以下、実施形態によるブレーキ装置について、当該ブレーキ装置を4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4、図5、図7〜図11、図15〜図19、図22に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。
図1ないし図13は、第1の実施形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左右の前輪2(FL,FR)と左右の後輪3(RL、RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。これらの前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する被制動部材(回転部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキ5により制動力が付与され、後輪3用のディスクロータ4は、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキ31により制動力が付与される。これにより、各車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて各ディスクブレーキ5,31は、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル6には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)6Aが設けられている。ブレーキ操作検出センサ6Aは、ブレーキペダル6の踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を液圧供給装置用コントローラ13に出力する。ブレーキ操作検出センサ6Aの検出信号は、例えば、車両データバス16、または、液圧供給装置用コントローラ13と駐車ブレーキ制御装置19とを接続する信号線(図示せず)を介して伝送される(駐車ブレーキ制御装置19に出力される)。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、倍力装置7を介して、油圧源として機能するマスタシリンダ8に伝達される。倍力装置7は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ8との間に設けられた負圧ブースタまたは電動ブースタとして構成され、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ8に伝える。このとき、マスタシリンダ8は、マスタリザーバ9から供給されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ9は、ブレーキ液が収容された作動液タンクにより構成されている。ブレーキペダル6により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル6の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ8内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して、液圧供給装置11(以下、ESC11という)に送られる。ESC11は、各ディスクブレーキ5,31とマスタシリンダ8との間に配置され、マスタシリンダ8からの液圧をブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配する。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与する。この場合、ESC11は、ブレーキペダル6の操作量に従わない態様でも、各ディスクブレーキ5,31に液圧を供給すること、即ち、各ディスクブレーキ5,31の液圧を高めることができる。
このために、ESC11は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成される専用の制御装置、即ち、液圧供給装置用コントローラ13(以下、コントロールユニット13という)を有している。コントロールユニット13は、ESC11の各制御弁(図示せず)を開,閉したり、液圧ポンプ用の電動モータ(図示せず)を回転,停止させたりする駆動制御を行うことにより、ブレーキ側配管部12A〜12Dから各ディスクブレーキ5,31に供給されるブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、種々のブレーキ制御、例えば、倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロックブレーキ制御(ABS)、トラクション制御、車両安定化制御(横滑り防止を含む)、坂道発進補助制御、自動運転制御等が実行される。
コントロールユニット13には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。図1に示すように、コントロールユニット13は、車両データバス16に接続されている。なお、ESC11の代わりに、公知のABSユニットを用いることも可能である。さらに、ESC11を設けずに(即ち、省略し)、マスタシリンダ8とブレーキ側配管部12A〜12Dとを直接的に接続することも可能である。
車両データバス16は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を構成しており、車両に搭載された多数の電子機器、コントロールユニット13および駐車ブレーキ制御装置19等との間で車両内での多重通信を行う。この場合、車両データバス16に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ6A、マスタシリンダ液圧(ブレーキ液圧)を検出する圧力センサ17、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ、シフトセンサ、加速度センサ、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号による情報(車両情報)が挙げられる。
車体1内には、運転席(図示せず)の近傍に駐車ブレーキスイッチ(PKBSW)18が設けられる。駐車ブレーキスイッチ18は運転者によって操作される。駐車ブレーキスイッチ18は、運転者からの駐車ブレーキの作動要求(アプライ要求、リリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、駐車ブレーキ制御装置19へ伝達する。即ち、駐車ブレーキスイッチ18は、電動モータ43Bの駆動(回転)に基づいてブレーキパッド33(図2参照)をアプライ作動またはリリース作動させるための信号(アプライ要求信号、リリース要求信号)を、コントロールユニット(コントローラ)となる駐車ブレーキ制御装置19に出力する。
運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動側(駐車ブレーキON側)に操作されたとき、即ち、車両に制動力を与えるためのアプライ要求(保持要求、駆動要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ18からアプライ要求信号が出力される。この場合は、駐車ブレーキ制御装置19を介して後輪3用のディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力が付与された状態、即ち、アプライ状態となる。
一方、運転者により駐車ブレーキスイッチ18が制動解除側(駐車ブレーキOFF側)に操作されたとき、即ち、車両の制動力を解除するためのリリース要求(解除要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ18からリリース要求信号が出力される。この場合は、駐車ブレーキ制御装置19を介してディスクブレーキ31に、電動モータ43Bを制動側とは逆方向に回転させるための電力が給電される。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ(ないし補助ブレーキ)としての制動力の付与が解除された状態、即ち、リリース状態となる。
駐車ブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が4km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、駐車ブレーキ制御装置19での駐車ブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)や、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、駐車ブレーキ制御装置19での駐車ブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。
さらに、車両の走行時に駐車ブレーキスイッチ18によるアプライ要求があった場合、より具体的には、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いる等の動的駐車ブレーキ(動的アプライ)の要求があった場合に、駐車ブレーキ制御装置19により、車輪(各後輪3)の状態、即ち、車輪がロック(スリップ)しているか否かに応じて、自動的に制動力の付与と解除(ABS制御)を行う構成とすることもできる。
次に、左右の後輪3,3側に設けられる電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31,31の構成について、図2を参照しつつ説明する。なお、図2では、左右の後輪3,3に対応してそれぞれ設けられた左右のディスクブレーキ31,31のうちの一方のみを代表例として示している。
車両の左右にそれぞれ設けられた一対のディスクブレーキ31は、電動式の駐車ブレーキ機能が付設された液圧式のディスクブレーキとして構成されている。ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ制御装置19と共にブレーキシステム(ブレーキ装置)を構成する。ディスクブレーキ31は、車両の後輪3側の非回転部分に取付けられる取付部材32と、制動部材(摩擦部材)としてのインナ側,アウタ側のブレーキパッド33と、電動アクチュエータ43が設けられたブレーキ機構としてのキャリパ34とを含んで構成されている。
この場合、ディスクブレーキ31は、ブレーキパッド33をブレーキペダル6の操作等に基づく液圧によりピストン39で推進させ、ディスクロータ4をブレーキパッド33で押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキスイッチ18からの信号に基づく作動要求や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABS制御に基づく作動要求に応じて、電動モータ43Bにより(回転直動変換機構40を介して)ピストン39を推進させ、車両に制動力を付与する。即ち、ディスクブレーキ31は、電動モータ43Bへ電流を供給することで車両に制動力を与えるアプライ駆動および該制動力を解除するリリース駆動が行われる駆動部となるものである。この場合、ディスクブレーキ31は、車両の左,右輪毎、実施形態では、左,右の後輪3,3にそれぞれ設けられている。
取付部材32は、ディスクロータ4の外周を跨ぐようにディスクロータ4の軸方向(即ち、ディスク軸方向)に延びディスク周方向で互いに離間した一対の腕部(図示せず)と、該各腕部の基端側を一体的に連結するように設けられ、ディスクロータ4のインナ側となる位置で車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部32Aと、ディスクロータ4のアウタ側となる位置で前記各腕部の先端側を互いに連結する補強ビーム32Bとを含んで構成されている。
インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、ディスクロータ4の両面に当接可能に配置され、取付部材32の各腕部によりディスク軸方向に移動可能に支持されている。インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、キャリパ34(キャリパ本体35の爪部38とピストン39)によりディスクロータ4の両面側に押圧される。これにより、ブレーキパッド33は、車輪(後輪3)と共に回転するディスクロータ4を押圧することにより車両に制動力を与える。
取付部材32には、ホイールシリンダとなるキャリパ34がディスクロータ4の外周側を跨ぐように配置されている。キャリパ34は、取付部材32の各腕部に対してディスクロータ4の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体35、このキャリパ本体35内に摺動可能に挿嵌して設けられたピストン39に加え、後述する回転直動変換機構40、電動アクチュエータ43等を備えている。キャリパ34は、ブレーキペダル6の操作に基づいてマスタシリンダ8に発生する液圧によって作動するピストン39を用いてブレーキパッド33を推進する。
キャリパ本体35は、インナ側のシリンダ部36とブリッジ部37とアウタ側の爪部38とを備えている。シリンダ部36は、軸線方向の一方側が隔壁部36Aによって閉塞され、ディスクロータ4に対向する他方側が開口された有底円筒状に形成されている。ブリッジ部37は、ディスクロータ4の外周側を跨ぐように該シリンダ部36からディスク軸方向に延びて形成されている。爪部38は、シリンダ部36と反対側においてブリッジ部37から径方向内側に向けて延びるように配置されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36は、図1に示すブレーキ側配管部12Cまたは12Dを介してブレーキペダル6の踏込み操作等に伴う液圧が供給される。このシリンダ部36は、隔壁部36Aと一体形成されている。隔壁部36Aは、シリンダ部36と電動アクチュエータ43との間に位置している。隔壁部36Aは、軸線方向の貫通穴を有しており、隔壁部36Aの内周側には、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転可能に挿入されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36内には、押圧部材(移動部材)としてのピストン39と、回転直動変換機構40と、が設けられている。なお、実施形態においては、回転直動変換機構40がピストン39内に収容されている。但し、回転直動変換機構40は、ピストン39を推進するように構成されていればよく、必ずしもピストン39内に収容されていなくてもよい。
ピストン39は、ブレーキパッド33をディスクロータ4に向けて、または、ディスクロータ4から遠ざかる方向に移動させる。ピストン39は、軸線方向の一方側が開口しており、インナ側のブレーキパッド33に対面する、軸線方向の他方側が蓋部39Aによって閉塞されている。このピストン39は、シリンダ部36内に挿入されている。ピストン39は、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)へ電流が供給されることにより移動することに加えて、ブレーキペダル6の踏込み等に基づいてシリンダ部36内に液圧が供給されることによっても移動する。この場合に、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)によるピストン39の移動は、直動部材42に押圧されることによって行われる。また、回転直動変換機構40はピストン39の内部に収容されており、ピストン39は、該回転直動変換機構40によりシリンダ部36の軸線方向に推進されるように構成されている。
回転直動変換機構40は、押圧部材保持機構として機能する。具体的には、回転直動変換機構40は、シリンダ部36内への液圧付加によって生じる力とは異なる外力、即ち、電動アクチュエータ43により発生される力によってキャリパ34のピストン39を推進させると共に、推進されたピストン39およびブレーキパッド33を保持する。これにより、駐車ブレーキはアプライ状態(保持状態)となる。一方、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43によりピストン39を推進方向とは逆方向に退避させ、駐車ブレーキをリリース状態(解除状態)とする。そして、左右の後輪3用に左右のディスクブレーキ31がそれぞれ設けられるので、回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43も、車両の左右それぞれに設けられている。
回転直動変換機構40は、台形ねじ等の雄ねじが形成された棒状体を有するねじ部材41と、台形ねじによって形成される雌ねじ穴が内周側に形成された直動部材42とにより(スピンドルナット機構として)構成されている。直動部材42は、電動アクチュエータ43によりピストン39に向けて、または、ピストン39から遠ざかる方向に移動する被駆動部材(推進部材)となる。即ち、直動部材42の内周側に螺合したねじ部材41は、電動アクチュエータ43による回転運動を直動部材42の直線運動に変換するねじ機構を構成している。この場合、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとは、不可逆性の大きいねじ、実施形態においては、台形ねじを用いて形成することにより押圧部材保持機構を構成している。
押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)は、電動モータ43Bに対する給電を停止した状態でも、直動部材42(即ち、ピストン39)を任意の位置で摩擦力(保持力)によって保持するようになっている。なお、押圧部材保持機構は、電動アクチュエータ43により推進された位置にピストン39を保持することができればよく、例えば、台形ねじ以外の不可逆性の大きい通常の三角断面のねじやウォームギヤとしてもよい。
直動部材42の内周側に螺合して設けられたねじ部材41には、軸線方向の一方側に大径の鍔部であるフランジ部41Aが設けられている。ねじ部材41の軸線方向の他方側は、ピストン39の蓋部39Aに向けて延びている。ねじ部材41は、フランジ部41Aにおいて、電動アクチュエータ43の出力軸43Cに一体的に連結されている。また、直動部材42の外周側には、直動部材42をピストン39に対して回り止め(相対回転を規制)しつつ、直動部材42が軸線方向に相対移動することを許容する係合突部42Aが設けられている。これにより、直動部材42は、電動モータ43Bが駆動することにより直動し、ピストン39に接触して該ピストン39を移動させる。
電動アクチュエータ43は、キャリパ34のキャリパ本体35に固定されている。電動アクチュエータ43は、駐車ブレーキスイッチ18の作動要求信号や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABSの制御に基づいて、ディスクブレーキ31を作動(アプライ・リリース)させる。電動アクチュエータ43は、隔壁部36Aの外側に取付けられたケーシング43Aと、該ケーシング43A内に位置してステータ、ロータ等を備え電力(電流)が供給されることによりピストン39を移動させる電動モータ43Bと、該電動モータ43Bのトルクを増大する減速機(図示せず)と、該減速機による増大後の回転トルクを出力する出力軸43Cとを含んで構成されている。電動モータ43Bは、例えば、直流ブラシモータ等の電動のモータとして構成されている。出力軸43Cは、シリンダ部36の隔壁部36Aを軸線方向に貫通して延びており、ねじ部材41と一体に回転するように、シリンダ部36内においてねじ部材41のフランジ部41Aの端部に連結されている。
出力軸43Cとねじ部材41との連結機構は、例えば、軸線方向には移動可能であるが回転方向には回り止めされるように構成することができる。この場合は、例えばスプライン嵌合や多角形柱による嵌合(非円形嵌合)等の公知の技術が用いられる。なお、減速機としては、例えば、遊星歯車減速機やウォーム歯車減速機等が用いられてもよい。また、ウォーム歯車減速機等、逆作動性のない(不可逆性の)公知の減速機を用いる場合は、回転直動変換機構40として、ボールねじやボールランプ機構等、可逆性のある公知の機構を用いることができる。この場合は、例えば、可逆性の回転直動変換機構と不可逆性の減速機とにより押圧部材保持機構を構成することができる。
運転者が図1ないし図3に示す駐車ブレーキスイッチ18を操作したときには、駐車ブレーキ制御装置19を介して電動モータ43Bに給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転される。このため、回転直動変換機構40のねじ部材41は、一方向に出力軸43Cと一体に回転され、直動部材42を介してピストン39をディスクロータ4側に推進(駆動)する。これにより、ディスクブレーキ31は、ディスクロータ4をインナ側およびアウタ側のブレーキパッド33間で挟持し、電動式の駐車ブレーキとして制動力を付与した状態、即ち、アプライ状態(保持状態)となる。
一方、駐車ブレーキスイッチ18が制動解除側に操作されたときには、電動アクチュエータ43により回転直動変換機構40のねじ部材41が他方向(逆方向)に回転駆動される。これにより、直動部材42(および液圧付加がなければピストン39)は、ディスクロータ4から離れる方向に駆動され、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、解除状態(リリース状態)となる。
この場合、回転直動変換機構40では、ねじ部材41が直動部材42に対して相対回転されるとき、ピストン39内での直動部材42の回転が規制されているため、直動部材42は、ねじ部材41の回転角度に応じて軸線方向に相対移動する。これにより、回転直動変換機構40は、回転運動を直線運動に変換し、直動部材42によりピストン39が推進される。また、これと共に、回転直動変換機構40は、直動部材42を任意の位置でねじ部材41との摩擦力によって保持することにより、ピストン39およびブレーキパッド33を電動アクチュエータ43により推進された位置に保持する。
シリンダ部36の隔壁部36Aには、該隔壁部36Aとねじ部材41のフランジ部41Aとの間にスラスト軸受44が設けられている。このスラスト軸受44は、隔壁部36Aと共にねじ部材41からのスラスト荷重を受け、隔壁部36Aに対するねじ部材41の回転を円滑にする。また、シリンダ部36の隔壁部36Aには、電動アクチュエータ43の出力軸43Cとの間にシール部材45が設けられ、該シール部材45は、シリンダ部36内のブレーキ液が電動アクチュエータ43側に漏洩するのを阻止するように両者の間をシールしている。
また、シリンダ部36の開口端側には、該シリンダ部36とピストン39との間をシールする弾性シールとしてのピストンシール46と、シリンダ部36内への異物侵入を防ぐダストブーツ47とが設けられている。ダストブーツ47は、可撓性を有した蛇腹状のシール部材であり、シリンダ部36の開口端とピストン39の蓋部39A側の外周との間に取付けられている。
なお、前輪2用のディスクブレーキ5は、駐車ブレーキ機構を除いて、後輪3用のディスクブレーキ31とほぼ同様に構成されている。即ち、前輪2用のディスクブレーキ5は、後輪3用のディスクブレーキ31が備える、駐車ブレーキとして作動する回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43等を備えていない。しかし、ディスクブレーキ5に代えて、前輪2用に電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31を設けられてもよい。
なお、実施形態では、電動アクチュエータ43を有する液圧式のディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、例えば、電動キャリパを有する電動式ディスクブレーキ、電動アクチュエータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを有するディスクブレーキ、電動アクチュエータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキをアプライ作動させる構成等、電動アクチューエータ(電動モータ)の駆動に基づいて制動部材(パッド、シュー)を被制動部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力を保持させることができるブレーキ機構であれば、その構成は、上述の実施形態のブレーキ機構でなくともよい。
実施形態による4輪自動車のブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ8内で発生した液圧は、シリンダ側液圧配管10A,10B、ESC11およびブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配され、左右の前輪2と左右の後輪3とにそれぞれ制動力が付与される。
後輪3用のディスクブレーキ31について説明する。キャリパ34のシリンダ部36内にブレーキ側配管部12C,12Dを介して液圧が供給され、シリンダ部36内の液圧上昇に従ってピストン39がインナ側のブレーキパッド33に向けて摺動的に変位する。これにより、ピストン39は、インナ側のブレーキパッド33をディスクロータ4の一側面に対して押圧する。このときの反力によって、キャリパ34全体が取付部材32の前記各腕部に対してインナ側に摺動的に変位する。
この結果、キャリパ34のアウタ脚部(爪部38)は、アウタ側のブレーキパッド33をディスクロータ4に対して押圧するように動作し、ディスクロータ4は、一対のブレーキパッド33によって軸線方向の両側から挟持される。それによって、液圧に基づく制動力が発生される。一方、ブレーキ操作が解除されたときには、シリンダ部36内への液圧供給が停止されることにより、ピストン39がシリンダ部36内へと後退するように変位する。これによって、インナ側とアウタ側のブレーキパッド33がディスクロータ4からそれぞれ離間し、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動側(オン)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置19からディスクブレーキ31の電動モータ43Bに給電が行われ、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転駆動される。電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43の回転運動を回転直動変換機構40のねじ部材41を介して直動部材42の直線運動に変換し、直動部材42を軸線方向に移動させてピストン39を推進する。これにより、一対のブレーキパッド33がディスクロータ4の両面に対して押圧される。
このとき、直動部材42は、ピストン39から伝達される押圧反力を垂直抗力とした、ねじ部材41との間に発生する摩擦力(保持力)により制動状態に保持され、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ43Bへの給電を停止した後にも、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとにより、直動部材42(ひいては、ピストン39)は制動位置に保持されることができる。
一方、運転者が駐車ブレーキスイッチ18を制動解除側(オフ)に操作したときには、駐車ブレーキ制御装置19から電動モータ43Bに対してモータが逆転するように給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cは、駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、ねじ部材41と直動部材42とによる制動力の保持が解除され、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43の逆回転の量に対応した移動量で直動部材42を戻り方向に、即ち、シリンダ部36内へと移動させ、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ31)の制動力を解除する。
次に、駐車ブレーキ制御装置19について、図3を参照しつつ説明する。
制御部、状態量算出部、タイミング決定部、記憶部、検知部としての駐車ブレーキ制御装置19は、左右一対のディスクブレーキ31,31と共に電動ブレーキシステム(ブレーキ装置)を構成する。駐車ブレーキ制御装置19は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)20を有し、駐車ブレーキ制御装置19には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。
駐車ブレーキ制御装置19は、左後輪3側と右後輪3側のディスクブレーキ31,31の電動モータ43B,43Bを制御し、車両の駐車、停車時(必要に応じて走行時)に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。即ち、駐車ブレーキ制御装置19は、左右の電動モータ43B,43Bを駆動することにより、ディスクブレーキ31,31を駐車ブレーキ(必要に応じて補助ブレーキ)として作動(アプライ・リリース)させる。このために、図1ないし図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置19は、入力側が駐車ブレーキスイッチ18に接続され、出力側は各ディスクブレーキ31,31の電動モータ43B,43Bに接続されている。
駐車ブレーキ制御装置19は、運転者の駐車ブレーキスイッチ18の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求、ABS制御による作動要求に基づいて、左右の電動モータ43B,43Bを駆動し、左右のディスクブレーキ31,31のアプライ(保持)またはリリース(解除)を行う。このとき、各ディスクブレーキ31,31では、各電動モータ43Bの駆動に基づいて、押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39およびブレーキパッド33の保持または解除が行われる。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路(CPU)20には、記憶部としてのメモリ21に加えて、駐車ブレーキスイッチ18、車両データバス16、電圧センサ部22、モータ駆動回路23、電流センサ部24等が接続されている。車両データバス16からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。
なお、車両データバス16から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサを駐車ブレーキ制御装置19(の演算回路20)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。また、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20は、車両データバス16に接続された他の制御装置(例えばコントロールユニット13)から前述の判断ロジックやABS制御に基づく作動要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによる駐車ブレーキのアプライ・リリースの判定やABSの制御を、駐車ブレーキ制御装置19に代えて、他の制御装置、例えばコントロールユニット13で行う構成とすることができる。即ち、コントロールユニット13に駐車ブレーキ制御装置19の制御内容を統合することが可能である。
駐車ブレーキ制御装置19は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ21を備えている。メモリ21には、前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックやABSの制御のプログラムに加え、図4、図5、図7〜図11に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、電動モータ43B,43Bの状態(モータ回転量積算値)を算出する処理プログラム(図4、図5)、左右輪のリリース駆動を行う処理プログラム(図7〜図11)が格納されている。また、メモリ21には、図12に示すモータ回転量積算値の左右差と遅延時間との関係(テーブル)も格納されている。さらに、メモリ21には、左右の電動モータ43B,43Bの状態(モータ回転量積算値)が逐次更新可能に記憶(保存)される。
なお、実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19をESC11のコントロールユニット13と別体としたが、駐車ブレーキ制御装置19をコントロールユニット13と一体に構成してもよい。また、駐車ブレーキ制御装置19は、左右で2つのディスクブレーキ31,31を制御するようにしているが、左右のディスクブレーキ31,31毎に設けるようにしてもよく、この場合には、それぞれの駐車ブレーキ制御装置19をディスクブレーキ31に一体的に設けることもできる。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置19には、電源ライン15からの電圧を検出する電圧センサ部22、左右の電動モータ43B,43Bをそれぞれ駆動する左右のモータ駆動回路23,23、左右の電動モータ43B,43Bのそれぞれのモータ電流を検出する左右の電流センサ部24,24等が内蔵されている。これら電圧センサ部22、モータ駆動回路23、電流センサ部24は、それぞれ演算回路20に接続されている。
これにより、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20では、アプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部24,24により検出される電動モータ43B,43Bのモータ電流の変化に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド33との当接・離間の判定、電動モータ43B,43Bの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)等を行うことができる。
ところで、特許文献1によれば、駐車ブレーキのアプライを行うときに、電動モータ43B,43Bの始動タイミングを左右でずらすことにより、例えば、始動電流(突入電流)が重なることによる電圧降下を抑制することができる。即ち、図14は、比較例による電動モータ43B,43Bの電流(Current)と推力(Thrust)とモータ回転量積算値と駐車ブレーキの状態の時間変化の一例を示している。図14では、左後輪3側の時間変化を実線で、右後輪3側の時間変化を破線で、それぞれ示している。
例えば、図14の(a)の時点で、駐車ブレーキスイッチ18の操作等に基づくアプライ要求があると、(a)の時点で左後輪3側の電流が先に立ち上がり、(b)の時点で右後輪3側の電流が立ち上がる。即ち、図14に「t1」を付して示すように、駐車ブレーキのアプライを行うときに、電動モータ43B,43Bの始動タイミングを左右でずらすことにより、突入電流の立ち上がりのタイミングを左右でずらしている。これにより、電圧降下を抑制できる。
ここで、図14では、(c)の時点で、右後輪3側の電流が増大し始め、(d)の時点で左後輪3側の電流が増大し始める。そして、図14の(e)の時点で、例えば、左後輪3側の電流が所定値に達したことで、左後輪3側のディスクブレーキ31のアプライ動作が終了する。図14の(f)の時点で、例えば、右後輪3側の電流が所定値に達したことで、右後輪3側のディスクブレーキ31のアプライ動作が終了する。
図14では、左右のディスクブレーキ31のアプライ動作が終了した状態で、電動モータ43B,43Bによる推力、即ち、ブレーキパッド33をディスクロータ4に押付ける力に左右差F1が生じている。このような推力の左右差F1、さらに、アプライ動作中に電流が増大するときの傾き(時間変化)の左右差は、例えば、電動モータ43B,43Bや回転直動変換機構40,40等の機械的効率の左右差、ディスクブレーキ31の構成部品のばらつき等に伴って生じるものである。
一方、図14に「t2」を付して示すように、駐車ブレーキのリリースのときに、アプライのときと同様に、電圧降下の抑制の観点から、始動タイミングを左右でずらすことが考えられる。即ち、図14の(g)の時点で、駐車ブレーキスイッチ18の操作等に基づくリリース要求があると、(g)の時点で左後輪3側の電流が先に立ち上がるようにし、(h)の時点で右後輪3側の電流が立ち上がるようにすることが考えられる。しかし、このとき、電動モータ43B,43Bの状態によっては、例えば、左後輪3側では、図14の(i)の時点でディスクブレーキ31の推力が低下し始め、(k)の時点でリリース動作が終了するのに対して、右後輪3側では、図14の(j)の時点で推力が低下し始め、(l)の時点でリリース動作が終了する場合がある。
即ち、左後輪3側では、リリース開始から推力が低下し始めるまでの時間が、図14に「t3」を付した時間となるのに対して、右後輪3側では、リリース開始から推力が低下し始めるまでの時間が、図14に「t4」を付した時間となる場合がある。このように、リリース開始のときに、単に電圧降下の抑制の観点から始動タイミングをずらすと、図14に「t5」を付して示すように、左右のディスクブレーキ31で推力(制動力)が低下し始める時間にずれ、即ち、左右時間差が発生するおそれがある。この場合、左右時間差に伴って、車両が横方向に振られ、運転者等の乗車人員(乗員)に違和感、不快感を与える可能性がある。なお、図14に示す左右時間差t5は、モータ回転量積算値の左右差d1が大きい程、大きくなる傾向がある。
そこで、第1の実施形態では、図13に示すように、リリースのときに、左右の電動モータ43B,43Bの状態量の差分となるモータ回転量積算値の左右差d1に基づいて、左右の電動モータ43B,43Bの電流供給の開始タイミング(制御開始タイミング)を所定時間t6分ずらす。具体的には、図12に基づいて求められるモータ回転量積算値の左右差d1に応じた所定値(遅延時間)t6分、一方(図13では右)の電動モータ43Bよりも他方(図13では左)の電動モータ43Bの電流供給(リリース駆動)の開始を遅らせる。
これにより、図13の(g)の時点で、駐車ブレーキスイッチ18の操作等に基づくリリース要求があると、(g)の時点で右後輪3側の電流が先に立ち上がり、(h)の時点で左後輪3側の電流が立ち上がる。そして、図13の(i)の時点で、左右のディスクブレーキ31の推力がほぼ同時に低下し始め、(j)の時点で右側のリリース動作が終了すると共に(k)の時点で左側のリリース動作が終了する。この結果、図13にAを付して示すように、推力の低下のずれ、換言すれば、左右の後輪3が回転可能状態となるまでの左,右時間差を少なくできる。
このようなリリース動作を行うために、駐車ブレーキ制御装置19は、図4および図5の処理に対応する状態量算出部と、図7のS42およびS43の処理(図8および図9の処理)に対応するタイミング決定部と、図7のS44およびS45の処理(図10および図11の処理)に対応する制御部とを備えている。状態量算出部は、アプライ駆動が行われている間の左右の電動モータ43B,43Bの状態量を算出する。タイミング決定部は、状態量算出部が算出する状態量に基づいて、各電動モータ43B,43Bのリリース駆動のための制御開始タイミングを決定する。制御部は、タイミング決定部の決定に応じて、各電動モータ43B,43Bへ電流を供給する(リリース駆動を行う)。
先ず、図4と図5の処理に対応する状態量算出部について、図6の特性線も参照しつつ説明する。図4および図5の処理は、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20で行われるモータ状態量算出処理となる。図4および図5の制御処理(算出処理)は、駐車ブレーキ制御装置19に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。ここで、図4の制御処理は、左後輪3側の電動モータ43B(以下、左電動モータ43Bともいう)の状態量(回転量の積算値)を算出する処理となり、図5の制御処理は、右後輪3側の電動モータ43B(以下、右電動モータ43Bともいう)の状態量(回転量の積算値)を算出する処理となる。図4の制御処理と図5の制御処理は、左右が相違する以外、同様の処理となるため、主として図4の制御処理について説明する。
駐車ブレーキ制御装置19が起動することにより、図4の制御処理が開始されると、S1では、左後輪3側のディスクブレーキ31(以下、左ディスクブレーキ31ともいう)の状態(駐車ブレーキの状態)が非ロック状態であるか否かを判定する。ここで、ロック状態(lock)は、図6に示すように、アプライ駆動の終了(アプライのための電流供給の停止)からリリース駆動の終了(リリースのための電流供給の停止)までの状態に対応し、非ロック状態(unlock)は、リリース駆動の終了からアプライ駆動の終了までの状態に対応する。
S1で、「YES」、即ち、非ロック状態であると判定された場合は、S2に進む。S1で、「NO」、即ち、非ロック状態でない(非ロック状態以外である)と判定された場合は、S6に進む。S6では、左ディスクブレーキ31の状態(駐車ブレーキの状態)がロック状態であるか否かを判定する。S6で、「YES」、即ち、ロック状態であると判定された場合は、S8に進む。一方、S6で、「NO」、即ち、ロック状態でないと判定された場合は、左ディスクブレーキ31の状態がロック状態でも非ロック状態でもない不明状態となる。この場合は、断線等により電動モータ43B,43Bが意図せずに停止している等の、フェール状態の可能性がある。このため、この場合は、演算不要とし、S7に進み、モータ回転量積算値を0とするクリア処理を実施し、処理を終了する(リターンを介してS1に戻り、S1以降の処理を繰り返す)。また、必要に応じて、フェールランプを点灯する等のフェール処理を行うことができる。
一方、S2では、左電動モータ43Bがアプライ駆動中であるか否かを判定する。S2で、「YES」、即ち、左電動モータ43Bがアプライ駆動中であると判定された場合は、S3に進む。一方、S2で、「NO」、即ち、左電動モータ43Bがアプライ駆動中でないと判定された場合は、演算不要と判断し、S7に進む。即ち、S7でモータ回転量積算値を0とするクリア処理を実施し、処理を終了する(リターンを介してS1に戻り、S1以降の処理を繰り返す)。
S3では、左後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に当接したか否か、即ち、アプライ駆動中でブレーキパッド33がディスクロータ4に当接した後か当接する前かを判定する。この判定は、電流センサ部24が検出する電流値に基づいて判定することができる。例えば、ブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接することにより、電流センサ部24が検出する電流が変化したか(所定値以上になったか)否かに基づいて、当接したことを検知することができる。
S3で、「YES」、即ち、左後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に当接したと判定された場合は、S4に進み、左電動モータ43Bのモータ回転量を算出(演算)する。この算出は、下記の数1式により算出することができる。
S4で、現在の制御周期のモータ回転量を算出したら、続くS5で、加算処理を行う。即ち、今回の制御周期で算出したモータ回転量を、前回の制御周期で算出されたモータ回転量積算値に加算(積算)する。これにより、S5で、左電動モータ43Bのモータ回転量積算値(以下、左積算値ともいう)を算出し、処理を終了する(リターンを介してS1に戻り、S1以降の処理を繰り返す)。
一方、S3で「NO」と判定された場合は、左後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に当接する前と考えられるため、S7に進む。即ち、S7でモータ回転量積算値を0とするクリア処理を実施し、処理を終了する(リターンを介してS1に戻り、S1以降の処理を繰り返す)。
S6で、「YES」、即ち、左ディスクブレーキ31がロック状態であると判定され、S8に進むと、S8では、左電動モータ43Bがリリース駆動中であるか否かを判定する。S8で、「YES」、即ち、左電動モータ43Bがリリース駆動中であると判定された場合は、S9に進む。S9では、左電動モータ43Bのモータ回転量を算出(演算)する。この算出は、上記の数1式により算出することができる。
S9で、現在の制御周期のモータ回転量を算出したら、続くS10で、減算処理を行う。即ち、前回の制御周期で算出されたモータ回転量積算値から今回の制御周期で算出したモータ回転量を減算することにより、左電動モータ43Bのモータ回転量積算値を算出し、処理を終了する(リターンを介してS1に戻り、S1以降の処理を繰り返す)。一方、S8で、「NO」、即ち、左電動モータ43Bがリリース駆動中でないと判定された場合は、S11に進み、保持処理を行う。即ち、前回の制御周期で算出されたモータ回転量積算値の値を保持し、処理を終了する(リターンを介してS1に戻り、S1以降の処理を繰り返す)。
ここで、駐車ブレーキ制御装置19の起動時の最初の処理(最初の制御周期)のときは、通常、S1で「NO」、S6で「YES」、S8で「NO」となる。この場合に、S11の「前回の制御周期で算出されたモータ回転量積算値」は、後述する図7のS41の処理でメモリ21から読み込まれた初期値を用いることができる。また、起動時の最初の処理のときに、S1で「YES」と判定されても、通常は、S2で「NO」と判定され、S7に進む。また、起動時にS6で「YES」と判定されると、S7に進む。S7では、モータ回転量積算値が0になるため、起動時の「前回の制御周期で算出されたモータ回転量積算値」はどのような値であってもよい(メモリ21から読み込まれた初期値を用いることができる)。
なお、図5の制御処理は、左右が相違する以外、図4の制御処理と同様の処理となる。この場合、図5のS21〜S31の処理は、図4のS1〜S11の処理に対応する。図5の制御処理については、これ以上の説明を省略する。
図6は、電動モータ43Bの電流と電動モータ43Bの駆動に基づく推力とモータ回転量積算値と駐車ブレーキの状態の時間変化の一例を示している。なお、図6中の「A」の区間は、電動モータ43Bのアプライ駆動中に対応し、「S」の区間は、電動モータ43Bの停止中に対応し、「R」の区間は、電動モータ43Bのリリース駆動中に対応する。
図6の(a)の時点で、駐車ブレーキスイッチ18の操作等に基づくアプライ要求があると、電動モータ43Bがアプライ駆動し始める。図6の(b)の時点で、ブレーキパッド33がディスクロータ4に当接することに基づいて、電流センサ部24により検出される電流値が変化する(当接判定値以上になる)と、図4のS3(図5のS23)で「YES」と判定される。これにより、図4のS4(図5のS24)の処理によりモータ回転量の演算が開始される。即ち、図4のS4およびS5(図5のS25およびS26)の処理によりモータ回転量が加算され、モータ回転量積算値が(正の状態量として)増大していく(図6の「u」の区間)。
図6の(c)の時点で、電流センサ部24により検出される電流値が所定値(アプライ終了判定値)に達すると、電動モータ43Bが停止し、アプライ動作が終了する。これにより、ロック状態となり、図4のS6(図5のS26)で「YES」と判定される。さらに、リリース駆動開始前は、図4のS8(図5のS28)で「NO」と判定されるため、図4のS11(図5のS31)の処理により、モータ回転量積算値が維持される。即ち、アプライ動作が終了したときのモータ回転量積算値が維持される(図6の「k」の区間)。
図6の(d)の時点で、駐車ブレーキスイッチ18の操作等に基づくリリース要求があると、電動モータ43Bがリリース駆動し始める。この場合は、図4のS8(図5のS28)で「YES」と判定され、図4のS9(図5のS29)の処理によりモータ回転量の演算が開始(再開)される。即ち、図4のS9およびS10(図5のS29およびS30)の処理によりモータ回転量が減算され、モータ回転量積算値が(負の状態量として)減少していく(図6の「d」の区間)。
そして、図6の(e)の時点で、電流値等に基づいてリリースが完了したと判定されると、電動モータ43Bが停止し、リリース動作が終了する。この場合、図4のS2(図5のS22)で「NO」と判定され、図4のS7(図5のS27)の処理により、モータ回転量積算値がクリア(リセット)される。これにより、モータ回転量積算値=0となる(図6の「z」の区間)。
図4と図5の処理は、本発明の構成要件である状態量算出部の具体例となる。この状態量算出部は、アプライ駆動が行われている間に、左右輪(左右の後輪3)におけるそれぞれの電動モータ43B,43Bの状態量、具体的には、電動モータ43B,43Bの回転量の積算値を算出する。ここで、駐車ブレーキ制御装置19は、ブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接又は離間(離接)したことを検知する検知部を備えている。この場合、検知部は、ブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接又は離間したことを、電流センサ部24が検出する電流の変化に基づいて検知する構成としている。
第1の実施形態では、検知部は、図4のS3の処理として、左後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接したことを検知する。そして、状態量算出部は、続く図4のS4,S5の処理として、左後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接したことを検知部により検知した後の、左後輪3側の電動モータ43Bの回転量の積算値を算出する。これに加えて、検知部は、図5のS23の処理として、右後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接したことを検知する。そして、状態量算出部は、続く図5のS24,S25の処理として、右後輪3側のブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接したことを検知部により検知した後の、右後輪3側の電動モータ43Bの回転量の積算値を算出する。
次に、図7の処理に対応するタイミング決定部および制御部について説明する。この場合、図7のS42およびS43の処理(図8および図9の処理)がタイミング決定部に対応し、図7のS44およびS45の処理(図10および図11の処理)が制御部に対応する。即ち、図7のS42およびS43の処理は、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20で行われるリリース駆動のための電動モータ43B,43Bの制御開始タイミングを決定する処理(タイミング算出処理)となる。図7のS44およびS45の処理は、駐車ブレーキ制御装置19の演算回路20で行われる電動モータ43B,43Bのリリース駆動の処理(リリース駆動処理)となる。図8ないし図11を含む図7の制御処理は、駐車ブレーキ制御装置19に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。
駐車ブレーキ制御装置19が起動することにより、図7の制御処理が開始されると、S41では、モータ回転量積算値の読み込みを行う。即ち、S41では、メモリ21からモータ回転量積算値の初期値を読み込む。この初期値は、後述する図7のS46で、駐車ブレーキ制御装置19の終了時(制御終了時)に、メモリ21に書き込まれた(記憶された)そのときのモータ回転量積算値となる。S41でメモリ21から読み込まれたモータ回転量積算値(初期値)は、上述した図4および図5のモータ状態量(モータ回転量積算値)の算出処理(の最初の制御周期)で用いられる。S41の処理は、駐車ブレーキ制御装置19の起動時、即ち、最初の処理(最初の制御周期)のときにのみ行われる。
続くS42では、遅延時間判定処理、即ち、リリースのタイミングをずらす時間を決定する処理が行われる。この遅延時間判定処理は、図8に示す処理となる。図8のS51では、左後輪3側のディスクブレーキ31と右後輪3側のディスクブレーキ31との両方(以下、左右のディスクブレーキ31,31ともいう)の状態(駐車ブレーキの状態)がロック状態であるか否かを判定する。S51で、「YES」、即ち、左右両方がロック状態であると判定された場合は、S52に進む。一方、S51で、「NO」、即ち、左右の少なくとも一方が非ロック状態であると判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図7のS43に進む)。
S52では、左後輪3側の電動モータ43Bと右後輪3側の電動モータ43Bとの両方(以下、左右の電動モータ43Bともいう)が停止中であるか否かを判定する。S52で、「YES」、即ち、左右両方が停止中であると判定された場合は、S53に進む。一方、S52で、「NO」、即ち、左右の少なくとも一方がモータ駆動中と判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図7のS43に進む)。
S53では、図4および図5の処理で算出された(現在の)モータ回転量積算値の左右差の絶対値を算出する。即ち、下記の数2式を算出(演算)する。
S53で左右差を算出したら、続くS54で、遅延時間を設定する。具体的には、図12に示すモータ回転量積算値の左右差(絶対値)と遅延時間との関係(テーブル)に基づいて、そのときの左右差に対応する遅延時間を求める。例えば、左右差がd1(例えば10回転)であれば、遅延時間はt6(例えば30ms)に設定される。S54で、図12のテーブルに基づいて遅延時間を設定したら、処理を終了する(リターンを介して図7のS43に進む)。
図7のS42に続くS43では、遅延輪判定処理、即ち、リリース作動順序(電動モータ43Bの駆動を遅らせる側の車輪)を決定する処理が行われる。この遅延輪判定処理は、図9に示す処理となる。図9のS61では、図8のS51と同様に、左右のディスクブレーキ31,31がロック状態であるか否かを判定する。続くS62では、図8のS52と同様に、左右の電動モータ43Bが停止中であるか否かを判定する。S61またはS62で、「NO」と判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図7のS44に進む)。
S63では、モータ回転量積算値の左右の大小関係を判定する。即ち、モータ回転量積算値が大きい方の電動モータ43Bを先に駆動(電流供給)し、小さい方の電動モータ43Bを後に(遅れて)駆動(電流供給)する。このために、S63では、左電動モータ43Bのモータ回転量積算値が右電動モータ43Bのモータ回転量積算値よりも大きいか否かを判定する。
S63で、「YES」、即ち、左電動モータ43Bのモータ回転量積算値が大きいと判定された場合は、S64に進み、遅延輪、即ち、電動モータ43Bを後に駆動する側の車輪を右輪(右後輪3)に設定する。これに対し、S63で、「NO」、即ち、左電動モータ43Bのモータ回転量積算値が右電動モータ43Bのモータ回転量積算値以下と判定された場合は、S65に進み、遅延輪、即ち、電動モータ43Bを後に駆動する側の車輪を左輪(左後輪3)に設定する。なお、左右のモータ回転量積算値が同じときも、遅延輪を左とする理由は、左右の電流(突入電流)の立ち上がりのタイミングをずらすためである。S64またはS65で遅延輪を設定したら、処理を終了する(リターンを介して図7のS44に進む)。
図7のS43に続くS44では、左電動モータ43Bのリリース駆動、即ち、左後輪3側の制御開始タイミングずらし処理が行われる。この制御開始タイミングずらし処理(左)は、図10に示す処理となる。図10のS71では、左電動モータ43Bが停止中であるか否かを判定する。S71で、「NO」、即ち、左電動モータ43Bが駆動中の場合は、処理を終了する(リターンを介して図7のS45に進む)。一方、S71で、「YES」、即ち、左電動モータ43Bが停止中の場合は、S72に進み、駐車ブレーキスイッチ18の操作等に基づくリリース要求(リリース指令)があるか否かを判定する。S72で、「NO」、即ち、リリース要求なしの場合は、処理を終了する(リターンを介して図7のS45に進む)。一方、S72で、「YES」、即ち、リリース要求ありの場合は、S73に進む。
S73では、図9の遅延輪判定処理で設定された遅延輪が右輪であるか否かを判定する。S73で、「YES」、即ち、遅延輪が右輪である場合は、S74に進み、左後輪3側のリリース駆動を開始する。即ち、左電動モータ43Bに電流を供給し、処理を終了する(リターンを介して図7のS45に進む)。一方、S73で、「NO」、即ち、遅延輪が左輪である場合は、S75に進み、遅延カウンタをカウントアップする。続くS76では、遅延カウンタのカウント(カウント時間)と図8の遅延時間判定処理で設定された遅延時間とを比較する。即ち、S76では、遅延カウンタのカウント時間が遅延時間以上であるか否かを判定する。
S76で、「NO」、即ち、カウント時間が遅延時間未満、即ち、遅延時間に達していないと判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図7のS45に進む)。一方、S76で、「YES」、即ち、カウント時間が遅延時間に達したと判定された場合は、S77に進み、遅延カウンタを0(リセット)し、続くS74で、左後輪3側のリリース駆動を開始する。即ち、左電動モータ43Bに電流を供給し、処理を終了する(リターンを介して図7のS45に進む)。この場合は、左後輪3側のリリース駆動が、右後輪3側のリリース駆動が開始されてから遅延時間分遅れて開始される。
図7のS44に続くS45では、右電動モータ43Bのリリース駆動、即ち、右後輪3側の制御開始タイミングずらし処理が行われる。このように、第1の実施形態では、左右各々で制御開始タイミングずらし処理を行う。制御開始タイミングずらし処理(右)は、図11に示す処理となる。なお、図11の制御処理は、左右が相違する以外、図10の制御処理と同様の処理となる。この場合、図11のS81〜S87の処理は、図10のS71〜S77の処理に対応する。図11の制御処理については、これ以上の説明を省略する。
図7のS45に続くS46では、モータ回転量積算値の書き込みを行う。即ち、S46では、現在のモータ回転量積算値をメモリ21に書き込む(記憶する)。S46の処理は、駐車ブレーキ制御装置19の制御終了時、即ち、最後の処理(最後の制御周期)のときにのみ行われる。この場合、駐車ブレーキ制御装置19の制御は、例えばイグニッションOFFから所定時間経過後に終了する。S46の処理(実質的にはS45の処理)が終了(リターン)すると、図7の処理が終了する。即ち、図7のリターンを介して、図7のS41(実質的にはS42)に戻り、続く処理を繰り返す。
図7のS44およびS45の処理(図10および図11の処理)は、本発明の構成要件である制御部の具体例となる。制御部は、左右輪それぞれのリリース駆動により車輪(後輪3)が回転可能状態となるまでの左右時間差(推力が低下し始めるまでの左右差)を少なくするように、左右のディスクブレーキ31(左右の電動モータ43B,43B)を制御する。具体的には、制御部は、状態量算出部(図4および図5の処理)により算出される状態量、即ち、左右の電動モータ43B,43Bの回転量の積算値に基づいて、左右の後輪3が回転可能状態となるまでの時間の左右差を少なくするように、各電動モータ43B,43Bを制御する。この場合、制御部は、タイミング決定部の決定に応じて、各電動モータ43B,43Bへ電流を供給する。
図7のS42およびS43の処理(図8および図9の処理)は、本発明の構成要件であるタイミング決定部の具体例となる。タイミング決定部は、左右輪(左右の後輪3)それぞれのリリース駆動のための制御開始タイミングを決定するものである。タイミング決定部は、図7のS42の処理(図8の処理)として、左右輪それぞれの状態量の差分、即ち、左後輪3側の電動モータ43Bの回転量の積算値と右後輪3側の電動モータ43Bの回転量の積算値の差分(の絶対値)に基づいて、時間に関する所定値となる遅延時間を決定する。
このために、駐車ブレーキ制御装置19のメモリ21には、図12に示す左右の積算値の差分(モータ回転量積算値左右差の絶対値)と所定値(遅延時間)の関係(テーブル)が記憶されている。タイミング決定部は、図12に示す関係に基づいて、積算値の差分を入力として所定値(遅延時間)を決定する。
そして、制御部(S44およびS45の処理)では、左右の後輪3のうちの一方の後輪3となる一側の車輪の電動モータ43Bを、他方の後輪3となる他側の車輪の電動モータ43Bから所定値(遅延時間)分、制御開始タイミング(電流の供給開始のタイミング)をずらしてリリース駆動を開始する。この場合、一側の車輪(後輪3)のモータ回転量積算値が、他側の車輪(後輪3)のモータ回転量積算値よりも大きい場合、他側の車輪(後輪3)の電動モータ43Bのリリース駆動を、一側の車輪(後輪3)の電動モータ43Bのリリース駆動より所定値(遅延時間)分遅らせて、開始する。これにより、図13にAを付したように、推力の低下のずれ、換言すれば、左右の後輪3が回転可能状態となるまでの左,右時間差を少なくできる。なお、タイミング決定部は、左右の後輪3のうちどちらの後輪3がリリース駆動の開始を遅らせる他側の車輪となるかを、図7のS43の処理(図9の処理)により決定する。
以上より、第1の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19(の演算回路20)は、図4および図5の処理により、左右の電動モータ43B,43Bの状態量を算出する。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、算出された電動モータ43B,43Bの状態量に基づいて、図7ないし図11の処理により、リリース駆動のときに、左右の後輪3,3が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくするように、電動モータ43B,43Bを制御する。これにより、リリースのときの左右時間差に起因する車両の横方向の動き(横方向に振られること)を低減できる。この結果、運転者等の乗車人員(乗員)に違和感、不快感を与えることを抑制することができる。
第1の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、図7のS42およびS43の処理(図8および図9の処理)により、左右の電動モータ43B,43Bのリリース駆動のための制御開始タイミングを決定する。そして、図7のS44およびS45の処理(図10および図11の処理)により、決定された制御開始タイミングに応じて、左右の電動モータ43B,43Bへ電流を供給する。これにより、リリース駆動のときに、左右の後輪3,3が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
第1の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、図7のS42の処理(図8のS53,S54の処理)により、左右の電動モータ43B,43Bの状態量の差分(モータ回転量積算値左右差)に基づいて遅延時間を決定する。そして、図7のS44およびS45の処理(図10および図11の処理)により、一側の電動モータ43Bを他側の電動モータ43Bから所定値(遅延時間)分、制御開始タイミングをずらしてリリース駆動を開始する。これにより、リリース駆動のときに、左右の後輪3,3が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
第1の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、図4および図5の処理により、電動モータ43B,43Bの状態量として該電動モータ43B,43Bの回転量の積算値(モータ回転量積算値)を算出する。そして、図7のS43の処理(図9のS63の処理)により、一側のモータ回転量積算値が他側のモータ回転量積算値より大きいと判定された場合、図7のS44およびS45の処理(図10および図11の処理)により、他側の電動モータ43Bのリリース駆動を、一側の電動モータ43Bのリリース駆動より所定値(遅延時間)分遅らせて、開始する。これにより、一側の後輪3が回転可能状態となるまでの時間と他側の後輪3が回転可能状態となるまでの時間の差を少なくできる。
第1の実施形態によれば、メモリ21に、図12に示す積算値の差分(モータ回転量積算値左右差)と所定値(遅延時間)の関係が記憶されている。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、図7のS42の処理(図8のS54の処理)により、差分を入力として図12の関係に基づいて所定値を決定する。このため、駐車ブレーキ制御装置19は、複雑な演算を必要とすることなく、他側の電動モータ43Bのリリース駆動を遅らせる時間(遅延時間)を決定することができる。
第1の実施形態によれば、駐車ブレーキ制御装置19は、ブレーキパッド33がディスクロータ4に対して当接又は離間(離接)したことを、電流センサ部24が検出する電流の変化に基づいて検知する。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、図4のS3(図5のS23)の処理により、ブレーキパッド33とディスクロータ4との当接を検知し、図4のS4およびS5(図5のS24およびS25)の処理により、当接したことを検知した後の積算値を算出する。これにより、駐車ブレーキ制御装置19は、当接の検知前の積算値を算出する必要がなくなり、積算値の算出処理の負荷(負担)を低減することができる。
次に、図15ないし図21は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、車両が停止(停車)している路面の勾配等に応じて、リリースのときに、モータに対する供給電流の大小を連続的に切換えるスイッチング制御を行う構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、リリース要求を受領後、必要に応じて、電動モータ43Bに対する通電を継続して行う通電継続制御と、電動モータ43Bに対する供給電流の大小を連続的に切換えるスイッチング制御とを、切り換えて行う。具体的には、駐車ブレーキ制御装置19は、駐車ブレーキのリリースのときに、例えば、車両が停止(停車)している路面の勾配に応じて、スイッチング制御(PWM制御、デューティ比が0%よりも大きく100%よりも小さい値となる制御)を行う。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、例えば、スイッチング制御中に車両の動き出しを検知すると、スイッチング制御を終了して通電継続制御(デューティ比が100%となる制御)を行う。
このように、リリースのときにスイッチング制御を行うと、電動モータ43Bに基づく推力(ブレーキパッド33をディスクロータ4に押付ける力)の低下速度(減力速度)を遅くする(推力を除々に下げる)ことができる。これにより、路面が車両の進行方向に下向きに所定以上傾斜しているときに、運転者等の乗車人員に違和感、即ち、推力の低下が速いことによる車両の飛び出し感(車両の唐突な発進)を与えることを抑制できる。
ここで、図21は、リリースのときの左,右の電動モータ43B,43Bの電流(Current)と推力(Thrust)の時間変化の一例を示している。なお、図21では、左後輪3側の時間変化を実線で、右後輪3側の時間変化を破線で、それぞれ示している。図21の上側に示す「(A)遅延時間制御」は、上述の第1の実施形態のような遅延時間制御を行った場合の、電流と推力の時間変化を示している。この場合、左電動モータ43Bの電流供給の開始タイミングを、右電動モータ43Bの電流供給の開始タイミングよりもt7分遅らせることにより、推力が低下し始める時間を左右でほぼ同じにすることができる。
これに対し、図21の中央に示す「(B)遅延時間制御+スイッチング制御」は、上述の第1の実施形態のような遅延時間制御と上述のスイッチング制御とを行った場合の、電流と推力の時間変化を示している。この場合は、第1の実施形態のような遅延時間制御を行うことにより、左右の電動モータ43Bの電流供給の開始タイミングをt7分遅らせている。これに加えて、推力を除々に下げるべく、左右の電動モータ43B,43Bの突入電流が収束した後に、そのままスイッチング制御を開始している。
しかし、この場合は、スイッチング制御により電動モータ43Bの駆動速度が遅くなることに伴って、推力が低下し始める時間に左右差が生じるおそれがある。即ち、速度が遅くなる分、左右のディスクブレーキ31,31で、ばらつきや効率の差等に基づく駆動速度の変化が大きくなり、左右差が大きくなり易い。このため、電動モータ43B,43Bの始動時に、遅延時間制御により遅延時間t7を持たせても、図21の「(B)」に「t8」を付して示すように、推力が低下し始める時間に左右差が生じる可能性がある。そして、図21の「(B)」に「t9」を付して示すように、推力低下区間では、さらに左右差が大きくなる。
そこで、第2の実施形態では、スイッチング制御を開始するタイミングを調整するスイッチング制御開始タイミング制御を行う構成としている。即ち、図21の下側に示す「(C)遅延時間制御+スイッチング制御+開始タイミング制御」は、上述の第1の実施形態のような遅延時間制御と、上述のスイッチング制御に加えて、スイッチング制御開始タイミング制御も行った場合の、電流と推力の時間変化を示している。
第2の実施形態では、遅延時間t7に加えて、図21の「(C)」に「t10」を付して示すように、スイッチング制御を開始するタイミングを、そのときのモータ回転量積算値に応じて調整している(遅らせている)。具体的には、図20に示す関係(テーブル)、即ち、ロック状態でモータ停止中のモータ回転量積算値とスイッチング制御を開始すべきモータ回転量閾値との関係に基づいて、左電動モータ43Bのモータ回転量閾値と右電動モータ43Bのモータ回転量閾値とをそれぞれ求める。そして、左右の電動モータ43B,43Bは、リリース中のモータ回転量積算値が図20に基づいてそれぞれ求めたモータ回転量閾値となったときに、スイッチング制御を開始する。この結果、推力の低下のずれ、換言すれば、左右の後輪3が回転可能状態となるまでの左,右時間差を少なくできる。即ち、図21の「(C)」に「t11」を付して示すように、推力が低下し始める時間の左右差を抑制することができる。さらに、図21の「(C)」に「t12」を付して示すように、推力低下区間でも、左右差を抑制できる。
このようなリリース動作を行うために、駐車ブレーキ制御装置19は、第1の実施形態と同様の状態量算出部(図4および図5の処理)を備えている。また、駐車ブレーキ制御装置19は、図15のS92およびS93に対応するタイミング決定部を備えている。このタイミング決定部は、第1の実施形態のタイミング決定部(図7のS42およびS43)と同様のもの、即ち、図8および図9の処理に対応するものである。
さらに、駐車ブレーキ制御装置19は、図15のS94およびS95(図16および図17の処理)に対応するスイッチング制御開始タイミング決定部を備えている。スイッチング制御開始タイミング決定部は、状態量算出部が算出する状態量に基づいて、各電動モータ43B,43Bのスイッチング制御開始タイミングを決定する。
また、駐車ブレーキ制御装置19は、制御部として、図15のS96およびS97の処理に対応する遅延制御部を備えている。この遅延制御部は、第1の実施形態の制御部(図7のS44およびS45)と同様のもの、即ち、図10および図11の処理に対応するものである。
これに加えて、駐車ブレーキ制御装置19は、制御部として、図15のS98およびS99の処理(図18および図19の処理)に対応するスイッチング制御部を備えている。スイッチング制御部は、スイッチング制御開始タイミング決定部の決定に応じて、各電動モータ43B,43Bのスイッチング制御を行う。
次に、図15の処理について説明する。この図15の処理は、スイッチング制御を行うときに、第1の実施形態の図7の処理に代えて、第2の実施形態で用いられるものである。図15の制御処理は、駐車ブレーキ制御装置19に通電している間、所定の制御周期で、即ち、所定時間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。ここで、図15のS91は、図7のS41と同じ処理であり、図15のS92は、図7のS42と同じ処理であり、図15のS93は、図7のS43と同じ処理であり、図15のS96は、図7のS44と同じ処理であり、図15のS97は、図7のS45と同じ処理であり、図15のS100は、図7のS46と同じ処理である。このため、図15のS91、S92、S93、S96、S97、S100の処理の説明は省略する。
図15のS93に続くS94では、スイッチング制御開始タイミング決定処理、即ち、左電動モータ43Bのスイッチング制御の開始タイミングを決定する処理が行われる。このスイッチング制御開始タイミング決定処理(左)は、図16に示す処理となる。図16のS101では、左ディスクブレーキ31の状態(駐車ブレーキの状態)がロック状態であるか否かを判定する。S101で、「YES」、即ち、ロック状態であると判定された場合は、S102に進む。一方、S101で、「NO」、即ち、非ロック状態であると判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図15のS95に進む)。
S102では、左電動モータ43Bが停止中であるか否かを判定する。S102で、「NO」、即ち、左電動モータ43Bが駆動中の場合は、処理を終了する(リターンを介して図15のS95に進む)。一方、S102で、「YES」、即ち、左電動モータ43Bが停止中の場合は、S103に進み、左電動モータ43Bがスイッチング制御を開始すべきモータ回転量積算値に対応するモータ回転量閾値を設定する。具体的には、図20に示すモータ回転量積算値とモータ回転量閾値との関係(テーブル)に基づいて、そのときの左モータ回転量積算値に応じたモータ回転量閾値(スイッチング制御を開始すべきモータ回転量積算値)を求める。この場合、図20では、スイッチング制御を開始するときの推力の大きさに対応して、実線と破線と一点鎖線との3つの特性線51,52,53が設定されている。
スイッチング制御を開始するときの推力の大きさを大、中、小の三段階とすると、推力が大の状態でスイッチング制御を開始するときは、図20の破線の特性線51に基づいてモータ回転量閾値を設定する。推力が中の状態でスイッチング制御を開始するときは、図20の実線の特性線52に基づいてモータ回転量閾値を設定する。推力が小の状態でスイッチング制御を開始するときは、図20の一点鎖線の特性線53に基づいてモータ回転量閾値を設定する。
例えば、左電動モータ43Bがロック状態で停止中のときのモータ回転量積算値をM1(例えば50回転)とし、推力が中(例えば7kN)でスイッチング制御を開始する場合は、モータ回転量閾値はM2(例えば30回転)に設定される。なお、スイッチング制御を開始するときの推力の大きさ、即ち、特性線51,52,53のいずれを用いるかは、例えば、ディスクブレーキ31が搭載される車両に応じて(例えば、車両重量等に応じて)調整(選択)することができる。S103で、図20のテーブルに基づいてモータ回転量閾値を設定したら、処理を終了する(リターンを介して図15のS95に進む)。
図15のS94に続くS95では、右電動モータ43Bのスイッチング制御開始タイミング決定処理が行われる。このように、第2の実施形態では、左右各々でスイッチング制御開始タイミングを決定する。スイッチング制御開始タイミング決定処理(右)は、図17に示す処理となる。なお、図17の制御処理は、左右が相違する以外、図16の制御処理と同様の処理となる。この場合、図17のS111〜S113の処理は、図16のS101〜S103の処理に対応する。図17の制御処理については、これ以上の説明を省略する。
図15のS97に続くS98では、リリース駆動中のスイッチング制御処理、即ち、左電動モータ43Bのスイッチング制御開始処理が行われる。このスイッチング制御開始処理(左)は、図18に示す処理となる。図18のS121では、左電動モータ43Bがリリース駆動中であるか否かを判定する。S121で、「YES」、即ち、リリース駆動中であると判定された場合は、S122に進む。一方、S121で、「NO」、即ち、リリース駆動中でないと判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図15のS99に進む)。
S122では、左電動モータ43Bのリリース駆動中のモータ回転量積算値と図16のS103で設定したモータ回転量閾値とを比較する。即ち、左モータ回転量積算値(左積算値)が左モータ回転量閾値以下であるか否かを判定する。S103で、「NO」、即ち、左積算値が左モータ回転量閾値よりも大きいと判定された場合は、処理を終了する(リターンを介して図15のS99に進む)。一方、S103で、「YES」、即ち、左積算値が左モータ回転量閾値以下になったと判定された場合は、S123に進み、左電動モータ43Bのスイッチング制御を開始する。即ち、左電動モータ43Bに対する供給電流の大小を連続的に切換えるスイッチング制御を開始し、処理を終了する(リターンを介して図15のS99に進む)。
図15のS98に続くS99では、右電動モータ43Bのスイッチング制御開始処理が行われる。このように、第2の実施形態では、左右各々でスイッチング制御開始処理が行われる。スイッチング制御開始処理(右)は、図19に示す処理となる。なお、図19の制御処理は、左右が相違する以外、図18の制御処理と同様の処理となる。この場合、図19のS131〜S133の処理は、図18のS121〜S123の処理に対応する。図19の制御処理については、これ以上の説明を省略する。
図15のS94およびS95の処理(図16および図17の処理)は、本発明の構成要件であるスイッチング制御開始タイミング決定部の具体例となる。スイッチング制御開始タイミング決定部は、左右輪(左右の後輪3)それぞれのスイッチング制御開始タイミングを決定するものである。ここで、アプライ駆動を行う際の左右の電動モータ43B,43Bの状態量(モータ回転量閾値)を正の状態量とし、リリース駆動を行う際の左右の電動モータ43B,43Bの状態量(モータ回転量閾値)を負の状態量としたとき、スイッチング制御開始タイミング決定部は、アプライ駆動が終了したときの正の状態量に基づいて閾値(モータ回転量閾値)を決定する。一方、図15のS98およびS99の処理(図18および図19の処理)は、本発明の構成要件である制御部(スイッチング制御部)の具体例となる。ここで、制御部(スイッチング制御部)は、左右の電動モータ43B,43Bに対する通電を継続して行う通電継続制御と、左右の電動モータ43B,43Bに対する供給電流の大小を連続的に切換えるスイッチング制御とを切り換えて行う。さらに、制御部(スイッチング制御部)は、リリース駆動中に負の状態量が閾値を下回った場合、スイッチング制御を開始する。
第2の実施形態は、上述の如きS94、S95の処理によりスイッチング制御の開始タイミングを決定し、S98、S99の処理によりスイッチング制御を開始するもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。
特に、第2の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19(の演算回路20)は、S94(S95)の処理により、アプライ駆動を行う際の電動モータ43Bの状態量(モータ回転量積算値)に基づいてモータ回転量閾値を決定する。そして、駐車ブレーキ制御装置19は、S98(S99)の処理により、リリース駆動を行う際の電動モータ43Bの状態量(モータ回転量積算値)がモータ回転量閾値以下になった(下回った)場合、スイッチング制御を開始する。これにより、リリース駆動中にスイッチング制御を行うときも、図21の「(C)」に示すように、左右の後輪3,3が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
なお、上述した各実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19による遅延輪判定処理(電動モータ43Bの駆動を遅らせる側の車輪を決定する処理)は、図9に示すように、左右のモータ回転量積算値が同じときは、左輪(左後輪3)を遅延輪とする構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図22に示す変形例のように、S66,S67を設け、左右のモータ回転量積算値が同じときは、遅延輪を任意の輪(左右の後輪3,3のいずれか)としてもよい。このように、左右の輪のうちのいずれかを遅延輪とする理由は、左右のモータの電流(突入電流)の立ち上がりのタイミングをずらすためである。
上述した各実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、モータの状態(モータ回転量)として、上述の数1式を用いてモータ回転量を算出すると共に、それを積算したモータ回転量積算値を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、モータの状態(モータ回転量)として、回転センサによりモータ回転量を直接検出する(回転センサの検出値を用いる)構成としてもよい。さらに、モータの状態(モータの状態量)として、制動部材が被制動部材に対して当接した後のモータの電流の時間に対する傾きを用いる構成としてもよい。
上述した各実施形態では、駐車ブレーキ制御装置19は、左右の後輪3,3が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくすべく、リリース駆動のための制御開始タイミングを決定するタイミング決定部(図7のS42およびS43の処理)と、該タイミング決定部の決定に応じて左右の電動モータ43B,43Bへ電流を供給する制御部(図7のS44およびS45の処理)とを備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、タイミング決定部に代えて、左右輪それぞれのリリース駆動のための各モータへ供給する電流値を決定する電流値決定部を更に備え、制御部は、電流値決定部の決定に応じて、各モータへ電流を供給する構成としてもよい。
この場合、電流値決定部は、左右輪それぞれの状態量の差分に基づいて、一側の車輪のモータへ供給する第一の電流値、及び、他側の車輪のモータへ供給する第二の電流値を決定し、制御部は、リリース駆動開始時において、一側の車輪のモータへ第一の電流値に対応する電流を供給し、他側の車輪のモータへ第二の電流値に対応する電流を供給する構成とすることができる。
また、状態量算出部は、モータの状態量として該モータの回転量の積算値を算出し、電流値決定部は、一側の車輪のモータの回転量の積算値が他側の車輪のモータの回転量の積算値より大きい場合、第一の電流値を第二の電流値より所定値分大きく決定する構成としてもよい。
さらに、制動部材が被制動部材に対して当接又は離間したことを検知する検知部を更に備え、状態量算出部は、モータの状態量として、検知部により制動部材が被制動部材に当接したことを検知した後の電流の時間に対する傾きを算出する構成としてもよい。
上述した各実施形態では、左,右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、左,右の前輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよい。また、前輪と後輪の全ての車輪(4輪全て)のブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成してもよい。
上述した各実施形態では、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、液圧の供給が不要な電動式ディスクブレーキにより構成してもよい。また、ディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、ドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよい。さらに、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキ、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行う構成等、ブレーキ機構は各種のものを採用することができる。この場合に、例えば、液圧の供給が不要な電動式のブレーキ機構を採用した場合は、制御部は、車両に制動力を常用ブレーキとして与える(ブレーキペダルの操作等によるアプライ要求に基づいて電動モータを駆動する)構成とすることができる。
以上の実施形態によれば、制御部は、状態量算出部により算出される左右のモータの状態量に基づいて、左右輪それぞれのリリース駆動により車輪が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくするよう各モータを制御する。換言すれば、リリース開始時における、左右の駆動部それぞれの時間のずれを示す第1の所定時間よりも、左右の駆動部それぞれに設けられた車輪が回転を開始するタイミングのずれを示す第2の所定時間の方が短い。これにより、リリースのときの左右時間差に起因する車両の横方向の動き(横方向に振られること)を低減できる。この結果、リリースのときに、運転者等の乗車人員(乗員)に違和感、不快感を与えることを抑制することができる。
実施形態によれば、左右輪それぞれのリリース駆動のための制御開始タイミングを決定するタイミング決定部を更に備え、制御部は、タイミング決定部の決定に応じて、各モータへ電流を供給する構成としている。このため、制御部は、タイミング決定部が決定した制御開始タイミングで各モータへ電流を供給することにより、車輪が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
実施形態によれば、タイミング決定部は、左右輪それぞれの状態量の差分に基づいて時間に関する所定値を決定し、制御部は、一側の車輪のモータを他側の車輪のモータから所定値分、制御開始タイミングをずらしてリリース駆動を開始する構成としている。このため、制御部は、左右輪で制御開始タイミングを所定値分ずらしてリリース駆動を開始することにより、車輪が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
実施形態によれば、状態量算出部は、モータの状態量として該モータの回転量の積算値を算出し、制御部は、一側の車輪のモータの回転量の積算値が他側の車輪のモータの回転量の積算値より大きい場合、他側の車輪のモータのリリース駆動を、一側の車輪のモータのリリース駆動より所定値分遅らせて、開始する。これにより、一側の車輪が回転可能状態となるまでの時間と他側の車輪が回転可能状態となるまでの時間の差を少なくできる。
実施形態によれば、積算値の差分と所定値の関係を記憶する記憶部を更に備え、タイミング決定部は、差分を入力として関係に基づいて所定値を決定する。このため、タイミング決定部は、積算値の差分と所定値の関係から、複雑な演算を必要とすることなく、他側のモータのリリース駆動を遅らせる時間(遅延時間)を決定することができる。
実施形態によれば、制動部材が被制動部材に対して当接又は離間したことを検知する検知部を更に備え、状態量算出部は、検知部により制動部材が被制動部材に当接したことを検知した後の積算値を算出する構成としている。これにより、状態量算出部は、当接の検知前の積算値を算出する必要がなくなり、積算値の算出処理の負荷(負担)を低減することができる。
実施形態によれば、左右輪それぞれのリリース駆動のための各モータへ供給する電流値を決定する電流値決定部を更に備え、制御部は、電流値決定部の決定に応じて、各モータへ電流を供給する構成としている。このため、制御部は、電流値決定部が決定した電流値で各モータへ電流を供給することにより、車輪が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
実施形態によれば、電流値決定部は、左右輪それぞれの状態量の差分に基づいて、一側の車輪のモータへ供給する第一の電流値、及び、他側の車輪のモータへ供給する第二の電流値を決定し、制御部は、リリース駆動開始時において、一側の車輪のモータへ第一の電流値に対応する電流を供給し、他側の車輪のモータへ第二の電流値に対応する電流を供給する構成としている。このため、制御部は、左右輪でそれぞれ第一の電流値に対応する電流と第一の電流値に対応する電流を供給することにより、車輪が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。
実施形態によれば、状態量算出部は、モータの状態量として該モータの回転量の積算値を算出し、電流値決定部は、一側の車輪のモータの回転量の積算値が他側の車輪のモータの回転量の積算値より大きい場合、第一の電流値を第二の電流値より所定値分大きく決定する構成としている。これにより、一側の車輪が回転可能状態となるまでの時間と他側の車輪が回転可能状態となるまでの時間の差を少なくできる。
実施形態によれば、制動部材が被制動部材に対して当接又は離間したことを検知する検知部を更に備え、状態量算出部は、モータの状態量として、検知部により制動部材が被制動部材に当接したことを検知した後の電流の時間に対する傾きを算出する構成としている。これにより、状態量算出部は、当接の検知後の電流の時間に対する傾きを、モータの状態量とすることができる。
実施形態によれば、制御部は、モータに対する通電を継続して行う通電継続制御と、モータに対する供給電流の大小を連続的に切換えるスイッチング制御と、を切り換えて行い、左右輪それぞれのスイッチング制御の開始タイミングを決定するスイッチング制御開始タイミング決定部を更に備え、アプライ駆動を行う際の状態量を正の状態量、リリース駆動を行う際の状態量を負の状態量としたとき、スイッチング制御開始タイミング決定部は、正の状態量に基づいて閾値を決定し、制御部は、負の状態量が閾値を下回った場合、スイッチング制御を開始する構成としている。これにより、リリース駆動中にスイッチング制御を行うときも、車輪が回転可能状態となるまでの左右時間差を少なくできる。