JP6516262B2 - 潜像印刷物 - Google Patents

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Description

本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポ−ト、有価証券、身分証明書、カ−ド、通行券等の貴重印刷物の分野において、正反射光下で潜像が出現し、揺れ動いて見える動画効果を有することを特徴とする潜像印刷物に関する。
銀行券、パスポ−ト、有価証券、身分証明書等に代表されるセキュリティ印刷物には、複製や偽造を防止するために、偽造防止技術が必要とされている。また、偽造防止技術の中でも、すかしやホログラム等に代表される、道具を必要とせず、印刷物を手にした全ての人が真偽判別に利用できる偽造防止技術が特に必要とされている。
この中でも、画像が動いて見える、いわゆる「動画的な視覚効果」を備えた偽造防止技術が特に注目されている。画像が動いて見える動画的な視覚効果(以下「動画効果」という。)は、人目をひきやすく、また偽造することが困難であることから、近年、セキュリティ印刷物の真偽判別要素として多く用いられる傾向にある。動画効果を実現可能な公知技術としてホログラム、パララックスバリア、レンチキュラー等を用いた技術が存在し、これらの技術が備える、わずかな角度変化で画像を変化させられるという特徴をいかして、画像が立体的に視認できる効果や、動画効果を備えたセキュリティ印刷物は、既に広く存在している。
しかし、一般的なパララックスバリアやレンチキュラーを用いて動画効果を実現した場合、クリア層かレンズが必要となることから、基材がほぼプラスティックに限定される上、印刷物には一定の厚み(少なくとも150μm程度)が必要となり、一般に流通する印刷物に許される厚さを超える。このため、厚さに制限のある印刷物には用いることができず、一定の厚みが許されるプラスティック製カード以外には採用されない傾向にある。また、ホログラムは極めて薄く仕上げることは可能であり、銀行券を代表とする各種セキュリティ印刷物に用いられているものの、一般的な印刷物と比較すると、製造工程の複雑さと高い製造コストに大きな問題がある。
以上の問題を解決するため、本出願人は、高い光沢及び盛り上がりを有する蒲鉾状の画線に光が入射した場合に、盛り上がりを有する蒲鉾状の画線のうち、入射する光と法線を成す面のみが強く光を反射する現象を利用した、立体効果及び動画効果を形成することが可能な印刷技術を既に出願している。特許文献1に記載の技術は、インテグラルフォトグラフィと呼ばれる立体画像の撮像方法によって得られる画像を画像処理によって形成したもので、特許文献1に記載の技術同様に優れた動画効果を実現できる技術である。これらの技術は、パララックスバリアやレンチキュラーの10分の1程度の厚さで形成することが可能であって、製造技術も従来からある製版技術と印刷技術を活用することで容易に実施可能であり、かつ、一般的な印刷物と同じコストで動画効果を備えた印刷画像を形成することができるという優れた特徴を有する。
特開2011−126028号公報
特許文献1の技術は入射した光を強く正反射する特性を有し、かつ、盛り上がりを有した蒲鉾状の画線や画素で形成された蒲鉾状画線群の上に、基画像を分割したフレーム内画像を、所定の縮率で圧縮して形成した潜像画線群を重ね合わせて形成する技術であり、正反射光下で蒲鉾状画線群と潜像画線群が干渉することで潜像として基画像が出現し、印刷物の傾きを変化させることで基画像が動いて見える効果を有する技術である。この技術は動画効果に特に優れた技術であり、出現した基画像は連続的にスムーズに動くことを特徴とするが、この基画像の動きの方向は、蒲鉾状画線群の画線方向と直交する方向、すなわち画線の配置方向に動きの方向が限定されるため、出現した基画像が単に同じ方向に平行移動する動きしか生じさせることができなかった。すなわち、動きが画一的であり、視覚効果のバリエーションに乏しいという問題があった。
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、正反射光下で出現する基画像が揺れ動くという、ユニークな動画効果を生じさせることが可能な潜像印刷物を提案することを目的とする。
本発明の潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷画像領域を備え、印刷画像領域は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともいずれか一方の特性を有する蒲鉾状画線が第一の方向に第一のピッチで万線状に配列された蒲鉾状画線群の上に、正反射光下における蒲鉾状画線の色彩と異なる色彩を有する潜像画線群が積層されて成り、潜像画線群は、基画像を分割した画像を所定の縮率で圧縮した複数のIP要素が、蒲鉾状画線の方向又はピッチと少なくとも一方が異なって万線状に配列されたIP要素群と、複数のIP要素をミラー反転して成る複数のIP反転要素がIP要素群と同じ方向及びピッチで分割した順に万線状に配列されたIP反転要素群を有し、IP要素とIP反転要素が交互に重なり合うことなく配置され、正反射光下で観察した場合には、基画像が出現し、観察角度に応じて、基画像が揺れ動いて視認されることを特徴とする。
さらに、本発明における潜像印刷物のIP要素群は、複数のIP要素が、蒲鉾状画線と異なる方向及びピッチで複数配列されることで、観察角度を連続的に変化させると、基画像がひねりを有した揺れ動きとして視認されることを特徴とする。
本発明の潜像印刷物では、従来の基画像が特定の方向にのみ平行移動する動画効果とは異なり、基画像の形状が変化し、揺れ動いて見えるという、これまでにない独特の視覚効果が生じる。この視覚効果は人目をひき、判別性に優れるとともに、同じ効果を再現することは困難であることから偽造抵抗力に優れる。
本技術においては潜像画線群が蒲鉾状画線群の上に所定の角度で重なりさえすれば、必ず目視上同じ視覚効果が生じることから、蒲鉾状画線と潜像画線が完全に一致するように一対に重なるように刷り合わせを制御する必要がなくなった。これによって、製造難易度が大きく低下し、より製造しやすくなった。
本発明の潜像印刷物はホログラムのように専用の作製装置や機械は必要とせず、一般的な機能性材料と、既存の印刷機を用いることで作製可能であり、コストパフォーマンスが高い。
(a)は本発明における潜像印刷物の一例の正面図を示し、(b)は断面図を示す。 本発明における潜像印刷物の構成の概要を示す。 本発明における蒲鉾状画線群を示す。 本発明における潜像画線群を示す。 本発明におけるIP要素群を示す。 本発明におけるIP反転要素群を示す。 本発明における蒲鉾状画線群と潜像画線群の画線方向の角度の違いを示す。 本発明におけるIP要素群の作製方法を示す。 本発明におけるIP反転要素群の作製方法を示す。 本発明におけるIP要素群とIP反転要素群を交互に配置する位置関係の一例を示す。 本発明における蒲鉾状画線群と潜像画線群の重ね合わせの位置関係の一例を示す。 図11の潜像印刷物において傾きを変えて観察した場合の効果を示す。 本発明における揺れ動く動画効果の説明図である。 本発明における潜像印刷物の効果の一例を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
本実施の形態では、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の配置角度が異なる潜像印刷物(1)の例について説明する。図1に、本発明における潜像印刷物(1)を示す。図1(a)に示すのは潜像印刷物(1)の正面図であり、図1(b)に示すのは、図1(a)における潜像印刷物(1)のAA´ラインにおける断面図である。
潜像印刷物(1)は、基材(2)の上の少なくとも一部に、印刷画像領域(3)が形成されて成る。基材(2)は印刷画像領域(3)が形成できれば、紙であってもプラスティックであっても、金属等であってもよく、その材質は問わない。印刷画像領域(3)の形成場所は、基材(2)上の一部であっても、全体であってもよい。また、印刷画像領域(3)は、いかなる色彩であってもよく、また、透明や半透明であってもよい。また、基材(2)の大きさについても、特に制限はない。
本発明の印刷画像領域(3)の構成の概要を図2に示す。印刷画像領域(3)は、蒲鉾状画線群(4)及び潜像画線群(5)から成る。積層順としては、蒲鉾状画線群(4)の上に潜像画線群(5)が積層されて成る。また、潜像画線群(5)はIP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)を有する。なお、IP要素の「IP」とは、Integral Photographyの略であり、古典的な立体画像の形成方法の略である。本技術の動く画像を構成する要素群の基本的な構造がこの古典的な立体画像の形成方法から得られる画線構造に似ているため、この呼称を用いている。
まず、蒲鉾状画線群(4)について具体的に説明する。図3に示すのは蒲鉾状画線群(4)であり、盛り上がりを有する、第二の方向(図中S2方向)の画線方向を有した、特定の画線幅(W1)の蒲鉾状画線(6)が第一の方向(図中S1方向)に第一のピッチ(P1)で万線状に配置されることで形成されて成る。
本発明において、「万線状に配置する」とは、複数の要素が規則的に所定のピッチで配列されている状態をいう。また、本発明における「画線」とは、印刷画像を形成する最小単位の小さな点である網点を特定の方向に一定の距離連続して配置した点線や破線の分断線、直線、曲線、破線等を指す。
図3において蒲鉾状画線(6)の中に縦縞の線が複数配列されているように示されているが、これは他の線と区別するためのパターンであり、実際には単純な一本の線である(以下、他の画線も同様。)。拡散反射光下において、蒲鉾状画線(6)の色彩は問わず、いかなる色彩であってもよく、透明であっても半透明であってもよい。
また、蒲鉾状画線(6)は、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有し、正反射光下では強い反射光を発する特性を有する必要がある。本発明における「明暗フリップフロップ性」とは、物質に光が入射した場合に、物質の明度が変化する性質を指し、「カラーフリップフロップ性」とは、物質に光が入射した場合に、物質の色相が変わる性質を指す。明暗フリップフロップ性を備えた、印刷で用いるインキとしては、金色、銀色等のメタリック系の金属インキや、グロスタイプの着色インキがある。一般的に艶があると感じられる物質は、明暗フリップフロップ性を備える。例えば、銀インキは、光を強く反射しない拡散反射光下では暗い灰色にしか見えないが、光を強く反射する正反射光下では、より淡い灰色か、あるいは白色に見える。このように、「明暗フリップフロップ性」を有するインキは、正反射光下で明度が変化する。
一方のカラーフリップフロップ性を備えた印刷で用いるインキとしては、パールインキ、液晶インキ、OVI、CSI(Color Shifting Ink)等が存在する。多くのインキは物体色を有するが、虹彩色パールインキは無色透明である。例えば、赤色の虹彩色パールインキは、拡散反射光下では無色透明だが、正反射光下では赤色の干渉色を発する。このように、「カラーフリップフロップ性」を備えたインキは、正反射光下で色相が変化する。蒲鉾状画線(6)は、以上のような光学特性を備える必要がある。
それぞれの蒲鉾状画線(6)には一定の盛り上がり高さが必要であり、少なくとも3μm以上の盛り上がり高さを有することが、好ましい。3μmより低い高さで形成した場合でも、画線のピッチを狭く形成することで本発明の効果を再現することは可能であるものの、潜像画像の視認性が極端に低くなったり、前述のように出現する基画像が不鮮明にぼやけて再生されたりする場合が多いため、好ましい形態とはいえない。また、盛り上がりの高さの上限に関しては性能上の上限は存在しないが、大量に積載した場合の安定性や耐摩擦性、流通適性等を考慮し、1mm以下とする。
本発明における蒲鉾状画線群(4)は、構成する蒲鉾状画線(6)に一定の盛り上がり高さが必須であることから、印刷画線に盛り上がりを形成可能な印刷方式で印刷することが、好ましい。すなわち、フレキソ印刷、グラビア印刷、凹版印刷、スクリ−ン印刷等で形成してもよい。また、実施の形態のように、印刷で直接画線の盛り上がりを形成するのではなく、エンボス加工やすき入れによって基材(2)上に凹凸構造を形成して、その上に印刷被膜を形成したり、フィルムを貼付して蒲鉾状画線群(4)としてもよい。
また、蒲鉾状画線(6)に高いカラーフリップフロップ性を付与したい場合には、蒲鉾状画線(6)の表面にカラーフリップフロップ性を有する顔料が揃って配向していることが、好ましい。このような状態は、一般にリーフィングと呼ばれ、優れたリーフィング効果を得る方法としては、例えば、特開2001−106937号公報に記載の技術のように顔料に撥水及び撥油性を付与する方法がある。この方法を用いた場合には、蒲鉾状画線(6)が正反射光下で発する反射光の色彩をより豊かにすることができるため、好ましい。前述のようなリーフィング効果を有する機能性顔料と着色顔料を単一のインキ中に配合した場合、単一のインキで印刷したにもかかわらず、リーフィング効果を有する機能性顔料と着色顔料が蒲鉾状画線(6)の上層と下層に別々の層構造を形成するため、あたかも着色インキ層と機能性顔料層を別々のインキで印刷した場合と同等の、極めて高いカラーフリップフロップ性を発揮するため特に有効である。以上が本発明の蒲鉾状画線群(4)の説明である。
次に、潜像画線群(5)について具体的に説明する。図4に示すのは潜像画線群(5)であり、潜像画線群(5)は、前述したように、図5に示すIP要素群(5A)と、図6に示すIP反転要素群(5B)とを有する。図4の拡大図に示すように、IP要素群(5A)は、IP要素(7A)の集合から成り、IP反転要素群(5B)は、IP反転要素(7B)の集合から成る。潜像画線群(5)において、IP要素(7A)とIP反転要素(7B)とはそれぞれが重なり合わないように蒲鉾状画線(6)を配置した第一の方向(S1方向)とは、異なる方向である第三の方向(S3方向)に位相をずらして交互に配置されて成る。一つの第二のピッチ(P2)の中で隣り合うIP要素(7A)とIP反転要素(7B)は、図4に点線で示す第二のピッチ(P2)の中心(C)で折り返した場合には形状がほぼ一致するほぼ相似の形状である。
本実施の形態において、潜像画線群(5)の画線方向である第四の方向(S4方向)及び配置方向である第三の方向(S3方向)は、蒲鉾状画線群(4)の画線方向である第二の方向(S2方向)及び配置方向である第一の方向(S1方向)とは異なる。なお、本発明においては、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)のそれぞれの配置ピッチである第一のピッチ(P1)及び第二のピッチ(P2)、あるいは画線の配置方向である第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)の少なくともどちらか一つが異なっている必要がある。
ここで、蒲鉾状画線群(4)の画線方向である第二の方向(S2方向)と配置方向である第一の方向(S1方向)に対する、潜像画線群(5)の画線方向である第四の方向(S4方向)及び配置方向である第三の方向(S3方向)の違いを図7に示す。図7において、それぞれの画線の画線方向である第二の方向(S2方向)及び第四の方向(S4方向)と、配置方向である第一の方向(S1方向)及び第三の方向(S3方向)の角度の関係は90度直交する関係にある。このため、画線方向が角度α異なれば、配置方向も角度α異なる関係にある。本実施の形態のように蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の配置方向(S1方向及びS3方向)が異なっている例において、印刷画像領域(3)の面積や出現させる基画像(8)の大きさにもよるが、例えば30mm×30mm程度の大きさの印刷画像領域(3)を例とすると、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の配置方向である第一の方向(S1方向)と第三の方向(S3方向)の角度差αはプラスマイナス0.3度以上プラスマイナス10度以下である必要がある。0.3度未満の場合、本発明の特徴である揺れ動きがほとんど生じず、従来の技術と同様に配置方向に平行移動する視覚効果としか認識できないためであり、10度を超える場合、揺れ動きが強くなりすぎて基画像(8)の形状を認識することが困難となるためである。上記記載の基画像(8)は、正反射光下で動画効果を有する潜像画像として出現させるための画像である。
蒲鉾状画線群(4)の第一のピッチ(P1)に対する潜像画線群(5)の第二のピッチ(P2)の大きさは80%〜120%の範囲とすることが、好ましい。第二のピッチ(P2)が第一のピッチ(P1)に対して80%より小さく、120%を超える大きさの場合、基画像(8)の形状が認識できなくなるためである。
最も効果が高くなるのは、角度差αとはプラスマイナス1度〜3度程度の範囲であり、第二のピッチ(P2)が第一のピッチ(P1)に対して95%〜105%程度の値にある場合である。この角度差αとピッチの差は同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。ピッチの差を単独で用いる場合には、当然のことながら第二のピッチ(P2)を第一のピッチ(P1)に対して100%の値としてはならない。
潜像画線群(5)を構成する二つの要素群の一つであるIP要素群(5A)を図5に示す。図5に示すIP要素群(5A)は、第四の方向(S4方向)の画線方向を有し、特定の画線幅(W2)の、それぞれ形状の異なる複数のIP要素(7A)が特定のピッチである第二のピッチ(P2)で第三の方向(S3方向)に万線状に配されて成る。
潜像画線群(5)を構成する二つの要素群のもう一つの要素群であるIP反転要素群(5B)を図6に示す。図6に示すIP反転要素群(5B)は、第四の方向(S4方向)の画線方向を有し、特定の画線幅(W3)の、それぞれ形状の異なる複数のIP反転要素(7B)が第二のピッチ(P2)で第三の方向(S3方向)に万線状に配されて成る。
IP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)において、それぞれの第二のピッチ(P2)、第三の方向(S3方向)及び第四の方向(S4方向)は全て同じである必要がある。また、それぞれのIP要素(7A)とIP反転要素(7B)の画線幅(W2、W3)は同じであることが、好ましいが、異なっていてもよい。ただし、出現する基画像(8)の揺れ動き方に顕著な偏りを生じさせたくないのであれば、同じか近い値とすることが、好ましい。それぞれの要素の画線幅(W2、W3)が大きく異なっている場合には、一つのピッチの中で隣り合うIP要素(7A)とIP反転要素(7B)をほぼ相似形状とすることが困難となり、結果として出現する基画像(8)の揺れ動き方に大きな偏りが生じるためである。
また、図4、図5、図6の拡大図に示すIP要素(7A)及びIP反転要素(7B)は異なる色彩で示しているが、説明を明瞭にするためであり、同じ色彩であってもよく、またそれぞれの要素で異なる色彩を用いてもよい。なお、IP要素(7A)や後述するIP反転要素(7B)とは、塗りつぶした画像のみを指すのではなく、画像が存在しない空白も含んだ一定の大きさの領域全体を指す。
まず、IP要素群(5A)の具体的な構成と作製方法について図8を用いて説明する。図8に示すのは、正反射光下で動画効果を有する潜像画像として出現させようと製作者が意図する画像であり、基画像(8)から成る。この基画像(8)は文字や数値、記号、マーク、図形等であってもよく、何らかの任意の情報を表せばよい。第一の実施の形態における基画像(8)は、桜の花びらの画像である。また、本実施の形態では基画像(8)として階調表現の乏しい二値画像を用いたが、写真や顔画像のような階調画像を用いてもよい。この桜の花びらの画像である基画像(8)を以下の手順でIP要素(7A)化する。
まず、基画像(8)を選定したら、基画像(8)の第三の方向(S3方向)の幅よりも短い幅(W4)、第三の方向(S3方向)と直交する第四の方向(S4方向)の基画像(8)の高さよりも長い高さ(H)の大きさのフレーム(9A)を基画像(8)に対して当てはめ、フレーム(9A)内に含まれた基画像(8)のみを取り出して、取り出した画像を第三の方向(S3方向)に対して特定の画線幅(W2)に圧縮する。この一連の手順によって一つのIP要素(7Ai)が完成する。圧縮後の特定の画線幅(W2)を圧縮前の幅(W4)で割った値を、IP要素(7Ai)の圧縮率と呼ぶ。この圧縮率が小さければ小さいほど動く画像として出現する基画像(8)の動きの大きさと速さ、遠近感等は大きくなる一方、出現する画像は輪郭がぼやけて不鮮明になる。
一つのIP画線(7Ai)が完成したら、続いて、基画像(8)に対するフレーム(9A)の位置を第三の方向(S3方向)に第二のピッチ(P2)だけずらして、再びフレーム(9A)内に含まれた基画像(8)のみを取り出して、特定の画線幅(W2)に圧縮する。出来上がったIP要素(7Ai+1)は、先のIP要素(7Ai)から第三の方向(S3方向)に特定の第二のピッチ(P2)だけ平行移動させた位置に配置する。この作業をフレーム(9A)内に基画像(8)が含まれない位置に達するまで繰り返すことによって、IP要素群(5A)が完成する。以上のようにそれぞれのIP要素(7A)は、基画像(8)に対してフレーム(9A)を当てはめる位置を変えながら構成して成るため、それぞれ隣り合うIP要素(7A)同士でも含まれる画像は、わずかずつ異なっている。
このIP要素群(5A)は、基画像(8)に対して第三の方向(S3方向)に、第二のピッチ(P2)ずつフレーム(9A)の位相をずらしながら切り出して圧縮して作成した各IP要素(7A)を、第二のピッチ(P2)で、切り出して圧縮した順に、例えば、図8では、7Ai、7Ai+1、7Ai+2・・・と連続して配置して構成した画像であることから、第二のピッチ(P2)、かつ、第二のピッチ(P2)より十分狭い幅で画像をIP要素(7A)の画線方向(S3方向)にサンプリングした場合には基画像(8)がそのまま再生されるという特徴がある。本発明の潜像印刷物(1)では、このIP要素群(5A)の一定のピッチや角度でサンプリングするのではなく、部分的にサンプリング位置を変化させることで出現した基画像(8)に揺れ動きが生じる効果を得るものである。以下、本発明において、IP要素(7A)及びIP反転要素(7B)が、基画像(8)に対して特定の方向に一定のピッチずつフレーム(9A)の位相をずらしながらそれぞれ切り出して圧縮した順に配置した構成を、「分割した順に配列される」という。
続いて、IP要素群(5A)と対を成すIP反転要素群(5B)の具体的な構成と作製方法の一例について図9を用いて説明する。IP要素群(5A)の作製方法と同じように、基画像(8)の第三の方向(S3方向)の幅よりも短い幅(W5)、第一の方向(S1方向)と直交する第四の方向(S4方向)の基画像(8)の高さよりも長い高さ(H)の大きさのフレーム(9B)を基画像(8)に対して当てはめ、フレーム(9B)内に含まれた基画像(8)のみを取り出して、第三の方向(S3方向)に対して特定の画線幅(W3)に圧縮する。ここまでの手順はIP要素(7A)の作製手順と同じであるが、IP反転要素(7B)の作製においては、この状態の要素を更に第三の方向(S3方向)と直交する第四の方向(S4方向)を軸としてミラー反転する。このミラー反転の有無でIP反転要素(7B)となるか、IP要素(7A)となるかが決まる。この一連の手順によって一つのIP反転要素(7Bi)が完成する。W3をW5で割った値を、IP反転要素(7Bi)の圧縮率と呼ぶ。この圧縮率が小さければ小さいほど動く画像として出現する基画像(8)の動きの大きさと速さ、遠近感等は大きくなる一方、出現する画像は輪郭がぼやけて不鮮明になることはIP要素(7A)と同じである。
一つのIP反転要素(7Bi)が完成したら、続いて、基画像(8)に対するフレーム(9B)の位置を第三の方向(S3方向)に特定のピッチである第二のピッチ(P2)だけずらし、再びフレーム(9B)内に含まれた基画像(8)のみを取り出して、特定の画線幅(W3)に圧縮する。新たに出来上がったIP反転要素(7Bi+1)は、先のIP反転要素(7Bi)から第三の方向(S3方向)に特定のピッチである第二のピッチ(P2)だけ平行移動させた位置に配置する。この作業をフレーム(9B)内に基画像(8)が含まれない位置に達するまで続けることによって、IP反転要素群(5B)が完成する。IP要素(7A)と同様にそれぞれの隣り合うIP反転要素(7B)でも含まれる画像は、わずかずつ異なっている。
このIP反転要素群(5B)は、基画像(8)に対して第三の方向(S3方向)に、第二のピッチ(P2)ずつフレーム(9B)の位相をずらしながら切り出して圧縮して作成した各IP反転要素(7B)を、第二のピッチ(P2)で、切り出して圧縮した順に、例えば、図9では、7Bi、7Bi+1、7Bi+2・・・と連続して配置して構成した画像であることから、第二のピッチ(P2)、かつ、第二のピッチ(P2)より十分狭い幅で画像をIP反転要素(7B)の画線方向(S3方向)にサンプリングした場合には基画像(8)がそのまま再生されるという特徴がある。本発明の潜像印刷物(1)では、このIP反転要素群(5B)と、前述したIP要素群(5A)の一定のピッチや角度でサンプリングするのではなく、部分的にサンプリング位置を変化させることで出現した基画像(8)に揺れ動きが生じる効果を得るものである。
以上の手順でIP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)を作製する。IP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)は、それぞれIP要素(7A)又はIP反転要素(7B)が、分割した順に配列されていれば、図10(a)に示すように、一つの蒲鉾状画線(6)上に、ミラー反転させた画像と同じ画像、例えば、IP要素(7Ai)と、IP要素(7Ai)をミラー反転させたIP反転要素(7Bi)が対で配置された構成に限らず、図10(b)に示すように、ミラー反転させた画像とほぼ等しい画像、例えば、IP要素(7Ai)と、IP要素(7Ai)をミラー反転させた画像とほぼ等しいIP反転要素(7Bi+1)が対で配置された構成としてもよい。
隣り合って一対で向かい合うIP要素(7A)とIP反転要素(7B)同士が、互いの画像を第一の方向(S1)と直交する方向を軸としてミラー反転させた画像と同じか、同じに近い、ほぼ等しい画像同士が対になるように交互にIP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)を配置して、図4に示した潜像画線群(5)が完成する。
なお、このIP要素群(5A)及びIP反転要素群(5B)の作製方法とその構成、また圧縮率を変化させることで生じる効果等は、特開2011−126028号公報に記載のとおりであり、特開2011−126028号公報記載の様々な構成を応用してもよい。
なお、IP要素(7A)の画線幅(W2)と、IP反転要素(7B)の画線幅(W3)のそれぞれの大きさは、蒲鉾状画線(6)と蒲鉾状画線(6)の間に存在する、第一のピッチ(P1)から画線幅(W1)を引いた非画線の幅よりも大きいことが、好ましい。これは、隣り合う蒲鉾状画線(6)同士の間に存在する非画線の中にIP要素(7A)やIP反転要素(7B)が完全に入り、蒲鉾状画線(6)の上に重ならなかった場合、それらの画線は、潜像画像として正反射光下で出現することができないためである。
以上のような構成のIP要素群(5A)やIP反転要素群(5B)を有する潜像画線群(5)は、正反射光下で蒲鉾状画線(6)が発する色彩と異なる色彩である必要がある。この特性は、正反射光下で潜像画像を一定のコントラストで可視化させるために必要となる。また、拡散反射光下で潜像画線群(5)は不可視であることが、好ましいため、透明や半透明であるか、あるいは淡い色彩であることが、好ましい。本明細書でいう半透明とは完全な透明ではないが、潜像画線群(5)の下層に存在する物体、すなわち、蒲鉾状画線(6)や基材(2)等を完全に隠蔽しない程度の透過性を有する状態を指す。
また、潜像画線群(5)は、正反射光下において潜像画線群(5)の下に存在する蒲鉾状画線群(4)に光が入射するのを防ぎ、結果として印刷画像領域(3)内に反射光の強弱を作り出して基画像(8)を出現させる働きを成すために、低光沢(マット)であったり、光遮断性に優れる特性を有することが、好ましい。なお、潜像画線群(5)には、蒲鉾状画線(6)のような明暗フリップフロップ性やカラーフリップフロップ性は必須ではないが、これらの性質を備えていても問題ない。
潜像画線群(5)は、特に盛り上がりは必須ではなく平坦な構造でよいが、盛り上がりを有していてもよい。すなわち、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、凹版印刷やスクリ−ン印刷等で形成してもよく、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ等で形成しても問題ない。
以上のような構成の蒲鉾状画線群(4)の上に、潜像画線群(5)を重ね合わせて、本発明の潜像印刷物(1)を形成する。蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の重ね合わせの位置関係の一例と、その場合の効果及びその効果が生じる原理について説明する。図11に示すのは、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)が任意の位置関係で重なり合った図である。図11に示すように、一つの蒲鉾状画線(6)の左斜面(A辺側斜面)にIP要素(7A)が重なり、右斜面(A´辺側斜面)にIP反転要素(7B)が重なった位置関係にある潜像印刷物(1)である。
図11の位置関係で二つの要素群が重なった場合の効果について図12に示す。拡散反射光下において、印刷画像領域(3)中には基画像(8)は出現せず、潜像画線群(5)も不可視である(図示せず)。一方、正反射光下において図12(a)、図12(b)、図12(c)のように基画像(8)が出現し、潜像印刷物(1)の角度を変化させることで基画像(8)の形状が変化し、揺れ動きが生じる。あたかも水の中でゆらゆらと波に揺れて揺らいでいるかのような独特な動きが連続的に生じる。
なお、本明細書中で言う「正反射」とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度とほぼ等しい角度に強い反射光が生じる現象を指し、「拡散反射」とは、物質にある入射角度で光が入射した場合に、入射した光の角度と異なる角度に弱い反射光が生じる現象を指す。例えば、虹彩色パールインキを例とすると、拡散反射の状態では無色透明に見えるが、正反射した状態では特定の干渉色を発する。また、「正反射光下で観察する」とは、印刷物に入射した光の角度とほぼ等しい反射角度に視点をおいて観察する状態を指し、「拡散反射光下で観察する」とは、印刷物に入射した光の角度と大きく異なる角度で観察する状態を指す。例えば、図12及び後述する図14は、光源(10)から潜像印刷物(1)に入射した光の角度と大きく異なる角度にある視点(11)で観察する状態であることから、拡散反射光下で観察した状態をそれぞれ指す図である。
以上の効果が生じる原理について説明する。まず、拡散反射光下では蒲鉾状画線群(4)及び潜像画線群(5)に直接入射する光が存在せず、強い正反射光を発することがないことから、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)間に色差が生じることがない。そのため拡散反射光下では、潜像画線群(5)は完全に不可視か、ほぼ不可視である。
一方、正反射光下においては、蒲鉾状画線群(4)の有する光学特性である明暗フリップフロップ性、あるいはカラーフリップフロップ性によって色彩が大きく変化するために、潜像画線群(5)との間に大きな色差が生じ、潜像画線群(5)が可視化される。ただし、蒲鉾状画線(6)は、盛り上がりを有しているため、蒲鉾状画線群(4)全体が一斉に光を反射することはなく、潜像画線群(5)全体が一度に可視化されることはない。正反射光下においては、蒲鉾状画線(6)の画線表面のうち、入射した光と直交する画線表面だけが強く光を反射し、その領域だけ蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)間に大きな色差が生じる。結果として入射した光と直交した蒲鉾状画線群(4)の画線表面の上に重ねられた潜像画線群(5)の画像情報のみがサンプリングされ、可視化されることとなる。
本来、従来の技術のように蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)が同じピッチ、かつ、同じ配置方向で形成されている場合には、正反射光下において基画像(8)がそのままの形状で出現し、角度を変化させることで基画像(8)が配置方向と平行に移動する効果が生じる。この場合、IP要素群(5A)がサンプリングされた場合と、IP反転要素群(5B)がサンプリングされた場合では、出現する基画像(8)自体は同じであるが、動きの方向が正反対となる。
一方、本発明においては、蒲鉾状画線群(4)に対し、潜像画線群(5)のピッチと配置方向の少なくとも一つを異ならせて形成されることを必須とする。蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)がピッチや配置方向が異なるために、第二の方向(S2方向)に沿って、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の干渉位置が連続的に変化する。そのため、実施の形態で示すような蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の配置方向が異なる場合には、印刷画像領域(3)の上部では、第一の方向(S1方向)のA辺側の潜像画線群(5)の画像がサンプリングされ、印刷画像領域(3)の中央部では、第一の方向(S1方向)の中心の潜像画線群(5)の画像がサンプリングされ、印刷画像領域(3)の下部では、第一の方向(S1方向)のA´辺側の潜像画線群(5)の画像がサンプリングされるような事態が生じる。本発明の潜像画線群(5)は、第一の方向(S1方向)にIP要素(7A)とIP反転要素(7B)の二つの異なる画像が配置されているため、サンプリング位置によっては動きの方向が正反対となる。なお、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)のピッチが異なる場合には、潜像画線群(5)の第一の方向(S1方向)の位相に応じて、潜像画線群(5)のうちのIP要素(7A)がサンプリングされるか、IP反転要素(7B)がサンプリングされるかが変化し、その変化は連続的なものであるから、潜像画線群(5)の動きの方向と量が第一の方向(S1方向)の位相に応じて、変化することとなる。
そのため、実施の形態で示すような蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の配置方向が異なる場合には、出現した基画像(8)の上部は右へ動き、中央はその場に留まり、下部は左へ動くような効果が生じる。また、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)のピッチが異なる場合には、部分的に引き伸ばされたり、縮んだりする効果が生じる。このために従来のような単純な平行移動の動画効果ではなく、基画像(8)の形状が変化し、揺れ動きの動画効果が生じる。以上が、本発明の効果が生じる原理である。
前述のように蒲鉾状画線群(4)に対し、潜像画線群(5)のピッチと配置方向の少なくとも一つを異ならせて形成する構成は、従来の技術において意図的に「モアレ(moire)」を生じさせる構成と同じである。ただし、本発明の「揺れ動き」の効果は、印刷業界では一般的な「モアレ(moire)」とは異なる効果である。一般的なモアレとは、わずかに角度が異なっていたり、ピッチがわずかにずれている二種類の画線の干渉によって生じる画像の濃淡(干渉縞の強弱)が変化する現象であるが、本発明では、これをインテグラルフォトグラフィ方式の動画技術と融合させて、従来のモアレのような単なる濃淡の変化とは異なり、動きの方向や量がそれぞれの領域で連続的に変化する現象「揺れ動き」という特殊な動画的な視覚効果として昇華させたものである。
本発明の特徴的な動画効果である「揺れ動き」について図13を用いて説明する。本明細書中でいう「揺れ動き」とは、図13(a)に示すように、本来、直線であるはずの、画像の中心を示す画線である本来の中心線(L1)が、曲がった状態の実際の中心線(L2)に対して基画像(8)が出現し、観察角度を変化させることによって、蒲鉾状画線群(4)の画線方向である第二の方向(S2方向)上において、第一の方向(S1方向)への動きの方向と動きの量が連続的に変化する動きや、図13(b)に示すように本来の中心線(L1)の位置が、実際の中心線(L3)に対して配置方向である第一の方向(S1方向)に位相がずれた基画像(8)が出現し、観察角度を変化させることによって、基画像(8)の中の第一の方向(S1方向)に位相が異なるそれぞれの領域において、第一の方向(S1方向)への動きの方向と動きの量が連続的に変化する動きを指す。図13(a)の揺れ動きは、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の配置方向を異ならせて角度差αを設けた場合に顕著な動きの例であり、図13(b)の揺れ動きは、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)にピッチの差を設けた場合に顕著な動きの例である。図13(a)と図13(b)動きを組み合わせた動きについても「揺れ動き」であるとする。なお、本明細書においては、図13(a)の動き、図13(a)の動きともに「揺れ動き」であるとするが、特に図13(a)の動きについては基画像(8)の変化と動きが大きく、よりユニークな効果であるため、特に「ひねりを有した揺れ動き」と呼ぶ。
また、本実施の形態のように、一つの基画像(8)を単独で配置するだけでなく、別の基画像(8)から作製した別の潜像要素群(5)を隣接させて配置してもよい。また、同じ基画像(8)であっても、第一の方向(S1方向)の位相を第一のピッチ(P1)の約半ピッチ(P1/2)ずらして配置すれば、出現した対の基画像(8´)は、図14のように、基画像(8)とは正反対の揺れ動きが生じる。このように同じ画像であっても、対の基画像(8´)を隣接させて並べることによって、正反対の動き方によってその動画効果がより認識しやすくなることから、効果を強調する上では、好ましい。
なお、図11に示した蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の位置関係から、第一の方向(S1方向)に刷り合わせがずれた場合でも、図14に示した対の基画像(8´)のように、正反対の動きとなるものの、目視上同様の揺れ動きの動画効果が出現する。この場合の効果は、刷り合わせがずれていない潜像印刷物(1)と並べて直接比較しない限り、観察者には動きの方向が正反対となったことを認識できない。以上のように、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)の第一の方向(S1方向)の刷り合わせの位置関係にかかわらず、目視上同じ動画効果が生じることも本発明の特徴の一つである。
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作製した潜像印刷物の実施例について、実施の形態で用いた図1から図12までを用いて詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
図1に潜像印刷物(1)を示す。図1(a)に示すのは、潜像印刷物(1)の正面図であり、図1(b)に示すのは、図1(a)に示す潜像印刷物(1)のAA´ラインにおける断面図である。潜像印刷物(1)は、基材(2)の上に、印刷画像領域(3)が形成されて成る。基材(2)は、一般的な白色コート紙(エスプリコートFM 日本製紙製)を用いた。
本発明の印刷画像領域(3)の構成の概要を図2に示す。印刷画像領域(3)は、蒲鉾状画線群(4)と潜像画線群(5)を有する。潜像画線群(5)は、それぞれ同じ桜の花びらを基画像(8)とするIP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)を有する。
図4に示すのは潜像画線群(5)であり、IP要素群(5A)とIP反転要素群(5B)の二つの要素群から成る。図5に示すのは、IP要素群(5A)であり、画線幅(W2)0.2mmのIP要素(7A)を第三の方向(S3方向)に、第二のピッチ(P2)0.4mmで万線状に配置して構成した。また、図6に示すのはIP反転要素群(5B)であり、画線幅(W3)0.2mmのIP反転要素(7B)を第三の方向(S3方向)に第二のピッチ(P2)0.4mmで万線状に配置して構成した。これらの要素を互いに重なり合わないように、第一の方向(S1方向)に0.2mmだけ位相をずらして交互に連続して配置することで潜像画線群(5)を構成した。本実施例におけるIP画線のフレーム(図示せず)は第三の方向(S3方向)の幅を4mm、第四の方向(S4方向)の高さ(H)を6mmとし、第三の方向(S3方向)の圧縮率は0.05とした。
以上の構成の二つの画像を、まず基材(2)上に蒲鉾状画線群(4)をUV乾燥方式のスクリーン印刷方式で印刷した。インキは、表1に示すUVスクリーンインキを用いた。本インキは、拡散反射光下では半透明であり、正反射光下では緑色の干渉色を発する。続いて、蒲鉾状画線群(4)の上に潜像画線群(5)をUV乾燥方式のオフセット印刷方式で印刷した。インキは、透明なマットニス(マットメジュウム T&K TOKA製)を使用した。また、蒲鉾状画線(6)の盛り上がり高さは約12μmであった。二つの要素群の重なり合いの位置関係については、図11に示したような位置関係で重ね合わせた。
Figure 0006516262
以上の手順で作製した本発明の潜像印刷物(1)の効果を確認した。拡散反射光下において、印刷画像領域(3)中には桜の花びらは出現せず、完全に不可視であった(図示せず)。一方、正反射光下においてパール顔料の干渉色である緑色を呈する背景の中を灰色の桜の花びらが出現し、図12(a)、図12(b)、図12(c)のように潜像印刷物(1)を傾けた場合、緑色を呈する背景の中を灰色の桜の花びらがゆらゆらと揺れ動いて見える動画効果が生じた。以上のように、正反射光下において基画像(8)が出現し、傾きを変えることで揺れ動いて見える動画効果が生じることが確認できた。
1 潜像印刷物
2 基材
3 印刷画像領域
4 蒲鉾状画線群
5 潜像画線群
5A IP要素群
5B IP反転要素群
6 蒲鉾状画線
7A IP要素
7B IP反転要素
8 基画像
8´ 対の基画像
9A、9B フレーム
10 光源
11 観察者の視点

Claims (2)

  1. 基材上の少なくとも一部に印刷画像領域を備え、
    前記印刷画像領域は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともいずれか一方の特性を有する蒲鉾状画線が第一の方向に第一のピッチで万線状に配列された蒲鉾状画線群の上に、正反射光下における前記蒲鉾状画線の色彩と異なる色彩を有する潜像画線群が積層されて成り、
    前記潜像画線群は、基画像を分割した画像を所定の縮率で圧縮した複数のIP要素が、前記蒲鉾状画線の方向又はピッチと少なくとも一方が異なって万線状に配列されたIP要素群と、
    前記複数のIP要素をミラー反転して成る複数のIP反転要素が前記IP要素群と同じ方向及びピッチで分割した順に万線状に配列されたIP反転要素群を有し、
    前記IP要素と前記IP反転要素が交互に重なり合うことなく配置され、
    正反射光下で観察した場合には、前記基画像が出現し、
    観察角度に応じて、前記基画像が揺れ動いて視認されることを特徴とする潜像印刷物。
  2. 前記IP要素群は、前記複数のIP要素が、前記蒲鉾状画線と異なる方向及びピッチで複数配列されることで、前記観察角度を連続的に変化させると、前記基画像がひねりを有した揺れ動きとして視認されることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
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