JP6287178B2 - 電気−機械変換素子及び液滴吐出ヘッド - Google Patents

電気−機械変換素子及び液滴吐出ヘッド Download PDF

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Description

本発明は、電気−機械変換素子及び液滴吐出ヘッドに関する。
印加される電界強度の変化によって伸縮する電気−機械変換膜を有する電気−機械変換素子は、例えば、インクジェット記録装置の液滴吐出ヘッドに搭載される圧電アクチュエータ等の用途に用いられている。電気−機械変換膜は、外部からの電界の作用なしに分極を起こす自発分極性を有する膜である。
電気−機械変換素子としては、例えば、電界の印加方向に電気−機械変換膜の自発分極軸を合わせることで、自発分極軸方向に伸縮する圧電歪を利用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
また、電気−機械変換膜としては、例えば、電界の印加方向と電気−機械変換膜の自発分極軸とをずらすことで、自発分極軸が電界の印加方向に回転する回転歪を利用する技術が知られている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、上述の圧電歪を利用する場合には、初期変位量には限界があり、より大きな変位量を得ることが困難である。一方、上述の回転歪を利用する場合には、圧電歪を利用する場合と比較して、大きな変位量を得ることが可能であるが、連続動作を行った場合に、変位が元に戻りにくいため、得られる変位量が連続動作とともに小さくなる(大きな変位劣化が生じる)ことがある。
そこで、本発明の一つの案では、初期変位量が大きく、連続動作を行った場合でも変位劣化が小さい電気−機械変換素子を提供することを課題とする。
一つの案では、
基板上に直接又は間接的に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された菱面体晶を含む電気-機械変換膜と、
前記電気−機械変換膜上に形成された上部電極と、
を有し、
前記電気−機械変換膜は、自発分極軸が前記電気−機械変換膜の膜厚方向に対して平行になっているものと、前記自発分極軸が前記膜厚方向に対して所定の角度θmを有して傾いているものと、を含み、
前記所定の角度θmは、62°≦θm≦74°を満たす、
電気−機械変換素子が提供される。
一態様によれば、初期変位量が大きく、連続動作を行った場合でも変位劣化が小さい電気−機械変換素子を提供できる。
電気−機械変換素子の変形の説明図である。 第1実施形態に係る電気−機械変換素子の断面図である。 第1実施形態に係る電気−機械変換膜の自発分極軸Pと電界印加方向Eとの関係の説明図である。 第1実施形態に係る電気−機械変換素子の他の例を示す断面図である。 第1実施形態に係る第1の電極の結晶性の説明図である。 第1実施形態に係るの第2の電極のX線回折パターンである。 菱面体晶系における結晶格子の形状の説明図である。 第1実施形態に係る電気−機械変換膜のX線回折パターンである。 第1実施形態に係る電気−機械変換素子の構造の説明図である。 分極処理装置の構成の一例の説明図である。 分極処理装置の構成の他の例の説明図である。 第1実施形態に係る電気−機械変換素子における分極処理前後のP−Eヒステリシス曲線である。 第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドの構成の概略図である。 図13の液滴吐出ヘッドを複数個配置したときの概略図である。 第3実施形態に係るインクジェット記録装置を例示する斜視図である。 第3実施形態に係るインクジェット記録装置の機構部を例示する側面図である。 実施例及び比較例における電気−機械変換素子のX線回折パターンである。 実施例及び比較例における電気−機械変換素子の変位量と電界強度との関係の説明図である。
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
電気−機械変換素子は、上述のように、初期変位量が大きく、連続動作を行った場合でも変位劣化が小さいことが好ましい。
まず、電気−機械変換素子の変位(変形)について、図1を参照しながら説明する。図中、矢印Eは電界印加方向、実線矢印Pは外部からの電界の作用がない状態での分極方向(自発分極軸)、破線矢印Pは電界印加時の分極方向を示している。
図1(a)に示すように、電界印加方向Eに電気−機械変換膜の自発分極軸Pを合わせた電気−機械変換素子は、電気−機械変換膜に電界が印加されると自発分極軸Pの方向に結晶格子が伸縮する圧電歪により変形する。圧電歪による変形は、結晶格子の伸縮による変形であるため得られる初期変位量には限界がある。
一方、図1(b)に示すように、電界印加方向Eと電気−機械変換膜の自発分極軸Pとをずらした電気−機械変換素子は、電気−機械変換膜に電界が印加されると自発分極軸Pが電界印加方向Eに回転する回転歪により変形する。回転歪による変形は、自発分極軸Pの回転による変形であるため、圧電歪による変形と比較して、大きな初期変位量を得ることが可能である。しかしながら、電界印加のオン、オフを繰り返す動作(連続動作)を行った場合に、変位が元に戻りにくいため、得られる初期変位量が連続動作とともに小さくなることがある。
そこで、本発明の発明者らは、電気−機械変換素子を構成する材料の一つである電気−機械変換膜の結晶構造に着目し、鋭意検討を行った。その結果、電気−機械変換膜の結晶構造、電気−機械変換膜の自発分極軸Pと電気−機械変換膜に印加される電界方向との間の関係について、これらのパラメータが所定の条件にあることによって、初期変位量が大きく、連続動作を行っても変位劣化が小さい電気−機械変換素子が得られることを見出して、以下に説明する電気−機械変換素子の発明に至った。
[第1実施形態]
第1実施形態では、以下の構成を有する電気−機械変換素子1について説明する。
図2に、第1実施形態に係る電気−機械変換素子1の断面図を示す。図3に、第1実施形態に係る電気−機械変換膜42の自発分極軸Pと電界印加方向Eとの関係を示す。図4に、第1実施形態に係る電気−機械変換素子1の断面図の他の例を示す。
図2に示すように、第1実施形態の電気−機械変換素子1は、基板20上に直接又は間接的に形成された下部電極41と、下部電極41上に形成された菱面体晶を含む電気-機械変換膜42と、電気−機械変換膜42上に形成された上部電極43と、を有する。図2においては、下部電極41は、振動板30を介して、基板20上に間接的に形成されているが、下部電極41は基板20上に直接形成されていても良い。
また、電気−機械変換膜42は、図3(a)に示すように、自発分極軸Pが電気−機械変換膜42の膜厚方向に対して平行になっているものと、図3(b)に示すように、自発分極軸Pが膜厚方向に対して所定の角度θを有して傾いているものと、を含む。ここで、膜厚方向とは、電気−機械変換膜42に対する電界印加方向Eと同一である。
また、図4に示すように、下部電極41は、例えば、第1の電極41aと第2の電極41bとを含むことが好ましく、上部電極43は、例えば、第3の電極43aと第4の電極43bとを含むことが好ましい。
このように第1実施形態に係る電気−機械変換素子1は、上記の順番で各層(膜)が積層された構造を有しており、後述するように半導体製造プロセス等の、膜構造体の製造において用いられる手法によって成膜、形成される。
以下、図4に示す電気−機械変換素子1を構成する各部材について説明する。
(基板)
基板20としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましい。また、その厚みとしては100〜600μmであることが好ましい。シリコン単結晶基板の面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、入手、加工の容易性から(100)面方位を持つ単結晶基板を用いることが好ましい。
また、後述するように、液滴吐出ヘッド2とする際に基板20を加工して加圧室21を作製する場合、一般的にエッチングを利用して加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。
異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えば、KOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。
したがって、(100)面方位では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、(110)面方位では深い溝を掘ることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができる。このため、異方性エッチングを利用して基板20を加工して加圧室21等を作製する場合、(110)面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。
振動板30は、上記のように液滴吐出ヘッド2とした場合に、電気−機械変換膜42によって発生した力を受けて、振動板30(下地)が変形変位して、加圧室21内のインク滴を吐出させる働きをする。そのため、振動板30としては液滴吐出ヘッド2で要求される所定の強度を有したものであることが好ましい。
(振動板)
振動板30の材料としては、例えば、珪素(Si)、シリカ(SiO)、窒化珪素(Si)等が挙げられ、この場合、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により作製することができる。
また、振動板30としては、下部電極41、電気−機械変換膜42の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。このため、例えば、電気−機械変換膜42としては、一般的に材料としてチタン酸ジルコン酸塩(PZT)が使用されることから、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い材料を選択することが好ましい。具体的には、5×10−6〜10×10−6(1/K)の線膨張係数を有した材料が好ましく、7×10−6〜9×10−6(1/K)の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。
振動板30の膜厚としては、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がより好ましい。上記範囲より薄いと、後述する液滴吐出ヘッド2とする際に、加圧室21の加工が難しくなることがある。また、上記範囲より厚いと、振動板30が変形変位しにくくなり、液滴吐出ヘッド2とした場合にインク滴の吐出が不安定になることがある。
振動板30の形成方法としては、特に限定されず、材料により適切な方法を選択することができるが、例えば、スパッタ法又はゾル−ゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。
(第1の電極、第4の電極)
第1の電極41a、第4の電極43bの材料としては、高い耐熱性と低い反応性を有する白金(Pt)や、鉛(Pb)に対するバリア性がPtよりも高いイリジウム(Ir)や白金−ロジウム(Rh)などの白金族元素や、これら合金が挙げられる。
第1の電極41aとしてPtを使用する場合には、下地(特に振動板30としてSiOを用いた場合)との密着性が悪くなることがある。そのため、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)、タンタル(Ta)、酸化タンタル(Ta)、窒化タンタル(Ta)等の密着層40を振動板30上に形成した後に、第1の電極41aを形成することが好ましい。
第1の電極41a、第4の電極43bの膜厚としては、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
また、後述する電気−機械変換膜42としてPZTを用いる場合には、第1の電極41aは、その結晶性として(111)面方位に配向していることが好ましく、特に(111)面方位の配向性が高いPtを用いることが好ましい。
図5に、Pt膜の(111)面方位が得られる2θ=39.7°付近に2θを固定した状態で、ωのみを変化させるω測定を行ったときのX線回折パターンを示す。
第1の電極41aの結晶性は、例えば、図5に示すように、得られるピーク強度の1/2となるωの幅である半値全幅(FWHM:full width at half maximum)によって評価される。すなわち、FWHMが小さいと結晶性は高く、FWHMが小さいと結晶性は低い。
第1の電極41aのFWHMは、2.5°以上7.0以下であることが好ましく、3.0°以上4.5°以下であることがより好ましい。上記範囲より大きいと、圧電アクチュエータとして使用する際に十分な初期変位を発生することができない場合がある。また、上記範囲より小さいと、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない場合がある。
第1の電極41a、第4の電極43bの形成方法としては、特に限定されず、例えば、スパッタ法や真空蒸着法等の真空成膜により作製することができる。
(第2の電極)
第2の電極41bとしては、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)を材料として用いることができる。また、SrRuOの一部を置換した材料、具体的には、Sr(A)(1−x)Ru(B)(1−y)(式中、AはBa、Ca、BはCo、Ni、x、y=0〜0.5)で表される材料を用いることができる。
第2の電極41bとしてSrRuO膜を用いた場合のSrとRuの組成比については特に限定されず、要求される導電性等により選択されるが、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。上記範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなる場合がある。
第2の電極41bとしてのSrRuO膜の膜厚は、20nm以上150nm以下であることが好ましく、30nm以上50nm以下であることがより好ましい。上記膜厚範囲よりも薄いと、初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないことがある。また、上記膜厚範囲よりも厚いと、その後成膜するPZT(後述する)の絶縁耐圧が悪くなり、リークしやすくなることがある。
第2の電極41bの形成方法としては、特に限定されず、例えば、スパッタ法により成膜することができる。スパッタ法におけるスパッタ条件としては、特に限定されず、スパッタ条件によってSrRuO薄膜の膜質が変化するため、要求される結晶配向性等により選択することができる。
例えば、後述する電気−機械変換膜42は、連続動作したときの変位特性劣化を抑えるためにはその結晶性としては(111)面方位に配向していることが好ましい。係る電気−機械変換膜42を得るためには、その下地膜として配置される第2の電極41bについても(111)面方位に配向していることが好ましい。このため、第2の電極41bは(111)面方位に優先配向しているSrRuO膜であることが好ましい。
そして、第2の電極41bについて(111)面方位に優先配向したSrRuO膜は、300℃以上に基板加熱を行い、これにスパッタ法により第2の電極41bを成膜することにより得られる。
ここで、例えば、第1の電極41aとして(111)面方位に配向したPt膜を用い、第1の電極41a上に第2の電極41bとしてSrRuO膜を形成した場合の第2の電極41bの結晶性をX線回折測定により評価する方法について説明する。Pt膜とSrRuO膜とは格子定数が近いため、通常のX線回折測定におけるθ−2θ測定では、SuRuO膜の(111)面とPtの(111)面の2θ位置が重なってしまい判別が困難である。しかし、Pt膜については消滅則の関係からX線の入射方向に対して垂直方向のあおり角(χ)をχ=35°に傾けた場合、2θが約32°付近の位置では回折線が打ち消し合い、Pt膜の回折強度が見られなくなる。そのため、χ方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSuRuO膜が(111)面方位に優先配向しているかを確認することができる。
図6に、シリコン基板上に、密着層40としてのTiO膜、(111)面方位に配向している第1の電極41aとしてのPt膜、第2の電極41bとしてのSrRuO膜を成膜した試料のX線回折測定結果を示す。なお、図中、細実線、太実線は、各々、SrRuO膜の成膜時の基板温度を600℃、300℃とした場合の測定結果である。また、図6においては、2θ=32°に固定し、χを変化させたときのデータを示す。
図6に示すように、(111)面方位のピーク強度の割合は、基板温度を600℃とした場合、基板温度を300℃とした場合と比較して、大きいことが確認できる。すなわち、SRO(111)_Int/{SRO(110)_Int+SRO(111)_Int+SRO(100)_Int}の値は、基板温度を600℃とした場合、基板温度を300℃とした場合と比較して、大きいことが確認できる。ここで、SRO(110)_Int、SRO(111)_Int、SRO(100)_Intは、各々、χ=0°付近、χ=45°付近、χ=35°付近での回折強度のピーク値(ピーク強度)を表す。
また、SrRuO膜の成膜時の基板温度を600℃とした場合は、χ=0°付近及びχ=45°付近ではSrRuOの(110)面の回折線はほとんど回折強度が見られず、χ=35°付近においてのみ回折強度が見られる。このことから、SrRuO膜は(111)面方位に優先配向していることが確認できる。
一方、SrRuO膜の成膜時の基板温度を300℃とした場合は、χ=0°付近及びχ=35°付近において、回折強度が見られ、χ=35°付近の回折強度は、χ=0°付近の回折強度よりも大きい。このことから、SrRuO膜は(111)面方位に優先配向しているが、(110)面方位にも配向していることが確認できる。
上記の評価方法により算出されるSRO(111)_Intは、0.5以上0.98以下であることが好ましく、0.7以上0.85以下であることがより好ましい。上記範囲よりも大きいと、圧電アクチュエータとして使用する際に十分な初期変位が得られないことがある。また、上記範囲より小さいと、連続駆動後の変位劣化について十分な特性が得られないことがある。
(第3の電極)
第3の電極43aとしては、導電性酸化物を用いることが好ましい。第3の電極43aとして導電性酸化物を用いると、電気−機械変換素子1が動作する際、経時的に生じる圧電体中の酸素欠損の補給源として機能させることができる。
導電性酸化物としては、例えば、IrO、LaNiO、RuO、SrO、SrRuO、CaRuO等が挙げられる。特に、第2の電極41bと同様の材料を用いることが好ましい。すなわち、SrRuO膜(又は一部置換した材料)を用いることが好ましい。
第3の電極43aとしてSrRuO膜を用いる場合、その膜厚としては、20nm以上80nm以下が好ましく、30nm以上50nm以下がよりさらに好ましい。上記膜厚範囲よりも薄いと、初期変位や変位劣化特性については十分な特性が得られないことがある。また、上記範囲より厚いと、PZTの絶縁耐圧が悪くなり、リークしやすくなることがある。
(電気−機械変換膜)
電気-機械変換膜42は、菱面体晶を含み、自発分極軸Pが電気−機械変換膜42の膜厚方向に対して平行になっているものと、自発分極軸Pが電気−機械変換膜42の膜厚方向に対して所定の角度を有して傾いているものと、を含む。
電気−機械変換膜42としては、圧電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、図7に示すような菱面体晶が得られることから、PZTを用いることが好ましい。なお、PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。この比率については、菱面体晶が得られるように比率が制御される。具体的には、比率をZr/(Zr+Ti)とすると、Zr/(Zr+Ti)は、0.52以上0.57以下であることが好ましく、0.54以上0.56以下であることがより好ましい。これにより、(111)面方位に優先配向した菱面体晶を含むPZT膜を得ることができる。その結果、圧電アクチュエータとして使用する際に十分な変位を発生させることができる。
特に、PbZrOとPbTiOの比率(モル比)が53:47の割合とすると、特に優れた圧電特性を示すことから好ましく用いることができる。なお、PbZrOとPbTiOの比率が53:47である場合、すなわち、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)Oである場合、PZTは、PZT(53/47)とも示されることがある。
また、PZT以外の材料として、チタン酸バリウムも用いることができる。この場合は、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にして、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することが可能である。
また、PZT、チタン酸バリウム以外にもABO(A=Pb、Ba、Sr、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nb)で表わされる複合酸化物を主成分とする複合酸化物を用いることができる。これらの具体的な記述としては、(Pb1−x、Ba)(Zr、Ti)O、(Pb1−x、Sr)(Zr、Ti)Oのように、AサイトのPbを一部BaやSrで置換した複合酸化物も使用することができる。置換に用いる元素としては2価の元素であれば可能であり、Pbの一部を2価の元素で置換することにより電気−機械変換膜42を成膜する際等に熱処理を行った場合に鉛の蒸発による特性劣化を低減させる効果がある。
また、電気−機械変換膜42は、X線回折法のθ−2θ測定における(111)面方位の配向が最大ピーク位置となる角度であおり角χを変化させたときに、基板20に対して垂直な方向(電気−機械変換膜42の膜厚方向)と、基板20に対して垂直な方向から所定の角度を有する方向と、にピーク強度を有することが好ましい。
これにより、電気−機械変換膜42に電界を印加したときに、基板20に対して垂直な方向のドメイン(分域)は、自発分極軸P方向(膜厚方向)に伸縮する圧電歪により変位を生じる。さらに、基板20に対して垂直な方向から所定の角度を有する方向のドメインは、膜厚方向に伸縮する圧電歪及び自発分極軸Pが電界の印加方向に回転する回転歪による変位を生じる。
その結果、上記電気−機械変換膜42は、圧電歪と回転歪の両方の歪による変位が生じるため、基板20に対して垂直方向の(111)面方位の配向にのみピーク強度を有する場合と比較して、大きな変位が得られる。すなわち、第1実施形態に係る電気−機械変換膜42によれば、圧電歪による変形及び回転歪による変形により、大きな初期変位量を得ることができる。
さらに、電気−機械変換膜42は、X線回折法のθ−2θ測定における(111)面方位の配向が最大ピーク位置となる角度であおり角χを変化させたときに、−74°≦χ≦−62°又は62°≦χ≦74°を満たす範囲において、最大となるピーク強度を有していることがより好ましい。これにより、圧電歪による初期変位量を特に大きくすることができる。
電気−機械変換膜42の形成方法としては、特に限定されず、例えば、スパッタ法や、ゾル−ゲル法により作製することができる。そして、成膜後、フォトリソエッチング等によりパターニングを行い、所望のパターンを得ることができる。
以下、PZTからなる電気−機械変換膜42をゾル−ゲル法により形成する場合を例に説明する。
酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料として、共通溶媒としてメトキシエタノールを用い、上記出発材料が所定比になるように共通溶液に溶解させ均一溶液とすることで、PZT前駆体溶液を作製する。
なお、金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液にアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等の安定化剤を適量、添加しておくこともできる。
基板20全面にPZT膜を得る場合、スピンコート法等の溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことでPZT膜を得ることができる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体溶液の濃度調整を行うことが好ましく、成膜工程を繰り返し行うことで所望の膜厚のPZT膜を得ることができる。
また、インクジェット法によりPZT膜を作製する場合は、第2の電極41bと同様の作製プロセスによりパターニングされたPZT膜を得ることができる。このときの表面改質剤としては、特に限定されず、用いられる下地である下部電極41の材料に対応して選択することができる。例えば、酸化物を下地とする場合は、シラン化合物を好適に用いることができ、金属を下地とする場合は、アルカンチオールを好適に用いることができる。
電気−機械変換膜42の膜厚としては、特に限定されず、要求される圧電特性に応じて選択すればよいが、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上2μm以下であることがより好ましい。上記範囲より薄いと、圧電アクチュエータとして使用する際に十分な変位を発生することができない場合がある。また、上記範囲より厚いと、その製造工程において何層も積層させて成膜するため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなるためである。
ここで、熱酸化膜を形成したシリコン基板上に、TiOからなる密着層40、Ptからなる第1の電極41a、SrRuO膜からなる第2の電極41bを形成したものを用意し、さらに、ゾル−ゲル法により1μmの膜厚のPZT膜を成膜した。作製された試料のX線回折パターンを図8に示す。なお、図8では、SrRuO膜の成膜時の基板温度は、600℃(細実線)と300℃(太実線)の場合について図示している。
図8に示すように、PZT膜の配向状態は、下地膜であるSrRuO膜の成膜時の基板温度によって変化することが確認できた。
PZT膜の配向状態としては、以下の式(1)を用いた場合に、(111)面方位の配向度I(111)は、0.5以上0.99以下であることが好ましく、0.8以上0.9以下であることがより好ましい。上記範囲より大きいと、圧電アクチュエータとして使用する際に十分な初期変位を発生することができない場合がある。また、上記範囲より小さいと、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない場合がある。
ρ(hkl)=I(hkl)/ΣI(hkl) …(1)
[ρ(hkl):(hkl)面方位の配向度、I(hkl):任意の配向のピーク強度、ΣI(hkl):各ピーク強度の総和]
さらに、第1実施形態の電気−機械変換素子1は、以下に示すように、絶縁保護膜及び引き出し用配線等を有していても良い。
以下、絶縁保護膜及び引き出し用配線を含む電気−機械変換素子1の構成を図9を参照しながら説明する。なお、図9(a)、図9(b)は、各々、作製した電気−機械変換素子1の断面図、上面図を示している。なお、、説明の便宜上、図9(b)には、第1の絶縁保護膜44及び第2の絶縁保護膜46の記載は省略している。
具体的には、基板20上に、振動板30、下部電極41(第1の電極41a、第2の電極41b)、電気−機械変換膜42、上部電極43(第3の電極43a、第4の電極43b)が形成され、これらを覆うように第1の絶縁保護膜44が形成されている。そして、第1の絶縁保護膜44の所定の場所にはコンタクトホール47a、47bが形成されている。
第5の電極45aは、コンタクトホール47aを介して、下部電極41と接続されている。第6の電極45bは、コンタクトホール47bを介して、上部電極43と接続されている。さらに、これらを覆うように第2の絶縁保護膜46が形成されている。
第5の電極45aは、共通電極となっており、これにより電気−機械変換素子1の下部電極41を共通電極として機能させるようになっている。また、第6の電極45bは、個別電極となっており、これにより電気−機械変換素子1の上部電極43を個別電極として機能させるようになっている。
以下、図9に示す電気−機械変換素子1を構成する各部材について説明する。なお、図中、図2又は図4と同じ部材については同じ符号を付しており、これらの部材の説明は省略する。
(第1の絶縁保護膜)
第1の絶縁保護膜44としては、緻密な構造を有する無機材料を用いることが好ましい。第1の絶縁保護膜44として、緻密な構造を有する無機材料を用いることにより、第1の絶縁保護膜44を成膜又はエッチングする際の圧電素子へのダメージを抑制できるとともに、大気中の水分が透過することを抑制できる。
無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化膜等を用いることが好ましい。さらに、第1の絶縁保護膜44の下地となる材料との密着性が高い材料を用いることが好ましい。
第1の絶縁保護膜44の膜厚としては、20nm以上100nm以下であることが好ましい。上記範囲より厚いと、振動板30の変位が小さくなるため、液滴吐出ヘッド2の吐出効率が低下することがある。また、上記範囲より薄いと、電気−機械変換素子1の保護層としての機能が不十分となることがある。
第1の絶縁保護膜44の形成方法としては、電気−機械変換素子1を損傷しない方法であれば特に限定されない。例えば、蒸着法、ALD法等を用いることが好ましく、使用できる材料の種類が多く、膜密度の特に高い薄膜を形成することができることから、ALD法を用いることがより好ましい。また、好ましい材料としては、Al、ZrO、Y、Ta、TiO等のセラミックス材料に用いられる酸化膜が挙げられる。
また、第1の絶縁保護膜44は、複数の層が積層されていても良い。例えば、第1の絶縁保護膜44が2層の場合について以下に説明する。
第1の絶縁保護膜44が2層の場合、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、振動板30の振動変位を阻害しないように、第2の電極41b上に開口部を形成することが好ましい。
2層目の絶縁膜としては、特に限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物又はこれらの複合化合物等を用いることができる。具体的には、半導体デバイスに用いられている実績から、SiOを用いることが好ましい。
2層目の絶縁膜の膜厚としては、下部電極41と第5の電極45aとの間及び下部電極41と第6の電極45bとの間に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚であれば特に限定されるものではない。例えば、2層目の絶縁膜の下地の表面粗さやピンホール等の影響を考慮すると、200nm以上であることが好ましく、500nm以上であることがより好ましい。
2層目の絶縁膜の形成方法としては、CVD法、スパッタリング法等を用いることが好ましく、下地の段差の被覆性が高いことから、CVD法を用いることがより好ましい。
(第5の電極、第6の電極)
第5の電極45a、第6の電極45bとしては、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Ir等の金属を用いることが好ましい。
第5の電極45a、第6の電極45bの膜厚としては、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.2μm以上10μm以下であることがより好ましい。上記範囲より薄いと、抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなり、液滴吐出ヘッド2による液滴吐出量が不安定となることがある。また、上記範囲より厚いと、プロセス時間が長くなる。
また、第5の電極45aは、下部電極41との接続部(コンタクトホール47a)における下部電極41との接触抵抗の値が10Ω以下であることが好ましく、5Ω以下であることがより好ましい。上記範囲より大きいと、電気−機械変換素子1に十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出ヘッド2として使用する際に十分な液滴吐出性能を得ることができないことがある。
また、第6の電極45bは、上部電極43との接続部(コンタクトホール47b)における上部電極43との接触抵抗の値が1Ω以下であることが好ましく、0.5Ω以下であることがより好ましい。上記範囲より大きいと、電気−機械変換素子1に十分な電流を供給することができなくなり、液滴吐出ヘッド2として使用する際に十分な液滴吐出性能を得ることができないことがある。
(第2の絶縁保護膜)
第2の絶縁保護膜46の材料としては、透湿性の低い材料であれば特に限定されないが、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等の無機材料、ポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機材料等を用いることが好ましい。また、薄膜で配線保護機能を発揮できることから、無機材料を用いることがより好ましい。具体的には、半導体デバイスに用いられている実績から、Siを用いることが好ましい。
第2の絶縁保護膜46の膜厚としては、200nm以上であることが好ましく、500nm以上であることがより好ましい。上記範囲より薄いと、下地の電極を十分に保護することができず、電極の腐食による断線等を発生させることがある。
また、第2の絶縁保護膜46には、電気−機械変換素子1上及びその周囲の振動板30上に開口部が形成されている。これは、振動板30の振動変位の低下を抑制するとともに、外部端子と接続するための電極パッド部となる。電極パッド部の大きさとしては、50μm×50μm以上であることが好ましく、100μm×300μm以上であることがより好ましい。上記範囲より小さいと、十分な分極処理ができなくなり、連続駆動後の変位劣化を十分に抑制できないことがある。
開口部の形成方法としては、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィ法、ドライエッチング法等を用いることができる。
(分極処理)
次に、上述した電気−機械変換素子1に対する分極処理方法について説明する。
図10に分極処理装置200の一例を示す。図10に示すように、分極処理装置200は、コロナ電源201に接続されたコロナ電極202、グリッド電源203に接続されたグリッド電極204、サンプルが載置されるサンプルステージ205を備えている。
グリッド電極204は、メッシュ加工された網状の電極であり、コロナ電極202に高電圧が印加されたときに、コロナ放電により発生するイオンや電荷等が効率よくサンプルステージに照射されるようグリッド電源203により電圧が印加されるようになっている。
サンプルステージ205は、温度調節機能を備えており、最大で350℃まで昇温しながらサンプルを分極処理できる構成となっている。また、サンプルステージ205は、アースに接続されている。
なお、コロナ電極202及びグリッド電極204に印加される電圧は、特に限定されるものではない。また、コロナ電極202、グリッド電極204、サンプルステージ205との距離は、特に限定されるものではない。これらの値を調整することにより、後述する分極率P−Pindを変化させることができる。
図11に分極処理装置300の他の例を示す。図11に示すように、コロナワイヤー301を用いてコロナ放電を行う場合は、大気中の分子をイオン化させる(図中、破線矢印で示す)ことにより、陽イオン311が発生する。発生する陽イオン311が被処理体である電気−機械変換素子1のパッド部を介して流れ込む(図中、実線矢印で示す)ことにより、電気−機械変換素子1内に電荷が蓄積される。そして、電気−機械変換素子1の上部電極43と下部電極41との間の電荷量の差により、上部電極43と下部電極41との間に内部電位差が生じて、分極処理が行われる。
なお、上部電極43に蓄積される電荷量は、1×10-8C以上であることが好ましく、4×10−8C以上であることがより好ましい。上記範囲より小さいと、分極処理が十分に行えず、電気−機械変換素子1を圧電アクチュエータとして用いる場合に、連続駆動後の変位劣化が大きくなることがある。
次に、上述の分極処理方法を用いて電気−機械変換素子1に分極処理を行ったときの分極状態について説明する。
電気−機械変換素子1の分極状態については、分極−電界ヒステリシス曲線(P−Eヒステリシス曲線)から確認することができる。
図12に、第1実施形態に係る電気−機械変換素子1における分極処理前後のP−Eヒステリシス曲線を示す。図中、Pは、分極が飽和する電界における分極であり、本実施形態では、分極が飽和する電界Pは、150kV/cmである。また、Pindは電界を印加する前(0kV/cm)における分極、Pは0kV/cmから分極が飽和するまで正方向に電界を印加した後に再び0kV/cmまで電界を変化させたときの0kV/cmの電界における分極、P−Pindは分極率である。
図12(a)に示すように、分極処理前の電気−機械変換素子1のP−Eヒステリシス曲線は、Pindの値とPの値とが大きく異なる。すなわち、分極率P−Pindが大きい。
一方、図12(b)に示すように、分極処理後の電気−機械変換素子1のP−Eヒステリシス曲線は、Pindの値とPの値との間に大きな差は見られない。すなわち、分極率P−Pindが小さい。
ここで、本実施形態に係る電気−機械変換素子1の分極率P−Pindは、10μC/cm以下であることが好ましく、5μC/cm以下であることがより好ましい。上記範囲より大きいと、電気−機械変換素子1を圧電アクチュエータとして用いる場合に、連続駆動後の変位劣化が大きくなることがある。
以上に説明したように、第1実施形態の電気−機械変換素子1によれば、初期変位量が大きく、連続動作を行った場合でも変位劣化を小さくすることができる。
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態で説明した電気−機械変換素子1を備えた液滴吐出ヘッド2について説明する。
図13及び図14に、第2実施形態の液滴吐出ヘッド2を示す。図13は、1ノズルの液滴吐出ヘッド2の構成の概略図である。図14は、図13に示した1ノズルの液滴吐出ヘッド2を複数個配置して形成された液滴吐出ヘッド2の構成の概略図である。
図13及び図14に示すように、液滴吐出ヘッド2は、液滴を吐出するノズル11と、ノズル11が連通する加圧室21と、加圧室21の壁の一部を構成する振動板30と、振動板30上に形成された電気−機械変換素子1(下部電極41、電気−機械変換膜42、上部電極43)と、を有する液滴吐出ヘッド2である。
液滴吐出ヘッド2の構成について、図13を用いて具体的に説明する。
加圧室21内の液体を昇圧させる吐出駆動手段として、加圧室21の壁の一部を構成する振動板30で構成し、振動板30に電気−機械変換素子1が配置されている。また、電気−機械変換素子1が形成されている基板20をエッチングして形成され、インク等の液体(以下、「インク」という)を収容するインク室である加圧室21(圧力室)を有する。また、加圧室21内のインクを液滴状に吐出するインク吐出口としてのノズル孔であるノズル11を備えたインクノズルとしてのノズル板10を有する。
液滴吐出ヘッド2が液滴を吐出するメカニズムとしては、下部電極41、上部電極43に給電されることで電気−機械変換膜42に応力が発生し、これによって振動板30(振動板)を振動させる。そして、この振動に伴って、ノズル11から加圧室21内のインクを液滴状に吐出するようになっている。なお、加圧室21内にインクを供給するインク供給手段である液体供給手段、インクの流路、流体抵抗についての図示及び説明は省略している。
以上に説明したように、第2実施形態に係る液滴吐出ヘッド2によれば、第1実施形態で説明した電気−機械変換素子1を用いているため、初期変位量が大きく、連続動作を行った場合でも液滴吐出ヘッド2における電気−機械変換素子1の変位劣化が小さい。その結果、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られる。
また、電気−機械変換素子1は簡便な構造を有していることから、液滴吐出ヘッド2を形成する際の、加圧室21形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル孔を有するノズル板10の接合を容易に行うことができる。
[第3実施形態]
第3実施形態では、第2実施形態で説明した液滴吐出ヘッド2を備えたインクジェット記録装置3の一例を説明する。図15は、インクジェット記録装置3を例示する斜視図である。図16は、インクジェット記録装置3の機構部を例示する側面図である。
図15及び図16に示すように、インクジェット記録装置3は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載した液滴吐出ヘッド2の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94、インクジェット記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。
記録装置本体81の下方部には、多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84(又は給紙トレイでもよい)を抜き差し自在に装着することができる。また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。給紙カセット84又は手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持する。キャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド94を、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ93は、インクジェット記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方にはインクジェット記録ヘッド94へインクを供給する図示しない供給口を、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有している。多孔質体の毛管力によりインクジェット記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、インクジェット記録ヘッド94としてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドを用いてもよい。
キャリッジ93は、用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。タイミングベルト100は、キャリッジ93に固定されている。
また、インクジェット記録装置3は、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101、フリクションパッド102、用紙83を案内するガイド部材103、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105、搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106、を設けている。これにより、給紙カセット84にセットした用紙83を、インクジェット記録ヘッド94の下方側に搬送される。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
用紙ガイド部材である印写受け部材109は、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83をインクジェット記録ヘッド94の下方側で案内する。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設けている。さらに、用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
画像記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じてインクジェット記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、インクジェット記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を有する。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有する。キャリッジ93は、印字待機中に回復装置117側に移動されてキャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中等に、記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。また、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。さらに、吸引されたインクは、本体下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
以上に説明したように、第3実施形態に係るインクジェット記録装置3によれば、第2実施形態で説明した液滴吐出ヘッド2の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94を搭載している。そのため、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られるため、画像品質が向上する。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により電気−機械変換素子1を作製した。
シリコンウエハに振動板30となる熱酸化膜(膜厚1μm)を形成した。
次に、チタン膜(膜厚30nm)をスパッタ装置にて成膜温度350℃で成膜した後に、RTA法により750℃にて熱酸化することにより、密着層40を形成した。
次に、第1の電極41aとしてPt膜(膜厚100nm)をスパッタ装置にて成膜温度550℃で成膜した。なお、スパッタ装置としては、処理容器内に複数のターゲットを備えた装置を用いた。
次に、第2の電極41bとしてSrRuO膜(膜厚50nm)をスパッタ装置にて基板加熱温度450℃で成膜した後に、RTA法により550℃にてポストアニールを行った。
次に、後述する手順により、各々の金属がPb:Zr:Ti=115:53:47のモル比で調整された前駆体溶液を用意し、スピンコート法により前駆体溶液を塗布し、塗布後、120℃で乾燥し、さらに500℃で熱分解を行った。熱分解処理後、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA法により行うことで、電気−機械変換膜42としてのPZT膜を得た。このとき得られたPZT膜の膜厚は、240nmであった。そして、塗布、乾燥、熱分解及び結晶化熱処理の工程を8回繰り返し実施して、約2μmのPZT膜を得た。
具体的な前駆体塗布液の合成の手順について説明する。
まず、出発材料として酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。なお、化学両論組成に対して鉛量は過剰となるようにした。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを所定比でメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、さらに上記酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と所定比になるように混合し、PZT前駆体溶液を合成した。この際、溶液中のPZT濃度は0.5mol/lとなるように調整した。
次に、第3の電極43aとしてSrRuO膜(膜厚40nm)、第4の電極43bとしてPt膜(膜厚125nm)を各々スパッタ法により成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法により成膜し、フォトリソグラフィ法でレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ社製)を用いてパターンを形成した。
次に、第1の絶縁保護膜44として、ALD法により酸化アルミニウム(Al)膜(50nm)を成膜した。この際、アルミニウム(Al)はTMA(シグマアルドリッチ社製)ガスとオゾンジェネレーターにより発生させたOガスを原料ガスとして交互に処理容器内に供給することにより、成膜を行った。その後、エッチングによりコンタクトホール47a、47bを形成した。
次に、第5の電極45a、第6の電極45bとして、各々、スパッタ法によりAlを成膜した。その後、エッチングによりパターンを形成した。このとき、個別電極となる第6の電極45b間の距離は80μmとした。
次に、第2の絶縁保護膜46として、プラズマCVD法によりSi(膜厚500nm)を成膜した。
以上の工程により、図9に示す構造の電気−機械変換素子1を作製した。
次に、作製した電気−機械変換素子1に対して、上述した図10に示す分極処理装置200を用いてコロナ帯電処理により分極処理を行った。コロナ帯電処理には、タングステンのワイヤー(φ50μm)を用いた。分極処理条件としては、処理温度を80℃、コロナ電圧を9kV、グリッド電圧を2.5kV、コロナ電極−グリッド電極間距離を4mm、グリッド電極−ステージ間距離を4mm、処理時間を30sとして処理を行った。
[実施例2]
実施例2に係る電気−機械変換素子1は、以下の点以外は実施例1と同様の方法で作製した。
密着層40:チタン膜の膜厚を30nmから20nmに変更し、スパッタ装置における成膜温度を350℃から400℃に変更した。
第1の電極41a:Pt膜をスパッタ装置により成膜する際の成膜温度を550℃から200℃に変更した。
第2の電極41b:SrRuO膜の膜厚を50nmから20nmに変更した。
電気−機械変換膜42:前駆体溶液に含まれる金属のモル比をPb:Zr:Ti=115:53:47からPb:Zr:Ti=115:57:43に変更した。
[実施例3]
実施例3に係る電気−機械変換素子1は、以下の点以外は実施例1と同様の方法で作製した。
密着層40:チタン膜をスパッタ装置により成膜する際の成膜温度を350℃から250℃に変更した。
第2の電極41b:SrRuO膜の膜厚を50nmから150nmに変更し、基板加熱温度を450℃から550℃に変更し、さらにポストアニールは行わなかった。
電気−機械変換膜42:前駆体溶液に含まれる金属のモル比をPb:Zr:Ti=115:53:47からPb:Zr:Ti=115:52:48に変更した。
[実施例4]
実施例4に係る電気−機械変換素子1は、以下の点以外は実施例1と同様の方法で作製した。
密着層40:チタン膜の膜厚を30nmから50nmに変更し、スパッタ装置における成膜温度を350℃から300℃に変更した。
第2の電極41b:SrRuO膜の膜厚を50nmから60nmに変更し、基板加熱温度を450℃から300℃に変更した。
電気−機械変換膜42:前駆体溶液に含まれる金属のモル比をPb:Zr:Ti=115:53:47からPb:Zr:Ti=115:55:45に変更した。
[実施例5]
実施例5に係る電気−機械変換素子1は、以下の点以外は実施例1と同様の方法で作製した。
第1の電極41a:Pt膜をスパッタ装置により成膜する際の成膜温度を550℃から300℃に変更した。
第2の電極41b:SrRuO膜の膜厚を50nmから60nmに変更した。
電気−機械変換膜42:前駆体溶液に含まれる金属のモル比をPb:Zr:Ti=115:53:47からPb:Zr:Ti=115:54:46に変更した。
[比較例1]
比較例1に係る電気−機械変換素子1は、以下の点以外は実施例1と同様の方法で作製した。
密着層40:チタン膜の膜厚を30nmから50nmに変更し、スパッタ装置における成膜温度を350℃から200℃に変更した。
第2の電極41b:SrRuO膜の膜厚を50nmから180nmに変更し、基板加熱温度を450℃から600℃に変更し、さらにポストアニールは行わなかった。
電気−機械変換膜42:前駆体溶液に含まれる金属のモル比をPb:Zr:Ti=115:53:47からPb:Zr:Ti=115:45:55に変更した。
[比較例2]
比較例2に係る電気−機械変換素子1は、以下の点以外は実施例1と同様の方法で作製した。
密着層40:チタン膜の膜厚を30nmから15nmに変更し、スパッタ装置における成膜温度を350℃から450℃に変更した。
第1の電極41a:Pt膜をスパッタ装置により成膜する際の成膜温度を550℃から150℃に変更した。
第2の電極41b:SrRuO膜の膜厚を50nmから10nmに変更し、基板加熱温度を450℃から室温に変更した。
電気−機械変換膜42:前駆体溶液に含まれる金属のモル比をPb:Zr:Ti=115:53:47からPb:Zr:Ti=115:60:40に変更した。
以上、実施例1〜5及び比較例1〜2で作製した電気−機械変換素子1について、電気−機械変換膜42を成膜した直後又はRTA処理した直後にX線回折法を用いて結晶性の評価を行った。
図17に、実施例1及び比較例1で作製した電気−機械変換素子1における電気−機械変換膜42の(111)面方位の配向が最大ピーク位置となる角度(2θ=38.2°付近)であおり角χを変化させたときのX線回折パターンを示す。
図17に示すように、実施例1の場合には、62°≦χ≦74°を満たす範囲に最大ピーク強度が確認できる。一方、比較例1の場合には、上記範囲にピークは確認できない。また、図示しないが、−74°≦χ≦−62°の場合においても、同様の結果が得られた。
このことから、実施例1で作製した電気−機械変換素子1は、自発分極軸Pが膜厚方向に対して所定の角度θm(62°≦θm≦74°)傾いているものを含むことが確認できた。これにより、実施例1で作製した電気−機械変換素子1に対して電界を印加すると、ドメイン回転によって歪が大きくなる回転歪を利用することができ、大きな初期変位量が得られる。
図18に、あおり角χの傾き成分を有する実施例1及びあおり角χの傾き成分を有しない比較例1で作製した電気−機械変換素子1の電界強度と変位量との関係を示す。
図18に示すように、あおり角χの傾き成分を有する実施例1の変位量は、あおり角χの傾き成分を有しない比較例1の変位量と比較して大きくなっていることが確認できた。
また、作製した電気−機械変換素子1の電気特性、電気−機械変換能(圧電定数d31)の評価を行った。電気−機械変換能は、電界印加(150kV/cm)による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。初期特性を評価した後に、耐久性(1010回繰り返し電圧を加えた直後の特性)評価を行った。これらの評価結果について表1にまとめた。
Figure 0006287178
実施例1〜5で作製した電気−機械変換素子1は、初期状態において一般的なセラミックス焼成体と同等の圧電定数d31を有していた(−120pm/V〜−160pm/V)。さらに、耐久性試験後においてもその性能はほとんど変化していないことが確認できた。
一方、比較例1及び比較例2で作製した電気−機械変換素子1は、初期状態において一般的なセラミックス焼成体と比較して圧電定数d31が小さいことが確認できた。さらに、耐久性試験後の圧電定数d31は大きく劣化していることが確認できた。
すなわち、実施例1〜5で作製した電気−機械変換素子1によれば、初期変位量が大きく、連続動作を行った場合でも変位劣化が小さいことが確認できた。
以上、好ましい実施形態について説明したが、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
1 電気−機械変換素子
2 液滴吐出ヘッド
20 基板
41 下部電極
41a 第1の電極
41b 第2の電極
42 電気−機械変換膜
43 上部電極
特開2007−258389号公報 特許第3472087号公報

Claims (7)

  1. 基板上に直接又は間接的に形成された下部電極と、
    前記下部電極上に形成された菱面体晶を含む電気-機械変換膜と、
    前記電気−機械変換膜上に形成された上部電極と、
    を有し、
    前記電気−機械変換膜は、自発分極軸が前記電気−機械変換膜の膜厚方向に対して平行になっているものと、前記自発分極軸が前記膜厚方向に対して所定の角度θmを有して傾いているものと、を含み、
    前記所定の角度θmは、62°≦θm≦74°を満たす、
    電気−機械変換素子。
  2. 基板上に直接又は間接的に形成された下部電極と、
    前記下部電極上に形成された菱面体晶を含む電気-機械変換膜と、
    前記電気−機械変換膜上に形成された上部電極と、
    を有し、
    前記電気-機械変換膜は、
    X線回折法のθ−2θ測定における(111)面方位の配向が最大ピーク位置となる角度であおり角χを変化させたときに、
    −74°≦χ≦−62°又は62°≦χ≦74°を満たす範囲において、最大となるピーク強度を有している、
    気−機械変換素子。
  3. 前記電気-機械変換膜の結晶配向について、
    ρ(hkl)=I(hkl)/ΣI(hkl)
    [ρ(hkl):(hkl)面方位の配向度、I(hkl):任意の配向のピーク強度、ΣI(hkl):各ピーク強度の総和]
    によって表される、X線回折法のθ−2θ測定で得られる各ピーク強度の総和を1としたときの各々の配向のピーク強度の比率に基づいて算出される(111)配向の配向度は、0.50以上0.99以下である、
    請求項1又は2に記載の電気−機械変換素子。
  4. 前記下部電極は、基板上に直接又は間接的に形成された金属を含む第1の電極と、前記第1の電極上に形成された酸化物を含む第2の電極とを有し、
    前記第2の電極の膜厚は、20nm以上150nm以下である、
    請求項1乃至の何れか一項に記載の電気−機械変換素子。
  5. 前記下部電極は、基板上に直接又は間接的に形成された金属を含む第1の電極と、前記第1の電極上に形成された酸化物を含む第2の電極とを有し、
    前記第1の電極は、X線回折法のθ−2θ測定における(111)配向が最大ピーク位置となる角度でω測定を行った場合に、
    半値全幅が2.5°以上7.0以下である、
    請求項1乃至の何れか一項に記載の電気−機械変換素子。
  6. 前記電気−機械変換膜は、分極−電界ヒステリシス曲線において、
    電界が印加される前の0kV/cmにおける分極をPind
    0kV/cmから150kV/cmまで正方向に電界を印加した後に、再び0kV/cmまで電界を変化させたときの0kV/cmの電界における分極をPとしたときに、
    −Pindは10μC/cm以下である、
    請求項1乃至の何れか一項に記載の電気−機械変換素子。
  7. 請求項1乃至の何れか一項に記載の電気−機械変換素子を備え、
    前記電気−機械変換素子が駆動されることにより液滴を吐出する液滴吐出ヘッド。
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