JP6504426B2 - 電気機械変換部材の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動電圧信号が印加されることで変形する圧電体層などの電気機械変換層を有する電気機械変換部材の形成方法に関するものである。
この種の電気機械変換部材としては、例えば、インクジェット記録装置の液滴吐出装置のノズル孔から加圧液室内の液体を吐出させるために加圧液室を加圧するものが知られている。
特許文献1には、チタン酸ジルコン酸鉛(以下「PZT」という。)からなる強誘電体結晶膜(圧電体層)を有する電気機械変換部材の製造方法が開示されている。この製造方法では、基板上に下部電極(第1電極)を形成した上に配向制御層としてSrRuO膜を形成し、その上にPZT膜を形成している。
PZTなどの圧電体層は、その下地層と同じ結晶方向に配向した膜になりやすい。また、圧電体層は、結晶方向がどの方向に揃っているかによって、圧電定数が変わってくる。よって、例えば、結晶方向が(100)に揃った圧電体層を形成したい場合、結晶方向が(111)である下部電極上に圧電体層を直接形成しようとすると、(100)の結晶方向に揃った圧電体層を得ることが難しい。そのため、特許文献1に記載の製造方法では、圧電体層の結晶方向を所望の方向に揃えるために、当該所望の結晶方向をもつSrRuO膜である配向制御層を下地層として下部電極上に形成している。これにより、結晶方向が所望の方向に揃った圧電体層を得ることができる。
ところが、配向制御層を形成する場合でも、未だ十分に結晶方向が所望の方向に揃った圧電体層を安定して得ることが難しいという問題がある。この問題は、配向制御層を形成する場合に限らず、圧電体層の狙い結晶方向と同じ結晶方向をもつ下部電極(第1電極)上に圧電体層を直接形成する場合でも同様である。
上述した課題を解決するために、本発明は、振動板層上に、電極密着層、白金電極層、及び、酸化チタンからなる配向制御層を順次形成して、前記配向制御層の上に圧電体層及び上部電極層を順次形成する電気機械変換部材の形成方法において、前記酸化チタンからなる配向制御層を、真空度が8.6×10 −5 [Pa]以上1.0×10 −4 [Pa]以下である環境下でスパッタ法により形成することを特徴とする。
本発明によれば、結晶方向が所望の方向に揃った圧電体層を安定して得ることができるという優れた効果が奏される。
実施形態の圧電素子の基本的層構成を示す断面図である。 (a)は、SEM観察の結果を示し、図2(b)は、EBSBによる結晶性の解析結果を示し、図2(c)は、正極点図であり、左列に比較例1の結果を示し、右列に実施例1の結果を示したものである。 (a)は、図2(a)の左列に対応するSEM観察の結果の説明図である。(b)は、図2(b)の左列に対応するEBSBによる結晶性の解析結果の説明図である。 (a)は、比較例1における白濁部の粒径分布を示すグラフであり、(b)は、実施例1における白濁部の粒径分布を示すグラフである。 実施形態の圧電素子を採用した液滴吐出ヘッドの断面図である。 同液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。 同液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を例示する斜視図である。 同インクジェット記録装置を例示する側面図である。
以下、本発明に係る電気機械変換部材としての圧電素子を、画像形成装置としてのインクジェット記録装置における液滴吐出装置としての液滴吐出ヘッドに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の圧電素子の基本的層構成を示す断面図である。
圧電素子は、基板10上に、振動板層11、下部電極層20、電気機械変換層である圧電体層(圧電体膜)30、上部電極層40、保護層50、層間絶縁層(不図示)、電極配線層(不図示)等を積層することにより形成される。
基板10としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、100[μm]以上600[μm]以下の厚みを持つものが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本実施形態においては、主に(100)の面方位を持つシリコン単結晶基板を使用している。
エッチング技術を利用してシリコン単結晶基板を加工していく場合、そのエッチング方法としては異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したエッチング方法である。例えば、KOH等のアルカリ溶液に浸漬させる異方性エッチングでは、(111)の結晶方向をもつ場合は、(100)の結晶方向をもつ場合に比べて、約1/400程度のエッチング速度となる。したがって、(100)の結晶方向をもつ場合は、約54.74[°]の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、(110)の結晶方向をもつ場合は、深い溝をほることができ、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。これを考慮すれば、本実施形態では、(110)の結晶方向をもつシリコン単結晶基板を使用することも可能である。
次に、本実施形態における圧電素子の製造方法について説明する。
まず、面方位(100)である結晶方向をもつシリコン単結晶基板からなる基板10上に振動板層11を形成する。振動板層11は、圧電体層30の変形によって発生した力を受けて変位可能なものである。振動板層11の形成方法としては、スパッタ法、スパッタ法と熱酸化法との組み合わせ、熱処理製膜法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。
本実施形態において、振動板層11は、例えば、厚さ200[nm]のシリコン酸化膜をLPCVD法により成膜する。また、シリコン酸化膜の表面粗さは算術平均粗さで5[nm]以下であるのが好ましい。その後、例えば厚さ500[nm]のポリシリコン膜(例えば厚さ500nm)を成膜する。ポリシリコン膜の厚さは0.1〜3[μm]が好ましく、表面粗さは算術平均粗さで5[nm]以下であるのが好ましい。次に、例えば厚さ150[nm]のシリコン窒化膜をLPCVD法により成膜する。これらの膜は必要回数だけ交互に積層され、最終的に振動板層11としての応力バランスが平衡に達するところで止める。ただし、振動板層11の最表面はシリコン酸化膜とする。本実施形態の振動板層11は、複数の膜を積層した複数層構造であるが、単一材料の単層構造であってもよい。
このようにして形成される振動板層11の表面粗さは、算術平均粗さで4[nm]以下とするのが好ましい。4[nm]よりも大きいと、その後に成膜される圧電体層30等の絶縁耐圧が悪化しやすく、リークが生じやすくなるためである。また、LPCVD法で成膜された膜であれば、半導体、MEMSデバイス等で一般的に従来から適用されており、加工も容易であることから、新たなプロセス課題を持ち込まず、SOI(Silicon on Insulator)等の高価な基板を用いることなく、安定した振動板層11を得ることができる。
次に、振動板層11の上に第1電極としての共通電極であるPt電極22を形成するが、Pt電極22は上述した振動板層11との密着性が悪い。そのため、本実施形態では、Ti、TiO、Ta、Ta、Ta等からなる電極密着層21を、振動板層11上に形成してからPt電極22を形成する。本実施形態のPt電極22は、(111)の結晶方向への配向性が高いものとなっており、X線回折によりPtの結晶性を評価したときにそのピーク強度の高いPt膜が得られている。そのため、(100)あるいは(001)の結晶方向をもつPZTからなる圧電体層30を形成するために、本実施形態では配向制御層23を圧電体層30の下地層として形成する。
配向制御層23としては、例えば、酸化チタンで形成することができる。この場合、その上に積層するゾルゲル液のPZTと反応して、TiリッチなPZT膜が生成される、Tiリッチな膜は(100)の結晶方向をもつPZTの結晶源として働き、さらに積層されるPZT膜の(100)または(001)の結晶方向を揃えることができる。配向制御層23は、酸化チタンに限らず、チタン酸鉛などの他の材料で形成することもできる。チタン酸鉛の場合、(100)の結晶方向をもつPZTの結晶源として直接的に働くので、好ましい。
また、下部電極層20を構成する電極密着層21、Pt電極22、配向制御層23は、スパッタ法や真空蒸着法等のように、真空度の高い環境下で成膜される。特に、本実施形態においては、真空度が1.0×10-4[Pa]以下である環境下で、スパッタ法により下部電極層20を成膜した。下部電極層20の全体の層厚としては、0.02[μm]以上0.5[μm]以下であるのが好ましく、0.02[μm]以上0.05[μm]以下であるのがさらに好ましい。
圧電体層30は、鉛とチタンとジルコニウムを含むペロブスカイト型酸化物誘電体で形成されたものが好ましく、本実施形態ではPZTで形成されている。PZTは、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)との固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrOとPbTiOの比率を53:47の割合としたもので、化学式で示すと、Pb(Zr0.53Ti0.47)Oと表記でき、PZT(53/47)と示されることもある。
圧電体層30としては、PZT以外にも、チタン酸バリウムなどが挙げられる。この圧電体層30は、例えば、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料とし、共通溶媒に溶解させることで、チタン酸バリウム前駆体溶液を作製して形成することができる。
ペロブスカイト型酸化物誘電体の材料は、一般式ABO3型構造で記述することができ、例えば、A=Pb,Ba,Sr、B=Ti,Zr,Sn,Ni,Zn,Mg,Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述としては、(Pb−X,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb1−X,Sr)(Zr,Ti)O等となる。これは、AサイトのPbの一部をBaやSrで置換したものを示している。このような置換は、2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
圧電体層30の形成方法としては、スパッタ法やゾルゲル法等を用いて作製することができる。圧電体層30の形成にはパターニング処理が必要となるので、フォトリソエッチング等により圧電体層30を所望の形状に形成する。PZTをゾルゲル法により形成する場合、酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料とし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させて均一溶液にして、PZT前駆体溶液を作製する。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、PZT前駆体溶液には安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量添加してもよい。
基板10の全面にPZT膜を形成する場合には、スピンコートなどの溶液塗布法によりPZT前駆体溶液を塗膜し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで圧電体層30を形成する。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックが生じないように一度の工程で形成される膜厚が100[nm]以下となるように、PZT前駆体溶液の濃度を調整するのが好ましい。
一方、PZT膜をインクジェット工法により形成する場合には、最初からパターニングされた圧電体層30を得ることができる。表面改質材については、下地層の材料によっても異なるが、酸化物を下地層とする場合は主にシラン化合物を用い、金属を下地層とする場合は主にアルカンチオールを用いることができる。
圧電体層30の層厚は、0.5[μm]以上5[μm]以下であるのが好ましく、1[μm]以上2[μm]以下であるのがさらに好ましい。0.5[μm]未満であると、駆動電圧信号によって十分な変形を発生させることが難しくなり、5[μm]を超えると、積層数が多くなるため、工程数が増え、プロセス時間が長くなる。
本実施形態においては圧電体層30の配向性(結晶方向が所望の方向に揃っている度合い)は、PZTをゾルゲル法により作製したPZT前駆体溶液を用いてスピンコートにより塗膜して2[μm]のPZT膜を成膜し、X線回折装置を用いて評価する。具体的には、X線回折装置により各結晶方向のピーク強度の総和を1としたときそれぞれの結晶方向の比率(配向度ρ)を、下記の式(1)より算出し、その配向度の高さで評価する。本実施形態において、(100)の結晶方向に高い配向性をもつPZT膜は、配向度ρが、(100)の結晶方向については0.85以上であり、かつ、(110)の結晶方向については0.05以下であるとする。この範囲から外れると、圧電素子を連続駆動した後の変位劣化については十分な特性が得られない。
ρ = I(h k l) / ΣI(h k l)
右辺分母:各結晶方向のピーク強度の総和
右辺分子:対象とする結晶方向のピーク強度
このような圧電体層30の上には、上部電極層40が形成される。上部電極層40の材料としては、特に制限はなく、Al、Cuなどの一般的な半導体プロセスで用いられる材料およびその組み合わせで形成することができる。本実施形態においては、PZTで構成される圧電体層30との密着性を良好にするため、同じペロブスカイト系の構造を持つSRO(SrRuO)を下敷き層41として形成した後に、Pt電極42を形成した。
〔実施例1〕
次に、本実施形態における圧電素子の一実施例(以下、本実施例を「実施例1」という。)について説明する。
実施例1は、シリコン単結晶基板の表面に熱酸化膜を形成した後、CVD法により積層型の振動板層11を形成する。詳細には、基板10となるシリコンウェハに、膜厚600[nm]の熱酸化膜を形成し、その上に、厚さ200[nm]のポリシリコン膜、厚さ100[nm]のシリコン酸化膜、厚さ150[nm]のシリコン窒化膜、厚さ150[nm]のシリコン酸化膜、厚さ150[nm]のシリコン窒化膜、厚さ100[nm]のシリコン酸化膜、厚さ200[nm]のポリシリコン膜、最後に、厚さ600[nm]のシリコン酸化膜を形成して、振動板層11とした。なお、図1においては、振動板層11は一層で示してある。
つづいて、このようにして形成した振動板層11の上に、下部電極層20を構成する電極密着層21を成膜する。電極密着層21の形成方法は、スパッタ法でTiの金属膜を形成した後、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置により、酸素雰囲気中で酸化処理してTiO膜を形成し、これを電極密着層21とした。Ti金属膜成膜装置は、アルバック社製スパッタリング装置SME−200Eを用いた。電極密着層21の形成条件は、基板温度を150[℃]、DC投入パワーを300[W]、Arガス圧を0.14[Pa]とし、膜厚を50[nm]とした。そして、このTi金属膜に対し、730[℃](昇温速度30[℃/秒])、酸素流量1[sccm]、酸素100[%]の雰囲気で、3分間熱酸化焼成した。焼成後の膜厚は、83〜86[nm]であった。
次に、下部電極層20を構成するPt電極22を160[nm]の膜厚で形成した。このPt電極22を成膜する前に、そのプロセス室および搬送室の真空度を1.0×10−4[Pa]とした。プロセス条件は、基板温度を500[℃]、RF投入パワーを500[W]、Arガス圧を0.16[Pa]とした。これにより、Pt電極22は(111)面が膜厚方向に配向したものとなった。
本実施例1において、Pt電極22を160[nm]とした理由は、Pt電極22の成膜温度条件が550[℃]以上である場合、250[nm]を超えた膜厚ではPt電極22の膜自体に白濁が観測されたため、白濁を示さない範囲とするためである。白濁が観測された理由は、表面粗さが大きくなったためと考えられる。本実施形態において、狙いの表面粗さSaが15[nm]以上20[nm]以下としている。Pt電極22に空孔を形成されない値として、膜厚を160[nm]としている。
次に、下部電極層20を構成する配向制御層23として、Ti膜を5[nm]の膜厚で形成した。その形成条件は、基板温度を150[℃]とし、DC投入パワーを300[W]とし、Arガスをスパッタガスとしてそのガス圧を0.14[Pa]とした。このとき、スパッタ前のプロセス室および搬送室の真空度を1.0×10−4[Pa]とした。Ti成膜後、RTA装置で酸化雰囲気中で熱処理を実施し、酸化チタンとした。このTi金属膜に対し、730[℃](昇温速度30[℃/秒])、酸素流量1[sccm]、酸素100[%]の雰囲気で、1分間熱酸化焼成した。焼成後の膜厚は、8.1〜8.5[nm]であった。この膜厚は、X線回折装置の小角散乱により測定し、フィッティングをして得ている。
次に、圧電体層30を形成した。圧電体材料としては、最も一般的なPZT(焼成後Zr/Ti=52/48となる組成、Pb過剰量が15[atomic%])の原材料を選択した。PZTを構成する金属元素Pb、Zr、Tiを成分とするアルコキシドを出発原料として形成した。1層目をスピンコートした後、RTA装置を使用して、温度490[℃]の酸素雰囲気中で5分間焼成した。続いて、2層目、3層目も同様にして固化焼成した後、結晶化のための焼成として、750[℃]の乾燥空気中の雰囲気で3分間焼成した。この3層(M=3)を積層した際の膜厚は250[nm]であった。この3層の積層を同じ手順で繰り返し、全体として膜厚2[μm]の圧電体層30を形成した。
このようにして圧電体層30を形成した後、圧電体層30の評価を行った。
まず、SEM観察を行ったところ、その結晶の平均粒径が0.18[μm]、粒径の分布範囲が0.05〜0.5[μm]であった。このとき、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、白濁は観察されなかった。また、EBSD(Electron Backscatter Diffraction)によりその配向を調べたところ、(100)の結晶方向に高い配向性を示し、正極点図でも良好な結晶性を示していた。このときのX線回折の結果は、(100)の結晶方向についてのピーク強度が150[kcps]以上(150〜200[kcps])であり、(100)の結晶方向についての配向度は92〜95[%]であった。なお、X線回折装置は、ブルカー社製D8 DISCOVERを用いた。
このようにして圧電体層30を形成した後、上部電極層40を形成する。具体的には、まず、圧電体層30上に、下敷き層41として導電性酸化物層であるSrRuOを40[nm]の厚みで成膜した。その形成条件は、基板温度を550[℃]とし、RF投入パワーを400[W]とし、Oガスを30[%]含有したArガスをスパッタガスとしてそのガス圧を1.6[Pa]とした。さらに、第2電極であるPt電極42を125[nm]の膜厚で形成した。プロセス条件は、基板温度を300[℃]とし、RF投入パワーを500[W]とし、Arガス圧を0.16[Pa]とした。
その後、フォトリソグラフィーの技術を用いてレジストパターンを形成した後、図1に示した形状となるように、積層構造のエッチング及びレジストアッシングを行った。Pt電極42のサイズは、45μm×1mmの短冊状の形状とした。
その後、圧電素子を保護するための保護層50であるパッシベーション膜を形成し、図示しない層間絶縁層の形成、Pt電極42と配線パターンとの接続形成、配線パターンを保護するパシベーション膜の形成等を行って圧電素子を作製した。
このようにして圧電素子を作製した後、分極処理してから上下電極間のリーク電流の測定を行った。このとき、上部電極層40の側を正の電位とし、下部電極層20の側を負の電位(アース電位)とした。分極処理条件としては、0[V]から3分間でゆっくり電圧を上げて印加電圧を40[V]とし、印加電圧を1分間保持した後、3分間で0[V]までゆっくり電圧を下げるようにした。また、圧電素子のリーク電流量としては、分極処理後の評価で30[V]印加時のリーク電流量が1.8〜2.7×10−7[A/cm−2]となるようにした。このリーク電流量は、圧電素子の機能を果たすのに十分に小さい値である。また、これらの電気特性の結果は、液滴吐出ヘッドとして十分なものである。
このようにして作製された圧電素子を本実施形態のインクジェット記録装置に用い、インク充填後にインクの吐出評価を行った。粘度を5[cp]に調整したインクを用いて、単純Push波形をもつ−10[V]〜−30[V]の駆動電圧信号を加えたときの吐出状況を確認したところ、すべてのノズル孔から適切な吐出動作が行われていることが確認された。
〔実施例2〕
次に、本実施形態における圧電素子の他の実施例(以下、本実施例を「実施例2」という。)について説明する。
本実施例2は、前記実施例1におけるPt電極22及び配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を9.8×10−5[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成した。本実施例2においても、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、白濁は観察されなかった。
〔実施例3〕
次に、本実施形態における圧電素子の更に他の実施例(以下、本実施例を「実施例3」という。)について説明する。
本実施例3は、前記実施例1におけるPt電極22及び配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を8.6×10−5[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成した。本実施例3においても、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、白濁は観察されなかった。
〔実施例4〕
次に、本実施形態における圧電素子の更に他の実施例(以下、本実施例を「実施例4」という。)について説明する。
本実施例4は、前記実施例1におけるPt電極22の形成時におけるプロセス室の真空度を1.1×10−5[Pa]とし、配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を8.6×10−5[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成した。本実施例4においても、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、白濁は観察されなかった。
〔実施例5〕
次に、本実施形態における圧電素子の更に他の実施例(以下、本実施例を「実施例5」という。)について説明する。
本実施例5は、配向制御層23をチタン酸鉛(PbTiO)で形成した以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成した。なお、本実施例5における配向制御層23は、ゾルゲル法により1層目を成膜した後、熱酸化は行わずに、140[℃]の溶媒乾燥を3分間行うのみで、その上に2層目と3層目を成膜し、3層まとめて結晶化熱酸化を行った。本実施例5においても、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、白濁は観察されなかった。
〔比較例1〕
次に、上述した各実施例1〜5と比較するための圧電素子の比較例(以下、本比較例を「比較例1」という。)について説明する。
比較例1は、前記実施例1におけるPt電極22及び配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、1.4×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
比較例1においては、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、明らかな白濁が観察された。この白濁部分の状態をSEM観察し、さらにEBSBによる結晶性の評価を行った。図2(a)は、SEM観察の結果を示し、図2(b)は、EBSBによる結晶性の解析結果を示し、図2(c)は、正極点図である。図2の左列に本比較例1における白濁部の結果を示し、図2の右列に、実施例1の結果(非白濁部)を示す。
図2(a)の左列に示すように、比較例1の白濁部においては結晶粒の境界が不明瞭になっている部分(図3(a)中破線で囲った部分)が多数確認されるのに対し、実施例1の非白濁部においては結晶粒の境界が不明瞭になっている部分は確認されない。
また、図2(b)の左列に示すように、結晶粒の境界が不明瞭な部分(図3(b)中破線で囲った部分)は、他の部分と比べ、結晶方向が変わっていた。具体的には、狙いの結晶方向は(001)であるところ、結晶粒の境界が不明瞭な部分の結晶方向は主に(111)となってしまっている。また、結晶方向が揃っていないことは、図2(c)の左列に示す正極点図からも明らかである。結晶方向が揃っている場合、図2(c)の右列に示すように、正極点図が円環状となる。
また、比較例1においてX線回折を行ったところ、(100)の結晶方向におけるピーク強度は120[kcps]以下(20〜120[kcps])であり、(100)の結晶方向についての配向度は40〜82%であった。
図4(a)は、比較例1における白濁部の粒径分布を示すグラフであり、図4(b)は、実施例1における白濁部の粒径分布を示すグラフである。
比較例1においては、図4(a)に示すように、図平均結晶粒径が0.25[μm]であり、粒径の分布範囲が0.05〜0.85[μm]であり、図4(b)に示す実施例1よりも、結晶粒が大きいものが含まれている。
〔比較例2〜4〕
次に、圧電素子の他の比較例2〜4について説明する。
比較例2は、前記実施例1におけるPt電極22及び配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、1.3×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
比較例3は、前記実施例1におけるPt電極22及び配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、1.2×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
比較例4は、前記実施例1におけるPt電極22及び配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、1.1×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例1と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
これらの比較例2〜4においても、強い照度のライトの元で圧電体層30の白濁の有無を観察したところ、比較例1と同様、白濁が観察された。ただし、白濁の度合いは、真空度が低いほど(真空状態に近づくほど)、徐々に軽減された。特に、比較例4は、白濁が発生しない例もあったが、約半数の頻度で白濁が発生した。実施例1と比較例4とを比較すると、わずかな圧力の違いで白濁発生に違いが出ている。この違いは、結晶の界面状態が微妙に変化していることが理由として考えられるが、それが界面エネルギーの差であるのかどうかは真空中の状態を調べることができないので明らかではない。
〔比較例5〜7〕
次に、圧電素子の更に他の比較例5〜7について説明する。
比較例5は、前記実施例4における配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、1.5×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例4と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
比較例6は、前記実施例4における配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、2.0×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例4と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
比較例7は、前記実施例4における配向制御層23の形成時におけるプロセス室の真空度を、2.5×10−4[Pa]とした以外は、前記実施例4と全く同一条件で、圧電体層30を形成したものである。
下記の表1は、上述した実施例1〜5と比較例1〜7の結果をまとめたものである。
次に、本実施形態における圧電素子を用いた液滴吐出ヘッドについて説明する。
図5は、本実施形態の圧電素子を採用した液滴吐出ヘッドの断面図である。
本実施形態の液滴吐出ヘッドは、フォトリソグラフィー技術を用いて、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチングで、基板10の裏面(図1中の下面)から振動板層11の部分まで深堀して、液室部分70を形成する。これにより、流路形成基板としてのアクチュエータ基板71が完成する。このアクチュエータ基板71に、ノズル孔79を有するノズル板80を接合し、駆動回路、インク液供給機構を組み立てて、液滴吐出ヘッドとする。なお、図5中には液体供給手段、流路、流体抵抗についての記述は省略した。
図6は、液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
図6では、上側からノズル板80、アクチュエータ基板(流路形成基板)71、共通流路形成基板72を示している。アクチュエータ基板71は、圧電素子の駆動のための駆動回路が搭載されたフレキシブルプリント基板(FPC)73を備えている。また、図6中、共通流路形成基板72は圧電素子保護空間74を有している。
次に、本実施形態における液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例について、図7及び図8を参照して説明する。
なお、図7はインクジェット記録装置を例示する斜視図であり、図8はインクジェット記録装置を例示する側面図である。
このインクジェット記録装置100は、主に、記録装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ101と、キャリッジ101に搭載した液滴吐出ヘッド1からなる記録ヘッド104と、記録ヘッド104へインクを供給するインクカートリッジ102とを含んで構成される印字機構部103を有している。
また、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙Pを積載可能な給紙カセット130を抜き差し自在に装着することができ、また用紙Pを手差しで給紙するための手差しトレイ105を開倒することができ、給紙カセット130或いは手差しトレイ105から給送される用紙Pを取り込み、印字機構部103によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ106に排紙する。
印字機構部103は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド107と従ガイドロッド108とでキャリッジ101を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ101にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1の一例であるインクジェットヘッドからなる記録ヘッド104を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ101には記録ヘッド104に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ102を交換可能に装着している。インクカートリッジ102は上方に大気と連通する大気口、下方には記録ヘッド104へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により記録ヘッド104へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
ここで、キャリッジ101は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド107に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド108に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ101を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ109で回転駆動される駆動プーリ110と従動プーリ111との間にタイミングベルト112を張装し、このタイミングベルト112をキャリッジ101に固定しており、主走査モータ109の正逆回転によりキャリッジ101が往復駆動される。
一方、給紙カセット130にセットした用紙Pを記録ヘッド104の下方側に搬送するために、給紙カセット130から用紙Pを分離給装する給紙ローラ113及びフリクションパッド114と、用紙Pを案内するガイド部材115と、給紙された用紙Pを反転させて搬送する搬送ローラ168と、この搬送ローラ116の周面に押し付けられる搬送コロ117及び搬送ローラ116からの用紙Pの送り出し角度を規定する先端コロ110とを設けている。搬送ローラ116は副走査モータ128によってギヤ列を介して回転駆動される。そして、キャリッジ101の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ116から送り出された用紙Pを記録ヘッド104の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向下流側には、用紙Pを排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ120、拍車123を設け、さらに用紙Pを排紙トレイ108に送り出す排紙ローラ121及び拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125,126とを配設している。
記録時には、キャリッジ101を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド104を駆動することにより、停止している用紙Pにインクを吐出して1行分を記録し、用紙Pを所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙Pを排紙する。
また、キャリッジ101の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド104の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ101は印字待機中にはこの回復装置127側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド104をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド104の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。又、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、インクジェット記録装置100においては、実施例の圧電アクチュエータを採用した液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)1である記録ヘッド104を搭載しているので、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
なお、本実施形態におけるインクジェット記録装置は、インクを吐出する例であるが、吐出する液体は、インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
また、本実施形態においては、電気機械変換部材である圧電素子を、インクジェットヘッドのアクチュエータとして用いた例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、光を走査するための偏向ミラーの向きをアクチュエータ基板の振動板層の変位に応じて偏向する偏向ミラーの駆動手段にも適用することができる。また、例えば、強誘電体メモリの圧電素子としても適用できる。強誘電体メモリはFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)と言われ、不揮発性の半導体メモリとして強誘電体膜の分極反転時間が速い(1[ns]以下)ため、DRAM並みの高速動作が期待できる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
基板10上に設けられるPt電極22等の第1電極と、前記第1電極を下地層とするか又は該第1電極上に設けられる配向制御層23を下地層とするかして形成される圧電体層30等の電気機械変換層と、前記電気機械変換層上に設けられるPt電極42等の第2電極とを有する圧電素子等の電気機械変換部材において、前記下地層は、真空度が1.0×10-4[Pa]以下である環境下で形成したものであることを特徴とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、圧電体層の下地層を形成するときに混入し得るHO、O、H、CO等の不純物が、所望の方向に揃った圧電体層を安定して得ることができないことに大きく影響していることを見出した。すなわち、スパッタ法等で下地層を形成する際のガス成分が結晶成長を阻害する不純物となると考えられる。特に、HO、Oは、膜成分の金属と反応して化合物を作る可能性があり、所望の方向に揃った圧電体層を安定して得るのに大きな影響を与えるものと考えられる。本態様においては、真空度が1.0×10-4[Pa]以下であるという高い真空状態で下地層を形成することとし、下地層に不純物が含まれるのを抑制している。その結果、不純物の少ない下地層を形成できるので、所望の方向に揃った圧電体層を安定して得ることが可能となる。
(態様B)
前記態様Aにおいて、前記基板は、シリコン基板上に、シリコン窒化物、シリコン酸化物、ポリシリコンからなる振動板層11等の積層振動板層が形成されたものであることを特徴とする。
これによれば、周波数の高い駆動電圧信号でも適切に変位できる振動板層を実現できる。
(態様C)
前記態様A又はBにおいて、前記第1電極は、白金又はイリジウムをスパッタ法によって成膜したものであることを特徴とする。
これによれば、ゾルゲル法等による高温処理となるプロセスに対して変化しない第1電極を得ることができる。
(態様D)
前記態様A〜Cのいずれかの態様において、前記電気機械変換層は、少なくとも鉛とチタンとジルコニウムを含むPZT等のペロブスカイト型酸化物誘電体であって、結晶方向が(100)もしくは(001)に優先配向する多結晶体で形成されたものであり、その結晶粒径が0.05[μm]以上0.3[μm]以下の範囲内でかつ平均粒径が0.2[μm]以下であることを特徴とする。
これによれば、電気機械変換層の結晶粒が揃って、電気機械変換層の変形特性のバラツキを低減することができるという優れた効果が奏される。
(態様E)
前記態様Dにおいて、前記配向制御層は、酸化チタン又はチタン酸鉛で形成されたものであることを特徴とする。
配向制御層として酸化チタンを用いた場合、その酸化チタンとその上に処理されるゾルゲル法等によるPZT前駆体液との反応により新たに配向性に寄与する種結晶が生成される。配向性の小さい酸化チタンを配向制御層として用いることで、(100)もしくは(001)に主配向性した電気機械変換層が得られる。また、配向制御層としてチタン酸鉛を用いた場合、そのままで種結晶となり、(100)もしくは(001)に主配向性した電気機械変換層が得られる。
(態様F)
インク等の液滴を吐出するノズル孔79等のノズルに連通する液室70と、入力される駆動信号に応じて、前記液室内の液体を加圧可能なように該液室の壁部の一部を変位させる電気機械変換部材とを有する液滴吐出ヘッド等の液滴吐出装置において、前記電気機械変換部材として、前記態様A〜Eのいずれかの態様に係る電気機械変換部材を用いたことを特徴とする。
これによれば、安定した吐出性能を有する液滴吐出装置が得られる。
(態様G)
液滴吐出装置から液滴を吐出して画像を形成するインクジェット記録装置等の画像形成装置において、前記液滴吐出装置として、前記態様Fに係る液滴吐出装置を用いたことを特徴とする。
これによれば、安定した吐出性能を有する液滴吐出装置を用いて画像を形成することができる。
(態様G)
基板10上にPt電極22等の第1電極を形成した後、該第1電極又は該第1電極上に設けられる配向制御層23である下地層上に圧電体層30等の電気機械変換層を形成し、さらに該電気機械変換層上にPt電極42等の第2電極を形成する圧電素子等の電気機械変換部材の製造方法において、前記下地層を、真空度が1.0×10-4[Pa]以下である環境下で形成することを特徴とする。
これによれば、所望の方向に揃った圧電体層を安定して得ることが可能となる。
1 液滴吐出ヘッド
10 基板
11 振動板層
20 下部電極層
21 電極密着層
22 Pt電極(第1電極)
23 配向制御層
30 圧電体層
40 上部電極層
41 下敷き層
42 Pt電極(第2電極)
50 保護層
70 液室
71 アクチュエータ基板
72 共通流路形成基板
74 圧電素子保護空間
79 ノズル孔
80 ノズル板
100 インクジェット記録装置
101 キャリッジ
102 インクカートリッジ
104 記録ヘッド
特開2013−251490号公報

Claims (6)

  1. 振動板層上に、電極密着層、白金電極層、及び、酸化チタンからなる配向制御層を順次形成して、前記配向制御層の上に圧電体層及び上部電極層を順次形成する電気機械変換部材の形成方法において、
    前記酸化チタンからなる配向制御層を、真空度が8.6×10 −5 [Pa]以上1.0×10 −4 [Pa]以下である環境下でスパッタ法により形成することを特徴とする電気機械変換部材の形成方法。
  2. 請求項1に記載の電気機械変換部材の形成方法において、
    前記白金電極層を、真空度が1.0×10 −4 [Pa]以下である環境下でスパッタ法により形成することを特徴とする電気機械変換部材の形成方法。
  3. 請求項2に記載の電気機械変換部材の形成方法において、
    前記白金電極層を形成するときの真空度は、1.1×10-5[Pa]以上であることを特徴とする電気機械変換部材の形成方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気機械変換部材の形成方法において、
    前記圧電体層は、少なくとも鉛とチタンとジルコニウムを含むペロブスカイト型酸化物誘電体であって、結晶方向が(100)もしくは(001)に優先配向する多結晶体で形成されたものであり、その結晶粒径が0.05[μm]以上0.3[μm]以下の範囲内でかつ平均粒径が0.2[μm]以下であることを特徴とする電気機械変換部材の形成方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気機械変換部材の形成方法において、
    前記振動板層は、シリコン基板上に、シリコン窒化物、シリコン酸化物、ポリシリコンからなる積層振動板層であることを特徴とする電気機械変換部材の形成方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気機械変換部材の形成方法において、
    前記電気機械変換部材は、入力される駆動信号に応じて、液滴を吐出するノズルに連通する液室内の液体を加圧可能なように該液室の壁部の一部を変位させる液滴吐出装置の電気機械変換部材として用いられるものであることを特徴とする電気機械変換部材の形成方法。
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