本発明の技術的思想は、あらゆる作業車両に適用することが可能である。本願では、代表的な作業車両であるトラクタを用いて説明する。
まず、トラクタ100について簡単に説明する。
図1は、トラクタ100を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
トラクタ100は、主に、フレーム1と、エンジン2と、トランスミッション3と、フロントアクスル4と、リヤアクスル5と、で構成されている。また、トラクタ100は、キャビン6を備えている。キャビン6は、その内側が操縦室になっており、運転座席やアクセルペダル、シフトレバーなどが配置されている。
フレーム1は、トラクタ100の前部における骨格をなす。フレーム1は、トランスミッション3やリヤアクスル5とともにトラクタ100のシャシを構成する。以下に説明するエンジン2は、フレーム1によって支持される。
エンジン2は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。つまり、エンジン2は、燃料を燃やすことによって回転動力を生み出す。なお、エンジン2には、エンジン制御装置が接続されている(図示せず)。エンジン制御装置は、オペレータがアクセルペダルなどを操作すると、その操作に応じてエンジン2の運転状態を変更する。また、エンジン2には、排気浄化装置2Eが備えられている。排気浄化装置2Eは、排気に含まれる微粒子や一酸化炭素、炭化水素などを酸化する。
トランスミッション3は、エンジン2の回転動力をフロントアクスル4やリヤアクスル5に伝達する。トランスミッション3には、連結クラッチを介してエンジン2の回転動力が入力される。なお、トランスミッション3には、変速機構3Sが設けられている(図2参照)。変速機構3Sは、オペレータがシフトレバーなどを操作すると、その操作に応じてトラクタ100の走行速度を変更する。また、トランスミッション3には、前輪駆動機構3Fや作業機駆動機構3Pが設けられている(図2参照)。前輪駆動機構3Fは、オペレータがセレクトスイッチを操作すると、その操作に応じてフロントタイヤ41の駆動態様を変更する。作業機駆動機構3Pは、オペレータがパワースイッチなどを操作すると、その操作に応じて作業機(図示せず:例えばロータリーなど)の稼働態様を変更する。
フロントアクスル4は、エンジン2の回転動力をフロントタイヤ41に伝達する。フロントアクスル4には、トランスミッション3を介してエンジン2の回転動力が入力される。なお、フロントアクスル4には、操舵装置が並設されている(図示せず)。操舵装置は、オペレータがハンドルを操作すると、その操作に応じてフロントタイヤ41の舵角を変更する。
リヤアクスル5は、エンジン2の回転動力をリヤタイヤ51に伝達する。リヤアクスル5には、トランスミッション3を介してエンジン2の回転動力が入力される。なお、リヤアクスル5には、制動機構5Bが備えられている(図2参照)。制動機構5Bは、オペレータがブレーキペダルを操作すると、その操作に応じてリヤタイヤ51の回転速度を低下若しくは停止させる。また、制動機構5Bは、オペレータがハンドルを操作すると、その操作に応じて一方のリヤタイヤ51の回転速度を低下若しくは停止させることもできる(かかる機能を「オートブレーキ機能」という)。
次に、トラクタ100の動力伝達系統について説明する。
トラクタ100の動力伝達系統は、主に、トランスミッション3と、フロントアクスル4と、リヤアクスル5と、で構成されている。ここでは、トランスミッション3の構造に着目して説明する。
図2は、トラクタ100の動力伝達系統を示している。図3は、トランスミッション3を示している。図4は、トランスミッション3の構造を示している。図5は、図4の矢印Fから見た図であり、図6は、図4の矢印Rから見た図である。そして、図7は、図4の矢印Lから見た図である。
トランスミッション3は、作動油によって稼動する油圧ユニットを備えている。例えば、動力伝達切換装置37を構成するメインクラッチ371などである。
動力伝達切換装置37は、メインクラッチ371を介して回転動力を伝達できる。メインクラッチ371は、インプットシャフト372とアウトプットシャフト373が接続されている。メインクラッチ371は、作動することにより、インプットシャフト372の回転動力をアウトプットシャフト373に伝達する。なお、アウトプットシャフト373には、シンクロユニット37Aが取り付けられている。シンクロユニット37Aは、スリーブ37As(図8参照)が一方へ摺動することにより、アウトプットシャフト373の回転動力をギヤシャフト374に伝達する(正転させる)。また、シンクロユニット37Aは、スリーブ37Asが他方へ摺動することにより、カウンタシャフト37Dを介してアウトプットシャフト373の回転動力をギヤシャフト374に伝達する(逆転させる)。ギヤシャフト374には、超低速駆動ギヤ375と一速駆動ギヤ376と二速駆動ギヤ377と三速駆動ギヤ378が取り付けられている。超低速駆動ギヤ375と一速駆動ギヤ376と二速駆動ギヤ377と三速駆動ギヤ378は、主変速装置38へ回転動力を伝達する。なお、シンクロユニット37Aやカウンタシャフト37Dは、前後進切換機構3Rを構成している。前後進切換機構3Rについては後述する。
主変速装置38は、ギヤシャフト374とセンターシャフト387の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット381は、超低速従動ギヤ383と三速従動ギヤ386の間に配置されている。第一ドグユニット381は、スリーブが一方へ摺動することにより、超低速駆動ギヤ375と超低速従動ギヤ383を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。また、第一ドグユニット381は、スリーブが他方へ摺動することにより、三速駆動ギヤ378と三速従動ギヤ386を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。第二ドグユニット382は、一速従動ギヤ384と二速従動ギヤ385の間に配置されている。第二ドグユニット382は、スリーブが一方へ摺動することにより、一速駆動ギヤ376と一速従動ギヤ384を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。また、第二ドグユニット382は、スリーブが他方へ摺動することにより、二速駆動ギヤ377と二速従動ギヤ385を介してギヤシャフト374の回転動力をセンターシャフト387に伝達する。なお、センターシャフト387には、第一駆動ギヤ388と第二駆動ギヤ389が取り付けられている。第一駆動ギヤ388と第二駆動ギヤ389は、副変速装置39へ回転動力を伝達する。
副変速装置39は、センターシャフト387とセンターシャフト397の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット391は、第一従動ギヤ393と第二従動ギヤ394の間に配置されている。第一ドグユニット391は、スリーブが一方へ摺動することにより、第一駆動ギヤ388と第一従動ギヤ393を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。また、第一ドグユニット391は、スリーブが他方へ摺動することにより、第二駆動ギヤ389と第二従動ギヤ394を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。第二ドグユニット392は、第三従動ギヤ395と第四従動ギヤ396の間に配置されている。第二ドグユニット392は、スリーブが一方へ摺動することにより、第一駆動ギヤ388や第一従動ギヤ393のほか、カウンタシャフト398と第三従動ギヤ395を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。また、第二ドグユニット392は、スリーブが他方へ摺動することにより、第一駆動ギヤ388や第一従動ギヤ393のほか、カウンタシャフト398と第四従動ギヤ396を介してセンターシャフト387の回転動力をセンターシャフト397に伝達する。なお、センターシャフト397には、フロント駆動ギヤ399とリヤピニオンギヤ39Aが取り付けられている。フロント駆動ギヤ399は、フロント従動ギヤ39Bと等速駆動ギヤ39Cと増速駆動ギヤ39Dを有するカウンタシャフト39Eを介して前輪駆動切換装置34へ回転動力を伝達する。リヤピニオンギヤ39Aは、デファレンシャルギヤユニット39Fを介してリヤアクスル5へ回転動力を伝達する。
前輪駆動切換装置34は、等速クラッチ341と増速クラッチ342のいずれかを介して回転動力を伝達できる。等速クラッチ341は、等速駆動ギヤ39Cに噛み合う等速従動ギヤ343を有している。等速クラッチ341は、作動することにより、カウンタシャフト39Eの回転動力をセンターシャフト345に伝達する。増速クラッチ342は、増速駆動ギヤ39Dに噛み合う増速従動ギヤ344を有している。増速クラッチ342は、作動することにより、カウンタシャフト39Eの回転動力をセンターシャフト345に伝達する。なお、センターシャフト345には、プロペラシャフト346が取り付けられている。また、プロペラシャフト346には、フロントピニオンギヤ347が取り付けられている。フロントピニオンギヤ347は、フロントアクスル4へ回転動力を伝達する。
このような構造により、トランスミッション3は、トラクタ100の走行速度(停止を含む走行速度)を変更自在としている。また、トランスミッション3は、トラクタ100の走行方向(前進又は後進)を変更自在としている。更に、トランスミッション3は、フロントタイヤ41の駆動態様(等速四輪駆動若しくは増速四輪駆動又は非駆動)を変更自在としている。
作業機駆動切換装置35は、PTOクラッチ351を介して回転動力を伝達できる。PTOクラッチ351は、駆動ギヤ379に噛み合う従動ギヤ352を有している。PTOクラッチ351は、作動することにより、インプットシャフト372の回転動力をセンターシャフト353に伝達する。なお、センターシャフト353には、一速駆動ギヤ354と二速駆動ギヤ355と三速駆動ギヤ356と四速駆動ギヤ357と逆転駆動ギヤ358が取り付けられている。一速駆動ギヤ354と二速駆動ギヤ355と三速駆動ギヤ356と四速駆動ギヤ357と逆転駆動ギヤ358は、作業機変速装置36へ回転動力を伝達する。
作業機変速装置36は、センターシャフト353とセンターシャフト369の回転速度の比を複数段階に変更できる。第一ドグユニット361は、一速従動ギヤ364と二速従動ギヤ365の間に配置されている。第一ドグユニット361は、スリーブが一方へ摺動することにより、一速駆動ギヤ354と一速従動ギヤ364を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。また、第一ドグユニット361は、スリーブが他方へ摺動することにより、二速駆動ギヤ355と二速従動ギヤ365を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。第二ドグユニット362は、三速従動ギヤ366に隣接している。第二ドグユニット362は、スリーブが一方へ摺動することにより、三速駆動ギヤ356と三速従動ギヤ366を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。第三ドグユニット363は、四速従動ギヤ367と逆転従動ギヤ368の間に配置されている。第三ドグユニット363は、スリーブが一方へ摺動することにより、四速駆動ギヤ357と四速従動ギヤ367を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。また、第三ドグユニット363は、スリーブが他方へ摺動することにより、逆転駆動ギヤ358とリバースギヤと逆転従動ギヤ368を介してセンターシャフト353の回転動力をセンターシャフト369に伝達する。なお、センターシャフト369には、ドライブシャフト36Aが取り付けられている。また、ドライブシャフト36Aには、PTO駆動ギヤ36Bが取り付けられている。PTO駆動ギヤ36Bは、PTO従動ギヤ36Cを有するPTOシャフト36Dを介して作業機へ回転動力を伝達する。
このような構造により、トランスミッション3は、作業機の稼働速度(停止を含む稼働速度)を変更自在としている。また、トランスミッション3は、作業機の稼働方向(正転又は逆転)を変更自在としている。
ここで、前後進切換機構3Rについて詳しく説明する。
図8は、前後進切換機構3Rを示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
前後進切換機構3Rは、ギヤシャフト374の回転方向を変更できる。シンクロユニット37Aは、出力ギヤ37Bと入力ギヤ37Cの間に配置されている。カウンタシャフト37Dは、従動ギヤ37Eと駆動ギヤ37Fを有しており、ギヤシャフト374に対して並行に配置されている。シンクロユニット37Aは、スリーブ37Asが一方へ摺動することにより、アウトプットシャフト373の回転動力を直接的にギヤシャフト374に伝達する(正転させる)。また、シンクロユニット37Aは、スリーブ37Asが他方へ摺動することにより、出力ギヤ37Bと従動ギヤ37Eを介してアウトプットシャフト373の回転動力をカウンタシャフト37Dに伝達する。そして、駆動ギヤ37Fとリバースギヤ37Gと入力ギヤ37Cを介してカウンタシャフト37Dの回転動力をギヤシャフト374に伝達する(逆転させる)。つまり、アウトプットシャフト373の回転動力を間接的にギヤシャフト374に伝達する。
加えて、前後進切換機構3Rは、シフトユニット37Hを備えている。シフトユニット37Hは、アウトプットシャフト373やギヤシャフト374の近傍に配置されている。シフトロッド37Iは、シフトフォーク37Jを支持した状態で、ギヤシャフト374に対して並行に配置されている。シフトユニット37Hは、シフトロッド37Iが一方へ摺動することにより、シンクロユニット37Aのスリーブ37Asを一方へ摺動させる。また、シフトユニット37Hは、シフトロッド37Iが他方へ摺動することにより、シンクロユニット37Aのスリーブ37Asを他方へ摺動させる。なお、シフトロッド37Iは、キャビン6内に配置されたシフトレバーによって可動する。
次に、トランスミッションハウジング7について説明する。
図9は、トランスミッションハウジング7の構成を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。
トランスミッションハウジング7は、主に、メインブロック71と、センターブロック72と、フロントカバー73と、リヤカバー74と、で構成されている。
図10は、メインブロック71を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図11は、メインブロック71の詳細を示す投影図である。図11の(A)は、メインブロック71の右側面図であり、図11の(B)は、メインブロック71の前面図である。そして、図11の(C)は、メインブロック71の後面図である。
メインブロック71は、トランスミッションハウジング7の主たる構造体である。メインブロック71は、ねずみ鋳鉄(例えばFC250)による鋳造品である。メインブロック71は、その前面にセンターブロック72の取付座面71Fが形成されている。メインブロック71は、その内側に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、ギヤシャフト374のベアリング孔711と、センターシャフト387のベアリング孔712と、センターシャフト397のベアリング孔713と、センターシャフト353のベアリング孔714と、センターシャフト369のベアリング孔715と、が設けられている。また、メインブロック71は、その後面にリヤカバー74の取付座面71Bが形成されている。メインブロック71は、その内側に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、ドライブシャフト36Aのベアリング孔716と、PTOシャフト36Dのベアリング孔717と、が設けられている。なお、メインブロック71は、その右側面に第一電磁バルブ81(図23、図24参照)や第二電磁バルブ82(図23、図24参照)の取付座面71Rが形成されている。また、リヤアクスル5の取付座面71Aも形成されている。
図12は、センターブロック72を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図13は、センターブロック72の詳細を示す投影図である。図13の(A)は、センターブロック72の右側面図であり、図13の(B)は、センターブロック72の前面図である。そして、図13の(C)は、センターブロック72の後面図である。
センターブロック72は、メインブロック71の前端面に固定される。センターブロック72は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。センターブロック72は、その前面にフロントカバー73の取付座面72Fが形成されている。センターブロック72は、取付座面72Fに空間72Sが形成されている。具体的には、フィルタ91(図3参照)へ送られる作動油の通路となるギャラリの一部が形成されている。また、センターブロック72は、その後面にメインブロック71の取付座面72Bが形成されている。センターブロック72は、その内側に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、ギヤシャフト374のベアリング孔721と、センターシャフト387のベアリング孔722と、センターシャフト397のベアリング孔723と、センターシャフト345のベアリング孔724と、センターシャフト353のベアリング孔725と、カウンタシャフト39Eのベアリング孔726と、が設けられている。なお、センターブロック72は、ガスケット76を介してメインブロック71に固定される(図9参照)。ガスケット76には、ボルトを通すための穴のほか、作動油を通すための穴が開けられている。
図14は、フロントカバー73を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図15は、フロントカバー73の詳細を示す投影図である。図15の(A)は、フロントカバー73の右側面図であり、図15の(B)は、フロントカバー73の前面図である。そして、図15の(C)は、フロントカバー73の後面図である。
フロントカバー73は、センターブロック72の前端面に固定される。フロントカバー73は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。フロントカバー73は、その前面に第三電磁バルブ83(図3参照)の取付座面73Fが形成されている。また、フロントカバー73は、その前面に油圧ポンプ(図示せず)の取付座面73Pが形成されている。フロントカバー73は、取付座面73Fや取付座面73Pの周囲に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、インプットシャフト372のベアリング孔731と、センターシャフト345のベアリング孔732と、カウンタシャフト33Eのベアリング孔733(貫通せず)と、センターシャフト353のベアリング孔734と、ポンプギヤシャフト359(図2参照)のベアリング孔735と、が設けられている。更に、フィルタ91の取付座73Mとリターンパイプ92(図3参照)の取付座73Nが設けられている。また、フロントカバー73は、その後面にセンターブロック72の取付座面73Bが形成されている。フロントカバー73は、取付座面73Bに空間73Sが形成されている。具体的には、フィルタ91へ送られる作動油の通路となるギャラリの一部が形成されている。なお、フロントカバー73は、ガスケット77を介してセンターブロック72に固定される(図9参照)。ガスケット77には、ボルトを通すための穴のほか、作動油を通すための穴が開けられている。
図16は、リヤカバー74を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図17は、リヤカバー74の詳細を示す投影図である。図17の(A)は、リヤカバー74の右側面図であり、図17の(B)は、リヤカバー74の前面図である。そして、図17の(C)は、リヤカバー74の後面図である。
リヤカバー74は、メインブロック71の後端面に固定される。リヤカバー74は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。リヤカバー74は、その前面にメインブロック71の取付座面74Fが形成されている。リヤカバー74は、その内側にユニットホルダー75(図9参照)の取付座面74M・74Nが形成されている。また、リヤカバー74は、その後面にPTOシャフトケースの取付座面74Bが形成されている。リヤカバー74は、取付座面74Bの周囲に複数のベアリング孔が設けられている。具体的には、インプットシャフト372のベアリング孔741(貫通せず)と、ドライブシャフト36Aのベアリング孔742(貫通せず)と、PTOシャフト36Dのベアリング孔743と、が設けられている。更に、リヤカバー74は、その右側面に第一作動油パイプ(図示せず)や第二作動油パイプ(図示せず)の取付座面74Rが形成されている。なお、リヤカバー74は、ガスケット78を介してメインブロック71に固定される(図9参照)。ガスケット78には、ボルトを通すための穴が開けられている。
加えて、本トランスミッションハウジング7は、ユニットホルダー75が取り付けられている。以下に、ユニットホルダー75について説明する。
図18は、ユニットホルダー75を示している。図中には、トラクタ100の前後方向、左右方向及び上下方向を表す。また、図19は、ユニットホルダー75の詳細を示す投影図である。図19の(A)は、ユニットホルダー75の右側面図であり、図19の(B)は、ユニットホルダー75の前面図である。そして、図19の(C)は、ユニットホルダー75の後面図である。加えて、図20は、ユニットホルダー75がメインクラッチ371を保持した状態を示している。
ユニットホルダー75は、リヤカバー74の前面に固定される。ユニットホルダー75は、アルミ合金(例えばADC12)による鋳造品である。ユニットホルダー75は、後方に向けてステイ75M・75Nが形成され、その後面にリヤカバー74の取付座面75Bが形成されている。ユニットホルダー75は、ステイ75M・75Nに囲まれた空間75Sが形成されている。具体的には、メインクラッチ371の一部(クラッチ機構部)を収容するためのスペースが形成されている。また、ユニットホルダー75は、メインクラッチ371の一部(ブレーキ機構部)を保持するためのホルダー穴75Hが形成されている。ユニットホルダー75は、ホルダー穴75Hの同軸上にベアリング孔751が設けられている。具体的には、アウトプットシャフト373のベアリング孔751が設けられている。なお、インプットシャフト372とアウトプットシャフト373は、二重軸構造となっている。つまり、インプットシャフト372とアウトプットシャフト373は、インプットシャフト372が中空体であるアウトプットシャフト373の内部に挿入された状態となっている。従って、ユニットホルダー75には、インプットシャフト372のベアリング孔を設けることなく、アウトプットシャフト373のベアリング孔751のみを設けたのである。
このように、本トランスミッション3は、インプットシャフト372とアウトプットシャフト373が二重軸構造となっている。また、油圧ユニット(メインクラッチ371)を保持した状態でハウジング(トランスミッションハウジング7)に固定されるユニットホルダー75を具備している。そして、ユニットホルダー75にインプットシャフト372又はアウトプットシャフト373のいずれかの軸受部(本実施形態においてはアウトプットシャフト373のベアリング孔751)を設けている。これにより、本トランスミッション3は、ユニットホルダー75が油圧ユニット(メインクラッチ371)を保持するので、該油圧ユニット(メインクラッチ371)の振動を抑制できる。また、本トランスミッション3は、インプットシャフト372とアウトプットシャフト373、ユニットホルダー75が小さくまとまるので、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の小型化を実現できる。
また、本実施形態に係るユニットホルダー75は、その他にもベアリング孔が設けられている。具体的には、前後進切換機構3Rを構成するカウンタシャフト37Dのベアリング孔752が設けられている。このため、ユニットホルダー75は、カウンタシャフト37Dを回転自在に支持できる(図21参照)。
このように、本トランスミッション3は、前後進切換機構3Rを具備している。そして、ユニットホルダー75に前後進切換機構3Rを構成するカウンタシャフト37Dの軸受部(本実施形態においてはカウンタシャフト37Dのベアリング孔752)を設けている。これにより、本トランスミッション3は、ユニットホルダー75とカウンタシャフト37Dが小さくまとまるので、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の小型化を実現できる。
更に、本実施形態に係るユニットホルダー75は、その他にもスラスト孔が設けられている。具体的には、前後進切換機構3Rを構成するコントロールロッド37Iのスラスト孔753が設けられている。このため、ユニットホルダー75は、コントロールロッド37Iを摺動自在に支持できる(図22参照)。
このように、本トランスミッション3は、前後進切換機構3Rを具備している。そして、ユニットホルダー75に前後進切換機構3Rを構成するコントロールロッド37Iの軸受部(本実施形態においてはコントロールロッド37Iのスラスト孔753)を設けている。これにより、本トランスミッション3は、ユニットホルダー75とコントロールロッド37Iが小さくまとまるので、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の小型化を実現できる。
次に、メインクラッチ371のクラッチ機構部へ作動油を案内するための通路について説明する。
図23は、メインクラッチ371のクラッチ機構部へ作動油を案内するための通路を示している。なお、図中の矢印は、作動油の流れる方向を表す。
図16及び図17に示すように、リヤカバー74には、取付座面74Rから左方向へ油孔74aが設けられ、該油孔74aにつながるように、ベアリング孔741の底から後方向へ油孔74bが設けられている。油孔74aは、第一電磁バルブ81から延びる第一作動油パイプ(図示せず)につながっている。
このような構造により、オペレータが「前進」又は「後進」などに操作した場合、作動油は、リヤカバー74の油孔74aから油孔74bを通り、インプットシャフト372の油孔(図示せず)へ導かれる。そして、作動油は、インプットシャフト372の内部を通ってメインクラッチ371を稼働させる。具体的には、メインクラッチ371のクラッチ機構部を作動させる。
次に、メインクラッチ371のブレーキ機構部へ作動油を案内するための通路について説明する。
図23は、メインクラッチ371のブレーキ機構部へ作動油を案内するための通路を示している。なお、図中の矢印は、作動油の流れる方向を表す。
図16及び図17に示すように、リヤカバー74には、取付座面74Rから左方向へ油孔74cが設けられ、該油孔74cにつながるように、取付座面74Mから後方向へ油孔74dが設けられている。油孔74cは、第一電磁バルブ81から延びる第二作動油パイプ(図示せず)につながっている。
また、図18及び図19に示すように、ユニットホルダー75には、取付座面75Bから前方向へ油孔75aが設けられ、該油孔75aにつながるように、右側から左方向へ油孔75bが設けられている。油孔75bは、ホルダー穴75Hの周面につながっており、基端がプラグによって塞がれている。
このような構造により、オペレータが「前進」又は「後進」などに操作した場合、作動油は、リヤカバー74の油孔74cから油孔74dを通り、ユニットホルダー75へ導かれる。その後、作動油は、ユニットホルダー75の油孔75aから油孔75bを通ってホルダー穴75Hの内部へ導かれる。そして、作動油は、ホルダー穴75Hの内部で圧力を高めてメインクラッチ371を稼働させる。具体的には、メインクラッチ371のブレーキ機構部を作動させる(解除させる)。
このように、本トランスミッション3は、ユニットホルダー75に設けられた孔(油孔75a・75b)が油圧ユニット(メインクラッチ371のブレーキ機構部)へ作動油を案内するための通路となる。これにより、本トランスミッション3は、内部構造の部品点数が減って小さくまとまるので、ハウジング(トランスミッションハウジング7)の小型化を実現できる。