以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものではない。また、以下の説明において、前後方向とは、座部に着座した患者から見て前後方向に、上下方向とは同様に上下方向に、左右方向とは同様に左右方向にそれぞれ相当する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る人工透析用椅子10を示し、この人工透析用椅子10は、基台20と、座部30と、背もたれ部40と、脚載せ部50と、支持部60と、肘掛け部70と、を備える。
基台20は、図1および図2に示すように、左右一対の脚杆21と、連結棒22と、左右一対の前部キャスター23と、左右一対の後部キャスター24と、左右一対のストッパー25と、左右一対の側壁26と、肘掛け支持台27と、肘掛けリンク28と、を含む。脚杆21、21は互いに同じもので、いずれも中間部が上側に円弧状に折れ曲がった円筒パイプ材からなる。左右の脚杆21、21は左右に間隔をあけて配置され、これら脚杆21同士は連結棒22によって連結されている。前部キャスター23は、脚杆21の前端に、また後部キャスター24は、脚杆21の後端にそれぞれ取り付けられている。ストッパー25は、脚杆21の前端下面であって、前部キャスター23の前方に出没可能に取り付けられており、人工透析用椅子10は、このストッパー25を没入により床面から浮き上げた状態で移動する。側壁26は、後述する座部30、リンク機構80および90などを取り付けるための部材であって、脚杆21の内側に取り付けられている。
肘掛け支持台27の各々は、上端部で背もたれ部40の左右両側に左右方向の軸心回りに回動可能に枢支されており、前記肘掛け部70を支持する。また、肘掛け支持台27は、肘掛けリンク28の上部に左右方向の軸心回りに回動可能に枢支されている。この肘掛けリンク28の下部は、脚杆21の上部に左右方向の軸心回りに回動可能に枢支されている。この肘掛けリンク28により、肘掛け部70は、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して、その上面を水平に維持しながら後方に移動する。
座部30は、人工透析用椅子10に着座した患者の臀部ないし大腿部を載せるためのもので、前記左右一対の側壁26に支持されている。
背もたれ部40は、患者の上半身を支えるもので、座部30の後側に配置され、左右方向の軸心回りにリクライニング動作可能である。
脚載せ部50は、患者の脚部を載せる。ここで、脚載せ部50に載せられる患者の脚部は、患者の下半身における膝から下のふくらはぎ部および足部の部位を含む。脚載せ部50は、座部30の前側に配置され、左右方向の軸心回りに上下に回動可能である。脚載せ部50は、第1の載置部51と、第2の載置部52と、を含む。
第1の載置部51は、座部30の前側に配置され、左右方向の軸心回りに上下に回動可能であり、その前面には、患者のふくらはぎ部を載せる平坦状のふくらはぎ載置面51aが形成されている。
第2の載置部52は、第1の載置部51の前側に配置され、左右方向の軸心回りに上下に回動可能であり、その上面には、患者の足部を載せる平坦状の足載置面52aが形成されている。
支持部60は、脚載せ部50に連結されていて、ペダル機構Pを支持する。ペダル機構Pは、座部30に臀部ないし大腿部を載せた患者に足漕ぎ運動(足を動かす運動)を行わせる据置型の運動補助具であり、人工透析用椅子10とは別の機構である。ペダル機構Pは、脚載せ部50に設置され、負荷機構(図示せず)を内蔵しかつ該負荷機構に駆動連結された軸部P5の端部が左右に突出する本体部P1と、この本体部P1から突出する軸部P5の左右端部に連結されたペダル部P4と、本体部P1の前後両端部に一体的に固定され、左右水平方向に延びる棒状の前後バーP2,P3とを有する。
図2に示すように、支持部60は、左右一対の取付部61と、突出部62と、を含む。取付部61の各々は、連結板61aと、取付片61bと、2つの孔61cと、を含む。連結板61aは、前後方向かつ垂直方向に延びる平板状のもので、その前側上部が矩形状に切り欠かれた切り欠き部分を有する(図3参照)。取付片61bは、前後方向かつ水平方向に延びる平板状の形状を有するもので、連結板61aの後側上端に溶接等により一体化されている。より具体的には、取付片61bは、その表面が上方に向くように配置されて、連結板61aにおける切り欠き部分の後方かつ上端の位置に溶接されている。孔61cの各々は、取付片61bに前後方向に所定の間隔をあけて形成されている。
突出部62は、前後方向から見た正面視において、上方向に凸な曲線形状をなすように折り曲げられた略コ字形状を有する円筒管状の部材からなり(図3参照)、取付部61の前端部に一体に連結されている。より具体的には、突出部62は、上下方向に延びる左右の縦部62aと、この縦部62aの上端部間に接続された横部62bと、を含む。
縦部62aの各々は、連結板61aの前端部に一体に接合されている。縦部62aの各々は、連結板61aの長手方向(前後方向)に直交する方向(上方向)に延びて、取付片61bにおける切り欠き部分下側の前端部に溶接されている。横部62bは、縦部62aの各々の上端から延設されている。以上の構成により、突出部62は、取付部61の連結板61aに連続している。
左右一対の取付部61は、第2の載置部52に取り付けられている。より具体的には、図3に示すように、左右一対の取付片61bは、孔61cの各々にねじ61dを下方から挿通して、第2の載置部52の基体52b下面部分に螺合締結することで、第2の載置部52に取り付けられる。この取付状態で、突出部62は、第2の載置部52の前側を足載置面52aよりも上方に突出するように延びている。
ここで、図4に示すように、第1の載置部51が前傾した垂下状態となり、第2の載置部52が水平状態となっている状態でペダル機構Pを脚載せ部50に設置した場合、その本体部P1は、その前側が下方に向くように傾斜した状態で、足載置面52aの上方に配置される。前側バーP2は、第2の載置部52の足載置面52a上に置かれ、突出部62につかえた状態となる。後側バーP3は、第1の載置部51のふくらはぎ載置面51aに接触する。この前後のバーP2,P3により本体部P1を第1の載置部51と突出部62との間にて突っ張り状態で支えることで、脚載せ部50上にペダル機構Pを支持した状態で設置するようにしている。
患者は、図4に示す状態の人工透析用椅子10に座った状態で、ペダル部P4に足を掛けて、人工透析中に足漕ぎ運動を行う。このとき、ペダル機構Pは、患者による足漕ぎ運動が行われても、支持部60よりも前方に移動しない。より具体的には、ペダル機構Pの前側バーP2が第2の載置部52に連結された支持部60の突出部62につかえているため、患者が足漕ぎ運動を行っても、ペダル機構Pが支持部60の突出部62に突き当たって前方にずれないようになっている。このため、ペダル機構Pは、第1の載置部51および第2の載置部52に安定的に設置された状態となる。
本発明の第1の実施形態による人工透析用椅子10は、さらに、傾倒リンク機構80(傾倒手段)と、昇降リンク機構90(昇降手段)とを、含む。
傾倒リンク機構80は、図5に示すように、背もたれアクチュエータ81と、背もたれブラケット82と、レバー83と、アーム84と、回転リンク85と、座部ブラケット86と、を備える。
背もたれブラケット82は、背もたれ部40を支持し、かつ、座部30と背もたれ部40とを連結している。背もたれブラケット82は、左右方向に水平に延びる上下2つの横枠82aと、横枠82aの左右端部に連結された左右一対の延伸部82bと、を含む。横枠82aの各々は、断面略矩形状の形状を有する。横枠82aの各々は、背もたれ部40における背面(後面)の下側に、上下方向に所定の間隔をあけて取り付けられる。また、背もたれ部40の下側に配置されている横枠82aの下端にレバー83の上端が固定されている。左右一対の延伸部82bは、側面視で略L字状の形状を有する。延伸部82bの各々は、背もたれ部40における左右両側部の下側に配置されている。延伸部82bの下部は、座部30における左右両側の後側と支点x2にて枢支されている。
アーム84の上端は、下側に配置されている横枠82aの下端に固定されている。アーム84の下部は、回転リンク85の上端と支点x3にて枢支されている。
座部ブラケット86は、水平部86aと、水平部86aの一端に連続する傾斜部86bと、を含む。水平部86aの上端は、座部30の下側に取り付けられている。傾斜部86bの端部は、回転リンク85の下部と支点x4にて枢支されている。
背もたれアクチュエータ81は、基台20の側壁26に固定された本体部81aと、ロッド81bと、を含む。ロッド81bの先端部は、レバー83の下部と支点x1にて枢支されている。背もたれアクチュエータ81は、図示しないが、操作部の信号を受けた制御装置からの信号によって作動制御されるようになっている。
以上の構成により、背もたれアクチュエータ81のロッド81bは、本体部81aに内蔵される駆動源(図示せず)の駆動により、本体部81aに対して相対移動することで、アクチュエータ81が伸縮する。アクチュエータ81が最大限に伸長したときに、背もたれ部40が起立した状態(図5および図8(a)参照)となる一方、最大限に収縮したときに、背もたれ部40が水平状態(図7、図8(c)および(d)参照)となる。
すなわち、図6および図7に示すように、背もたれアクチュエータ81が収縮すると、レバー83の下部が支点x1にて回動しながら前方に移動し、レバー83に固定されている背もたれブラケット82が支点x2にて回動しながら後方に移動する。このように、背もたれ部40は、後ろ回りにリクライニング動作する。
また、図5に示す状態から背もたれアクチュエータ81が収縮すると、図6に示すように、アーム84の下部が支点x3にて回動しながら前方に移動し、アーム84の下部に枢支されている回転リンク85が支点x4を回動中心として前方に回転する。回転リンク85が前方に回転すると、回転リンク85の上端が座部30の下面側に形成された凸部30aに接触する。このとき、回転リンク85の上端が凸部30aを介して座部30を上方に押し上げる。その結果、座部30は、支点x2および支点x4を回動中心として、座部30の前側が後側よりも高くなるように後ろ回りに傾くようになる。
さらに、図6に示す状態から背もたれアクチュエータ81が収縮すると、図7に示すように、回転リンク85は凸部30aの位置を超えて前方に回転し、回転リンク85の上端が凸部30aに接触しないようになる。その結果、座部30は、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して、座部30の前側が後側と同じ高さになるように前回りに傾くようになる。
次に、昇降リンク機構90について説明する。図5に示すように、昇降リンク機構90は、脚載せアクチュエータ91と、連結ブラケット92と、回動ブラケット93と、脚載せリンク94と、を備える。
連結ブラケット92の前部は、第1の載置部51の基体51bの上端に取り付けられている。第1の載置部51の基体51bの上部は、座部30の前側かつ下方の位置において、側壁26と支点y2にて枢支されている。回動ブラケット93は側面視で略L字状の形状を有し、回動ブラケット93の上端が側壁26の上部に取り付けられ、回動ブラケット93の下部が脚載せリンク94の上部と支点y3にて枢支されている。第1の載置部51の基体51bの下部は、基体52bと支点y4にて枢支されている。脚載せリンク94の下部は、基体52bと支点y5にて枢支されている。
脚載せアクチュエータ91は、基台20の側壁26に固定された本体部91aと、ロッド91bと、を含む。脚載せアクチュエータ91のロッド91bの先端部は、連結ブラケット92の後部と支点y1にて枢支されている。脚載せアクチュエータ91は、図示しないが、操作部の信号を受けた制御装置からの信号によって作動制御されるようになっている。
以上の構成により、脚載せアクチュエータ91のロッド91bは、本体部91aに内蔵される駆動源(図示せず)の駆動により、本体部91aに対して相対移動することで、アクチュエータ91が伸縮する。アクチュエータ91が最大限に収縮したときに、第1の載置部51が垂下した状態(図5および図8(a)参照)となる一方、最大限に伸長したときに、第2の載置部52の足載置面52aが座部30よりも高い位置で水平に維持された状態(図8(d)参照)となる。
すなわち、図5に示す状態から脚載せアクチュエータ91が伸長すると、図7に示すように、連結ブラケット92は、支点y1にて回動しながら前方に押し出され、連結ブラケット92に取り付けられている第1の載置部51の基体51bを押し上げる。このとき、基体51bは、支点y2を回動中心として上方向に回動する。また、脚載せリンク94も、第1の載置部51の基体51bとともに、支点y3を回動中心として上方向に回動する。その結果、第1の載置部51は、上方向に回動する。
また、図7に示すように、脚載せアクチュエータ91が伸長すると、第2の載置部52の基体52bは、第1の載置部51の基体51bおよび脚載せリンク94における上方向への回動とともに、支点y4およびy5を回動中心として上昇する。その結果、第2の載置部52は、第1の載置部51の上方回動に連動して、足載置面52aを水平に維持した状態で上昇する。
次に、図8を参照して、人工透析用椅子10の動作を説明する。なお、図8(a)〜(d)に示す人工透析用椅子10のいずれの状態であっても、人工透析用椅子10に着座した患者が足を伸ばしてペダル機構Pのペダル部P4に載せ、軸部P5を軸心にペダル部P4を回して足漕ぎ運動を行うことができるようになっている。
図8(a)に示す人工透析用椅子10において、座部30は水平状態となり、背もたれ部40は起立状態となっている。また、第1の載置部51は垂下状態となり、第2の載置部52は水平状態となっている。肘掛け部70は水平状態となっている。
人工透析用椅子10に付属する操作部(図示せず)により、患者もしくは使用者は、図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態に人工透析用椅子10を移行させる。このとき、背もたれ部40は後ろ回りにリクライニング動作する。座部30は、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して、座部30の前側が後側よりも高くなるように後ろ回りに傾く。その結果、図8(b)に示す状態において、背もたれ部40は後方に傾斜した状態となり、座部30の前側は後側よりも高くなるように傾斜した状態となる。
ここで、図8(b)の状態における座部30の傾斜角度は、15°であり、最大限に後ろ回りに傾斜させた角度を示している。なお、座部30の最大傾斜角度は、10°〜20°の範囲の角度に設定されていることが好ましい。
このように、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して座部30の前側が後側よりも高くなることから、患者は、背もたれ部40のリクライニング時に前方へ移動することなく座部30および背もたれ部40に凭れることができる。その結果、特に図8(b)に示す状態において患者が足漕ぎ運動を行うときに、患者は、背もたれ部40のリクライニング時でも安定した姿勢で人工透析を受けながらペダル機構Pによる足漕ぎ運動を行うことができる。特に、人工透析を受ける患者は体力が衰えている場合があるため、足漕ぎ運動の際、患者の臀部ないし大腿部が座部30からずり下がるおそれがある。しかしながら、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して座部30の前側が後側よりも高くなることから、人工透析を受ける患者は安楽な姿勢で安定して足漕ぎ運動を行うことができる。
また、図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態に人工透析用椅子10が移行すると、第1の載置部51は上方に回動する。第2の載置部52は、第1の載置部51の上方回動に連動して、足載置面52aを水平に維持した状態で上昇する。その結果、図8(b)に示す状態において、第1の載置部51は前方に傾斜した状態となり、第2の載置部52は水平に維持された状態となる。
次に、図8(b)に示す状態から図8(c)に示す状態に人工透析用椅子10を移行させる。このとき、背もたれ部40はさらに後ろ回りにリクライニング動作する。座部30は、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して、座部30の前側が後側と同じ高さになるように前回りに傾く。その結果、図8(c)に示す状態において、背もたれ部40は水平状態となり、座部30は水平状態に戻る。
また、第1の載置部51がさらに上方に回動すると、第2の載置部52は、第1の載置部51の上方回動に連動して、足載置面52aを水平に維持した状態で上昇する。その結果、図8(c)に示す状態において、第1の載置部51は水平状態となり、第2の載置部52の足載置面52aは水平に維持された状態となる。
このように、図8(c)においては、座部30、背もたれ部40、第1の載置部51、および第2の載置部52はいずれも水平状態となる。すなわち、人工透析用椅子10の全体はベッド状態となる。
次に、図8(c)に示す状態から図8(d)に示す状態に人工透析用椅子10を移行させる。このとき、座部30および背もたれ部40は水平状態を維持して動作しない。第1の載置部51はさらに上方に回動し、第2の載置部52は、第1の載置部51の上方回動に連動して、足載置面52aを水平に維持した状態で座部30よりも高い位置まで上昇する。その結果、図8(d)に示す状態において、第1の載置部51は後方に傾斜した状態となり、第2の載置部52の足載置面52aは座部30よりも高い位置で水平に維持された状態となる。
ここで、図8(a)に示す状態から図8(d)に示す状態に人工透析用椅子10を移行させても、前述の昇降リンク機構90により、第2の載置部52の足載置面52aは、水平を維持している。すなわち、ペダル機構Pは、水平に維持された状態の足載置面52a上に設置される。このため、第2の載置部52の上下位置にかかわらず、ペダル機構Pを水平状態に保たれた足載置面52aに設置できる。その結果、患者は、常に安楽な姿勢で安定してペダル機構Pにより足を動かす運動をすることができる。また、図8(d)に示す状態により、足漕ぎ運動しているときに***性貧血が起こった場合にも応急措置の姿勢を取ることが可能である。
なお、人工透析用椅子10を図8(a)に示す状態から図8(c)に示す状態に移行させると、肘掛け部70は、背もたれ部40のリクライニング動作に連動して、肘掛け部70の上面を水平に維持しながら下降する。
以上により、本発明の第1の実施形態による人工透析用椅子10では、第2の載置部52に連結された支持部60によって、脚載せ部50にペダル機構Pを安定して支持することができる。このため、ペダル機構Pは脚載せ部50(第1の載置部51および第2の載置部52)から前方にずれることなく、人工透析時において、椅子に腰掛けた患者に安楽な姿勢で安定して足を動かす運動をさせることができる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る人工透析用椅子10は、図9に示すように、基台20と、座部30と、背もたれ部40と、脚載せ部53と、支持部63と、肘掛け部70と、を備える。すなわち、本発明の第2の実施形態に係る人工透析用椅子10は、本発明の第1の実施形態に係る脚載せ部50および支持部60を脚載せ部53および支持部63に置き換えたものである。
ここで、基台20、座部30、背もたれ部40、肘掛け部70、およびペダル機構Pは、第1の実施形態のものと同様の構成であるため、詳細の説明は省略する。また、図12および13に示す傾倒リンク機構80および昇降リンク機構90についても、第1の実施形態のものと同様の構成であるため、詳細の説明は省略する。
脚載せ部53は、患者の脚部を載せる。ここで、脚載せ部53に載せられる患者の脚部は、患者の下半身における膝から下のふくらはぎ部の部位を含む。脚載せ部53は、座部30の前側に配置され、左右方向の軸心回りに上下に回動可能であり、その前面は、患者のふくらはぎ部を載せる平坦状のふくらはぎ載置面53aが形成されている。
支持部63は、脚載せ部53に連結されていて、ペダル機構Pを支持する。支持部63は、図10に示すように、左右一対の取付部64と、突出部65と、を含む。
取付部64の各々は、連結板64aと、取付片64bと、第1の孔64cと、第2の孔64dと、を含む。連結板64aは、前後方向かつ垂直方向に延びる平板状のものである。取付片64bは、連結板64aの一端に連接されていて、左右方向から見た側面視で略三角形の形状を有する。第1の孔64cおよび第2の孔64dは上下方向に所定の間隔をあけて取付片64bに形成されており、第1の孔64cは取付片64bの下側に形成され、第2の孔64dは取付片64bの上側に形成されている。
図12に示すように、支持部63の第1の孔64cは、脚載せリンク94の下部と支点y4にて枢支されていて、支持部63の第2の孔64dは、基体53bの下部と支点y5にて枢支されている。このため、図12の状態から脚載せアクチュエータ91が伸長すると、図13に示すように、支持部63は、脚載せ部53の基体53bおよび脚載せリンク94における上方向への回動とともに、支点y4およびy5を回動中心として上昇する。その結果、支持部63は、脚載せ部53の上方回動に連動して、支持部63の連結板64aを水平に維持した状態で上昇するようになっている。
突出部65は、前後方向から見た正面視において、上方向に凸な曲線形状をなすように折り曲げられた略コ字形状を有する円筒管状の部材からなり(図10参照)、取付部64の前端部に一体に連結されている。突出部65は、上下方向に延びる左右の縦部65aと、この縦部65aの上端部間に接続された横部65bと、を含む。縦部65aの各々は、連結板64aの前端部に一体に接合されている。より具体的には、縦部65aの各々は、連結板64aの長手方向(前後方向)に直交する方向(上方向)に延びて、取付片64bにおける切り欠き部分下側の前端部に溶接されている。横部65bは、縦部65aの各々の上端から延設されている。以上の構成により、突出部65は、取付部64の連結板64aに連続している。
ここで、図11に示すように、脚載せ部53が前傾した垂下状態でペダル機構Pを脚載せ部53に設置した場合、その本体部P1は、その前側が下方に向くように傾斜した状態で、支持部63の連結板64aの上方に配置される。前側バーP2は、連結板64aの上部に置かれ、突出部65につかえた状態となる。後側バーP3は、脚載せ部53のふくらはぎ載置面53aに接触する。この前後のバーP2,P3により本体部P1を脚載せ部53と突出部65との間にて突っ張り状態で支えることで、支持部63の連結板64a上にペダル機構Pを支持した状態で設置するようにしている。
患者は、図11に示す状態の人工透析用椅子10に座った状態で、ペダル部P4に足を掛けて、人工透析中に足漕ぎ運動を行う。このとき、ペダル機構Pは、患者による足漕ぎ運動が行われても、支持部63よりも前方に移動しない。より具体的には、ペダル機構PのバーP2が脚載せ部53に連結された支持部63の突出部65につかえているため、患者が足漕ぎ運動を行っても、ペダル機構Pが支持部63の突出部65に突き当たって前方にずれないようになっている。このため、ペダル機構Pは、脚載せ部53に安定的に設置された状態となる。
次に、図14を参照して、人工透析用椅子10の動作を説明する。
図14(a)に示す人工透析用椅子10において、脚載せ部53は垂下状態となっている。図14(a)に示す状態から図14(b)に示す状態に人工透析用椅子10が移行すると、脚載せ部53は上方に回動する。支持部63は、脚載せ部53の上方回動に連動して、取付部64の連結板64aを水平に維持した状態で上昇する。その結果、図14(b)に示す状態において、脚載せ部53は前方に傾斜した状態となり、連結板64aは水平に維持された状態となる。
また、脚載せ部53はさらに上方に回動すると、支持部63は、脚載せ部53の上方回動に連動して、取付部64の連結板64aを水平に維持した状態で上昇する。その結果、図14(c)に示す状態において、脚載せ部53は水平状態となり、連結板64aは水平に維持された状態となる。
次に、図14(c)に示す状態から図14(d)に示す状態に人工透析用椅子10を移行させる。脚載せ部53はさらに上方に回動し、支持部63は、脚載せ部53の上方回動に連動して、取付部64の連結板64aを水平に維持した状態で座部30よりも高い位置まで上昇する。その結果、図14(d)に示す状態において、脚載せ部53は後方に傾斜した状態となり、連結板64aは座部30よりも高い位置で水平に維持された状態となる。
このように、図14(a)に示す状態から図14(d)に示す状態に人工透析用椅子10を移行させても、昇降リンク機構90により、支持部63における連結板64aは、水平を維持している。すなわち、ペダル機構Pは、水平に維持された状態の連結板64a上に設置される。このため、支持部63の上下位置にかかわらず、ペダル機構Pを水平状態に保たれた連結板64aに設置できる。その結果、患者は、常に安楽な姿勢で安定して足を動かす運動をすることができる。また、図8(d)に示す状態により、足漕ぎ運動しているときに***性貧血が起こった場合にも応急措置の姿勢を取ることが可能である。
以上により、本発明の第2の実施形態による人工透析用椅子10では、脚載せ部53に連結された支持部63によって、脚載せ部53にペダル機構Pを安定して支持することができる。このため、ペダル機構Pは脚載せ部53から前方にずれることなく、人工透析時において、椅子に腰掛けた患者に安楽な姿勢で安定して足を動かす運動をさせることができる。
[その他の実施形態]
本発明の第1の実施形態の人工透析用椅子10では、支持部60の突出部62を上方向に凸な曲線形状をなすように折り曲げられた略コ字形状に形成したが、この形態に限定されない。すなわち、突出部62は、上方に突出するように延びている形状であれば、壁状または格子状等の種々の形状に形成されていてもよい。本発明の第2の実施形態における支持部63の突出部65についても同様である。
本発明の第1の実施形態の人工透析用椅子10では、運動補助具として、患者に足漕ぎ運動を行わせるペダル機構Pを用いたが、この形態に限定されない。すなわち、足を動かす運動を行わせるものであれば、どのような運動補助具でもよい。他の運動補助具としては、たとえば、足踏み運動を行わせるステップ機構、足を左右に開閉させる運動を行わせる機構などでもよい。本発明の第2の実施形態についても同様である。
本発明の第1の実施形態の人工透析用椅子10では、ペダル機構Pを脚載せ部50に載せて設置した形態であるが、この形態に限定されない。すなわち、ねじ等の締結手段を用いて、ペダル機構Pの前側バーP2を支持部60に取り付けることにより、ペダル機構Pが支持部60から離れないように固定してもよい。さらに、ペダル機構Pの設置状態をより安定させるために、布バンド等の固定手段を用いて、ペダル機構Pの後側バーP3を脚載せ部50に取り付けるのが好ましい。本発明の第2の実施形態についても同様である。要は、運動補助具は、支持部に支持されていればよい。
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。