JP6469317B2 - レーダ処理装置 - Google Patents
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Description
以下の特許文献1には、パルス信号として、時間の経過に伴って周波数が変化するチャープ信号を放射するレーダ処理装置が開示されている。
このレーダ処理装置では、チャープ信号を放射する際、例えば、バーカーコードなどの自己相関符号列にしたがってチャープ信号をアップチャープとダウンチャープの間で切り替えることで、レンジアンビギュイティを抑圧するようにしている。アップチャープのチャープ信号は、時間の経過に伴って周波数が高くなる信号であり、ダウンチャープのチャープ信号は、時間の経過に伴って周波数が低くなる信号である。
チャープ信号におけるアップチャープとダウンチャープを切り替えることで、所望の観測ポイントで反射された信号と、その観測ポイント以外のポイントで反射された信号とを区別することができるため、レンジアンビギュイティを抑圧することができる。
レーダ装置を搭載しているプラットフォームが移動している場合、ドップラーの影響を受けるため、レーダ装置がチャープ信号を放射したのち、レーダ装置が観測ポイントで反射されたチャープ信号の反射波を受信しても、その反射波の受信信号における結像位置に位置ずれが生じることが知られている。
この結像位置の位置ずれ量は、ドップラー周波数とチャープレートに依存するため、例えば、スポットライトモードやTOPS(Terrain Observation by Progressive Scans)など、観測時のドップラーが大きくなる観測方法を用いる場合、結像位置の位置ずれを無視することができなくなる。
図13はレーダ装置であるSARセンサと点目標間の距離Rの変化を示す説明図である。
図13では、アップチャープとダウンチャープが切り替わる毎に、変化している結像位置を表している。SARセンサと点目標間の距離RはR0を最小として、放物線状の軌跡を描いている。軌跡を破線で表している。
「down」は、チャープ信号がダウンチャープで変調されていることを表し、「up」は、チャープ信号がアップチャープで変調されていることを表している。
したがって、受信信号の結像位置である距離Rのピーク位置は○の位置に現れるが、SARセンサが移動している場合、移動の影響で、レンジ圧縮後の受信信号が示す距離Rがレンジ方向にシフトする。このため、距離Rのピーク位置は●の位置にシフトする。
アップチャープとダウンチャープを交互に切り替えながら観測する方式では、チャープの符号に応じて、ピーク位置の位置ずれ方向が反転する。また、ドップラー周波数が正から負に変化することに伴って位置ずれ方向が反転する。
アジマス方向の振幅変調が発生している状態で、結像位置の位置ずれを補正することなく、受信信号から再生されたSAR画像には、その振幅変調の影響でアロングトラック方向にアンビギュイティが発生する。
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ処理装置を示す構成図である。
図2はこの発明の実施の形態1によるレーダ処理装置の信号処理器23を示す構成図であり、図3はこの発明の実施の形態1によるレーダ処理装置における信号処理器23のハードウェア構成図である。
図1から図3において、レーダセンサ1はチャープ信号における周波数の変化率(以下、「チャープレート」と称する)を変えながら、そのチャープ信号を繰り返し空間に放射し、目標に反射されたチャープ信号の反射波を受信して、その反射波の受信信号を出力するレーダ装置である。
信号処理部2はレーダセンサ1の移動に伴って発生する受信信号における結像位置の位置ずれを補正し、位置ずれ補正後の受信信号からSAR画像(合成開口レーダ画像)を再生する処理を実施する。
この実施の形態1では、レーダセンサ1が切り替えるチャープレートの総数がNであるとする。
励振部11により生成されるチャープ信号は、後述する制御器21から出力された制御信号が示すチャープレートのチャープ信号である。
簡単な例では、時間の経過に伴って周波数が高くなるアップチャープのチャープ信号と、時間の経過に伴って周波数が低くなるダウンチャープのチャープ信号とを交互に生成する態様が考えられるが、励振部11から出力されるチャープ信号のチャープレートが切り替わるものであればよく、アップチャープのチャープ信号とダウンチャープのチャープ信号とが交互に出力されるものに限るものではない。
また、交互に切り替える必要もなく、チャープレートの異なるチャープ信号が複数回連続して放射されるものであっても構わない。また、アップチャープのチャープ信号とダウンチャープのチャープ信号が同時に出力されるものであってもよい。
送受切換器13は送受信アンテナ14の送信状態と受信状態を切り換える切換器であり、増幅部12から出力されたチャープ信号を送受信アンテナ14に出力する一方、送受信アンテナ14から出力された反射波の信号を受信部15に出力する。
送受信アンテナ14から空間に放射されたチャープ信号は、例えば飛行機や地表面などの散乱体(目標)に照射されて散乱する。散乱体に散乱されたチャープ信号の一部は、チャープ信号の反射波として送受信アンテナ14に戻ってくる。
送受信アンテナ14は、散乱体に散乱されて戻ってきたチャープ信号の反射波を受信し、その反射波の信号であるRF(Radio Frequency)信号を送受切換器13に出力する。
図1では、1つの送受信アンテナ14が送信アンテナと受信アンテナを兼ねている例を示しているが、送信アンテナと受信アンテナを別々に備えているものであってもよい。
また、複数の送受信アンテナ14を備えているものであってもよい。
データ記録部16はA/D(Analog to Digital)変換器16aを内蔵しており、A/D変換器16aによって所定のサンプリングレート毎に、受信部15から出力されたベースバンド信号がアナログ信号からデジタル信号に変換されると、そのデジタル信号であるデジタル受信信号を信号処理部2に出力する。
複数の送受信アンテナ14が実装されている場合、受信部15及びデータ記録部16は、受信チャンネル数分の信号を同時に処理する機能を備えているものとする。
即ち、運動計測部17は、プラットフォームの運動を司る3軸の角度又は角速度と加速度を計測するIMU(Inertial Measurement Unit)、プラットフォームの位置情報を出力するGPS(Global Positioning System)受信機、方位情報を出力する磁気コンパスなど、プラットフォームの位置や姿勢角などを計測する計測器を備えている。
運動計測部17により計測されたプラットフォームの運動情報は、信号処理部2に出力される。より精度の高い観測を行うには、プラットフォームの位置、速度、姿勢などが計測されることが望ましい。
記憶装置22は例えばハードディスクなどで構成されており、レーダセンサ1のデータ記録部16から出力されたデジタル受信信号や、レーダセンサ1の運動計測部17から出力されたプラットフォームの運動情報などを記憶する装置である。
信号処理器23は記憶装置22に記憶されているデジタル受信信号における結像位置の位置ずれを補正し、位置ずれ補正後の受信信号からSAR画像を再生する処理を実施する。
表示器24は例えばGPU(Graphics Processing Unit)などを備えており、信号処理器23により再生されたSAR画像をディスプレイに表示する。
アジマスフーリエ変換部32は例えば図3のアジマスフーリエ変換回路51で実現されるものであり、記憶装置22に記憶されているデジタル受信信号をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信データをレンジフーリエ変換部33に出力する処理を実施する。
図2では、アジマスフーリエ変換部32がデジタル受信信号をアジマス方向にフーリエ変換してから、レンジフーリエ変換部33がレンジ方向にフーリエ変換する例を示しているが、レンジフーリエ変換部33がデジタル受信信号をレンジ方向にフーリエ変換してから、アジマスフーリエ変換部32がアジマス方向にフーリエ変換するようにしてもよい。
補正係数算出部35−n(n=1,2,・・・,N)はチャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Cn(fτ,fη)を算出する処理を実施する。
補正係数乗算部36−n(n=1,2,・・・,N)は補正係数算出部35−nにより算出された補正係数Cn(fτ,fη)をレンジフーリエ変換部33から出力された受信データに乗算することで、その受信データにおける結像位置の位置ずれを補正する処理を実施する。
図2では、補正係数算出部35−nがチャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Cn(fτ,fη)を算出する例を示しているが、予め、チャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Cn(fτ,fη)を保持しておくようにしてもよい。
レンジ逆フーリエ変換部38−n(n=1,2,・・・,N)は例えば図3のレンジ逆フーリエ変換回路54で実現されるものであり、位置ずれ補正部34の補正係数算出部35−nにより位置ずれが補正された受信データをレンジ方向に逆フーリエ変換して、逆フーリエ変換後の受信データをアジマス逆フーリエ変換部39−nに出力する処理を実施する。
アジマス逆フーリエ変換部39−n(n=1,2,・・・,N)は例えば図3のアジマス逆フーリエ変換回路55で実現されるものであり、レンジ逆フーリエ変換部38−nから出力された受信データをアジマス方向に逆フーリエ変換して、逆フーリエ変換後の受信データを時間領域の信号として抽出結合部40に出力する処理を実施する。
図2では、レンジ逆フーリエ変換部38−nが受信データをレンジ方向に逆フーリエ変換してから、アジマス逆フーリエ変換部39−nがアジマス方向に逆フーリエ変換する例を示しているが、アジマス逆フーリエ変換部39−nが受信データをアジマス方向に逆フーリエ変換してから、レンジ逆フーリエ変換部38−nがレンジ方向に逆フーリエ変換するようにしてもよい。
画像再生部41は例えば図3の画像再生回路57で実現されるものであり、抽出結合部40により結合された信号からSAR画像を再生する処理を実施する。
ここで、アジマスフーリエ変換回路51、レンジフーリエ変換回路52、位置ずれ補正回路53、レンジ逆フーリエ変換回路54、アジマス逆フーリエ変換回路55、抽出結合回路56及び画像再生回路57は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、または、これらを組み合わせたものが該当する。
ソフトウェアやファームウェアはプログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)などが該当する。
また、コンピュータのメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性又は揮発性の半導体メモリや、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
信号処理器23がソフトウェアやファームウェアなどで実現される場合、アジマスフーリエ変換部32、レンジフーリエ変換部33、位置ずれ補正部34、レンジ逆フーリエ変換部38−1〜38−N、アジマス逆フーリエ変換部39−1〜39−N、抽出結合部40及び画像再生部41の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムをメモリ71に格納し、コンピュータのプロセッサ72がメモリ71に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図5は信号処理器23がソフトウェアやファームウェアなどで実現される場合の処理手順を示すフローチャートである。
図6を参照しながら、レーダセンサ1の移動に伴う結像位置の位置ずれについて説明するとともに、結像位置の位置ずれに関する補正処理の原理について説明する。
また、レーダセンサ1と点目標100との距離がR、レーダセンサ1と点目標100との最近接距離がR0である。
また、図6では、レーダセンサ1から放射されたチャープ信号によるレーダビームのフットプリントを楕円で表しており、アジマス方向と直交する方向を破線で表している。
また、プラットフォームの高度をhとして、地表面はx−y平面に並行で、z=−h[m]の高さにあるものとする。
式(1)において、ηはアジマス時刻、τはレンジ方向の時刻、f0はレーダセンサ1から放射されたチャープ信号の中心周波数である。
また、Kr[η]はアジマス時刻ηにおけるチャープ信号のチャープレート、cは光速、Tはチャープ信号のパルス幅である。
第3項以降は、プラットフォームの移動に伴う位相変化を表している。
式(8)において、fd(η)はドップラー周波数である。
式(8)に示している結像位置の位置ずれfd(η)/Kr[η]は、観測中の各アジマス時刻ηにおける点目標100のドップラー周波数fd(η)と、アジマス時刻ηのチャープレートKr[η]から補正量を算出することで、解消することが可能である。
チャープレートKr[η]については、励振部11がチャープ信号を生成する際に、制御器21から与えられるものであるため、既知の情報として扱うことが可能である。
一方、ドップラー周波数fd(η)については、点目標100の位置が未知であることから、ビーム幅分の不定性を含んでおり、一般的には未知数である。このため、受信データから推定する必要がある。
ドップラー周波数fd(η)の推定は、レーダセンサ1のデータ記録部16から出力されるデジタル受信信号Sr[η,τ]をフーリエ変換処理することで、推定することが可能である。
[非特許文献1]Pau Prats-Iraolaet al. “On the processing of very high-resolution space-borne SAR data,” IEEE Trans. Geosci. Remote Sens. vol. 52, no. 10, pp. 6003-6016, Oct. 2014.
しかし、アップチャープとダウンチャープが交互に切り替えられるアップダウン変調の受信信号には、同一のアジマス周波数に、アップ変調の信号とダウン変調の信号が混在してしまうため、非特許文献1に開示されている手法では、チャープレートKr[η]が決まらず、補正量を算出することができない。
Sf(fτ,fη)のアジマス周波数成分に混在しているチャープレートKr n[η]の信号は、チャープレートKr[η]とドップラー周波数fd(η)に依存しているため、下記の式(9)に示すように、チャープレートKr n毎に、結像位置の位置ずれを補正するための補正係数Cn(fτ,fη)(n=1,2,・・・,N)を算出することができる。式(9)におけるチャープレートKr nは、Kr[η]に対応している。
この補正係数Cn(fτ,fη)(n=1,2,・・・,N)を2次元周波数空間上に変換した信号Sf(fτ,fη)に乗算することで、各々のチャープレートKr nに対応する結像位置の位置ずれが補正された信号Sf n(fτ,fη)(n=1,2,・・・,N)が得られる。この処理によりN個の補正された信号が得られる。
このため、各々の補正後の信号Sf n(fτ,fη)(n=1,2,・・・,N)をそれぞれ時間領域の信号に変換することで、N個の時間領域の補正信号Scmp n(τ,η)(n=1,2,・・・,N)を得る。
図7では、チャープレートがアップチャープである場合のチャープ信号が放射される場合と、チャープレートがダウンチャープである場合のチャープ信号が放射される場合とを想定している。
図7AはアップチャープのチャープレートKr 1に対応する信号が補正されている例を示し、図7BはダウンチャープのチャープレートKr 2に対応する信号が補正されている例を示している。
ただし、アップチャープのチャープレートKr 1に対応する信号が補正されても、ダウンチャープのチャープレートKr 2に対応する信号については適正な補正量ではないため、図7Aに示すように、結像位置の位置ずれが解消されていない。
一方、ダウンチャープのチャープレートKr 2に対応する信号が補正された場合、図7Bに示すように、ダウンチャープのチャープレートKr 2に対応する信号については、距離Rの位置にピークが現れている。
ただし、ダウンチャープのチャープレートKr 2に対応する信号が補正されても、アップチャープのチャープレートKr 1に対応する信号については適正な補正量ではないため、図7Bに示すように、結像位置の位置ずれが解消されていない。
即ち、時間領域の補正信号Scmp 1(τ,η)からはチャープレートKr 1に対応する信号を抽出し、時間領域の補正信号Scmp 2(τ,η)からはチャープレートKr 2に対応する信号を抽出し、また、時間領域の補正信号Scmp N(τ,η)からはチャープレートKr Nに対応する信号を抽出する。アジマス時刻ηで用いているチャープ信号のチャープレートは、制御器21が制御しているため、時間領域では既知である。
最後に、N個の時間領域の補正信号Scmp n(τ,η)からそれぞれ抽出されたN個のチャープレートKr nに対応する信号を結合することで、全てのアジマス時刻ηにおいて、結像位置の位置ずれが解消されている信号を得ることができる。
以上が結像位置の位置ずれに関する補正処理の原理である。
信号処理部2の制御器21は、各々のアジマス時刻ηにおけるチャープレートを示す制御信号を励振部11及び信号処理器23に出力する。
この実施の形態1では、N個のチャープレートKr n(n=1,2,・・・,N)を使用するものとする。したがって、制御器21は、例えば、アジマス時刻η=1でチャープレートKr 1を示す制御信号を励振部11に出力し、アジマス時刻η=2でチャープレートKr 2を示す制御信号を励振部11に出力し、アジマス時刻η=NでチャープレートKr Nを示す制御信号を励振部11に出力する。
増幅部12は、励振部11からチャープ信号を受けると、そのチャープ信号の信号レベルを所望の信号レベルまで増幅し、増幅後のチャープ信号を送受切換器13に出力する。
送受切換器13は、増幅部12からチャープ信号を受けると、そのチャープ信号を送受信アンテナ14に出力する。
これにより、送受信アンテナ14からチャープ信号が空間に放射される。送受信アンテナ14から空間に放射されたチャープ信号は、例えば飛行機や地表面などの散乱体に照射されて散乱する。散乱体に散乱されたチャープ信号の一部は、チャープ信号の反射波として送受信アンテナ14に戻ってくる。
送受信アンテナ14は、散乱体に散乱されて戻ってきたチャープ信号の反射波を受信し、その反射波の信号であるRF信号を送受切換器13に出力する。
受信部15は、送受切換器13からRF信号を受けると、そのRF信号の受信処理を実施し、その受信したRF信号をベースバンド信号に変換して、そのベースバンド信号をデータ記録部16に出力する。
データ記録部16のA/D変換器16aは、所定のサンプリングレート毎に、受信部15から出力されたベースバンド信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
データ記録部16は、A/D変換器16aにより変換されたデジタル信号である式(1)のデジタル受信信号Sr[η,τ]を信号処理部2の記憶装置22に記録する。
運動計測部17は、レーダセンサ1が搭載されているプラットフォームの運動情報として、例えば、プラットフォームの位置、速度、姿勢を計測し、その運動情報を信号処理部2の記憶装置22に記録する。この運動情報は、後述する実施の形態3で利用される。
信号処理器23は、記憶装置22に記憶されているデジタル受信信号Sr[η,τ]に対応しているチャープ信号のチャープレートKr nを認識すると、そのチャープレートKr nに基づいてデジタル受信信号Sr[η,τ]における結像位置の位置ずれを補正し、位置ずれ補正後の受信信号からSAR画像を再生する。
以下、信号処理器23の処理内容を具体的に説明する。
即ち、周波数領域変換部31のアジマスフーリエ変換部32は、記憶装置22に記憶されているデジタル受信信号Sr[η,τ]を取得して、そのデジタル受信信号Sr[η,τ]をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信データをレンジフーリエ変換部33に出力する(図5のステップST1)。
周波数領域変換部31のレンジフーリエ変換部33は、アジマスフーリエ変換部32からフーリエ変換後の受信データを受けると、その受信データをレンジ方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信データSf(fτ,fη)を位置ずれ補正部34に出力する(図5のステップST2)。
位置ずれ補正部34の補正係数乗算部36−n(n=1,2,・・・,N)は、補正係数算出部35−nが位置ずれの補正係数Cn(fτ,fη)を算出すると、その補正係数Cn(fτ,fη)をレンジフーリエ変換部33から出力された受信データSf(fτ,fη)に乗算することで、その受信データSf(fτ,fη)における結像位置の位置ずれを補正し、位置ずれ補正後の信号Sf n(fτ,fη)(n=1,2,・・・,N)を時間領域変換部37に出力する(図5のステップST4)。
即ち、補正係数乗算部36−1は、補正係数C1(fτ,fη)を受信データSf(fτ,fη)に乗算することで、位置ずれ補正後の信号Sf 1(fτ,fη)をレンジ逆フーリエ変換部38−1に出力し、補正係数乗算部36−2は、補正係数C2(fτ,fη)を受信データSf(fτ,fη)に乗算することで、位置ずれ補正後の信号Sf 2(fτ,fη)をレンジ逆フーリエ変換部38−2に出力する。また、補正係数乗算部36−Nは、補正係数CN(fτ,fη)を受信データSf(fτ,fη)に乗算することで、位置ずれ補正後の信号Sf N(fτ,fη)をレンジ逆フーリエ変換部38−Nに出力する。
即ち、時間領域変換部37のレンジ逆フーリエ変換部38−n(n=1,2,・・・,N)は、補正係数乗算部36−nから出力された位置ずれ補正後の信号Sf N(fτ,fη)をレンジ方向に逆フーリエ変換して、逆フーリエ変換後の信号をアジマス逆フーリエ変換部39−nに出力する(図5のステップST5)。
時間領域変換部37のアジマス逆フーリエ変換部39−n(n=1,2,・・・,N)は、レンジ逆フーリエ変換部38−nから逆フーリエ変換後の信号を受けると、逆フーリエ変換後の信号をアジマス方向に逆フーリエ変換して、逆フーリエ変換後の信号を時間領域の補正信号Scmp n(τ,η)として抽出結合部40に出力する(図5のステップST6)。
抽出結合部40は、時間領域の補正信号Scmp 1(τ,η)〜Scmp N(τ,η)に対応しているチャープ信号のチャープレートKr nを認識すると、時間領域の補正信号Scmp 1(τ,η)〜Scmp N(τ,η)から、チャープ信号のチャープレートKr nに対応する信号をそれぞれ抽出する(図5のステップST7)。
即ち、抽出結合部40は、時間領域の補正信号Scmp 1(τ,η)からチャープレートKr 1に対応する信号を抽出し、時間領域の補正信号Scmp 2(τ,η)からチャープレートKr 2に対応する信号を抽出し、時間領域の補正信号Scmp N(τ,η)からチャープレートKr Nに対応する信号を抽出する。
そして、抽出結合部40は、チャープ信号のチャープレートKr 1〜Kr Nに対応する信号を抽出すると、チャープレートKr 1〜Kr Nに対応する信号を結合することで、全てのアジマス時刻ηにおいて、結像位置の位置ずれが解消されている信号を得る(図5のステップST8)。
表示器24は、信号処理器23の画像再生部41により再生されたSAR画像をディスプレイに表示する。
また、画像再生部41により再生されたSAR画像は記憶装置22に記録される。
また、この実施の形態1では、パルス間変調によるアジマス時刻毎のレンジチャープレートの切り換えに対処することができる。
上記実施の形態1では、周波数領域変換部31が、デジタル受信信号Sr[η,τ]を2次元周波数空間上の受信データSf(fτ,fη)に変換し、位置ずれ補正部34が、チャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Cn(fτ,fη)を2次元周波数空間上の受信データSf(fτ,fη)に乗算することで、結像位置の位置ずれを補正するものを示したが、この実施の形態2では、デジタル受信信号Sr[η,τ]をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信データにおける結像位置の位置ずれを補正するものについて説明する。
即ち、この実施の形態2では、レンジ方向にはフーリエ変換せずに、レンジ方向における結像位置の位置ずれを時間軸上で補正するものについて説明する。
図8及び図9において、図2及び図3と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
この実施の形態2では、周波数領域変換部31がアジマスフーリエ変換部32を備えているが、レンジフーリエ変換部33を備えていない。
また、時間領域変換部37がアジマス逆フーリエ変換部39−n(n=1,2,・・・,N)を備えているが、レンジ逆フーリエ変換部38−nを備えていない。
補正係数算出部43−n(n=1,2,・・・,N)はチャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Ct n(fη)を算出する処理を実施する。
補正係数乗算部44−n(n=1,2,・・・,N)は補正係数算出部43−nにより算出された補正係数Ct n(fη)をアジマスフーリエ変換部32から出力された受信データに乗算することで、レンジ方向における結像位置の位置ずれを時間軸上で補正する処理を実施する。
図8では、補正係数算出部43−nがチャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Ct n(fη)を算出する例を示しているが、予め、チャープレートKr nに対応する位置ずれの補正係数Ct n(fη)を保持しておくようにしてもよい。
ただし、信号処理器23の構成要素が専用のハードウェアで実現されるものに限るものではなく、信号処理器23がソフトウェア、ファームウェア、または、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されるものであってもよい。
信号処理器23がソフトウェアやファームウェアなどで実現される場合、アジマスフーリエ変換部32、位置ずれ補正部42、アジマス逆フーリエ変換部39−1〜39−N 、抽出結合部40及び画像再生部41の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムを図4に示すメモリ71に格納し、コンピュータのプロセッサ72がメモリ71に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
周波数領域変換部31のアジマスフーリエ変換部32は、記憶装置22に記憶されているデジタル受信信号Sr[η,τ]を取得して、そのデジタル受信信号Sr[η,τ]をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信データを位置ずれ補正部42に出力する。
即ち、補正係数乗算部44−1は、補正係数Ct 1(fη)をアジマスフーリエ変換部32から出力された受信データに乗算することで、位置ずれ補正後の信号をアジマス逆フーリエ変換部39−1に出力し、補正係数乗算部44−2は、補正係数Ct 2(fη)をアジマスフーリエ変換部32から出力された受信データに乗算することで、位置ずれ補正後の信号をアジマス逆フーリエ変換部39−2に出力する。また、補正係数乗算部44−Nは、補正係数Ct N(fη)をアジマスフーリエ変換部32から出力された受信データに乗算することで、位置ずれ補正後の信号をアジマス逆フーリエ変換部39−Nに出力する。
上記実施の形態1,2では、レーダセンサ1により観測されるドップラー帯域が観測時のパルス繰返し周波数(Pulse Repetition Frequency:PRF)以下であることを前提としている。
しかし、スポットライトモード、スライディングスポットライトモードやTOPSなどのように、ビーム走査を実施する観測方式では、観測領域内のドップラー周波数以上のPRFで観測することは、データ量の増大を招くため、一般的には瞬時的なドップラー帯域がPRF以下となる観測を行っている。
この実施の形態3では、レーダセンサ1がビーム走査を実施する観測方式を採用している場合の結像位置の位置ずれ補正について説明する。
図10及び図11において、図2及び図3と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
ドップラー周波数演算部45は例えば図11に示すドップラー周波数演算回路59で実現されるものであり、記憶装置22に記憶されている運動情報が示すプラットフォームの位置、速度及び姿勢と、レーダセンサ1の送受信アンテナ14から放射されるチャープ信号の指向方向とから、レーダセンサ1の受信信号に含まれているドップラー周波数を算出する処理を実施する。
この実施の形態3では、レーダセンサ1の送受信アンテナ14から、指向方向を変えながらチャープ信号が放射されるものとする。
ヒット分割部47は例えば図11に示すヒット分割回路60で実現されるものであり、記憶装置22に記憶されているデジタル受信信号Sr[η,τ]をヒット方向に分割する処理を実施する。
ドップラーシフト部48は例えば図11に示すドップラーシフト回路61で実現されるものであり、ヒット分割部47により分割された各受信信号のドップラー周波数をそれぞれシフトし、周波数シフト後の各受信信号を周波数領域変換部31にそれぞれ出力する処理を実施する。
ドップラーシフト戻し部49aは例えば図11に示すドップラーシフト戻し回路62で実現されるものであり、抽出結合部40により結合された各信号におけるドップラー周波数を、ドップラーシフト部48によるシフト前のドップラー周波数にそれぞれ戻す処理を実施する。
ヒット結合部49bは例えば図11に示すヒット結合回路63で実現されるものであり、ドップラーシフト戻し部49aによりドップラー周波数が元のドップラー周波数に戻された各信号をヒット方向に結合する処理を実施する。
図10の信号処理器23は、ドップラー周波数演算部45、周波数シフト部46及び周波数復元部49を上記実施の形態1における図2の信号処理器23に適用している例を示しているが、ドップラー周波数演算部45、周波数シフト部46及び周波数復元部49を上記実施の形態2における図8の信号処理器23に適用するようにしてもよい。
信号処理器23がソフトウェアやファームウェアなどで実現される場合、ドップラー周波数演算部45、ヒット分割部47、ドップラーシフト部48、アジマスフーリエ変換部32、レンジフーリエ変換部33、位置ずれ補正部34、レンジ逆フーリエ変換部38−1〜38−N、アジマス逆フーリエ変換部39−1〜39−N、抽出結合部40、ドップラーシフト戻し部49a、ヒット結合部49b及び画像再生部41の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムを図4に示すメモリ71に格納し、コンピュータのプロセッサ72がメモリ71に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
ドップラー周波数演算部45、周波数シフト部46及び周波数復元部49以外は、上記実施の形態1,2と同様であるため、ここでは、ドップラー周波数演算部45、周波数シフト部46及び周波数復元部49の処理内容を説明する。
ここで、図12はヒット分割部47によるデジタル受信信号Sr[η,τ]の分割処理を示す説明図である。
図12において、横軸のアジマス時刻ηは、アジマス方向の軸を表す時間(slow time)である。
ヒット分割部47は、デジタル受信信号Sr[η,τ]から破線で囲んでいる範囲の信号をサブアパーチャとして切り出すことで、デジタル受信信号Sr[η,τ]を分割している。
[非特許文献2]
J. Mittermayer, A. Moreira, O. Loffeld: “Spotlight SAR Data Processing Using the Frequency Scaling Algorithm,” IEEE Trans. on Geosc. and Remote Sensing, Vol. 37, No. 5, Sept. 1999, pp. 2198-2214.
また、図12の例では、各サブアパーチャの大きさが均一になるように切り出されているが、切り出した後のドップラー帯域がPRF以下になればよく、各サブアパーチャの大きさが不均一に切り出されるものであってもよい。
これにより、アジマスフーリエ変換部32の出力信号に発生するドップラーの折り返しが解消される。
即ち、ドップラーシフト戻し部49aは、下記の式(13)に示すように、ドップラー周波数演算部45により算出されたドップラー周波数の中心周波数fdc nsubから、ドップラー周波数を戻すためのシフト係数Hnsub 1[nΔη]を算出する。
即ち、ヒット結合部49bは、ドップラーシフト戻し部49aによりドップラー周波数が復元された各結合信号をサブアパーチャの信号として再配置することで、分割前のデジタル受信信号に相当するデジタル受信信号を再現する。
画像再生部41は、ヒット結合部49bにより再現されたデジタル受信信号からSAR画像を再生する。
また、画像再生部41により再生されたSAR画像は記憶装置22に記録される。
Claims (5)
- チャープ信号における周波数の変化率を変えながら、前記チャープ信号を繰り返し空間に放射し、目標に反射された前記チャープ信号の反射波を受信して、前記反射波の受信信号を出力するレーダセンサと、
前記レーダセンサの移動に伴って発生する前記受信信号における結像位置の位置ずれを補正し、位置ずれ補正後の受信信号から合成開口レーダ画像を再生する信号処理部とを備え、
前記信号処理部は、前記反射波の受信信号を周波数空間上の受信データに変換し、複数の前記変化率の情報を用いて、前記変化率毎に、前記周波数空間上の受信データにおける前記結像位置の位置ずれを補正してから前記受信データを時間領域の信号に戻し、異なる前記変化率にそれぞれ対応する前記時間領域の信号を結合することを特徴とするレーダ処理装置。 - 前記信号処理部は、
前記反射波の受信信号を周波数領域の受信データに変換する周波数領域変換部と、
前記チャープ信号における周波数の変化率毎に、当該変化率に対応する位置ずれの補正係数を前記周波数領域変換部により変換された受信データに乗算することで、前記受信データにおける前記結像位置の位置ずれを補正する位置ずれ補正部と、
前記位置ずれ補正部により位置ずれが補正された受信データを時間領域の信号に変換する時間領域変換部と、
前記チャープ信号における周波数の変化率毎に、前記時間領域変換部により変換された時間領域の信号から当該変化率に対応する信号を抽出し、各々の変化率に対応する信号を結合する抽出結合部と、
前記抽出結合部により結合された信号から合成開口レーダ画像を再生する画像再生部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のレーダ処理装置。 - 前記周波数領域変換部は、前記反射波の受信信号を周波数領域の受信データとして、アジマス周波数空間及びレンジ周波数空間からなる2次元周波数空間上の受信データに変換し、
前記位置ずれ補正部は、前記チャープ信号における周波数の変化率毎に、当該変化率に対応する位置ずれの補正係数を前記2次元周波数空間上の受信データに乗算することで、前記受信データにおける前記結像位置の位置ずれを補正することを特徴とする請求項2記載のレーダ処理装置。 - 前記周波数領域変換部は、前記反射波の受信信号を周波数領域の受信データとして、アジマス周波数空間上の受信データに変換し、
前記位置ずれ補正部は、前記チャープ信号における周波数の変化率毎に、当該変化率に対応する位置ずれの補正係数を前記アジマス周波数空間上の受信データに乗算することで、前記受信データにおける前記結像位置の位置ずれを補正することを特徴とする請求項2記載のレーダ処理装置。 - 前記信号処理部は、
前記反射波の受信信号をヒット方向に分割して、前記分割した各受信信号のドップラー周波数をそれぞれシフトし、周波数シフト後の各受信信号を前記周波数領域変換部にそれぞれ出力する周波数シフト部と、
前記抽出結合部により結合された各信号におけるドップラー周波数を前記シフト前のドップラー周波数にそれぞれ戻し、前記ドップラー周波数を戻した各信号をヒット方向に結合する周波数復元部とを備えていることを特徴とする請求項2記載のレーダ処理装置。
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