JP6537186B2 - 導電性高分子分散液及びその製造方法、導電性混合液及びその製造方法、並びに導電性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、前記導電性フィルムの導電層においては、大気中にて導電性が経時的に低下することがあった。
そこで、大気中での導電性の経時的低下を防ぐ方法として、導電層に酸化防止剤を含有させる方法が提案されている(特許文献1)。
本発明は、大気中での経時的な導電性低下を充分に抑制すると共に本質的な導電性が高い導電層を容易に形成できる導電性高分子分散液及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、大気中での経時的な導電性低下が充分に抑制されていると共に本質的な導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
[1]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表されるヒドロトリアジン系化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒とを含有する、導電性高分子分散液。
(式(1)におけるR1,R2,R3は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基である。)
[3]エポキシ化合物をさらに含有し、前記分散媒が有機溶剤を含む、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[4]バインダ成分をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[5]前記バインダ成分が水分散性樹脂である、[4]に記載の導電性高分子分散液。
[6]前記バインダ成分が、アクリルモノマー又はアクリルオリゴマーである、[4]に記載の導電性高分子分散液。
[7]前記バインダ成分が硬化型シリコーンである、[4]に記載の導電性高分子分散液。
[8]前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[7]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[9]前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[8]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[11]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を乾燥させて乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体にアミン化合物及び有機溶剤を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程と、前記導電性混合液に、上記式(1)で表されるヒドロトリアジン系化合物を添加するヒドロトリアジン系化合物添加工程とを、有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[12]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液にエポキシ化合物を添加して導電性複合体を析出させて析出物を形成させる析出工程と、該析出物を回収する回収工程と、回収した析出物に有機溶剤を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程と、前記導電性混合液に、上記式(1)で表されるヒドロトリアジン系化合物を添加するヒドロトリアジン系化合物添加工程とを、有する、導電性高分子分散液の製造方法。
[13]前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[10]〜[12]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[14]前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[10]〜[13]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[15]フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[9]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液を塗工する塗工工程を有する、導電性フィルムの製造方法。
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、上記の導電性高分子分散液を容易に製造できる。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、大気中での経時的な導電性低下が充分に抑制されていると共に本質的な導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる。
本発明の一態様における導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ヒドロトリアジン系化合物と、該導電性複合体を分散させる分散媒とを含有する。
該導電性高分子分散液は、必要に応じて、バインダ成分、その他の添加剤を含有してもよい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、帯電防止性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
ただし、本態様におけるポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっている。
式(1)におけるR1,R2,R3は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基である。
任意の置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)等が挙げられる。これら置換基は、さらに置換基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミノ基、トリアルコキシシリル基等)を有してもよい。
ヒドロトリアジン系化合物の具体例としては、例えば、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロプレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
バインダ成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。
また、水溶性樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。本明細書において、水溶性とは、25℃の蒸留水に、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上溶解することである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー、エポキシモノマー、オルガノシロキサン等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。バインダ成分としてオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、導電層に離型性を付与することができる。
付加硬化型のオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーは、酸化防止剤の添加によって硬化阻害を起こすことがある。しかし、前記ヒドロトリアジン系化合物は、付加硬化型のオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーの硬化を阻害しにくいため、バインダ成分として付加硬化型のオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いる場合に好適である。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記ポリアニオン、前記ヒドロトリアジン系化合物及び前記バインダ成分以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。ただし、本態様の導電性高分子分散液では、前記ヒドロトリアジン系化合物によって導電層の大気中での経時的な導電性低下を抑制できるので、前記酸化防止剤を含まなくてもよい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液は、下記(a)〜(c)のいずれかの方法で製造できる。
(a)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に前記ヒドロトリアジン系化合物を添加するヒドロトリアジン系化合物添加工程を有する方法。
(b)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を乾燥させて乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体にアミン化合物及び有機溶剤を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程と、前記導電性混合液に前記ヒドロトリアジン系化合物を添加するヒドロトリアジン系化合物添加工程とを有する方法。
(c)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液にエポキシ化合物を添加して導電性複合体を析出させて析出物を形成させる析出工程と、該析出物を回収する回収工程と、回収した析出物に有機溶剤を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程と、前記導電性混合液に前記ヒドロトリアジン系化合物を添加するヒドロトリアジン系化合物添加工程とを有する方法。
(b)において、乾燥体に添加したアミン化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にドープに関与しない余剰のアニオン基に配位又は結合して、導電性複合体を疎水化することができる。疎水化された導電性複合体は有機溶剤に対する分散性が高くなる。
乾燥体に、アミン化合物及び有機溶剤を添加した後には、高圧ホモジナイザー等を用いて、高い剪断力を付与しながら攪拌することが好ましい。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。また、アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物は、炭素数2以上12以下の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数7以上12以下のアラルキル基、炭素数2以上12以下のアルキレン基、炭素数6以上12以下のアリーレン基、炭素数7以上12以下のアラルキレン基、及び炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基から選択される置換基を有していてもよい。
具体的な1級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
具体的な2級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な3級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等が挙げられる。アンモニウムの対となる陰イオンとしてはヒドロキシドイオンが挙げられる。
これらアミン化合物のうち、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなることから、3級アミンが好ましく、トリブチルアミン、トリオクチルアミンがより好ましい。
エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、アジピン酸グリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
これらエポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様の導電性フィルムの製造方法は、少なくとも、上記導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工する塗工工程を有する。
導電性フィルムの製造方法により、フィルム基材と、フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える導電性フィルムが得られる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂の中でも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
本明細書における平均厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、前記ヒドロトリアジン系化合物とを含有する。
導電層の平均厚みとしては、10nm以上5000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、30nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
塗工した導電性高分子分散液を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
導電性高分子分散液が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗工工程後、塗工した導電性高分子分散液に紫外線又は電子線を照射し、硬化させて導電層を形成する。これにより導電性フィルムを得る。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。
この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
上記PEDOT−PSS水分散液1000gを凍結乾燥して、12gの凍結乾燥体を得た。
イソプロピルアミン1000gに、製造例3で得た4.0gの凍結乾燥体と、3.5gのトリオクチルアミンを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、導電性混合液を得た。
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液100gにメタノール300g及びエポキシ化合物(共栄社化学株式会社製エポライトM−1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、エポキシ化合物がPSSのスルホン酸基に反応するため、スルホン酸基が消失し、PEDOT−PSSの水分散性が低下してPEDOT−PSSが析出した。これにより形成した析出物を濾過により回収した。該析出物1.575gを315gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して導電性混合液を得た。
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、メタノール80gと、バインダ成分(互応化学工業株式会社製プラスコートRZ−105、水分散ポリエステル、固形分濃度25質量%の水溶液)10gと、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン0.5g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して417質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で4日間放置した後の表面抵抗値(4日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表1に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
製造例4で得た導電性混合液81.25gに、ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製アートレジンUN−904M、固形分濃度80質量%のメチルエチルケトン溶液) 3.75gと、ジアセトンアルコール15gと、光重合開始剤(BASF製イルガキュア127)0.075gと、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン0.6g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して185質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジンを添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして導電性フィルムを得た。
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で4日間放置した後の表面抵抗値(4日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表2に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
製造例5で得た導電性混合液85gに、ポリエステル(東洋紡株式会社バイロン240、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液)15gと、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン0.6g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して141質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジンを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして導電性フィルムを得た。
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で4日間放置した後の表面抵抗値(4日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表3に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
製造例5で得た導電性混合液4.5gに付加硬化型シリコーン(信越化学工業社製KS−3703T、固形分濃度30質量%、トルエン溶液)15gと、トルエン25.5gと、メチルエチルケトン58.5gと、硬化用白金触媒(信越化学工業社製CAT−PL−50T)0.03gと、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン0.09g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して400質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.8のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、温度150℃、時間1分で加熱して、乾燥させると共に硬化させて、導電性フィルムを得た。
1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジンを添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして導電性フィルムを得た。
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で1日間放置した後の表面抵抗値(1日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表4に示す。また、形成後の導電層の表面を指の腹で強く擦った後の表面状態を目視で観察した。その観察結果も表4に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
Claims (20)
- バインダ成分をさらに含有する、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
- 前記バインダ成分が水分散性樹脂である、請求項4に記載の導電性高分子分散液。
- 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1、4、5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1、4〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- バインダ成分をさらに含有する、請求項2に記載の導電性混合液。
- 前記バインダ成分が、アクリルモノマー又はアクリルオリゴマーである、請求項8に記載の導電性混合液。
- 前記バインダ成分が硬化型シリコーンである、請求項8に記載の導電性混合液。
- 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項2、3、8、9のいずれか一項に記載の導電性混合液。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項2、3、8〜11のいずれか一項に記載の導電性混合液。
- 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項13に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項13又は16に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項14又は15に記載の導電性混合液の製造方法。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項14、15又は18に記載の導電性混合液の製造方法。
- フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1、4〜7のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液、又は請求項2、3、8〜12の何れか一項に記載の導電性混合液を塗工する塗工工程を有する、導電性フィルムの製造方法。
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