JP6477127B2 - 銅合金棒および銅合金部材 - Google Patents

銅合金棒および銅合金部材 Download PDF

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Description

本発明は、耐変色性を有する銅合金棒およびこの銅合金棒からなる熱間鍛造材で構成される銅合金部材に関する。特に、熱間押出性、熱間鍛造性、被削性および機械的性質に優れ、且つ、耐変色性、抗菌性および殺菌性に優れた銅合金棒およびこの銅合金棒からなる熱間鍛造材を用いた銅合金部材に関する。
従来、Cu−Zn等の銅合金の表面酸化による影響を防止するために、銅合金製品にニッケル・クロムめっき等のめっき処理を施したり、あるいはクリア塗装などの樹脂で表面被覆をしたりしている。しかし、めっき製品は、長期間の使用により表面のめっき層が剥離してしまうという問題がある。
Cu−Zn等の銅合金はZnの含有量が15mass%、または、20mass%を超えると黄銅色を有するようになるが、めっきあるいは塗装などの保護被膜を形成させず、素材表面のままで装飾品などに使用すると、置かれている環境にも影響されるが、短期間で茶褐色あるいは赤褐色に変色してしまう。
また、取手、レバーハンドル、ドアハンドル、手すり等に通常の銅合金(めっき処理や表面被覆をしていない銅合金)を実際に使用すると、時間と共に人体と触れる部分とそうでない部分とで材料に色調の差が生じる。そのため、これらの用途に用いられている銅合金製取手類のほとんどは、めっき、クリアコート等により銅合金表面を被覆して変色が発生し難い状態で使用されている。
さらに、銅合金においては、抗菌作用(殺菌作用)を有することが知られている。不特定多数の人が接触するような部材に抗菌性(殺菌性)のある銅合金を使用することで様々な菌、ウィルスによる感染を予防することが可能となる。
従来から、銅合金として、めっきと同じような光沢のある白色を呈するCu−Ni−Zn合金や、黄金色を呈するアルミニウム青銅が提案されている。
そのようなCu−Ni−Zn合金として、例えば、JIS C 7541には、Cu(60.0〜64.0mass%)、Ni(16.5〜19.5mass%)、Pb(0.8〜1.8mass%)、Zn(残部)等を含有する快削洋白が規定されている。
また、特許文献1には、Al(5〜9mass%)、Ni(1〜4mass%)、In(0.005〜0.3mass%)の他に、Mn(0.1〜0.5mass%)、Co(0.001〜0.01mass%)、Be(0.0025〜0.2mass%)、Ti(0.001〜0.01mass%)、Cr(0.05〜0.2mass%)、Si(0.001〜0.5mass%)、Zn(0.005〜0.5mass%)、Sn(0.003〜0.4mass%)のうち1種又は2種を含有し、残部Cuと不可避不純物からなるアルミ銅合金が開示されている。
しかしながら、JIS C 7541に開示された銅合金は、NiおよびPbを大量に含有するものであって健康衛生面で問題があるので、その用途が制限される。Niは金属アレルギーの中でも特に強いNiアレルギーを引き起こす原因となるものであり、Pbは周知のように有害物質なので、人の肌に直接触れる手すり等の建築金具や、家電製品等の身の回り品等としての用途には問題がある。また、Niを大量に含有させると熱間圧延性、プレス性等の加工性が劣り、Niが高価であることとも相俟って製造コストが高くなるので、用途が制限される。
さらに、特許文献1に開示された銅合金は、Alが5mass%以上含まれたアルミニウム含有銅合金であり、耐変色性には優れるが、圧延性などの加工性が劣るので、主に鋳物材として製造される。したがって、薄板などに加工することが困難である。更に、この銅合金は、曲げなどを伴う加工、例えば90度曲げなどにおいては延性が乏しいので曲げ部分に割れが生じるなど、冷間加工性が乏しい。また、表面にアルミニウムの酸化皮膜が形成されることにより、抗菌性が弱く、長期の使用により抗菌性が損なわれることになり、問題がある。
銅合金は他の金属には無い有色金属であり、代表的な色調として銅の赤橙色、黄銅(Cu−Zn合金)の黄色、あるいは洋白(Cu−Ni−Zn合金)の銀白色などがある。このように、銅合金は添加元素により様々な色調の材料となるが、上述のように人体と接触する条件下で使用された場合、合金によっても異なるが、変色することは避け難い。一方、変色を防止するためにクリアコートなどの樹脂皮膜を表面に被覆(塗装)すると、上述した抗菌性(殺菌性)の機能が発揮されない。
また、固体である銅合金の抗菌性(殺菌性)は、その表面において過酸化水素や活性ラジカルなどの活性酸素群が生成し、この活性酸素群が菌の細胞膜やDNAに作用することで発揮される。この活性酸素群が生成する銅合金の表面では、銅が酸化・還元反応に寄与しており、大気中に存在する水分などと反応する。この反応は、いわゆる腐食と同じであり、抗菌性(殺菌性)が発揮される際には、表面では腐食反応が起こる。銅合金の表面の腐食は、銅合金の変色の原因となる。このように、抗菌性(殺菌性)は、耐変色性と基本的に相反する特性であり、耐変色性を高めることは抗菌性(殺菌性)の効果を弱めることに繋がる。つまり、耐変色性と抗菌性(殺菌性)は必ずしも両立するものではない。
上記の抗菌性と耐変色性を両立する銅合金として、特許文献2には、51.0〜58.0mass%のCuと、9.0〜12.5mass%のNiと、0.0003〜0.010mass%のCと、0.0005〜0.030mass%のPbとを含有し、残部がZnおよび不可避不純物からなり、Cuの含有量[Cu]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%との間に、65.5≦[Cu]+1.2×[Ni]≦70.0の関係を有し、α相のマトリックスに面積率で0〜0.9%のβ相が分散する金属組織であることを特徴とする銀白色銅合金が開示されている。
特開2004−143574号公報 特許第5245015号公報
しかしながら、特許文献2に開示された耐変色銅合金は熱間での変形抵抗が高く、量産の押出設備で熱間押出をするためには融点直下の温度で押出しなければならないので、少しでもオーバーヒートされると材料が融解してしまい温度管理が非常に難しい。仮に温度管理ができて押出できたとしても、押出のプレス能力が3000トン程度の一般的な量産設備では十分に押しきることができず、歩留まりが非常に悪い。同様に熱間鍛造性も乏しく、熱間押出時と同様に鍛造時の温度管理が非常に難しい。例え適正に加熱したとしても、元々の熱間変形抵抗が非常に高いので、500トン程度のプレス能力を持つ一般的な鍛造設備では所望の形状に成形するためには複数回鍛造しなくてはならず、コストが高くなるという問題がある。また、特許文献2に開示された耐変色銅合金は板・条製品からの用途が主であるためので、被削性はほとんど必要ない。そして、この銅合金のマトリックスはほぼα相から成り、β相の面積率が0〜0.9%であるため、被削性は低く、被削性が必要とされるような部材としては改善の余地がある。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、黄色(黄銅色)〜銀白色の色調を有するとともに、熱間押出性、熱間鍛造性、被削性、機械的性質に優れ、さらに耐変色性と抗菌性(殺菌性)が共に優れた銅合金棒およびこの銅合金棒からなる熱間鍛造材を用いた銅合金部材を提供することを目的としている。
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成されたものである。すなわち、前記課題を解決するため、以下の発明を提供する。
本発明の第1の態様である銅合金棒は、30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、33.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.3≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.8の関係を有しており、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する。
本発明の第2の態様である銅合金棒は、33.0〜38.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、1.5〜4.0mass%のNiと、0.1〜1.2mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜0.5mass%のAl、0.01〜0.5mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、34.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.6≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.5の関係を有しており、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する。
本発明の第3の態様である銅合金部材は、上述した第1、2の態様の銅合金棒を熱間鍛造して形成された熱間鍛造材または前記熱間鍛造材の組み合わせによって構成される。
本発明の第4の態様である銅合金部材は、上述した第3の態様の銅合金部材において、手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、および楽器として使用される。
本発明によれば、黄色(黄銅色)〜銀白色の色調を有するとともに、熱間押出性、熱間鍛造性、被削性、機械的性質に優れ、さらに耐変色性と抗菌性(殺菌性)にともに優れた銅合金棒およびこの銅合金棒からなる銅合金部材を提供することが可能となる。
本発明の実施例において、製造工程P4により製造されるグリップの形状を模式的に示した側面図である。
以下に、本発明の実施形態に係る銅合金について説明する。なお、本明細書では、[Zn]のように括弧付の元素記号は当該元素の含有量(mass%)を示すものとする。また、本実施形態では、この含有量の表示方法を用いて、以下のように、複数の組成指数f1、f2を規定する。
組成指数f1=[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]
組成指数f2=0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]
本発明の第1の実施形態に係る銅合金棒は、30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、33.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.3≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.8の関係を有する。すなわち、この第1の実施形態に係る銅合金棒においては、組成指数f1が33.0≦f1≦38.0の範囲内、組成指数f2が3.3≦f2≦4.8の範囲内とされる。
なお、上述の組成とされた第1の実施形態である銅合金棒を第1発明合金棒と称する。
本発明の第2の実施形態に係る銅合金棒は、33.0〜38.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、1.5〜4.0mass%のNiと、0.1〜1.2mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜0.5mass%のAl、0.01〜0.5mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、34.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.6≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.5の関係を有する。すなわち、この第2の実施形態に係る銅合金棒においては、組成指数f1が34.0≦f1≦38.0の範囲内、組成指数f2が3.6≦f2≦4.5の範囲内とされる。
なお、上述の組成とされた第2の実施形態である銅合金棒を第2発明合金棒と称する。
そして、上述した本発明の第1、2の実施形態に係る銅合金(第1、2発明合金棒)は、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する。
以下に、成分組成、組成指数f1、f2、および金属組織を上述のように規定した理由について説明する。
まず、本発明の銅合金棒(第1、2発明合金棒)の必須元素であるZn、Pb、Ni、Snの含有量について説明する。
(Zn:30.0mass%以上42.0mass%以下)
Znは、本発明の銅合金棒において、Sn、Niとの共添加により、色調を黄銅色から少し黄味を帯びた銀白色とさせると共に、耐変色性、抗菌性(殺菌性)を高め、引張強度、耐力等の機械的強度を向上させる重要な元素である。Znを30.0mass%以上、より好ましくは、33.0mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Znを42.0mass%を超えて含有させても含有量に見合った効果を得られず、β相がより多く残存し易くなり、強度は向上するものの冷間加工性、耐衝撃性、耐食性、抗菌性(殺菌性)が低下してしまう。したがって、Znの含有量は42.0mass%以下とし、好ましくは38.0mass%以下とする。このように、Znの含有量は、30.0mass%以上42.0mass%以下の範囲内とし、特にNiの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、Znの含有量を33.0mass%以上38.0mass%以下とすることが好ましい。
(Pb:0.0005mass%以上0.30mass%以下)
Pbは、本発明の銅合金棒において、せん断加工や研磨等における加工性、被削性を向上させる効果がある元素である。ここで、Pbを0.0005mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られるが、0.30mass%を超えて含有させると、熱間加工性が低下してしまう。また、Pbは有害物質であるので、含有量を最小限に留めるのが望ましい。そこで、Pbの含有量は、0.0005mass%以上0.30mass%以下の範囲内とし、好ましくは0.005mass%以上0.1mass%以下とする。
(Ni:0.01mass%以上11.0mass%以下)
Niは、本発明の銅合金棒において、耐変色性、機械的強度を確保する上で重要な元素であって、少なくとも0.01mass%以上の含有量で上記効果が発揮される。一方、Niを11.0mass%を超えて含有させても、他の元素との関係を鑑みても耐変色性はわずかに向上するものの上記効果は飽和し、却って熱間押出性、熱間鍛造性が低下し、さらに抗菌性や色調も損なわれる。また、Niは過多であるとアレルギー(Niアレルギー)の原因にも成り得る。そこで、Niを添加する場合には、Niの含有量を0.01mass%以上11.0mass%以下の範囲内とし、特に耐変色性をほとんど損なうことなく、さらに高い抗菌性(殺菌性)を確保するためには、好ましくは1.0mass%以上5.0mass%以下であり、最適には1.5mass%以上4.0mass%以下とする。
(Sn:0.01mass%以上1.5mass%以下)
Snは、本発明の銅合金棒において、耐変色性、機械的強度を向上させる効果を有する元素である。ここで、Snを0.01mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Snを1.5mass%を超えて含有させると含有量に見合った効果を得られず、鋳造時に固相線温度と液相線温度が広がってしまい濃度偏析を招き易くなり、熱間加工性、冷間加工性が低下してしまう。それに加え、γ相の量が多くなり、抗菌性、耐食性も低下してしまう。そこで、Snを添加する場合には、Snの含有量を0.01mass%以上1.5mass%以下の範囲内とする。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、Snの含有量は、好ましくは、0.1mass%以上であって、最適には、0.2mass%以上とし、Snの含有量の上限を、好ましくは1.2mass%、最適には1.0mass%とする。特に、0.7×[Ni]+[Sn]の値が1.2以上3.5以下である時、優れた耐変色性と抗菌性を備えることができる。
次に、選択必須元素であるAl、Mn、As、P、Sbについて説明する。
(Al:0.01mass%以上1.2mass%以下)
Alは、上述の銅合金において、鋳造時の湯流れ性(鋳造性)、耐変色性、強度を向上させる効果を有する元素である。ここで、Alを0.01mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られる。一方、Alを1.2mass%を超えて含有させても含有量に見合った効果を得られず、強固な酸化皮膜が形成されるので、抗菌性(殺菌性)が阻害される。そこで、Alを添加する場合には、Alの含有量を0.01mass%以上1.2mass%以下の範囲内とする。なお、AlをSnと共添加することにより、抗菌性(殺菌性)を低下させることなく、良好な耐変色性を得ることができる。Alの含有量は、好ましくは0.1mass%以上1.1mass%以下であり、最適には0.9mass%以下である。また、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、NiとAlの相互作用の観点から、Alの含有量の上限は、好ましくは0.5mass%以下であり、最適には0.3mass%以下である。
(Mn:0.01mass%以上1.2mass%以下)
Mnは、上述の銅合金棒の色調面でNiとの共添加で効果を発揮し、白色性を強め、耐変色性を向上させる元素であり、Ni代替元素としての役割を果たす。また、Mnの添加は、強度、耐摩耗性、曲げ加工性を向上させる効果もある。ここで、Mnを0.01mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られる。一方、Mnの含有量が1.2mass%を超えると含有量に見合った効果を得られず、熱間加工性が低下し、抗菌性(殺菌性)が低下してしまう。そこで、Mnを添加する場合には、Mnの含有量を0.01mass%以上1.2mass%以下の範囲内とし、好ましくは0.1mass%以上0.9mass%以下とする。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のときの上限は、好ましくは0.5mass%以下、最適には0.3mass%以下である。
(As:0.005mass%以上0.07mass%以下)
Asは、上述の銅合金棒において、α相マトリックスの耐食性を向上させる効果を有する元素である。ここで、Asを0.005mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Asの含有量が0.07mass%を超えると含有量に見合った効果を得られないだけでなく、Asは有害物質であるので、含有量を最小限に留めることが望ましい。そこで、Asを添加する場合には、Asの含有量を0.005mass%以上0.07mass%以下の範囲内とする。なお、Asは毒性が強いことから、0.05mass%以下とすることが好ましい。
(P:0.005mass%以上0.07mass%以下)
PもAsと同様に、上述の銅合金棒において、α相マトリックスの耐食性を向上させる働きがあり、鋳造時の湯流れ性(鋳造性)を向上させる効果を有する元素である。ここで、Pを0.005mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Pの含有量が0.07mass%を超えると含有量に見合った効果を得られず、素材製造時の熱間加工性および冷間加工性に悪影響を及ぼしてしまう。そこで、Pを添加する場合には、Pの含有量を0.005mass%以上0.07mass%以下の範囲内とし、より好ましくは0.01mass%以上0.04mass%以下とする。
(Sb:0.005mass%以上0.07mass%以下)
SbもPと同様に、上述の銅合金棒において、α相マトリックスの耐食性を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Sbを0.005mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られる。一方、Sbの含有量が0.07mass%を超えると含有量に見合った効果を得られないだけでなく、Sbは有害物質であるので、含有量を最小限に留めるのが望ましい。そこで、Sbを添加する場合には、Sbの含有量を0.005mass%以上0.07mass%以下の範囲内とする。なおSbは毒性が強いことから、0.05mass%以下とすることが好ましい。
(Cu:残部)
Cuは、上述の元素の残余成分であり(ただし、不可避不純物を除く)、これら主要元素のバランスとして含まれる。Cuは、銅合金としての引張強度、耐力等の機械的強度を向上させると共に、抗菌性(殺菌性)等の特性を確保する上で重要な元素である。残余成分であるが、各種特性を発揮するためのCuの含有量は、48.0mass%以上69.0mass%以下であり、好ましくは49.0mass%以上68.0mass%以下である。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、最適には、58.0mass%以上64.0mass%以下である。
(不可避不純物)
また、不可避的不純物としては、Fe、Co、Cr、Ag、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Re、Ru、Os、Se、Te、Rh、Ir、Pd、Pt、Au、Cd、Ga、In、Li、Ge、Tl、Bi、S、O、C、Be、N、H、Hg、B、および希土類等が挙げられる。これらの不可避不純物は、総量で0.5mass%以下であることが望ましい。
次に、本発明の銅合金棒の組成指数および金属組織について説明する。
(組成指数f1)
ここで、本発明の銅合金棒において、熱間加工性、被削性、耐変色性、抗菌性(殺菌性)といった様々な特性を同時に満足するためには、組成指数f1=[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]が、33.0≦f1≦38.0の関係式を満たすことが重要である。なお、上述の式において、Ni、Sn、Al、Mnについては、それぞれの含有量が0.01mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、それぞれ[Ni]、[Sn]、[Al]、[Mn]の値をそれぞれ0として計算する。また、As、P、Sbについては、その含有量が0.005mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、[As]、[P]、[Sb]の値をそれぞれ0として計算する。また、Pbについては、その含有量が0.0005mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、[Pb]の値を0として計算する。さらに、添加されていない元素については、含有量を0として計算する。また、不可避的に含まれる不純物については、合計の不純物量が0.5mass%より少ない場合は、組成指数f1およびその関係式にほとんど影響を与えない。合計の不可避不純物量が0.5mass%を超える場合は、下記の好ましい範囲を満たしていればよい。
上記のf1の関係式(33.0≦f1≦38.0)において、f1が下限値の33.0未満では熱間加工性、被削性、強度、耐変色性が悪くなる、または低くなり、上限値38.0を超えると耐食性、抗菌性が悪くなる、または低くなる。組成指数f1において、Znは組成指数f1のベースとなる値で、特に熱間加工性、強度、耐変色性、抗菌性に影響を与える。Snは、特にβ相やγ相の形成に影響を与え、強度の向上、抗菌性(殺菌性)にも寄与するので、プラスの係数が与えられている。Alは、Snと類似の効果があるが、その影響度はSnよりも少し小さく、耐変色性の影響を含めて総合的に考慮した係数を与えている。NiとMnはSnとは逆に、β相の形成を阻害することが主として評価され、耐食性、耐変色性を加味して、マイナスの係数が与えられている。上記のf1の関係式を満足することにより、熱間加工性、被削性、強度、耐変色性、抗菌性(殺菌性)を同時に満足することが可能となる。なお、組成指数f1の値は、好ましくは33.5以上であり、より好ましくは34.0以上である。特に、特にNi含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下の時、最適には35.0以上であり、上限値は37.5である。このように、各元素の成分範囲だけでなく、組成指数f1の値を狭い範囲内に設定することにより、本願発明の課題を解決できる。
(組成指数f2)
さらに、上述の銅合金棒において、特に耐変色性と抗菌性(殺菌性)という相反する特性を同時に持たせるには、組成指数f1の値が上記の関係式を満たすことに加え、Zn、Ni、Sn、Alの含有量のバランスを調整することが非常に重要である。すなわち、組成指数f2=0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]が、3.3≦f2≦4.8を満たす必要がある。なお、この組成指数f2において、Ni、Sn、Alについては、それぞれの含有量が0.01mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、exp(−1/[Ni])、[Sn]、[Al]の値をそれぞれ0として計算する。組成指数f2が3.3未満では、耐変色性に問題が生じ、f2が4.8を超えると、耐変色性が向上する一方で、抗菌性(殺菌性)が損なわれる。
上述のf2の関係式(3.3≦f2≦4.8)において、Znは、Sn、Niとの共添加により、耐変色性、抗菌性(殺菌性)を高め、引張強度、耐力等の機械的強度を向上させるが、含有量に見合う効果は他の元素より大幅に少ない。そのため、Znにはかなり小さな係数が与えられている。Alは耐変色性に大きな効果を発揮し、特にAlをSnと共添加すると耐変色性が特に顕著に向上するので、強度他の特性を加味して、大きな係数を与えられている。その一方で、Alの含有量が多くなりすぎると、抗菌性(殺菌性)が損なわれることを上記の組成指数f2は示している。SnもAlと類似の傾向を示すが、耐変色性等については、Alよりその効果が小さいので係数は小さくなっている。Niは、主として耐変色性に効果を発揮するが、効果を発揮するためには、ある程度の量が必要であり、特に添加量が1.0〜5.0mass%の範囲で急激に効果が上昇し、5.0mass%以降ではやや効果の上昇が緩やかになるものの11.0mass%まで効果が上昇し、11.0mass%を超過すると耐変色性の効果がほとんど飽和するどころか却って抗菌性が低下することが実験により確かめられている。すなわち、Niの効果は上記のような指数関数的な挙動を示すので、組成指数f2では、[Ni]の項を適切な係数を与えた指数関数で表すことにより、Niの効果を近似している。このような組成指数f2の関係式を満足することにより、耐変色性と抗菌性(殺菌性)という相反する特性を両立することが可能となる。なお、上述の組成指数f2の値は、最適には3.6以上4.5以下である。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下の時、f2の値は、最適には3.6以上4.5以下である。
(組成指数f1、f2の関係式の重要性)
本発明の銅合金棒は、ベースが30.0〜42.0mass%のZnとCuとからなる黄銅合金であるが、ベースの黄銅より遥かに耐変色性に優れながら、かつ黄銅と少なくとも同等以上の、抗菌性(殺菌性)を有する銅合金棒である。また、長期間の使用を想定した場合においても、抗菌性が低下せずに持続する合金棒である。
純銅に代表されるように、銅は優れた抗菌性を有するが、耐変色性に劣り、一般的な概念からすれば、耐変色性と抗菌性は相反する特性のように思われる。耐変色性と抗菌性とを両立させるためには、単純に黄銅にNiやSn、あるいはAlやその他の元素を含有させるだけでは不十分であり、Zn、Ni、Sn、およびAlの相互作用を鑑みた組成指数f2の関係式が非常に重要である。さらに、f2の関係式を満たして耐変色性と抗菌性とを両立させることに加え、熱間加工性、被削性、耐食性および機械的性質(機械的強度)を兼ね備えた銅合金棒を得るためには、組成指数f2の関係式だけでなく組成指数f1の関係式も同時に満たす必要がある。すなわち、銅合金において、各成分の含有量の範囲を特定するだけでは、これらすべての特性(耐変色性、抗菌性、熱間加工性、被削性、耐食性および機械的性質)を同時に兼ね備えることができず、各成分の含有量が本発明の範囲内であり、且つ、組成指数f1、f2の関係式すべてを同時に満たした成分でなくてはならない。したがって、各成分の含有量がf1、f2が上記関係式の範囲外となるような量の場合は、例えZn、Ni、SnあるいはAlやその他の元素の含有量が本発明の範囲内であっても、耐変色性、抗菌性、熱間加工性、被削性、耐食性および機械的性質を同時に兼ね備えることはできない。
(金属組織)
α相マトリックス中に硬質で脆いβ相やγ相が所定量を超えて存在すれば、耐食性、耐変色性に悪影響を与える。β相は、Cu−Zn合金においてCu−Znの2元平衡状態図から見るとZn量が32.5mass%以上のとき材料温度が高温になると出現する。高温状態でβ相が出現するが、材料が冷却される段階でβ相からα相に変態し、β相は減少する。またZn量が39mass%以上になると常温でもβ相が消滅せずに存在する。ただし、一般的な製造方法で製造すると非平衡状態となり、平衡状態図の通りとならずβ相の残存するZn量が低濃度側へシフトする。γ相は、高温で出現したβ相が共析反応によりα相とγ相に変態することにより発生する。
銅合金棒において、β相は通常、β相の長手方向が押出方向と平行となるように存在している。したがって、通常熱間押出棒を切削加工する場合は外周切削であるので、α相マトリックス中に占めるβ相の割合だけでなく、β相の長手方向に対し垂直な方向の数密度が、被削性において重要である。さらに、β相の数密度は耐変色性および耐食性にも影響を及ぼすため、重要である。
β相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%の和が1.5%未満であると、β相とγ相の総量が少なすぎるため、被削性と熱間加工性が低い。また、β相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%の和が14.0%より多くなると、β相とγ相の総量が多すぎるため、熱間加工性と被削性は良くなるものの、冷間加工性、耐食性、および耐変色性が低下する。したがって、α相マトリックス中のβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%の和を、1.5%以上14.0%以下の範囲内とし、好ましくは2.5%以上14.0%以下とする。また、β相の面積率は1.5%以上であることが好ましい。これにより、優れた熱間加工性および被削性が得られる。ここで、被削性、耐食性および耐変色性を同時に兼ね備えるためには、β相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%の和を上記範囲に限定するだけではなく、さらに、β相の長手方向に垂直な方向のβ相の数密度を所定の範囲内とすることが必要である。このβ相の数密度が9個/mmより少ない場合、例えβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%の和が適正範囲内であっても、被削性が乏しい。β相が29個/mmを超えて存在すると、被削性は向上する一方、β相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%の和が適正範囲内であっても、耐食性、耐変色性が低下する。したがって、β相の長手方向に垂直な方向のβ相の数密度は9個/mm以上29個/mm以下の範囲内とし、好ましくは10個/mm以上28個/mm以下とする。
熱間鍛造材の場合、切削時の切削方向は製品の形状に依存するため切削方向を指定することはできないが、熱間鍛造材のβ相の存在形態は通常は熱間鍛造加工を受ける方向と鉛直方向に伸びたような形態になる。そのため、β相の長手方向に対して垂直方向に切削加工を施す場合には、鍛造材であっても、β相の長手方向に対する垂直方向の数密度が被削性において重要である。
以上のように、本発明の第1、2の実施形態に係る銅合金棒は、優れた耐変色性、抗菌性、熱間加工性(熱間押出性、熱間鍛造性)、被削性、耐食性および機械的性質を備える。したがって、これらの銅合金棒は熱間鍛造による成形に好適であり、この銅合金棒を熱間鍛造して形成された熱間鍛造材またはその組み合わせで構成される銅合金部材に好適である。より具体的には、手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、および楽器として使用される銅合金部材に好適である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
以下、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果を示す。なお、以下の実施例は、本発明の効果を説明するためのものであって、実施例に記載された構成、プロセス、条件が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
上述した第1発明合金棒および第2発明合金棒の組成、組成指数、および金属組織を有する銅合金(合金No.1〜22)、ならびに比較用の組成、組成指数、および金属組織を有する銅合金(合金No.A1〜A16、B1〜B3)を用い、製造工程を変えて試料となる銅合金棒を作製した。各銅合金の組成を表1、2に示す。なお、比較用の銅合金として、JIS H 3250で定められたC2600、C2800、および特許文献2に記載の合金も用いた(合金No.B1〜B3)。
(製造工程P1)
表1、2に示す所定の成分に調整した原料を溝型低周波誘導加熱炉にて溶解し、直径240mm、長さ700mmの棒状鋳塊を作成し、その鋳塊を所定の温度T1(℃)に加熱し、3000トン押出機により直径22.5mmの丸棒の押出材を作製した。なお、押出後の冷却は空冷にて行った。
(製造工程P2)
表1、2に示す所定の成分に調整した原料を溝型低周波誘導加熱炉にて溶解し、直径240mm、長さ700mmの棒状鋳塊を作成し、その鋳塊を所定の温度T1(℃)に加熱し、3000トン押出機により6.5mm×30mm(R=1)のブスバー形状の押出材を作製した。なお、押出後の冷却は空冷にて行った。
(製造工程P3)
製造工程P1により作製した直径22.5mmの丸棒を長さ50mmに切断し、炉中で所定の温度T2(℃)に加熱し、50mm×50mm×8mm厚の形状に平鍛造した。なお、鍛造後の冷却は空冷にて行った。
(製造工程P4)
製造工程P1により作製した直径22.5mmの丸棒を長さ240mmに切断し、炉中で所定の温度T2(℃)に加熱し、図1に示すグリップの形状に熱間鍛造した。なお、鍛造後の冷却は空冷にて行った。なお、図1は、図1の左右方向をX方向、上下方向をY方向とした場合に、互いに直交するXY平面上(グリップの取付面に直交する面上)で見たときのグリップの側面図である。
(所定の温度T1、T2)
上記製造工程P1〜P4における所定の温度T1、T2について、熱間押出直前の温度T1、熱間鍛造直前の温度T2をそれぞれ表1に示す。組成指数f1の値に基づき、各サンプルごとに熱間押出温度および熱間鍛造温度を変更している。
上述の製造工程P1により作製した丸棒押出材については、α相マトリックス中にβ相とγ相の占める面積率、β相の数密度、引張強さ、0.2%耐力、被削性を評価した。その結果を表3、4に示す。また、製造工程P2で作製したブスバー押出材については、耐変色性、抗菌性、耐変色性試験後の抗菌性、耐食性を評価した。その結果を表5、6に示す。製造工程P3で作製した平鍛造材についても、製造工程P2で作製したブスバー押出材と同じ項目について評価した。その結果を表7、8に示す。さらに、製造工程P4で作製したグリップについては、熱間鍛造時の成型性、引張強さ、0.2%耐力を評価した。その結果を表9、10に示す。
(β相とγ相の占める面積率)
製造工程P1で作製した丸棒押出材の押出方向と平行な断面について、α相マトリクスにおけるβ相とγ相の占める面積率を測定した。具体的には、株式会社ニコンインストルメンツカンパニー製倒立金属顕微鏡(ECLIPSE MA200)を使って倍率500倍で組織写真を撮影し、画像解析ソフト(Winroof2013)を使って、α相マトリックスにおけるβ相およびγ相をそれぞれ二値化し、β相とγ相の占める面積率を測定した。β相とγ相の面積率は、それぞれの部位について任意の3箇所(1箇所の大きさは221μm×277μm)を測定して平均値をデータとしている。
(β相の数密度)
製造工程P1で作製した丸棒押出材の押出方向に沿った断面について、β相の数密度は、株式会社ニコンインストルメンツカンパニー製倒立金属顕微鏡(ECLIPSE MA200)を使って倍率200倍で組織写真(553μm×692μm)をβ相の長手方向を写真の長手方向に合わせて3枚撮影し、その組織写真中の任意のβ相の長手方向に対し垂直な方向に、等間隔(138μm間隔)に3本の線を引き、それぞれの引いた線を横切るβ相の数の3枚の写真における平均値を求め、得られたβ相の数の平均値を、引いた線がβ相上を横切る長さ(写真の短手方向の長さである553μm)で除することにより数密度を測定した。
(引張強度、0.2%耐力)
P1工程で作製した熱間押出後のφ22.5mmの丸棒押出材をJIS Z 2201に規定された金属材料引張試験片の4号試験片(棒材:径14mm、標点間距離50mm)に加工した。また、P4工程で得られたグリップの形状のサンプルをJIS Z 2201に規定される金属材料引張試験片の13B号試験片(板材:並行部の幅12.5mm、厚さ3mm、標点間距離50mm)に加工し、100kN万能試験機(島津製作所製AG−X)により引張試験を実施した。引張試験により引張強度、0.2%耐力を測定した。なお、本発明の実施形態および実施例において「耐力」とは、JIS Z 2241に規定される0.2%耐力を意味し、すなわち、JIS Z 2241の金属材料引張試験方法に記載されるオフセット法により得られた永久伸びが0.2%のときの耐力を意味する。
(耐変色性)
耐変色性試験は、P2工程で作製したブスバー押出材とP3工程で作製した平鍛造材とを用いて試験を行った。平鍛造材およびブスバー押出材の最大面積の取れる表面を♯1200のエミリー紙により研磨した後、耐変色性試験を行った。耐変色性試験の方法は、恒温恒湿槽(楠本化成株式会社HIFLEX FX2050)を用いて温度60℃、相対湿度95%の雰囲気中に各サンプルを暴露した。試験時間は12時間とし、試験後に試料を取り出し、暴露前後の材料の表面色を分光測色計によりL*a*b*を測定し、色差を算出し評価した。表5〜8において、耐食性評価として色差の値が「A」:0〜4.9、「B」:5〜9.9、「C」:10以上とした。色差は試験前後でのそれぞれの測定値の違いを表し、その値が大きいほど試験前後の色調が異なる。すなわち、色差が小さいほど色調の変化が少なく、したがって耐変色性が優れることになる。色差が10以上では目視で十分に変色していることが確認でき、耐変色性が劣ると判断出来る。
比較材としてC2600(70−30黄銅、合金No.B1)、C2800(60−40黄銅、合金No.B2)についても同様に耐変色性を評価した。C2600、C2800には、一般的な銅合金製造会社で実施されている防錆処理(市販の銅合金用防錆液を用いた処理)を施した。防錆処理は、各材料の表面をアセトン脱脂した後、主成分がベンゾトリアゾールである市販の銅合金用防錆液を0.1vol%含む水溶液を75℃に加温し、この水溶液に脱脂後の各材料を10秒間浸漬し、その後、水洗および湯洗を行い、最終ブロワー乾燥した材料を作成した。これは一般的な銅合金の防錆処理条件(量産時の防錆処理条件)と類似した条件である。
(抗菌性)
抗菌性(殺菌性)は、P2工程で得られたブスバー押出材、P3工程で得られた平鍛造材で最も面積の取れる部分の中心部をそれぞれ25mm四角に切り出した試料を用いて行った。試験方法はJIS Z 2801に規定される試験方法を参考にした方法により評価した。試験に用いた細菌は黄色ぶどう球菌(菌株の保存番号:ATCC6538)とし、JIS Z 2801の第5.6.a項で規定される方法に基づき35±1℃で前培養をした黄色ぶどう球菌を1/500NBを用いて希釈し、黄色ぶどう球菌を1.0×10個/mlに調整した液を試験菌液とした。試験方法は、所定のサイズに加工した試料を滅菌したシャーレに置き、前述の試験菌液(黄色ぶどう球菌:1.0×10個/ml)0.045mlを滴下し、φ15mmのフィルムをかぶせてシャーレの蓋を閉じた。そのシャーレを35±1℃、相対湿度95%の雰囲気で10分間培養(接種時間:10分)する。培養した試験菌液をSCDLP培地10mlにより洗い出し、洗い出し菌液を得る。洗い出し菌液を、リン酸緩衝生理食塩水を用いて10倍ずつに希釈し、その菌液に標準寒天培地を加え、35±1℃、48時間培養し、集落数(コロニー数)が30以上となる場合にその集落数を計測し、生菌数(cfu/ml)を求めた。接種時の菌数(抗菌性試験開始時の菌数(cfu/ml))を基準とし、それぞれのサンプルの生菌数と比較した。その結果を表5〜8に、「A」:10%未満、「B」:10〜33%未満、「C」:33%以上として評価した。「A」以上(すなわち、接種時の生菌数に対し評価サンプルの生菌数が1/3未満となる)の評価を得たサンプルは抗菌性(殺菌性)が優れると判断した。
(耐変色性試験後の抗菌性試験)
P2工程で得られたブスバー押出材およびP3工程で得られた平鍛造材の耐変色性試験を実施した後の、表面がある程度変色した試料を用いて、抗菌性試験を行った。抗菌性試験の方法は上述の抗菌性試験方法と同じである。抗菌性(殺菌性)の評価は、耐変色性試験後の試料で実施した生菌率Cが、耐変色試験をしていない試料の生菌率Cに対して、C≦1.10×Cの場合を「A」、1.10×C<C≦1.25×Cの場合を「B」、C>1.25×Cの場合を「C」とした。すなわち、銅合金が変色すると抗菌性能が低下することが懸念され、前記の高温高湿下の過酷な耐変色性試験により、本発明合金(合金No.1〜24)においても少しの変色は認められ、表面の極表層部は酸化物等が生成されていることが予測された。そのような多少変色した試料においても、試験前の清浄な表面を有する試料と比べ、評価A、少なくとも評価Bであれば、抗菌性能は損なわれないと判断した。
(耐食性)
耐食性試験は、P3工程で得られた平鍛造材とP2工程で得られたブスバー押出材を用いて試験を行った。
試験方法はISO 6509:1981(Corrosion of metals and alloys determination of dezincification resistance of brass)で規定される脱亜鉛腐食試験により評価した。耐変色性試験と同様に、加工した平鍛造材の最大面積の取れる表面の中心部が暴露するように切り出し、その表面を♯1200のエミリー紙により研磨し、暴露表面が1cmになるように耐熱樹脂性のテープでマスクキングを施し、試験液に24時間暴露した。試験液として75℃に加温した1%第2塩化銅水溶液を用いた。その24時間保持したサンプルを暴露表面から垂直方向の金属組織を観察し、脱亜鉛腐食の最も進行している部分の深さ(最大脱亜鉛腐食深さ)を測定した。その最大脱亜鉛腐食深さが200μm以下のものを「A」、200μmを超えるものを「C」として表5〜8に記載した。
(被削性)
P1工程で得られた熱間押出後のφ22.5mmの丸棒押出材からφ20mmの棒状の切削用試験片を採取し、無潤滑で外周切削を行い、切屑を採取し、切屑厚みを測定した。外周をφ20mmからφ18mm(片側1mm切削)まで切削し、切削速度を150m/min、送りを0.2mm/rev、チップを三菱マテリアル製 TNGG 160404R(材質UTi20T)、切削距離を9.4mとして外周切削を行った。切屑厚みが350μm未満を「A」、350〜420μmを「B」、420μm超過を「C」として評価した。
(熱間鍛造時成型性:P4工程)
P4工程における熱間鍛造、すなわちP1工程で得られた熱間押出後のφ22.5mmの丸棒押出材を長さ240mmに切断し、炉中で所定の温度T2(℃)まで加熱し、グリップの形状に熱間鍛造した際の、グリップの面割れの有無、成型後の寸法で評価した。図1にグリップの横断面図を示す。面割れ、耳割れの外見上の欠陥または、成型不良(欠肉)、寸法精度の出ていない等のいずれかの不具合のあるものをC、外観上の欠陥、成型不良が認められず、寸法精度の出ている良好なものをAとして評価した。寸法精度は、図1に示す矢印A、Bの部分の厚みの目標値をそれぞれ11.5mm、12.5mmとして、当該厚みが目標値に対し−0.2mm〜+0.5mmの範囲に入っているか否かで判断した。すなわち、矢印A、Bの部分の厚みがそれぞれ11.3〜12.0mm、12.3〜13.0mmの範囲に入っていれば寸法精度が出ていると判断した。ここで、矢印A、Bの部分の厚みとは、矢印A、B部分の前記Y方向の寸法を意味している。また、図1の矢印A、Bの部分は、それぞれ、グリップの長手方向(X方向)の全長240mmに対して、X方向における左端からX方向に沿って53〜56mmの部分、右端から81〜84mmの部分である。これらの部分における厚み(Y方向寸法)が上記範囲に入っていれば寸法精度が出ていると判断した。
Figure 0006477127
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以上の試験の結果、下記のことが分かった。
第1発明合金棒に相当する合金No.1〜22、すなわち、30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、33.0≦f1≦38.0、かつf2≦4.8の関係を有しており、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する銅合金棒は、熱間押出性、熱間鍛造性、被削性および機械的性質(引張強度、0.2%耐力)に優れ、耐食性、耐変色性、抗菌性および殺菌性に優れた銅合金となった。
さらに、第2発明合金棒に相当する合金No.13〜22、すなわち、33.0〜38.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、1.5〜4.0mass%のNiと、0.1〜1.2mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜0.5mass%のAl、0.01〜0.5mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、34.0≦f1≦38.0、かつ3.6≦f2≦4.5の関係を有しており、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する銅合金棒は熱間押出性、熱間鍛造性、被削性および機械的性質に優れ、耐変色性に優れ、より抗菌性および殺菌性に優れた銅合金となった。特に、第1発明合金棒よりさらにNi、Mn、Alの添加量の範囲を制限しても耐変色性能をほとんど損なうことがなかった。
Znの含有量が本発明合金棒における下限値以下の合金No.A7では、耐変色性、被削性が悪くなり、上限値を超えた合金No.A1では、抗菌性、耐変色性試験後の抗菌性、耐食性が悪くなった。
Pbの含有量が本発明合金棒における下限値以下の合金No.A13では、被削性が低下した。
Niの含有量が本発明合金棒における上限値を超えた合金No.A4では、被削性、耐変色試験後の抗菌性、熱間鍛造時の成形性が悪くなった。Niの含有量が本発明合金棒における最適な範囲に入る合金No.13〜22では、耐変色性をほとんど損なうことなく、抗菌性がさらに向上することが認められ、耐変色性と抗菌性とが両立することが認められた。
Sn含有量が本発明合金棒における上限値を超えた合金No.A9では、耐変色性試験後の抗菌性、耐食性、熱間鍛造時成形性が悪くなった。Snの含有量が本発明合金棒における最適な範囲に入る合金No.8、10〜18では、より抗菌性が向上することが認められた。
Alの含有量が本発明合金棒における上限値を超えた合金No.A10では、抗菌性、および耐変色性試験後の抗菌性が悪くなった。Alの含有量が本発明合金棒におけるより好ましい範囲に入る合金No.7、8では、耐変色性試験後の抗菌性の向上が認められた。
Mnの含有量が本発明合金棒における上限値を超えた合金No.A5では、耐変色性試験後の抗菌性、および熱間鍛造時の成形性が悪くなった。Mnの含有量が本発明合金棒における最適な範囲に入る合金No.1〜6では、良好な耐変色性を保持しながら抗菌性の低下が最小限に抑えられた。
As、P、Sbの含有量が本発明合金棒における適正な量とした合金No.10〜22、A14では耐食性の向上が認められた。
Pの含有量が本発明合金棒における上限値を超えた合金No.A15では、熱間加工時の成形性が悪くなった。
組成指数f1の値が本発明合金棒における下限値未満の合金No.A2、A7では、被削性、熱間加工時の成形性、強度、耐変色性が悪くなった。一方、組成指数f1の値が上限値を超えた合金No.A1、A8、A9、A12では、耐食性、抗菌性が悪くなった。
組成指数f2の値が本発明合金棒における下限値未満の合金No.A7では、抗菌性は高いが、耐変色性が悪くなった。一方、組成指数f2の値が上限値を超えた合金No.A1、A3では、耐変色性能は向上するが、抗菌性が悪くなった。
組成指数f2の値が本発明合金棒における好ましい範囲内に入っていても、組成指数f1の値が最適な範囲から外れていた合金No.18、20、21、A5、A12、A14〜A16では、抗菌性がわずかに低下した。
組成指数f1およびf2の値が本発明合金棒におけるより最適な範囲に入る合金No.13〜17では、耐変色性を確保しながら、さらに抗菌性が高くなった。
β相とγ相の占める面積率が本発明合金棒における下限値未満となった合金No.A2、A4、A7、A11では、被削性および熱間加工時の成形性が悪くなった。一方、β相とγ相の占める面積率が本発明合金棒における上限値を超えた合金No.A1、A8、A12では、耐食性、耐変色性が悪くなった。
β相の数密度が9個/mm未満になると、例えβ相とγ相の占める面積率が適正範囲内であっても、被削性が悪くなった(合金No.A6)。また、β相の数密度が29個/mmを超えると、例えβ相とγ相の占める面積率が適正範囲内であっても被削性向上するものの、耐食性、耐変色性が悪くなった(合金No.A16)。
比較材のC2600(70−30黄銅、合金No.B1)は耐変色性、被削性が悪く、熱間鍛造時の成型性が悪かった。C2800(60−40黄銅、合金No.B2)は耐変色性、耐食性が悪かった。
比較材の特許文献2に記載されている合金(合金No.B3)は歩留まりが悪く、ほとんど押出しできなかった。少しだけ取れたサンプルで被削性、熱間鍛造時の成形性をテストしたが、どちらも悪かった。
P3工程の熱間鍛造材の特性は熱間押出材と比べてやや強度は高くなるが、耐変色性、抗菌性、耐変色性試験後の抗菌性は熱間押出材と同等であった。
本発明の銅合金棒および銅合金部材は、優れた耐変色性、抗菌性、熱間加工性、被削性、耐食性および機械的性質を備えるので、病院内もしくは公共施設の手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、点滴架台などのグリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、楽器、ニッケルメッキなどのメッキフリーの銀白色材料としての用途に最適である。

Claims (4)

  1. 30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、
    さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、
    残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、
    Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、33.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.3≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.8の関係を有しており、
    α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、
    任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有することを特徴とする銅合金棒。
  2. 33.0〜38.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、1.5〜4.0mass%のNiと、0.1〜1.2mass%のSnとを含有し、
    さらに、0.01〜0.5mass%のAl、0.01〜0.5mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、
    残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、
    Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、34.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.6≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.5の関係を有しており、
    α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、
    任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有することを特徴とする銅合金棒。
  3. 請求項1または2に記載の銅合金棒を熱間鍛造して形成された熱間鍛造材によって構成されたことを特徴とする銅合金部材。
  4. 手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、および楽器として使用されることを特徴とする請求項3に記載の銅合金部材。
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