JP6421215B1 - 移植装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】移植時に苗床片から外方へ広がるように延びている苗の根の全体が揃って移植先の穴を通過する状態にして苗床片を移植先の穴に挿入することができる移植装置を提供する。【解決手段】移植装置11は、苗Sが植え付けられた苗床片Nを挟持可能であり且つ少なくとも上下方向Zへの移動可能に設けられた挟持部17と、苗の移植先のパネル12に設けられた穴15を上下方向に通過するように昇降可能に設けられた昇降部材19と、挟持部に挟持された苗床片から下方へ延びた苗の根Neと昇降部材とが接触するように挟持部と昇降部材とを相対移動させる移動機構18,20と、を備える。【選択図】図6
Description
本発明は、苗を移植する移植装置に関する。
従来から、苗を移植する移植装置として、例えば特許文献1に記載の水耕苗の自動移植機が知られている。この移植機では、苗床片で育てた植物の苗を生育パネル等の移植先の穴に移植する際、苗床片の下面から外方へ広がるように延びている苗の根に斜め上方から水を噴射するようにしている。すなわち、噴射された水が苗の根を伝わり落ちて苗の根を垂下させ、その状態において苗床片が下降されることにより、先ず苗の根が穴を通過し、それに続けて苗床片が穴内に挿入されるようにしている。
ところで、苗床片の下面から下方に延びる苗の根は、その生え始めの時期や、その長さ及び形状が苗ごとに異なる。そのため、苗床片の下面から外方へ広がるように延びている苗の根元に水を噴射したとしても、その苗の根元から伝わり落ちる水により根が向く方向には個体差が発生する。すなわち、苗の根元から伝わり落ちる水によっては苗床片の下面から外方へ広がっている苗の根を垂下させられない場合があった。したがって、そうした状態で苗床片を下降させた場合には、苗の根の先端が移植先の穴の縁に引っ掛かり、苗の根の全体が揃って穴を通過する状態にはならないため、所望どおりに苗床片を移植先の穴に挿入できない虞があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移植時に苗床片の下面から外方へ広がるように延びている苗の根の全体が揃って移植先の穴を通過する状態にして苗床片を移植先の穴に挿入することができる移植装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する移植装置は、苗が植え付けられた苗床片を挟持可能であり且つ少なくとも上下方向への移動可能に設けられた挟持部と、前記苗の移植先のパネルに設けられた穴を上下方向に通過するように昇降可能に設けられた昇降部材と、前記挟持部に挟持された前記苗床片から下方へ延びた前記苗の根と前記昇降部材とが接触するように前記挟持部と前記昇降部材とを相対移動させる移動機構と、を備える。
上記課題を解決する移植装置は、苗が植え付けられた苗床片を挟持可能であり且つ少なくとも上下方向への移動可能に設けられた挟持部と、前記苗の移植先のパネルに設けられた穴を上下方向に通過するように昇降可能に設けられた昇降部材と、前記挟持部に挟持された前記苗床片から下方へ延びた前記苗の根と前記昇降部材とが接触するように前記挟持部と前記昇降部材とを相対移動させる移動機構と、を備える。
この構成によれば、挟持部と昇降部材とが相対移動し、挟持部に挟持された苗床片から下方へ延びた苗の根がパネルの穴の上方で昇降部材の表面に接触したときに、苗の根及び昇降部材の表面の少なくとも一方が液体で濡れていると、苗の根は液体の表面張力により昇降部材の表面に張り付く。そして、その状態のままで、挟持部及び昇降部材が共に下降すると、挟持部に挟持された苗床片から下方へ延びた苗の根は、昇降部材に張り付いた状態で、移植先のパネルの穴の縁に引っ掛かることもなく、その穴を下方へ通過する。したがって、移植時に苗床片から外方へ広がるように延びている苗の根の全体が揃って穴を通過するようにして苗床片を移植先の穴に挿入することができる。
上記移植装置においては、前記苗の根及び前記昇降部材の少なくとも一方を液体で濡れた状態にする液濡れ状態生成部を更に備えることが好ましい。
この構成によれば、液濡れ状態生成部によって苗の根及び昇降部材の少なくとも一方を液体で濡れた状態にできる。そのため、挟持部に挟持された苗床片から下方へ延びた苗の根がパネルの穴の上方で昇降部材の表面に接触した際には、その苗の根を昇降部材の表面に対して容易に張り付かせることができる。
この構成によれば、液濡れ状態生成部によって苗の根及び昇降部材の少なくとも一方を液体で濡れた状態にできる。そのため、挟持部に挟持された苗床片から下方へ延びた苗の根がパネルの穴の上方で昇降部材の表面に接触した際には、その苗の根を昇降部材の表面に対して容易に張り付かせることができる。
上記移植装置において、前記液濡れ状態生成部は、前記昇降部材の表面を、その表面に前記苗の根が前記液体の表面張力で張り付くのに必要十分な量の液体で濡れた状態にすることが好ましい。
この構成によれば、大量の液体が供給されることによって昇降部材の表面が濡れた状態にされることもない。そのため、移植先のパネルや移植済みの苗床片に余剰な液体が飛散することを抑制できる。
上記移植装置において、前記昇降部材は、その表面の少なくとも一部が上下方向に長く延びる外側面で構成され、その外側面が前記液濡れ状態生成部により前記液体で濡れた状態とされることが好ましい。
この構成によれば、昇降部材において上下方向に長く延びる外側面が液濡れ状態生成部により液体で濡れた状態とされるため、苗床片の下面から苗の根が長く延びていても、そのように長く延びた苗の根を昇降部材の外側面に対して上下方向に長く延びた状態のまま張り付かせることができる。したがって、苗床片の下面から苗の根が長く延びている場合においても、移植時にパネルの穴の縁に苗の根が引っ掛かる虞を低減できる。
上記移植装置において、前記昇降部材は、上下方向に沿って延びるパイプであり、前記液濡れ状態生成部は、前記パイプの内側を上方に向けて供給された前記液体が前記パイプの上端開口から前記パイプの外側面を伝って流れるようにすることにより、前記パイプの外側面を前記液体で濡れた状態にすることが好ましい。
この構成によれば、パイプの上端開口から液体が溢れ出るように構成することで、簡単に液濡れ状態生成部を構成することができる。
本発明によれば、移植時に苗床片の下面から外方へ広がるように延びている苗の根の全体が揃って移植先の穴を通過する状態にして苗床片を移植先の穴に挿入することができる。
以下、植物の苗を移植する移植装置の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、移植装置11は、植物の苗Sの移植先となるパネル12を搬送するパネル搬送機構13と、苗Sが植え付けられた苗床片Nをパネル12に移植する移植機構14とを備えている。なお、本実施形態における移植装置11は、例えばウレタン等の発泡樹脂からなる弾性変形可能なブロックである苗床片Nに植え付けられた苗Sを苗床片Nごとパネル12に移植する装置である。
図1及び図2に示すように、移植装置11は、植物の苗Sの移植先となるパネル12を搬送するパネル搬送機構13と、苗Sが植え付けられた苗床片Nをパネル12に移植する移植機構14とを備えている。なお、本実施形態における移植装置11は、例えばウレタン等の発泡樹脂からなる弾性変形可能なブロックである苗床片Nに植え付けられた苗Sを苗床片Nごとパネル12に移植する装置である。
パネル12は、立方体状をなす苗床片Nの上下方向Zに沿う高さと略同一寸法の厚さを有する板状に設けられ、その上面から下面に亘って上下方向Zに貫通する複数の穴15を有している。パネル搬送機構13は、移植装置11の奥行方向Xに延びる左右一対の水平なガイドレール16を有し、このガイドレール16に沿ってパネル12を不図示のパネル駆動機構の駆動に伴い奥行方向Xに搬送する。なお、本実施形態では、一例として移植装置11の奥行方向Xに並ぶ5つの穴15と移植装置11の幅方向Yに並ぶ4つの穴15とがマトリクス状の配置となる合計20個の穴15がパネル12に形成されている。また、図1においてパネル12の穴15は円形状に開口しているが、立方体状の苗床片Nが上方から挿入されたとき、その苗床片Nを保持可能な形状であれば、円形状に限らず、四角形状などの多角形状でもよい。
図2及び図3に示すように、移植機構14は、苗床片Nを挟持可能に設けられた挟持部17と、挟持部17を移動可能とする第1移動機構18と、パネル12が有する穴15を上下方向Zに通過可能に設けられた昇降部材19と、昇降部材19を移動可能とする第2移動機構20とを備えている。挟持部17は、苗床片Nを左右両側から挟持可能な一対の挟持片21と、その一対の挟持片21を開閉可能に駆動させるアクチュエーター等を含む挟持駆動部22(図3参照)と、挟持駆動部22を介して挟持片21を第1移動機構18の一部に支持する屈曲形状の支持金具23とを備えている。本実施形態の場合、挟持部17は、パネル12の穴15と対応するように幅方向Yに4つの挟持部17が並ぶ状態で支持金具23に取り付けられている。
第1移動機構18は、図1に二点鎖線で直方体状に示すように、パネル搬送機構13を幅方向Yの両側から挟むように配置された左右一対の苗床片X方向駆動部24と、挟持部17よりも奥行方向Xの奥側で左右一対の苗床片X方向駆動部24に対して幅方向Yに延びるように架設された苗床片Y方向駆動部25とを備えている。苗床片X方向駆動部24は、苗床片Nを挟持した挟持部17を、図1において苗床片X方向駆動部24の横に二点鎖線の白抜き矢印で示すように、奥行方向X(X方向)に移動させるときに駆動される。なお、苗床片X方向駆動部24は、一例として、奥行方向Xに延びるレール部材と、そのレール部材に対してモーターの駆動に基づき奥行方向Xへの移動可能に取り付けられたスライダー等を含んで構成される。また、苗床片Y方向駆動部25は、苗床片Nを挟持した挟持部17を、図1において苗床片Y方向駆動部25の横に二点鎖線の白抜き矢印で示すように、幅方向Y(Y方向)に移動させるときに駆動される。なお、苗床片Y方向駆動部25は、一例として、幅方向Yに延びるレール部材と、そのレール部材に対してモーターの駆動に基づき幅方向Yへの移動可能に取り付けられたスライダー等を含んで構成される。
図1に示すように、苗床片Y方向駆動部25の前面側である奥行方向Xの手前側には、上下方向Zに長い直方体形状をなす第1幅方向スライダー29が、苗床片Y方向駆動部25の駆動に伴い幅方向Y(Y方向)へのスライド移動可能に取り付けられている。また、第1幅方向スライダー29の前面である奥行方向Xで手前側となる面には、上下方向Zにスライド移動する第1上下方向スライダー30が設けられている。そして、この第1上下方向スライダー30の前面に挟持部17の支持金具23が固定されている。したがって、挟持部17は、各挟持片21により苗床片Nを挟持した状態において、苗床片X方向駆動部24と苗床片Y方向駆動部25を含む第1移動機構18の駆動に基づき移動し、特にパネル12の穴15の上方位置から第1上下方向スライダー30の下方へのスライド移動に伴い下降したときに、挟持している苗床片Nをパネル12の穴15に挿入可能とされる。すなわち、第1上下方向スライダー30は、苗床片Nを挟持した挟持部17を、図1において実線の白抜き矢印で示すように、上下方向Z(Z方向)に移動させるときに駆動される。この点で、第1上下方向スライダー30は、苗床片Z方向駆動部の一部を構成するといえる。
昇降部材19は、その表面の一部が上下方向Zに沿う軸線P(図3参照)を中心とする円筒面形状をなし且つ上下方向Zに長く延びた形状の外側面で構成されたパイプであり、幅方向Yに長い直方体状の中空ブロック31及び断面逆L字状の支持金具32を介して第2移動機構20の一部に支持されている。第2移動機構20は、図1に二点鎖線で直方体状に示すように、パネル搬送機構13の下方で移植装置11の奥行方向Xに延びるように設けられた昇降部材X方向駆動部33と、昇降部材19よりも奥行方向Xの奥側で昇降部材X方向駆動部33に対して幅方向Yに延びるように支持された昇降部材Y方向駆動部34とを備えている。
昇降部材X方向駆動部33は、昇降部材19を、図1において昇降部材X方向駆動部33の横に二点鎖線の白抜き矢印で示すように、奥行方向X(X方向)に移動させるときに駆動される。なお、昇降部材X方向駆動部33は、一例として、奥行方向Xに延びるレール部材と、そのレール部材に対して不図示のモーターの駆動に基づき奥行方向Xへの移動可能に取り付けられたスライダー等を含んで構成される。また、昇降部材Y方向駆動部34は、昇降部材19を、図1において昇降部材Y方向駆動部34の横に二点鎖線の白抜き矢印で示すように、幅方向Y(Y方向)に移動させるときに駆動される。なお、昇降部材Y方向駆動部34は、一例として、幅方向Yに延びるレール部材と、そのレール部材に対して不図示のモーターの駆動に基づき幅方向Yへの移動可能に取り付けられたスライダー等を含んで構成される。
図1に示すように、昇降部材Y方向駆動部34の前面側である奥行方向Xの手前側には、上下方向Zが長手方向で幅方向Yが短手方向となる矩形の板部材である第2幅方向スライダー36が、昇降部材Y方向駆動部34の駆動に伴い幅方向Y(Y方向)へのスライド移動可能に取り付けられている。また、第2幅方向スライダー36の前面である奥行方向Xで手前側となる面には、上下方向Zに延びる第2上下方向レール部37が設けられている。そして、この第2上下方向レール部37に対して上下方向Zへの移動可能に取り付けられた第2上下方向スライダー38の前面に昇降部材19の支持金具32が固定されている。したがって、昇降部材19は、昇降部材X方向駆動部33と昇降部材Y方向駆動部34を含む第2移動機構20の駆動に基づき移動し、特にパネル12の穴15の下方で第2上下方向スライダー38の上下移動に伴い昇降したときに、その長さ方向の中途から上端側の部分が、パネル12の穴15を上下方向に通過可能とされる。すなわち、第2上下方向スライダー38は、昇降部材19を、図1において実線の白抜き矢印で示すように、上下方向Z(Z方向)に移動させるときに駆動される。この点で、第2上下方向スライダー38は、昇降部材Z方向駆動部の一部を構成するといえる。
図1に示すように、パイプ形状をなす昇降部材19は、その内側が中空ブロック31の内部空間と連通するように、その下端が中空ブロック31の上面に接合されている、すなわち、昇降部材19は、その円筒面形状をなす外側面が上下方向Zに長く延びるように、中空ブロック31の上面から鉛直に立設されている。中空ブロック31の一端(図1では左端)には管形状をなす液体供給部39の一端が接続され、その液体供給部39の他端には図示しない液体供給チューブが接続されている。そして、不図示のポンプの駆動に伴い液体供給チューブから液体供給部39を介して中空ブロック31の内部空間に液体の一例である水が供給可能とされている。
図3に示すように、パイプからなる昇降部材19は、液体供給部39から中空ブロック31を介して供給された水Wが、昇降部材19の内側を通って下方から上方に供給され、その上端開口19aから溢れ出た後、昇降部材19の外側面を伝って流れ落ちるように構成されている。そして、このように昇降部材19の外側面を伝って水Wが流れ落ちることにより、昇降部材19の表面の一部である外側面は液体(この場合は水W)で濡れた状態となる。この点で、本実施形態では、そのような液体(この場合は水W)を昇降部材19に供給する液体供給部39により、昇降部材19の表面を液体で濡れた状態にする液濡れ状態生成部が構成されている。なお、この場合において、昇降部材19の外側面(表面)は、苗床片Nの下面から下方へ延びる苗Sの根Neが接触したとき、その根Neが水(液体)Wの表面張力で張り付くのに必要十分な量の水(液体)Wで濡れた状態とされる。換言すると、液体供給部39から大量の水Wが供給されて昇降部材19の上端開口19aから勢い良く流れ落ちるような余剰の水Wが供給されることはない。
次に、上記のように構成された移植装置11の作用について説明する。なお、前提として、移植される苗Sが植え付けられた苗床片Nは、図示しない苗床マットから一つずつに分離されて挟持部17の各挟持片21により挟持された状態にあるものとする。
さて、図1に示すように、苗Sが植え付けられた苗床片Nを移植先のパネル12に移植する際には、まず、パネル搬送機構13によりパネル12が移植装置11における所定の移植時位置まで搬送される。そして、挟持部17の各挟持片21により挟持された苗床片Nが、第1移動機構18の駆動に基づき、パネル12よりも上方位置で且つ移植先となる穴15よりも少しだけ奥行方向Xの奥側位置で、対応する穴15に対して幅方向Yの位置が個別に位置合わせされる。この場合、苗床片Nの下面からは苗Sの根Neが下方へ長く延びているが、それらの根Neの下端がパネル12の上面よりも上方に位置するように、挟持部17は、その上下方向Zの高さ位置が第1移動機構18の第1上下方向スライダー30により調整される。
一方、このときパネル12よりも下方位置では、昇降部材19が、第2移動機構20の駆動に基づき、対応する穴15の直下に位置するように、奥行方向X及び幅方向Yにおいて位置合わせされる。そして、その場合において、昇降部材19は、上下方向Zにおける昇降可能範囲の最下降位置で停止状態となるように、その上下方向Zにおける高さ位置が第2移動機構20の第2上下方向スライダー38により調整される。なお、この段階においては、未だ液体供給部39から昇降部材19に対して液体としての水Wは供給されていない。そのため、昇降部材19の表面の一部として上下方向Zに長く延びる円筒面形状の外側面は濡れた状態になっていない。
すると次に、図2に示すように、第2移動機構20の第2上下方向スライダー38が上方に移動し、その移動に伴い、昇降部材19が上下方向Zにおける昇降可能範囲の最上昇位置まで上昇し、その位置で停止状態となる。すなわち、昇降部材19は、その長さ方向の中途から上端側の部分がパネル12の穴15を上方に通過し、図3に示すように、その上端開口19aが挟持部17に挟持されている苗床片Nの下面と略同一の高さとなる位置まで上昇する。そして、その状態において、液体供給部39から中空ブロック31を介して水(液体)Wが昇降部材19の内側に下方から供給される。すると、図3に二点鎖線で示すように、昇降部材19の上端開口19aから水Wが溢れ出て昇降部材19の外側面を伝って流れ落ちる。その結果、昇降部材19は、その外側面が苗Sの根Neを表面張力で張り付かせるのに必要十分な量の水Wで濡れた状態となる。
すると次に、図4及び図5に示すように、第1移動機構18において、昇降部材X方向駆動部33の駆動に基づき昇降部材Y方向駆動部34が奥行方向Xの手前側(例えば図5では左側)に少し移動する。具体的には、その時点での挟持部17が挟持する苗床片Nの下面の中心と昇降部材19の軸線Pとの奥行方向Xにおける離間距離に相当する距離分だけ移動する。すると、図4及び図5に示すように、苗床片Nの下面から下方に延びている苗Sの根Neが昇降部材19の外側面に接触する。この点で、第1移動機構18は、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びた苗Sの根Neと昇降部材19とが接触するように挟持部17と昇降部材19とを相対移動させる移動機構に相当する。
そして、昇降部材19の外側面に接触した苗Sの根Neは、その時点で昇降部材19の外側面を濡れた状態にしている水Wの表面張力により昇降部材19の外側面に張り付く。すなわち、昇降部材19の外側面に接触した苗Sの根Neは、その根Neの一部が水Wの表面張力により昇降部材19の外側面に張り付くと、その張り付いた一部から当該根Neの先端側や根元側に繋がる部分も連鎖的に水Wの表面張力で引き込まれて昇降部材19の外側面に張り付く。その結果、苗Sの根Neの全体が昇降部材19に沿って垂れるように揃えられた状態になる。
なお、昇降部材19の外側面は上下方向Zに長く延びているため、苗床片Nの下面から下方へ延びる苗Sの根Neが長い場合にも、その根Neは根元から先端まで昇降部材19の外側面に対して張り付く。そして、その場合において、昇降部材19の外側面は上下方向Zに沿う軸線Pを中心とする円筒面形状をしているため、苗Sの根Neは昇降部材19の外側面に対して滑らかに巻き付くようにして張り付く。その結果、昇降部材19の外側面に張り付くときに、苗Sの根Neが折れて傷む虞を低減できる。
ちなみに、挟持部17及び昇降部材19の少なくとも一方が動くように、第1移動機構18及び第2移動機構20の少なくとも一方を小刻みに駆動した場合には、苗床片Nの下面から外方へ広がって延びる根Neの全体を更に容易に昇降部材19の外側面に対して巻き付くように張り付かせることが可能とされる。なお、苗Sの根Neは、昇降部材19の外側面に対して、必ずしも巻き付くようにして張り付かせなくてもよい。すなわち、苗Sの根Neは、昇降部材19の外側面に対して単に張り付くだけの態様であってもよい。
そして次に、図6及び図7に示すように、第1移動機構18の第1上下方向スライダー30及び第2移動機構20の第2上下方向スライダー38が共に同期して下方に移動し、その移動に伴い、挟持部17及び昇降部材19も下方に移動する。すると、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方に延びている苗Sの根Neは、パネル12の穴15を下方に向けて通過する昇降部材19の外側面に張り付いた状態のまま、その穴15を下方に向けて通過する。すなわち、苗Sの根Neは、穴15の縁に引っ掛かることなく穴15を上方から下方に向けて通過する。そして、第1移動機構18の第1上下方向スライダー30及び第2移動機構20の第2上下方向スライダー38の更なる下方への移動に伴い、挟持部17及び昇降部材19が更に下方に移動すると、苗床片Nは挟持部17に挟持された状態のまま移植先の穴15に上方から挿入される。
すなわち、図8及び図9に示すように、苗床片Nは、苗Sの部分がパネル12の上側に位置する一方、その苗Sの根Neの部分がパネル12の下側に位置した状態で、移植先の穴15に弾性変形を伴って挿入される。その結果、苗床片Nはパネル12の穴15に弾性変形からの復元力で膨張することで保持される。そして、その状態から第2移動機構20の第2上下方向スライダー38が下方に移動すると、その移動に伴って、昇降部材19が苗Sの根Neから離れるように下方に移動する。その結果、図9に示すように、苗床片Nに植え付けられた苗Sの根Neは、穴15の内周面と苗床片Nの側面との間に挟まったりすることもなく、苗床片Nの下面から下方へ良好に垂れ下がった状態となり、これで一列の穴15に対する苗Sの移植が完了する。そして、奥行方向Xで次の列の穴15に対する新たな苗床片Nの移植作業が同様の手順で繰り返される。
上記の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)挟持部17と昇降部材19とが相対移動し、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びた苗Sの根Neがパネル12の穴15の上方で昇降部材19における水(液体)Wで濡れた状態にある外側面(表面)に接触することで、苗Sの根Neが水Wの表面張力により昇降部材19の外側面に張り付く。そして、その状態のままで、挟持部17及び昇降部材19が共に下降すると、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びた苗Sの根Neは、昇降部材19に張り付いた状態で、移植先のパネル12の穴15の縁に引っ掛かることもなく、その穴15を下方へ通過する。したがって、移植時に苗床片Nの下面から外方へ広がるように延びている苗Sの根Neの全体が揃って穴15を通過するようにして苗床片Nを移植先の穴15に挿入することができる。
(1)挟持部17と昇降部材19とが相対移動し、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びた苗Sの根Neがパネル12の穴15の上方で昇降部材19における水(液体)Wで濡れた状態にある外側面(表面)に接触することで、苗Sの根Neが水Wの表面張力により昇降部材19の外側面に張り付く。そして、その状態のままで、挟持部17及び昇降部材19が共に下降すると、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びた苗Sの根Neは、昇降部材19に張り付いた状態で、移植先のパネル12の穴15の縁に引っ掛かることもなく、その穴15を下方へ通過する。したがって、移植時に苗床片Nの下面から外方へ広がるように延びている苗Sの根Neの全体が揃って穴15を通過するようにして苗床片Nを移植先の穴15に挿入することができる。
(2)液濡れ状態生成部として機能する液体供給部39によって昇降部材19の表面を水(液体)Wで濡れた状態にできるため、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びた苗Sの根Neがパネル12の穴15の上方で昇降部材19の表面に接触した際には、その苗Sの根Neを昇降部材19の表面に対して容易に張り付かせることができる。
(3)液濡れ状態生成部として機能する液体供給部39は、昇降部材19の外側面を苗Sの根Neが表面張力で張り付くのに必要十分な量の水Wで濡れた状態とするので、大量の水(液体)Wが供給されることによって昇降部材19の外側面(表面)が濡れた状態にされることもない。そのため、移植先のパネル12や移植済みの苗床片Nに余剰な水(液体)Wが飛散することを抑制できる。
(4)昇降部材19において上下方向Zに長く延びる外側面(表面)が水(液体)Wで濡れた状態とされるため、苗床片Nの下面から苗Sの根Neが長く延びていても、そのように長く延びた苗Sの根Neを昇降部材19の外側面に対して上下方向Zに長く延びた状態のまま張り付かせることができる。したがって、苗床片Nの下面から苗Sの根Neが長く延びている場合においても、移植時にパネル12の穴15の縁に苗Sの根Neが引っ掛かる虞を低減できる。
(5)水(液体)Wの表面張力によって苗Sの根Neを張り付かせる表面を有する昇降部材19をパイプで構成し、そのパイプからなる昇降部材19の上端開口19aから水Wが溢れ出るように構成することで、簡単に液濡れ状態生成部を構成することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。また、以下の変更例は、適宜組み合わせてもよい。
・苗Sの根Neを昇降部材19の表面に張り付かせるのに用いる液体は、水W以外の他の液体、例えば苗Sを生育させる際に用いる養液等であってもよい。
・苗Sの根Neを昇降部材19の表面に張り付かせるのに用いる液体は、水W以外の他の液体、例えば苗Sを生育させる際に用いる養液等であってもよい。
・移植装置11は、例えば液体供給部39で構成される液濡れ状態生成部を具備しないものであってもよい。すなわち、挟持部17に挟持された苗床片Nから下方に延びた苗Sの根Neが予め水(液体)Wで濡れた状態にあれば、その根Neは昇降部材19の表面に接触したときに容易に張り付く。そのため、このような場合には移植装置11の装置構成として液濡れ状態生成部を不要にできる。
・液濡れ状態生成部は、昇降部材19の表面を水(液体)Wで濡れた状態にする構成に限らない。すなわち、挟持部17に挟持された苗床片Nから下方に延びる苗Sの根Neを水(液体)Wで濡れた状態にする構成であったり、又は、そのような苗床片Nから下方に延びる苗Sの根Ne及び昇降部材19の表面の両方を水(液体)Wで濡れた状態にする構成であったりしてもよい。
・苗Sの根Neは、苗床片Nの下面から下方へ延びる構成以外に、苗床片Nの側面など下面以外の他の面から下方へ延びる構成であってもよい。
・液濡れ状態生成部は、中空ブロック31を介してパイプ状の昇降部材19の内側に水(液体)Wを供給する液体供給部39とは別の位置に設けられた構成でもよい。例えば、挟持部17の挟持片21において苗床片Nを挟持するときに苗床片Nの側面に接触する面に水Wを噴射可能な噴射口を設け、その噴射口から噴射されて苗床片Nに浸透した水Wが当該苗床片Nの下面に接触した昇降部材19の外側面を伝って流れるようにすることで、液濡れ状態生成部を構成するようにしてもよい。
・液濡れ状態生成部は、中空ブロック31を介してパイプ状の昇降部材19の内側に水(液体)Wを供給する液体供給部39とは別の位置に設けられた構成でもよい。例えば、挟持部17の挟持片21において苗床片Nを挟持するときに苗床片Nの側面に接触する面に水Wを噴射可能な噴射口を設け、その噴射口から噴射されて苗床片Nに浸透した水Wが当該苗床片Nの下面に接触した昇降部材19の外側面を伝って流れるようにすることで、液濡れ状態生成部を構成するようにしてもよい。
・液濡れ状態生成部は、挟持部17に挟持された苗床片Nの下面から下方へ延びる苗Sの根Neと昇降部材19の外側面(表面)とが相対移動して接触した際に、その昇降部材19の外側面に表面張力を生じさせるに足るだけの水(液体)Wを、昇降部材19の側方など外部から昇降部材19に向けて噴射等して供給する液体供給部で構成してもよい。
・液濡れ状態生成部は、水(液体)Wを噴射したり供給したりする構成ではなく、例えばチラーの利用などにより昇降部材19の外側面(表面)に結露を生じさせて濡れた状態にすることで、液濡れ状態生成部を構成するようにしてもよい。要するに、昇降部材19の外側面(表面)に苗Sの根Neを張り付かせるための表面張力を生じさせるように昇降部材19の外側面(表面)を濡れた状態にできる構成であればよい。
・昇降部材19は、内側が中空のパイプ形状でなく、中実の円柱形状などでもよい。
・昇降部材19は、その外側面が円筒面形状でなく、上下方向Zと直交する断面の外形が多角形や不定形でもよい。
・昇降部材19は、その外側面が円筒面形状でなく、上下方向Zと直交する断面の外形が多角形や不定形でもよい。
・昇降部材19は、苗Sの根Neを張り付かせた状態でパネル12の穴15を通過可能な形状であれば、パイプ形状やその他の棒形状以外に、球形状やその他の不定形状のものでもよい。そして、昇降部材19において苗Sの根Neを張り付かせる表面は、外側面に限らず、その昇降部材19の上面など他の面であってもよい。
・挟持部17が挟持する苗床片Nの下面から下方へ延びる苗Sの根Neと昇降部材19の外側面(表面)とを接触させるために挟持部17と昇降部材19とを相対移動させるときには、第1移動機構18及び第2移動機構20の少なくとも一方を駆動させればよい。このとき駆動される移動機構が、挟持部17に挟持された苗床片Nから下方へ延びた苗Sの根Neと昇降部材19とが接触するように挟持部17と昇降部材19とを相対移動させる移動機構に相当する。
・挟持部17が挟持する苗床片Nの下面から下方へ延びる苗Sの根Neと昇降部材19の外側面(表面)とを接触させるためには、挟持部17と昇降部材19とを奥行方向Xに相対移動させる以外に、幅方向Yに相対移動させて接触させてもよく、又は上下方向Zに相対移動させて接触させてもよい。要するに、奥行方向Xと上下方向Zと幅方向Yのうち少なくとも一つの方向に相対移動させて接触させる構成であればよい。
・挟持部17は、第1上下方向スライダー30の移動に伴い上下方向Zにだけ移動可能とされた構成でもよい。要するに、第1移動機構18は、挟持部17を上下方向Zに移動可能とする構成(第1上下方向スライダー30など)を有していれば、挟持部17を奥行方向Xや幅方向Yに移動可能とする構成を有していなくてもよい。すなわち、挟持部17を移動可能とする第1移動機構18は、苗床片X方向駆動部24及び苗床片Y方向駆動部25を省略してもよい。
・昇降部材19は、第2上下方向スライダー38の移動に伴い上下方向Zにだけ移動可能とされた構成でもよい。要するに、第2移動機構20は、昇降部材19を上下方向Zに移動可能とする構成(第2上下方向スライダー38など)を有していれば、昇降部材19を奥行方向Xや幅方向Yに移動可能とする構成を有していなくてもよい。すなわち、昇降部材19を移動可能とする第2移動機構20は、昇降部材X方向駆動部33及び昇降部材Y方向駆動部34を省略してもよい。
11…移植装置、12…パネル、15…穴、17…挟持部、18…第1移動機構(移動機構)、19…昇降部材、19a…上端開口、20…第2移動機構(移動機構)、39…液体供給部(液濡れ状態生成部)、N…苗床片、Ne…根、P…軸線、S…苗。
Claims (4)
- 苗が植え付けられた苗床片を挟持可能であり且つ少なくとも上下方向への移動可能に設けられた挟持部と、
前記苗の移植先のパネルに設けられた穴を上下方向に通過するように昇降可能に設けられた昇降部材と、
前記苗の根及び前記昇降部材の少なくとも一方を液体で濡れた状態にする液濡れ状態生成部と、
前記液濡れ状態生成部により前記苗の根及び前記昇降部材の少なくとも一方が前記液体で濡れた状態にされた後において前記挟持部に挟持された前記苗床片から下方へ延びた前記苗の根と前記昇降部材とが接触するように前記挟持部と前記昇降部材とを相対移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする移植装置。 - 前記液濡れ状態生成部は、前記昇降部材の表面を、その表面に前記苗の根が前記液体の表面張力で張り付くのに必要十分な量の液体で濡れた状態にすることを特徴とする請求項1に記載の移植装置。
- 前記昇降部材は、その表面の少なくとも一部が上下方向に長く延びる外側面で構成され、その外側面が前記液濡れ状態生成部により前記液体で濡れた状態とされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移植装置。
- 前記昇降部材は、上下方向に沿って延びるパイプであり、前記液濡れ状態生成部は、前記パイプの内側を上方に向けて供給された前記液体が前記パイプの上端開口から前記パイプの外側面を伝って流れるようにすることにより、前記パイプの外側面を前記液体で濡れた状態にすることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の移植装置。
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