、このZ方向検出輝点とケラトリング状指標とに基づく撮像素子32gからの信号を用いることで、被検眼Eに対する装置本体部13のZ軸方向のズレ量を求め、このズレ量に応じて制御部21がZドライバ12fを制御することで装置本体部13を適宜Z軸方向へ移動させてZアライメントを行う。
レフ測定受光光学系34は、光軸O4上に、穴開きプリズム33hの穴部34aとフィールドレンズ34bとミラー34cとリレーレンズ34dと合焦レンズ34eとミラー34fとを有し、視標投影光学系31と対物レンズ31q、ダイクロイックフィルター31pおよびダイクロイックフィルター31nを共用し、かつレフ測定投影光学系33とロータリープリズム33iを共用し、しかも前眼部観察光学系32とダイクロイックフィルター32e、結像レンズ32fおよび撮像素子32gを共用する。その合焦レンズ34eは、指標合焦機構34Dにより、レフ測定受光光学系34の光軸O4に沿って移動可能とされている。その指標合焦機構34Dは、制御部21(図2参照)の制御下で、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)にピントを合わせるべく合焦レンズ34eを適宜移動させる。
レフ測定受光光学系34では、レフ測定投影光学系33によって眼底Efに導かれ、かつ当該眼底Efで反射されたパターン反射光束を、対物レンズ31qにより集光し、ダイクロイックフィルター31pで反射した後にダイクロイックフィルター31nで反射して、ロータリープリズム33iへと進行させる。そして、レフ測定受光光学系34では、反射されたパターン反射光束を、ロータリープリズム33iを経て穴開きプリズム33hの穴部34aへと進行させて、この穴部34aを通過させる。レフ測定受光光学系34では、穴部34aを通過したパターン反射光束を、フィールドレンズ34bを経た後にミラー34cによって反射し、リレーレンズ34dを経て合焦レンズ34eへと進行させる。このとき、レフ測定受光光学系34では、パターン反射光束すなわちレフ測定用リング状指標の結像位置が撮像素子32g(その受光面)上となるように合焦レンズ34eの光軸O4上での位置が調整される。そして、レフ測定受光光学系34では、パターン反射光束を、その合焦レンズ34eを経た後にミラー34fによって反射し、ダイクロイックフィルター32eで反射することで、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)の主光軸O1上に進行させる。レフ測定受光光学系34では、結像レンズ32fにより撮像素子32g(その受光面)上に、パターン反射光束すなわちレフ測定用リング状指標を結像させる。その撮像素子32gは、取得した画像に基づく画像信号を制御部21(図2参照)に出力する。その制御部21は、入力された画像信号に基づいて、レフ測定用リング状指標の画像を表示部14(図1参照)に表示させる。このため、レフ測定受光光学系34では、撮像素子32g(その受光面)上にレフ測定用リング状指標の像を形成することができ、その画像データを撮像素子32gに取得させることができ、表示部14に当該レフ測定用リング状指標の画像を表示させることができる。
XYアライメント光投影光学系35は、XY方向検出用光源35aと集光レンズ35bとを有し、前眼部観察光学系32とハーフミラー32bを共用し、かつ視標投影光学系31とダイクロイックフィルター31pおよび対物レンズ31qを共用する。そのXY方向検出用光源35aは、XYアライメント指標光束を形成するスポット状の光源であり、LEDが用いられている。
このXYアライメント光投影光学系35では、XY方向検出用光源35aからのXYアライメント指標光束を、集光レンズ35bで集光した後にハーフミラー32bで反射することで、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)の主光軸O1上に進行させる。そして、XYアライメント光投影光学系35では、XYアライメント指標光束を、ダイクロイックフィルター31pを通して対物レンズ31qへと進行させ、その対物レンズ31qを経て被検眼Eの角膜Ecに向けてXYアライメント指標光束として投影する。その被検眼E(角膜Ec)に向けて投影されたXYアライメント指標光束は、その被検眼Eの角膜Ecにおいて反射され、前眼部観察光学系32により撮像素子32g上にXYアライメント指標像としての輝点像が投影される。XYアライメント光投影光学系35は、形成したXYアライメント指標像としての輝点像を用いることで、X−Y方向での位置の調節、いわゆるXYアライメントを可能とする。このため、検者は、XYアライメント指標像としての輝点像を設定されたアライメントマーク内に位置させるように装置本体部13を移動させることで、XYアライメントを行うことができる。また、オートアライメントモードの場合には、上述したように、アライメント判定回路23が、XYアライメント指標像の位置から被検眼Eに対する装置本体部13のX軸方向およびY軸方向のズレ量を求め、このズレ量に応じて制御部21がXドライバ12dおよびYドライバ12eを制御することで装置本体部13をX−Y方向へ移動させてXYアライメントを行う。
次に、上述した眼屈折力測定装置10を用いて、被検眼Eの眼屈折力(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)と被検眼Eの角膜Ecの形状とを測定する際の概略的な動作について説明する。なお、眼屈折力測定装置10における下記の動作は、制御部21(図2参照)の制御下で実行される。先ず、眼屈折力測定装置10の電源スイッチを投入し、表示部14に他覚測定を行う旨の操作を行う。すると、眼屈折力測定装置10では、前眼部観察光学系32において、前眼部照明光源32aを点灯させて、表示部14に前眼部(角膜Ec)の画像を表示させる。そして、眼屈折力測定装置10では、上述したように、ベース11に対して装置本体部13を適宜移動させて、上下方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)および前後方向(Z軸方向)のアライメントを行う。
すると、眼屈折力測定装置10では、レフ測定投影光学系33のレフ測定用光源33aを点灯して、眼屈折力測定(レフ測定)用リング状指標のパターン光束を、主光軸O1で被検眼Eの眼底Efに投影する。そして、眼屈折力測定装置10では、眼底Efで反射されたレフ測定用リング状指標を、レフ測定受光光学系34により撮像素子32g上に結像させる。その撮像素子32gは、取得した画像に基づく画像信号を制御部21(図2参照)に出力する。その制御部21は、入力された画像信号に基づいて、レフ測定用リング状指標の画像を表示部14(図1参照)に表示させる。そして、制御部21では、表示部14に表示させた画像(撮像素子32gからの画像信号)に基づいて、眼底Efに投影されたレフ測定用リング状指標の像から眼屈折力としての球面度数、円柱度数(乱視度数)、軸角度(乱視軸角度)を測定する。この眼屈折力としての球面度数、円柱度数(乱視度数)、軸角度(乱視軸角度)の測定の詳細については、公知であるのでその説明は省略する。
また、眼屈折力測定装置10では、レフ測定投影光学系33のケラトリング状指標投影光源36を点灯して、ケラトリング状指標を主光軸O1で被検眼Eの角膜Ecに投影する。そして、眼屈折力測定装置10では、被検眼Eの角膜Ecで反射されたケラトリング状指標を、前眼部観察光学系32により撮像素子32g上に結像させる。その撮像素子32gは、取得した画像に基づく画像信号を制御部21(図2参照)に出力する。その制御部21は、入力された画像信号に基づいて、ケラトリング状指標の画像を表示部14(図1参照)に表示させる。そして、制御部21では、表示部14に表示させた画像(撮像素子32gからの画像信号)に基づいて、角膜Ecに投影されたケラトリング状指標の像から角膜Ecの形状を測定する。この角膜Ecの形状の測定の詳細については、公知であるのでその説明は省略する。このため、眼屈折力測定装置10では、レフ測定投影光学系33のケラトリング状指標投影光源36が、眼屈折力を測定するための測定光とは異なる他の測定光を被検眼Eに向けて投影する眼特性測定投影光学系として機能し、前眼部観察光学系32が、他の測定光の被検眼Eからの反射光を受光する眼特性測定受光光学系として機能する。
このように、制御部21は、眼屈折力の測定を実行するとともに、角膜形状の測定を実行する。なお、制御部21は、演算結果等を記憶部(図示を略す)に適宜格納する。これにより、眼屈折力測定装置10では、被検眼Eの眼屈折力(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)と、被検眼Eの角膜Ecの形状と、を測定することができる。そして、眼屈折力測定装置10では、上記した動作を被検者の双方の眼に対して実行することにより、双方の眼の眼屈折力(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)と角膜Ecの形状とを測定することができる。このとき、眼屈折力測定装置10では、被検者が測定を実行している被検眼Eとは反対側の眼を覆ったり当該眼を瞑ったりすることなく、被検眼Eの上記した測定を行うことができる。
次に、本発明に係る実施例1の眼屈折力測定装置10の特徴的な構成について、主に図6から図13を用いて説明する。なお、図6は、他覚測定を実行した後であって、グリッドチャート31vを用いて継続呈示により自覚測定を行う場面における表示部14(表示面14a)での表示内容を示している。また、および図7は、他覚測定を実行した後であって、グリッドチャート31vを用いて瞬間呈示により自覚測定を行う場面における表示部14(表示面14a)での表示内容を示している。
この眼屈折力測定装置10では、上述したように、視標投影光学系31が被検眼Eに投影した自覚視標としてのターゲット光束を被検者に注視させることにより、当該自覚視標に応じた自覚測定を行うことができる。そして、眼屈折力測定装置10では、自覚視標としてのチャートとしてグリッドチャート31v(アムスラーチャート)(図4参照)を含む検眼用チャートを経たターゲット光束を被検者に注視させることができ、この検眼用チャートを用いて自覚測定(グリッドチャート31vの場合はグリッドチャートテスト)を行うことができる。
そして、眼屈折力測定装置10では、そのグリッドチャート31vを含む検眼用チャートを、被検眼E(被検者)に対して継続呈示させることと瞬間呈示させることとが可能とされている。その継続呈示とは、検眼用チャートを用いた自覚検査を行う際に、当該検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して呈示させたままとするものである。これに対して、瞬間呈示とは、検眼用チャートを用いた自覚検査を行う際に、当該検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して瞬間(瞬間呈示時間)だけ呈示させるものである。これは、以下のことによる。
一般に被検者(人間)は、被検眼Eに入る光を網膜(眼底)Ef上に結像させて像を形成し、その像に基づく神経信号を視神経により脳へと伝達する。ところが、脳は、その伝達された神経信号に基づく像をそのまま見えたものとして認識するのではなく、適宜補ってから見えたものとして認識する。ここで、検眼用チャートを被検者に注視させて行う自覚測定では、被検者が認識した検眼用チャートの見え方を確認する。このため、被検者が認識した検眼用チャートの見え方は、実際に眼に入る光から網膜(眼底)Ef上に形成された像の様子ではなく、その像が脳で適宜補われたものの様子である可能性が高い。このことは、例えば、グリッドチャートテスト(アムスラーチャートテスト)を行ったものとすると、実際に網膜(眼底)Ef上に形成された像では格子状のパターンが歪んでいたり一部が欠けていたり一部がぼやけている場合であっても、脳で適宜補われることで適切な格子状のパターンとして被検者が認識してしまうことが考えられる。このため、単に検眼用チャートを用いて自覚測定を行っても、被検眼の眼屈折力を正確に測定することができなくなってしまう虞がある。
このことから、本願発明の眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して瞬間(瞬間呈示時間)だけ呈示させることにより、検眼用チャートを用いた自覚測定(瞬間呈示による自覚測定)を行うことが可能とされている。これは、上記した脳における伝達された神経信号に基づく像を適宜補ってから見えたものとして認識する作用は、所定の時間を超えて一定の像を見続けた場合に起こるものと考えられることによる。このため、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して瞬間だけ呈示させた場合には、上記したような伝達された神経信号に基づく像を脳が適宜補ってから認識することができなくなり、網膜(眼底)Ef上に形成された像をそのまま認識することとなる。このことから、本願発明の眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して呈示する瞬間呈示時間を、伝達された神経信号に基づく像を脳が適宜補ってから認識する作用を生じさせない時間に設定する。このため、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して瞬間(瞬間呈示時間)だけ呈示させて自覚測定を行うことにより、網膜(眼底)Ef上に形成された像の様子を把握することが可能となる。その瞬間呈示時間は、実施例1では、補ってから認識する作用を生じさせない時間の好適な例として、初期設定において0.25秒に設定しているとともに、後述するように下限を0.01秒とし上限を2.00秒として調整可能としている。これにより、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ被検眼E(被検者)に呈示して自覚測定を行うことで、脳によって補われていない当該検眼用チャートに基づく像が網膜(眼底)Ef上に形成された様子を確認することができる。このため、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31vを含む検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ用いて自覚検査を行うことで、正確に被検眼の眼屈折力を測定(検眼用チャートに応じた測定)することができる。
また、本願発明の眼屈折力測定装置10では、上述したように、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して呈示し続けること(継続呈示)により、検眼用チャートを用いた自覚測定(継続呈示による自覚測定)を行うことが可能とされている。これは、以下のことによる。従来の眼屈折力測定装置では、例えば、検眼用チャートの一例としての視力チャート31w(図3参照)を用いた自覚測定において、その視力チャート31wを被検眼E(被検者)に呈示し続けて見え方を確認している。このため、検者によっては、従来通りのやり方を好む者がいることが考えられる。このことから、本願発明の眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを用いて継続呈示により自覚測定を行うことを可能としている。そして、眼屈折力測定装置10では、後述する呈示切替記号45(図6および図7参照)により、グリッドチャート31vを含む検眼用チャートを被検眼E(被検者)に対して継続呈示させることと瞬間呈示させることとを切り替えることが可能とされている。
これに伴って、眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31の光軸O2´上に表示方向光源31yが設けられるとともに、応答部17(図2参照)が設けられている。その表示方向光源31yは、検眼用チャートを呈示する位置を、被検眼E(被検者)に示すための輝点を形成するものである。表示方向光源31yは、実施例1では、被検眼E(被検者)に呈示する検眼用チャートにおける中心位置(中心注視点D1(図4参照))に相当する位置に輝点を形成する。これにより、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを呈示する前であっても、表示方向光源31yにより、呈示する検眼用チャートの中心位置(中心注視点D1(図4参照))に相当する位置に輝点を形成することができる。このため、中心注視点D1に相当する位置に形成する輝点は、呈示位置記号として機能する。
加えて、実施例1の眼屈折力測定装置10では、表示方向光源31yを用いて、グリッドチャート31vにおける四隅(周辺注視点D2〜D5(図4参照))に相当する位置にも輝点を形成することが可能とされている。これは、眼屈折力測定装置10では、後述するように、検眼用チャートの一例としてのグリッドチャート31vにおける四隅(周辺注視点D2〜D5(図4参照))を注視させる場面があることによる。このため、本願発明の眼屈折力測定装置10では、表示方向光源31yにより、グリッドチャート31vにおける四隅(周辺注視点D2〜D5(図4参照))に相当する位置にも輝点を形成することが可能とされている。このため、周辺注視点D2〜D5に相当する位置に形成する輝点は、呈示位置記号として機能する。このような四隅に相当する位置の輝点の形成は、実施例1では、図示は略すが各輝点を形成すべく複数の表示方向光源31yを所定の位置に設けることにより行っている。なお、四隅に相当する位置の輝点の形成するものであれば、例えば、単一の表示方向光源31yと遮光板とを設けて構成するものであってもよく、他の方法であってもよく、実施例1の構成に限定するものではない。また、四隅に相当する位置の輝点の形成するものであれば、表示方向光源31yの位置に替えて他の位置に光源を設ける構成であってもよく、実施例1の構成に限定するものではない。そして、他の光学系に光源を設けた場合、当該光源を設けた光学系も視標呈示光学系として機能する。
その表示方向光源31yは、瞬間呈示により自覚測定を行う際すなわち検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ呈示すべく視標光源31aが点灯される際、その視標光源31aの点灯に先だって制御部21(図2参照)の制御下で点灯される。この点灯は、継続的に行われるものであってもよく、断続的に行われる(点滅される)ものであってもよい。これにより、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを呈示する前であっても、表示方向光源31yにより、呈示するグリッドチャート31vにおける中心位置(中心注視点D1(図4参照))に相当する位置と、その四隅(周辺注視点D2〜D5(図4参照))に相当する各位置と、に呈示位置記号としての各輝点を形成することができる。
応答部17は、図2に示すように、検眼用チャートを用いた自覚測定において、その自覚測定における応答操作のため、すなわち当該検眼用チャートに対する見え方を被検者が検者に伝えるために設けられている。この応答部17は、実施例1では、本体部に操作レバーが設けられて構成されており、制御部21に接続されている。応答部17では、その操作レバーが、本体部に対して押し込む操作が可能とされるとともに、本体部に対して十字方向へと倒す操作が可能とされている。そして、制御部21は、上述したように、応答部17に為された応答操作に応じた情報を、表示部14(その表示面14a)に表示させて報知する。その制御部21は、応答部17において操作レバーへの押し込む操作の有無を判断することにより、被検者がON状態としたかOFF状態としたかを判断することができる。このことは、例えば、グリッドチャート31vを用いた自覚測定において、格子状のパターンが歪んでいたり一部が欠けていたり一部がぼやけている場合に被検者が応答部17を押し込む操作によりON状態とすることで、そのような状態であることを検者が迅速に確認することができる。また、制御部21(図2参照)は、応答部17において操作レバーへの倒す操作の有無およびその方向を判断することにより、被検者がいずれの方向に倒したか倒していないかを判断することができる。このことは、例えば、視力チャート31wを用いた自覚測定において、当該視力チャート31wが示す方向を被検者が応答部17を用いて示すことで、被検者の示した方向を検者が迅速に確認することができる。なお、応答部17は、実施例1では、グリッドチャート31vおよび視力チャート31wを用いた自覚測定における応答操作に対応する構成とされているが、搭載する検眼用チャートに応じて行うことのできる応答操作の態様を適宜設定するものとする。
また、眼屈折力測定装置10では、制御部21(図2参照)の制御下で、表示部14の表示面14aに、図6および図7に示すように、被検眼Eの前眼部(前眼部像E´)と他覚測定による測定結果41とに加えて、表示部14におけるタッチパネルの機能を利用して触れることによる選択(切替)操作を可能するアイコンとしての各種記号を表示させる。その測定結果41は、実施例1では、自覚測定により測定した眼屈折力に関する各数値や、他覚測定により測定した眼屈折力に関する各数値を示している。測定結果41は、この図6および図7に示す例では、左右の双方に1つずつ表示されているが、正面視して左側が右側の被検眼Eの測定結果を示しており、正面視して右側が左側の被検眼Eの測定結果を示している。
上記した表示させる各種記号としては、実施例1では、他覚自覚切替記号42と、測定モード選択記号43と、チャート切替記号44と、呈示切替記号45と、結果表示記号46と、印刷実行記号47と、が設定されている。
他覚自覚切替記号42は、上述した他覚測定を行うことと、自覚測定を行うことと、を切り替えるものである。この他覚自覚切替記号42は、この図6および図7に示す場面では、自覚測定を行っている場面であることから、触れられることにより、自覚測定から他覚測定へと切り替えることとなる。
測定モード選択記号43は、他覚測定において、眼屈折力を測定するレフモードと、角膜Ecの形状を測定するケラトモードと、双方を測定するレフ・ケラトモードと、の中からいずれかを選択するものである。この測定モード選択記号43は、他覚測定において実行する測定を選択するものであることから、この図6および図7に示す場面では、特に機能を有するものではない。
チャート切替記号44は、被検眼Eに投影する自覚視標を切り替えるものである。実施例1の眼屈折力測定装置10では、上述したように、自覚視標としてグリッドチャート31v(アムスラーチャート)(図3および図4参照)と視力チャート31w(図3参照)とが用意されていることから、グリッドチャート31vと視力チャート31wとを切り替えるものとなる。そして、チャート切替記号44は、この図6および図7に示す場面では、グリッドチャート31vが選択されていることを示しており、触れられることによりグリッドチャート31vから視力チャート31wへと切り替えることとなる。
呈示切替記号45は、検眼用チャートを用いた自覚測定を、瞬間呈示により行うのか継続呈示により行うのか、を選択するものである。この呈示切替記号45は、実施例1では、継続呈示により自覚測定を行う場面では図6に示す表示形態となり、触れられることにより瞬間呈示による自覚測定に切り替えることとなる。また、呈示切替記号45は、実施例1では、瞬間呈示により自覚測定を行う場面では図7に示す表示形態となり、触れられることにより継続呈示による自覚測定に切り替えることとなる。
結果表示記号46は、他覚測定による測定結果41の表示の有無を選択するものである。この結果表示記号46は、この図6および図7に示す場面では、測定結果41を表示させていることから、触れられることにより測定結果41の表示を止めることとなる。
印刷実行記号47は、表示部14の表示面14aに表示させている画面、もしくは測定結果41として表示させている表示内容(測定結果)を、印刷して出力させるものである。
加えて、眼屈折力測定装置10では、図7に示すように、制御部21(図2参照)の制御下で、表示部14の表示面14aに、表示開始記号48とグリッド距離表示記号49と設定記号50と、を表示させる。その表示開始記号48は、検眼用チャートの瞬間呈示を開始させるものである。このため、表示開始記号48は、瞬間呈示開始操作部として機能する。眼屈折力測定装置10では、瞬間呈示により自覚測定を行う場面において、表示開始記号48が触られるまでは制御部21(図2参照)が視標光源31aを点灯させない。そして、眼屈折力測定装置10では、表示開始記号48が触られると、制御部21(図2参照)が視標光源31aを点灯させ、上記した瞬間呈示時間が経過すると視標光源31aを消灯させる。これにより、眼屈折力測定装置10では、表示開始記号48が触られた瞬間から瞬間呈示時間が経過するまでの間だけ、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に呈示することができる。この表示開始記号48は、検眼用チャートの瞬間呈示を開始するために用いられるものであることから、瞬間呈示により自覚測定を行う場面でのみ表示面14aに表示され、継続呈示により自覚測定を行う場面(図6参照)では表示面14aに表示されない。
グリッド距離表示記号49は、検眼用チャートとしてのグリッドチャート31vを用いて自覚測定(グリッドチャートテスト)を行う際に、その呈示したグリッドチャート31vの被検眼Eに対する距離を示すものである。このグリッド距離表示記号49は、図6および図7に示す場面では、30cmの距離となる位置に設けられたものと等しい状態としてグリッドチャート31vを被検眼Eに呈示していることを示している。このグリッド距離表示記号49は、グリッドチャート31vの被検眼Eに対する距離を示すものであることから、グリッドチャート31vを用いて自覚測定(グリッドチャートテスト)を行う場面であれば継続呈示か瞬間呈示かに拘わらず表示面14aに表示される(図6および図7参照)。
設定記号50は、眼屈折力測定装置10における基本設定や、各種の測定を実行する際の各種の設定を行うものである。このため、設定記号50は、どのような場面であっても表示面14aに表示されるものであり、グリッドチャート31vを用いて自覚測定(グリッドチャートテスト)を行う場面においても継続呈示か瞬間呈示かに拘わらず表示面14aに表示される(図6および図7参照)。この設定記号50は、例えば、各種の測定モードが選択される前の基本画面が表示されている場面において触れられると、制御部21(図2参照)が表示面14aに表示させる画面を眼屈折力測定装置10における基本設定を行うための画面に切り替える。この基本設定は、被検者(患者)が過去に行った測定に関する情報を読み込んで、各測定における各種の設定に反映させることにより行うものとすることができる。このような測定に関する情報としては、検眼用チャートを用いた自覚測定を例にすると、瞬間呈示のための瞬間呈示時間や、グリッドチャート31vを用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)において歪みや欠けやぼやけが生じた位置(どこを注視している際に見え方に異常を感じたか)や、視力チャート31wを用いた自覚測定において測定した視力等があげられる。また、設定記号50は、例えば、各種の測定モードを実行させるための画面が表示されている場面において触れられると、制御部21(図2参照)が当該測定モードにおける各種の設定を行うための設定画面に切り替える。そして、設定記号50(その後の設定画面)では、検眼用チャートを用いて瞬間呈示により自覚測定を行う際には、その瞬間呈示において検眼用チャートを呈示させる瞬間呈示時間の設定を可能とする。その瞬間呈示時間は、実施例1では、初期設定においては上述したように0.25秒とされており、そこから任意の値に増減させることが可能とされている。瞬間呈示時間の設定は、実施例1では一例として、下限(最も短い時間)を0.01秒とし、上限(最も長い時間)を2.00秒としている。この下限(最も短い時間)は、人間が認識することのできる最低時間に設定することが望ましく、実施例1に限定するものではない。また、上限(最も長い時間)は、脳における伝達された神経信号に基づく像を適宜補ってから見えたものとして認識する作用が生じることを防止することのできる最も長い時間に設定することが望ましく、実施例1に限定するものではない。このため、実施例1では、設定記号50(その後の設定画面)が、瞬間呈示における瞬間呈示時間を設定するための瞬間呈示時間設定部として機能する。
さらに、眼屈折力測定装置10では、図6および図7に示すように、制御部21(図2参照)の制御下で、表示部14の表示面14aに、グリッドチャート31vを用いた自覚測定としてのグリッドチャートテストを補助するグリッド補助記号51を表示させる。そのグリッド補助記号51は、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を模した格子状の記号の上に、当該グリッドチャート31v(アムスラーチャート)に設けられた5つの注視点(D1〜D5(図4参照))に対応して5つのチェックマーク51a〜51eが設けられて構成されている。そのチェックマーク51aは中心注視点D1に対応し、チェックマーク51bは周辺注視点D2に対応し、チェックマーク51cは周辺注視点D3に対応し、チェックマーク51dは周辺注視点D4に対応し、チェックマーク51eは周辺注視点D5に対応している。この各チェックマーク51a〜51eは、触れられたか否かの識別を可能とすべく触れられると表示形態を変化させるものとされており、実施例1では色が変化するものとされている。
次に、本発明に係る実施例1の眼屈折力測定装置10の制御部21において実行される、検眼用チャートを用いた自覚測定を行う際の自覚測定実行処理について、図8を用いて説明する。その図8は、実施例1における制御部21にて実行される自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)を示すフローチャートである。この自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)は、制御部21の内蔵する記憶部21a(図2参照)もしくは当該制御部21の外部に設けられた記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、制御部21が実行する。自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)は、基本的には瞬間呈示により検眼用チャートを用いた自覚測定を行うために実行されるもの(検眼用チャートを用いた自覚測定方法)であり、実施例1では瞬間呈示により行う場合と継続呈示により行う場合との双方を行うために実行される。
以下では、この自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)としての図8のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この図8のフローチャートは、検眼用チャートを用いて自覚測定を行う場面を示している。このため、図8のフローチャートは、先ず、表示部14において、他覚自覚切替記号42に触れることにより自覚測定を行う旨の操作が行われることにより開始される。
ステップS1では、用いる検眼用チャートを設定して、ステップS2へ進む。このステップS1では、いずれの検眼用チャートが選択されたのかを判断し、視標切替部31dの切替駆動部31sを駆動してターレット部31rの回転姿勢を適宜変化させることにより、選択された検眼用チャートを視標投影光学系31の光軸O2上に位置させる。このいずれの検眼用チャートが選択されたのかの判断は、実施例1では、表示部14のチャート切替記号44(図6および図7参照)への操作に基づいて行う。
ステップS2では、ステップS1での検眼用チャートの設定に続き、継続呈示が選択されたか否かを判断し、Yesの場合はステップS3へ進み、Noの場合はステップS5へ進む。このステップS2では、継続呈示が選択されたか否か、すなわち検眼用チャートを用いた自覚測定を継続呈示により行うことが選択されたか当該自覚測定を瞬間呈示により行うことが選択されたかを判断する。この判断は、実施例1では、表示部14の呈示切替記号45(図6および図7参照)への操作に基づいて行う。そして、ステップS2では、継続呈示により行うことが選択された場合にはステップS3へ進み、瞬間呈示により行うことが選択された場合にはステップS5へ進む。
ステップS3では、ステップS2での継続呈示により行うことが選択されたとの判断に続き、検眼用チャートを用いた自覚測定を実行するための準備動作を実行して、ステップS4へ進む。このステップS3では、上述した角膜Ecの形状や被検眼Eの眼屈折力を測定するときと同様に、被検眼Eに対する装置本体部13のアライメントを行う。なお、このアライメントは、検眼用チャートを用いた自覚測定が被検眼Eの眼屈折力や角膜Ecの形状の測定の後に行われるものである場合、既に実行されているので行わないものとしてもよい。また、ステップS3では、先に当該被検眼Eの眼屈折力の測定を行っている場合、その測定結果を用いて、視標合焦機構31Dにより合焦レンズ31hを視標投影光学系31の光軸O2に沿って適宜移動させてピント調節を行う。これにより、ステップS3では、検眼用チャートを、被検眼Eにおいて遠くを見るときに適した度数となる位置、または被検眼Eにおいて近くを見るときに適した度数となる位置に疑似的に移動する。加えて、ステップS3では、先に視力チャート31wを用いて自覚測定により視力検査を行っている場合、その測定結果を用いて、視標合焦機構31Dにより合焦レンズ31hを視標投影光学系31の光軸O2に沿って適宜移動させてピント調節を行う。
ステップS4では、ステップS3での自覚測定のための準備動作の実行に続き、検眼用チャートを被検眼E(被検者)に継続呈示して、自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)を終了する。このステップS4では、ステップS1で選択された検眼用チャートを被検眼E(被検者)に継続呈示する、すなわち検眼用チャートを用いた自覚測定が終了するまで当該検眼用チャートを被検眼E(被検者)に呈示する。この検眼用チャートの呈示は、実施例1では、視標投影光学系31において、視標光源31aを点灯させて、光軸O2上に位置させた検眼用チャートとしてのターゲット光束を被検眼Eに投影することで、その検眼用チャートを主光軸O1上で被検眼Eに呈示(投影)することにより行う。
ステップS5では、ステップS2での瞬間呈示により行うことが選択されたとの判断に続き、検眼用チャートを用いた自覚測定を実行するための準備動作を実行して、ステップS6へ進む。このステップS5における動作は、瞬間呈示により検眼用チャートを用いた自覚測定を行う場合であっても、継続呈示により行う場合と同様であるので、ステップS3と同様に、被検眼Eに対する装置本体部13のアライメント、検眼用チャートを光軸O2上に位置させること、その検眼用チャートに対するピント調節、を行う。これに加えて、ステップS5では、視標投影光学系31において、表示方向光源31yを点灯させて、いずれかの注視点(図4の符号D1からD5参照)に相当する位置に呈示位置記号としての輝点を形成する。この輝点を形成する位置は、例えば、検眼用チャートとしてグリッドチャート31vを用いる場合を例にすると、後述するようにグリッドチャート31vにおいて注視させたい注視点(D1からD5)に合わせるものとする。この輝点を形成する位置の選択は、例えば、検眼用チャートとしてグリッドチャート31vを用いる場合を例にすると、グリッド補助記号51における各チェックマーク51a〜51eに選択点灯の機能を持たせるものとしてもよく、設定記号50を用いて瞬間呈示時間を設定する際に併せて設定するものとしてもよい。
ステップS6では、ステップS5での自覚測定のための準備動作の実行に続き、表示部14において表示開始記号48を表示させる。このステップS6では、ステップS5において瞬間呈示により検眼用チャートを用いた自覚測定を行うための準備動作が終わったことから、検眼用チャートの瞬間呈示を開始するための表示開始記号48(瞬間呈示開始操作部)を表示部14(その表示面14a)に表示させる(図7参照)。
ステップS7では、ステップS6での表示開始記号48を表示させることに続き、検眼用チャートの瞬間呈示を開始する旨の操作が為されたか否かを判断し、Yesの場合はステップS8へ進み、Noの場合はステップS7を繰り返す。このステップS7では、瞬間呈示により検眼用チャートを用いた自覚測定を行うべく、その瞬間呈示を開始する旨の操作が為されたか否かを判断する。この判断は、実施例1では、表示部14に表示させた表示開始記号48に操作が為されたか否かを判断することにより行う。このステップS7では、表示開始記号48(図7参照)に操作が為されるまで当該判断を繰り返し、表示開始記号48に操作が為されると瞬間呈示を開始すべくステップS8へ進む。
ステップS8では、ステップS7での瞬間呈示を開始する旨の操作が為されたとの判断に続き、検眼用チャートの被検眼E(被検者)への呈示を開始して、ステップS9へ進む。このステップS8では、ステップS1で選択された検眼用チャートの被検眼E(被検者)への呈示(瞬間呈示)を開始する。この検眼用チャートの呈示は、実施例1では、視標投影光学系31において、視標光源31aを点灯させて光軸O2上に位置させた検眼用チャートとしてのターゲット光束を被検眼Eに投影し、その検眼用チャートを主光軸O1上で被検眼Eに呈示(投影)することにより行う。ステップS8では、視標光源31aを点灯する際、表示方向光源31yによる輝点の形成を停止するものとしてもよく、継続するものとしてもよい。輝点の形成を停止すると、輝点により検眼用チャートの確認が邪魔されることを防止することができ、輝点の形成を継続すると、輝点の位置を注視させつつ検眼用チャートを確認することを容易なものとすることができる。このため、輝点の形成の継続の有無は、検眼用チャートの種類や確認の態様に応じて適宜設定するものとする。
ステップS9では、ステップS8での検眼用チャートの呈示を開始することに続き、その時点から瞬間呈示時間が経ったか否かを判断し、Yesの場合はステップS10へ進み、Noの場合はステップS9を繰り返す。このステップS9では、ステップS8での検眼用チャートの呈示を開始した時点から瞬間呈示時間が経ったか否かを判断することにより、検眼用チャートの呈示が瞬間呈示時間に到ったか否かを判断する。このステップS9では、検眼用チャートの呈示を開始した時点(ステップS8)から瞬間呈示時間が経つ(経過する)まで当該判断を繰り返し、瞬間呈示時間が経つと瞬間呈示とすべくステップS10へ進む。
ステップS10では、ステップS9での検眼用チャートの呈示した時点から瞬間呈示時間が経ったとの判断に続き、検眼用チャートの被検眼E(被検者)への呈示を終了して、自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)を終了する。このステップS10では、ステップS9において検眼用チャートの呈示が瞬間呈示時間に到達したと判断したことから、検眼用チャートの被検眼E(被検者)への呈示を終了する。この検眼用チャートの呈示の終了は、実施例1では、視標投影光学系31の視標光源31aを消灯させることにより行う。
次に、本発明に係る実施例1の眼屈折力測定装置10により、検眼用チャートの一例としてのグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いて自覚測定(グリッドチャートテスト)を行う際の動作について説明する。この眼屈折力測定装置10における下記の動作は、制御部21(図2参照)の制御下で実行される。なお、下記の動作では、グリッドチャート31vを用いた自覚測定の例を示すが、視力チャート31wを用いて自覚測定を行う場合であっても基本的な動作は同様である。
先ず、表示部14において、他覚自覚切替記号42に触れることにより自覚測定を行う旨の操作が為されると、図8のフローチャートの自覚測定実行処理を開始する。その後、表示部14において、チャート切替記号44に触れることによりグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いる旨の操作が為されると、図8のフローチャートにおいて、ステップS1へと進むことにより、視標切替部31dの切替駆動部31sを駆動してターレット部31rの回転姿勢を適宜変化させてグリッドチャート31vを視標投影光学系31の光軸O2上に位置させる。その後、表示部14において、呈示切替記号45によりグリッドチャート31vを用いた自覚測定を継続呈示により行う旨の操作が為されると、図8のフローチャートにおいて、ステップS2→ステップS3へと進むことにより、被検眼Eに対する装置本体部13のアライメント、グリッドチャート31vに対するピント調節、を行う。そして、図8のフローチャートにおいて、ステップS4へと進むことにより、視標投影光学系31の視標光源31aを点灯させて光軸O2上に位置させたグリッドチャート31vとしてのターゲット光束を被検眼Eに投影し、そのグリッドチャート31vを主光軸O1上で被検眼Eに継続呈示(投影)する。
このグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた継続呈示による自覚測定すなわちグリッドチャートテストでは、格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりしている場合、注視している被検眼Eに網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)を含めた疾患もしくはその周辺の疾患の可能性があるものと判断する。そして、被検者は、格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりしている場合、応答部17(図2参照)の操作レバーを押し込む操作によりON状態とすることで、その旨を検者に伝える。検者は、その応答部17がON状態とされた場合には、被検眼Eに網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)を含めた疾患もしくはその周辺の疾患の可能性があるものと判断する。
また、表示部14において、呈示切替記号45によりグリッドチャート31vを用いた自覚測定を瞬間呈示により行う旨の操作が為されると、図8のフローチャートにおいて、ステップS2→ステップS5→ステップS6へと進むことにより、被検眼Eに対する装置本体部13のアライメント、グリッドチャート31vに対するピント調節、呈示位置記号の呈示、を行って、表示部14に表示開始記号48(瞬間呈示開始操作部)を表示させる(図7参照)。そして、その表示開始記号48に操作が為されると、図8のフローチャートにおいて、ステップS7→ステップS8へと進むことにより、視標投影光学系31の視標光源31aを点灯させて光軸O2上に位置させたグリッドチャート31vとしてのターゲット光束を被検眼Eに投影し、そのグリッドチャート31vを主光軸O1上で被検眼Eに呈示(投影)して瞬間呈示を開始する。そして、そのグリッドチャート31vの呈示が瞬間呈示時間に到達すると、図8のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10へと進むことにより、視標投影光学系31の視標光源31aを消灯させてグリッドチャート31vの呈示(瞬間呈示)を終了する。このため、図8のフローチャートでは、ステップS8からステップS9を経てステップS10に至る工程が、本願発明の検眼用チャートを用いた自覚測定方法として機能し、図8のフローチャートで示す自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)が本願発明の検眼用チャートを用いた自覚測定方法を実行する一例となる。
このグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた瞬間呈示による自覚測定(グリッドチャートテスト)では、継続呈示による場合と同様に、格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりしている場合、被検者は、応答部17(図2参照)の操作レバーを押し込む操作によりON状態とすることで、その旨を検者に伝える。検者は、その応答部17がON状態とされた場合には、被検眼Eに網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)を含めた疾患もしくはその周辺の疾患の可能性があるものと判断する。
このように、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートの一例としてのグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)を、瞬間呈示と継続呈示とにより行うことができる。ここで、瞬間呈示であっても継続呈示であっても、グリッドチャート31vの見え方による被検眼Eに網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)を含めた疾患もしくはその周辺の疾患の可能性があるものとの判断が変わりなく行われる。この瞬間呈示と継続呈示との差異は、上述したように脳において伝達された神経信号に基づく像を適宜補うことの影響を無くすことができるか否かとなる。
ここで、眼屈折力測定装置10では、瞬間呈示であるか継続呈示であるかに拘わらず、図9に示すように、グリッドチャート31vのうち中心から一定の範囲のみを被検者に見せることとなる。これは、以下のことによる。視標投影光学系31では、上述したように、グリッドチャート31v(図4参照)を視標投影光学系31の光軸O2上に位置させた場合、当該グリッドチャート31vが所定の大きさ寸法で被検眼Eから30〜40cm(実施例1では30cm)の距離となる位置に設けられたものと等しい状態としている。すると、視標投影光学系31では、被検眼Eからの視野Vfに制限が生じてしまい、グリッドチャート31v全体を被検者に見せる(認識させる)ことが困難となってしまう。このため、被検者は、眼屈折力測定装置10の視標投影光学系31によりグリッドチャート31v(アムスラーチャート)が呈示されると、そのグリッドチャート31vのうち中心から一定の範囲のみが見えることとなる。そして、このグリッドチャート31vのうち中心から一定の範囲(視野Vf)は、中心注視点D1を注視した被検眼Eにおける網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲としている。この視野Vfは、図9に示す例では、円で囲まれてグリッドチャート31vを実線で示した領域としている。なお、この図9は、理解容易のために、眼屈折力測定装置10を用いてグリッドチャート31vが見える様子を模式的示すものであり、必ずしも実際に見える様子と合致するものではない。加えて、グリッドチャート31vでは、複数の周辺注視点(D2〜D5)が、視標投影光学系31における視野Vfの周縁部に位置されている。そして、被検眼E(被検者)は、当該視野Vfの外方を真っ暗闇(図9ではハッチを付して示している)として認識する。
ここで、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定すなわちグリッドチャートテストでは、格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりしている場合、注視している被検眼Eに網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)を含めた疾患もしくはその周辺の疾患の可能性があるものと判断する。このグリッドチャートテストでは、歪みや欠けやぼやけは視界の中央近傍、すなわち被検眼Eにおける網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に生じることが多い。このことから、グリッドチャートテストでは、被検者がグリッドチャート31vのうち中心から一定の範囲(網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲)のみが見えるものであっても、この判断に支障が出る可能性は極めて低いものと考えられる。
このため、眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31によりグリッドチャート31v(アムスラーチャート)における網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲を被検眼Eに呈示することができるので、中心注視点D1を固視目標として注視させた状態で上記した見え方の確認を行うことで、被検眼Eにおける網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に疾患の可能性があるか否かの確認を行うことができる。
加えて、本発明に係る実施例1の眼屈折力測定装置10では、中心から一定の範囲以外の範囲での上記した見え方の確認を可能とするために、グリッドチャート31vに中心位置の中心注視点D1を取り巻くように4つの周辺注視点(D2〜D5)を設けている。このため、グリッドチャート31vを用いたグリッドチャートテストでは、各周辺注視点(D2〜D5)をそれぞれ固視目標として注視させた状態で、格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりしているかを、被検者に確認する。これにより、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31vのうち中心から一定の範囲のみしか見えなくても、当該グリッドチャート31v全体を見せた場合と同様の判断が可能となる。これは、以下のことによる。
先ず、4つの周辺注視点(D2〜D5)は、上述したように、中心注視点D1(中心位置)を含む縦線および横線でグリッドチャート31vを4分割した各分割領域の中心位置に設けられている。そして、上述したように各周辺注視点(D2〜D5)が視標投影光学系31における視野Vfの周縁部に位置されていることから、周辺注視点D2は、図10(a)に示すように、視野Vfの内方において、左上の周縁部に位置することとなる。このことから、周辺注視点D2を固視目標として注視させて上記した見え方の確認を行うと、周辺注視点D2に対して右下に視野Vfの内方に位置するグリッドチャート31vが存在することとなる。その視野Vfを基準として、当該視野Vfの内方における周辺注視点D2の位置に中心注視点D1を位置させることで、グリッドチャート31vを用いて中心注視点D1を注視させた状態に置き換えることができる。このため、周辺注視点D2を注視させた状態は、図10(b)に示すように、グリッドチャート31vを用いて中心注視点D1を注視させた状態において、視野Vfを当該グリッドチャート31vに対して右下へと変位させた場合と等しいものと見做すことができる。そのときの視野Vfの内方には、グリッドチャート31v全体のうちの右下の分割領域(ハッチを付して示した箇所)の全体が位置することとなる。よって、周辺注視点D2を注視させて上記した見え方の確認を行うことで、中心注視点D1を注視させた際のグリッドチャート31v全体のうちの右下の分割領域(それを含む視野Vf内)における見え方の確認を行ったことと見做すことができる。これにより、被検眼Eにおける右下の領域(被検眼Eを正面から見ると左下の領域)の部位において疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
同様に、図11(a)に示すように周辺注視点D3を固視目標として注視させて上記した見え方の確認を行うことで、図11(b)に示すように中心注視点D1を注視させた際のグリッドチャート31v全体のうちの左下の分割領域(それを含む視野Vf内)における見え方の確認を行ったことと見做すことができる。これにより、被検眼Eにおける左下の領域(被検眼Eを正面から見ると右下の領域)の部位において疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
同様に、図12(a)に示すように周辺注視点D4を固視目標として注視させて上記した見え方の確認を行うことで、図12(b)に示すように中心注視点D1を注視させた際のグリッドチャート31v全体のうちの右上の分割領域(それを含む視野Vf内)における見え方の確認を行ったことと見做すことができる。これにより、被検眼Eにおける右上の領域(被検眼Eを正面から見ると左上の領域)の部位において疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
同様に、図13(a)に示すように周辺注視点D5を固視目標として注視させて上記した見え方の確認を行うことで、図13(b)に示すように中心注視点D1を注視させた際のグリッドチャート31v全体のうちの左上の分割領域(それを含む視野Vf内)における見え方の確認を行ったことと見做すことができる。これにより、被検眼Eにおける左上の領域(被検眼Eを正面から見ると右上の領域)の部位において疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
このため、眼屈折力測定装置10では、4つの周辺注視点(D2〜D5)をそれぞれ固視目標として注視させて見え方の確認を行うことにより、グリッドチャート31v全体を見せつつ中心注視点D1を注視させて見え方の確認を行った場合と同様の判断を可能とすることができる。これにより、被検眼Eにおける全領域において疾患の可能性があるか否かを確認することができるとともに、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるか否かを個別に確認することができる。なお、上記した固視目標として注視させる各注視点(D1〜D5)の変更は、検者の指示により行われる。すなわち、検者が、いずれか1つの注視点(D1〜D5)を注視するように被検者に指示し、当該被検者が指示された注視点(D1〜D5)を注視することにより、上記した変更が行われる。このとき、眼屈折力測定装置10では、検者により操作が可能な注視点切替手段を設けることで、現在行っている自覚測定(グリッドチャートテスト)がいずれの注視点(D1〜D5)を注視させているものであるのかを認識するものとすることができる。このような構成とする場合であって、いずれか1つの注視点(D1〜D5)を点灯させる場合には、注視点切替手段への操作に基づいて対応する光源を点灯させつつ他の光源を消灯させるものとする機能を持たせることが望ましい。このような構成とすると、眼屈折力測定装置10では、被検者による見え方に異常を感じた際の応答部17への応答操作が、いずれの注視点(D1〜D5)を注視させている際に為されたものかを自動的に判断することが可能となり、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるかの把握を容易なものとすることができる。
この眼屈折力測定装置10では、被検者に中心注視点D1を注視させた結果、当該被検者が見え方に異常を感じた場合(格子状のパターンが歪んで見えたり一部が欠けて見えたり一部がぼやけて見えたりした場合(応答部17(図2参照)の操作レバーの押し込む操作によりON状態とされた場合))、検者はグリッド補助記号51におけるチェックマーク51a(図6参照)に触れて表示形態を変化させる。同様に、被検者が見え方に異常を感じた場合、周辺注視点D2を注視させた場面ではチェックマーク51b(図6参照)、周辺注視点D3を注視させた場面ではチェックマーク51c(図6参照)、周辺注視点D4を注視させた場面ではチェックマーク51d(図6参照)、周辺注視点D5を注視させた場面ではチェックマーク51e(図6参照)、にそれぞれ触れて表示形態を変化させる。これにより、眼屈折力測定装置10では、各チェックマーク(51a〜51e)における表示形態が変化されていると、対応する注視点(D1〜D5)を固視目標として注視させて上記した見え方の確認を行った際に見え方に異常を感じたことを示すものとすることができる。このため、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v全体のうちのいずれの領域(中心近傍もしくは各分割領域)で、被検者が見え方に異常を感じたかの確認を容易なものとすることができ、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるとの確認を容易なものとすることができる。
眼屈折力測定装置10では、上記した他覚測定(グリッドチャートテスト)を両眼に対して行うことにより、被検者の両眼におけるどの部位に疾患の可能性があるとの確認を行うことができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31vを用いたグリッドチャートテスト(自覚測定)を左右の被検眼Eに対して実行することができる。
本発明に係る検眼装置の一実施例としての実施例1の眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ被検眼Eに呈示して自覚測定を行うことができる。このため、眼屈折力測定装置10では、脳における伝達された神経信号に基づく像を適宜補ってから見えたものとして認識することを防止することができ、網膜(眼底)Ef上に形成された像をそのまま認識した検眼用チャートの見え方を確認することができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、より適切に検眼用チャートの種類に応じた自覚測定を行うことができる。
また、眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31により、前眼部観察光学系32(眼屈折力測定装置10の光学的な構成)における主光軸O1上で、検眼用チャートを被検眼Eに呈示(投影)する。そして、眼屈折力測定装置10では、その視標投影光学系31の視標光源31aを瞬間呈示時間だけ点灯させることにより、検眼用チャートの瞬間呈示による自覚測定を行う。このため、眼屈折力測定装置10では、簡易な構成で検眼用チャートを被検眼Eに瞬間呈示時間だけ呈示することができ、その瞬間呈示による自覚測定を行うことができる。
さらに、眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31の視標光源31aを点灯し、その点灯を継続させることにより、検眼用チャートの継続呈示による自覚測定を行う。また、眼屈折力測定装置10では、その視標光源31aの点灯の態様を継続とするか瞬間呈示時間だけとするかを変化させることにより、検眼用チャートの瞬間呈示と継続呈示との切り替えを可能としている。そして、眼屈折力測定装置10では、呈示切替記号45を操作することにより、瞬間呈示による自覚測定の実行と継続呈示による自覚測定の実行との切り替えを可能としている。このため、眼屈折力測定装置10では、簡易な構成で瞬間呈示と継続呈示との選択を可能とすることができるとともに、瞬間呈示と継続呈示との双方を自由に実行することができるので使い勝手を向上させることができる。
眼屈折力測定装置10では、表示開始記号48(瞬間呈示開始操作部)への操作により視標光源31aが点灯されることで、検眼用チャートの被検眼Eへの瞬間呈示を開始する。このため、眼屈折力測定装置10では、検者が自覚測定の準備が整ったと判断してから表示開始記号48を操作することにより、被検眼Eへの検眼用チャートの瞬間呈示を開始することができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、呈示を開始する旨を被検者に伝えてから検眼用チャートの瞬間呈示を開始することができるので、検眼用チャートの被検眼Eへの呈示が瞬間呈示時間よりも短くなることを防止することができ、被検者が検眼用チャートを認識できなくなることを防止することができる。
眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートの被検眼Eへの瞬間呈示を開始する前に、検眼用チャートを瞬間呈示する位置を示す呈示位置記号として、表示方向光源31yの点灯により検眼用チャートにおけるいずれかの注視点(図4の符号D1からD5参照)に相当する位置に輝点を形成する。このため、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを瞬間呈示させる前であっても、被検眼E(被検者)に輝点(呈示位置記号)を見せることで当該被検眼Eの視線を検眼用チャートが瞬間呈示される位置(方向)に固定することができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートの被検眼Eへの呈示が瞬間呈示時間よりも短くなることをより確実に防止することができ、被検者が検眼用チャートを認識できなくなることを防止することができる。
眼屈折力測定装置10では、応答部17(図2参照)の操作レバーへの操作により、被検者の検眼用チャートの見え方を検者に伝えることができる。このため、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを用いた自覚測定において被検者が言葉を発する必要を防止することができるので、より正確に検眼用チャートを用いた自覚測定を行うことができる。これは、被検者が言葉を発すると、顎受部15および額当部16により固定された被検者の顔が動いてしまう虞があることによる。
眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを被検眼Eに瞬間呈示する際の瞬間呈示時間を、瞬間呈示時間設定部(実施例1では設定記号50)を用いることで調整することができる。このため、眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートの種類や被検者に応じて瞬間呈示時間を適宜調整することで、検眼用チャートの認識を可能としつつ脳における伝達された神経信号に基づく像を適宜補ってから見えたものとして認識することをより適切に防止することができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、より適切に検眼用チャートの種類に応じた自覚測定を行うことができる。
眼屈折力測定装置10では、視標切替部31dのターレット部31rに、検眼用チャート(実施例1ではグリッドチャート31vと視力チャート31w)と他の視標(実施例1では風景チャート31u)とを設け、そのターレット部31rの回転姿勢を適宜変化させて光軸O2上に位置させる視標を変更する。このため、眼屈折力測定装置10では、いずれの検眼用チャートであっても、視標投影光学系31の視標光源31aを瞬間呈示時間だけ点灯させることにより、検眼用チャートの瞬間呈示による自覚測定を行うことができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、簡易な構成としつつ様々な視標を被検眼Eに瞬間呈示することができ、使い勝手を向上させることができる。
眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31により、前眼部観察光学系32における主光軸O1上で、検眼用チャートとしてのグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検眼Eに呈示(投影)する。このため、眼屈折力測定装置10では、他覚測定として眼屈折力を測定する際と同様に、被検眼Eに対するグリッドチャート31v(アムスラーチャート)の距離および姿勢を所定のものとしつつ、当該グリッドチャート31vを用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)を行うことができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、当該自覚測定(グリッドチャートテスト)を適切に行うことができ、適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31により、前眼部観察光学系32における主光軸O1上で、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検眼Eに呈示(投影)する。このため、眼屈折力測定装置10では、他覚測定として眼屈折力を測定する際と同様に、被検者が測定を実行している被検眼Eとは反対側の眼を覆ったり当該眼を瞑ったりすることなく、グリッドチャート31vを用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)を行うことができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、被検者が注視することの妨げとなることを防止することができ、当該自覚測定(グリッドチャートテスト)を適切に行うことができ、適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31により、グリッドチャート31vが所定の大きさ寸法で被検眼Eから所定の距離(実施例1では30cm)となる位置に設けられたものと等しい状態として、当該被検眼Eにグリッドチャート31vを呈示する。このため、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)をより適切な状態で被検眼Eに呈示しつつ当該グリッドチャート31vを用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)を行うことができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、当該自覚測定(グリッドチャートテスト)を適切に行うことができ、適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31により、グリッドチャート31vが所定の大きさ寸法で被検眼Eから所定の距離となる位置に設けられたものと等しい状態として、主光軸O1上で当該グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検眼Eに呈示(投影)する。ここで、一般的に、アムスラーチャートを用いた自覚測定では、紙や電子媒体等で形成されたアムスラーチャートまでの間隔が所定の距離となるように、被検者自身が手に持ったり設置したりして、見え方の確認を行う。このため、アムスラーチャートの呈示距離に個人差が生じてしまったり、誤った方法で行ったりしてしまう虞がある。これに対し、眼屈折力測定装置10では、被検者に拘わらずグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を所定の距離で呈示させつつ適切な方法で、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことができる。
眼屈折力測定装置10では、先に被検眼Eの眼屈折力の測定を行っている場合、その測定結果を用いて、視標合焦機構31Dにより合焦レンズ31hを視標投影光学系31の光軸O2に沿って適宜移動させてピント調節を行った状態で、すなわちグリッドチャート31vを被検眼Eにおいて遠くを見るときに適した度数となる位置または被検眼Eにおいて近くを見るときに適した度数となる位置に疑似的に移動させた状態で、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行う。ここで、一般的に、アムスラーチャートを用いた自覚測定では、被検者が視力に応じて両眼視補正をしたメガネを用いる必要があり、適切に格子状のパターンがどのように見えるのかを適切に確認できない虞がある。これに対し、眼屈折力測定装置10では、上記したようにピント調節を行った状態で自覚測定を行うことから、両眼視補正をしたメガネを用いることなく、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検者(被検眼E)に見せることができる。このとき、眼屈折力測定装置10では、被検眼Eにおける片眼のみの矯正値に近い状態でグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を見せつつ、その見え方の確認を行うことができる。このため、眼屈折力測定装置10では、被検者がよりはっきりとグリッドチャート31v(アムスラーチャート)が見える状態で、その見え方の確認を行うこととなるので、当該自覚測定(グリッドチャートテスト)をより適切に行うことができ、より適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。このことは、他の検眼用チャートであっても同様である。
眼屈折力測定装置10では、上記したようにピント調節を行った状態で自覚測定を行うことから、両眼視補正をしたメガネを用いることなく、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を見せることができる。ここで、両眼視補正をしたメガネを用いた場合、乱視による歪みや当該メガネレンズの歪みの影響を受けてしまう。このため、眼屈折力測定装置10では、そのような他の影響を排除した状態で、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことができるので、当該自覚測定(グリッドチャートテスト)をより適切に行うことができ、より適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。このことは、他の検眼用チャートであっても同様である。
眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)における網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲を被検眼Eに呈示する。このため、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)における網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲のみに被検者の注意を向けさせることができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いて、被検眼Eにおける網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲に疾患の可能性があるか否かをより適切に確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31vに中心位置の中心注視点D1を取り巻くように複数の周辺注視点(実施例1では4つ)を設けている。このため、眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31により被検眼E(被検者)に見せることのできるグリッドチャート31v(アムスラーチャート)が小さなものとなる場合であっても、各周辺注視点を固視目標として注視させつつ見え方の確認を行うことで、実際に見せているグリッドチャート31vよりも大きな範囲で疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、複数の周辺注視点(実施例1では4つ)を、視標投影光学系31における視野Vfの周縁部に設けている。このため、眼屈折力測定装置10では、被検眼E(被検者)に見せることのできる視野Vf内のグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いて、最も大きな範囲で疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を正方形状とするとともに、そのグリッドチャート31vを中心注視点D1(中心位置)を含む縦線および横線で4分割した各分割領域の中心位置に4つの周辺注視点(D2〜D5)を設けている。このため、眼屈折力測定装置10では、4つの周辺注視点(D2〜D5)をそれぞれ固視目標として注視させて見え方の確認を行うことにより、当該各周辺注視点で規定される正方形の領域の4倍の面積のグリッドチャート31v上での疾患の可能性があるか否かを確認することができる。これにより、眼屈折力測定装置10では、より効率良くグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことができる。
眼屈折力測定装置10では、視標投影光学系31における視野Vfの周縁部であって、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)における網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)に対応する範囲の周縁部に、複数の周辺注視点(実施例1では4つ)を設けている。このため、眼屈折力測定装置10では、各周辺注視点を固視目標として注視させてグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことにより、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、各注視点(D1〜D5)を固視目標として注視させてグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことから、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるか否かを個別に確認することができる。すなわち、眼屈折力測定装置10では、被検眼Eにおいて、中心注視点D1を注視させると網膜(眼底)Efの中心(黄斑部)の部位、周辺注視点D2を注視させると右下の領域(被検眼Eを正面から見ると左下の領域)の部位、周辺注視点D3を注視させると左下の領域(被検眼Eを正面から見ると右下の領域)の部位、周辺注視点D4を注視させると右上の領域(被検眼Eを正面から見ると左上の領域)の部位、周辺注視点D5を注視させると左上の領域(被検眼Eを正面から見ると右上の領域)の部位、に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。このように、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)に設けた注視点の位置および個数に応じて、被検眼Eにおける部位(領域)毎に疾患の可能性の有無を確認することができる。換言すると、眼屈折力測定装置10では、各注視点の位置および個数に応じた被検眼Eにおける部位(領域)毎にグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことができるので、従来のアムスラーチャートを用いた自覚測定では困難であった被検眼Eにおけるどの部位(領域)に疾患の可能性があるのかを適切に把握することができる。このため、眼屈折力測定装置10では、被検眼Eにおける全領域において疾患の可能性があるか否かを確認することができることに加えて、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるか否かを個別に確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、被検者に各注視点(D1〜D5)を注視させた結果、当該被検者が見え方に異常を感じた場合、検者はグリッド補助記号51における対応するチェックマーク(51a〜51e)にそれぞれ触れて表示形態を変化させることで、いずれの注視点(D1〜D5)を注視させた際に見え方に異常を感じたのかを容易に記録することができる。このため、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v全体のうちのいずれの領域(中心近傍もしくは各分割領域)で、被検者が見え方に異常を感じたかの確認を容易なものとすることができ、被検眼Eにおけるどの部位に疾患の可能性があるかの確認を容易なものとすることができる。
眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)が格子状のパターンの箇所で視標光源31aからの光(光束)を透過させることにより、当該グリッドチャート31vを被検眼Eに呈示している。このため、眼屈折力測定装置10では、簡易な構成でグリッドチャート31vを被検眼Eに呈示することができる。特に、実施例1では、格子状のパターンの箇所を視標光源31aからの光(光束)を透過させて明るいものとするとともにそれ以外の箇所を暗いものとし、かつ視野Vfの外方を真っ暗闇として、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検眼E(被検者)に呈示する。このため、眼屈折力測定装置10では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)をよりはっきりと被検眼E(被検者)に見せることができるので、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)をより適切に行うことができ、より適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、先に視力チャート31wを用いて自覚測定により視力検査を行っている場合、その測定結果を用いて、視標合焦機構31Dにより合焦レンズ31hを視標投影光学系31の光軸O2に沿って適宜移動させてピント調節を行う。このため、眼屈折力測定装置10では、さらに屈折矯正をした状態でグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定を行うことができるので、当該自覚測定(グリッドチャートテスト)をより適切に行うことができ、より適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、被検眼Eの眼屈折力に加えて、それとは異なる被検眼Eの他の光学特性としての被検眼Eの角膜Ecの形状も測定することができる。このため、眼屈折力測定装置10では、より使い勝手を向上させることができる。
眼屈折力測定装置10では、被検眼Eに呈示するグリッドチャート31vの大きさ寸法を小さくすることが可能とされていることから、より狭い領域のみに被検者の注意を向けさせることができるので、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を用いた自覚測定(グリッドチャートテスト)をより適切に行うことができ、より適切に疾患の可能性があるか否かを確認することができる。
眼屈折力測定装置10では、本発明に係る検眼用チャートを用いた自覚測定方法の一実施例としての自覚測定実行処理(自覚測定実行方法(図8のフローチャート))を行うものであることから、検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ被検眼Eに呈示して自覚測定を行うことができ、より適切に検眼用チャートの種類に応じた自覚測定を行うことができる。
本発明に係る検眼用チャートを用いた自覚測定方法の一実施例としての自覚測定実行処理(自覚測定実行方法)では、検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ被検眼Eに呈示して自覚測定を行うことから、より適切に検眼用チャートの種類に応じた自覚測定を行うことができる。
したがって、本発明に係る検眼装置の一実施例としての実施例1の眼屈折力測定装置10では、検眼用チャートを用いた自覚測定を適切に行うことができる。
なお、上記した実施例1では、視標投影光学系31に設けたグリッドチャート31vを、当該視標投影光学系31における被検眼Eからの視野Vfよりも大きなものを用いていた。しかしながら、視標投影光学系31では、上述したように、グリッドチャート31vにおける視野Vfの外方に位置する箇所を被検者に見せる(認識させる)ことができないので、例えば、グリッドチャート31v´(図14参照)のように予め視野Vfの内方に位置させることができる大きさ寸法のグリッドチャートを用いるものとしてもよい。その視野Vfの内方に位置させることができる大きさ寸法のグリッドチャートの一例としてのグリッドチャート31v´を図14に示す。そのグリッドチャート31v´は、視野Vfの内方に位置させる大きさ寸法とすべく、上記した各実施例のグリッドチャート31v(図4参照)における4つの周辺注視点(D2〜D5)の内側に相当する大きさ寸法の正方形状とされており、縦方向および横方向にそれぞれ10個のグリッド(マス目)が並べられて構成されている。そして、グリッドチャート31v´では、グリッドチャート31vと同様に中心位置に1つの中心注視点D1´が設けられており、グリッドチャート31vとは異なり各周辺注視点(D2〜D5)が設けられていない。しかしながら、グリッドチャート31v´では、グリッドチャート31vにおける各周辺注視点(D2〜D5)に相当する箇所が、格子状のパターンにおける4角となるので、各角を周辺注視点(D2´〜D5´)として利用することができる。すなわち、グリッドチャート31v´では、格子状のパターンの4角が、検者が固視目標として誘導し易いものであり、被検者が固視目標として理解し易く注視し易いものとされているので、それぞれ周辺注視点(D2´〜D5´)とすることができる。このような構成とすると、視標切替部31d(そのターレット部31r)に設けるグリッドチャート31v´をより小さなものとすることができるので、眼屈折力測定装置10全体の大きさ寸法の低減を図ることを可能としつつ、上記した実施例1と同様の効果を得ることができる。この場合であっても、眼屈折力測定装置10では、上述したように、検者により操作が可能な注視点切替手段を設けることにより、現在行っている自覚測定(グリッドチャートテスト)がいずれの注視点(D1´〜D5´)を注視させているものであるのかを認識するものとすることができる。なお、このグリッドチャート31v´では、グリッドチャート31vと同様の各周辺注視点(D2〜D5)を設けるものであってもよく、それらとは異なる位置に適宜周辺注視点を設けるものであってもよく、この図14に示す例に限定されるものではない。また、その各周辺注視点および中心注視点は、上記した各注視点(D1〜D5)と同様の効果を得ることができるものであれば、複数の光源(LED等)で形成するものであってもよく、他の構成であってもよく、上記した実施例1(図14に示す例も含む)に限定されるものではない。このとき、各注視点は、検者が固視目標として誘導し易いものであることや、被検者が固視目標として理解し易く注視し易いものであることが望ましい。このグリッドチャート31v´であっても、視標投影光学系31の視標光源31aを瞬間呈示時間だけ点灯させることにより、瞬間呈示による自覚測定を行うことができ、グリッドチャート31v(検眼用チャート)の場合と同様の効果を得ることができる。
また、上記した実施例1では、検眼用チャートの瞬間呈示のための瞬間呈示開始操作部として表示開始記号48を設けているが、検者が検眼用チャートの瞬間呈示を開始する旨の操作を為すことを可能とするものであれば、装置本体部13や表示部14に設けられたスイッチを設ける構成であってもよく、他の構成であってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。
さらに、上記した実施例1では、表示開始記号48が触れられたら検眼用チャートの瞬間呈示を開始させるものとしているが、自動的に検眼用チャートの瞬間呈示を開始させるものであってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。このような構成としては、例えば、被検眼Eに対する自動アライメントが完了したら自動的に瞬間呈示を開始するものとすることがあげられる。
上記した実施例1では、表示開始記号48が触れられたら検眼用チャートの瞬間呈示を開始させるものとしているが、予め所定の呈示待機時間を設定し、所定の操作が為された時点から呈示待機時間が経過すると自動的に検眼用チャートの瞬間呈示を開始させるものであってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。このような構成としては、例えば、所定の操作として検眼用チャートを用いた自覚測定を開始する旨の操作に設定し、その開始する旨の操作が為されると経過時間のカウントを開始し、その経過時間が呈示待機時間となると自動的な瞬間呈示を開始するものとすることがあげられる。このとき、制御部21は、表示部14(その表示面14a)に、呈示待機時間をカウントダウンの形式で表示させることとすると、瞬間呈示が開始される時点を容易に確認することができ、使い勝手を向上させることができる。このような構成とした場合、例えば、検者は、上記した開始する旨の操作を行った後に、瞬間呈示が開始されるまでの時間を確認しつつ、被検者に対してこれから実行する測定(検査)に関する説明を行うとともに検眼用チャートを用いた自覚測定のための準備(アライメント等)を行うことができる。なお、このような構成とした場合、呈示待機時間を調整可能とすることが望ましい。
上記した実施例1では、表示開始記号48(瞬間呈示開始操作部)が触れられたら検眼用チャートの瞬間呈示を開始し、その開始時点から瞬間呈示時間が経過すると自動的に検眼用チャートの瞬間呈示を終了するものとしている。しかしながら、表示開始記号48(瞬間呈示開始操作部)が触れられている間だけ検眼用チャートの呈示を行うものとしてもよい。この場合、検者は、表示開始記号48に触れた時点から瞬間呈示時間が経つと当該表示開始記号48に触れることを止めることにより、検眼用チャートを用いて瞬間呈示による自覚測定を行うことができる。また、検者は、表示開始記号48に触れたままとすることにより、検眼用チャートを用いて継続呈示による自覚測定を行うことができる。このことは、上述したように表示開始記号48に替えてスイッチを設ける構成とした場合であっても同様である。
上記した実施例1では、瞬間呈示時間設定部としての設定記号50に触れられた後の設定画面により、瞬間呈示において検眼用チャートを呈示させる瞬間呈示時間の設定を可能としている。しかしながら、この瞬間呈示時間設定部は、他の各記号(図7等の符号42から49参照)と同様に、検眼用チャートを用いて瞬間呈示により自覚測定を行うための表示内容の一部の記号として、表示部14(表示面14a)に表示されるものであってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。このような瞬間呈示時間設定部では、瞬間呈示による自覚測定の際に記号として表示部14(表示面14a)に表示されていることから、呼び出すための操作を行うことなく当該記号に触れると直ちに瞬間呈示時間の設定を行うことができるので、使い勝手をより向上させることができる。
上記した実施例1では、グリッドチャート31vを用いた自覚測定において、格子状のパターンに歪みや欠けやぼやけが生じた場合、被検者が応答部17の操作レバーを押し込む操作によりON状態とすることで、その旨を検者に伝えるものとしていた。しかしながら、グリッドチャート31vを用いて瞬間呈示により自覚測定を行う場合、本来のグリッドチャート31vの見え方とは関係なく、被検者によってはグリッドチャート31vが見えない場合が生じることが考えられる。これは、グリッドチャート31vを瞬間呈示時間だけ呈示するものであることから、見えるか否かには動体視力が関係する可能性があることによる。このため、応答部17では、格子状のパターンに歪みや欠けやぼやけが生じたことを示す応答操作とは別に、格子状のパターン(グリッドチャート31v)が見えなかったことを示す応答操作を可能な構成とすることが考えらえる。このような2種類の応答操作は、2つの操作レバーや2つのスイッチを設けることや、操作レバーを異なる2つの方向へと倒すものとすることで行うことができる。このような構成とすると、被検者が応答部17への応答操作により、グリッドチャート31vの見え方に異常を感じたのか、グリッドチャート31vが見えなかったのか、を検者に伝えることができ、より正確に検眼用チャートを用いた自覚測定を行うことができる。このことは、視力チャート31wを含む他の検眼用チャートを用いて自覚測定を行う場合であっても同様である。
上記した実施例1では、表示方向光源31yにより、検眼用チャートの中心位置(中心注視点D1)に相当する位置、およびグリッドチャート31vにおける四隅(周辺注視点D2〜D5)に相当する位置に、呈示位置記号としての輝点を形成する構成としている。しかしながら、呈示位置記号は、検眼用チャートを呈示する位置を被検眼E(被検者)に示すものであれば、検眼用チャートの態様に応じて適宜形状や位置や態様を設定すればよく、例えば、検眼用チャートを呈示する位置を取り囲んで枠状に光るものを形成してもよく、グリッドチャート31vであればその外枠のみ光らせるものを形成してもよく、他の構成としてもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。その場合、呈示位置記号を形成するための構造は、表示方向光源31yとは別の光源等を用いるものであってもよく、視標投影光学系31とは異なる光学系に設けるものであってもよい。このような構成とすると、呈示位置記号を形成するための構造も視標呈示光学系として機能することとなる。
上記した実施例1では、視標投影光学系31において各視標が視標光源31aからの光(光束)を透過させることにより、検眼用チャートを被検眼Eに呈示するものとしているが、液晶ディスプレイを用いるものであってもよく、他の構成としてもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。
上記した実施例1では、レフ測定投影光学系33とレフ測定受光光学系34とで他覚測定により被検眼Eの眼屈折力を測定するものとされていたが、他覚測定か自覚測定かに拘わらず被検眼Eの光学特性を測定することのできる検眼装置であって、検眼用チャートの瞬間呈示を可能とする検眼装置であればよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。
次に、本発明の検眼装置の他の一例としての実施例2の自覚式検眼装置60について、図15から図22を用いて説明する。この実施例2の自覚式検眼装置60は、本発明の検眼装置の他の一例を示すものであり、本発明の検眼用チャートを用いた自覚測定方法を実行することができるものである。この実施例2の自覚式検眼装置60は、実行する検眼用チャートを用いた自覚測定方法が基本的に実施例1の眼屈折力測定装置10(図8参照)と同様とされており、等しい構成および工程の箇所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、自覚式検眼装置60は、視標65(検眼用チャート)の1つとしてグリッドチャート31v(図4、図9、図14等参照)を被検者101(被検眼)に呈示することができる。その呈示するグリッドチャート31vの構成に関しては、実施例1の眼屈折力測定装置10と同様とされており、等しい構成および工程の箇所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施例2の自覚式検眼装置60は、上述したように本発明の検眼用チャートを用いた自覚測定方法を実行することができるとともに、眼鏡を作成する際にレンズの屈折度数を定めるために用いることができる。この自覚式検眼装置60は、図15に示すように、視標呈示部61と矯正機構部62とコントローラ63と検眼テーブル64とを備える。
その視標呈示部61は、被検者101の被検眼に各種の視標65を呈示するものであり、支柱61aにより高さ位置を変更可能に支持されている。その視標65は、被検眼の各種の視機能検査のために被検眼に呈示するものであり、各種の視標65のうちの自覚測定のためのものは基本的に実施例1の眼屈折力測定装置10で設けた検眼用チャートと等しく、図15には視力チャート31wが呈示された例を示している。視標呈示部61には、視標65を表示するための表示画面66が設けられている。この表示画面66では、後述するように、演算制御回路76(図18参照)の制御下で視標65を含む各画像が適宜表示され(図19、図20参照)、その表示する視標65の種類はコントローラ63への操作により選択可能とされている。この視標呈示部61(表示画面66)では、演算制御回路76の制御下で、各視標65を瞬間呈示時間だけ表示することと継続的に表示させることとが可能とされている。このため、視標呈示部61(表示画面66)では、各視標65を被検者101の被検眼に、継続呈示させることと瞬間呈示させることとが可能とされている。
その視標呈示部61と被検者101との間に検眼テーブル64が配置される。その検眼テーブル64は、コントローラ63を置くことが可能とされている。検眼テーブル64には、支柱67が上下方向に伸縮可能に設けられており、その支柱67に支持アーム68が回転自在に設けられている。その支持アーム68は、支柱67の上部から水平方向に伸びて設けられており、その水平箇所に矯正機構部62が取り付けられている。
その矯正機構部62は、被検者101の被検眼の視機能を矯正するために設けられており、支柱67および支持アーム68により被検者101(被検眼)と視標呈示部61との間に配置することが可能とされている(図21等参照)。矯正機構部62は、左右で対称形状とされた一対のフォロプタ71を有する。各フォロプタ71は、被検眼の視機能を矯正するための光学部材を収容するハウジング71aを有し、その各ハウジング71aに検眼窓72が設けられている。その両検眼窓72は、被検者101が各フォロプタ71に収容された光学部材を介して視標呈示部61(その表示画面66)を覗き見るために設けられており、被検者101の左右の被検眼に対応されている。この一対のフォロプタ71は、互いの間隔が調整可能、すなわち相対的に近付けることと離すこととが可能とされている。このため、矯正機構部62では、一対の検眼窓72の光軸間距離を、被検者101の左右の被検眼の瞳孔間距離に合わせることができる。この一対のフォロプタ71は、左右対称な構造であることから、以下で単にフォロプタ71としてその構造を説明する。
フォロプタ71では、ハウジング71a内に5つの回転ディスク73(個別に述べる際には符号731から735を用いる(図16参照))が、回転軸73aを回転中心としてそれぞれ回転可能に設けられている。各回転ディスク73には、図16に示すように、周回り方向に等間隔を開けて円形開口73bが設けられており、各回転ディスク73(731〜735)の外周部にはギヤ731G〜735Gが形成されている。その各ギヤ731G〜735Gには、後述する演算制御回路76(図18参照)の制御下で駆動されるパルスモータによって回転駆動される駆動ギヤ(図示せず)が噛み合わされている。各回転ディスク73は、各円形開口73bに設けられた矯正レンズを適宜組み合わせて検眼窓72内に配置させる。
回転ディスク731では、複数の円形開口73bに、検査用光学素子として例えば0.25Dずつ球面度数が異なる複数の球面度数レンズ(図示せず)が一枚ずつ嵌め込まれて設けられている。また、回転ディスク732では、複数の円形開口73bに、3Dずつ球面度数の異なる複数の球面度数レンズ(図示せず)が一枚ずつ嵌め込まれて設けられている。さらに、回転ディスク733では、各円形開口73bに、検査用光学素子として乱視レンズ(図示せず)が嵌め込まれて設けられている。回転ディスク734では、各円形開口73bに、水平斜位検査用の水平プリズムや垂直斜位検査用の垂直プリズムや補正度数がそれぞれ異なる水平斜位検査用の検査用光学素子である検査用プリズムが、嵌め込まれて設けられている。その水平プリズムは、呈示された視標を水平方向に分離させるものであり、垂直プリズムは、呈示された視標を垂直方向に分離させるものである。そして、回転ディスク735では、複数の円形開口73bに、補正度数がそれぞれ異なる垂直斜位検査用の検査用光学素子である検査用プリズム(光学部材:検査用垂直プリズム)や、マドックスロッドによる線条光による斜位検査用のマドックスロッドレンズ等が、嵌め込まれて設けられている。
加えて、各回転ディスク73では、少なくとも1つの円形開口73bが、矯正力をかけない状態での検眼検査を行うために素通しとされている。実施例2の各回転ディスク73では、符号73bAで示す1つの円形開口73bが素通しとされている。また、各回転ディスク73では、素通しとされた円形開口73bAに隣接する円形開口73bに、被検者101が各視標65を視認することを防止するための遮蔽板73cが設けられている。
このため、矯正機構部62では、各フォロプタ71における後述する演算制御回路76(図18参照)の制御下でパルスモータを適宜駆動して各回転ディスク73を適宜回転させることにより、適宜選択した矯正レンズを各検眼窓72内に配置する。これにより、矯正機構部62では、各検眼窓72を経ることによる矯正力を調整することができる。そして、演算制御回路76は、コントローラ63に為された操作に基づいて、矯正機構部62における矯正力を調整する。
そのコントローラ63は、検眼テーブル64の上に置かれている。コントローラ63は、図17に示すように、検者102(図1参照)により操作される操作部74と、操作内容を示す操作画像をそれぞれ表示する表示部75と、を有する。そのコントローラ63では、操作部74の縁部74aに表示部75の下縁部75aが、軸部材を介して回転可能に取り付けられて構成されている。
その操作部74には、ダイヤル74bや表示切替スイッチ74c等の検査の設定や実行等の操作のための各種スイッチが設けられている。そのダイヤル74bは、各フォロプタ71の検眼窓72内に配置する矯正レンズを選択するものである。表示切替スイッチ74cは、表示部75における表示内容を、後述する遠用検査のための第一の表示モード(図19参照)と、後述する近用検査のための第二の表示モード(図20参照)と、で切り換えるものである。この操作部74には、マウス74dが接続されており、各種スイッチと同様に、検査の設定や実行等の操作を行うことが可能とされている。
表示部75には、操作部74に為された操作内容や視標65や検査に関するデータ等を表示する表示画面75bが設けられている。その表示画面75bには、後述する遠用検査のための第一の表示モード(図19参照)と、後述する近用検査のための第二の表示モード(図20参照)と、が適宜切り換えられて表示される。この表示画面75bは、実施例2では、タッチパネルの機能を搭載しており、そのタッチパネルの機能を利用して第一の表示モードや第二の表示モードにおける後述する各操作のための各種の記号に触れることによる操作を可能とする。
このコントローラ63では、図18に示すように、操作部74と表示部75とに加えて、演算制御回路76を有する。その演算制御回路76は、CPU77およびメモリ部78を有する。そのCPU77は、メモリ部78に格納されたプログラムにより自覚式検眼装置60の各部を統括的に制御する。CPU77(自覚式検眼装置60)は、操作部74および表示部75と接続されており、操作部74に為された操作に基づく信号が入力されると、その操作に応じて表示部75(その表示画面75b)の動作(表示)を制御する。また、CPU77(自覚式検眼装置60)は、視標呈示部61の駆動制御部および矯正機構部62の駆動制御部(そのパルスモータ)と接続されており、視標呈示部61および矯正機構部62の動作を制御する。さらに、CPU77(自覚式検眼装置60)は、他の光学検査機器としての光学検査機器としてのレンズメータCLおよび他覚検査装置RMと接続されており、これらの他の光学検査機器からの測定データを光学特性データとして取り込むことができる。その測定データには、被検者の眼の光学特性データ、眼鏡レンズの光学特性データに加えて、検査に関連する他のデータ、例えば、機器ID、被検者ID、被検者の氏名、データ番号、測定時刻等の項目も含まれている。
メモリ部78には、遠方を見た状態(遠方視状態)での被検眼の視機能を検査する遠用検査時に用いられる各種の視標65と、近方を見た状態(近方視状態)での被検眼の視機能を検査する近用検査時に用いられる各種の視標65と、のそれぞれを示す視標データが記憶される。CPU77は、この視標データに基づいて、視標呈示部61(表示画面66)や表示部75(表示画面75bの後述する視標呈示欄91)に、各種の視標65を適宜表示させる。また、メモリ部78には、操作画像を示す操作画像データ(後述する第一の表示モード(図19参照)や第二の表示モード(図20参照)等を含む)が記憶されている。さらに、メモリ部78には、各矯正レンズの球面度数、乱視度数、軸角度(乱視軸角度)、水平方向のプリズム量及び垂直方向のプリズム量等の屈折力を示すレンズデータDL(図19、図20参照)と、が記憶されている。
CPU77は、操作部74のダイヤル74bが操作されると、その操作位置に応じた屈折力を示すレンズデータDLをメモリ部78から抽出し、抽出したレンズデータDLが示す屈折力を有する矯正レンズを各フォロプタ71の検眼窓72内に配置する旨の制御信号を、矯正機構部62の駆動制御部(そのパルスモータ)に送る。これにより、矯正機構部62の各フォロプタ71では、ダイヤル74bの操作により選択された屈折力を有する矯正レンズが検眼窓72内に配置される。また、CPU77は、そのメモリ部78から抽出したレンズデータDLを示す信号を表示部75に送り、その表示画面75bにレンズデータDLを表示させる(図19、図20参照)。
さらに、CPU77は、操作部74の表示切替スイッチ74cに、表示部75の表示モードを第一の表示モードと第二の表示モードとの間で切り替える旨の操作が為されると、各表示モードに対応する操作画像データをメモリ部78から抽出する。そして、CPU77は、その抽出した各表示モードの操作画像データを示す信号を表示部75に送り、その表示画面75bに各表示モードに応じた操作画像を表示させる。
その第一の表示モードは、遠方視状態での被検眼の視機能を検査する遠用検査時、すなわち矯正機構部62を介して視標呈示部61(その表示画面66)に表示された視標65を見て検査する際に表示部75(その表示画面75b)に表示される。第一の表示モードでは、図19に示すように、表示部75(その表示画面75b)に、検査種別表示欄81と検査詳細内容表示欄82と屈折力表示欄83と参照表示欄84と一覧表示欄85と視標表示欄86と操作記号表示欄87とダイヤル表示欄88と瞳孔間距離表示欄89とが表示される。これらの各欄は、それぞれ画像データとしてメモリ部78に記憶されている。また、これらの各欄は、表示画面75b(表示部75)におけるタッチパネルの機能を利用して触れることによる選択(切替)操作を可能するアイコンとしての各種記号としても機能する。このため、CPU77(演算制御回路76)は、表示画面75bに表示された各欄に触れられた検出信号を表示部75から受けると、その検出信号に応じたデータをメモリ部78から抽出し、その抽出したデータを示す信号を表示部75や視標呈示部61に適宜送る。
その検査種別表示欄81は、実行中の検査の名称を表示するものであり、図19に示す例では遠用検査の球面度テストにおいてチャート(視標)を用いることを表示している。検査詳細内容表示欄82は、検査の詳細内容の名称を表示するものであり、図19に示す例では左端に右眼であることを示す「右」の文字と、右端に左眼であることを示す「左」の文字と、真ん中に自覚測定の遠用検査によりデータ(測定結果)を取得している旨と、を表示している。屈折力表示欄83は、矯正機構部62(その各フォロプタ71)で設定された矯正レンズのレンズデータDL、すなわち各検眼窓72にセットされている光学素子としてのレンズの球面度数、乱視度数及び軸角度(乱視軸角度)等の光学特性データを表示する。その矯正レンズは、上述したように操作部74のダイヤル74bへの操作で選択されることで設定されることから、屈折力表示欄83は、ダイヤル74bに為された操作結果を表示していることになる。このため、CPU77(演算制御回路76)は、屈折力表示欄83に表示させる光学特性データに対応する光学素子が各検眼窓72にセットされるように矯正機構部62を制御する。その屈折力表示欄83は、図19に示す例では、レンズデータDLとして、レンズの屈折力のうち球面度数、乱視度数、軸角度(乱視軸角度)および加入の各項目が表示され、被検者101の右眼と左眼とに対応して各検眼窓72にセットされている光学特性データの数値を項目毎に表示している。
参照表示欄84は、屈折力表示欄83に表示されている光学特性データと対比可能な光学特性データを表示するものであり、検者102による自覚検査の作業をより効率的なものとすべく設けている。その参照表示欄84は、屈折力表示欄83の左右に1つずつ設けられ、それぞれが被検者101の右眼と左眼とに対応する各種の光学特性データを表示する。図19に示す例では、左側の参照表示欄84は、他覚検査装置RM(図18参照)から取り込んだ測定データを表示しており、上段に測定データの表題を示す「他覚」の文字を表示し、その下にその測定データの各数値を項目毎に表示している。また、図19に示す例では、右側の参照表示欄84は、レンズメータCL(図18参照)から取り込んだ測定データを表示しており、上段に測定データの表題を示す「メガネ」の文字を表示し、その下にその測定データの各数値を項目毎に表示している。
一覧表示欄85は、自覚式検眼装置60において用いることのできる視標65の一覧を表示するものであり、上段に表示する項目の切り替えのための表示切替ボタンを表示し、その下に表示切替ボタンで選択された項目における視標65の一覧を表示する。その表示切替ボタンは、図19に示す例では、左側から順に、視標65の一覧を表示させる項目としての「チャート1」および「チャート2」の文字と、自動および手動による操作が必要な視標65の一覧を表示させる項目としての「手動vs自動」の文字と、何も設定されていない箇所と、近方視状態での被検眼の視機能を検査する近用検査時に用いる視標65の一覧を表示させる項目としての「近用」の文字と、を表示させている。そして、図19に示す例では、最も左側の表示切替ボタンである「チャート1」が選択されて、その下に「チャート1」における視標65の一覧を表示させている様子を示している。この一覧表示欄85では、タッチパネルの機能を利用して、表示した視標65の一覧のうちのいずれかに触れられると、その触れられた視標65が選択されたものとする。視標表示欄86は、一覧表示欄85において選択された視標65を表示するものであり、図19に示す例では、選択された視力チャート31wを表示している。CPU77(演算制御回路76)は、一覧表示欄85で選択されて視標表示欄86に表示された視標65を、視標呈示部61の表示画面66に表示させるように当該視標呈示部61を制御する(図15等参照)。
操作記号表示欄87は、各種の操作のための記号を表示するものであり、表示画面75bにおける下部に表示される。この操作記号表示欄87は、図19に示す例では、左側から順に、レンズの度数を0.25ディオプターずつ変化させるステップ送りボタンとしての「S:0.25」の文字と、遮蔽板を各検眼窓72にセットさせる「遮蔽板」の文字と、各種のデータを表示させる「データ表示」の文字と、処方データを記録させる「処方:記録」の文字と、自覚データ、他覚データ、処方データ、前回処方データ、裸眼データ等のデータをセットするための「データセット」の文字と、を表示させている。ダイヤル表示欄88は、操作部74のダイヤル74b(図17参照)への操作の様子を示すダイヤル像を表示する。瞳孔間距離表示欄89は、被検者101の左右の被検眼の瞳孔間距離となる一対の検眼窓72(図15参照)の光軸間距離を表示する。
また、第二の表示モードは、近方視状態での被検眼の視機能を検査する近用検査時、すなわち矯正機構部62を介して表示画面75bに表示された視標65を見て検査を行うために表示部75(その表示画面75b)に表示される。その第二の表示モードでは、図20に示すように、表示部75(その表示画面75b)に、視標65を呈示する視標呈示欄91と、矯正機構部62(その各フォロプタ71)で設定された矯正レンズのレンズデータDLを表示させる屈折力表示欄92と、が表示される。これらの各欄は、それぞれ画像データとしてメモリ部78(図18参照)に記憶されている。その視標呈示欄91は、近用検査時に被検者101(被検眼)に見せるために視標65を表示させる箇所とであり、近用検査のために選択された視標65を表示する。
屈折力表示欄92は、矯正機構部62における左右のフォロプタ71で設定された矯正レンズのレンズデータDLを左右に分けて表示しており、上段に左右のいずれに対応しているかを示す項目としての「右」および「左」の文字を表示している。また、屈折力表示欄92は、その項目の下に各レンズデータDLのうちのいずれを表示しているのかを示す箇所と、その箇所に対応するデータを示す箇所と、が設けられている。屈折力表示欄92は、図20に示す例では、各レンズデータDLのうち、外側から順に、加入(「加入」の文字)、軸角度(乱視軸角度)(「軸」の文字)、乱視度数(「乱視」の文字)、球面度数(「球面」の文字)、水平方向のプリズム量H(「プリズムH」の文字)、垂直方向のプリズム量V(「プリズムV」の文字)の値を表示している。
そして、第二の表示モードでは、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、視標呈示欄91において各視標65を瞬間呈示時間だけ表示することと継続的に表示させることとが可能とされている。このため、表示部75(その表示画面75b)では、各視標65を被検者101の被検眼に、継続呈示させることと瞬間呈示させることとが可能とされている。
CPU77(演算制御回路76)は、上述したように、視標呈示部61(表示画面66)およびコントローラ63の表示部75(表示画面75bの視標呈示欄91)において、各視標65(検眼用チャート)を継続呈示させることと瞬間呈示させることとが可能とされている。この各視標65(検眼用チャート)の呈示は、視標呈示部61(表示画面66)および表示部75(表示画面75b)がディスプレイ等の表示装置で形成されていることから、容易に行うことができる。そして、CPU77(演算制御回路76)は、視標65(検眼用チャート)の継続呈示と瞬間呈示とを選択可能とする。この継続呈示と瞬間呈示との選択は、表示部75(表示画面75b)における第一の表示モードまたは第二の表示モードにおいて、実施例1の呈示切替記号45(図6および図7参照)に相当する記号を表示させることにより実行することができる。また、継続呈示と瞬間呈示との選択は、コントローラ63にスイッチを設けることや、他の箇所にスイッチを設けることや、他の構成により実行するものとしてもよい。
また、CPU77(演算制御回路76)は、瞬間呈示により自覚測定を行う際、後述する視標呈示光学系(視標呈示部61、コントローラ63の表示部75)による視標65(検眼用チャート)の瞬間呈示を開始させるための瞬間呈示開始操作部として、表示部75(表示画面75b)における第一の表示モードまたは第二の表示モードにおいて、実施例1の表示開始記号48(図6および図7参照)に相当する記号を表示させる。このため、自覚式検眼装置60では、選択された視標65(検眼用チャート)の瞬間呈示の開始を、実施例1の眼屈折力測定装置10と同様に行うことができる。なお、瞬間呈示開始操作部は、表示開始記号48に相当する記号を表示させることに替えて、コントローラ63にスイッチを設けることや、他の箇所にスイッチを設けることや、他の構成により実現するものとしてもよい。
さらに、CPU77(演算制御回路76)は、瞬間呈示により自覚測定を行う際、後述する視標呈示光学系(視標呈示部61、コントローラ63の表示部75)において、その表示画面66または表示画面75bの視標呈示欄91に視標65(検眼用チャート)を呈示する位置を被検眼E(被検者)に示す呈示位置記号を表示させる。CPU77(演算制御回路76)は、この呈示位置記号として、視標呈示部61(表示画面66)またはコントローラ63の表示部75(表示画面75bの視標呈示欄91)において、実施例1の眼屈折力測定装置10と同様に輝点(中心注視点D1および周辺注視点D2〜D5(図4参照))を形成する。なお、呈示位置記号は、視標65(検眼用チャート)を呈示する位置を被検眼E(被検者)に示すものであれば、検眼用チャートの態様に応じて適宜形状や位置や態様を設定すればよく、実施例2に限定されるものではない。
加えて、CPU77(演算制御回路76)は、瞬間呈示により自覚測定を行う際の瞬間呈示時間の調整を可能とする瞬間呈示時間設定部として、表示部75(表示画面75b)における第一の表示モードまたは第二の表示モードにおいて、実施例1の設定記号50(その後の設定画面)に相当する記号を表示させる。このため、自覚式検眼装置60では、選択された視標65(検眼用チャート)を瞬間呈示させる瞬間呈示時間の調整を、実施例1の眼屈折力測定装置10と同様に行うことができる。なお、瞬間呈示時間の調整は、設定記号50(その後の設定画面)に相当する記号を表示させることに替えて、コントローラ63にスイッチを設けることや、他の箇所にスイッチを設けることや、他の構成により実行するものとしてもよい。
そして、自覚式検眼装置60では、自覚測定における応答操作を可能とする応答部として、実施例1の応答部17と同様の応答部を設ける。このため、自覚式検眼装置60では、選択された視標65(検眼用チャート)に応じた応答操作を、実施例1の眼屈折力測定装置10と同様に口頭ではなく応答部を用いて行うことを可能とする。なお、応答部は、実施例1の応答部17と同様の応答部を設けることに替えて、マウス74dを用いるものであってもよく、他の構成としてもよく、実施例2に限定されるものではない。
次に、自覚式検眼装置60により、遠方視状態での被検眼の視機能を検査する遠用検査を行う様子と、近方視状態での被検眼の視機能を検査する近用検査を行う様子と、について説明する。先ず、検者102は、遠用検査を行うべく、操作部74に設けられた表示切替スイッチ74c(図17参照)を操作することにより表示部75(その表示画面75b)を第一の表示モードに切り替える。すると、自覚式検眼装置60では、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、表示画面75b(表示部75)に第一の表示モードの操作画像(図19参照)を表示させる。そして、検者102は、第一の表示モードの操作画像において、一覧表示欄85から検査に用いる遠用検査用の視標65を選択する。すると、自覚式検眼装置60では、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、表示部75の視標表示欄86(図19参照)と視標呈示部61の表示画面66(図15参照)とのそれぞれに、選択された視標65を表示させる。このため、検者102は、視標表示欄86に表示された視標65を視認することにより、表示画面66および視標表示欄86に表示された視標65が、選択した視標65に一致しているか否かを確認することができる。
この設定状態において、自覚式検眼装置60では、図21に示すように、矯正機構部62の各フォロプタ71の各検眼窓72を通して、視標呈示部61の表示画面66に表示された視標65を被検者101に見させる。ここで、被検者101(被検眼)に各検眼窓72を覗かせてから、上記した各種の設定を行うものであってもよい。このため、視標呈示部61は、矯正機構部62と協働して、被検眼Eに対して自覚測定のために注視させる自覚視標としての検眼用チャートを呈示する視標呈示光学系として機能する。そして、検者102は、被検者101に視標65の見え具合を聞き、その応答に基づいて各フォロプタ71(各検眼窓72内)に配置する矯正レンズを操作部74のダイヤル74bの操作により切り替える。このとき、ダイヤル74bの操作により選択された矯正レンズのレンズデータDLが、表示部75の屈折力表示欄83に表示されるので、検者102はそのレンズデータDLを視認しながらダイヤル74bを操作することができる。このことを視標65が良好に見えるまで繰り返すことにより、被検眼の視機能を適切に矯正する作成すべき眼鏡のレンズの屈折度数を定めることができる。
近方視状態での被検眼の視機能を検査する際、検者102は、図22に示すように、コントローラ63を検眼テーブル64上で被検者101の前方に配置し、その表示部75の表示画面75bを各フォロプタ71に対向させる。そして、検者102は、近用検査を行うべく一覧表示欄85から検査に用いる近用検査用の視標65を選択し、操作部74に設けられた表示切替スイッチ74c(図17参照)を操作することにより表示部75(その表示画面75b)を第二の表示モードに切り替える。すると、自覚式検眼装置60では、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、表示画面75b(表示部75)に第二の表示モードの操作画像(図20参照)を表示させる。また、自覚式検眼装置60では、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、表示部75(その表示画面75b)の視標呈示欄91に選択された視標65を表示させる(図20参照)。このとき、CPU77(演算制御回路76)は、各フォロプタ71と表示画面75bとの距離を算出し、その距離に基づいて視標65の大きさを検査対象となる被検者101(被検眼)の視力値に応じた大きさに調節して表示画面75bに表示させる。
この設定状態において、検者102は、矯正機構部62の各フォロプタ71の各検眼窓72を通して、コントローラ63の表示部75(表示画面75b)に表示された視標65を被検者101に見させる。このため、コントローラ63の表示部75は、矯正機構部62と協働して、被検眼Eに対して自覚測定のために注視させる自覚視標としての検眼用チャートを呈示する視標呈示光学系として機能する。そして、検者102は、遠用検査時と同様に、被検者101に視標65の見え具合を聞き、その応答に基づいて各フォロプタ71(各検眼窓72内)に配置する矯正レンズを操作部74のダイヤル74bの操作により切り替える。このことを視標65が良好に見えるまで繰り返すことにより、被検眼の視機能を適切に矯正する作成すべき眼鏡のレンズの屈折度数を定めることができる。
また、自覚式検眼装置60では、偏光板やレッド・グリーンフィルタや液晶フィルタを用いることで、被検眼の斜位度を測定する斜位検査を行うことができる。これらの各種の検査は、従来と同様である。
加えて、本発明に係る実施例2の自覚式検眼装置60では、検眼用チャートとしての視標65を用いた自覚測定を、瞬間呈示と継続呈示とにより行うことができる。すなわち、自覚式検眼装置60では、遠用検査を行う際には、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、視標呈示部61の表示画面66に視標65を瞬間呈示時間だけ表示させる。この表示画面66における視標65の瞬間呈示は、表示される箇所が表示部14(その表示面14a)から視標呈示部61(その表示画面66)に変わるのみであるので、実施例1と同様(図8のフローチャートにおけるステップS7からステップS10参照)に行うことができる。また、自覚式検眼装置60では、近用検査を行う際には、CPU77(演算制御回路76)の制御下で、表示部75の表示画面75bの視標呈示欄91に視標65を瞬間呈示時間だけ表示させる。この表示画面75b(視標呈示欄91)における視標65の瞬間呈示は、表示される箇所が表示部14(その表示面14a)から表示部75(その表示画面75b(視標呈示欄91))に変わるのみであるので、実施例1と同様(図8のフローチャートにおけるステップS7からステップS10参照)に行うことができる。このため、CPU77(演算制御回路76)は、視標呈示光学系(視標呈示部61、コントローラ63の表示部75)における検眼用チャート(視標65)の呈示を制御する制御部として機能する。
実施例2の自覚式検眼装置60では、検眼用チャート(視標65)の瞬間呈示に関しては基本的に実施例1の眼屈折力測定装置10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
また、実施例2の自覚式検眼装置60では、検眼用チャート(視標65)としてのグリッドチャート31vに関しては基本的に実施例1の眼屈折力測定装置10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
それに加えて、自覚式検眼装置60では、視標呈示部61の表示画面66での視標65の表示、あるいは表示部75(表示画面75b)の視標呈示欄91での視標65の表示を、CPU77(演算制御回路76)の制御下で瞬間呈示とする。このため、自覚式検眼装置60では、簡易な構成で、遠用検査であっても近用検査であっても検眼用チャートとしての視標65を用いて瞬間呈示により自覚測定を行うことができる。
したがって、本発明に係る一実施例としての実施例2の自覚式検眼装置60では、検眼用チャートを用いた自覚測定を適切に行うことができる。
この実施例2では、第一の表示モード(図19参照)と第二の表示モード(図20参照)とにおいて表示画面75bに表示される画像の例を示していたが、前者が遠用検査のために表示されるものであり後者が近用検査のために表示されるものであればよく、上記した例に限定されるものではない。
なお、上記した各実施例では、本発明に係る検眼装置の一実施例としての眼屈折力測定装置10および自覚式検眼装置60について説明したが、被検眼に対して自覚測定のために注視させる自覚視標としての検眼用チャートを呈示する視標呈示光学系と、前記視標呈示光学系における前記検眼用チャートの呈示を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記視標呈示光学系を制御して前記検眼用チャートの呈示を開始した時点から瞬間呈示時間が経つと前記検眼用チャートの呈示を終了させて、前記検眼用チャートを瞬間呈示する検眼装置であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
また、上記した各実施例では、検眼用チャートを瞬間呈示することと継続呈示をすることとを可能としていたが、検眼用チャートを瞬間呈示時間だけ呈示することができるものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
さらに、上記した各実施例では、中心注視点D1(中心位置)を含む縦線および横線でグリッドチャート31vを4分割した各分割領域の中心位置に4つの周辺注視点(D2〜D5)を設けていた。しかしながら、各周辺注視点は、それらを注視させることにより視標投影光学系31により被検眼E(被検者)に見せることのできるグリッドチャート31v(アムスラーチャート)が小さなものとなる場合であっても、実際に見せているグリッドチャート31vよりも大きな範囲で疾患の可能性があるか否かを確認することを可能とするものであれば、設ける位置および個数は適宜設定すればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
上記した各実施例では、各注視点(D1〜D5)を予めグリッドチャート31vに設けるものとしていたが、上記した効果を得ることができるものであれば、例えば、視標投影光学系31に各注視点(D1〜D5)の位置に対応して複数の光源(LED等)を設けて当該光源により各周辺注視点を形成するものであってもよく、グリッドチャート(格子状のパターン)の角で形成するものであってもよく、他の構成であってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。このとき、各注視点は、検者が固視目標として誘導し易いものであることや、被検者が固視目標として理解し易く注視し易いものであることが望ましい。このように、各光源により各注視点(D1〜D5)を形成する場合、グリッド補助記号51の各チェックマーク(51a〜51e(図6参照))が触れられると対応する光源と点灯させつつ他の光源を消灯させるものとする機能を持たせることにより、当該チェックマークを触れることで固視目標としての各注視点(D1〜D5)を切り換えることを可能とすることができる。
上記した各実施例では、格子状のパターンの箇所を白色としたグリッドチャート31vを被検眼Eに呈示している。しかしながら、グリッドチャート31vを被検眼Eに呈示するものであれば、例えば、格子状のパターンの箇所を適宜赤や緑や青の色として呈示する等のように、格子状のパターンの箇所の色を適宜変更可能とするものとしてもよい。このようなことは、眼屈折力測定装置10であれば、視標投影光学系31において、色補正フィルタ31bとして様々な色に対応した複数の色補正フィルタを用意し、その各色補正フィルタのうちのいずれかを光軸O2上に位置させることが可能な構成とすることにより、実現することができる。また、視標光源31aに替えて、種々の色の光(光束)を出射させることのできる光源を用いるものとしても、実現することができる。このような種々の色の光(光束)を出射させる光源としては、複数の光源を用意して点灯させる光源を適宜切り換えることで実現することができ、赤と緑と青との光源を用意するものとすればそれらを適宜組み合わせることで多くの色の光(光束)を出射させることができる。加えて、自覚式検眼装置60であれば、視標呈示部61(表示画面66)やコントローラ63の表示部75(表示画面75b)として、カラー表示が可能な液晶ディスプレイを用いることにより実現することができる。この場合、様々な色でグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検眼E(被検者)に見せることのできるので、例えば色に応じて反応(被検者が感じ取った見え方)が異なる場合であってもそれらも含めて適切に疾患の可能性があるか否かを判断することができる。すなわち、種々の色のグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を被検眼E(被検者)に見せることにより、色に応じた反応(被検者が感じ取った見え方)の差異を確認することが可能となる。また、被検眼E(被検者)において、最も視認性の高い色で呈示したグリッドチャート31v(アムスラーチャート)を見せることで、被検者が感じ取った見え方をより正確に把握することが可能となり、より適切に疾患の可能性があるか否かを判断することができる。このことは、視力チャート31wを含む他の検眼用チャートであっても同様である。
上記した各実施例では、グリッドチャート31v(アムスラーチャート)を、縦方向および横方向にそれぞれ20個のグリッド(マス目)が並べられて構成されているものとしたが、格子状のパターンとされているものであって上記した他覚測定(グリッドチャートテスト(アムスラーチャートテスト))を可能とするものであれば、大きさ寸法やグリッド(マス目)の数や全体の形状等は適宜設定すればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
上記した各実施例では、眼屈折力測定装置10および自覚式検眼装置60において、検眼用チャートを用いた自覚測定方法を実行するものとしていたが、被検眼に対して自覚測定のために注視させる自覚視標としての検眼用チャートを呈示して、その見え方を確認することで前記検眼用チャートに応じた前記被検眼の光学特性を測定する検眼用チャートを用いた自覚測定方法であって、前記検眼用チャートの呈示を開始する工程と、前記検眼用チャートの呈示を開始した時点から瞬間呈示時間が経ったか否かを判断する工程と、前記検眼用チャートの呈示開始した時点から前記瞬間呈示時間が経つと、前記検眼用チャートの呈示を終了する工程と、を含むものであればよく、上記した各実施例に限定するものではない。この他の例としては、例えば、紙に記載した検眼用チャート(視標)を瞬間呈示時間だけ被検眼(被検者)に呈示するものであってもよく、タブレット型コンピュータを用いて検眼用チャート(視標)を瞬間呈示時間だけ被検眼(被検者)に呈示するものであってもよい。
以上、本発明の検眼装置および検眼用チャートを用いた自覚測定方法を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。