以下、本実施の形態について図に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず本実施の形態の非可逆回路装置、および当該非可逆回路装置に含まれる非可逆回路素子の構成について説明する。図1は非可逆回路装置全体の外観態様を示しており、図2はそのII−II線に沿う部分で切った断面態様を示している。また図3は、非可逆回路装置を構成する各部材の配置態様を示している。なお図2における左右方向は、(特に非可逆回路素子P1の部分において)図1中の一点鎖線に沿う部分、すなわち後述する薄葉基板30に形成された導体薄膜32に含まれる、細長い導体端子の延びる方向に沿う方向に対応する。
図1および図2を参照して、本実施の形態の非可逆回路装置100は、非可逆回路素子P1と、被実装部P2とを有している。非可逆回路素子P1は、磁性体10と、磁性体固定筐体20と、薄葉基板30と、ACF40と、磁石50と、ヨーク60と、接着フィルム70とを主に有している。非可逆回路素子P1は、はんだボール80により、回路基板90としての被実装部P2の上に表面実装されている。これらの部材は、基本的に図3に示す位置に配置され組み立てられることにより、図1および図2に示すような非可逆回路装置100の構成をなしている。以下、上記の各構成部材の構成等について説明する。
図4は磁性体10の外観態様を示しており、図5(A),(B)は磁性体10の平面形状(磁性体10に隣接する裏面導体13などを含む)を示している。また図5(C)は図5(B)のVC−VC線に沿う部分の概略断面図である。図1〜図3および図4〜図5を参照して、磁性体10は、たとえば四角形(正方形)の平面形状を有する平板状の部材であり、たとえば平面視における横方向(図5(A)の左右方向)の寸法が4mm、平面視における縦方向(図5(A)の上下方向)の寸法が4mm、厚み方向(図5(C)の上下方向)の寸法が0.5mmとなっている。ただし上記の磁性体10の外形寸法および形状は一例であり、非可逆回路素子P1が使用される周波数帯域および耐電力性などの回路側の要求仕様によって変化してもよい。たとえば磁性体10は、たとえば平面視において四角形以外の多角形状または円形状などを有していてもよい。
図5(C)などに示すように磁性体10は1層のみからなるものであってもよい。しかし図5(D)を参照して、磁性体10は複数の磁性体層10C,10Dを含み、これらが積層された構成を有していてもよい。図5(D)においては2つの磁性体層10C,10Dが積層されることで磁性体10が構成されているが、これに限らず3層以上の磁性体層を含む構成であってもよい。
また磁性体層10C,10Dを含む磁性体10の下側(他方側)、すなわち最も下側の磁性体層10Dの下側に、たとえば下部ヨーク61が接着固定されていてもよい。下部ヨーク61は磁性体10と同様の平面形状を有し、かつ後に詳述するヨーク60と同一の素材(金属材料)により形成された金属板であり、ヨーク60と同様の機能を有する。さらに下部ヨーク61の下側には金属板62が接着固定されていてもよい。この金属板62は、非可逆回路装置100が電気的に動作した際のエネルギのロスが原因となって副次的に発生する熱を一時的にため込むヒートシンクとしての機能を有している。ただし金属板62を有さず磁性体層10C,10Dの下側に下部ヨーク61のみが接着固定され、この下部ヨーク61が金属板62のヒートシンクとしての機能を兼ね備えるものであってもよい。
以上のように、本実施の形態においては、複数の磁性体層10C,10Dを含む磁性体10の下側に、少なくとも1層の金属板が接合されていてもよい。
磁性体10は、鉄を主成分とする金属材料、フェライト、磁性粉と樹脂とを混合した複合磁性材料からなる群から選択されるいずれかによって構成される。しかし磁性体10の構成材料としてはフェライトが最も多用される。なお磁性体10の構成材料としてフェライトを用いる場合には、たとえば高周波領域での磁気損失が小さい材料として知られる希土類ガーネット型フェライトが用いられてもよい。
図5(A)に示すように、磁性体10の上側(一方側)の磁性体主表面10Aは、磁性体10を構成するたとえばフェライトの素地が露出している。これに対して磁性体10の下側(他方側)の磁性体主表面10Bを構成する磁性体10のたとえばフェライトの素地のほぼ全面の上には、接地電位を有する薄膜層(電極)としての裏面導体13が均一に形成されている。なお裏面導体13は、磁性体10の下側の磁性体主表面10B上のみに配置されており、磁性体10の上側の磁性体主表面10A上には配置されていない。これにより、磁性体主表面10A,10Bの両面に裏面導体13を形成する場合に比べて、その製造コスト等を削減することができる。なお図5(D)のような磁性体10および下部ヨーク61、金属板62を有する場合には、これらのうち最下層である金属板62の下側(他方側)上のみに裏面導体13が配置されてもよい。
裏面導体13はたとえば厚みが約3μmの銅の薄膜と、その表面上に形成されたたとえば厚みが1μm以上2μm以下のニッケルの薄膜と、さらにその表面上に形成されたたとえば厚みが約0.02μmの金の薄膜とにより構成される。銅の薄膜の表面上のニッケルの薄膜および金の薄膜は、裏面導体13の酸化防止およびはんだ濡れ性向上を目的として施されている。
特に図5(B)に示すように、磁性体10の下側の磁性体主表面10B上のみに、ソルダレジストSRが形成されている。上記のように磁性体主表面10B上には裏面導体13が形成されているため、ソルダレジストSRは裏面導体13の下側(他方側すなわち回路基板90側)の表面上に形成されている。ソルダレジストSRははんだボール80を取り付けるための位置決め用に形成されるものであり、たとえば一般公知の樹脂材料により形成されている。はんだボール80が接合する部分とほぼ重なる領域にはソルダレジストSRが配置されないソルダレジスト開口部SRCが形成されている。図5中には示されないが後述するようにソルダレジスト開口部SRCにはパッド電極が形成されてもよい。
ソルダレジストSRは、クロムなどのはんだに濡れない金属材料の薄膜からなってもよいし、エポキシ樹脂系またはポリイミド系の樹脂からなってもよい。ただし本実施の形態においてはソルダレジストSRはエポキシ樹脂系またはポリイミド系(樹脂)からなることが特に好ましい。そのようにすれば、ソルダレジストSRの応力緩和効果を高めることができる。具体的には、樹脂からなるソルダレジストSRの厚みは30μm以上40μm以下程度であるが、この厚みは金属材料のソルダレジストSRの厚みに比べて厚くなる。またこの厚みにより、樹脂からなるソルダレジストSRははんだボール80が取り付けられる部位を取り囲むように覆うことができる。これにより、ソルダレジストSRがはんだボール80を取り囲む領域に生じる応力を緩和する効果が大きくなる。すなわち、外力または熱応力が加わった場合に磁性体10に対して懸念されるチッピングまたはクラックなどの不良を抑制することができる。
図6は磁性体固定筐体20の外観態様を示しており、図7は磁性体固定筐体20の平面形状を示している。図1〜図3および図6〜図7を参照して、本実施の形態の磁性体固定筐体20は、たとえば四角形(正方形)の平面形状を有するように形成されている。本実施の形態の磁性体固定筐体20は、その平面視における中央部に、磁性体10を固定可能とすべく磁性体10の外径形状(正方形の平面形状)に合わせた形状の固定可能部24が形成されている。本実施の形態の固定可能部24は、磁性体固定筐体20の上側(一方側)の筐体主表面20A(一方の筐体主表面)からそれとは反対側の下側(他方側)の筐体主表面20B(他方の筐体主表面)まで磁性体固定筐体20を貫通する開口部として形成されている。これにより磁性体固定筐体20(固定可能部24)は、磁性体10を平面視において取り囲むように固定可能となっている。言い換えれば磁性体10は、固定可能部24において、磁性体固定筐体20に嵌め込まれるように固定されている。
本実施の形態の磁性体固定筐体20は、これを貫通する開口部を有する枠体状を有している。磁性体固定筐体20はプリント基板で、ここに固定される磁性体10とほぼ同じ厚みを有している(磁性体固定筐体20の本体の厚みは、ここに形成される後述の第1電極などの厚みの分だけ磁性体10よりも薄くなっていてもよい)。なお磁性体固定筐体20の外形の平面形状は図6に示した四角形状(正方形状)に限らず任意である。また磁性体固定筐体20は、たとえば平面視における横方向(図7(A)の左右方向)および縦方向(図7(A)の上下方向)の寸法が7.4mm、厚みが0.5mmとなっており、固定可能部24は横方向および縦方向の寸法がたとえば4.4mmで厚みが0.5mmとなっている。
本実施の形態の磁性体固定筐体20は市販のプリント基板であり、ここには非可逆回路素子P1全体に対して電気信号を入出力するための高周波回路が形成される。このため磁性体固定筐体20は、高周波特性に優れた低誘電損失の材質、具体的にはたとえば低誘電損失の熱硬化性樹脂プリント基板、フッ素系樹脂プリント基板、液晶ポリマープリント基板からなる群から選択されるいずれかの誘電体材料により形成される。液晶ポリマープリント基板はフッ素系樹脂プリント基板に比べて誘電損失はやや高く、比誘電率もやや高い。
表面実装型の非可逆回路素子を実現する観点から、磁性体の一方側に配置された非可逆回路素子の第1配線を、磁性体の一方側と反対側の他方側であり非可逆回路素子が実装される側に配置された非可逆回路素子の第2配線までに引き回して被実装部の回路基板に接続されることが必要となる。磁性体固定筐体20は、上記の高周波回路の構成部材として、筐体主表面20A上の筐体上面電極21(第1電極)と、筐体主表面20B上の筐体下面電極22(第2電極)と、貫通導体23とを有している。貫通導体23は、筐体上面電極21から筐体下面電極22まで磁性体固定筐体20を貫通しており、筐体上面電極21と筐体下面電極22とを電気的に接続している。すなわち貫通導体23は、非可逆回路素子P1において貫通導体23の上側に配置される各種配線を、貫通導体23の下側の領域まで引き回し、回路基板90と電気的に接続可能とするために形成されている。
特に図7(B)を参照して、磁性体固定筐体20についても磁性体10と同様に、下側の筐体主表面20B上(実際には真下)のみに、ソルダレジストSRが形成されており、はんだボール80が接合する部分とほぼ重なる領域にはソルダレジストSRが配置されないソルダレジスト開口部SRCが形成されている。また筐体主表面20B上には、筐体下面電極22のほか、接地電極ETEが設けられている。磁性体固定筐体20の接地電極ETEは、たとえば筐体下面電極22と同一の層として形成されており、筐体主表面20B上の領域を、その下方の回路基板90に形成された接地電極ETEと同じ電位に保つためのものである。接地電極ETEが設けられることにより、非可逆回路素子P1の高周波回路の特性が向上するとともに、はんだボール80の接続部における信頼性が向上する。ソルダレジスト開口部SRCは、筐体下面電極22とはんだボール80とを接続するためのものの他、接地電極ETEとはんだボール80とを接続するためのものとしても形成されている。
図8(A)は、図7(B)中のVIII−VIII線に沿う部分すなわち筐体下面電極22と重なる領域およびこれに隣接する領域のソルダレジストSRおよびソルダレジスト開口部SRCの平面形状および断面形状の第1例を示している。図8(B)は、図7(B)中のVIII−VIII線に沿う部分の平面形状および断面形状の第2例を示している。図9は、図7(B)中のIX−IX線に沿う部分すなわち筐体下面電極22と重なる領域以外の領域のソルダレジスト開口部SRCの断面形状の例を示している。
図8(A),(B)および図9を参照して、実際には磁性体固定筐体20の筐体主表面20Bの下側の表面上のほぼ全域に導体材料の薄膜が形成されている。ただしこの導体材料の薄膜は矩形の枠状に形成された間隙部GPにおいては存在せず、この間隙部GPに囲まれた領域の導体材料の薄膜が島状の筐体下面電極22として他の領域の導体材料の薄膜(接地電極ETEとして機能し得る)から独立した態様となっている。ただし図2においては筐体下面電極22以外の上記導体材料の薄膜(接地電極ETEとして機能し得る)は省略されている。
磁性体固定筐体20の筐体主表面20Bの下側の表面上においても、上記導体材料の薄膜を覆うようにソルダレジストSRが形成される。図8(A)の第1例においては、筐体下面電極22内のソルダレジスト開口部SRCのみにおいてソルダレジストSRが配置されておらず、間隙部GP内を埋めるようにソルダレジストSRが配置されている。これに対して図8(B)の第2例においては、筐体下面電極22内のソルダレジスト開口部SRCと、間隙部GP内との双方において、ソルダレジストSRが配置されていない。図8(A),(B)のいずれの態様が採用されてもよい。また図示されないが、間隙部GP内の一部の領域のみにソルダレジストSRが配置された態様が採用されてもよい。図8、図9ともに、ソルダレジスト開口部SRCにおいてその下地の導体材料の薄膜が露出しており、当該露出している部分はパッド電極として機能している。
図10は図7(A),(B)の平面図で示す磁性体固定筐体20の固定可能部24内に、磁性体10が固定された態様を示している。磁性体10は、固定可能部24の内壁面との間に配置される弾性接着剤12により、固定可能部24と接着固定されている。言い換えれば、磁性体10は、弾性接着剤12を介して固定可能部24の内壁面に接続されている。固定可能部24の内壁面と弾性接着剤12とが互いに接着することにより、ヒートサイクルなどの機械的な負荷に対する両者間の機械的な強度を確保することができる。
磁性体10と磁性体固定筐体20とは構成部材の線膨張係数が異なっている。具体的にはたとえば希土類ガーネット型フェライトからなる磁性体10の線膨張係数は約10ppm/Kであるのに対し、エポキシ樹脂製のプリント基板からなる磁性体固定筐体20の線膨張係数は約16ppm/Kである。このため磁性体10と磁性体固定筐体20とを接着する工程の後に行なわれる実装工程において加えられる熱負荷および環境温度の変化などによって磁性体10と磁性体固定筐体20との間には熱応力が生じ、両者の間にクラックなどの損傷が生じる可能性がある。
そこで上記のように弾性接着剤12により、磁性体10と磁性体固定筐体20とが互いに接着される。弾性接着剤12は硬化後の接着層がゴム状弾性体となる材質により形成されることが好ましい。このようにすれば、磁性体10と磁性体固定筐体20との線膨張係数の不一致に起因して生じる熱応力を緩和することができる。
なお、図10に示す磁性体10内および磁性体固定筐体20内の複数のソルダレジスト開口部SRCの寸法はすべてほぼ等しい。このようにすれば、複数のソルダレジスト開口部SRCのそれぞれに取り付けられるはんだボール80の高さを揃えることができ、複数のはんだボール80間の高さの差異に起因する段差の発生を抑制することができる。
図11は薄葉基板30の外観態様を示しており、図12は薄葉基板30の平面形状を示している。図1〜図3および図11〜図12を参照して、薄葉基板30は、磁性体10および磁性体固定筐体20の上側(一方側)の領域の少なくとも一部に配置されており、磁石50と磁性体10との間に挟まれた領域に配置されている。
薄葉基板30はたとえば平面視において四角形(正方形)状の基材よりなっており、たとえば平面視における横方向(図12(A)の左右方向)および縦方向(図12(A)の上下方向)の寸法が6.8mm、厚みが300μmとなっている。このように薄葉基板30は、平面視における寸法が磁性体固定筐体20の外縁の寸法よりもやや小さいことが好ましい。しかし上記の他の部材と同様に形状および寸法値はこれに限られない。
薄葉基板30は誘電損失が小さい有機材料を主成分とした高い可撓性を有する平板状の部材である。具体的には薄葉基板30は、低誘電損失の熱硬化性樹脂プリント基板、ポリイミドベースのフレキシブルプリント基板、フッ素系樹脂プリント基板、液晶ポリマープリント基板からなる群から選択されるいずれかの誘電体材料により形成される。薄葉基板30の厚みはおよそ25μm以上300μm以下であることが好ましい。
特に図11および図12(A),(B)を参照して、上記の他の部材と同様に、薄葉基板30も上側(一方側)の薄葉基板主表面30Aおよび下側(他方側)の薄葉基板主表面30Bを有している。薄葉基板主表面30Aはその全体が、薄葉基板30を構成する材料の素地が露出している。薄葉基板主表面30Bはその一部に導体薄膜32が形成されている。導体薄膜32は厚みが約6μm以上18μm以下の銅を主成分とする薄膜と、その表面上に形成されたたとえば厚みが3μm以上5μm以下のニッケルの薄膜と、さらにその表面上に形成されたたとえば厚みが約0.02μmの金の薄膜とにより構成される。銅の薄膜の表面上のニッケルの薄膜および金の薄膜は、導体薄膜32の酸化防止およびはんだ濡れ性向上を目的として施されている。
このように薄葉基板30は、下側(磁性体10側)の薄葉基板主表面30B上のみに、導体薄膜32が形成されている。したがって導体薄膜32は、非可逆回路素子P1において、磁性体10および磁性体固定筐体20に対向するように配置されている。また導体薄膜32は、非可逆回路装置100において、磁性体10および磁性体固定筐体20の上側(一方側)の第1配線として配置される。
特に図12(B)を参照して、薄葉基板30の導体薄膜32は、薄葉基板主表面30Bの平面視における中央部に形成された円形の中心導体と、中心導体から3方向に延びるように放散される、3本の導体端子としての直線状導体とを含んでいる。3つの直線状導体は、円形の中心導体の中心に対して互いに約120°の角度をなす方向に延びている。これら3つの直線状導体のそれぞれの一部または全部は、中心導体側と反対側の先端側において部分的に屈曲した領域を有していてもよい。
薄葉基板30を構成する誘電体材料は、導体薄膜32を支持する構造材としての役割を有している。また導体薄膜32は、伝送線路の一部をなすという役割を有している。この伝送線路は、磁性体10と磁性体固定筐体20と薄葉基板30の導体薄膜32とが一体化され、さらに磁性体10の下側の接地電極ETEと相俟って構成される。さらに薄葉基板30を構成する誘電体材料は、導体薄膜32を進行する高周波信号が作る電磁界が、磁石50の配置されている側(上側)に漏えいするのを抑制し、電気特性を向上させる役割を併せ持っている。このため薄葉基板30は誘電損失が小さい材料により形成されることが好ましい。
上記の伝送線路の特性上、磁性体10および磁性体固定筐体20の上側の主表面と、薄葉基板30の導体薄膜32とは可能な限り接近した状態で互いに接合していることが好ましい。
再度図1〜図3を参照して、この磁性体10および磁性体固定筐体20の上側の主表面と、薄葉基板30の導体薄膜32とを互いに可能な限り接近した状態で接合固定させているのが、薄葉基板30と磁性体10(磁性体固定筐体20)との間に配置される接着部材としてのACF40である。
ACF40(Anisotropic Conductive Film)は、上記の他の部材と同様に、たとえば四角形(正方形)の平面形状を有するフィルム状の部材である。ACF40は、厚みが20μm程度のフィルム状の接着層の内部に、径が10μm程度以下の微細な金属粒子または、表面上に金属薄膜が形成された樹脂粒子を練り込むことにより形成された、半硬化の熱硬化性樹脂フィルムである。より具体的にはACF40は、一例として、表面にニッケルまたは金の薄膜(めっき膜)が形成された樹脂粒子が接着層に練り込まれたものであることが好ましく、ここでの樹脂粒子の径は約10μm、樹脂硬化前の接着層の厚みは約25μmであることが好ましい。
ここで、磁性体固定筐体20の筐体上面電極21と、薄葉基板30の導体薄膜32とは、平面視において互いに重畳する部分を含んでいる。また、上記のように形成されたACF40は、接着部材としての役割とともに、導電性部材としての役割を有している。言い換えれば、ACF40においては、接着部材と導電性部材とが一体に構成されている。したがって、互いに接近した磁性体固定筐体20の筐体上面電極21(第1電極)と、その真上に重なる導体薄膜32(第1配線)とは、これらの間に配置される接着部材および導電性部材としてのACF40が筐体上面電極21と導体薄膜32との双方に接する(接着する)ことにより、互いに電気的に接続される。またACF40は、その導電性に異方性を有している。
ACF40は、薄葉基板30と磁性体10との間の領域から、薄葉基板30と磁性体固定筐体20との間の領域まで延びている。これによりACF40は、薄葉基板30よりやや小さいもののほぼ薄葉基板30と同じ平面積を有し、磁性体10と磁性体固定筐体20との双方に接合固定させている。
なおACF40はフィルム材であるが、上記の異方性の導電材料としては、ACF40に限らず、たとえばフィルム材ではないACP(Anisotropic Conductive Paste)などの材料が用いられてもよい。ACPは、未硬化の樹脂内に導電性粒子を分散させた材料である。ただし異方性の導電性を有し、接着部材としても用い得るという点においては、ACPはACF40と同様である。
これを用いた場合においても、薄葉基板30を、磁性体10と磁性体固定筐体20との双方と十分な強度で接合固定させることができる。さらには上記の異方性の導電材料に代わって、金のバンプを加熱圧着した部材、または薄葉基板30の導体薄膜32およびこれに対向する磁性体固定筐体20の筐体上面電極21などを超音波接合により固相拡散接合され形成された接合層が適用されてもよい。
次に、磁石50は、磁性体10の真上(一方側すなわちヨーク60側)に配置されている。非可逆回路素子P1は直流磁界を利用するため、磁石50としては永久磁石が用いられる。本実施の形態においては磁石50としてはサマリウムコバルト系磁石が用いられることが好ましい。このようにすれば、保磁力の温度変化が小さいので良好な温度特性が得られ、キュリー温度が高いことから高温使用が可能となる。またサマリウムコバルト系磁石は耐蝕性に優れるため、磁石50の表面処理が不要となる。
磁石50は、たとえば平面視において円形を有する円柱形状を有し、当該円形の直径がたとえば約3.5mm、厚みがたとえば約1.2mmであることが好ましい。ただし磁石50の外観形状は円柱形状に限らず、たとえば平面視において多角形状を有していてもよい。
次に、ヨーク60は、磁石50からの磁力線の経路を制御するために配置されている。ヨーク60は接着フィルム70により、磁石50の上側の表面上に接着固定されている。ヨーク60は非可逆回路素子P1に求められる磁気特性の改善および、非可逆回路素子P1から生じる漏れ磁束が周辺の部品および実装時のマウンターなどに及ぼす磁気的な影響を抑制する機能を有することが好ましいが、これに限られない。
ヨーク60は、鉄系材料であり透磁率および残留磁気特性などの磁気的な特性に優れた材料により形成されることが好ましい。具体的にはヨーク60は、たとえば純鉄製であり、当該純鉄製のヨーク60の表面には防錆のためにニッケルめっき膜が施されていることが好ましい。その他、ヨーク60は、たとえば安価で入手しやすい一般構造用圧延鋼材(たとえばSS400)により形成されていてもよい。
ヨーク60は、たとえば平面視において円形を有する円板形状を有し、当該円板形状の直径がたとえば4.3mm、厚みがたとえば1.2mmであることが好ましい。ただしヨーク60の外径形状は円板形状に限らず、たとえば平面視において多角形状を有していてもよいし、キャップのように磁石50を上方からはめ込む形式であってもよい。
次に、接着フィルム70は、ヨーク60と磁石50との間、および磁石50と薄葉基板30との間に挟まれることによりこれらを接着固定する。磁石50とヨーク60との間、および磁石50と薄葉基板30との間は電気的に接続される必要はない。このため接着フィルム70としては絶縁性の接着剤が用いられる。具体的には、接着フィルム70はたとえば熱硬化性エポキシ樹脂系接着剤により構成されることが好ましく、市販の熱硬化性エポキシ樹脂接着フィルムが用いられてもよい。この市販の熱硬化性エポキシ樹脂接着フィルムは、あらかじめフィルム状に成形された半硬化状態のエポキシ樹脂であり、型抜き加工および離型性のある台紙への貼り付けが可能であり、液状樹脂に比べて取扱いが容易である。
ただし接着フィルム70としては、上記の他に、たとえば相当の接合強度を有する熱可塑性樹脂接着剤により構成されていてもよい。この熱可塑性樹脂接着剤としては、たとえば非可逆回路素子P1と被実装部P2との実装工程におけるはんだリフロー温度に耐えることができる熱可塑性フィルムを用いることもできる。
接着フィルム70は、たとえば平面視において円形を有し、その直径がたとえば3.5mm、厚みがたとえば0.05mmのものが用いられることが好ましい。
以上の各部材からなる非可逆回路素子P1が、はんだボール80により、被実装部P2すなわち回路基板90上に表面実装される。すなわちはんだボール80は、回路基板90上に非可逆回路素子P1を表面実装する目的で配置される。はんだボール80は、特にBGA(Ball Grid Array)を形成するための表面実装に用いられる。
非可逆回路素子P1の磁性体主表面10B上および筐体主表面20B上には、上記のようにソルダレジストSRが形成され、ソルダレジスト開口部SRCにはんだボール80が配置されている。これによりBGAが形成されている。はんだボール80は、たとえばSn−3Ag−0.5Cuの組成を有する合金材料により構成されることが好ましい。
はんだボール80はほぼ球形であるが、その球形の直径の選択幅は広い。はんだボール80の直径は、大きい方が非可逆回路素子P1と被実装部P2との段差および反りを吸収し低減することができるため製造面で有利である。またはんだボール80の直径が大きい方がスタンドオフを大きく取れるので直径が小さい場合よりも信頼性の面で有利である。ここでスタンドオフとは、非可逆回路素子P1の最下面から被実装部P2の最上面までの上下方向に関する距離を意味する。一方、はんだボール80の直径が小さい方が、互いに間隔をあけて並ぶ複数のはんだボール80間のピッチがより狭くなるように配列することができるため、非可逆回路装置100の小型化に有利である。またはんだボール80の直径が小さい方が、非可逆回路素子P1と被実装部P2との接続距離を短くすることができるため電気特性面で有利である。
上記のようにはんだボール80の直径を大きくした場合と小さくした場合との利点は互いにトレードオフの関係となるため、その直径は非可逆回路素子P1を適用する製品に応じて最適値が決定されることが好ましい。しかし基本的に、上記の非可逆回路素子P1を回路基板90に実装するにあたっては、直径0.15mm以上0.65mm以下(特にたとえば0.5mm)のはんだボール80が用いられることが好ましい。
最後に、はんだボール80により非可逆回路素子P1が実装され非可逆回路素子P1と電気的に接続される回路基板90は、上記の磁性体固定筐体20と併せて高周波回路を形成している。回路基板90は、はんだボール80の下側(他方側すなわち磁性体10と反対側)に接合するように固定配置されている。また回路基板90は(図示されないが)、当該高周波回路に入出力するための信号処理回路および電源などの電気回路を収容している。
回路基板90は、たとえば誘電損失の低い樹脂製(熱硬化性樹脂系)のプリント基板である。なお回路基板90は磁性体固定筐体20と同じ材質からなっていてもよい。
図13は回路基板90の平面形状を示している。図1〜図2および図13を参照して、回路基板90は、その上側の回路基板主表面90A上に、はんだボール80を介して非可逆回路素子P1が実装される。このため回路基板90の上側の回路基板主表面90A上にはソルダレジストSRが形成されており、はんだボール80が接触する部分とほぼ重なる領域にはソルダレジストSRが配置されないソルダレジスト開口部SRCが形成されている。ソルダレジスト開口部SRCは図13中に点線で示すように回路基板90の平面視におけるほぼ中央部の非可逆回路素子実装領域95内に形成されている。
回路基板主表面90A上には3本の回路基板導体91が形成されている。回路基板導体91は薄葉基板30に形成された伝送線路の一部としての導体薄膜32と同様に、伝送線路の一部をなしている。3本の回路基板導体91は、非可逆回路素子実装領域95の中心に対して互いに約120°の角度をなす方向に延びている、平面視において直線状の伝送線路である。これら3本の直線状の回路基板導体91のそれぞれの少なくとも一部は、平面視における非可逆回路素子実装領域95の中心に対して反対側において部分的に屈曲した領域を有していてもよい。
回路基板90についても図5の磁性体10および図8の磁性体固定筐体20と同様に、回路基板主表面90Aの上側の表面上のほぼ全域に導体材料の薄膜が形成されている。ただしこの導体材料の薄膜は矩形の枠状に形成された間隙部GPにおいては存在せず、この間隙部GPに囲まれた領域の導体材料の薄膜が島状の回路基板導体91として他の領域の導体材料の薄膜(接地電極ETEとして機能し得る)から独立し露出した態様となっている。また上記導体材料の薄膜を覆うように、回路基板主表面90A上の多くの領域においてソルダレジストSRが形成されている。
図13に示すように、回路基板導体91が形成される部分についてはその一部の上のみにソルダレジストSRが形成されて導体上ソルダレジストSROとされている。また特に非可逆回路素子実装領域95内においては、回路基板導体91上およびその他の領域ともに、ソルダレジストSRにはソルダレジスト開口部SRCが形成されている。ソルダレジスト開口部SRC内においてははんだボール80と回路基板90との間には、たとえば回路基板導体91と同一の層としてのパッド電極または接地電極ETEが露出し、これがはんだボール80と回路基板90との双方に接するように配置されている。これは仮に回路基板導体91(伝送線路)上の全面がソルダレジストSRで覆われれば、誘電体損が無視できなくなり、伝送線路としての機能が低下するためである。
ただし上記と同様な機能を発揮するようなソルダレジストSRの配置形状であれば、図13に示す構造に限定されることはない。たとえば図13の平面図において点線で囲まれた非可逆回路素子実装領域95内において、(配線ではなく)ソルダレジストSR(のみ)が平面的に連続して繋がっていてもよい。この場合においても、回路基板導体91が露出している部分の態様は図13とほぼ同様である。
以上のようにはんだボール80と回路基板90(回路基板導体91)とが接続されることにより、非可逆回路素子P1の磁性体固定筐体20の筐体下面電極22は、磁性体10の下方(他方側)の回路基板90に第2配線として配置された回路基板導体91に接続される。また磁性体10の下側の裏面導体13と、回路基板90(回路基板導体91)とについても、上記と同様に、はんだボール80の介在により互いに接続される。このため筐体下面電極22および裏面導体13を含む非可逆回路素子P1と、回路基板導体91を含む被実装部P2とが、伝送線路により電気的に接続される。
磁性体主表面10B上に形成された裏面導体13と、回路基板90の接地電極ETEとがはんだボール80を介して接続されることにより、磁性体主表面10Bを、回路基板90の接地電極ETEと同電位に保つことが可能となる。このため非可逆回路装置100は非可逆回路素子P1を含む装置としての電気的性能を満足することができる。
なお回路基板導体91は銅の薄膜により形成されることが好ましく、必要に応じてその銅の薄膜の表面上に、たとえば厚みが3μm以上5μm以下のニッケルの薄膜と、さらにその表面上のたとえば厚みが約0.02μmの金の薄膜とが形成されてもよい。これらのニッケルおよび金の薄膜は、銅の薄膜の酸化防止およびはんだ濡れ性向上を目的として施される。
また回路基板90は、平面視においてたとえば四角形(正方形)状を有する平板状の部材であることが好ましく、平面視における横方向および縦方向の寸法がたとえば30mm、厚みが0.7mmであることが好ましい。
以上をまとめると、本実施の形態の非可逆回路装置100においては、磁性体固定筐体20の筐体上面電極21が磁性体10の上側の薄葉基板30の導体薄膜32に接着されており、磁性体固定筐体20の筐体下面電極22が磁性体10の下側の回路基板90の回路基板導体91に接続されている。筐体下面電極22が接続される回路基板90の導体には、接地電極ETEが含まれている。これにより、非可逆回路素子P1の高周波回路の特性が向上するとともに、はんだボール80の接続部における信頼性が向上する。磁性体固定筐体20においては、筐体上面電極21と筐体下面電極22とが貫通導体23により互いに電気的に接続されている。
非可逆回路素子P1は、磁性体10に近接された磁石50による一方向の磁界を利用して、導体薄膜32に含まれる複数(3つ)の導体端子のうちいずれかを入力端子として進む高周波の電気信号を、隣接するいずれかの他の導体端子のみを出力端子として出力させることにより、非可逆な回路信号を供給することができる。
以下、図14〜図30を用い、かつ図3〜図13を適宜用いながら、本実施の形態の非可逆回路装置100の製造方法について説明する。
図4および図5を再度参照して、まずこれらの図に示すような上記の磁性体10が準備される。図5(B)に示すように、磁性体主表面10B上に裏面導体13が形成される。裏面導体13は金属薄膜であって、印刷、スパッタ、蒸着、めっきなどの成膜プロセスにより形成することができるが、これらの中でもめっきにより形成されることがより好ましい。すなわち、まずたとえば厚みが約3μmの銅の薄膜が電解めっきにより形成され、その表面上にたとえば厚みが1μm以上2μm以下のニッケルの薄膜がめっきにより形成される。さらにその表面上にたとえば厚みが約0.02μmの金の薄膜がフラッシュめっきにより形成される。裏面導体13は磁性体主表面10Bの全面に形成されてもよいし、部分的に残存するようパターニングされてもよい。
次に、図5(B),(C)に示すように、裏面導体13の表面には、はんだボール80を取り付けるためのソルダレジストSRが積層形成される。このソルダレジストSRを部分的に除去してはんだボール80を接合させるためのソルダレジスト開口部SRCが形成される。このソルダレジスト開口部SRCの形成により、ソルダレジスト開口部SRC内においてはソルダレジストSRの下層の裏面導体13がパッド電極として露出する。
ソルダレジストSRがクロムなどのはんだに濡れない金属材料の薄膜である場合には、スパッタ、蒸着などの成膜プロセスによって形成されることが好ましい。ソルダレジストSRがエポキシ樹脂系である場合には印刷法により形成することができる。またポリイミド系の樹脂ソルダレジストSRである場合にはスピンコートの後に通常のフォトリソグラフィにより形成することができる。
次に、再度図6および図7を参照して、磁性体固定筐体20が準備される。枠体状を有する本実施の形態の磁性体固定筐体20は、その全体が平面視においてたとえば四角形状(正方形状)となるように加工され、中央部の開口部(固定可能部24)も四角形状(正方形状)となるように加工される。固定可能部24は、磁性体10がその内部に嵌まり込むことが可能な寸法に加工される。すなわち固定可能部24は、磁性体10よりも平面視においてやや大きく、磁性体10の外縁と固定可能部24の内壁面との間に弾性接着剤12が供給可能な程度の隙間が形成される程度の大きさであることが好ましい。
また磁性体固定筐体20は、磁性体10の厚みとほぼ同じであるか、後工程に支障を来さない程度に磁性体10に対して厚みの差を有することが好ましい。
磁性体固定筐体20の製造方法としては、まずプリント基板が準備され、そのプリント基板に対して、高周波回路を構成する筐体上面電極21、筐体下面電極22および貫通導体23が形成される。
プリント基板の上側の筐体主表面20A上には、当該加工前のプリント基板の構成材料であるベタ銅箔が、通常のフォトリソグラフィ法により露光およびエッチングされることにより、筐体上面電極21が形成される。場合によっては、アディティブ法を用いてプリント基板の基材上に直接筐体上面電極21を形成してもよい。
磁性体固定筐体20の下側の筐体主表面20B上には、加工前のプリント基板の構成材料であるベタ銅箔が、通常のフォトリソグラフィ法により露光およびエッチングされることにより、筐体下面電極22および接地電極ETEなどが形成される。
次に、筐体主表面20A上の筐体上面電極21から筐体主表面20B上の筐体下面電極22まで磁性体固定筐体20の本体を貫通するように延びるスルーホールが形成される。当該スルーホールは一般公知のドリルなどを用いることにより形成される。ドリルなどで磁性体固定筐体20の本体を貫通するスルーホールが形成された後に当該スルーホールの内壁面に導電用の金属薄膜がたとえばめっきにより形成される。
この状態ではスルーホールの上下面は開口しており、金属薄膜で覆われた円筒状の貫通孔になっている。しかしこのままでは印刷直後の未硬化状態のソルダーレジストや、昇温して接合する際に溶融して広がったACF40の樹脂の当該貫通孔内への流れ込みが生じる場合がある。そこでこれを防止するために、スルーホールの開口部はその貫通部も含めて樹脂等によって穴埋めされてもよい。これにより内壁面の金属薄膜は、後に形成される筐体上面電極21と筐体下面電極22とを電気的に接続する貫通導体23として形成される。
なお磁性体固定筐体20についても、磁性体10と同様に、筐体主表面20B側には筐体下面電極22を覆うようにソルダレジストSRが形成され、それが部分的に除去されソルダレジスト開口部SRCが形成される。しかしこの具体的な処理は基本的に上記の磁性体10に対する処理と基本的に同様であるため詳細な説明を省略する。
次に、磁性体10を取り囲むように磁性体固定筐体20が配置される。言い換えれば、図14および図15に示すように磁性体固定筐体20の固定可能部24内に嵌め込まれた磁性体10と、固定可能部24の内壁面との間の隙間を弾性接着剤12で埋め込む工程である。
具体的には、図14を参照して、まず固定可能部24に磁性体10が嵌めこまれる。このとき、磁性体10のはんだボール80の取り付けられる面が磁性体固定筐体20の下側の筐体主表面20B側を向くように、磁性体10が嵌めこまれる。
次に、磁性体固定筐体20の固定可能部24内と、そこに嵌め込まれた磁性体10との間に生じる隙間を埋め込むために弾性接着剤12が供給される。弾性接着剤12は熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもゴム系樹脂(エラストマー)でもよい。いずれの場合においても弾性接着剤12は液状であることが好ましく、硬化終了後にクッション機能を有する材料であることが好ましい。また弾性接着剤12は、非可逆回路素子P1を被実装部P2に表面実装する際に使用されるリフロー工程の温度に耐え得る材料であることが好ましい。
また弾性接着剤12はディスペンサDPを用いて供給されることが好ましい。このようにすれば作業性を向上させることができる。
図15を参照して、固定可能部24内に供給された弾性接着剤12が硬化される。弾性接着剤12は、加熱硬化または室温硬化のいずれにより硬化されてもよい。このようにして磁性体固定筐体20に磁性体10が固定され一体化される。なお図15においては磁性体10を見やすくするため磁性体固定筐体20よりも少し厚く示している。
次に薄葉基板30が形成され、これがACF40により磁性体10などの上側に接着固定される。図16〜図26は当該工程について示す図面である。
まず薄葉基板30が準備される。具体的には、図11および図12(A),(B)を再度参照して、下側(他方側すなわち最終的に磁性体10が配置される側)の薄葉基板主表面30B上のみに導体薄膜32のパターンが形成されることにより、薄葉基板30が形成される。
平板形状を有する薄葉基板30の本体は、たとえば型抜き加工により形成される。このとき、専用の打ち抜き型を用いることにより、バリのない精密なカットが可能となる。導体薄膜32は、あらかじめ薄葉基板30の基材上に貼り付けられた銅箔をエッチングすることにより形成してもよいし、アディティブ法を用いて薄葉基板30の基材上に直接形成されてもよい。また当該銅箔の表面上にはめっきによりニッケルの薄膜および金の薄膜が形成されてもよい。
次に図16を参照して、磁性体固定筐体20の上側(一方側)の領域から、平面視において磁性体10と重なる領域まで、接着機能を有し(接着部材として用いられ)、かつ導電性に異方性を有する導電性部材として、たとえばACF40が準備される。ただしここではACF40の代わりに上記のようにACPなどが用いられてもよい。
次に、図16および図17を参照して、磁性体10が固定された磁性体固定筐体20の上側(一方側)にACF40が配置され、ACF40のさらに上側に薄葉基板30が配置される。言い換えれば、磁性体10および磁性体固定筐体20の上側の領域の少なくとも一部を含むように薄葉基板30が配置される。さらに言い換えれば、図3に示すように、後にセットされる磁石50と磁性体10との間の領域および、磁性体固定筐体20の上側(真上:平面視において重なる)の領域に、薄葉基板30が配置される。ACF40は薄葉基板30と、磁性体10および磁性体固定筐体20との間に挟まれるように配置される。すなわち薄葉基板主表面30BとACF上側主表面40Aとが互いに対向し、かつACF下側主表面40Bと筐体主表面20Aとが互いに対向するように、配置される。
図17の透視図に示すように、これらの各部材は、互いにほぼ重なり合うように配置される。具体的には、導体薄膜32の3本の導体端子のそれぞれと、筐体上面電極21と、筐体下面電極22とが互いに重なり合うように配置される。ただし、磁性体固定筐体20の貫通導体23と、薄葉基板30の導体薄膜32の直線状に延びる導体端子の先端部32Aとが互いに重なり合わないように、かつ当該導体端子の先端部32Aが筐体上面電極21(および筐体下面電極22)と互いに重なり合うように配置されることが好ましい。ただし図17においては貫通導体23と先端部32Aとは重なり合わないが、本実施の形態においてはこれらが互いに重なり合う構成としてもよい。このように配置されれば、筐体上面電極21と貫通導体23と筐体下面電極22との電気的接続により、筐体上面電極21と筐体下面電極22と貫通導体23との組は、導体薄膜32の3本の導体端子のそれぞれに電気的に接続されるように形成される。
つまり、最終的に薄葉基板30とACF40と磁性体固定筐体20とが互いに接合固定されたときに、導体薄膜32がACF上側主表面40Aに接触し、筐体上面電極21がACF下側主表面40Bに接触する。このためACF40の導通機能により、互いに重なる導体薄膜32(先端部32Aを含む3本の導体端子のそれぞれ)と、筐体上面電極21と筐体下面電極22と貫通導体23との組とが、互いに電気的に接続される。
このようにするためには、導体薄膜32と筐体上面電極21とが互いに位置ずれしないように、両者間を綿密に位置合わせする必要がある。ここでは先端部32Aが筐体上面電極21(貫通導体23と重ならない領域)に重なるように重畳されることにより、薄葉基板30と磁性体固定筐体20との間の位置合わせを容易にすることができ、導体薄膜32と筐体上面電極21との電気的な接続を容易にすることができる。仮に薄葉基板30と磁性体固定筐体20とが互いに平面視において離れていて両者間に溝などが存在する場合には、導体薄膜32と筐体上面電極21とを電気的に接続するために両者間を橋渡しする導体(ワイヤボンドまたはリボンボンドなど)等が必要となる。しかし本実施の形態においては薄葉基板30と磁性体固定筐体20との導体同士(導体薄膜32と筐体上面電極21)が重なり合う構成となっているため、ACF40を介してこれらの導体間を容易に電気的に接続させることができる。
なお図16に示すように、元々は薄葉基板30の平面視における寸法は、磁性体固定筐体20の同寸法よりもやや小さく、かつACF40の平面視における寸法は、薄葉基板30の同寸法よりもやや小さくなっていることが好ましい。このように薄葉基板30およびACF40の寸法を調整するのは、後の加熱および加圧工程によりACF40が溶融して広がるためである。薄葉基板30および磁性体固定筐体20の外縁からACF40が漏えいすれば、非可逆回路素子P1に隣接する位置に実装される他の電子部品などとの距離が非常に狭くなり当該部品との間で短絡が起こるなどの不具合が起こり得る。またリフロー工程前に被実装部P2の表面上に非可逆回路素子P1を搭載する工程においてボンダーなどが非可逆回路素子P1の構成部材等をハンドリングする際にはみ出したACF40が障害となり得る。このような不具合を抑制する観点から、ACF40の漏えいを抑制することが好ましく、この観点から上記のように寸法が調整される。図17に示すように、これらの各部材を貼り合わせ接着固定させた後においては、ACF40が当初より広がる結果、その平面積がやや大きくなっている。
ただし図16および図17においては、ACF40と他の各部材との位置関係を示しているに過ぎず、実際には本工程において供給されるACF40はこれとは異なる態様を有している。以下、図18(A),(B),(C)を用いてこのことについて説明する。
図18(A),(B),(C)を参照して、本工程で用いられるACF40は、当初はその上側および下側の主表面上に貼り付けられたセパレータにより挟まれた構成を有している。ACF40の上側の主表面上には、ACF40と平面視における寸法がほぼ同じである重セパレータ41が、ACF40の下側の主表面上には、ACF40よりも平面視における寸法が大きい軽セパレータ42が、それぞれ貼り付けられている。つまり軽セパレータ42、ACF40、重セパレータ41の順に積層された3層構造を有する3層構造フィルム43の一部として、ACF40が配置されている。
重セパレータ41とは、ACF40に対する剥離力が重い(密着強度が高く剥離しにくい)セパレータを意味している。重セパレータ41の平面視における横方向および縦方向の寸法がたとえばACF40とほぼ同じ6.6mmであり、厚みがたとえば50μm(ACF40の厚みはたとえば25μm)である。これに対して軽セパレータ42はACF40に対する剥離力が軽い(密着強度が低く剥離しやすい)セパレータを意味している。軽セパレータ42は、互いに間隔をあけて複数並ぶ重セパレータ41およびACF40の並ぶ方向に長く延び、これらすべてと重なるように貼り付けられた部材である。したがって軽セパレータ42の平面視における横方向および縦方向の寸法は、ACF40などよりも大きい。
ACF40および重セパレータ41が互いに貼り合わされたものが、あらかじめ複数の四角形の個片となるように型抜き加工される。それら複数の四角形の個片が、細長い軽セパレータ42のフィルムの表面上に、互いに間隔をあけて並ぶように貼り付けられる。このようにして形成された3層構造フィルム43がリールに巻き取られたものが出荷される。
以上の構成を有する3層構造フィルム43を用いた薄葉基板30と磁性体固定筐体20との貼り合わせにおいては、まず磁性体固定筐体20および磁性体10にACF40が仮接着され、次いでACF40が仮接着された磁性体固定筐体20および磁性体10と薄葉基板30とが本接着される。このことにより磁性体固定筐体20の筐体上面電極21が、磁性体10の上側に配置される薄葉基板30の導体薄膜32(第1配線)に接続される。以下、この貼り合わせ工程について、図19〜図26を用いて説明する。
図19を参照して、当該貼り合わせ工程においては、加熱と加圧とが同時に実施可能なボンダーが用いられる。具体的には、図19に示すボンダーヘッド44Aと、図19に示されない後述の加熱ステージと、図19に示されない後述の位置決めカメラとを有するボンダーが用いられる。
ボンダーヘッド44Aは、たとえば3層構造フィルム43を真空吸着する機能と、真空吸着したたとえば3層構造フィルム43を加熱および加圧する機能との双方を有する。また加圧環境下でのACF40の硬化工程を短時間で終了させる観点から、ボンダーヘッド44Aは加熱硬化と冷却とが短時間で可能なヒータツールを有するものを用いることが好ましい。具体的には、ボンダーヘッド44Aはセラミックヒータまたはパルスヒータを用いることが好ましい。
ボンダーヘッド44Aの下側の表面が、リールから引き出された3層構造フィルム43に上方から接近し、3層構造フィルム43の最上層に配置される重セパレータ41を真空吸着する。この状態でボンダーヘッド44Aが図中の矢印に示すように上方へ移動する。
図20を参照して、ボンダーヘッド44Aが上方へ移動すると、軽セパレータ42が3層構造フィルム43から分離する。これにより重セパレータ41とACF40との積層された1個片のみがボンダーヘッド44Aに真空吸着された状態となる。
図21を参照して、ボンダーヘッド44Aとともにボンダー44を構成する加熱ステージ44B上に、磁性体10が弾性接着剤12により固定された磁性体固定筐体20が載置され真空吸着される。その真上に、図20の工程においてボンダーヘッド44Aに真空吸着された重セパレータ41およびACF40の1個片が重なるように、ボンダー44を構成する図示されない位置決めカメラを用いて位置決めされる。この時点では重セパレータ41などは磁性体10などに対して上下方向に互いに間隔をあけて配置される。
図22を参照して、上記の位置決めの後、ボンダーヘッド44Aが矢印に示す方向に下降することにより磁性体10および磁性体固定筐体20の上に所定の圧力でACF40および重セパレータ41が押しつけられる。ACF40は室温でも粘着性を有しているため、この時点で磁性体10および磁性体固定筐体20の上に仮接着される。この工程においてボンダーヘッド44Aを昇温し、たとえばボンダーヘッド44Aの温度を80℃に保ちながらボンダーヘッド44Aの下方への押圧力を1MPa、押圧時間を2秒間として加圧することにより、いっそう確実な仮接着が可能となる。このようにボンダーヘッド44Aは、加熱と加圧とを同時に行なうことがいっそう好ましい。
図23を参照して、ACF40の磁性体10などへの仮接着の後、ACF40などを真空吸着したままの状態でボンダーヘッド44Aが矢印に示すように上昇する。これにより、ボンダーヘッド44Aに真空吸着されている重セパレータ41はACF40から剥離してボンダーヘッド44Aとともに上昇する。重セパレータ41はボンダーヘッド44Aから外されて廃却される。
以上のACF40の磁性体10などへの仮接着により、以降の工程にて発生し得る振動などによってACF40が磁性体10などの表面から位置ずれしたり剥がれて脱落するなどの不具合を抑制することができる。
仮接着は温度、荷重、時間とも後述する本接着よりも短いため、仮接着することによってACF40が流動したり変形する可能性が低減される。また各部材の外形寸法は仮接着の前後でほとんど変化しない。
次に図24を参照して、型抜き加工され導体薄膜32が形成された薄葉基板30がボンダーヘッド44Aの下側の表面上に真空吸着される。薄葉基板30のボンダーヘッド44Aの下側の表面上への運搬は、専用のトレイ上の配列またはリール供給によりなされる。薄葉基板30が吸着されたボンダーヘッド44Aは、加熱ステージ44Bの真上に運ばれる。
なお薄葉基板30は、薄葉基板主表面30Aがボンダーヘッド44Aに接触吸着され、導体薄膜32の形成された薄葉基板主表面30Bが下側を向きACF40に対向するように、ボンダーヘッド44Aに吸着される。
次に、ボンダーヘッド44Aに真空吸着された薄葉基板30が、加熱ステージ44Bに真空吸着固定された磁性体固定筐体20、磁性体10およびACF40に対して位置決めされる。
当該位置決めは、ボンダー44を構成する位置決めカメラ44Cによりなされる。位置決めカメラ44Cによる位置決めは、電気的な接続が必要な部位、すなわち筐体上面電極21と導体薄膜32の先端部32Aとの平面視における形状を利用してこれらの位置を互いに重ねることにより行なわれる(図17参照)。ACF40は半透明であるため、ACF40の下方に仮接着された筐体上面電極21の位置を上方からの平面視により確認することは容易である。なお必要に応じて、磁性体固定筐体20と薄葉基板30とに専用の位置決めマークを設けてこれを補助的に用いて位置決めを行なってもよい。
また、ACF40の外縁と磁性体10の外縁との位置が僅かにずれている場合などにおいては、必要に応じて、お互いの画像のずれ量が最小になるように磁性体10の位置(X横ずれ、Y縦ずれ、θ回転ずれ)を、位置決めアルゴリズムに基づいて調整してもよい。
図25を参照して、以上の図24の工程において位置決めカメラ44Cなどを用いて薄葉基板30のACF40などに対する位置を決めた後に、ボンダーヘッド44Aが矢印に示すように下降される。これにより、ACF40が仮接着された磁性体10などと薄葉基板30とが互いに接触するように重ね合わせられる。そして図22の工程と同様に加熱されたボンダーヘッド44Aが下方へ押圧する。これにより、薄葉基板30と磁性体10および磁性体固定筐体20とに挟まれた状態のACF40が加熱および加圧され硬化される。以上により磁性体10が固定された磁性体固定筐体20とACF40と薄葉基板30とが互いに接着固定されるとともに、筐体上面電極21と導体薄膜32とが互いに電気的に接続される。
この工程においてはたとえばボンダーヘッド44Aの加熱温度は180℃、ボンダーヘッド44Aの下方への押圧力は3MPa、ボンダーヘッド44Aの押圧時間は10秒間である。
図26を参照して、図25の工程により磁性体10が固定された磁性体固定筐体20とACF40と薄葉基板30とが互いに本接着された後、ボンダーヘッド44Aが矢印の上方へ移動することにより薄葉基板30から離れる。この本接着により、磁性体10が固定された磁性体固定筐体20と薄葉基板30とは、これらの間に介在するACF40により強固に固着される。また導体薄膜32と筐体上面電極21との電気的な接続も確実になされる。
このように、薄葉基板30の導体薄膜32の一部と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21の一部とは、ACF40を用いた加熱および加圧により接着される。以上のようにして、磁性体10の外側の磁性体固定筐体20の上側の領域から、平面視において磁性体10と重なる領域まで、導電性に異方性を有する導電性部材としてのACF40の接着機能を利用して、薄葉基板30(導体薄膜32)と、磁性体10が固定された磁性体固定筐体20(筐体上面電極21)とが、電気的に接続されるように接着固定される。
次に、再度図3を参照して、磁石50とヨーク60とが準備され、これらが接着フィルム70により接着される。具体的には、まず磁石50が準備され、当該磁石50の上に重畳するように接着フィルム70が供給される。そして接着フィルム70の上に重畳するようにヨーク60が配置される。これらに対して加熱および加圧がなされることにより、磁石50とヨーク60とが接着される。
上記の接着工程においては、図19〜図26に示すボンダー44により加熱および加圧がなされてもよい。あるいは上記の接着工程においては、図示されないが所望の圧力を与えることが可能なバネ機構を有する治具を用いて、加熱乾燥炉中で処理がなされてもよい。
次に再度図3を参照して、互いに接着された磁石50およびヨーク60が、先にACF40により磁性体10などに固定された薄葉基板30の薄葉基板主表面30Aの上側(磁性体10と反対側)に接着される。これにより、磁性体10の上側に、非可逆回路素子P1を機能させるための磁石50が配置される。
ここでは、薄葉基板30の中央部の円形の中心導体(導体薄膜32の一部)の幾何学的中心と磁石50の幾何学的中心とが一致するように磁石50が配置されることが理想的である。しかし磁石50の磁力のばらつき等を考慮して微小な位置調整を行なう結果、上記中心導体と磁石50との間に多少の位置ずれが生じることは製品製造上あり得る。
上記の磁石50とヨーク60とを接着する工程と同様に、たとえば磁石50と薄葉基板30(中心導体と重なる領域の真上における薄葉基板主表面30A上)との間に接着フィルム70が配置され、加熱および加圧により接着固定される。
なお、上記の接着フィルム70を用いる代わりに、液体または粘性材料からなる絶縁性接着剤が上記の薄葉基板主表面30A上および磁石50上などに、一般公知の転写またはディスペンサDP(図14参照)を用いて供給される方法が用いられてもよい。
以上により、非可逆回路素子P1の要部が完成される。次に、図2および図3を参照して、完成された非可逆回路素子P1を被実装部P2に表面実装してBGAを形成するためのはんだボール80が取り付けられる。
たとえば図10(B)を再度参照して、はんだボール80は、非可逆回路素子P1における磁性体固定筐体20の下側の筐体主表面20Bの上および磁性体10の下側の磁性体主表面10B上のソルダレジスト開口部SRCに配置(搭載)され固着されることにより、非可逆回路素子P1に取り付けられる。
すなわちはんだボール80は基本的に磁性体10の平面視における全体において互いに間隔をあけて複数行列状に配置されるとともに、磁性体固定筐体20の平面視において縦方向および横方向に延びる領域の全体において複数互いに間隔をあけて配置される。したがって図3においては図の手前側のみにはんだボール80が配置されるように示されているが、これは図を見やすくするために過ぎず、実際には図の奥側にもはんだボール80が配置される。以下、この工程について、図27〜図30を用いて説明する。
図27を参照して、まず非可逆回路素子P1が、本来下側を向く筐体主表面20Bおよび磁性体主表面10Bが上側を向くように上下反転されて図示されない治具に収納される。上記のように先に筐体主表面20B上および磁性体主表面10B上にはソルダレジストSRおよびソルダレジスト開口部SRCが形成されている。
非可逆回路素子P1の上方には磁石50およびヨーク60などの突起部材が含まれている。非可逆回路素子P1を上下反転させたときにはこれらの突起部材が下方に配置されることを考慮し、上記の上下反転された非可逆回路素子P1を収納する治具は、当該突起部材が収容できる窪みなどが設けられていることが好ましい。また非可逆回路素子P1には磁石50が含まれるため、治具は非磁性体の金属材料または樹脂材料により形成されることが好ましい。
筐体主表面20B上に形成されたソルダレジスト開口部SRCと治具との上下方向に関する位置(高さ)がほぼ同じになるように、磁性体固定筐体20などが治具に固定される。
図28を参照して、この状態で、複数のソルダレジスト開口部SRCのそれぞれに、たとえばスクリーン印刷法により、はんだペーストHPが供給される。ソルダレジスト開口部SRC内においては、図28には示されないが基本的に筐体下面電極22または他の配線等が露出している。この露出された電極または配線等に接触する(覆う)ように、はんだペーストHPが印刷供給される。あるいは当該ソルダレジスト開口部SRC内に、スクリーン印刷法によりフラックスのみが供給されてもよい。
図29を参照して、図示されないはんだボール搭載装置により、図28の工程においてはんだペーストHPまたはフラックスが供給された複数のソルダレジスト開口部SRCのそれぞれにはんだボール80が供給される。供給されたはんだボール80は、はんだペーストHPまたはフラックスの粘着力によって筐体主表面20Bに対して仮固定される。必要に応じて図29の上方からはんだボール80に対して押圧力を与えてもよく、このようにすれば仮固定がより確実になされる。なお自重または上記の押圧力により図29の下方に力を加えるはんだボール80により、図29に示すように、はんだペーストHPはその一部が押されてソルダレジスト開口部SRCの外側にはみ出る場合もある。
図30を参照して、まず上記のはんだボール80が供給された非可逆回路素子P1が、図27〜図29と同様に上下反転された状態で保持可能である耐熱性の治具等(図示せず)に保持される。その状態で当該非可逆回路素子P1はリフロー炉内に投入され、リフロー炉内の高温環境を通過する。これによりはんだボール80およびはんだペーストHPが互いに絡み合うように溶融し、リフロー炉の高温環境を通過した後に冷却されて固化する。これにより、磁性体固定筐体20の筐体主表面20B(ソルダレジスト開口部SRC内の電極または配線など)とはんだボール80とが一体化するように接合固定される。なおリフロー炉内を通過する工程の後は、はんだボール80とはんだペーストHPとは一体化され両者は区別されなくなる。
次に、はんだボール80および非可逆回路素子P1の構成部材の一部の表面上に付着または残留したフラックス残渣が洗浄により除去される。ただし最終製品である非可逆回路装置100の電気特性および信頼性に影響を及ぼさない程度に当該残渣の量が少ないことが確認できれば、この洗浄および除去の工程は省略されてもよい。以上によりはんだボール80が非可逆回路素子P1に接着固定される。
なお図27〜図30は磁性体固定筐体20に形成されたソルダレジスト開口部SRCに対するはんだボール80の接着固定工程についてのみ示しているが、これと同様の手順により磁性体10に形成されたソルダレジスト開口部SRCに対するはんだボール80も接着固定される。磁性体固定筐体20へのはんだボール80の固定と磁性体10へのはんだボール80の固定とは、施される処理が同一であり基本的に同時になされる。このため磁性体10のソルダレジスト開口部SRCへのはんだボール80の接着工程については詳細な説明を省略する。
次に、図2を参照して、非可逆回路素子P1に接着固定されたはんだボール80の下側に、被実装部P2としての回路基板90が接合される。これにより被実装部P2としての回路基板90に非可逆回路素子P1が表面実装される。またこれにより磁性体固定筐体20の筐体下面電極22が、磁性体10の下側に配置される回路基板90の回路基板導体91および接地電極ETEなど(第2配線)に接続される。
具体的には、再度図13を参照して、まず上側の回路基板主表面90A上(および回路基板導体91、接地電極ETEなどの上)にソルダレジストSRおよびソルダレジスト開口部SRCなどが形成された回路基板90が準備される。ソルダレジストSRなどの形成方法は基本的に上記の磁性体10および磁性体固定筐体20と同様の手順であるため説明を省略する。
基本的に図28の工程と同様に、複数のソルダレジスト開口部SRCのそれぞれに、たとえばスクリーン印刷法により、はんだペーストHPが供給される。ソルダレジスト開口部SRC内においては、基本的に回路基板導体91または接地電極ETE等が露出している。この露出された導体または電極等に接触する(覆う)ように、はんだペーストHPが印刷供給される。あるいは当該ソルダレジスト開口部SRC内に、スクリーン印刷法によりフラックスのみが供給されてもよい。
次に、基本的に図29の工程と同様に、はんだペーストHPまたはフラックスが供給された複数のソルダレジスト開口部SRCのそれぞれにはんだボール80が供給される。
次に、基本的に図30の工程と同様に、非可逆回路素子P1および図示されない他の電子部品(図示されない)が搭載された回路基板90がリフロー炉内に投入され、リフロー炉内の高温環境を通過する。これによりはんだボール80は上記と同様に回路基板90の導体などに接合される。なお後工程としてのフラックス残渣の洗浄および除去工程は、上記と同様に省略できる場合がある。
以上により、本実施の形態の非可逆回路装置100(図2参照)が形成される。
次に、本実施の形態に想到するに至った背景および課題について補足しつつ、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、磁性体10の代わりに、磁性体固定筐体20に貫通導体23が形成され、この貫通導体23により、磁性体10の上側(一方側)の導体薄膜32(第1配線)と、磁性体10の下側(他方側)の回路基板導体91(第2配線)とが電気的に接続される。これらにより伝送経路が形成される。このため、スルーホールを磁性体10の内部を貫通するように形成する必要がなくなり、かつ磁性体10の外表面を覆うように第1配線と第2配線とを接続する導体材料を形成する必要もなくなる。
フェライトなどの磁性体10内にスルーホールを形成する場合、その硬度に起因して、磁性体10に局所的にマイクロクラックまたはチッピングが発生し、それがより大きな割れ、欠けなどの製品不良を招来し、製品歩留まりが低下する可能性がある。また磁性体10は硬いため、そもそもスルーホールの形成加工自体が困難である。このため磁性体10へスルーホールを形成するためのにレーザー加工およびサンドブラスト加工が必要となり、加工費が非常に高価になる。
また磁性体10の上面、下面および側面などの表面上に、磁性体10の上方の配線と下方の配線とを接続するための貫通導体23と同等の機能を有する導体材料を形成する工程は、貫通導体をその延びる方向に沿う切断面を有するようにたとえば半分に分割する処理を要する。このためそのような加工は非常に困難であり、切断面の導体材料が剥がれるなどの不具合を来す可能性がある。さらに磁性体10の上面、下面および側面などの表面上に、磁性体10の上方の配線と下方の配線とを接続するための貫通導体23と同等の機能を有する導体材料を、折り曲げ加工した金属を取り付けることにより形成することも可能であるが、この工程も非常に難易度の高い処理を要する。
そこで本実施の形態のように樹脂材料からなる磁性体固定筐体20にスルーホールおよびその内部の貫通導体23を形成する方法を採用すれば、通常の大量生産されているプリント基板または多層セラミック基板と同じ工程でスルーホールおよび貫通導体23を形成可能なため、加工が容易になる。磁性体10にスルーホールまたは上記の外表面を覆う導体材料を形成する工程を行なわないことにより、上記のようなマイクロクラックまたはチッピングなどの発生を低減することができるとともに、製造コストを大幅に低減することができる。
また、本実施の形態においてはフェライトなどからなる磁性体10にスルーホールを形成しないため、スルーホールの内壁面への貫通導体23としての銅などのめっき膜の付着が容易になる。つまりフェライトに形成されたスルーホールへのめっき膜は、スルーホールの内壁面に対する付着力が弱く剥がれやすいが、磁性体固定筐体20のスルーホールへのめっき膜の形成工程は通常の大量生産されているプリント基板または多層セラミック基板と同じ工程であるため、加工が容易である。
さらに本実施の形態においては、磁性体10の代わりに、磁性体固定筐体20に筐体上面電極21および筐体下面電極22が形成され、これらが非可逆回路素子P1の高周波回路および伝送経路を構成する。このため、磁性体10の上面、下面などの表面上に直接電極などの導体を形成する必要がなくなる。
磁性体10の上面、下面などの表面上に直接導体材料を形成する工程は、たとえばメタライズ工程およびエッチング工程が通常よりも困難であり、その加工費が非常に高価になる。この加工においても(磁性体10へのスルーホールの加工時と同様に)、磁性体10に局所的にマイクロクラックまたはチッピングが発生し、それがより大きな割れ、欠けなどの製品不良を招来し、製品歩留まりが低下する可能性がある。
しかし本実施の形態のように樹脂材料からなる磁性体固定筐体20に筐体上面電極21および筐体下面電極22を形成する方法を採用すれば、通常の大量生産されているプリント基板または多層セラミック基板と同じ工程でスルーホールおよび貫通導体23を形成可能なため、加工が容易になる。磁性体10の上面、下面などの表面上に直接電極などの導体を形成する工程を行なわないことにより、上記のようなマイクロクラックまたはチッピングなどの発生を低減することができるとともに、加工が容易であるため製造コストを大幅に低減することができる。
さらに本実施の形態においては磁性体10にスルーホールが形成されない分だけ、磁性体10の外形寸法を縮小することができる。磁性体10を構成するフェライトなどの材料は高価であるため、これの寸法を縮小することにより、製造コストを削減することができる。
磁性体10の寸法を縮小することにより、また磁性体10に代わって高周波回路が形成される磁性体固定筐体20が形成されることにより、表面実装型の非可逆回路装置100を使用する際に懸念される、これを構成する各部材間の線膨張係数差の影響を小さくすることができる。これは回路基板90との線膨張係数差の大きい磁性体10の寸法を小さくし、かつ回路基板90と同一材料または類似材料により形成される磁性体固定筐体20が用いられることにより実現できる。このようにすれば、大きな熱応力による破損などの可能性を低減することができるため、信頼性を向上することができる。
本実施の形態においては、磁性体10が平面視におけるほぼ中央部に配置され、それを取り囲むように枠体状の磁性体固定筐体20が配置される。このような場合一般的に、磁性体10と磁性体固定筐体20とからなる平面上において磁性体10が配置される中央部から外側に向かって離れるほど熱応力が大きくなる。しかし本実施の形態においては非可逆回路素子P1が実装される回路基板90との線膨張係数差が大きい磁性体10が中央部に、回路基板90とほぼ同じ線膨張係数を有する磁性体固定筐体20がその外側に配置される。このため本実施の形態においては、このような構成を有さない場合に比べて発生する熱応力を小さくすることができ、信頼性を向上することができる。
以上により、本実施の形態の、磁性体固定筐体20に筐体上面電極21、筐体下面電極22および貫通導体23が形成され、筐体上面電極21が磁性体10の上方の導体薄膜32bに、筐体下面電極22が磁性体10の下方の回路基板導体91に接続された、非可逆回路素子P1の構成が実現できる。当該非可逆回路素子P1は製造コストおよび製造不良が低減され、信頼性が向上するとともに、その加工を容易にすることができる。
次に、本実施の形態においては、磁石50と磁性体10との間の領域に薄葉基板30を設けることにより、従来磁石50と磁性体10との間に薄葉基板30のような配線を形成する部材とは別の部材(スペーサ)として設けていた誘電体部品を、当該薄葉基板30で代替することができる。すなわち本実施の形態においては薄葉基板30を、磁性体10の上側の第1配線の形成部材として配置させるとともに、上記スペーサに相当する低誘電損失の誘電材料としての機能を有させるために配置させている。
薄葉基板30の真上に直接磁石50を配置させることができるため、上記スペーサに相当する部材を別途配置する必要がなくなる。これは薄葉基板30を構成する誘電体材料は上記のように伝送線路の一部をなしており、高周波回路に流れる信号による電磁界が磁石50側に漏えいするのを抑制する機能を併せ持つためである。この機能は本来、上記スペーサが有する機能であるため、薄葉基板30は当該スペーサに代替する部材として機能させることができる。したがって、非可逆回路素子P1を構成する部材数を削減することができ、非可逆回路素子P1の構成を単純化させることができる。
また薄葉基板30は、上記磁石50と磁性体10との間の領域のみならず、磁性体固定筐体20の上側の領域にも配置されている。言い換えれば薄葉基板30は、磁性体10および磁性体固定筐体20の双方の上側の領域を含むように配置されている。特に磁性体固定筐体20の真上の領域に配置される薄葉基板30は、その下側の薄葉基板主表面30B上のみに導体薄膜32が形成されることにより、高周波回路を構成する筐体上面電極21と、その上方の導体薄膜32とを電気的に容易に接続することができる。導体薄膜32は磁性体10が配置される側の主表面すなわち薄葉基板主表面30B上のみに形成されればよく、薄葉基板主表面30A上には形成されなくてもよい。このため、薄葉基板30の両側の主表面30A,30Bに導体薄膜を形成する必要がある場合に比べて、装置構成を単純化させ、製造コストを低減することができる。
次に、本実施の形態においては薄葉基板30と磁性体10との間に配置された接着部材としてのACF40により、両者間を高い強度で密着させている。ACF40が薄葉基板30と磁性体10との間の領域から薄葉基板30と磁性体固定筐体20との間の領域まで延びることから、薄葉基板30のほぼ全面をACF40により磁性体10などと接着固定させることができる。
またこのACF40は異方性を有する導電性を有し、磁性体固定筐体20の筐体上面電極21と薄葉基板30の導体薄膜32との重畳部分におけるこれらの間に配置されている。このため、たとえば図16および図17に示すように、導体薄膜32と筐体上面電極21とが互いに重畳するように位置決めしたうえで両者の間にACF40を挟み密着させることにより、磁性体固定筐体20と薄葉基板30との接合固定および電気的な接続の双方を同時に達成することができる。
ACF40が接着性とともに導電性を併せ持つことにより、導体薄膜32と筐体上面電極21との間の電気的な接続がなされるため、従来これらの間の電気的な接続のために別途必要であった導体材料を形成する必要がなくなる。このため、装置構成および工程をより簡素化させることができる。
さらにACF40は導電性に異方性を有している。言い換えればACF40は、導電性粒子が捕捉された部分のみに導通が生じるという性質を有する。このため、導通を必要とする電極同士(すなわち導体薄膜32と筐体上面電極21)を正確に位置決めさえすれば、ACF40自体の位置決め精度をさほど高くする必要はないという利点を有する。
また本実施の形態においては裏面導体13の表面上にソルダレジストSRを有している。このソルダレジストSRが樹脂製である場合、磁性体10の表面のうちほとんどの部分が樹脂材料の被膜に覆われることになる。このため磁性体10に外力または熱応力が加わった場合においても、ソルダレジストSRを含む樹脂の層により磁性体10が保護される効果が高められる。このように磁性体10が保護されることにより、磁性体主表面10Bおよび筐体主表面20BがソルダレジストSRに覆われることにより、実装工程にて磁性体10に発生し得るチッピングまたはクラックなどの不良を抑制することができる。この結果、非可逆回路装置100の製造歩留りを向上させ低コスト化させることができる。
次に、本実施の形態においては非可逆回路素子P1の最下面にはんだボール80が形成され、これにより回路基板90が接合されている。はんだボール80は球形であるため、これに加わる熱応力が低減される。したがってはんだボール80に接触する各部材の機械的耐性を向上させることができ、高い信頼性を得ることができる。またはんだボール80を用いたBGA実装方式を用いることにより、非可逆回路素子P1を被実装部P2に対して安定に表面実装させることができる。
本実施の形態においては非可逆回路装置100がはんだボール80を用いたBGA構造であるため、回路基板90上に実装される非可逆回路素子P1以外の他の表面実装用電子部品と同時に非可逆回路素子P1を回路基板90上に搭載、実装することができる。このため作業時間を短縮することができる。
最後に、仮に上記のようにたとえば磁性体10の上方と下方の配線を、折り曲げ加工した金属の取り付けにより形成する場合、形成される複数の折り曲げ加工された金属端子同士の形状が互いにばらつく可能性がある。このように金属端子の形状が互いにばらつけば、そのことにより非可逆回路装置100の電気特性がばらつく可能性が高くなる。その場合においても、本実施の形態のようにはんだボール80を用いたBGA構造を採用することにより、非可逆回路装置100の電気特性がばらつく可能性を低減することができる。
実施の形態1.の変形例
上記の実施の形態1においては、1つの磁性体10が1つの磁性体固定筐体20の固定可能部24内に組み込まれることにより非可逆回路素子P1が形成されている。しかし製造コストを下げる観点から、同時に複数の磁性体を複数の磁性体固定筐体20のそれぞれに組み込ませることにより同時に複数の非可逆回路素子P1を形成可能とする方が好ましい。
図31は、上記の製造方法を可能とする大型筐体29の例である。図31を参照して、大型筐体29は、上記と同様に中央部に固定可能部24が形成された磁性体固定筐体20が複数並んだもの同士が互いにジョイント部25で接続された構成を有している。この大型筐体29が、たとえば図2の非可逆回路装置100に含まれる磁性体固定筐体20と同様に、非可逆回路装置を構成している。
図31においては、図の左右方向に3列、図の上下方向に3列の磁性体固定筐体20が、互いに間隔をあけて行列状に配置されている。そしてこれらすべての磁性体固定筐体20を外側から矩形状(枠状)に囲むように外枠26が配置されている。個々の磁性体固定筐体20間の隙間、および外枠26と磁性体固定筐体20との間の隙間にはジョイント部25が接続されている。また平面視における外枠26の矩形状のそれぞれの角部には位置決めピン穴27が設けられている。
図31に示す大きな平面積を有する大型筐体29に含まれる複数の磁性体固定筐体20のそれぞれにより、図2に示すような非可逆回路素子P1が複数同時に形成され、当該非可逆回路素子P1が図31の磁性体固定筐体20のように行列状に複数並ぶ非可逆回路装置100が形成される。図31に示す大型筐体29を用いた処理は、平面積の大きな加熱プレス装置(大型プレス装置)を用いることによりなされることが好ましい。この大型プレス装置は、面精度および平行度が、通常のプレス装置(たとえば図21〜図26に示すボンダー44)よりも高精度である。
当該非可逆回路素子の製造工程においては、(図示されないが)まず大型筐体29に含まれるすべての固定可能部24内に磁性体10が配置され、上記と同様に弾性接着剤12で固定される。その後、上記大型プレス装置にこれがセットされ、以降は図19〜図26の各工程と同様の処理が大型プレス装置によりなされる。これにより、大型筐体29上に薄葉基板30が接合固定される。なおここで用いられる薄葉基板30としては、図31の大型筐体29のほぼ全体を上方から覆うような、実施の形態1よりも大型のものが用いられてもよい。
なお図24に示すような位置決めカメラ44Cに相当する装置等を用いて位置合わせを行なうことが困難な場合には、大型筐体29と、薄葉基板およびACF(図示せず)との位置合わせは位置決めピン穴27によりなされることが好ましい。
上記の本実施の形態の変形例のように大型筐体29が形成される場合、多数個の非可逆回路素子が同時に形成できるため、製造効率が向上し製造コストが削減できるとともに、磁性体10に段差および傾きが生じにくい構造とすることができる。
上記の実施の形態1においては、非可逆回路装置100に形成される個々の非可逆回路素子P1の仕上がり後の上下方向の厚みが僅かに異なるばらつきが生じる可能性がある。このような厚みのばらつきが生じれば、個々の非可逆回路素子P1に含まれる磁性体10の電気特性に影響を及ぼす可能性がある。しかし図31の大型筐体29を含む非可逆回路装置100を形成した場合には、このような上下方向の厚みのばらつきを抑制することができるため、個々の非可逆回路素子P1を均質化させることができる。
実施の形態2.
まず本実施の形態の非可逆回路装置に含まれる非可逆回路素子の構成について説明する。図32は実施の形態1の図2に、図33は実施の形態1の図16に、図34は実施の形態1の図17に、それぞれ対応する。
図32〜図34を参照して、本実施の形態の非可逆回路装置200は、基本的には実施の形態1の非可逆回路装置100と同様の構成を有するため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。ただし非可逆回路装置200においては、薄葉基板30と磁性体10との間に配置される接着部材として、ACF40の代わりに、絶縁性薄膜としての絶縁性接着フィルム49が配置されている。
絶縁性接着フィルム49は、平面視においてほぼACF40と同じ寸法を有している。ただし絶縁性接着フィルム49を用いる場合、薄葉基板30の導体薄膜32と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21とを電気的に接続させるためには、導体薄膜32とこれに重なる筐体上面電極21との間にはこれら双方に接するように絶縁性接着フィルム49が配置されるべきではない。また筐体上面電極21を含む高周波回路などにおける導通不良を抑制する観点から、筐体上面電極21などの電導に起因する絶縁性接着フィルム49の溶融および周囲への流出を抑制する必要がある。以上により、絶縁性接着フィルム49の平面視における外縁の一部には、平面視において筐体上面電極21との間に互いに間隔を有するように切れ込み部48が形成されている。この切れ込み部48により、少なくとも筐体上面電極21(および導体薄膜32)と重なる領域およびそれに隣接するごく狭い領域には、絶縁性接着フィルム49が配置されない態様となっている。
そして平面視における切れ込み部48の外側において、絶縁性接着フィルム49と互いに間隔を有するように別途準備された導電性部材としての導電性接着剤47が配置される。この導電性接着剤47は薄葉基板30の導体薄膜32と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21との双方に接するようにこれらの間に設けられている。この導電性接着剤47により、導体薄膜32と筐体上面電極21とが電気的に接続されている。
導電性接着剤47は、これに接続される導体薄膜32および筐体上面電極21などの電極の面積に対応させて細片化されたエポキシ樹脂系の導電性接着フィルム、細片化されたACFもしくは導電性の液状樹脂、またはペースト状の粘性体であることが好ましい。
一般的に導電性接着剤47は、なるべく接触抵抗を下げる観点から、当該導電性接着剤47に含まれる接着剤の内部に充填される導電性粒子の含有量を増すことによりその導電性を高めている。このため導電性接着剤47は、接着剤の部分の含有量が相対的に少なく、接着後の機械的な接着強度は高くない。このため本実施の形態においては、導電性接着剤47の低い接着強度を補う観点から、接着性を有する絶縁性薄膜としての絶縁性接着フィルム49が併用される。絶縁性接着フィルム49の平面積は比較的大きいため、これと導電性接着剤47との接着強度により、薄葉基板30と磁性体固定筐体20との間の充分な接着強度を確保することができる。
次に、今度は図33〜図34を製造工程を示す図として参照しながら、本実施の形態の非可逆回路装置200の製造方法について説明する。
本実施の形態の非可逆回路装置200の製造方法は、基本的には実施の形態1の非可逆回路装置100の製造方法と同様であるため、同様の製造方法についてはその説明を繰り返さない。
上記のように、本実施の形態は実施の形態1と比較して、薄葉基板30と磁性体10および磁性体固定筐体20との接着固定の態様が異なっている。このため以下においては主にこれらの接着工程について説明する。
図33を参照して、絶縁性接着フィルム49および導電性接着剤47が準備される。当初の薄葉基板30の平面視における寸法は、磁性体固定筐体20の同寸法よりもやや小さく、かつ絶縁性接着フィルム49(切れ込み部48を無視して考える)の平面視における寸法は、薄葉基板30の同寸法よりもやや小さくなっていることが好ましい。具体的な絶縁性接着フィルム49の寸法は、当該絶縁性接着フィルム49の特性を考慮の上決定されることが好ましい。
絶縁性接着フィルム49の外縁の一部には、上記のようにこれが導体薄膜32および筐体上面電極21と重なることを抑制するために切れ込み部48が形成される。切れ込み部48は図33および図34においては導体薄膜32および筐体上面電極21と重なる領域を避けることが可能な矩形状を有しているが、切れ込み部48の形状はこれに限られない。
絶縁性接着フィルム49は、いわゆるBステージの状態のエポキシ樹脂系フィルムであることが好ましい。ただし絶縁性接着フィルム49は必ずしもエポキシ樹脂系フィルムである必要はなく、それ以外の熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また絶縁性接着フィルム49の配置される箇所は高周波の伝送線路に近い場所であるため、絶縁性接着フィルム49はなるべく誘電損失の低い材料により形成されることが好ましい。当初の絶縁性接着フィルム49の平面視における横方向および縦方向の寸法(切れ込み部48を無視して考える)は、実施の形態1のACF40と同じほぼ6.6mmであり、厚みは30μm以上50μm以下であることが好ましい。
導電性接着剤47としては、たとえば予め銀などの導電性粒子が混入された、いわゆるBステージの状態のエポキシ樹脂系の導電性接着フィルムが用いられる。ただし導電性接着剤47は上記のようにフィルム状である必要はなく、たとえば液状樹脂であってもよく、ペースト状の粘性体であってもよい。ペースト状の粘性体の導電性接着剤47は、たとえばスクリーン印刷法、転写工法(スタンピング)またはディスペンサDP(図14参照)を用いる方法により、薄葉基板主表面30B上の所望の箇所に供給される。また液状樹脂としての導電性接着剤47は、たとえばディスペンサDPを用いることにより所望の箇所に供給される。当該導電性接着フィルムの厚みはたとえば30μm以上50μm以下であることが好ましい。導電性接着剤47は、筐体上面電極21と導体薄膜32とが平面的に重なる部分において両者の間に挟まり両者に接触することが可能な程度に細片化されることが好ましい。
絶縁性接着フィルム49が磁性体10および磁性体固定筐体20の上に仮接着される。この工程は、具体的には、図19〜図23に示す3層構造フィルム43に含まれるACF40を絶縁性接着フィルム49に置き換えたものを用いて、図19〜図22の工程と同様に説明可能である。すなわち図18(A),(B),(C)と同様に軽セパレータ42、絶縁性接着フィルム49、重セパレータ41の順に積層された3層構造フィルムがボンダーヘッド44Aに吸着される。軽セパレータ42の3層構造フィルム43からの分離後、図22の工程と同様に、ボンダーヘッド44Aの下降および押圧により、加熱ステージ44B上に真空吸着された磁性体10および磁性体固定筐体20上に、絶縁性接着フィルム49が仮接着される。図23のように重セパレータ41が分離することにより、図33に示すように、絶縁性接着フィルム49のフィルム下側主表面49Bが磁性体10などの表面に接合し、これと対向するフィルム上側主表面49Aが上側を向くように仮接着される。絶縁性接着フィルム49の仮接着時の密着力向上のため、磁性体10および磁性体固定筐体20は絶縁性接着フィルム49の加熱硬化温度以下の温度で適宜加温されてもよい。絶縁性接着フィルム49の仮接着についてはここでは上記の説明に留め、これ以上の詳細な説明を省略する。
次に導電性接着剤47が仮接着される時点においては、既に磁性体10および磁性体固定筐体20上に絶縁性接着フィルム49が仮接着されている。このため、図24の工程と同様にボンダーヘッド44Aに真空吸着された薄葉基板30の薄葉基板主表面30B上の所望の箇所に導電性接着剤47が仮接着される。この薄葉基板主表面30B上への導電性接着剤47の仮接着も、ボンダー44を用いてなされることが好ましい。
ただし実施の形態1においては図24の工程において、ACF40が半透明であることを利用して、その真下に透けて見える筐体上面電極21に導体薄膜32を位置合わせするのに対し、本実施の形態においては薄葉基板30側に仮接着された導電性接着剤47の半透明性を利用して導体薄膜32を位置合わせしてもよい。導電性接着剤47が半透明性でない場合は、導体薄膜32の外形寸法よりも小さい導電性接着剤47を用いることで位置合わせしてもよい。ただしこのような処理が困難な場合には、たとえば磁性体固定筐体20と薄葉基板30とに専用の位置決めマークを設け、これを用いて両者が位置決めされてもよい。
このように、導電性接着剤47を用いて導体薄膜32(薄葉基板30)が位置決めされる点において実施の形態1と異なるが、薄葉基板30の接着時には基本的に図24〜図26の工程と同様の処理がなされる。以上により導電性接着剤47および薄葉基板30が、磁性体10が固定された磁性体固定筐体20および絶縁性接着フィルム49とともに本接着される。導電性接着剤47の仮接着についてはここでは上記の説明に留め、これ以上の詳細な説明を省略する。
以上に述べた各点において本実施の形態は実施の形態1と異なっているが他の点においては基本的に実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態1と同様の作用効果の他、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、実施の形態1のACF40の代わりに絶縁性接着フィルム49が用いられる。これにより、材料コストが高価なACFを用いずに実施の形態1の非可逆回路装置100と同様の性能の非可逆回路装置200を製造することができる。
またACF40の代わりに絶縁性接着フィルム49を用いることにより、磁性体10が固定された磁性体固定筐体20と、薄葉基板30との接着強度を実施の形態1よりもいっそう向上させることができる。
実施の形態2.の変形例
上記のように、本実施の形態においては基本的に実施の形態1と同様にボンダー44を用いて絶縁性接着フィルム49などが接着される。つまりボンダー44が加熱と加圧とを同時に行なうことにより接着がなされる。しかし加熱せずに室温条件下で絶縁性接着フィルム49を加圧により磁性体10などに接着させることも可能である。この場合には絶縁性接着フィルム49として、図33のフィルム上側主表面49Aとフィルム下側主表面49Bとの両面に粘着性を有する絶縁性両面粘着フィルムが用いられることが好ましい。ただしこの場合には、絶縁性両面粘着フィルムとして、非可逆回路素子P1を回路基板90上にリフロー実装する際の温度に耐え得る材料を選択することが好ましい。
実施の形態3.
まず本実施の形態の非可逆回路装置に含まれる非可逆回路素子の構成について説明する。図35は実施の形態1の図2に、図36は実施の形態1の図16に、図37は実施の形態1の図17に、それぞれ対応する。
図35〜図37を参照して、本実施の形態の非可逆回路装置300は、基本的には実施の形態1の非可逆回路装置100と同様の構成を有するため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。ただし非可逆回路装置300においては、薄葉基板30と磁性体10との間に配置される接着部材として、ACF40の代わりに、絶縁性を有する液体接着剤としての絶縁性液体接着剤46が配置されている。ただしここでの液体接着剤とは、硬化される前の初期状態において液体であることを意味している。
本実施の形態においても実施の形態2と同様にACF40は用いられないため、薄葉基板30の導体薄膜32と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21とを電気的に接続させるためには、これらの重なる領域には絶縁性接着フィルム49が配置されるべきではなく、導電性部材が配置されるべきである。そこで本実施の形態においては、薄葉基板30の導体薄膜32と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21とが導電性部材としてのプリコートはんだ45(はんだ)により電気的に接続されている。
プリコートはんだ45(はんだ)は基本的に、実施の形態2での導電性部材である導電性接着剤47よりも接合強度が高い。このため本実施の形態においては、実施の形態2よりも高強度に、薄葉基板30の導体薄膜32と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21とを接着させることができる。したがって本実施の形態においては、薄葉基板30とその下側の磁性体10および磁性体固定筐体20とを接着すべき領域の面積を、実施の形態2よりも小さくすることができる。
ここで本実施の形態における上記接着すべき領域の面積とは、高周波回路の電気特性上両者を接着することが必要な領域の面積を意味している。この領域は、上記の伝送線路が形成される部分に相当する。この観点に基づけば、基本的に磁性体10とその真上の薄葉基板30とが可能な限り接近した状態で接着されていることが好ましく、上記接着すべき領域の面積とは、磁性体10の平面視における面積(以下)であるといえる。また互いに接着される磁性体10と薄葉基板30との間には空隙などが存在しないことが好ましい。
そこで本実施の形態においては、絶縁性液体接着剤46が、薄葉基板30と磁性体10との間の領域のみに配置されている。すなわち磁性体固定筐体20と薄葉基板30との接着は、筐体上面電極21と導体薄膜32との接着がプリコートはんだ45によってなされている領域以外の領域においてはなされていない。したがって絶縁性液体接着剤46の平面視における面積は、たとえば実施の形態2の導電性接着剤47(および実施の形態1のACF40)に比べてかなり小さい。
絶縁性液体接着剤46は、たとえばエポキシ樹脂系接着剤からなることが好ましい。絶縁性液体接着剤46としてのエポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤とが別々に分けられた2液混合型よりも、あらかじめ主剤と硬化剤とが混練されシリンジにより供給可能である1液性エポキシ樹脂が用いられることが好ましい。このようにすれば、絶縁性液体接着剤46の取り扱いが容易となり、作業性に優れる。より具体的には、絶縁性液体接着剤46として、半導体用ダイボンド樹脂またはアンダーフィル樹脂を用いることができ、事前評価を実施したうえでこれらを使用することができる。
次に、今度は図36〜図37を製造工程を示す図として参照しながら、本実施の形態の非可逆回路装置300の製造方法について説明する。また図38は、プリコートはんだ45の流動を抑制するための機構を示している。
本実施の形態の非可逆回路装置300の製造方法は、基本的には実施の形態1の非可逆回路装置100の製造方法と同様であるため、同様の製造方法についてはその説明を繰り返さない。
上記のように、本実施の形態は実施の形態1と比較して、薄葉基板30と磁性体10および磁性体固定筐体20との接着固定の態様が異なっている。このため以下においては主にこれらの接着工程について説明する。
図36を参照して、磁性体10が固定された磁性体固定筐体20の形成後、磁性体固定筐体20の筐体上面電極21上には、はんだプリコート法により予め固形のプリコートはんだ45が必要量だけ供給される。このように本実施の形態においては、絶縁性液体接着剤の供給に先立って、プリコートはんだ45が供給される。
プリコートはんだ45は、はんだペーストを、たとえばスクリーン印刷法、転写工法(スタンピング)またはディスペンサDP(図14参照)を用いる方法により、筐体上面電極21上の所望の箇所に供給される。プリコートはんだ45は、筐体上面電極21上のうち、その真下の貫通導体23と重なる領域以外の領域に供給されることが好ましい。その後、当該磁性体10が固定された磁性体固定筐体20をリフロー炉内に投入し加熱することにより、供給されたはんだペーストが溶融し、リフロー炉の高温環境を通過した後に冷却固化される。これにより筐体上面電極21上に固形のはんだ層がプリコートはんだ45として供給される。
図35および図38を参照して、筐体上面電極21上においては、貫通導体23と重なる領域以外の領域の一部にプリコートはんだ45が供給され、当該プリコートはんだ45の供給領域と貫通導体23と重なる領域との間の領域にソルダレジストSRが形成された構成とされることが好ましい。ここでのソルダレジストSRは、実施の形態1におけるソルダレジストSRと同様の材質により形成されたものである。このようにすれば、ソルダレジストSRは、プリコートはんだ45が溶融した際にこれが磁性体固定筐体20のスルーホール内に流入することを抑制するためのダムとして機能する。
次に、プリコートはんだ45の供給を終えた後、絶縁性液体接着剤46を用いて、磁性体10に薄葉基板30が接着される。
磁性体10の上側の磁性体主表面10A上には、上記のはんだペーストの供給時と同様に、たとえばスクリーン印刷法、転写工法(スタンピング)またはディスペンサDP(図14参照)を用いる方法により、予め定められた量の絶縁性液体接着剤46が供給される。しかし最も作業性を良くする観点からは、ディスペンサDPを用いて絶縁性液体接着剤46が供給されることが最も好ましい。絶縁性液体接着剤46の供給される量は、接着時に当該絶縁性液体接着剤46がはみ出すことにより他の領域に影響を及ぼさないように決定された最適値を適用することが好ましい。
この後、実施の形態1の図24〜図26に示した各工程と同様にボンダー44を用いた処理を行なうことにより、薄葉基板30が磁性体10の上に接着固定される。なお本実施の形態においては筐体上面電極21の最外部にはACF40などが重畳されていないため、筐体上面電極21を見ながら薄葉基板30を位置合わせすることができる。
また本実施の形態においてもボンダー44を用いて加熱と加圧とを同時に行なうことにより、薄葉基板30を磁性体10の上に接着させることができる。しかし本実施の形態においては、必要に応じて上記のボンダー44に加え、加熱プレス、ばね、重石など外部から荷重を与えることが可能な装置または治具などを用いて加熱および加圧を補いながら、加熱乾燥炉中などで上記の接着工程をが行われてもよい。このようにすれば、絶縁性液体接着剤46がより確実に加熱硬化され、いっそう強固な接着が可能となる。
次に、絶縁性液体接着剤46が硬化した後に、筐体上面電極21上のプリコートはんだ45が加熱溶融され、筐体上面電極21と薄葉基板30とがはんだ接合される。この工程においては実施の形態1のボンダー44の加熱ステージ44Bを用いて磁性体10および磁性体固定筐体20が100℃以上に予熱された上で、薄葉基板30の上方からボンダーヘッド44Aの加熱により薄葉基板30の上側から入熱されてもよい。ただしこの工程においては、たとえば上記のボンダー44を用いずに、局所加熱が可能なはんだごてなどの加熱ツールを用いてプリコートはんだ45が加熱溶融されてもよい。
なお上記においては先に絶縁性液体接着剤46が加熱硬化され、その後にプリコートはんだ45による接続がなされているが、これらの順序を逆にしてもよい。また特に上記のボンダー44を用いる場合には、絶縁性液体接着剤46の加熱硬化とプリコートはんだ45の加熱溶融とが同時になされ、両者により同時に接合されてもよい。
また本実施の形態のプリコートはんだ45による接続部には、フラックスは用いられないことが好ましい。このようにすればフラックス残渣に起因する筐体上面電極21および導体薄膜32の腐食またはマイグレーションの発生を抑制することができる。このようにフラックスを用いないが高信頼性を有するはんだ付けは、導体薄膜32の表面に金の薄膜がフラッシュめっきされることにより可能となる。
以上に述べた各点において本実施の形態は実施の形態1と異なっているが他の点においては基本的に実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態1と同様の作用効果の他、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、上記のようにプリコートはんだ45を用いることにより、実施の形態1,2よりも高強度に、薄葉基板30の導体薄膜32と磁性体固定筐体20の筐体上面電極21とを接着させることができる。これにより、薄葉基板30とその下側の磁性体10および磁性体固定筐体20とを接着すべき領域の面積を、実施の形態2よりも小さくすることができる。
ここで、(筐体上面電極21を除き)磁性体10のみを用いて薄葉基板30と接着することにより、磁性体10と磁性体固定筐体20との双方を薄葉基板30と接着させる場合に比べて、磁性体10と薄葉基板30とをより接近した状態で安定に接着させることができる。
このような固定は、絶縁性液体接着剤46により可能である。絶縁性液体接着剤46を用いれば、たとえば本実施の形態の絶縁性液体接着剤46と同じ大きさ(磁性体10の大きさ以下)のACF40または絶縁性接着フィルム49を用いる場合に比べて、磁性体10と薄葉基板30との密着性がより良好になる。これは絶縁性液体接着剤46は、ACF40および絶縁性接着フィルム49よりも接着強度が高いためである。
また、絶縁性液体接着剤46を用いることにより、当該接着部材の平面視における面積を実施の形態1,2よりも小さくすることができる。つまり接着部材の製造に用いる材料の量が少なくなる分だけ接着部材の製造コストを削減することができる。
なおそもそも絶縁性液体接着剤46は、ACF40および絶縁性接着フィルム49よりも安価であるため、この観点からも絶縁性液体接着剤46の使用により接着部材の製造コストを削減することができるといえる。
また本実施の形態においては、接着部材が磁性体10上のみに配置され磁性体固定筐体20上には配置されない。このため実施の形態1,2のように磁性体固定筐体20上にも接着部材が配置される場合に比べて、接着部材を用いた接着後に当該接着部材がはみ出すなどの不具合の発生を抑制することができる。このため製造上または寸法上の自由度を向上させることができる。
実施の形態3.の変形例
ただし材料コストは上記の場合よりも高騰するが、本実施の形態において、上記の絶縁性液体接着剤46の代わりに、実施の形態2に述べた絶縁性接着フィルム49または室温で接着可能な絶縁性両面粘着フィルムが用いられ、かつ導電性部材としては上記同様にプリコートはんだ45が用いられてもよい。
また上記の説明においては筐体上面電極21と導体薄膜32とを接着する導電性部材としてプリコートはんだ45が用いられる。しかしプリコートはんだ45と同等の接着強度を確保できる場合、その他強度的に問題がない場合には、はんだ以外の導電性部材を用いて筐体上面電極21と導体薄膜32とを接着することもできる。たとえば、はんだの代わりに金などの金属細線で作ったスタッドバンプを超音波接合または加熱加圧圧着することによっても、筐体上面電極21と導体薄膜32とを接着することができる。
実施の形態4.
まず本実施の形態の非可逆回路装置に含まれる非可逆回路素子の構成について説明する。図39は実施の形態1の図2に対応する図面であり、図40は実施の形態1の図7および図10と同様の観点から示された図面である。また図41は実施の形態1の図5に対応する。
図39を参照して、本実施の形態の非可逆回路装置400は、基本的には実施の形態1の非可逆回路装置100と同様の構成を有するため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。ただし非可逆回路装置400においては、磁性体固定筐体20が、第1の磁性体固定筐体部分としての上側筐体20Uと、第2の磁性体固定筐体部分としての下側筐体20Lとにより構成されている。つまり本実施の形態の磁性体固定筐体20は、2つのプリント基板の組み合わせにより構成されている。この点において本実施の形態の磁性体固定筐体20は、単一のプリント基板として構成される実施の形態1〜3の磁性体固定筐体20とは異なっている。
上側筐体20Uと下側筐体20Lとはいずれも平面視においてたとえば四角形(正方形)の平面形状を有するように形成されており、いずれもほぼ同じ外形寸法を有している。このため上側筐体20Uと下側筐体20Lとは平面視においてほぼ重なるように配置される。また上側筐体20Uと下側筐体20Lとはいずれも同じ素材からなり、いずれも実施の形態1〜3の磁性体固定筐体20と同じ素材により構成されている。
上側筐体20Uは実施の形態1〜3の磁性体固定筐体20と同様に固定可能部24を有し、当該固定可能部24内に配置された磁性体10を平面視における外周部側から取り囲むように配置されている。これに対し下側筐体20Lは、磁性体10の下側(他方側)から磁性体10を覆う(取り囲む)ように配置されている。
図39および図40を参照して、上側筐体20Uの上側の主表面上には筐体上面電極21が、下側筐体20Lの下側の主表面上には筐体下面電極22が、それぞれ形成されている。そして上側筐体20Uの下側の主表面には介在下面電極22Iが、下側筐体20Lの上側の主表面には介在上面電極21Iが、それぞれ形成されている。介在下面電極22Iと介在上面電極21Iとは、基本的にほぼ同じ形状、寸法を有し、同じ材質により形成されることが好ましい。
上側筐体20Uにおいては、筐体上面電極21から介在下面電極22Iまで上側筐体20Uを貫通する貫通導体23が形成されている。下側筐体20Lにおいては、介在上面電極21Iから筐体下面電極22まで下側筐体20Lを貫通する貫通導体23が形成されている。また介在下面電極22Iと介在上面電極21Iとは互いに間隔をあけて対向していることが好ましい。
下側筐体20Lは上側筐体20Uとは異なり、固定可能部24のような開口部を有していない。上記のように上側筐体20Uと下側筐体20Lとは平面視においてほぼ重なるように配置されるが、これにより磁性体10の真下の領域には下側筐体20L本体を構成する一部分が配置される。
上側筐体20Uに保持される磁性体10の真下の領域における下側筐体20Lの最上面には、介在上面電極21Iと同一の層としての接地電極ETEが形成されている。介在上面電極21Iおよび接地電極ETEは、図5の磁性体10および図8の磁性体固定筐体20と同様に、下側筐体20Lの上側の表面上に形成された導体材料の薄膜がパターニングにより形成されたものである。また当該磁性体10の真下の領域における下側筐体20Lの最下面には、筐体下面電極22と同一の層としての接地電極ETEが形成されている。筐体下面電極22および接地電極ETEは、図5の磁性体10および図8の磁性体固定筐体20と同様に、下側筐体20Lの下側の表面上に形成された導体材料の薄膜がパターニングにより形成されたものである。これらの接地電極ETE間を貫通するように、磁性体10の真下の領域における下側筐体20Lには貫通導体23が形成されている。
このように下側筐体20Lが磁性体10の真下の領域において(スルーホール内を除き)下側筐体20Lを構成する素材で充填されている。下側筐体20Lの当該真下の領域の最上面(介在上面電極21Iと同一の層の接地電極ETEが形成される面)と、その真上の上側筐体20Uに形成された固定可能部24の内壁面とにより、磁性体固定筐体20には凹部が形成されている。つまりこの凹部は固定可能部24と一致するように(固定可能部24として)形成されている。凹部は介在上面電極21Iと同一の層の接地電極ETEが形成される面を底面として有することにより、固定可能部24内(凹部内)に配置される磁性体10はその側方のみならず、その下方からも支持可能な構成となっている。
上側筐体20Uの介在下面電極22Iを含む最下面と、下側筐体20Lの介在上面電極21Iを含む最上面とは互いに対向しており、両者間には実施の形態1と同様のACF40が配置されている。このACF40により、上側筐体20Uと下側筐体20Lとは互いに接合されて一体となっている。またこのACF40により、たとえば互いに対向する介在下面電極22Iと介在上面電極21Iとは電気的に接続されている。
さらにこのACF40により、磁性体10の下側の磁性体主表面10Bと、下側筐体20Lの最上面の接地電極ETEなどとが電気的および機械的に接続されている。したがって本実施の形態においては、実施の形態1〜3のように磁性体10の直下に裏面導体13を介してはんだボール80が接続されているわけではなく、磁性体10の下側の磁性体主表面10B上にはソルダレジストSR、ソルダレジスト開口部SRCおよび裏面導体13は形成されていない。
図41(A),(B)は本実施の形態における磁性体10の平面形状を示しており、図41(C)は図41(B)のXLIC−XLIC線に沿う部分の概略断面図である。図41を参照して、本実施の形態においては、磁性体10の上側(一方側)の磁性体主表面10A、磁性体10の下側(他方側)の磁性体主表面10Bともに、磁性体10を構成するたとえばフェライトの素地が露出している。一方、下側筐体20Lの最下面ははんだボール80に直接接続されるため、この下側筐体20Lの最下面に図5(B)の磁性体主表面10Bと同様に、ソルダレジストSR、ソルダレジスト開口部SRCおよび裏面導体(と同一の層としての接地電極ETE)が形成されている。はんだボール80の最下部は、他の実施の形態と同様に、回路基板導体91と同一の層としての接地電極ETEに接続されている。
図39の非可逆回路装置400においては、薄葉基板30と磁性体10および上側筐体20Uとの接着は実施の形態1と同様にACF40によりなされている。しかし本実施の形態においても、薄葉基板30と磁性体10および上側筐体20Uとの接着が実施の形態2,3の非可逆回路装置200,300と同様の態様によりなされてもよい。また本実施の形態においても実施の形態1と同様に、伝送線路の特性上、磁性体10および磁性体固定筐体20の上側の主表面と、薄葉基板30の導体薄膜32とは可能な限り接近した状態で互いに接合していることが好ましい。
次に、本実施の形態の非可逆回路装置400の製造方法について説明する。
本実施の形態の非可逆回路装置400の製造方法は、基本的には実施の形態1の非可逆回路装置100の製造方法と同様であるため、同様の製造方法についてはその説明を繰り返さない。
上記のように、本実施の形態は実施の形態1と比較して、磁性体固定筐体20が上側筐体20Uと下側筐体20Lとを有しこれらが貼り合わせられた構成を有する点において異なっている。このため以下においては主に磁性体固定筐体20の形成方法について説明する。
実施の形態1と同様に、上側筐体20Uの固定可能部24内に磁性体10が配置され、弾性接着剤12により上側筐体20Uに固定される。次に実施の形態1の図19〜図26に示す工程と同様の処理により、ボンダー44および3層構造フィルム43(ACF40を含む)を用いて、上側筐体20Uと下側筐体20LとがACF40で固定され一体化する。
ただし本実施の形態においては、まず上側筐体20Uと下側筐体20Lと磁性体10とが同時にACF40により図19〜図26と同様のボンダー44を用いて接着され、当該接着の完了後に上側筐体20Uの固定可能部24と磁性体10との隙間に弾性接着剤12を注入して磁性体10と上側筐体20Uとを固定する方法が用いられてもよい。
なおACF40は加熱加圧加工時における粘度低下が液状樹脂材料に比べて小さい。このため上記のような接着時に予めスルーホールを穴埋めする処理などを行なう必要がないという利点を有する。
以上に述べた各点において本実施の形態は実施の形態1と異なっているが他の点においては基本的に実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態1と同様の作用効果の他、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、上側筐体20Uの固定可能部24に取り囲まれ保持された磁性体10は、固定可能部24の内壁面とその下側の下側筐体20Lの表面とにより形成される凹部内に収納される。このため実施の形態1〜3においては磁性体10の下側の磁性体主表面10B上には裏面導体13およびソルダレジストSRなどが直接形成されていない。これにより、磁性体10を形成するための製造コストを大幅に削減することができる。
このことについて、本実施の形態の非可逆回路装置400のコスト分析の結果、とりわけ磁性体10へのスルーホールの形成加工およびソルダレジストSRの形成加工は、非可逆回路装置400全体の製造に要するコストの80%以上のコストを要する場合があることがわかっている。つまり本実施の形態のようにたとえ磁性体固定筐体20の構成を実施の形態1〜3より複雑にしたとしても、それ以上に磁性体主表面10B上に裏面導体13およびソルダレジストSRを形成する工程を排除することにより、全体の製造コストを削減することができるといえる。この理由は、磁性体10を構成するフェライトなどの材料は、硬くて加工が困難であり、割れや欠けなどの不良を発生しやすいことと、めっき膜および樹脂膜の付着力が弱いこととにある。
実施の形態5.
まず本実施の形態の非可逆回路装置に含まれる非可逆回路素子の構成について説明する。図42は実施の形態1の図2に対応する。
図42を参照して、本実施の形態の非可逆回路装置500は、基本的には実施の形態4の非可逆回路装置400と同様の構成を有するため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。ただし非可逆回路装置500においては、実施の形態4の磁性体固定筐体20に相当する磁性体固定筐体20Cが、第1の部分と、第2の部分とを有し、これらが一体として構成されている。第1の部分は、磁性体固定筐体20Cのうち、固定可能部24が形成されており、当該固定可能部24を平面視における外周部側から取り囲むように配置された部分であり、実施の形態4の上側筐体20Uに相当する部分である。すなわち第1の部分は、上側筐体20Uと同様の位置に配置されており、かつ当該上側筐体20Uと同様の形状を有している。また第2の部分は、固定可能部24を含む第1の部分をその下側(他方側すなわち回路基板90側)から覆う(取り囲む)ように配置されかつ第1の部分と一体化している部分であり、実施の形態4の下側筐体20Lに相当する部分である。すなわち第2の部分は、下側筐体20Lと同様の位置に配置されており、かつ当該下側筐体20Lと同様の形状を有している。
したがって第2の部分は、第1の部分の固定可能部24のような開口部を有さず、概ね平板形状を有している。第2の部分の最上面と、その真上に配置される第1の部分の固定可能部24の内壁面とにより、磁性体固定筐体20には凹部が形成されている。この凹部内に磁性体10が収納されており、磁性体10は弾性接着剤12により凹部内(固定可能部24)に固定されている。
磁性体固定筐体20Cは、上記の磁性体10を収納可能な凹部を有する筐体として構成されている。
凹部内における上記第2の部分の最上面に相当する表面上には、接地電極ETEが形成されている。この接地電極ETEは、実施の形態4と同様に、その真下の第2の部分を貫通する貫通導体23を介して、第2の部分の最下部の(筐体下面電極22と同一の層である)接地電極ETEと電気的に接続されている。また本実施の形態においては第1の部分と第2の部分とが一体となっているため、平面視における磁性体10の外周部側においては、筐体上面電極21と筐体下面電極22とが貫通導体23を介して直接電気的に接続されている。つまり本実施の形態においては、実施の形態4における上側筐体20Uと下側筐体20Lとを接続するACF40は配置されていない。
ただし本実施の形態においては、固定可能部24内には導電性部材が配置されておらず、固定可能部24(凹部)内の磁性体10は、絶縁性液体接着剤46により、その下側において磁性体固定筐体20Cの第2の部分に固定されている。ここでの絶縁性液体接着剤46は、実施の形態3で用いられる絶縁性液体接着剤46と同様の組成を有している。
次に、本実施の形態の非可逆回路装置500の製造方法について説明する。
本実施の形態の非可逆回路装置500の製造方法は、基本的には実施の形態4の非可逆回路装置400の製造方法と同様であるため、同様の製造方法についてはその説明を繰り返さない。
上記のように、本実施の形態は実施の形態4と比較して、磁性体固定筐体20Cが実施の形態4の上側筐体20Uに相当する第1の部分と実施の形態4の下側筐体20Lに相当する第2の部分とが一体化された構成を有する点において異なっている。この2つの部分が一体化された部材としての磁性体固定筐体20Cはたとえば以下のように形成される。
たとえば第2の部分としてのプリント基板の上に第1の部分としてのプリント基板が積層されプレス加工された多層プリント基板が形成される。その後、第1の部分としてのプリント基板の一部(特に平面視における中央部)にエンドミルなどを用いて切削加工がなされることにより、開口部としての固定可能部24が形成される。
形成された磁性体固定筐体20Cへの磁性体10の収納および固定は、以下の手順によりなされる。上記のように本実施の形態においては固定可能部24内には絶縁性液体接着剤46が供給されるため、磁性体10とその真下の接地電極ETEとは電気的に導通されない。しかし本実施の形態においても他の実施の形態と同様に、磁性体10と薄葉基板30の導体薄膜32とは可能な限り接近した状態であり、両者の間に空隙などが存在しない状態とされることが好ましい。
まず磁性体固定筐体20Cの固定可能部24内(固定可能部24の底面)の接地電極ETEの表面上に絶縁性液体接着剤46が供給される。ここでは実施の形態3における転写工法(スタンピング)またはディスペンサDP(図14参照)を用いる方法により、絶縁性液体接着剤46が供給されることが好ましい。ただしこれらの中でもディスペンサDPを用いて絶縁性液体接着剤46が供給されることが特に好ましい。
以上により絶縁性液体接着剤46が供給された後、磁性体固定筐体20Cが実施の形態1と同様のボンダー44(図21〜図26参照)にセットされ、磁性体10が固定可能部24内に配置される。その後ボンダー44のたとえば加熱ステージ44Bにより絶縁性液体接着剤46が加熱硬化される。
以降、実施の形態1と同様にボンダー44を用いて磁性体10と磁性体固定筐体20C(固定可能部24)とを接着させる。ただしここでも実施の形態3で説明したように、必要に応じて上記のボンダー44に加え、加熱プレス、ばね、重石など外部から荷重を与えることが可能な装置または治具などを用いて加熱および加圧を補いながら、加熱乾燥炉中などで上記の接着工程をが行われてもよい。このようにすれば、絶縁性液体接着剤46がより確実に加熱硬化され、いっそう強固な接着が可能となる。
その後、実施の形態1の図14に示す工程と同様に、固定可能部24の内壁面と磁性体10との間にディスペンサDPにより弾性接着剤12が供給され、これが硬化される。
以上に述べた各点において本実施の形態は実施の形態4と異なっているが他の点においては基本的に実施の形態4と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態4と同様の作用効果の他、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては磁性体固定筐体20Cが、実施の形態4の上側筐体20Uに相当する第1の部分と下側筐体20Lに相当する第2の部分とが一体化され、1つの部材としての構成を有している。このため実施の形態4のように磁性体固定筐体20が上側筐体20Uと下側筐体20Lとの2つの部材に分かれている場合に比べて製造工程を削減することができ、磁性体固定筐体20Cを単一の部材として調達することができる。
また本実施の形態においては磁性体10は固定可能部24内に導電性部材が配置されない状態で、磁性体固定筐体20Cの第2の部分に固定される。つまり上記の他の実施の形態において磁性体10の下側の磁性体主表面10Bに必ず存在していた導電性部材の配置がなされていない。このため本実施の形態においても実施の形態4と同様に、磁性体主表面10B上にソルダレジストSRを形成する工程を排除することができる。このため実施の形態4で説明したとおり、磁性体10に対する加工コストを大幅に削減することができ、全体の製造コストを削減することができる。
また本実施の形態においては磁性体固定筐体20Cが第1の部分と第2の部分との積層により形成された多層プリント基板となる。このため磁性体固定筐体20が単層のプリント基板である場合に比べて、強固なシールド構造とすることができる。
実施の形態5.の変形例
本実施の形態においても、たとえば絶縁性液体接着剤46の代わりにACF40を用いて磁性体10と磁性体固定筐体20Cとを接着してもよい。しかしACF40の材料コストの高騰が問題となる場合においては、ACF40の代わりにたとえば実施の形態2の絶縁性接着フィルム49または室温で接着可能な絶縁性両面粘着フィルムが用いられてもよい。
あるいは最初に磁性体10を固定可能部24の最下面に接着させる工程においても、これを固定可能部24の内壁面に接着させる工程と同様に弾性接着剤12を用いてもよい。つまり磁性体10と磁性体固定筐体20Cとの固定が、その全体において弾性接着剤12のみにより賄われた構成としてもよい。
実施の形態6.
まず本実施の形態の非可逆回路装置に含まれる非可逆回路素子の構成について説明する。図43は実施の形態1の図2に対応する。
図43を参照して、本実施の形態の非可逆回路装置600は、基本的には実施の形態5の非可逆回路装置500と同様の構成を有するため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。ただし非可逆回路装置600においては、実施の形態5における磁性体固定筐体20Cと同一形状および同一機能を有する磁性体固定筐体20LTが、実施の形態5における有機樹脂材料の代わりにセラミック材により形成されている。
磁性体固定筐体20LTは、たとえばLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)により形成されていることが好ましい。あるいは磁性体固定筐体20LTは、たとえばHTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)により形成されていてもよい。
なお実施の形態1〜4においても磁性体固定筐体20は基本的に有機樹脂材料により形成されているが、実施の形態1〜4の磁性体固定筐体20が本実施の形態のようにセラミック製となってもよい。つまり本実施の形態は、実施の形態1〜4の磁性体固定筐体20がセラミック製の磁性体固定筐体20LTとなった例を含んでいる。
本実施の形態の非可逆回路装置600の製造方法は、実施の形態5の樹脂製の磁性体固定筐体20Cがセラミック製の磁性体固定筐体20LTに置き換わっているものの、基本的には実施の形態5と同様の手順であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態5と同様の作用効果の他、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、セラミック製の磁性体固定筐体20LTが用いられる。これにより、樹脂製の磁性体固定筐体20,20Cに比べて製造が容易になるという効果が得られる。
またセラミック製の磁性体固定筐体20LTが用いられることにより、非可逆回路装置600の信頼性および放熱性を向上させることができる。以下、このことについて説明する。
まず信頼性については、上記のようにたとえば希土類ガーネット型フェライトからなる磁性体10の線膨張係数は約10ppm/Kであるのに対し、セラミック製(たとえばLTCC製)の磁性体固定筐体20LTの線膨張係数は約7ppm/Kである。このため両者の差は約3ppm/Kである。上記の実施の形態1におけるエポキシ樹脂製のプリント基板からなる磁性体固定筐体20の線膨張係数は約16ppm/Kであり、磁性体10の線膨張係数との差は約6ppm/Kである。したがって磁性体固定筐体をセラミック製とすることにより、磁性体10との線膨張係数の差を、磁性体固定筐体が樹脂製である場合の約半分にすることができる。このため磁性体10と磁性体固定筐体との線膨張係数の差に起因する熱応力を小さくすることができ、熱応力に起因する損傷の可能性を低減することができる。したがって非可逆回路装置600の信頼性を向上させることができる。
次に放熱性については、樹脂材料よりも放熱性の高いセラミック材料を磁性体固定筐体20LTに用いることにより、非可逆回路素子P1の稼働時に発する熱を速やかに回路基板90側に伝えることができる。このため、非可逆回路装置600をより安定に動作させることができる。なお、この回路基板90側への放熱の経路は、具体的にはたとえば発熱源である薄葉基板30の導体薄膜32から磁性体10を通じて磁性体固定筐体20LTへと伝熱し、その真下の貫通導体23を通じてはんだボール80から回路基板90に至る経路である。
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。