本発明の技術的思想は、あらゆる作業車両に適用することが可能である。本願では、代表的な作業車両であるトラクタを用いて説明する。
まず、トラクタ100について簡単に説明する。
図1は、トラクタ100を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
トラクタ100は、主に、フレーム1と、エンジン2と、トランスミッション3と、フロントアクスル4と、リヤアクスル5と、で構成されている。また、トラクタ100は、キャビン6を備えている。キャビン6は、その内側が操縦室になっており、運転座席やアクセルペダル、シフトレバーなどが配置されている。
フレーム1は、トラクタ100の前部における骨格をなす。フレーム1は、トランスミッション3やリヤアクスル5とともにトラクタ100のシャシを構成する。以下に説明するエンジン2は、フレーム1によって支持される。
エンジン2は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。つまり、エンジン2は、燃料を燃やすことによって回転動力を生み出す。なお、エンジン2には、エンジン制御装置が接続されている(図示せず)。エンジン制御装置は、オペレータがアクセルペダルなどを操作すると、その操作に応じてエンジン2の運転状態を変更する。また、エンジン2には、排気浄化装置2Eが備えられている。排気浄化装置2Eは、排気に含まれる微粒子や一酸化炭素、炭化水素などを酸化する。
トランスミッション3は、エンジン2の回転動力をフロントアクスル4やリヤアクスル5に伝達する。トランスミッション3には、連結クラッチを介してエンジン2の回転動力が入力される。なお、トランスミッション3には、変速機構3Sが設けられている(図2参照)。変速機構3Sは、オペレータがシフトレバーなどを操作すると、その操作に応じてトラクタ100の走行速度を変更する。また、トランスミッション3には、前後進切換機構3Dや作業機駆動機構3Pが設けられている(図2参照)。前後進切換機構3Dは、オペレータがリバーサレバーを操作すると、その操作に応じてトラクタ100の走行方向を変更する。作業機駆動機構3Pは、オペレータがパワースイッチなどを操作すると、その操作に応じて作業機(図示せず:例えばロータリーなど)の稼働態様を変更する。
フロントアクスル4は、エンジン2の回転動力をフロントタイヤ41に伝達する。フロントアクスル4には、トランスミッション3を介してエンジン2の回転動力が入力される。なお、フロントアクスル4には、操舵装置が並設されている(図示せず)。操舵装置は、オペレータがハンドルを操作すると、その操作に応じてフロントタイヤ41の舵角を変更する。
リヤアクスル5は、エンジン2の回転動力をリヤタイヤ51に伝達する。リヤアクスル5には、トランスミッション3を介してエンジン2の回転動力が入力される。なお、リヤアクスル5には、制動機構5Bが備えられている(図2参照)。制動機構5Bは、オペレータがブレーキペダルを操作すると、その操作に応じてリヤタイヤ51の回転速度を低下若しくは停止させる。また、制動機構5Bは、オペレータがハンドルを操作すると、その操作に応じて一方のリヤタイヤ51の回転速度を低下若しくは停止させることもできる(かかる機能を「オートブレーキ機能」という)。
次に、トラクタ100が油圧式変速仕様である場合の動力伝達系統について説明する。
トラクタ100の動力伝達系統は、主に、トランスミッション3と、フロントアクスル4と、リヤアクスル5と、で構成されている。ここでは、トランスミッション3の構造に着目して説明する。
図2は、油圧式変速仕様の動力伝達系統を示している。図3は、油圧式変速仕様のトランスミッション3を示している。図4は、油圧式変速仕様のトランスミッション3の構造を示している。図5は、図4の矢印Fから見た図であり、図6は、図4の矢印Rから見た図である。そして、図7は、図4の矢印Lから見た図である。
トランスミッション3は、作動油によって稼動する油圧ユニットを備えている。例えば、主変速装置31を構成する無段変速装置(HMT)311などである。
主変速装置31は、インプットシャフト312とアウトプットシャフト313の回転速度の比を無段階に変更できる。無段変速装置311は、インプットシャフト312とアウトプットシャフト313が接続されている。インプットシャフト312は、回転自在に支持されたプランジャブロック314に連結されている。プランジャブロック314は、高圧の作動油を送り出し、油圧ポンプ31Pとしての機能を果たす。アウトプットシャフト313は、回転自在に支持されたモータケース315に連結されている。モータケース315は、高圧の作動油を受けることによって回転し、油圧モータ31Mとしての機能を果たす。なお、アウトプットシャフト313には、前進駆動ギヤ316と後進駆動ギヤ317が取り付けられている。前進駆動ギヤ316と後進駆動ギヤ317は、前後進切換装置32へ回転動力を伝達する。
前後進切換装置32は、前進クラッチ321と後進クラッチ322のいずれかを介して回転動力を伝達できる。前進クラッチ321は、前進駆動ギヤ316に噛み合う前進従動ギヤ323を有している。前進クラッチ321は、作動することにより、アウトプットシャフト313の回転動力をセンターシャフト325に伝達する。後進クラッチ322は、リバースギヤを介して後進駆動ギヤ316に噛み合う後進従動ギヤ324を有している。後進クラッチ322は、作動することにより、アウトプットシャフト313の回転動力をセンターシャフト325に伝達する。なお、センターシャフト325には、超低速駆動ギヤ326と一速駆動ギヤ327と二速駆動ギヤ328が取り付けられている。超低速駆動ギヤ326と一速駆動ギヤ327と二速駆動ギヤ328は、副変速装置33へ回転動力を伝達する。
副変速装置33は、センターシャフト325とセンターシャフト337の回転速度の比を複数段階に変更できる。超低速ドグユニット331は、超低速駆動ギヤ326に噛み合う超低速従動ギヤ334に隣接している。超低速ドグユニット331は、作動することにより、センターシャフト325の回転動力をセンターシャフト337に伝達する。一速ドグユニット332は、一速駆動ギヤ327に噛み合う一速従動ギヤ335に隣接している。一速ドグユニット332は、作動することにより、センターシャフト325の回転動力をセンターシャフト337に伝達する。二速ドグユニット333は、二速駆動ギヤ328に噛み合う二速従動ギヤ336に隣接している。二速ドグユニット333は、作動することにより、センターシャフト325の回転動力をセンターシャフト337に伝達する。なお、センターシャフト337には、フロント駆動ギヤ338とリヤピニオンギヤ339が取り付けられている。フロント駆動ギヤ338は、フロント従動ギヤ33Aと等速駆動ギヤ33Bと増速駆動ギヤ33Cを有するカウンタシャフト33Dを介して前輪駆動切換装置34へ回転動力を伝達する。リヤピニオンギヤ339は、デファレンシャルギヤユニット33Eを介してリヤアクスル5へ回転動力を伝達する。
前輪駆動切換装置34は、等速クラッチ341と増速クラッチ342のいずれかを介して回転動力を伝達できる。等速クラッチ341は、等速駆動ギヤ33Bに噛み合う等速従動ギヤ343を有している。等速クラッチ341は、作動することにより、カウンタシャフト33Dの回転動力をセンターシャフト345に伝達する。増速クラッチ342は、増速駆動ギヤ33Cに噛み合う増速従動ギヤ344を有している。増速クラッチ342は、作動することにより、カウンタシャフト33Dの回転動力をセンターシャフト345に伝達する。なお、センターシャフト345には、プロペラシャフト346が取り付けられている。また、プロペラシャフト346には、フロントピニオンギヤ347が取り付けられている。フロントピニオンギヤ347は、フロントアクスル4へ回転動力を伝達する。
このような構造により、トランスミッション3は、トラクタ100の走行速度(停止を含む走行速度)を変更自在としている。また、トランスミッション3は、トラクタ100の走行方向(前進又は後進)を変更自在としている。更に、トランスミッション3は、フロントタイヤ41の駆動態様(等速四輪駆動若しくは増速四輪駆動又は非駆動)を変更自在としている。
作業機駆動切換装置35は、PTOクラッチ351を介して回転動力を伝達できる。PTOクラッチ351は、駆動ギヤ318に噛み合う従動ギヤ352を有している。PTOクラッチ351は、作動することにより、インプットシャフト312の回転動力をセンターシャフト353に伝達する。なお、センターシャフト353には、一速駆動ギヤ354と二速駆動ギヤ355と三速駆動ギヤ356と四速駆動ギヤ357と逆転駆動ギヤ358が取り付けられている。一速駆動ギヤ354と二速駆動ギヤ355と三速駆動ギヤ356と四速駆動ギヤ357と逆転駆動ギヤ358は、作業機変速装置36へ回転動力を伝達する。
作業機変速装置36は、センターシャフト353とセンターシャフト369の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット361は、一速従動ギヤ364と二速従動ギヤ365の間に配置されている。第一ドグユニット361は、スリーブが一方へ摺動することにより、一速駆動ギヤ354と一速従動ギヤ364を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。また、第一ドグユニット361は、スリーブが他方へ摺動することにより、二速駆動ギヤ355と二速従動ギヤ365を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。第二ドグユニット362は、三速従動ギヤ366に隣接している。第二ドグユニット362は、スリーブが一方へ摺動することにより、三速駆動ギヤ356と三速従動ギヤ366を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。第三ドグユニット363は、四速従動ギヤ367と逆転従動ギヤ368の間に配置されている。第三ドグユニット363は、スリーブが一方へ摺動することにより、四速駆動ギヤ357と四速従動ギヤ367を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。また、第三ドグユニット363は、スリーブが他方へ摺動することにより、逆転駆動ギヤ358とリバースギヤと逆転従動ギヤ368を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。なお、センターシャフト369には、ドライブシャフト36Aが取り付けられている。また、ドライブシャフト36Aには、PTO駆動ギヤ36Bが取り付けられている。PTO駆動ギヤ36Bは、PTO従動ギヤ36Cを有するPTOシャフト36Dを介して作業機へ回転動力を伝達する。
このような構造により、トランスミッション3は、作業機の稼働速度(停止を含む稼働速度)を変更自在としている。また、トランスミッション3は、作業機の稼働方向(正転又は逆転)を変更自在としている。
次に、トラクタ100が機械式変速仕様である場合の動力伝達系統について説明する。
トラクタ100の動力伝達系統は、主に、トランスミッション3と、フロントアクスル4と、リヤアクスル5と、で構成されている。ここでは、トランスミッション3の構造に着目して説明する。
図8は、機械式変速仕様の動力伝達系統を示している。図9は、機械式変速仕様のトランスミッション3を示している。図10は、機械式変速仕様のトランスミッション3の構造を示している。図11は、図10の矢印Fから見た図であり、図12は、図10の矢印Rから見た図である。そして、図13は、図10の矢印Lから見た図である。
トランスミッション3は、作動油によって稼動する油圧ユニットを備えている。例えば、動力伝達切換装置37を構成する連結遮断装置(以降「メインクラッチ371」とする)などである。
動力伝達切換装置37は、メインクラッチ371を介して回転動力を伝達できる。メインクラッチ371は、インプットシャフト372とアウトプットシャフト373が接続されている。メインクラッチ371は、作動することにより、インプットシャフト372の回転動力をアウトプットシャフト373に伝達する。なお、アウトプットシャフト373には、シンクロユニット37Aが取り付けられている。シンクロユニット37Aは、スリーブが一方へ摺動することにより、アウトプットシャフト373の回転動力をギヤシャフト374に伝達する(正転させる)。また、シンクロユニット37Aは、スリーブが他方へ摺動することにより、カウンタシャフト37Dを介してアウトプットシャフト373の回転動力をギヤシャフト374に伝達する(逆転させる)。ギヤシャフト374には、超低速駆動ギヤ375と一速駆動ギヤ376と二速駆動ギヤ377と三速駆動ギヤ378が取り付けられている。超低速駆動ギヤ375と一速駆動ギヤ376と二速駆動ギヤ377と三速駆動ギヤ378は、主変速装置38へ回転動力を伝達する。
主変速装置38は、ギヤシャフト374とセンターシャフト387の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット381は、超低速従動ギヤ383と三速従動ギヤ386の間に配置されている。第一ドグユニット381は、スリーブが一方へ摺動することにより、超低速駆動ギヤ375と超低速従動ギヤ383を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。また、第一ドグユニット381は、スリーブが他方へ摺動することにより、三速駆動ギヤ378と三速従動ギヤ386を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。第二ドグユニット382は、一速従動ギヤ384と二速従動ギヤ385の間に配置されている。第二ドグユニット382は、スリーブが一方へ摺動することにより、一速駆動ギヤ376と一速従動ギヤ384を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。また、第二ドグユニット382は、スリーブが他方へ摺動することにより、二速駆動ギヤ377と二速従動ギヤ385を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。なお、センターシャフト387には、第一駆動ギヤ388と第二駆動ギヤ389が取り付けられている。第一駆動ギヤ388と第二駆動ギヤ389は、副変速装置39へ回転動力を伝達する。
副変速装置39は、センターシャフト387とセンターシャフト397の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット391は、第一従動ギヤ393と第二従動ギヤ394の間に配置されている。第一ドグユニット391は、スリーブが一方へ摺動することにより、第一駆動ギヤ388と第一従動ギヤ393を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。また、第一ドグユニット391は、スリーブが他方へ摺動することにより、第二駆動ギヤ389と第二従動ギヤ394を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。第二ドグユニット392は、第三従動ギヤ395と第四従動ギヤ396の間に配置されている。第二ドグユニット392は、スリーブが一方へ摺動することにより、第一駆動ギヤ388や第一従動ギヤ393のほか、カウンタシャフト398と第三従動ギヤ395を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。また、第二ドグユニット392は、スリーブが他方へ摺動することにより、第一駆動ギヤ388や第一従動ギヤ393のほか、カウンタシャフト398と第四従動ギヤ396を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。なお、センターシャフト397には、フロント駆動ギヤ399とリヤピニオンギヤ39Aが取り付けられている。フロント駆動ギヤ399は、フロント従動ギヤ39Bと等速駆動ギヤ39Cと増速駆動ギヤ39Dを有するカウンタシャフト39Eを介して前輪駆動切換装置34へ回転動力を伝達する。リヤピニオンギヤ39Aは、デファレンシャルギヤユニット39Fを介してリヤアクスル5へ回転動力を伝達する。
前輪駆動切換装置34は、等速クラッチ341と増速クラッチ342のいずれかを介して回転動力を伝達できる。等速クラッチ341は、等速駆動ギヤ39Cに噛み合う等速従動ギヤ343を有している。等速クラッチ341は、作動することにより、カウンタシャフト39Eの回転動力をセンターシャフト345に伝達する。増速クラッチ342は、増速駆動ギヤ39Dに噛み合う増速従動ギヤ344を有している。増速クラッチ342は、作動することにより、カウンタシャフト39Eの回転動力をセンターシャフト345に伝達する。なお、センターシャフト345には、プロペラシャフト346が取り付けられている。また、プロペラシャフト346には、フロントピニオンギヤ347が取り付けられている。フロントピニオンギヤ347は、フロントアクスル4へ回転動力を伝達する。
このような構造により、トランスミッション3は、トラクタ100の走行速度(停止を含む走行速度)を変更自在としている。また、トランスミッション3は、トラクタ100の走行方向(前進又は後進)を変更自在としている。更に、トランスミッション3は、フロントタイヤ41の駆動態様(等速四輪駆動若しくは増速四輪駆動又は非駆動)を変更自在としている。
作業機駆動切換装置35は、PTOクラッチ351を介して回転動力を伝達できる。PTOクラッチ351は、駆動ギヤ379に噛み合う従動ギヤ352を有している。PTOクラッチ351は、作動することにより、インプットシャフト372の回転動力をセンターシャフト353に伝達する。なお、センターシャフト353には、一速駆動ギヤ354と二速駆動ギヤ355と三速駆動ギヤ356と四速駆動ギヤ357と逆転駆動ギヤ358が取り付けられている。一速駆動ギヤ354と二速駆動ギヤ355と三速駆動ギヤ356と四速駆動ギヤ357と逆転駆動ギヤ358は、作業機変速装置36へ回転動力を伝達する。
作業機変速装置36は、センターシャフト353とセンターシャフト369の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット361は、一速従動ギヤ364と二速従動ギヤ365の間に配置されている。第一ドグユニット361は、スリーブが一方へ摺動することにより、一速駆動ギヤ354と一速従動ギヤ364を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。また、第一ドグユニット361は、スリーブが他方へ摺動することにより、二速駆動ギヤ355と二速従動ギヤ365を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。第二ドグユニット362は、三速従動ギヤ366に隣接している。第二ドグユニット362は、スリーブが一方へ摺動することにより、三速駆動ギヤ356と三速従動ギヤ366を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。第三ドグユニット363は、四速従動ギヤ367と逆転従動ギヤ368の間に配置されている。第三ドグユニット363は、スリーブが一方へ摺動することにより、四速駆動ギヤ357と四速従動ギヤ367を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。また、第三ドグユニット363は、スリーブが他方へ摺動することにより、逆転駆動ギヤ358とリバースギヤと逆転従動ギヤ368を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。なお、センターシャフト369には、ドライブシャフト36Aが取り付けられている。また、ドライブシャフト36Aには、PTO駆動ギヤ36Bが取り付けられている。PTO駆動ギヤ36Bは、PTO従動ギヤ36Cを有するPTOシャフト36Dを介して作業機へ回転動力を伝達する。
このような構造により、トランスミッション3は、作業機の稼働速度(停止を含む稼働速度)を変更自在としている。また、トランスミッション3は、作業機の稼働方向(正転又は逆転)を変更自在としている。
次に、トランスミッションハウジング7について説明する。
図14は、トランスミッションハウジング7の構成を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
トランスミッションハウジング7は、主に、メインブロック71と、センターブロック72と、フロントカバー73と、リヤカバー74と、で構成されている。なお、メインブロック71からフロントカバー73は、油圧式変速仕様と機械式変速仕様で共通であるが、リヤカバー74は、油圧式変速仕様と機械式変速仕様で異なる。
図15は、メインブロック71を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図16は、メインブロック71の詳細を示す投影図である。図16の(A)は、メインブロック71の右側面図であり、図16の(B)は、メインブロック71の前面図である。そして、図16の(C)は、メインブロック71の後面図である。
メインブロック71は、トランスミッションハウジング7の主たる構造体である。メインブロック71は、ねずみ鋳鉄(例えばFC250)による鋳造品である。メインブロック71は、その前面にセンターブロック72の取付座面71Fが形成されている。メインブロック71は、その内側に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、アウトプットシャフト313若しくはギヤシャフト374のベアリング孔711と、センターシャフト325・387のベアリング孔712と、センターシャフト337・397のベアリング孔713と、センターシャフト353のベアリング孔714と、センターシャフト369のベアリング孔715と、が設けられている。また、メインブロック71は、その後面にリヤカバー74の取付座面71Bが形成されている。メインブロック71は、その内側に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、ドライブシャフト36Aのベアリング孔716と、PTOシャフト36Dのベアリング孔717と、が設けられている。なお、メインブロック71は、その右側面に第一電磁バルブや第二電磁バルブの取付座面71Rが形成されている。また、リヤアクスル5の取付座面71Aも形成されている。
図17は、センターブロック72を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図17は、センターブロック72の詳細を示す投影図である。図17の(A)は、センターブロック72の右側面図であり、図17の(B)は、センターブロック72の前面図である。そして、図17の(C)は、センターブロック72の後面図である。
センターブロック72は、メインブロック71の前端面に固定される。センターブロック72は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。センターブロック72は、その前面にフロントカバー73の取付座面72Fが形成されている。センターブロック72は、取付座面72Fに空間72Sが形成されている。具体的には、フィルタ91(図3、図9参照)へ送られる作動油の通路となるギャラリの一部が形成されている。また、センターブロック72は、その後面にメインブロック71の取付座面72Bが形成されている。センターブロック72は、その内側に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、アウトプットシャフト313若しくはギヤシャフト374のベアリング孔721と、センターシャフト325・387のベアリング孔722と、センターシャフト337・397のベアリング孔723と、センターシャフト345のベアリング孔724と、センターシャフト353のベアリング孔725と、カウンタシャフト33D・39Eのベアリング孔726と、が設けられている。なお、センターブロック72は、ガスケット76を介してメインブロック71に固定される(図14参照)。ガスケット76には、ボルトを通すための穴のほか、作動油を通すための穴が開けられている。
図19は、フロントカバー73を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図20は、フロントカバー73の詳細を示す投影図である。図20の(A)は、フロントカバー73の右側面図であり、図20の(B)は、フロントカバー73の前面図である。そして、図20の(C)は、フロントカバー73の後面図である。
フロントカバー73は、センターブロック72の前端面に固定される。フロントカバー73は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。フロントカバー73は、その前面に第三電磁バルブ83(図3、図9参照)の取付座面73Fが形成されている。また、フロントカバー73は、その前面に油圧ポンプ(図示せず)の取付座面73Pが形成されている。フロントカバー73は、取付座面73Fや取付座面73Pの周囲に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、インプットシャフト312・372のベアリング孔731と、センターシャフト345のベアリング孔732と、カウンタシャフト33D・39Eのベアリング孔733(貫通せず)と、センターシャフト353のベアリング孔734と、ポンプギヤシャフト359(図2、図8参照)のベアリング孔735と、が設けられている。更に、フィルタ91の取付座73Mとリターンパイプ92(図3、図9参照)の取付座73Nが設けられている。また、フロントカバー73は、その後面にセンターブロック72の取付座面73Bが形成されている。フロントカバー73は、取付座面73Bに空間73Sが形成されている。具体的には、フィルタ91へ送られる作動油の通路となるギャラリの一部が形成されている。なお、フロントカバー73は、ガスケット77を介してセンターブロック72に固定される(図14参照)。ガスケット77には、ボルトを通すための穴のほか、作動油を通すための穴が開けられている。
図21は、油圧式変速仕様のリヤカバー74を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図22は、油圧式変速仕様のリヤカバー74の詳細を示す投影図である。図22の(A)は、リヤカバー74の右側面図であり、図22の(B)は、リヤカバー74の前面図である。そして、図22の(C)は、リヤカバー74の後面図である。
リヤカバー74は、メインブロック71の後端面に固定される。リヤカバー74は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。リヤカバー74は、その前面にメインブロック71の取付座面74Fが形成されている。リヤカバー74は、その内側に空間74Sが形成されている。具体的には、主変速装置31に送られる作動油の通路となるギャラリの一部が形成されている。また、リヤカバー74は、その後面にPTOシャフトケースの取付座面74Bが形成されている。リヤカバー74は、取付座面74Bの周囲に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、インプットシャフト312のベアリング孔741(貫通せず)と、ドライブシャフト36Aのベアリング孔742(貫通せず)と、PTOシャフト36Dのベアリング孔743と、が設けられている。更に、各種センサ(図示せず)の取付座74Mと電動アクチュエータ(図示せず)の収容室74Nが設けられている。なお、リヤカバー74は、ガスケット78を介してメインブロック71に固定される(図14参照)。ガスケット78には、ボルトを通すための穴が開けられている。
図23は、機械式変速仕様のリヤカバー74を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図24は、機械式変速仕様のリヤカバー74の詳細を示す投影図である。図24の(A)は、リヤカバー74の右側面図であり、図24の(B)は、リヤカバー74の前面図である。そして、図24の(C)は、リヤカバー74の後面図である。
リヤカバー74は、メインブロック71の後端面に固定される。リヤカバー74は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。リヤカバー74は、その前面にメインブロック71の取付座面74Fが形成されている。リヤカバー74は、その内側にユニットホルダー(図示せず)の取付座面74M・74Nが形成されている。また、リヤカバー74は、その後面にPTOシャフトケースの取付座面74Bが形成されている。リヤカバー74は、取付座面74Bの周囲に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、インプットシャフト372のベアリング孔741(貫通せず)と、ドライブシャフト36Aのベアリング孔742(貫通せず)と、PTOシャフト36Dのベアリング孔743と、が設けられている。更に、リヤカバー74は、その右側面に第一作動油パイプ(図示せず)や第二作動油パイプ(図示せず)の取付座面74Rが形成されている。なお、リヤカバー74は、ガスケット78を介してメインブロック71に固定される(図14参照)。ガスケット78には、ボルトを通すための穴が開けられている。
このように、本トランスミッション3は、油圧ユニットとして無段変速装置311若しくは連結遮断装置371のいずれかを選択可能としている。これにより、本トランスミッション3は、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の互換性を確保しつつ、様々な仕様に変更できる。
また、油圧ユニットが無段変速装置311である場合、ハウジング(トランスミッションハウジング7)は、無段変速装置311を介して可動する前後進切換装置32及び副変速装置33を収容可能としている。これにより、本トランスミッション3は、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の互換性を確保しつつ、油圧式変速仕様を実現できる。
更に、油圧ユニットが連結遮断装置371である場合、ハウジング(トランスミッションハウジング7)は、連結遮断装置371を介して可動する主変速装置38及び副変速装置39を収容可能としている。これにより、本トランスミッション3は、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の互換性を確保しつつ、機械式変速仕様を実現できる。
加えて、ハウジング(トランスミッションハウジング7)は、油圧ユニットが無段変速装置311である場合と油圧ユニットが連結遮断装置371である場合において、メインブロック71及びセンターブロック72及びフロントカバー73が共通となる。これにより、本トランスミッション3は、油圧式変速仕様又は機械式変速仕様のいずれに関わらず、コストの低減を実現できる。