以下、図面を用いて各実施形態について説明する。
以下では、荷電粒子線装置の一例として、荷電粒子線顕微鏡について説明する。ただし、これは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明は、走査電子顕微鏡、走査イオン顕微鏡、走査透過電子顕微鏡、これらと試料加工装置との複合装置、またはこれらを応用した解析・検査装置にも適用可能である。
また、本明細書において「大気圧」とは大気雰囲気または所定のガス雰囲気であって、大気圧またはこれと同程度の圧力環境のことを意味する。具体的には約105Pa(大気圧)から〜約103Pa程度である。
本実施例では、基本的な実施形態について説明する。図1には、本実施例の荷電粒子顕微鏡の全体構成図を示す。なお、以下の実施例は走査電子顕微鏡を意図して説明するが、上記の通り本発明はこれに限られない。
図1に示される荷電粒子顕微鏡は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒2と接続されこれを支持する筐体(真空室)7、大気雰囲気下に配置される試料ステージ5、およびこれらを制御する制御系によって構成される。荷電粒子顕微鏡の使用時には荷電粒子光学鏡筒2と筐体7の内部は真空ポンプ4により真空排気される。真空ポンプ4の起動・停止動作も制御系により制御される。図中、真空ポンプ4は一つのみ示されているが、二つ以上あってもよい。荷電粒子光学鏡筒2及び筺体7は図示しない柱等がベース270によって支えられているとする。
荷電粒子光学鏡筒2は、荷電粒子線を発生する荷電粒子源8、発生した荷電粒子線を集束して鏡筒下部へ導き、一次荷電粒子線として試料6を走査する光学レンズ1などの要素により構成される。荷電粒子源の寿命等の問題から、一般に荷電粒子源周辺の雰囲気は10-1Pa以下の気圧(以下、高真空とする)となっている。荷電粒子光学鏡筒2は筐体7内部に突き出すように設置されており、真空封止部材123を介して筐体7に固定されている。荷電粒子光学鏡筒2の端部には、上記一次荷電粒子線の照射により得られる二次的荷電粒子(二次電子または反射電子)を検出する検出器3が配置される。検出器3で得られた信号に基づいて試料の画像を取得する。検出器3は荷電粒子光学鏡筒2の外部にあっても内部にあってもよい。荷電粒子光学鏡筒には、これ以外に他のレンズや電極、検出器を含んでもよいし、一部が上記と異なっていてもよく、荷電粒子光学鏡筒に含まれる荷電粒子光学系の構成はこれに限られない。
本実施例の荷電粒子顕微鏡は、制御系として、装置使用者が使用するコンピュータ35、コンピュータ35と接続され通信を行う上位制御部36、上位制御部36から送信される命令に従って真空排気系や荷電粒子光学系などの制御を行う下位制御部37を備える。コンピュータ35は、装置の操作画面(GUI)が表示されるモニタと、キーボードやマウスなどの操作画面への入力手段を備える。上位制御部36、下位制御部37およびコンピュータ35は、各々通信線43、44により接続される。
下位制御部37は真空ポンプ4、荷電粒子源8や光学レンズ1などを制御するための制御信号を送受信する部位であり、さらには検出器3の出力信号をディジタル画像信号に変換して上位制御部36へ送信する。図では検出器3からの出力信号をプリアンプなどの増幅器154を経由して下位制御部37に接続している。もし、増幅器が不要であればなくてもよい。
上位制御部36と下位制御部37ではアナログ回路やディジタル回路などが混在していてもよく、また上位制御部36と下位制御部37が一つに統一されていてもよい。荷電粒子顕微鏡には、このほかにも各部分の動作を制御する制御部が含まれていてもよい。上位制御部36や下位制御部37は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、コンピュータ35で実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。なお、図1に示す制御系の構成は一例に過ぎず、制御ユニットやバルブ、真空ポンプまたは通信用の配線などの変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例のSEMないし荷電粒子線装置の範疇に属する。
筐体7には、一端が真空ポンプ4に接続された真空配管16が接続され、内部を真空状態に維持できる。同時に、筐体内部を大気開放するためのリークバルブ14を備え、メンテナンス時などに、筐体7の内部を大気開放することができる。リークバルブ14は、なくてもよいし、二つ以上あってもよい。また、筐体7におけるリークバルブ14の配置箇所は、図1に示された場所に限られず、筐体7上の別の位置に配置されていてもよい。これらの構成によって、筺体7の内部の真空度は自由に調整することができる。
筐体下面には上記荷電粒子光学鏡筒2の直下になる位置に隔膜10を備える。この隔膜10は、荷電粒子光学鏡筒2の下端から放出される一次荷電粒子線を透過または通過させることが可能であり、一次荷電粒子線は、隔膜10を通って最終的にZ軸駆動機構付き試料台410に搭載された試料6に到達する。隔膜10によって試料載置空間から隔離されて構成される閉空間(すなわち、荷電粒子光学鏡筒2および筐体7の内部)は真空排気可能である。本実施例では、隔膜10によって真空排気される空間の気密状態が維持されるので、荷電粒子光学鏡筒2を真空状態に維持できかつ試料6周囲の雰囲気を大気圧に維持して観察することができる。また、荷電粒子線が照射されている状態でも試料が設置された空間が大気雰囲気であるまたは大気雰囲気の空間と連通しているため、観察中、試料6を自由に交換できる。
隔膜10は土台9上に成膜または蒸着により固定されている。隔膜10はカーボン材、有機材、金属材、シリコンナイトライド、シリコンカーバイド、酸化シリコンなどである。土台9は例えばシリコンや金属部材のような部材である。隔膜10部は複数配置された多窓であってもよい。一次荷電粒子線を透過または通過させることが可能な隔膜の厚みは数nm〜数μm程度である。隔膜は大気圧と真空を分離するための差圧下で破損しないことが必要である。そのため、隔膜10の面積は数十μmから大きくとも数mm程度の大きさである。
隔膜10を支持する土台9は隔膜保持部材155上に具備されている。図示しないが、土台9と隔膜保持部材155は真空シールが可能なOリングやパッキンや接着剤や両面テープなどによって接着されているものとする。隔膜保持部材155は、筐体7の下面側に真空封止部材124を介して着脱可能に固定される。隔膜10は、荷電粒子線が透過する要請上、厚さ数nm〜数μm程度以下と非常に薄いため、経時劣化または観察準備の際に破損する可能性がある。また、隔膜10及びそれを支持する土台9は小さいので、直接ハンドリングすることが非常に困難である。そのため、本実施例のように、隔膜10および土台9を隔膜保持部材155と一体化し、土台9を直接ではなく隔膜保持部材155を介してハンドリングできるようにすることで、隔膜10及び土台9の取扱い(特に交換)が非常に容易となる。つまり、隔膜10が破損した場合には、隔膜保持部材155ごと交換すればよい。仮に隔膜10を直接交換しなければならない場合でも、隔膜保持部材155を装置外部に取り出し、隔膜10と一体化された土台9ごと装置外部で交換することができる。
また、図示しないが、試料6の直下または近傍に試料が観察可能な光学顕微鏡を配置してもよい。この場合は、隔膜10が試料上側にあり、光学顕微鏡は試料下側から観察することになる。そのため、この場合は、Z軸駆動機構付き試料台410は光学顕微鏡の光に対して透明である必要がある。透明な部材としては、透明ガラス、透明プラスチック、透明の結晶体などである。より一般的な試料台としてスライドグラス(又はプレパラート)やディッシュ(又はシャーレ)などの透明試料台などがある。
また、温度ヒータや試料中に電界を発生可能な電圧印加部などを備えてもよい。この場合、試料が加熱または冷却していく様子や、試料に電界が印加されている様子を観察することが可能となる。
また、隔膜は2つ以上配置してもよい。例えば、荷電粒子光学鏡筒2の内部に隔膜があってもよい。あるいは、真空と大気とを分離する第一の隔膜の下側に、第二の隔膜を備え第二の隔膜と試料ステージとの間に試料が内包されていてもよい。
また、試料全体が内包された状態で真空装置内部に導入することが可能な環境セルを試料としてもよい。例えば、環境セル内部に試料高さ調整機構が具備され、真空と大気を分離するための隔膜に試料を接近させる場合にも後述する本発明が適応可能である。詳しくは実施例9にて後述する。本発明では隔膜の数や種類は問わず、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例のSEMないし荷電粒子線装置の範疇に属する。
以下本明細書において、試料ステージとは荷電粒子顕微鏡や光学顕微鏡の装置本体に固定された試料台の配置部を意味する。荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5は少なくともZ軸方向に試料ステージを駆動するZ軸駆動機構を有する。Z軸方向とは荷電粒子線光軸200にそった(平行な)方向を指す。このZ軸駆動機構は試料と隔膜との距離を任意に調整するために使用する機構で、例えば手動の微調整ネジやモータであってもよい。Z軸駆動機構は、例えばネジのメモリやモータのステップ数などによって、Z軸方向の駆動量を目盛りで数値化できるものとする。
また、荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5は本実施例における高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付き試料台410を配置するための試料設置部419を備える。以下本明細書において、試料台とは試料ステージに着脱可能な部材であって試料が直接的または間接的に載置される部材を意味する。試料台が着脱可能であることにより光学顕微鏡など他の装置との間で試料台に試料を載せたまま移動することができる。以下の実施例で示すように、試料台を試料ステージ5から着脱する際に、毎回同じ位置(すなわち荷電粒子線光軸200上)に所望の観察位置を簡単に合わせられることが望ましい。そこで、試料設置部419は、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410をはめあわせるための位置決め構造420を有する。この位置決め構造420は、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410をはめあわせたときに、試料設置部419の中心軸と、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410の中心軸を、一定の位置関係で保持することができる。以下では試料設置部419に具備される位置決め構造420を穴とし、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410に突起を備える構造を用いて説明する。試料設置部419に具備される位置決め構造420の穴の大きさや形(または直径)と高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410に突起の大きさや直径(または直径)がほぼ同等か前者が若干大きいこととして説明する。こうすることで、位置決め構造420の穴の軸と、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410に突起の軸の位置関係が常に同じようにできる。ただし、前記穴と突起の関係は逆でもよいし、溝や突起などその他の構造を用いてもよい。
また、荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5は、試料ステージをXY平面内で移動するXY平面移動機構を有していてもよい。XY平面とは前述のZ軸に垂直な平面を指す。このXY平面移動機構は、試料ステージ5上の任意の部位を観察するために使用する機構である。これにより、試料上で任意の観察対象部位を探して視野中心に移動することができる。
大気圧下において観察可能な荷電粒子顕微鏡においては、荷電粒子線の散乱を極力抑え、なおかつ隔膜を試料との接触により破損させないために、隔膜と試料の観察対象部位の距離を数百から数十μm程度に調整する必要がある。この操作は非常に繊細であり、大気圧下で観察を行う荷電粒子顕微鏡の利便性を大きく損なうものである。
以上の課題に対し、本実施例では、荷電粒子顕微鏡で観察する際の試料の高さおよび試料のZ軸座標調整に光学式の顕微鏡(以下、光学顕微鏡)等を活用することで、大気圧雰囲気下で観察可能な荷電粒子顕微鏡の利便性を向上させる例を説明する。以下、装置構成及び使用方法について説明する。
以下の実施例で説明するように、荷電粒子顕微鏡で観察する際の試料の高さおよび試料のZ軸座標を、光学顕微鏡と後述する高さ調整冶具およびZ軸駆動機構付き試料台を用いて予め決定する。試料を実際に荷電粒子顕微鏡で観察する際には、試料を予め決定した試料の高さ、Z軸座標に設置するだけでよく、繊細な試料高さ調整およびZ軸座標調整の作業が不要となる。これにより、従来は繊細な作業を要していた試料の高さ調整および試料のZ軸座標調整を簡便に行うことができ、装置の利便性を大幅に向上することが可能となる。
図2と図3を用いて、光学顕微鏡402、高さ調整冶具403、Z軸駆動機構付き試料台410によって、荷電粒子顕微鏡内の隔膜と試料との距離及び位置関係を間接的に把握する方法を説明する。ここで光学顕微鏡とは光学式のレンズを具備した顕微鏡を意味するが、高倍率のカメラなどを用いた大気圧雰囲気下において荷電粒子顕微鏡より低倍率で観察可能な装置なども含む。あるいは、レーザの照射のその反射信号を取得することによって、距離を把握することが可能な光学レーザ式距離測定装置であってもよい。試料に物理的に接触することなしに試料の位置を把握することが可能な光学式装置であればどのような装置でもよいため、単に「光学式観察装置」または「光学式装置」と呼ぶこともできる。本実施例における光学式装置は、当該光学式装置に固有に決められた固有点を有する。この固有点は光学式装置から所定の距離の位置を示すものであり、光学式装置が光学顕微鏡である場合には焦点にあたり、光学式装置が光学レーザ式距離測定装置である場合には当該光学レーザ式距離測定装置の測定基準点にあたる。
以下では、光学式装置の一例として、光学顕微鏡を用いる構成について以下説明する。
図2は、高さ調整冶具を光学顕微鏡に設置し、高さ調整冶具を用いて光学顕微鏡を調整するときの操作の説明図である。
光学顕微鏡402は、対物レンズ412、鏡筒413、それらを前述のZ軸方向に動かすための光学顕微鏡位置駆動機構406と、光学顕微鏡402を装置設置面に対して支持し、光学顕微鏡位置駆動機構406を具備する土台407を有する。なお、光学顕微鏡402の光軸方向はZ軸方向と一致する。すなわち光学顕微鏡402の光軸は荷電粒子顕微鏡の光軸(Z軸)に平行になるように配置される。光学顕微鏡位置駆動機構406は試料の観察対象部位に焦点を合わせるために使用する機構であり、光学顕微鏡の少なくとも一部を光軸方向に機械的に動かすことが可能な移動機構である。光学顕微鏡402の焦点位置408を図中の点線の交点で示す。なお、ここでは対物レンズ412または鏡筒413自体がZ軸方向に駆動し試料との距離を調整する構成を用いて説明するが、対物レンズ412および鏡筒413が固定され、土台407上に図示しない試料ステージがありこれがZ軸方向に駆動し試料(または試料設置部400)との距離を調整する構成であってもよい。
光学顕微鏡402には試料設置部400を備える。この試料設置部400は、荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5に具備されるのと同様に、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410をはめあわせるための位置決め構造を有する。
また、高さ調整冶具403は、前述した試料設置部400の位置決め構造401にはめあわせることができる構造を有する。つまり光学顕微鏡402が有する位置決め構造401は、荷電粒子顕微鏡の試料ステージの位置決め構造420と同じ形状となっている。これにより共通の高さ調整冶具403を用いることができる。また、高さ調整冶具を試料設置部400に設置した状態において、高さ調整冶具は隔膜に対向する面は隔膜の窓枠より大きい上面(平面または後述するくぼみを有する面)を有し、試料設置部400の上面と高さ調整冶具の上面の距離はt0で一定である。これ以降、試料設置部400に高さ調整治具403を設置した状態における試料設置部400の上面と高さ調整治具403上面の距離を「高さ調整治具403の高さ」と呼ぶ。高さ調整治具403を試料設置部419あるいは後述する試料設置部506に設置した場合の、各試料設置部から高さ調整治具403上面までの距離も同様に「高さ調整治具403の高さ」と呼ぶ。また、高さ調整冶具403の上面は十分平坦な面であるとする。
図3は、Z軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡に設置し、光学顕微鏡を用いてZ軸駆動機構付試料台の高さを調整するときの説明図である。Z軸駆動機構付き試料台410は、試料6を搭載する試料搭載部409を有する。試料搭載部409はZ軸駆動機構付き試料台410に対して着脱可能であってもよい。また、Z軸駆動機構付き試料台410自体が光学顕微鏡及び荷電粒子顕微鏡の試料ステージとは独立にZ軸(光軸)方向に駆動するZ軸駆動機構411を有する。これにより、試料設置部400の上面からZ軸駆動機構付き試料台410上の試料6の観察対象部位までの距離、すなわち試料6の高さを任意に調整することができる。以下で「試料の高さ」とは試料設置部400の上面(光学顕微鏡の対物レンズに対向する面)からZ軸駆動機構付き試料台上410の試料の表面までの距離を指す。また、Z軸駆動機構付き試料台410は前述した試料設置部400の位置決め構造にはめあわせることができる構造を有する。前述の通り光学顕微鏡402が有する位置決め構造401は、荷電粒子顕微鏡の試料ステージの位置決め構造420と同じ形状となっているので、荷電粒子線装置と光学顕微鏡で共通のZ軸駆動機構付き試料台410を用いることができる。
図2(a)に、光学顕微鏡402の試料設置部400に高さ調整冶具403を設置した状態を示す。この状態から光学顕微鏡位置駆動機構406を動かして、光学顕微鏡402の焦点位置408を高さ調整冶具403の表面に合わせる。この状態を図2(b)に示す。
図3(a)に、光学顕微鏡402に、試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を配置した状態を示す。この状態からZ軸駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411を動かして、光学顕微鏡402の焦点を試料の表面に合わせることができる。このとき、Z軸駆動機構411は独立して動くので、光学顕微鏡位置駆動機構406を固定したまま、試料表面に光学顕微鏡の焦点を合わせることができる。図3(b)に、光学顕微鏡402の焦点408をZ軸駆動機構付き試料台410上の試料6の表面に合わせた状態を示す。
図4(a)に、図1の荷電粒子顕微鏡に高さ調整冶具403を配置した状態を示す。この状態から試料ステージ5のZ軸駆動機構414を動かして、高さ調整冶具403を隔膜10に接近させることができる。
図4(b)に、高さ調整冶具403を隔膜10の土台9に接触させた状態を示す。この状態のとき、高さ調整冶具403が隔膜10の土台9に接触する位置がZ軸駆動機構の目盛りからわかる(図4(b)ではz0)。
なお、隔膜10は荷電粒子線を通過させるために非常に薄く、また、図中隔膜10より上側は真空であり、下側が大気圧であるため、隔膜10は図示したように上側に凹んでいる状態となる。また、前述のとおり、高さ調整冶具403の上面は十分に平坦である。そのため、高さ調整冶具403を隔膜10の土台9に近接または接触させたとしても隔膜10を破損する可能性は少ない。
図5(a)に、図1の荷電粒子顕微鏡に、試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を配置した状態を示す。この状態から試料ステージ5のZ軸駆動機構414を動かして、Z軸駆動機構付き試料台410および試料6を隔膜10に接近させることができる。図5(b)に、Z軸駆動機構付き試料台410および試料6を隔膜10に接近させた状態を示す。
以上の本発明における装置および技術を用いて試料6を隔膜10に安全に接近させるための試料の高さ調整の操作手順のうちの1パターンを、図6(a)を用いて説明する。
まず、第一の手順としてフェーズAを実施する。フェーズAでは高さ調整冶具を使って荷電粒子顕微鏡における隔膜のZ軸方向の位置を確認する作業を行う。より具体的には、荷電粒子顕微鏡の試料ステージにより試料設置部419を荷電粒子光学鏡筒2の光軸方向に動かすことで高さ調整冶具が隔膜10の土台9に接触するときの試料ステージの位置を記憶する。
最初に図4(a)のように荷電粒子顕微鏡の試料設置部419に高さ調整冶具403を設置する(ステップ601)。そして、図4(b)のように高さ調整冶具403が隔膜10の土台9に接触するまで、試料ステージ5のZ駆動機構414を動かす(ステップ602,603)ことで試料設置部419を隔膜に近づける。高さ調整冶具403と土台9が接触すると土台9が上下左右のどこかに若干動くことが荷電粒子顕微鏡で取得する画像上でわかるため、荷電粒子顕微鏡で隔膜10の土台9を観察して接触したかどうかの判定を行うことができる。なお、電気的な導通を確認することで接触したかどうかの判定を実施してもよい。接触したら、高さ調整冶具の接近を停止する(ステップ604)。高さ調整冶具403と隔膜10の土台9が接触した状態での試料ステージのZ軸方向の位置を記憶する。より具体的には、この状態でのZ軸駆動機構414の目盛りの値を記憶する(ステップ605)。記憶はマニュアルによって行ってもよいし、荷電粒子顕微鏡に接続されたコンピュータのハードディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶してもよい。また、ステップ602〜605の一連の手順をプログラミングするなどして自動で実施してもよい。この状態でのZ軸駆動機構414の目盛りの値をz0とする。その後、高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡の試料設置部419から取り外す(ステップ606)。
次に、第二の手順としてフェーズBを実施する。フェーズBでは、フェーズAで用いた高さ調整冶具403により光学顕微鏡の高さを調整する作業を行う。より具体的には光学顕微鏡をZ軸方向に駆動することで光学顕微鏡と高さ調整冶具との距離を変え、光学顕微鏡の焦点が高さ調整冶具403の表面に合うように調整する。
フェーズBでは、高さ調整冶具403を用いて光学顕微鏡の高さ調整を行う。まず図2(a)のように高さ調整冶具403を光学顕微鏡402の試料設置部400に設置する(ステップ607)。光学顕微鏡での観察を開始し、光学顕微鏡位置駆動機構406を動かし、高さ調整冶具403の表面に焦点を合わせる(ステップ608)。図2(b)に高さ調整冶具403の表面に焦点があった状態を示している。その後、光学顕微鏡位置駆動機構406は図2(b)の状態から動かさずに高さ調整冶具403を光学顕微鏡402の試料設置部400から取り外す(ステップ609)。
次に、第三の手順としてフェーズCを実施する。フェーズCでは、フェーズBで調整された状態の光学顕微鏡で、試料を載せたZ軸駆動機構付き試料台の高さ調整を行う。より具体的には、Z軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡の試料設置部400に設置し、フェーズBで調整された光学顕微鏡の焦点位置を変えずに、当該焦点位置に試料表面が位置するように、Z軸駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411により調整する。
フェーズCでは、まず、図3(a)のように試料6を搭載したZ駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡402の試料設置部400に設置する(ステップ610)。次に光学顕微鏡402で観察しながら、試料6に光学顕微鏡402の焦点408が合うようにZ軸駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411を動かす(ステップ611)。ここで、光学顕微鏡位置駆動機構406は動かさずフェーズBで調整した状態を維持することが重要である。焦点408に試料位置が合ったかは光学顕微鏡402の画像により確認できる(ステップ612)。図3(b)は試料6に光学顕微鏡402の焦点408が合った状態である。焦点408に試料が位置したらZ軸駆動機構411の動作を停止する(ステップ613)。このときの試料高さは、高さ調整冶具403を試料設置部400に設置したときの試料設置部400の上面と高さ調整冶具403の上面の距離t0と一致する。その後、試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡402の試料設置部400から取り外す(ステップ614)。このときZ軸駆動機構411をステップ613の状態から動かさず取り外す。
第四の手順ではフェーズDを実施する。フェーズDでは荷電粒子顕微鏡内での試料6のZ軸座標調整を行う。より具体的には、フェーズAで記憶した荷電粒子顕微鏡における試料設置部の高さを用いて荷電粒子顕微鏡の試料ステージの位置を調整することで、試料と隔膜との距離を調整する。
まず、試料6を搭載したZ駆動機構付き試料台410を荷電粒子顕微鏡の試料設置部419に設置する(ステップ615)。この状態を図5(a)に示す。ここで、フェーズCで調整したZ軸駆動機構411を動かさないことが重要である。その後、試料ステージ5のZ軸駆動機構414の目盛りを、z0よりもZ軸方向の高さが低い(つまり隔膜10から離れた)位置であるz0−z1に合わせて観察を開始すると、試料を観察することができる(図5(b))。なお、z1は例えば百〜数十μmなどであり、試料と隔膜との間のガスによる散乱の程度に応じて決めればよい。
以上のように、荷電粒子顕微鏡装置の外部に配置された光学顕微鏡にて高さ調整冶具403を介して、間接的に試料高さt0を把握できたことになる。言い換えれば、本実施例では、フェーズBおよびフェーズCで光学顕微鏡の焦点位置を利用して高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付試料台410の試料高さをt0に一致させている。これにより、高さ調整冶具403で測定した試料ステージ5のZ軸駆動機構414での隔膜10の位置を、試料が載置されたZ軸駆動機構付試料台410を試料ステージ5に設置したときにも転用することを可能としている。また別の表現をすれば、本実施例では、高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付試料台410の試料高さを一致させることで、フェーズAで荷電粒子顕微鏡に設置される高さ調整冶具403を疑似的にZ軸駆動機構付試料台410とみなしている。これにより実際には隔膜に接触させることが許されない試料台の代わりに高さ調整冶具を利用して隔膜の土台に接触させ、隔膜の位置を把握することができる。
また、上記では「フェーズA→フェーズB→フェーズC→フェーズD」の順で操作を実施する構成について説明したが、他に以下の3パターンの順で実施してもよい。以下(1)〜(3)におけるアルファベットはフェーズ名を示す。
(1) B→A→C→D
(2) B→C→A→D
(3) B→(AとCを並行して実施)→D
言い換えると、フェーズBの後にフェーズCを実施し、なおかつフェーズA〜Cを全て実施した後にフェーズDを実施すればよい。
フェーズDでは荷電粒子顕微鏡の試料ステージの位置を調整して試料と隔膜との距離を調整したが、Z軸駆動機構付き試料台の高さを調整することで試料と隔膜との間の距離を調整してもよい。この場合の試料の高さ調整の操作手順のうちの1パターンを、図6(b)を用いて説明する。
図6(a)と同様に、第一の手順にフェーズAを、第二の手順にフェーズBを実施する。
次に、第三の手順としてフェーズEを実施する。フェーズEでは、フェーズCと同様にしてZ軸駆動機構付き試料台の高さ調整を行った後に、Z軸駆動機構付き試料台の高さをt0からz1だけ下げる。すなわち、光学顕微鏡の焦点位置から試料表面がz1だけ低くなるようにZ軸駆動機構付き試料台の高さを調節する。
フェーズEでは、まずフェーズCのステップ610〜613と全く同様のステップ620〜624を実施する。ステップ624を実施したとき、試料高さはt0である。次に、試料高さがt0からz1だけ下がるようにZ軸駆動機構付き試料台のZ軸駆動機構を動かす(ステップ625)。このとき試料高さはt0−z1となる。その後、試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡402の試料設置部400から取り外す(ステップ626)。ステップ626はステップ614と同様である。
次に、第四の手順としてフェーズFを実施する。フェーズFでは、フェーズDと同様にして荷電粒子顕微鏡内での試料6のZ軸座標調整を行う。
まず、試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を荷電粒子顕微鏡の試料設置部419に設置する(ステップ627)。ここで、フェーズEで調整したZ軸駆動機構411を動かさないことが重要である。その後、試料ステージ5のZ軸駆動機構414の目盛りをz0に合わせて(ステップ628)観察を開始すると、試料を観察することができる(ステップ629)。この状態を図7に示す。
以上のように、Z軸駆動機構付き試料台の高さを調整して試料高さをt0−z1とすることでも隔膜の位置を把握することができる。
上記では「フェーズA→フェーズB→フェーズE→フェーズF」の順で操作を実施する構成について説明したが、他に以下の3パターンの順で実施してもよい。以下(1)〜(3)におけるアルファベットはフェーズ名を示す。
(1) B→A→E→F
(2) B→E→A→F
(3) B→(AとEを並行して実施)→F
言い換えると、フェーズBの後にフェーズEを実施し、なおかつフェーズA、B,Eを全て実施した後にフェーズFを実施すればよい。
以上のとおり本実施例によれば、光学顕微鏡402と高さ調整冶具403を活用し、荷電粒子顕微鏡で観察する際の試料6の高さおよび試料6のZ軸座標をあらかじめ決定することにより、繊細な試料6の高さ調整およびZ軸座標の作業無しで、試料6を大気圧雰囲気下で荷電粒子顕微鏡にて観察することができる。これにより隔膜破損のリスクが低減され、また隔膜と試料との距離の把握および制御が容易になり、大気圧雰囲気下で観察可能な荷電粒子顕微鏡の利便性が向上する。
また、本実施例によれば、試料観察中に隔膜に試料が接触する位置を予め知ることができる。すなわち観察中に試料ステージを動かす場合に、試料ステージ位置がz0より高く(隔膜10に近く)なると、隔膜に試料が接触してしまうことになる。したがって、高さ調整冶具403によりz0の位置を測定した段階で、試料ステージがz0より高く(隔膜10に近く)ならないように、試料ステージの移動範囲に制限をかけてもよい。
次に、高さ調整冶具403表面が目標物416を備える場合について説明する。前述の例では、光学顕微鏡402で観察したときの視野のXY方向の位置と、荷電粒子顕微鏡で観察したときの視野のXY方向の位置が一致しないという課題がある。そこで、光学顕微鏡402に移動機構を設け光学顕微鏡402の視野中心と荷電粒子顕微鏡の視野中心を一致させて、試料上の特定の部位を観察する方法を説明する。この例では、光学顕微鏡402および荷電粒子顕微鏡で観察する際の目標物416を有する高さ調整冶具403と、XY平面移動機構415を有する光学顕微鏡402と、XY平面移動機構417を有する荷電粒子顕微鏡を用いる。図8と図9と図10に必要な構成とそれらを組み合わせた状態を示す。以下では、前述の実施例と同様の部分については説明を省略する。
本実施例の高さ調整冶具403は、表面に光学顕微鏡402および荷電粒子顕微鏡で観察する際の目標物416を有する。この目標物は、高さ調整冶具403を光学顕微鏡402で観察した際の視野中心と高さ調整冶具を荷電粒子顕微鏡で観察した際の視野中心を一致させるために用いる。この目標物416は溝や穴、特定材料の埋め込み構造など、高さ調整冶具403の表面から突起していない形状を有し、光学顕微鏡402と荷電粒子顕微鏡の両方で観察できる大きさおよび材料である。ただし目標物416は、観察時の視野中心のXY平面上の座標を一意に決定できれば2つ以上あってもよく(大きさの違う同心円など)、その形状にはこだわらない。また、目標物416は目標構造または目標マークと呼ばれることもある。なお、ここでは高さ調整冶具403の中心軸上に目標物を設置した構造を用いて説明するが、表面上であれば目標物416の設置場所は中心軸と一致していなくてもよい。
本実施例では、光学顕微鏡402及び荷電粒子顕微鏡にはそれぞれXY平面移動機構を有する。このXY平面移動機構は、試料または高さ調整冶具をXY平面内方向に移動させる機構であり、例えば微調整ネジやモータで構成されてもよい。XY平面移動機構は、試料ステージ上の任意の部位を観察するために使用される。
図8は光学顕微鏡に高さ調整冶具を設置した状態を示しており、図6のステップ607〜609に対応する。図8(a)は、光学顕微鏡402に、前述の高さ調整冶具403を設置(ステップ607)した直後の状態である。本実施例の光学顕微鏡402はXY平面移動機構415を有する。光学顕微鏡402のXY平面移動機構415は、例えば、土台407の上かつ試料設置部400の下に設けられており、試料設置部400に設置された試料または高さ調整冶具403をXY平面方向に移動可能な機構である。これにより、試料上で任意の観察対象部位を探して光学顕微鏡402の視野中心に移動することができる。なお、ここでは光学顕微鏡402の土台407がXY平面移動機構415を備える構成を用いて説明するが、土台407が固定され、鏡筒413と対物レンズ412を移動させるXY平面移動機構を備える構成であってもよい。
この状態から光学顕微鏡402で観察しながら光学顕微鏡402のXY平面移動機構415を動かして、光学顕微鏡402の視野中心に高さ調整冶具403表面の目標物416を移動することができる。図8(b)に、光学顕微鏡402の視野内(好ましくは視野中心)に高さ調整冶具403の表面の目標物416がある状態を示す。本実施例において、図6のステップ608に対応するステップでは、光学顕微鏡位置駆動機構406を動かし高さ調整治具403に焦点を合わせることに加えて、XY平面移動機構415により高さ調整冶具403の目標物416を光学顕微鏡402の視野内に入れるように調整する。
図9は荷電粒子顕微鏡に高さ調整冶具を設置した状態を示しており、図6のステップ601〜606に対応する。図9(a)に、前述の荷電粒子顕微鏡に、前述の高さ調整冶具を設置(ステップ601)した直後の状態を示す。この状態から、荷電粒子顕微鏡で観察しながら荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5のXY平面移動機構417を動かして、荷電粒子顕微鏡の視野内(好ましくは視野中心)に高さ調整冶具403表面の目標物416を移動することができる。図9(b)に、荷電粒子顕微鏡の視野内(好ましくは視野中心)に高さ調整冶具403の表面の目標物416がある状態を示す。本実施例においては、図6のステップ601とステップ606との間のいずれかのステップに加えまたはいずれかのステップに並行して、XY平面移動機構417により高さ調整冶具403の目標物416を荷電粒子顕微鏡の視野内に入れるように調整する。
以上により、高さ調整冶具403を介して、光学顕微鏡402で観察した時の視野中心と、荷電粒子顕微鏡で観察した時の視野中心を一致させることができる。
図10(a)は光学顕微鏡にZ軸駆動機構付き試料台410を設置した状態を示しており、図6のステップ610〜614に対応する。図10(a)は、光学顕微鏡402に試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を設置し(ステップ610)、ステップ611〜613により試料に焦点が合った状態である。
図10(b)は荷電粒子顕微鏡にZ軸駆動機構付き試料台410を設置した状態を示しており、図6のステップ615〜617に対応する。図10(b)は、ステップ616により、ステップ605で記録したz0から隔膜と試料との間の所望の距離z1だけ目盛りをずらし、試料ステージのZ軸駆動機構の目盛りをz0−z1にした状態である。本実施例においては、高さ調整冶具403により既に光学顕微鏡の視野と荷電粒子顕微鏡の視野を一致させているため、荷電粒子顕微鏡に試料を設置した(ステップ615)時点で図10(a)において視野中心にある試料6の部位と図10(b)において視野中心にある試料6の部位は一致する。これにより、荷電粒子顕微鏡上での視野探しが不要となるため、光学顕微鏡402で観察した試料6の部位を荷電粒子顕微鏡上でも容易に観察することが可能となる。
次に図11を用いて高さ調整冶具の形状について説明する。以下では、実施例1,2と同様の部分については説明を省略する。
図11は荷電粒子顕微鏡に高さ調整冶具を設置した状態の側方断面図である。図11(a)に目標物416周辺が尖っていない高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡に設置した状態を示す。また、図11(b)に、先端の面積が小さく目標物416周辺が尖っている高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡に設置した状態を示す。図11(b)のように高さ調整冶具403は、目標物416が位置する面(すなわち高さ調整冶具の上表面であって、隔膜に最近接の平面)が試料設置部419の上面より小さい形状でもよい。隔膜10の窓枠の長さをa、土台9の長さをb、高さ調整冶具403の上面の長さをcとすると、高さ調整冶具403は以下の式を満たす形状であることが望ましい。
b>c>a ・・・数式1
なお、隔膜10の窓、隔膜の土台9、高さ調整冶具403の上面の形状が円形である場合、a、b、cはそれぞれ円の直径を示すが、これらの形状は円形に限られず、例えば多角形であってもよい。多角形の場合には、a、b、cはそれぞれ、当該多角形の大きさを表す値(例えば外接円の直径)である。
b>cとすることで、荷電粒子顕微鏡で観察した際に、観察できる高さ調整冶具403の上面の表面積を小さくできるために、簡便に目標物416を視野中心に移動させることが可能となる。つまり、荷電粒子顕微鏡では、隔膜10の面積以上の視野を観察することができないために、図11(a)では高さ調整冶具403を観察視野に収めた後にも、目標物416を視野中心に移動するためには高さ調整冶具403表面上の移動を繰り返して目標物を探さなければならない。一方で、高さ調整冶具403の先端の面積が小さい場合は、目標物416を視野中心に移動するための観察視野の移動は少ない回数で済む。さらに、c>aとすることで、隔膜10の窓長aよりも高さ調整冶具403の上面の長さcのほうが大きくなるために、高さ調整冶具403の先端が隔膜10に接触せずに土台9に接触させることが可能である。
次に、図12から図15を用いて高さ調整冶具403の別の変形例について説明する。以下では、実施例1〜3と同様の部分については説明を省略する。
高さ調整冶具403は、以下に説明するように、上部先端にくぼみ418を有してもよい。あるいは、高さ調整冶具403の上部外周に凸部421を有してもよい。以下では、高さ調整部材の上表面であって隔膜に対向する面の高さが外周部とその内部とで異なる場合を代表して、くぼみ418の例を説明する。くぼみの深さh0はくぼみの底面内で一定であり、試料設置部に設置したときに、試料設置部の上面からくぼみ418の底部までの距離はt1で一定である。例えばh0は数μmから数十μmである。
前述の高さ調整冶具403表面の目標物416が設けられる場合には、くぼみ418の底部に設けられる。また、ここでは高さ調整冶具403が試料設置部419の位置決め構造420にはめあわせられる構造を有している構成を用いて説明するが、高さ調整冶具403を位置決め構造420にはめあわせられる構造を有する試料台に乗せて使用してもよい。
図12は、くぼみ418を有する高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡に設置した状態である。図12(a)に、くぼみ418を有する高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡に設置した(ステップ601に対応)直後の状態を示す。この状態から試料ステージ5のZ軸駆動機構414を動かして(ステップ602に対応)、高さ調整冶具403と隔膜10の土台9を接触させる(ステップ603、604に対応)。図12(b)に、高さ調整冶具403と隔膜10の土台9が接触した状態を示す。この状態で、Z軸駆動機構414の駆動量を(駆動量をz0とする)記録または記憶しておく(ステップ605に対応)。その後、高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡から取り外す(ステップ606に対応)。
なお、本実施例のくぼみ418は、図12で示すようにくぼみの大きさdは、隔膜10の窓枠の大きさaよりも大きく、また隔膜の土台9の大きさbよりは小さい。本実施例ではこのようなくぼみ418があるため、隔膜10(土台9の窓部)と高さ調整冶具403は接触しない。くぼみ418が無い高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5上の試料設置部419に設置し、隔膜10の土台9に接触させた場合(図4(b))、高さ調整冶具403が隔膜10と接触して隔膜10が破損する可能性がある。一方、くぼみ418を有する高さ調整冶具403を荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5の試料設置部419に設置して隔膜10の土台9に接触させた場合(図12(b))、高さ調整冶具403は隔膜10には接触せずに隔膜10の土台9の周縁部にのみ接触する。このため、隔膜10と高さ調整冶具403との接触により隔膜10が破損される可能性を低減することができる。これにより、隔膜破損による隔膜の交換作業の頻度を低減し、装置の利便性を向上することが可能となる。
図13は光学顕微鏡402に前述のくぼみ418を有する高さ調整冶具403を設置した状態である。図13(a)は、光学顕微鏡402に本実施例の高さ調整冶具403を設置(ステップ607に対応)した直後の状態である。この状態から光学顕微鏡位置駆動機構406を動かしてくぼみ418の底部に焦点を合わせる(ステップ608に対応)。図13(b)は焦点が合った状態である。この状態から光学顕微鏡402の光学顕微鏡位置駆動機構406は動かさずに高さ調整冶具403を取り外す(ステップ609に対応)。
その後、光学顕微鏡402の試料設置部400に試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を設置し(ステップ610に対応)、Z軸駆動機構411を動かして(ステップ611に対応)試料6に焦点を合わせる(ステップ612、613に対応)。図14(a)は焦点が合った状態である。このとき試料高さはt1となる。
次に、光学顕微鏡からZ軸駆動機構付き試料台410を取り外し(ステップ614に対応)、荷電粒子顕微鏡に設置する(ステップ615に対応)。そして、図14(b)に示すように、試料ステージ5のZ軸駆動機構414の目盛りをz0にして(ステップ616に対応)、試料を観察する(ステップ617に対応)。
ここで、本実施例の深さが既知のくぼみ418は以下で説明するような操作性向上の効果を持つ。前述のくぼみ418が無い高さ調整冶具403を使用して前述の試料の高さ調整して荷電粒子顕微鏡で試料を観察する場合には、荷電粒子顕微鏡の隔膜位置のZ軸座標確認(ステップ605で高さzをz0と確認する工程)を実施した後に、試料ステージ5のZ軸駆動機構414の目盛りをz0−z1にする必要がある(図5(b))。ここでz1とは隔膜10と試料6との距離に相当する。しかし、Z軸駆動機構414の目盛りを図4(b)で得られる値z0とは異なる値(z0−z1)にする操作は、試料高さ調整の操作を煩雑にする要因である。一方、深さ(h0)が既知なくぼみ418を有する高さ調整冶具403を使用して試料6の高さ調整およびZ軸座標調整を実施した場合、くぼみ418の深さh0が図5(b)のz1に相当することができる。そのため、本実施例のようにくぼみ418を有する高さ調整冶具を使用して荷電粒子顕微鏡で試料を観察する場合には、荷電粒子顕微鏡の隔膜位置のZ軸座標確認(ステップ605で高さzがz0であると確認する工程)を実施した後に、試料ステージ5のZ軸駆動機構414の目盛りをz0にすれば、隔膜と試料との間の距離は常にくぼみ418の深さh0になり、操作性が向上する。
また、本実施例の高さ調整冶具403は、図15のように、先端が尖っている形状であってもよい。すなわち、実施例3で説明したように、高さ調整冶具403の上面(くぼみの周辺の外周部)の大きさが試料設置部419の上面の大きさより小さくなるようにしてもよい。
また、複数の部品を高さ調整冶具に組み合わせてくぼみ418や凸部421を形成してもよい。例えば図16のように、中心に穴が開いて厚みがh0のリング状部品を高さ調整冶具403の上に配置することでくぼみや突部を形成してもよい。
図16は高さ調整治具403をZ軸駆動機構付き試料台410上に設置しているが、この構成については後述の実施例6で説明する。図14の構成における高さ調整冶具403の深さh0(数μm〜数十μm)のくぼみ418は非常に浅いため、精度よく加工するのは困難であるという課題がある。また、くぼみ418の周りの凸部が磨耗するたびに新しい高さ調整冶具403が必要となるためコスト面での課題もある。一方で図16の構成においては、高さ調整冶具403はくぼみ418を有さないため比較的容易に加工を行うことができる。また、リング状部品428が磨耗した場合もリング状部品428を取り替えるだけでくぼみ418の深さh0の精度を再現できるため、前述の課題を解決することができる。高さ調整治具403の直径または大きさがリング状部品428の直径または大きさと異なっていてもよい。また、リング状部品428はリング状でなくとも、くぼみ418を有すればどのような形状でも構わない。
次に、荷電粒子線顕微鏡で観察する際に、光学顕微鏡402の視野中心と荷電粒子顕微鏡の視野中心を合わせるために光学顕微鏡等を活用する別の例を説明する。以下では、実施例1〜4と同様の部分については説明を省略する。
上の例では、光学顕微鏡402で試料6の特定の部位を観察した後に、試料搭載部409をXY平面内で移動して試料の別の部位を観察する場合、再度目標物416を有する高さ調整冶具403を用いて光学顕微鏡402の視野中心と荷電粒子顕微鏡の視野中心を合わせる操作が必要である。このため作業が煩雑になるという課題がある。そこで、Z軸駆動機構付き試料台410上にXY平面内方向に試料を移動することが可能な移動機構を設ける。この移動機構により試料6の観察対象部位を移動する例を以下に説明する。
本実施例では、XY平面移動機構422を有するZ軸駆動機構付き試料台423を用いる。図17と図18に、必要な構成とそれらを組み合わせた状態を示す。
図17に、本実施例のZ軸駆動機構付き試料台423を用いて、試料6上の特定の観察対象部位を観察する状態を示す。図17(a)は光学顕微鏡にZ軸駆動機構付き試料台423を設置した状態、図17(b)は荷電粒子顕微鏡にZ軸駆動機構付試料台423を設置した状態を示している。本実施例において、高さ調整冶具を使ってZ軸方向の高さ合わせを行う処理は前述の実施例と同様である。本実施例のZ軸駆動機構付き試料台423は、XY平面移動機構422を有する。このXY平面移動機構422は例えばつまみ424を備えたネジ機構であって、X軸方向、Y軸方向(すなわち光軸方向であるZ軸に垂直な平面内)に自在に移動することが可能である。つまみ424を操作しXY平面移動機構422を動かすことで、光学顕微鏡402観察下において試料6上の任意の部位を観察し、観察対象部位を探して視野中心に移動することができる。この状態の後に別の部位を観察する場合は、Z軸駆動機構付き試料台423上のXY平面移動機構422のつまみ424を動かして観察対象部位を移動する。
図18に、XY平面移動機構422により観察対象部位を移動した状態を示す。図17では試料6表面上のP点を観察しており、図18では試料6表面上のQ点を観察している。P点を観察した後に、Q点を観察したい場合は、一旦試料6が搭載されたZ軸駆動機構付き試料台423を光学顕微鏡402下に戻し、光学顕微鏡402下に観察しながらXY平面移動機構422を動かしてQ点位置を光学顕微鏡の視野中心に持っていく。この状態が図18(a)である。その後、XY平面移動機構422で調整した位置をそのまま保持して、荷電粒子顕微鏡にZ軸駆動機構付き試料台423を設置する。この状態が図18(b)である。こうすると、光学顕微鏡402の視野中心と荷電粒子顕微鏡の視野中心は一致させたままであるので、Z軸駆動機構付き試料台423を荷電粒子顕微鏡に設置するだけで、隔膜10下にQ点が位置する。つまり、光学顕微鏡402で視野探しをして視野中心に持ってきた位置を、直接荷電粒子顕微鏡の隔膜下(光軸上)に持ってくることができる。
以上より、光学顕微鏡402下での試料6の観察対象部位の決定と調整を容易に行うことが可能となり、大気圧雰囲気下で観察可能な荷電粒子線顕微鏡における観察対象部位の移動時の操作性を大幅に向上することができ、さらなる利便性の向上を図ることができる。本実施例は、光学顕微鏡と荷電粒子顕微鏡が別体となっており、その間で試料台を着脱して移動することが必要な観察システムにおいて、特に有効である。
また、荷電粒子線顕微鏡観察のための位置決めに光学顕微鏡402を用いる構成について説明したが、上記構成を用いることにより、色情報を含む光学顕微鏡像と、より高分解能あるいは組成情報を含む荷電粒子線画像を容易に比較することができるという効果も実現される。例えば、本発明における光学顕微鏡402で取得される画像はCCDカメラなどを用いてデジタル情報として変換し、デジタル信号用ケーブルを経由して顕微鏡画像が表示されるコンピュータ35のモニタに表示させてもよい。光学顕微鏡像と荷電粒子線画像が同一画面上に表示されることで容易に両画像の比較することが可能となる。
実施例1〜5では高さ調整冶具403を光学顕微鏡402の試料設置部400および荷電粒子顕微鏡の試料設置部419に設置して用いる構成について説明したが、本実施例で説明するように高さ調整冶具403をZ軸駆動機構付き試料台410上に設置して試料の高さ調整を行ってもよい。別の表現をすれば、本実施例では高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付き試料台410を一体化する例を説明する。以下では、めねじを有する高さ調整冶具403、めねじを有する試料台425、ねじ427を有するZ軸駆動機構付き試料台410を用いる例を説明するが、高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付き試料台410が着脱可能に一体化できる構造であればこれに限られない。図19に必要な構成とそれらを組み合わせた状態を示す。
本実施例のZ軸駆動機構付き試料台410は試料搭載部409の上部に連結機構(例えばねじ427)を有する。ねじ427はZ軸駆動機構付き試料台410の試料搭載部409と一体であってもよいし、試料搭載部409とは別の部品であって、試料搭載部409とねじなどの機構を用いて接続してもよい。ねじ427は例えばおねじであって、おねじは高さ調整冶具403および試料台425が有するめねじにはめ合わせることが可能で、ねじ427と高さ調整冶具403または試料台425の着脱が可能である。
本実施例の高さ調整冶具403は例えばめねじであって、おねじであるねじ427とはめ合わせてZ軸駆動機構付き試料台410上に設置することができる。なお、前述のように、高さ調整冶具403は、前述のくぼみ418と目標物416のどちらか一方あるいは両方を有してもよい。また、実施例3に説明したように、目標物416が設置された部分の上面面積の周辺が尖っている形状であってもよい(図19(a))。最初に高さ調整冶具403をZ軸駆動機構付き試料台410を搭載し、そのあとに、高さ調整冶具403をはずして試料台425を搭載する。Z軸駆動機構411を動かして、試料6に焦点を合わせた状態を図19(b)に示している。
本実施例の試料台425は例えばめねじを有し、おねじであるねじ427とはめ合わせてZ軸駆動機構付き試料台410上に設置することができる。ここで、試料台425のはめ合わせ部分(例えばめねじ)は高さ調整冶具403のはめ合わせ部分(例えばめねじ)と同じ形状となっている。試料台425はZ軸駆動機構付き試料台410上に設置し、試料6を搭載して使用する。
本実施例における高さ調整冶具403を試料設置部400にはめあわせる構成の場合、位置合わせの絶対値t2をユーザ自身が決定できることが特徴である。これまで説明してきた高さ調整冶具403の高さは変えることができないが、高さ調整冶具403を試料設置部400にはめあわせる構成の場合は高さt2を変えることができる。t2を変更できるメリットとしては、隔膜と目標物416の距離を把握するための値(z0)を認識しやすい値(例えば、2.00mmなど小数点2位までが0の値)にしたい場合などに役に立つ。実施例1における高さ調整冶具403の場合、図4(b)の隔膜10の土台9に接触させることによって、高さ調整冶具403の表面が摩耗していったときz0の値が変動することになる。一方で、本実施例における高さ調整冶具403がZ軸駆動機構付き試料台410が一体化されていると、高さ調整冶具403の高さ変動しても、前記変動分をZ軸駆動機構付き試料台410にて調整することが可能となる。
また、高さ調整冶具403を試料設置部400にはめあわせる構成の場合、高さ調整冶具403の試料設置部400へのはめあわせと、Z軸駆動機構付き試料台410の試料設置部400へのはめあわせに傾きや位置ずれなどの違いがあると、試料高さを試料設置部400の上面と高さ調整冶具の上面の距離t2に精度よく合わせることが難しいという課題がある。一方本実施例の構成においては、高さ調整冶具403の使用時と試料台425の使用時でZ軸駆動機構付き試料台410は同一のものを試料設置部400にはめあわせるため、前述の課題を解決できる。例えば、位置決め構造420を長期使用して摩耗していった場合で緩みが発生することも考えられ、その場合は、緩みが発生せずに閉め込むことが可能なネジ構造をもつネジ427を用いる本実施例の方が適している。
次に、図20に本実施例を実施するための手順を示す。ここでは高さ調整冶具403がくぼみ418および目標物416を有し、先端が尖った形状である構成(図19(a))を例に説明するが、上述の各実施例で説明したように操作手順は高さ調整冶具の構造に応じて適宜変更されうる。図6と異なる点としては、ステップ901では、高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付き試料台410とを一体化している点と、光学顕微鏡402に設置及び焦点を合わせるステップ(ステップ909に対応)の後に、この状態から高さ調整冶具403をねじ427から取り外す点(ステップ910に対応)が大きく異なる。
第一のフェーズでは、高さ調整冶具を使って荷電粒子顕微鏡における隔膜のZ軸方向の位置を確認する作業を行う。
まずZ軸駆動機構付き試料台410のねじ427に高さ調整冶具403をはめ合わせる(ステップ901)。荷電粒子顕微鏡の試料設置部400に、高さ調整冶具403をねじ427にはめあわせたZ軸駆動機構付き試料台410を設置する(ステップ902)。もし、図16の構成であれば、さらにリング状部品428を高さ調整冶具403の上に搭載する。そして高さ調整冶具403と隔膜10の土台9とが接触するまで試料ステージ5のZ駆動機構414を動かす(ステップ903,904)。接触したかどうかの判定は、図6のステップ603で説明したのと同様に行うことができる。接触したら、高さ調整冶具の接近を停止し(ステップ905)、高さ調整冶具403と隔膜10の土台9が接触した状態での試料ステージのZ軸方向の位置を記憶する(ステップ906)。高さ調整冶具403と隔膜10の土台9が接触した時のZ軸駆動機構414の目盛りの値がz0である。ステップ905,906はそれぞれ図6のステップ604,605と同様である。また、実施例1で説明したステップ602〜605の自動での実施方法と同様にステップ903〜906も自動で実施してもよい。その後、Z軸駆動機構付き試料台410を荷電粒子顕微鏡の試料設置部419から取り外す(ステップ907)。
第二のフェーズでは、高さ調整冶具403を用いて光学顕微鏡の高さ調整を行う。まず、高さ調整冶具403が連結されたZ軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡402の試料設置部400に設置する(ステップ908)。観察を開始し、光学顕微鏡位置駆動機構406を動かし、高さ調整冶具403に焦点を合わせる(ステップ909)。焦点が合った状態が図19(a)である。このときの高さ調整冶具403のくぼみ418(光学顕微鏡の焦点が合っている点)から試料設置部400の上面までの距離をt2とする。その後、光学顕微鏡位置駆動機構406は前述の状態から動かさずに、高さ調整冶具403をねじ427から取り外すことで高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付き試料台410を分離する(ステップ910)。
次に、第三のフェーズとして、第二のフェーズで調整された状態の光学顕微鏡で、試料を載せたZ軸駆動機構付き試料台の高さ調整を行う。より具体的には、第二のフェーズで調整された光学顕微鏡の焦点位置に試料表面が位置するように、Z軸駆動機構付試料台410のZ軸駆動機構411により調整する。
第三のフェーズでは、まず試料6を搭載した試料台425をZ軸駆動機構付き試料台410のねじ427にはめ合わせることで両者を連結する(ステップ
911)。このとき光学顕微鏡からZ軸駆動機構付き試料台410を取り外さずに試料台425を取り付ける。または一旦光学顕微鏡からZ軸駆動機構付き試料台410を取り外して試料台425を取り付け、その後試料台425が連結されたZ軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡402の試料設置部400に設置してもよい。次に、光学顕微鏡402で観察しながら、試料6に光学顕微鏡402の焦点が合うようにZ駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411を動かす(ステップ912)。ステップ912では、光学顕微鏡位置駆動機構406は動かさず第二のフェーズで調整した状態を維持することが重要である。焦点が合ったかの判定(ステップ913)は図6のステップ612で説明したのと同様に行うことができる。図19(b)は試料6に光学顕微鏡402の焦点が合った状態である。焦点に試料が位置したらZ軸駆動機構411の動作を停止する(ステップ914)。このときの試料高さは、ステップ908におけるt2と一致する。その後、試料を載せた試料台425が連結されたZ軸駆動機構付き試料台410を光学顕微鏡402の試料設置部400から取り外す(ステップ915)。このときZ軸駆動機構411をステップ913の状態から動かさず取り外す。
第四のフェーズでは、荷電粒子顕微鏡内での試料6のZ軸座標調整を行う。まず、ステップ914で取り外した状態のまま、Z駆動機構付き試料台410を荷電粒子顕微鏡の試料設置部419に設置する(ステップ916)。その後、試料ステージ5のZ軸駆動機構411の目盛りをz0に合わせて(ステップ917)、観察を開始する(ステップ918)。なお、くぼみ418のない高さ調整冶具を用いる場合には図6のステップ616のようにz0から隔膜と試料との距離分だけZ軸上の位置をずらせばよい。ステップ916からステップ918は図6のステップ615からステップ617とほぼ同様である。
実施例1〜6では光学式観察装置として光学顕微鏡を用いる構成について説明したが、本実施例では光学式観察装置として光学式レーザ装置を用いる例を説明する。以下では、実施例1〜6と同様の部分については説明を省略する。
図21〜23を用いて、光学式レーザ装置500、高さ調整治具403、Z軸駆動機構付き試料台410によって、試料高さを高さ調整治具403の高さt0に合わせる方法を説明する。光学顕微鏡を用いる例では、Z軸駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411を動かして試料の表面を光学顕微鏡の焦点に合わせる際に焦点に合ったか否かの判断は操作者が目視で判断する。そのため試料の高さZに定量性がないという課題があった。一方、本実施例における光学式レーザ装置は、レーザによって高さが絶対値として認識できるといった特徴がある。
本実施例における光学式レーザ装置500は、レーザを発光する発光部502とレーザが試料に照射されたことによって発生する試料からの反射光を取得する素子を備える受光部503を具備する。発光部502と受光部503はレーザ装置501内に一体化されていてもよい。レーザ装置501などをZ軸方向に動かすための光学式レーザ装置位置駆動機構504、光学式レーザ装置500を装置接地面に対して支持し、光学式レーザ装置位置駆動機構504を具備する土台505、光学式レーザ装置501の基準面からレーザ照射点までの距離を表示するためのメータ507を有する。
光学式レーザ装置501には試料設置部506を備える。この試料設置部506は、荷電粒子顕微鏡の試料ステージ5に具備されるのと同様に、高さ調整治具403およびZ軸駆動機構付き試料台410をはめあわせるための位置決め構造508を有する。
以下では、あらかじめレーザが照射して後で反射する基準点502を設定し、その基準点502からの変位を測定する装置を用いて説明するが、光学式レーザ装置自身の基準点からレーザが照射される点までの絶対距離を測定する装置であってもよい。図21を用いて、調整治具403を光学式レーザ装置501に設置し、高さ調整治具403を用いて光学式レーザ装置500を調整するときの操作の説明図である。図21(a)では光学式レーザ装置501の試料設置部506に高さ調整治具403を設置した状態を示す。この状態から光学式レーザ装置位置駆動機構504を動かして、高さ調整治具403の表面を光学式レーザ装置501の検出距離範囲内に収める。この時の光学式レーザ装置のメータの値をz2とする。この状態を図21(b)に示す。このz2の値はユーザが記憶してもよいし、z2の位置を0に合わせる機能をメータ507に有していてもよい。
図22(a)に、光学式レーザ装置501に、試料6を搭載したZ軸駆動機構付き試料台410を配置した状態を示す。図22(b)に、試料表面にレーザを照射し、Z軸駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411を動かしてメータ507の値をz2に合わせた状態を示す。Z軸駆動機構付き試料台410のZ軸駆動機構411を動かして、メータ507の値をz2に合わせたとき、試料高さは高さ調整治具403の高さt0と一致する。このとき、Z軸駆動機構411は独立して動くので、光学式レーザ装置位置駆動機構504を固定したまま、メータ507をz2に合わせることができる。前述のとおりメータ507に有する機能を用いてz2を0に合わせてもよい。z2の値を0に調整した場合、メータ507には基準点502からの距離がメータ507に表示されるため、Z軸駆動機構411を動かす量が分かりやすい。以上のとおり本実施例によれば、定量的に試料高さを決定することができる。
以上では発光部502および受光部503がZ軸方向に駆動し試料との距離を調整する構成を用いて説明したが、図23に示すように、レーザ装置502が固定され、土台505上に試料ステージ509がありこれがZ軸方向に駆動し試料(または試料設置部506)との距離を調整する構成であってもよい。本構成の場合はレーザ装置501自体が動かなくてよいので、距離z2を計測する際を考えると、より安定に計測可能な装置構成である。
図1では試料6を配置する空間が完全に大気状態での装置について説明した。本実施例では図24を用いて大気圧下だけでなく大気圧よりも若干減圧下の状態(約105Pa〜約103Pa)や所望のガス雰囲気下で観察可能な荷電粒子線装置に上述の実施例を適応した構成を説明する。本実施例の荷電粒子線装置は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する第1の筐体(以下、真空室と称することもある)7、第1の筐体7に挿入して使用される第2の筐体(以下、アタッチメントと称することもある)121、第2の筐体内に配置される試料ステージ5、およびこれらを制御する制御系によって構成される。制御系などの基本的な構成は図1と同等なので詳細な説明は省略する。
第2の筐体121の直方体形状の側面のうち少なくとも一側面は開放面となっている。第2の筐体121の直方体形状(本体部)の側面のうち隔膜保持部材155が設置される面以外の面は、第2の筺体121の壁によって構成されている。または第2の筺体121自体には壁がなく第1の筺体7に組み込まれた状態で第1の筺体7の側壁によって構成されても良い。第2の筐体121は、第1の筺体7の側壁に設けられた開口部を通って第1の筐体7内部に挿入され、第1の筺体7に組み込まれた状態で観察対象である試料6を格納する機能を持つ。第1の筐体7と第2の筺体121間は真空封止部材126を介して上記側面側の外壁面に固定される。第2の筺体121は第1の筺体7の側面または内壁面または荷電粒子光学鏡筒のいずれに固定されても良い。これによって、第2の筐体121全体が第1の筐体7に嵌合される。第1の筺体7の開口部は、荷電粒子顕微鏡の真空試料室にもともと備わっている試料の搬入・搬出用の開口を利用して製造することが最も簡便である。つまり、もともと開いている穴の大きさに合わせて第2の筐体121を製造し、穴の周囲に真空封止部材126を取り付ければ、装置の改造が必要最小限ですむ。また、第2の筐体121は第1の筐体7から取り外しも可能である。
第2の筐体121の側面は大気空間と少なくとも試料の出し入れが可能な大きさの面で連通した開放面であり、第2の筐体121の内部に格納される試料6は、観察中、大気圧状態または若干の負圧状態または所望のガス種状態に置かれる。なお、図24は光軸と平行方向の装置断面図であるため開放面は一面のみが図示されているが、図24の紙面奥方向および手前方向の第1の筺体の側面により真空封止されていれば、第2の筺体121の開放面は一面に限られない。第2の筺体121が第1の筺体7に組み込まれた状態で少なくとも開放面が一面以上あればよい。第2の筺体の開放面により、試料は第2の筺体(アタッチメント)内部と外部の間で搬入および搬出が可能である。
第2の筺体121の上面側には荷電粒子線が透過または通過可能な隔膜10が設けられている。この隔膜10は第2の筺体121から着脱可能である。第1の筐体7には真空ポンプ4が接続されており、第1の筐体7の内壁面と第2の筐体の外壁面および隔膜10によって構成される閉空間(以下、第1の空間11とする)を真空排気可能である。これにより、本実施例では、隔膜10により第1の空間11が高真空に維持される一方、試料が保持されている空間(図では隔膜、第2の筺体121、蓋部材122によって囲まれる空間。以下、第2の空間12とする)は大気圧または大気圧とほぼ同等の圧力のガス雰囲気に維持されるので、装置の動作中、荷電粒子光学鏡筒2側を真空状態に維持でき、かつ試料6および前述の試料台を大気圧または所定の圧力の雰囲気に維持することができる。隔膜10は隔膜保持部材155によって保持され、隔膜10の交換は隔膜保持部材155を交換することで可能となる。
なお、第1の空間11は、真空度を調整することが可能である。すなわち、第1の空間内部にガス分子を導入し、低真空環境とすることも可能である。ガス分子は例えばニードルバルブ28によって流量制限され、大気導入口27を通して導入可能である。
本実施例の荷電粒子顕微鏡の場合、第2の筐体121の少なくとも一側面をなす開放面を蓋部材122で蓋うことができるようになっている。蓋部材122には試料ステージなどが具備されている。
本実施例の荷電粒子顕微鏡においては、第2の筐体121内に置換ガスを供給する機能または第一の空間とは異なった気圧状態を形成可能な機能を備えている。荷電粒子光学鏡筒2の下端から放出された荷電粒子線は、高真空に維持された第1の空間11を通って、図24に示す隔膜10を通過し、更に、大気圧または若干の負圧状態に維持された第2の空間12に侵入する。すなわち第2の空間は第1の空間より真空度が悪い(低真空度の)状態である。大気空間では荷電粒子線は気体分子によって散乱されるため、平均自由行程は短くなる。つまり、隔膜10と試料6の距離が大きいと一次荷電粒子線または一次荷電粒子線の照射により発生する二次荷電粒子、反射荷電粒子もしくは透過荷電粒子が試料及び検出器3まで届かなくなる。一方、荷電粒子線の散乱確率は、気体分子の質量数や密度に比例する。従って、大気よりも質量数の軽いガス分子で第2の空間を置換するか、少しだけ真空引きすることを行えば、荷電粒子線の散乱確率が低下し、荷電粒子線が試料に到達できるようになる。また、第2の空間の全体ではなくても、少なくとも第2の空間中の荷電粒子線の通過経路、すなわち隔膜と試料との間の空間の大気をガス置換できればよい。置換ガスの種類としては、窒素や水蒸気など、大気よりも軽いガスであれば画像S/Nの改善効果が見られるが、質量のより軽いヘリウムガスや水素ガスの方が、画像S/Nの改善効果が大きい。
以上の理由から、本実施例の荷電粒子顕微鏡では、蓋部材122にガス供給管100の取り付け部(ガス導入部)を設けている。ガス供給管100は連結部102によりガスボンベ103と連結されており、これにより第2の空間12内に置換ガスが導入される。ガス供給管100の途中には、ガス制御用バルブ101が配置されており、管内を流れる置換ガスの流量を制御できる。このため、ガス制御用バルブ101から下位制御部37に信号線が伸びており、装置ユーザは、コンピュータ35のモニタ上に表示される操作画面で、置換ガスの流量を制御できる。また、ガス制御用バルブ101は手動にて操作して開閉してもよい。
置換ガスは軽元素ガスであるため、第2の空間12の上部に溜まりやすく、下側は置換しにくい。そこで、蓋部材122でガス供給管100の取り付け位置よりも下側に第2の空間の内外を連通する開口を設ける。例えば図24では圧力調整弁104の取り付け位置に開口を設ける。これにより、ガス導入部から導入された軽元素ガスに押されて大気ガスが下側の開口から排出されるため、第2の筐体121内を効率的にガスで置換できる。なお、この開口を後述する粗排気ポートと兼用しても良い。
また、ヘリウムガスのような軽元素ガスであっても、電子線散乱が大きい場合がある。また、試料表面に水分が多量に存在する場合は若干水分を蒸発させる必要がある。その場合は、ガスボンベ103を真空ポンプにすればよい。そして、少しだけ真空引きすることによって、第2の筐体内部を極低真空状態(すなわち大気圧に近い圧力の雰囲気)にすることが可能となり、また試料表面上の水分だけを蒸発させることが可能となる。例えば、第2の筐体121または蓋部材122に真空排気ポートを設け、第2の筐体121内を一度真空排気する。その後置換ガスを導入してもよい。この場合の真空排気は、第2の筐体121内部に残留する大気ガス成分を一定量以下に減らせればよいので高真空排気を行う必要はなく、粗排気で十分である。これは例えば、約105Paから約103Paの範囲などである。
ただし、生体試料など水分を含む試料などを観察する場合、一度真空状態に置かれた試料は、水分が蒸発して状態が変化する。従って、完全に蒸発する前に観察するか、上述のように、大気雰囲気から直接置換ガスを導入する方が好ましい。第2の筺体121の開放面は、置換ガスの導入後、蓋部材で閉じることにより、置換ガスを効果的に第2の空間内に閉じ込めることができる。
このように本実施例では、試料が載置された空間を大気圧(約105Pa)から約103Paまでの任意の真空度に制御することができる。従来のいわゆる低真空走査電子顕微鏡では、電子線カラムと試料室が連通しているので、試料室の真空度を下げて大気圧に近い圧力とすると電子線カラムの中の圧力も連動して変化してしまい、大気圧(約105Pa)〜103Paの圧力に試料室を制御することは困難であった。本実施例によれば、第2の空間12と第1の空間11を薄膜により隔離しているので、第2の筐体121および蓋部材122に囲まれた第2の空間の中の雰囲気の圧力およびガス種は自由に制御することができる。したがって、これまで制御することが難しかった大気圧(約105Pa)〜約103Paの圧力に試料室を制御することができる。さらに、大気圧(約105Pa)での観察だけでなく、その近傍の圧力に連続的に変化させて試料の状態を観察することが可能となる。
上記開口の位置に三方弁を取り付ければ、この開口を粗排気ポートおよび大気リーク用排気口と兼用することができる。すなわち、三方弁の一方を蓋部材122に取り付け、一方を粗排気用真空ポンプに接続し、残り一つにリークバルブを取り付ければ、上記の兼用排気口が実現できる。
上述の開口の代わりに圧力調整弁104を設けても良い。圧力調整弁104は、第2の筐体121の内部圧力が1気圧以上になると自動的にバルブが開く機能を有する。このような機能を有する圧力調整弁を備えることで、軽元素ガスの導入時、内部圧力が1気圧以上になると自動的に開いて窒素や酸素などの大気ガス成分を装置外部に排出し、軽元素ガスを装置内部に充満させることが可能となる。なお、図示したガスボンベまたは真空ポンプ103は、荷電粒子顕微鏡に備え付けられる場合もあれば、装置ユーザが事後的に取り付ける場合もある。
蓋部材122には試料ステージ5が具備される。本試料ステージ5の上には本発明における高さ調整冶具403とZ軸駆動機構付き試料台410を配置するための試料設置部419を備える。試料設置部419は、高さ調整冶具およびZ軸駆動機構付き試料台410をはめあわせるための位置決め構造420を有する。この位置決め構造420は、高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410をはめあわせたときに試料設置部400の中心軸と高さ調整冶具403およびZ軸駆動機構付き試料台410の中心軸を一定の位置関係で保持することができる。試料ステージ5は蓋部材122に固定されているため、蓋部材122を第2の筺体121の合わせ部132に密着させた時は隔膜10と試料ステージの位置関係は常に一定である。そのため、図1の装置構成と比較し、図24の装置構成では試料交換のために、試料ステージ5を紙面上横方向に移動させたとしても、第2の筺体121の合わせ部132に蓋部材122を密着させると常に位置決め構造420と荷電粒子線光軸200と隔膜10との位置関係は同じ位置に持ってくることが可能である。
本発明における試料と隔膜との距離把握方法は大気空間に内包し隔膜を備える試料格納容器においても用いることができる。図25、図26に、本実施例の試料格納容器の全体構成図を示す。図25に示される試料格納容器は、主として、格納容器700、蓋701、試料台702、試料台702の位置を変更するための駆動機構をもつ試料ステージ703、試料ステージ703を試料格納容器外部から動かすための複数の操作部704、操作部704と試料ステージ703との間の機械要素728、荷電粒子線を通過または透過させる隔膜10、隔膜10を保持する隔膜保持部材706によって構成される。試料6は試料台702の上に載置され、この試料台とともに閉空間である格納容器700内部に格納される。本試料格納容器の外部と内部のガス種および気圧状態が分離した状態に保持するために、蓋701と格納容器700との間にOリングやパッキンなどの真空封じ部材707を有する。試料ステージ703の下面と格納容器700の底面は図示しないねじ等で固定されるものとする。
蓋701は格納容器700から着脱することが可能である。後述するように、荷電粒子線装置内部に配置される状態での格納容器700内部は大気圧または所望のガス圧空間であり、格納容器700外部は真空状態である。そのため、蓋701は格納容器700内部から押される方向に力が働く。そのため、蓋701に接続された突起709と、格納容器700に接続された突起710との組合せで、格納容器700内部から押される方向に力が働いても、蓋701がはずれないような構造にしてもよい。この場合、蓋701は図中、紙面垂直方向にすべらせることによって、格納容器700との着脱が可能となる。また別の例としては、蓋701と格納容器700間が図示しないねじなどで固定されていてもよい。また別の例としては、格納容器700と蓋701それ自体におねじ及びめねじが切られており組合せて回転させることによって結合させてもよい。蓋701の固定手段は上記の例に限られず、蓋701と格納容器700が試料格納容器の内外の圧力差に耐えられる程度の力で固定されていればよい。
本実施例では、試料ステージ703は試料6の位置を隔膜に近づく方向または遠ざかる方向に駆動させることが可能なZ軸と、図中横方向や紙面垂直方向に駆動することが可能なXY軸の駆動機構を備える構成としている。そのため、操作部704(インターフェース)も複数配置される。試料6を試料台上で回転させる回転駆動機構があってもよい。これらの駆動機構は試料格納容器の内部に設置されており、試料ステージ703は機械要素728経由で試料格納容器の外部に設けられた操作部704によって操作される。機械要素728は例えば回転する軸や棒などである。操作部704は回転させるか、押したり引いたりするなどによって操作することが可能である。試料格納容器の外部と内部の気体種類および気圧状態が変化しないように、Oリングやパッキンなどの真空封じ部材707が格納容器700と機械要素728間に備えられている。この構成によって、試料格納容器の内外の圧力差が維持され、試料格納容器の内部の雰囲気状態(圧力、ガス種類)を保ったまま試料6を隔膜10と独立して駆動できる。すなわち、上述した位置調整機構によれば、隔膜10に対する試料6の位置を試料格納容器の外部から調整することができる。尚、後述するように、試料格納容器は荷電粒子線装置内部のステージや台などの平面部に配置して光学顕微鏡などにて試料を観察しながら操作部704を操作する。そのため、操作部704の多くは図の通り試料格納容器側面側に配置されていることが望ましい。試料6と隔膜10とが非接触であり、隔膜10に平行方向に試料を隔膜10と独立して動かすことが可能であるため、非常に広い範囲(少なくとも隔膜の面積より大きい範囲)の試料の観察が可能となる。
試料格納容器下側(底面側)には、後述する荷電粒子線装置内部の試料ステージ上に配置するための合わせ部711をもつ。合わせ部711は凸型で図示しているが、凹型でもよいし、別の形状でもよい。合わせ部711が試料ステージの対応する部分と結合することにより試料格納容器を試料ステージ上に固定する。
試料6は試料格納容器内に配置される。試料ステージ703上に設けられた試料台702の上に試料6が搭載される。試料6を試料格納容器から取り外す場合は試料6だけをはずしてもよいし、試料台702ごと取り外してもよい。
蓋701には隔膜10を備えた隔膜保持部材706が具備されている。蓋701と隔膜保持部材706との間は接着剤、両面テープ、真空グリス、Oリングまたはパッキンなどがあることによって気密が保たれている。蓋701の図中上部から荷電粒子線が飛来して隔膜10及び試料6に荷電粒子線が照射されるので、蓋701には開口部712を備える。後述するように、試料から放出された二次的荷電粒子を検出するための検出器が蓋701の上部に配置されている。そのため、二次的荷電粒子を効率よく検出するために、開口部712は蓋701の下面よりも上面の方が開口面積広くする形状であること望ましい。図では開口部712をテーパ形状としている構成を図示している。
試料格納容器には、ガス導入口714とガス導出口715を備える。これらは試料格納容器の外部空間の雰囲気状態と内部空間718とのガス雰囲気状態を分離又は連通できるようなバルブ機構を備える。蓋701によって格納容器700が閉じられている状態でガス導入口714より所望のガスを導入する。但し、試料格納容器内部の圧力が上がりすぎると、隔膜10が破裂する恐れがある。そのためガス導出口715を空けた状態で、ガス導入口714よりガス導入すると、隔膜10に圧力をかけることなく内部空間718が所望の圧力のガス雰囲気で満たされることになる。ガス導出口715は内部空間718が試料格納容器の外部空間よりも圧力が高くなったら自動で開く安全弁などのようなものでもよい。また、ガス導出口715には真空ポンプを取り付けることも可能であり、その場合は試料格納容器を所望のガス種の低圧状態にすることが可能となる。また、上記記載したガス導入口及びガス導出口からは気体だけでなく液体を導入出してもよい。
試料格納容器には、試料6の近傍などに電気信号を送受信するために電流導入端子716を備える。電流導入端子716と格納容器700との間には図示しない接着剤、Oリングまたはパッキンなどが設けられ格納容器内部の気密状態が保持される。電流導入端子716から図示しない配線などを経由して試料6近傍に電気信号を送受信する。電界印加、温度ヒータ、温度測定などのために本電流導入端子716が使用できる。また、検出素子を試料格納容器内部に配置し、検出素子からの信号線を電流導入端子716に接続すれば試料格納容器内部で発生した信号を取得することが可能となる。このように電流導入端子716は電気信号導出端子としても用いることができる。具体的には、試料6の下の試料台702を、荷電粒子線を光や電気信号に変更するシンチレータや半導体検出器などの検出素子にすれば、試料6から透過してきた透過荷電粒子線を取得できるので、試料内部情報の取得が可能となる。試料格納容器内部は大気状態またはガス状態であるので、試料内部情報を検出する際は試料と検出素子の距離を透過荷電粒子線の大部分が散乱する距離より短くすることが望ましい。つまり、透過する荷電粒子線の平均自由工程を短くする必要がある。隔膜と試料との距離および試料と検出器との許容される距離は、荷電粒子線の加速電圧などの照射条件によっても変化するが、現実的には、例えば、1mm以下であることが必要となる。したがって、試料6を検出素子上に直接配置することが望ましい。あるいは、厚みが1mm以下の薄いメッシュなどの上に試料を配置してもよい。
<荷電粒子線装置の説明>
次に、図26に、試料格納容器を荷電粒子顕微鏡装置の内部に配置した状態を示す。本実施例の荷電粒子顕微鏡は、基本的な構成は図1と同等なので詳細な説明は省略する。
筺体7の側面は蓋部材50によって装置外部と筺体7内部との気圧状態を分離することが可能である。蓋部材50と筺体7との間は真空封じ部107が具備され、蓋部材50は筐体7に真空封止部材107を介して取り外し可能に固定される。本実施例の荷電粒子顕微鏡は、前述の試料格納容器が筺体7内部にいれられた後に試料と荷電粒子光学鏡筒との位置関係を変更するために試料格納容器の移動手段としてステージ5を備えている。蓋部材50を支持する底板となる支持板708が取り付けられており、ステージ5が支持板708に固定されている。筐体7の底面および蓋部材50の下面に、蓋部材用支持部材18、底板20をそれぞれ備える。蓋部材用支持部材18は底板20に対して取り外し可能に固定されており、蓋部材50および蓋部材用支持部材18を丸ごと筐体7から取り外すことが可能である。
底板20には、試料格納容器の取り外しの際に蓋部材50の引き出しのガイドとして使用される支柱を備える。通常の観察時の状態では、支柱は底板20に設けられた格納部に格納されており、取り外しの際に蓋部材50が引き出される方向に延伸するように構成される。さらに、支柱は蓋部材用支持部材18に固定されており、蓋部材50を筐体7から取り外した際に、蓋部材50と荷電粒子顕微鏡本体とが完全には分離しないようになっている。これにより、ステージ5または試料6の落下を防止することができる。
支持板708は、蓋部材50の対向面に向けて筺体7内部に向かって延伸するよう取り付けられている。ステージ5に備えられるZ軸駆動機構およびXY駆動機構からはそれぞれ支軸が伸びており、各々蓋部材50が有する操作つまみ51および操作つまみ52と繋がっている。装置ユーザは、これらの操作つまみを操作することにより、荷電粒子光学鏡筒に対する試料格納容器の位置を調整することが可能である。ここで上述のように試料格納容器内部にも位置調整機構が備えられており、この位置調整機構とステージは独立に可動となっている。試料格納容器内部の位置調整機構は試料と隔膜との位置合わせに利用され、ステージは荷電粒子線光学鏡筒と試料格納容器との位置合わせに利用される。
<試料観察方法>
以上で説明した試料格納容器内部に試料を配置した後、荷電粒子線装置内部に配置することによって、大気圧下またはガス雰囲気下にある試料に荷電粒子線を照射するまでの方法について詳細を記載する。
本実施例における光学顕微鏡402にはXY平面移動機構415を備えるものとし、その他の構成や機能に関しては前実施例と同等である。
はじめに、格納容器700内に高さ調整冶具403を配置し、隔膜10を備えた蓋701を取り付ける。次のステップで、光学顕微鏡402下に前記格納容器700を設置する。次のステップで、光学顕微鏡402に具備される光学顕微鏡位置駆動機構406を用いて焦点位置408を隔膜10に合わせる。この時点の様子を図27(a)に示す。ただしこのステップは実施してもしなくてもよい。次のステップでは、格納容器700内に備えるステージ703を使って、高さ調整治具403を隔膜10の隔膜保持部材706に接触させる。高さ調整冶具403と隔膜保持部材706が接触すると土台9が上下左右のどこかに若干動くことが荷電粒子顕微鏡で取得する画像上でわかるため、荷電粒子顕微鏡で隔膜10の隔膜保持部材706を観察して接触したかどうかの判定を行うことができる。なお、電気的な導通を確認することで接触したかどうかの判定を実施してもよい。この時点の様子を図27(b)に示す。次のステップで、光学顕微鏡402に具備される光学顕微鏡位置駆動機構406を用いて焦点位置408を高さ調整治具403に合わせる。これにより、後述する過程において隔膜に試料が接触する可能性を低減させることができる。
次のステップでは、隔膜10を備える蓋701が取り外された状態の格納容器700の中に試料6を搭載する。この時点の様子を図28(a)に示す。次のステップでは、光学顕微鏡402の焦点408が試料に合うように格納容器700内に備えるステージ703を使って試料を動かす。この時光学顕微鏡の焦点が試料にあった時のステージ703のz値(図中z2)を記録する。このz2の時の試料位置は仮想的な隔膜10位置である。この時点の様子を図28(b)に示す。
次のステップでは、ステージ703を使ってzを下げたあとで、隔膜が具備された蓋701をする。この時点の様子を図29(a)に示す。次のステップで、zをz2にすると、試料6がちょうど隔膜10の位置になる。この時点の様子を図29(b)に示す。このように、光学顕微鏡と高さ調整冶具を利用することで試料と隔膜との距離を把握することが可能となる。次のステップで、試料6と隔膜10が近接した状態で試料格納容器を荷電粒子顕微鏡装置内にいれる。この時点の様子を図26に示す。次のステップで観察を実施する。
図30に以上に説明した光学顕微鏡を用いて隔膜と試料との間の距離を把握するステップを示す。
本実施得例における試料格納容器は、一般的な荷電粒子顕微鏡装置にいれることができるため、図1や図24のような大気圧下で観察可能な荷電粒子顕微鏡装置を用いなくても大気圧下の試料の観察ができるといった特徴がある。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。