JP2016124404A - 電動ブレーキシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】運転者の意志に沿って制動力の自動解除が可能な電動ブレーキシステムを提供する。【解決手段】ディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43を備え、駐車ブレーキ制御装置21によって制御される。駐車ブレーキ制御装置21は、車両の停車中であってブレーキパッド33の押圧力が保持された状態では、クラッチセンサ18からの信号によってクラッチ操作が検知され、かつ、アクセルセンサ19からの信号によってアクセル操作が検知されたときに、ブレーキパッド33の押圧力を解除するように、ディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43を制御する。【選択図】図4
Description
本発明は、車両に制動力を付与する電動ブレーキシステムに関する。
自動車等の車両に設けられる電動ブレーキシステムとして、電動モータの駆動に基づいてブレーキ装置を作動させるものが知られている(特許文献1)。
ところで、特許文献1に記載された電動ブレーキシステムでは、電動モータを制御することによって、制動力の保持や解除が可能である。このため、車両の発進を補助するために、例えば運転者によるクラッチ操作に応じて、ブレーキ装置の制動力を自動的に解除することができる。しかしながら、クラッチストローク情報の信頼性が低いときには、クラッチを操作していないにも拘らず、クラッチ操作を誤認識する可能性があり、運転者が意図しない制動力の解除を行うおそれがある。このとき、車両が下り坂で駐車している状態で、制動力を解除すると、車両が動き出す可能性がある。
本発明の目的は、運転者の意志に沿って制動力の自動解除が可能な電動ブレーキシステムを提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明による電動ブレーキシステムは、電動機構によって、車輪と共に回転する回転部材に摩擦部材を押圧し、該摩擦部材の押圧力の保持が可能なブレーキ装置と、前記電動機構を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、車両の停車中であって前記摩擦部材の押圧力が保持された状態では、クラッチ操作が検知され、かつ、追加確認部によって前記クラッチ操作以外の追加情報を検知したときに、前記摩擦部材の押圧力を解除するように、前記ブレーキ装置の電動機構を制御することを特徴としている。
本発明の電動ブレーキシステムによれば、運転者の意志に沿って制動力を自動解除することができる。
以下、実施形態による電動ブレーキシステムについて、当該電動ブレーキシステムを、マニュアルトランスミッションを備えた4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図4に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。
まず、図1ないし図4は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、例えば左,右の前輪2(FL,FR)と左,右の後輪3(RL,RR)とからなる合計4個の車輪が設けられている。これらの前輪2および後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する被制動部材(回転部材)としてのディスクロータ4が設けられている。前輪2用のディスクロータ4は、液圧式のディスクブレーキ5により制動力が付与され、後輪3用のディスクロータ4は、電動駐車ブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキ31により制動力が付与される。これにより、各車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、ブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて、常用ブレーキ(サービスブレーキ)としての制動力の付与および解除が行われる。ブレーキペダル6には、ブレーキランプスイッチ、ペダルスイッチ、ペダルストロークセンサ等のブレーキ操作検出センサ(ブレーキセンサ)6Aが設けられている。ブレーキ操作検出センサ6Aは、ブレーキペダル6の踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を液圧供給装置用コントローラ13に出力する。ブレーキ操作検出センサ6Aの検出信号は、例えば、車両データバス16、または、液圧供給装置用コントローラ13と駐車ブレーキ制御装置21とを接続する信号線(図示せず)を介して伝送される(駐車ブレーキ制御装置21に出力される)。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、倍力装置7を介して、油圧源として機能するマスタシリンダ8に伝達される。倍力装置7は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ8との間に設けられた負圧ブースタまたは電動ブースタとして構成され、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ8に伝える。このとき、マスタシリンダ8は、マスタリザーバ9から供給されるブレーキ液により液圧を発生させる。マスタリザーバ9は、ブレーキ液が収容された作動液タンクにより構成されている。ブレーキペダル6により液圧を発生する機構は、上記の構成に限られるものではなく、ブレーキペダル6の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
マスタシリンダ8内に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して、液圧供給装置11(以下、ESC11という)に送られる。ESC11は、各ディスクブレーキ5,31とマスタシリンダ8との間に配置され、マスタシリンダ8からの液圧をブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配する。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)のそれぞれに対して相互に独立して制動力を付与する。この場合、ESC11は、ブレーキペダル6の操作量に従わない態様でも、各ディスクブレーキ5,31に液圧を供給すること、即ち、各ディスクブレーキ5,31の液圧を高めることができる。
このために、ESC11は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成される専用の制御装置、即ち、液圧供給装置用コントローラ13(以下、コントロールユニット13という)を有している。コントロールユニット13は、ESC11の各制御弁(図示せず)を開,閉したり、液圧ポンプ用の電動モータ(図示せず)を回転,停止させたりする駆動制御を行うことにより、ブレーキ側配管部12A〜12Dから各ディスクブレーキ5,31に供給されるブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、種々のブレーキ制御、例えば、倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロック制御(ABS制御)、トラクション制御、車両安定化制御(横滑り防止を含む)、坂道発進補助制御、自動運転制御等が実行される。
コントロールユニット13には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。図1に示すように、コントロールユニット13は、車両データバス16に接続されている。なお、ESC11の代わりに、公知のABSユニットを用いることも可能である。さらに、ESC11を設けずに(即ち、省略し)、マスタシリンダ8とブレーキ側配管部12A〜12Dとを直接的に接続することも可能である。
車両データバス16は、車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCAN(Controller Area Network)を備えており、車両に搭載された多数の電子機器、コントロールユニット13および駐車ブレーキ制御装置21等との間で車両内での多重通信を行う。この場合、車両データバス16に送られる車両情報としては、例えば、ブレーキ操作検出センサ6A、マスタシリンダ液圧(ブレーキ液圧)を検出する圧力センサ17、イグニッションスイッチ、シートベルトセンサ、ドアロックセンサ、ドア開センサ、着座センサ、車速センサ、操舵角センサ、クラッチセンサ(クラッチ操作センサ)18、アクセルセンサ(アクセル操作センサ)19、スロットルセンサ、エンジン回転センサ、ステレオカメラ、ミリ波レーダ、勾配センサ、シフトセンサ、加速度センサ、車輪速センサ、車両のピッチ方向の動きを検知するピッチセンサ等からの検出信号による情報(車両情報)が挙げられる。
車体1には、エンジン(原動機)とトランスミッション(変速機)との間を接続または切断し、エンジンの出力をトランスミッションに伝達または遮断するクラッチ(いずれも図示せず)が搭載されている。車体1のフロントボード側には、クラッチの接続または遮断を操作するクラッチペダル(図示せず)が設けられている。クラッチセンサ18は、例えばクラッチペダルの踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を車両データバス16に出力する。駐車ブレーキ制御装置21は、車両データバス16を介して、クラッチセンサ18の検出信号を受信する。
車体1のフロントボード側には、例えばスロットル等を作動させて、エンジンの出力を調整するアクセルペダル(図示せず)が設けられている。アクセルセンサ19は、例えばアクセルペダルの踏込み操作の有無、または、その操作量を検出し、その検出信号を車両データバス16に出力する。駐車ブレーキ制御装置21は、車両データバス16を介して、アクセルセンサ19の検出信号を受信する。
車体1内には、運転席(図示せず)の近傍に駐車ブレーキスイッチ(PKBSW)20が設けられる。駐車ブレーキスイッチ20は運転者によって操作される。駐車ブレーキスイッチ20は、運転者からの駐車ブレーキの作動要求(アプライ要求、リリース要求)に対応する信号(作動要求信号)を、駐車ブレーキ制御装置21へ伝達する。即ち、駐車ブレーキスイッチ20は、電動モータ43Bの駆動(回転)に基づいてブレーキパッド33(図2参照)をアプライ作動させるための制動要求信号としてのアプライ要求信号と、ブレーキパッド33をリリース作動させるためのリリース要求信号とを、コントロールユニット(コントローラ)となる駐車ブレーキ制御装置21に出力する。
運転者により駐車ブレーキスイッチ20が制動側(駐車ブレーキON側)に操作(制動ON操作)されたとき、即ち、車両に制動力を与えるためのアプライ要求(保持要求、駆動要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ20からアプライ要求信号が出力される。この制動ON操作を行った場合、駐車ブレーキ制御装置21は、電動モータ43Bを制動側に回転させるための電力を、ディスクブレーキ31の電動モータ43Bに給電する。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキまたは補助ブレーキとしての制動力が付与された状態、即ち、アプライ状態となる。
一方、運転者により駐車ブレーキスイッチ20が制動解除側(駐車ブレーキOFF側)に操作(制動OFF操作)されたとき、即ち、車両の制動力を解除するためのリリース要求(解除要求)があったときは、駐車ブレーキスイッチ20からリリース要求信号が出力される。この制動OFF操作を行った場合、駐車ブレーキ制御装置21は、電動モータ43Bを制動側とは逆方向に回転させるための電力を、ディスクブレーキ31の電動モータ43Bに給電する。これにより、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキまたは補助ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、リリース状態となる。
ここで、駐車ブレーキは、車両の停止中に作動する。この駐車ブレーキは、例えば車両が所定時間停止したとき(例えば、走行中に減速に伴って、車速センサの検出速度が4km/h未満の状態が所定時間継続したときに停止と判断)、エンジンが停止したとき、シフトレバーをPに操作したとき、ドアが開いたとき、シートベルトが解除されたとき等、駐車ブレーキ制御装置21での駐車ブレーキのアプライ判断ロジックによる自動的なアプライ要求に基づいて、自動的に付与(オートアプライ)する構成とすることができる。
また、駐車ブレーキは、例えば車両が走行したとき(例えば、停車から増速に伴って、車速センサの検出速度が5km/h以上の状態が所定時間継続したときに走行と判断)や、アクセルペダルが操作されたとき、クラッチペダルが操作されたとき、シフトレバーがP、N以外に操作されたとき等、駐車ブレーキ制御装置21での駐車ブレーキのリリース判断ロジックによる自動的なリリース要求に基づいて、自動的に解除(オートリリース)する構成とすることができる。このようなオートリリースの具体的な動作と、駐車ブレーキ制御装置21の具体的な構成および制御処理については、後で詳しく述べる。
一方、補助ブレーキは、車両の走行中に作動する。この補助ブレーキは、車両の走行時に駐車ブレーキスイッチ20によるアプライ要求があった場合、より具体的には、走行中に緊急的に駐車ブレーキを補助ブレーキとして用いる等の動的駐車ブレーキの要求があった場合に、作動する。ここで、補助ブレーキは、駐車ブレーキ制御装置21により、車輪(各後輪3)の状態、即ち、車輪がロック(スリップ)しているか否かに応じて、自動的に制動力の付与と解除(ABS制御)を行う構成とすることもできる。
次に、左後輪3側と右後輪3側とに設けられる電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31の構成について、図2を参照しつつ説明する。なお、図2では、左後輪3のディスクブレーキ31と右後輪3のディスクブレーキ31とのうちの一方のみを示している。
車両の左,右にそれぞれ設けられた一対のディスクブレーキ31は、電動式の駐車ブレーキ機能が付設された液圧式のディスクブレーキとして構成されている。ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキ制御装置21と共にブレーキシステム(ブレーキ装置)を構成する。ディスクブレーキ31は、車両の後輪3側の非回転部分に取付けられる取付部材32と、制動部材(摩擦部材)としてのインナ側,アウタ側のブレーキパッド33と、電動アクチュエータ43が設けられたブレーキ機構としてのキャリパ34とを含んで構成されている。
この場合、ディスクブレーキ31は、ブレーキペダル6の操作等に基づく液圧により、ピストン39でブレーキパッド33を推進させ、ディスクロータ4をブレーキパッド33で押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。これに加えて、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキスイッチ20からの信号に基づく作動要求や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABS制御に基づく作動要求に応じて、電動モータ43Bにより(回転直動変換機構40を介して)ピストン39を推進させ、ディスクロータ4をブレーキパッド33で押圧することにより、車輪(後輪3)延いては車両に制動力を付与する。
取付部材32は、ディスクロータ4の外周を跨ぐようにディスクロータ4の軸方向(即ち、ディスク軸方向)に延びディスク周方向で互いに離間した一対の腕部(図示せず)と、該各腕部の基端側を一体的に連結するように設けられ、ディスクロータ4のインナ側となる位置で車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部32Aと、ディスクロータ4のアウタ側となる位置で前記各腕部の先端側を互いに連結する補強ビーム32Bとを含んで構成されている。
インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、ディスクロータ4の両面に当接可能に配置され、取付部材32の各腕部によりディスク軸方向に移動可能に支持されている。インナ側,アウタ側のブレーキパッド33は、キャリパ34(キャリパ本体35、ピストン39)によりディスクロータ4の両面側に押圧される。これにより、ブレーキパッド33は、車輪(後輪3)と共に回転するディスクロータ4を押圧することにより車両に制動力を与える。
取付部材32には、ホイールシリンダとなるキャリパ34がディスクロータ4の外周側を跨ぐように配置されている。キャリパ34は、取付部材32の各腕部に対してディスクロータ4の軸方向に沿って移動可能に支持されたキャリパ本体35、このキャリパ本体35内に設けられたピストン39、回転直動変換機構40、電動アクチュエータ43等を備えている。キャリパ34は、ブレーキペダル6の操作に基づいて発生する液圧によって作動するピストン39を用いてブレーキパッド33を推進する。
キャリパ本体35は、シリンダ部36とブリッジ部37と爪部38とを備えている。シリンダ部36は、軸線方向の一方側が隔壁部36Aによって閉塞され、ディスクロータ4に対向する他方側が開口された有底円筒状に形成されている。ブリッジ部37は、ディスクロータ4の外周側を跨ぐようにシリンダ部36からディスク軸方向に延びて形成されている。爪部38は、シリンダ部36と反対側においてブリッジ部37から径方向内側に向けて延びるように配置されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36は、図1に示すブレーキ側配管部12Cまたは12Dを介してブレーキペダル6の踏込み操作等に伴う液圧が供給される。このシリンダ部36は、隔壁部36Aと一体形成されている。隔壁部36Aは、シリンダ部36と電動アクチュエータ43との間に位置している。隔壁部36Aは、軸線方向の貫通穴を有しており、隔壁部36Aの内周側には、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転可能に挿入されている。
キャリパ本体35のシリンダ部36内には、押圧部材(移動部材)としてのピストン39と、回転直動変換機構40と、が設けられている。なお、実施形態においては、回転直動変換機構40がピストン39内に収容されている。但し、回転直動変換機構40は、ピストン39を推進するように構成されていればよく、必ずしもピストン39内に収容されていなくてもよい。
ピストン39は、ブレーキパッド33をディスクロータ4に近付く方向に、または、ディスクロータ4から遠ざかる方向に移動させる。ピストン39は、軸線方向の一方側が開口しており、インナ側のブレーキパッド33に対面し、軸線方向の他方側が蓋部39Aによって閉塞されている。このピストン39は、シリンダ部36内に挿入されている。ピストン39は、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)へ電流が供給されることにより移動することに加えて、ブレーキペダル6の踏込み等に基づいてシリンダ部36内に液圧が供給されることによっても移動する。この場合に、電動アクチュエータ43(電動モータ43B)によるピストン39の移動は、直動部材42に押圧されることによって行われる。また、回転直動変換機構40はピストン39の内部に収容されており、ピストン39は、該回転直動変換機構40によりシリンダ部36の軸線方向に推進されるように構成されている。
回転直動変換機構40は、押圧部材保持機構として機能する。具体的には、回転直動変換機構40は、シリンダ部36内への液圧付加によって生じる力とは異なる外力、即ち、電動アクチュエータ43により発生される力によってキャリパ34のピストン39を推進させると共に、推進されたピストン39およびブレーキパッド33を保持する。これにより、駐車ブレーキはアプライ状態(保持状態)となる。一方、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43によりピストン39を推進方向とは逆方向に退避させ、駐車ブレーキをリリース状態(解除状態)とする。そして、左,右の後輪3用に左,右のディスクブレーキ31がそれぞれ設けられるので、回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43も、車両の左,右それぞれに設けられている。
回転直動変換機構40は、台形ねじ等の雄ねじが形成された棒状体を有するねじ部材41と、台形ねじによって形成される雌ねじ穴が内周側に形成された直動部材42とにより(スピンドルナット機構として)構成されている。直動部材42は、電動アクチュエータ43によりピストン39に向けて、または、ピストン39から遠ざかる方向に移動する被駆動部材(推進部材)となる。即ち、直動部材42の内周側に螺合したねじ部材41は、電動アクチュエータ43による回転運動を直動部材42の直線運動に変換するねじ機構を構成している。この場合、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとは、不可逆性の大きいねじ、実施形態においては、台形ねじを用いて形成することにより押圧部材保持機構を構成している。
押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)は、電動モータ43Bに対する給電を停止した状態でも、直動部材42(即ち、ピストン39)を任意の位置で摩擦力(保持力)によって保持するようになっている。なお、押圧部材保持機構は、電動アクチュエータ43により推進された位置にピストン39を保持することができればよく、例えば、台形ねじ以外の不可逆性の大きい通常の三角断面のねじやウォームギヤとしてもよい。
直動部材42の内周側に螺合して設けられたねじ部材41には、軸線方向の一方側に大径の鍔部であるフランジ部41Aが設けられている。ねじ部材41の軸線方向の他方側は、ピストン39の蓋部39Aに向けて延びている。ねじ部材41は、フランジ部41Aにおいて、電動アクチュエータ43の出力軸43Cに一体的に連結されている。また、直動部材42の外周側には、直動部材42をピストン39に対して回り止め(相対回転を規制)しつつ、直動部材42が軸線方向に相対移動することを許容する係合突部42Aが設けられている。これにより、直動部材42は、電動モータ43Bが駆動することにより直動し、ピストン39に接触して該ピストン39を移動させる。
電動アクチュエータ43は、電動機構を構成し、キャリパ34のキャリパ本体35に固定されている。電動アクチュエータ43は、駐車ブレーキスイッチ20の作動要求信号や前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジック、ABS制御に基づいて、ディスクブレーキ31を作動(アプライ・リリース)させる。電動アクチュエータ43は、隔壁部36Aの外側に取付けられたケーシング43Aと、該ケーシング43A内に位置してステータ、ロータ等を備え電力(電流)が供給されることによりピストン39を移動させる電動モータ43Bと、該電動モータ43Bのトルクを増幅する減速機(図示せず)と、該減速機による増幅後の回転トルクを出力する出力軸43Cとを含んで構成されている。電動モータ43Bは、例えば、直流ブラシモータとして構成することができる。出力軸43Cは、シリンダ部36の隔壁部36Aを軸線方向に貫通して延びており、ねじ部材41と一体に回転するように、シリンダ部36内においてねじ部材41のフランジ部41Aの端部に連結されている。
出力軸43Cとねじ部材41との連結機構は、例えば、軸線方向には移動可能であるが、回転方向には回り止めされるように構成することができる。この場合は、例えばスプライン嵌合や多角形柱による嵌合(非円形嵌合)等の公知の技術が用いられる。なお、減速機としては、例えば、遊星歯車減速機やウォーム歯車減速機等が用いられてもよい。また、ウォーム歯車減速機等、逆作動性のない(不可逆性の)公知の減速機を用いる場合は、回転直動変換機構40として、ボールねじやボールランプ機構等、可逆性のある公知の機構を用いることができる。この場合は、例えば、可逆性の回転直動変換機構と不可逆性の減速機とにより押圧部材保持機構を構成することができる。
図1ないし図3に示す駐車ブレーキスイッチ20が制動側に操作(制動ON操作)されたときには、駐車ブレーキ制御装置21を介して電動モータ43Bに給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転される。このため、回転直動変換機構40のねじ部材41は、一方向に出力軸43Cと一体に回転され、直動部材42を介してピストン39をディスクロータ4側に推進(駆動)する。これにより、ディスクブレーキ31は、ディスクロータ4をインナ側およびアウタ側のブレーキパッド33間で挟持し、電動式の駐車ブレーキとして制動力を付与した状態、即ち、アプライ状態(保持状態)となる。
一方、駐車ブレーキスイッチ20が制動解除側に操作(制動OFF操作)されたときには、電動アクチュエータ43により回転直動変換機構40のねじ部材41が他方向(逆方向)に回転駆動される。これにより、直動部材42(および液圧付加がなければピストン39)は、ディスクロータ4から離れる方向に駆動され、ディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとしての制動力の付与が解除された状態、即ち、解除状態(リリース状態)となる。
この場合、回転直動変換機構40では、ねじ部材41が直動部材42に対して相対回転されるとき、ピストン39内での直動部材42の回転が規制されているため、直動部材42は、ねじ部材41の回転角度に応じて軸線方向に相対移動する。これにより、回転直動変換機構40は、回転運動を直線運動に変換し、直動部材42によりピストン39が推進される。また、これと共に、回転直動変換機構40は、直動部材42を任意の位置でねじ部材41との摩擦力によって保持することにより、ピストン39およびブレーキパッド33を電動アクチュエータ43により推進された位置に保持する。
シリンダ部36の隔壁部36Aには、該隔壁部36Aとねじ部材41のフランジ部41Aとの間にスラスト軸受44が設けられている。このスラスト軸受44は、隔壁部36Aと共にねじ部材41からのスラスト荷重を受け、隔壁部36Aに対するねじ部材41の回転を円滑にする。また、シリンダ部36の隔壁部36Aには、電動アクチュエータ43の出力軸43Cとの間にシール部材45が設けられ、該シール部材45は、シリンダ部36内のブレーキ液が電動アクチュエータ43側に漏洩するのを阻止するように両者の間をシールしている。
また、シリンダ部36の開口端側には、該シリンダ部36とピストン39との間をシールする弾性シールとしてのピストンシール46と、シリンダ部36内への異物侵入を防ぐダストブーツ47とが設けられている。ダストブーツ47は、可撓性を有した蛇腹状のシール部材であり、シリンダ部36の開口端とピストン39の蓋部39A側の外周との間に取付けられている。
なお、前輪2用のディスクブレーキ5は、駐車ブレーキ機構を除いて、後輪3用のディスクブレーキ31とほぼ同様に構成されている。即ち、前輪2用のディスクブレーキ5は、後輪3用のディスクブレーキ31が備える、駐車ブレーキとして作動する回転直動変換機構40および電動アクチュエータ43等を備えていない。しかし、ディスクブレーキ5に代えて、前輪2用に電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31が設けられてもよい。
また、実施形態では、電動アクチュエータ43を有する液圧式のディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、例えば、電動キャリパを有する電動式ディスクブレーキ、電動アクチュエータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動式ドラムブレーキ、電動ドラム式の駐車ブレーキを有するディスクブレーキ、電動アクチュエータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキをアプライ作動させる構成等、電動アクチューエータ(電動モータ)の駆動に基づいて制動部材(パッド、シュー)を被制動部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、その押圧力を保持させることができるブレーキ機構であれば、その構成は、上述の実施形態のブレーキ機構でなくともよい。
次に、電動アクチュエータ43を用いてディスクブレーキ31を制御する駐車ブレーキ制御装置21について、図3を参照しつつ説明する。
制御装置としての駐車ブレーキ制御装置21は、左,右一対のディスクブレーキ31と共に電動ブレーキシステムを構成する。駐車ブレーキ制御装置21は、マイクロコンピュータ等によって構成される演算回路(CPU)22を有し、駐車ブレーキ制御装置21には、バッテリ14からの電力が電源ライン15を通じて給電される。
駐車ブレーキ制御装置21は、ディスクブレーキ31の電動モータ43Bを制御し、車両の駐車、停車時、走行時に制動力(駐車ブレーキ、補助ブレーキ)を発生させる。即ち、駐車ブレーキ制御装置21は、電動モータ43Bを駆動することにより、ディスクブレーキ31を駐車ブレーキおよび補助ブレーキとして作動(アプライ・リリース)させる。このために、図1ないし図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置21は、入力側が駐車ブレーキスイッチ20に接続され、出力側はディスクブレーキ31の電動モータ43Bに接続されている。
駐車ブレーキ制御装置21は、運転者の駐車ブレーキスイッチ20の操作による作動要求(アプライ要求、リリース要求)、駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックによる作動要求、ABS制御による作動要求に基づいて、電動モータ43Bを駆動し、ディスクブレーキ31のアプライ(保持)またはリリース(解除)を行う。このとき、ディスクブレーキ31では、電動モータ43Bの駆動に基づいて、押圧部材保持機構(回転直動変換機構40)によるピストン39およびブレーキパッド33の保持または解除が行われる。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置21の演算回路(CPU)22には、メモリ(記憶部)23に加えて、駐車ブレーキスイッチ20、車両データバス16、電圧センサ部24、モータ駆動回路25、電流センサ部26等が接続されている。車両データバス16からは、駐車ブレーキの制御(作動)に必要な車両の各種状態量、即ち、各種車両情報を取得することができる。
なお、車両データバス16から取得する車両情報は、その情報を検出するセンサを駐車ブレーキ制御装置21(の演算回路22)に直接接続することにより取得する構成としてもよい。また、駐車ブレーキ制御装置21の演算回路22は、車両データバス16に接続された他の制御装置(例えばコントロールユニット13)から前述の判断ロジックやABS制御に基づく作動要求が入力されるように構成してもよい。この場合は、前述の判断ロジックによる駐車ブレーキのアプライ・リリースの判定やABSの制御を、駐車ブレーキ制御装置21に代えて、他の制御装置、例えばコントロールユニット13で行う構成とすることができる。即ち、コントロールユニット13に駐車ブレーキ制御装置21の制御内容を統合することが可能である。
駐車ブレーキ制御装置21は、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ23を備えている。メモリ23には、前述の駐車ブレーキのアプライ・リリースの判断ロジックやABSの制御のプログラムに加え、図4に示すオートリリース(自動解除)の処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。また、メモリ23には、オートリリースの処理プログラムで用いる各種の係数等も格納されている。
なお、実施形態では、駐車ブレーキ制御装置21をESC11のコントロールユニット13と別体としたが、駐車ブレーキ制御装置21をコントロールユニット13と一体に構成してもよい。また、駐車ブレーキ制御装置21は、左,右で2つのディスクブレーキ31を制御するようにしているが、左,右のディスクブレーキ31毎に設けるようにしてもよく、この場合には、駐車ブレーキ制御装置21をディスクブレーキ31に一体的に設けることもできる。
駐車ブレーキ制御装置21は、駐車ブレーキスイッチ20が制動ON操作されたときに、車両の状態に応じて、ディスクブレーキ31に対して静的制御(静的駐車ブレーキ)と動的制御(動的駐車ブレーキ)とを行う。静的制御は、車両が停止中に駐車ブレーキスイッチ20が制動ON操作された場合に行われる。この静的制御では、駐車ブレーキスイッチ20が制動ON操作されたときに、ディスクブレーキ31に車両が停車するための制動力を発生させて保持する。また、駐車ブレーキスイッチ20が制動OFF操作されたときに、ディスクブレーキ31の制動力を解除する。
一方、動的制御は、車両が走行中に駐車ブレーキスイッチ20が制動ON操作された場合に行われる。この動的制御では、例えば駐車ブレーキスイッチ20の制動ON操作が継続されているときにはディスクブレーキ31に徐々に制動力を発生させる。また、駐車ブレーキスイッチ20の制動ON操作が停止されたときには、ディスクブレーキ31の制動力を解除する。
図3に示すように、駐車ブレーキ制御装置21には、電源ライン15からの電圧を検出する電圧センサ部24、左,右の電動モータ43B,43Bをそれぞれ駆動する左,右のモータ駆動回路25,25、左,右の電動モータ43B,43Bのそれぞれのモータ電流を検出する左,右の電流センサ部26,26等が内蔵されている。これら電圧センサ部24、モータ駆動回路25、電流センサ部26は、それぞれ演算回路22に接続されている。
これにより、駐車ブレーキ制御装置21の演算回路22では、アプライまたはリリースを行うときに、電流センサ部26,26により検出される電動モータ43Bのモータ電流の変化に基づいて、ディスクロータ4とブレーキパッド33との当接・離接の判定、電動モータ43Bの駆動の停止の判定(アプライ完了の判定、リリース完了の判定)等を行うことができる。
実施形態による4輪自動車の電動ブレーキシステムは、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、その踏力が倍力装置7を介してマスタシリンダ8に伝達され、マスタシリンダ8によってブレーキ液圧が発生する。マスタシリンダ8内で発生した液圧は、シリンダ側液圧配管10A,10B、ESC11およびブレーキ側配管部12A,12B,12C,12Dを介して各ディスクブレーキ5,31に分配され、左,右の前輪2と左,右の後輪3とにそれぞれ制動力が付与される。
このときの後輪3用のディスクブレーキ31の具体的な動作について説明する。キャリパ34のシリンダ部36内にブレーキ側配管部12C,12Dを介して液圧が供給され、シリンダ部36内の液圧上昇に従ってピストン39がインナ側のブレーキパッド33に向けて摺動的に変位する。これにより、ピストン39は、インナ側のブレーキパッド33をディスクロータ4の一側面に対して押圧する。このときの反力によって、キャリパ34全体が取付部材32の前記各腕部に対してインナ側に摺動的に変位する。
この結果、キャリパ34のアウタ脚部(爪部38)は、アウタ側のブレーキパッド33をディスクロータ4に対して押圧するように動作し、ディスクロータ4は、一対のブレーキパッド33によって軸線方向の両側から挟持される。それによって、液圧に基づく制動力が発生される。一方、ブレーキ操作が解除されたときには、シリンダ部36内への液圧供給が停止されることにより、ピストン39がシリンダ部36内へと後退するように変位する。これによって、インナ側とアウタ側のブレーキパッド33がディスクロータ4からそれぞれ離間し、車両は非制動状態に戻される。
次に、車両の停止中に、運転者が駐車ブレーキスイッチ20を制動側(オン)に操作(制動ON操作)したときには、駐車ブレーキ制御装置21からディスクブレーキ31の電動モータ43Bに給電が行われ、電動アクチュエータ43の出力軸43Cが回転駆動される。電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31は、電動アクチュエータ43の回転運動を回転直動変換機構40のねじ部材41を介して直動部材42の直線運動に変換し、直動部材42を軸線方向に移動させてピストン39を推進する。これにより、一対のブレーキパッド33がディスクロータ4の両面に対して押圧される。
このとき、直動部材42は、ピストン39から伝達される押圧反力を垂直抗力とした、ねじ部材41との間に発生する摩擦力(保持力)により制動状態に保持され、後輪3用のディスクブレーキ31は、駐車ブレーキとして作動(アプライ)される。即ち、電動モータ43Bへの給電を停止した後にも、直動部材42の雌ねじとねじ部材41の雄ねじとにより、直動部材42(ひいては、ピストン39)は制動位置に保持される。
一方、運転者が駐車ブレーキスイッチ20を制動解除側(オフ)に操作(制動OFF操作)したときには、駐車ブレーキ制御装置21から電動モータ43Bに対してモータが逆転するように給電され、電動アクチュエータ43の出力軸43Cは、駐車ブレーキの作動時(アプライ時)と逆方向に回転される。このとき、ねじ部材41と直動部材42とによる制動力の保持が解除され、回転直動変換機構40は、電動アクチュエータ43の逆回転の量に対応した移動量で直動部材42を戻り方向に、即ち、シリンダ部36内へと移動させ、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ31)の制動力を解除する。
また、駐車ブレーキの制動力が保持された停車中の車両で、運転者が例えば発進動作等の所定の動作を行うと、駐車ブレーキ制御装置21は、駐車ブレーキ(ディスクブレーキ31)の制動力を自動的に解除(オートリリース)する。
以下、駐車ブレーキ制御装置21で行われるオートリリースの制御処理について、図4を参照しつつ説明する。
なお、図4の処理は、駐車ブレーキ制御装置21に通電している間、所定時間毎に(所定の制御周期で)繰り返し実行される。また、オートリリースの制御処理は、例えば平地または発進方向に対して下り坂で車両が停止しているときに実行され、発進方向に対して上り坂では坂道発進補助制御による制動力の調整機能が実行される。即ち、車両には傾斜状態を計測する傾斜センサ(図示せず)が搭載されている。この傾斜センサの出力は、車両データバス16を介して駐車ブレーキ制御装置21に入力される。このため、駐車ブレーキ制御装置21は、傾斜センサからの信号に基づいて、車両が上り坂で停車しているか否かを判定し、上り坂以外(非上り坂)で停車しているときに、図4に示すオートリリースの制御処理を実行する。
なお、車両の傾斜状態を計測するのに、前後Gセンサ(前後方向加速度センサ)を用いてもよい。また、オートリリースは、ギヤの位置(前進、ニュートラル、後進)に応じて変更することも可能である(例えば、ギヤがニュートラルのときは平地でも制御を行わない、ギヤがニュートラルのときは上り坂でも制御を行う等)。
図4の処理動作がスタートすると、演算回路22は、S1で、車両が停車状態であるか否かを判定する。この停車状態であるか否かの判定は、例えば車両データバス16から取得した車輪速度や車速に基づいて行うことができる。
S1で「YES」、即ち車両が停車状態であると判定された場合は、S2に進む。一方、S1で「NO」、即ち車両が停車状態でない(走行状態)と判定された場合は、リターンする。
S2では、イグニッションスイッチがONか否かを判定する。S2で「YES」、即ちイグニッションスイッチがON状態でエンジンが駆動している場合には、S3に進む。一方、S2で「NO」、即ちイグニッションスイッチがOFF状態でエンジンが停止していると判定された場合には、リターンする。
S3では、クラッチが操作されているか否かを判定する。即ち、S3は、運転者によるクラッチ操作を検出するクラッチ操作検出部の具体例を示している。この判定は、例えば車両データバス16から取得したクラッチセンサ18からの信号等に基づいて行うことができる。S3で「YES」、即ちクラッチが操作されて、エンジンとトランスミッションとの間が切断されていると判定された場合は、S4に進む。一方、S3で「NO」、即ちクラッチが操作されていないと判定された場合は、リターンする。
S4では、運転者による車両の発進意志があるか否かを判定する。即ち、S4は、S3に示したクラッチ操作以外の追加情報を検知する追加確認部であり、運転者による車両の発進意志を検出する発進意志検出部の具体例を示している。この判定は、例えば車両データバス16から取得したアクセルセンサ19からの信号等に基づいて行うことができる。具体的には、アクセルセンサ19からの信号によって、アクセルペダルの踏み込み操作が検出されたときに、運転者による発進意志があるものと判定する。なお、アクセル操作に限らず、例えばトランスミッションのシフトポジションが1速と2速のいずれかの状態になったときに、発進意志があるものと判定してもよく、車両の発進に伴う運転者による各種の操作によって、発進意志の有無を判定してもよい。
S4で「YES」、即ち運転者による発進意志があると判定された場合は、S5に進む。次のS5では、車両を発進させるために、左,右両方のディスクブレーキ31を、リリース状態にする。これにより、車両の発進前に運転者による駐車ブレーキスイッチ20の制動OFF操作が行われず、ディスクブレーキ31が保持状態となっているときでも、ディスクブレーキ31は自動的にリリース状態に切り換わり、制動力が解除される。一方、S4で「NO」、即ち運転者による発進意志がないと判定された場合は、リターンする。これにより、ディスクブレーキ31の制動力は解除されずに、制動力の保持状態が継続される。
かくして、第1の実施形態によれば、駐車ブレーキ制御装置21は、車両の停車中であってブレーキパッド33の押圧力が保持されたディスクブレーキ31の保持状態では、クラッチ操作が検知され、かつ、クラッチ操作以外の追加情報を検知したときに、ブレーキパッド33の押圧力を解除するように、ディスクブレーキ31の電動アクチュエータ43を制御する。これにより、例えばクラッチストローク情報の信頼性が低く、クラッチ操作をしていないにも拘らず、クラッチが操作されたと誤認識するときでも、クラッチ操作以外の追加情報を検知しない限り、駐車ブレーキを解除しない。また、運転者が発進する意志がないにも拘らず、クラッチペダルを踏んだときも、追加情報を検知しない限り、駐車ブレーキを解除しない。このため、クラッチ操作の有無だけで駐車ブレーキを解除する場合に比べて、運転者の意図しない駐車ブレーキの解除を抑制することができる。
また、駐車ブレーキ制御装置21は、クラッチ操作に加えて、アクセル操作またはシフトポジション操作によって運転者による車両の発進意志を検出したときに、駐車ブレーキを自動的に解除する。ここで、マニュアルミッションの車両では、確実に発進意志がある場合は、クラッチを接続しながら、アクセルを踏み込む。このため、クラッチ操作とアクセル操作との両方を検知することによって、運転者の発進意志を的確に把握することができ、発進意志に応じて駐車ブレーキを自動的に解除することができる。
一方、クラッチ操作は検出されたものの、運転者によるアクセル操作等が検出されないときには、発進意志とは無関係のクラッチ操作またはクラッチ操作の誤検出の可能性がある。このため、運転者によるアクセル操作等が検出されないときには、クラッチ操作を検出したときでも、駐車ブレーキの制動力を保持する。これにより、例えば下り坂に車両が停車した状態であっても、運転者の意図に反した制動力の解除を抑制し、車両の動き出しを抑えることができる。
なお、発進意志検出部は、アクセル操作を単独で検出するだけでなく、クラッチ操作とアクセル操作とを複合的に検出してもよい。即ち、発進意志検出部は、クラッチを切断状態から接続状態に切換えるときに、アクセルペダルの踏み込み操作を検出したときに、運転者による発進意志があると判定してもよい。さらに、クラッチ操作とアクセル操作に加えて、シフトポジションが1速または2速に切り換わっているか否かも加えて、発進意志を検出してもよい。即ち、発進意志検出部は、クラッチを切断して、シフトポジションを1速または2速に切換えた後に、クラッチを接続しつつ、アクセルペダルを踏み込んだときに、運転者による発進意志があると判定してもよい。
次に、図1ないし図3、図5は、本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、追加確認部として、運転者が運転席に存在することを検出する運転者検出部を用いることにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施形態による電動ブレーキシステムでは、運転席への着座を検出する着座センサ51を備えている。着座センサ51は、例えば運転席に所定の重量が作用すると作動するスイッチや圧力センサによって構成されている。着座センサ51は、運転者が運転席に着座したか否かを検出し、その検出信号を車両データバス16に出力する。駐車ブレーキ制御装置21は、車両データバス16を介して、着座センサ51の検出信号を受信する。
なお、運転者の着座状態は、着座センサ51に限らず、例えば運転席を監視するカメラを設けると共に、このカメラの撮影画像に基づいて運転者を画像認識してもよい。
第2の実施形態では、図3に示した駐車ブレーキ制御装置21のメモリ23に、図5に示す制御処理を実行するための処理プログラム等が格納されている。第2の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置21は、図5に示すオートリリースの制御処理を実行する。
次に、第2の実施形態によるオートリリースの制御処理について、図5を参照しつつ説明する。
第2の実施形態によるオートリリースの制御処理は、図4に示した第1の実施形態のオートリリースの制御処理とほぼ同様である。但し、図4中のS4の処理に代えて、S11の処理を実行する点で、第1の実施形態とは異なる。
S11では、運転者が運転席に存在しているか否かを判定する。即ち、S11は、クラッチ操作以外の追加情報を検知する追加確認部であり、運転者が運転席に存在することを検出する運転者検出部の具体例を示している。この判定は、例えば車両データバス16から取得した着座センサ51からの信号等に基づいて行うことができる。具体的には、着座センサ51からの信号によって、運転席に所定の重量が作用したと検出されたときに、運転者が着座状態にあるものと判定する。
なお、運転者の着座状態に限らず、運転席のシートベルトの装着状態によって、運転者が運転席に存在するか否かを判定してもよい。この場合、例えば運転席のシートベルトがロックされたときに、運転者が運転席に存在するものと判定する。また、赤外線や超音波を用いた人感センサによって、運転者が運転席に存在するか否かを判定してもよい。
S11で「YES」、即ち運転者が運転席に存在していると判定された場合は、S5に進む。次のS5では、車両を発進させるために、左,右両方のディスクブレーキ31を、リリース状態にする。一方、S11で「NO」、即ち運転者が運転席に存在しないと判定された場合は、リターンする。
かくして、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、駐車ブレーキ制御装置21は、クラッチ操作に加えて、運転者の着座状態または運転席のシートベルトの装着状態によって、運転者が運転席に存在していることを検出したときに、駐車ブレーキを自動的に解除する。このため、仮に駐車ブレーキの自動解除によって運転者の意志に反して車両が動き出すときでも、運転者がブレーキペダル6を踏んで車両の動き出しに対処することができる。
なお、上述した各実施形態では、駐車ブレーキ制御装置21は、クラッチ操作に加えて、単一の追加確認部による検知結果に基づいて、駐車ブレーキの自動解除を行うものとした。しかし、これに限らず、駐車ブレーキ制御装置21は、クラッチ操作に加えて、複数の追加確認部による検知結果に基づいて、駐車ブレーキの自動解除を行う構成としてもよい。このため、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、駐車ブレーキ制御装置は、クラッチ操作に加えて、発進意志検出部によって運転者による車両の発進意志が検知され、かつ、運転者検出部によって運転者が運転席に存在することを検出したときに、駐車ブレーキを自動解除してもよい。
上述した各実施形態では、左,右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキ31とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、左,右の前輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキとしてもよく、全ての車輪(4輪全て)のブレーキを電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成してもよい。即ち、車両の少なくとも一対の車輪のブレーキを、電動駐車ブレーキ機能付のディスクブレーキにより構成することができる。
上述した各実施形態では、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ31を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば液圧の供給が不要の電動式ディスクブレーキにより構成してもよい。また、ディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、例えば、ドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよいものである。さらに、例えば、ディスクブレーキにドラム式の電動駐車ブレーキを設けたドラムインディスクブレーキによりブレーキ装置を構成してもよく、電動モータでケーブルを引っ張ることにより駐車ブレーキの保持を行うブレーキ装置でもよく、ブレーキ装置は各種のものを採用することができる。この場合に、例えば、液圧の供給が不要な電動式のブレーキ機構を採用した場合は、制御装置は、車両に制動力を常用ブレーキとして与える(ブレーキペダルの操作等によるアプライ要求に基づいて電動モータを駆動する)構成とすることができる。
2 前輪(車輪)
3 後輪(車輪)
4 ディスクロータ(回転部材)
6 ブレーキペダル
18 クラッチセンサ
19 アクセルセンサ
20 駐車ブレーキスイッチ
21 駐車ブレーキ制御装置(制御装置)
31 ディスクブレーキ(ブレーキ装置)
33 ブレーキパッド(摩擦部材)
39 ピストン
43 電動アクチュエータ(電動機構)
51 着座センサ
3 後輪(車輪)
4 ディスクロータ(回転部材)
6 ブレーキペダル
18 クラッチセンサ
19 アクセルセンサ
20 駐車ブレーキスイッチ
21 駐車ブレーキ制御装置(制御装置)
31 ディスクブレーキ(ブレーキ装置)
33 ブレーキパッド(摩擦部材)
39 ピストン
43 電動アクチュエータ(電動機構)
51 着座センサ
Claims (5)
- 電動機構によって、車輪と共に回転する回転部材に摩擦部材を押圧し、該摩擦部材の押圧力の保持が可能なブレーキ装置と、
前記電動機構を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
車両の停車中であって前記摩擦部材の押圧力が保持された状態では、クラッチ操作が検知され、かつ、追加確認部によって前記クラッチ操作以外の追加情報を検知したときに、前記摩擦部材の押圧力を解除するように、前記ブレーキ装置の電動機構を制御することを特徴とする電動ブレーキシステム。 - 前記追加確認部は、運転者による車両の発進意志を検出する発進意志検出部である請求項1に記載の電動ブレーキシステム。
- 前記発進意志検出部は、アクセル操作またはシフトポジション操作を検出してなる請求項2に記載の電動ブレーキシステム。
- 前記追加確認部は、運転者が運転席に存在することを検出する運転者検出部である請求項1に記載の電動ブレーキシステム。
- 前記運転者検出部は、前記運転席の着座状態または前記運転席のシートベルトの装着状態を検出してなる請求項4に記載の電動ブレーキシステム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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