以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による非接触電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、この非接触電力伝送システム1は、送電装置10と、受電装置20とを備える。受電装置20は、たとえば、送電装置10から供給され蓄えられた電力を用いて走行可能な車両等に搭載され得る。
送電装置10は、力率改善(PFC(Power Factor Correction))回路210と、インバータ220と、フィルタ回路230と、送電部240とを含む。また、送電装置10は、電源ECU(Electronic Control Unit)250と、通信部260と、電圧センサ270と、電流センサ272,274とをさらに含む。
PFC回路210は、交流電源100(たとえば系統電源)から受ける交流電力を整流及び昇圧してインバータ220へ供給するとともに、入力電流を正弦波に近づけることで力率を改善することができる。このPFC回路210には、公知の種々のPFC回路を採用し得る。なお、PFC回路210に代えて、力率改善機能を有しない整流器を採用してもよい。
インバータ220は、PFC回路210から受ける直流電力を、所定の伝送周波数を有する送電電力(交流)に変換する。インバータ220によって生成された送電電力は、フィルタ回路230を通じて送電部240へ供給される。インバータ220は、電圧形インバータであり、インバータ220を構成する各スイッチング素子に逆並列に還流ダイオードが接続されている。インバータ220は、たとえば単相フルブリッジ回路によって構成される。
フィルタ回路230は、インバータ220と送電部240との間に設けられ、インバータ220から発生する高調波ノイズを抑制する。フィルタ回路230は、たとえば、インダクタ及びキャパシタを含むLCフィルタによって構成される。
送電部240は、伝送周波数を有する交流電力(送電電力)をインバータ220からフィルタ回路230を通じて受け、送電部240の周囲に生成される磁界を通じて、受電装置20の受電部310へ非接触で送電する。送電部240は、受電部310へ非接触で送電するための共振回路を含む。共振回路は、コイルとキャパシタとによって構成される(後述)。
電圧センサ270は、インバータ220の出力電圧Voを検出し、その検出値を電源ECU250へ出力する。電流センサ272は、インバータ220の出力電流Ioを検出し、その検出値を電源ECU250へ出力する。電圧センサ270及び電流センサ272の検出値に基づいて、インバータ220から送電部240へ供給される送電電力(すなわち、送電部240から受電装置20へ出力される電力)を検出することができる。なお、PFC回路210とインバータ220との間の直流ラインにおいて電圧及び電流を検出することにより送電電力を検出してもよい。電流センサ274は、送電部240を流れる電流I1を検出し、その検出値を電源ECU250へ出力する。
電源ECU250は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、各種センサや機器からの信号を受けるとともに、送電装置10における各種機器の制御を行なう。一例として、電源ECU250は、送電装置10から受電装置20への電力伝送の実行時に、インバータ220が送電電力(交流)を生成するようにインバータ220のスイッチング制御を行なう。各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
電源ECU250により実行される主要な制御として、電源ECU250は、送電装置10から受電装置20への電力伝送の実行時に、送電電力を目標に一致させるための制御(以下「送電電力制御」とも称する。)を実行する。この実施の形態1では、電源ECU250は、インバータ220の出力電圧のデューティ(duty)を調整することによって、送電電力を目標電力に制御する。なお、出力電圧のデューティとは、出力電圧波形(矩形波)の周期に対する正(又は負)の電圧出力時間の比として定義される。インバータ220のスイッチング素子(オン/オフデューティ0.5)の動作タイミングを変化させることによって、インバータ出力電圧のデューティを調整することができる。送電電力の目標電力は、受電装置20の受電状況に基づいて生成され得る。この実施の形態1では、受電装置20において、受電電力の目標値と検出値との偏差に基づいて送電電力の目標電力が生成され、受電装置20から送電装置10へ送信される。
また、電源ECU250は、送電電力が一定の下で送電部240に含まれる送電コイル(後述)に流れる電流I1を最小にするための制御(以下「送電コイル電流最小制御」とも称する。)を実行する。詳細については後述するが、電力が一定の状態において、送電コイルに流れる電流が小さいほど、送電部240(送電コイル)と受電部310(受電コイル)との間の電力伝送効率は高くなる。そこで、電源ECU250は、送電電力制御を実行しつつ、送電コイルに流れる電流I1が最小となるようにインバータ220の駆動周波数(インバータ220のスイッチング周波数であり、送電電力の周波数でもある。)を調整する。なお、電源ECU250は、インバータ220の駆動周波数すなわち送電電力の周波数を所定の周波数帯(規格等によって定められ得る。)において調整可能であり、この周波数帯を外れて周波数を調整することはしない。
さらに、電源ECU250は、送電コイル電流最小制御において、送電部240の送電コイルに流れる電流I1が最小となる周波数を示す最適周波数を算出する所定の理論式を用いて、インバータ220の駆動周波数(送電電力の周波数)を上記理論式から算出される最適周波数に調整するための制御を実行する。そして、電源ECU250は、その理論式による最適周波数の推定精度を高めるために、送電コイル電流最小制御(及び送電電力制御)が実行される前に、受電装置20の受電部310を構成する共振回路(後述)の共振周波数を推定する。すなわち、最適周波数を算出する所定の理論式には、上記の共振周波数がパラメータとして含まれるところ、電源ECU250により共振周波数が推定され、その推定された共振周波数が上記の理論式に用いられる。最適周波数を算出する理論式、及び共振周波数の推定手法については、後ほど詳しく説明する。
通信部260は、受電装置20の通信部370と無線通信するように構成され、受電装置20から送信される送電電力の目標値(目標電力)を受信するほか、送電の開始/停止や受電装置20の受電状況等の情報を受電装置20とやり取りする。
一方、受電装置20は、受電部310と、電気負荷390と、短絡回路316と、電流センサ384と、充電ECU360と、通信部370とを含む。
受電部310は、送電装置10の送電部240から出力される電力(交流)を、送電部240との間に生成される磁界を通じて非接触で受電する。受電部310は、送電部240から非接触で受電するための共振回路を含む。共振回路は、コイルとキャパシタとによって構成される(後述)。そして、受電部310は、受電した電力を電気負荷390へ出力する。
電気負荷390は、受電部310によって受電される電力を受ける。電気負荷390は、フィルタ回路320と、整流部330と、リレー回路340と、蓄電装置350と、電圧センサ380と、電流センサ382とを含む。
フィルタ回路320は、受電部310と整流部330との間に設けられ、受電時に発生する高調波ノイズを抑制する。フィルタ回路320は、インダクタ及びキャパシタを含むLCフィルタによって構成される。整流部330は、受電部310によって受電された交流電力を整流して蓄電装置350へ出力する。
蓄電装置350は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池によって構成される。蓄電装置350は、整流部330から出力される電力を蓄える。そして、蓄電装置350は、その蓄えられた電力を図示しない負荷駆動装置等へ供給する。なお、蓄電装置350として大容量のキャパシタも採用可能である。
リレー回路340は、整流部330と蓄電装置350との間に設けられ、送電装置10による蓄電装置350の充電時にオンされる。なお、特に図示しないが、整流部330と蓄電装置350との間(たとえば、整流部330とリレー回路340との間)に、整流部330の出力電圧を調整するDC/DCコンバータを設けてもよい。
電圧センサ380は、整流部330の出力電圧(受電電圧)を検出し、その検出値を充電ECU360へ出力する。電流センサ382は、整流部330からの出力電流(受電電流)を検出し、その検出値を充電ECU360へ出力する。電圧センサ380及び電流センサ382の検出値に基づいて、受電部310による受電電力(蓄電装置350の充電電力)を検出することができる。なお、受電電力の検出については、受電部310とフィルタ回路320との間の電力線、又はフィルタ回路320と整流部330との間の電力線において、電圧及び電流を検出することにより受電電力を検出してもよい。
短絡回路316は、受電部310と電気負荷390との間に設けられ、受電部310と電気負荷390との間の電力線対を短絡可能に構成される。短絡回路316は、充電ECU360から駆動信号を受けると、受電部310と電気負荷390との間の電力線対を短絡する。後述のように、送電装置10による蓄電装置350の充電前に受電部310の共振回路の共振周波数が推定される際に、短絡回路316は、充電ECU360からの駆動信号に応答して受電部310と電気負荷390との間の電力線対を短絡する。短絡回路316は、たとえばリレーによって構成される。
電流センサ384は、受電部310に流れる電流I2を検出し、その検出値を充電ECU360へ出力する。この電流センサ384は、短絡回路316の作動時にも受電部310に流れる電流I2を検出できるように、短絡回路316よりも受電部310側に設けられる。
充電ECU360は、CPU、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、各種センサや機器からの信号を受けるとともに、受電装置20における各種機器の制御を行なう。各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
充電ECU360により実行される主要な制御として、充電ECU360は、送電装置10による蓄電装置350の充電中に、受電装置20における受電電力が所望の目標値となるように、送電装置10における送電電力の目標値(目標電力)を生成する。具体的には、充電ECU360は、受電電力の検出値と目標値との偏差に基づいて、送電装置10における送電電力の目標値を生成する。そして、充電ECU360は、生成された送電電力の目標値(目標電力)を通信部370によって送電装置10へ送信する。
また、送電装置10の電源ECU250において、受電部310を構成する共振回路の共振周波数の推定が行なわれるとき、充電ECU360は、短絡回路316へ駆動信号を出力する。後ほど詳しく説明するが、受電部310と電気負荷390との間の電力線対を短絡回路316によって短絡することにより電気負荷390のインピーダンスを略0とみることができ、この場合に、送電装置10の送電部240に流れる電流I1が最小となる周波数を上記共振回路の共振周波数として推定することができる。
通信部370は、送電装置10の通信部260と無線通信するように構成され、充電ECU360において生成される送電電力の目標値(目標電力)を送電装置10へ送信するほか、電力伝送の開始/停止に関する情報を送電装置10とやり取りしたり、受電装置20の受電状況(受電電圧や受電電流、受電電力等)を送電装置10へ送信したりする。
この非接触電力伝送システム1においては、インバータ220から送電部240へ送電電力(交流)が供給される。送電部240及び受電部310の各々は、コイルとキャパシタとを含み、伝送周波数において共振するように設計されている。送電部240及び受電部310の共振強度を示すQ値は、100以上であることが好ましい。
送電装置10において、インバータ220から送電部240へ送電電力が供給されると、送電部240の送電コイルと受電部310の受電コイルとの間に形成される磁界を通じて、送電部240から受電部310へエネルギー(電力)が移動する。受電部310へ移動したエネルギー(電力)は、電気負荷390へ供給され、蓄電装置350が充電される。
図2は、図1に示した送電部240及び受電部310の構成を説明する回路図である。図2を参照して、送電部240は、送電コイル242と、キャパシタ244とを含む。キャパシタ244は、送電電力の力率を補償するために設けられ、送電コイル242に直列に接続される。なお、この回路図では、送電装置10において、インバータ220と送電部240との間のフィルタ回路230(図1)の図示は省略されている。
受電部310は、受電コイル312と、キャパシタ314とを含む。キャパシタ314は、受電電力の力率を補償するために設けられ、受電コイル312に直列に接続される。なお、受電コイル312のインダクタンスはL2であり、キャパシタ314のキャパシタンスはC2であるものとする。
インピーダンス395は、電気負荷390(図1)の等価インピーダンスを示し、そのインピーダンス値はRLであるものとする。すなわち、インピーダンス395は、受電部310以降の負荷インピーダンスである(以下では、電気負荷390の等価インピーダンスRLを「負荷インピーダンスRL」とも称する。)。なお、この負荷インピーダンスRLは、電気負荷390の回路構成、電気負荷390が受ける電力(受電電力)、及び電気負荷390に含まれる蓄電装置350(図1)の電圧(電気負荷390の電圧は蓄電装置350によって拘束される。)から算出することができる。そして、受電部310と電気負荷390との間に短絡回路316が設けられている。
このような回路構成において、送電コイル242と受電コイル312との間の電力伝送効率ηは、次式にて表される。
ここで、I1は送電コイル242に流れる電流を示し、I2は受電コイル312に流れる電流を示す。また、r1は送電コイル242の巻線抵抗を示し、r2は受電コイル312の巻線抵抗を示す。電気負荷390の電圧は、蓄電装置350(図1)によって拘束されるので、受電電力一定の下では、電流I2及び負荷インピーダンスRLは略一定となる。したがって、式(1)から、電力伝送効率ηは電流I1の2乗に反比例することが分かる。すなわち、送電コイル242に流れる電流I1が小さいほど、電力伝送効率ηは高くなる。
一方、図2に示した回路図から、送電コイル242に流れる電流I1と、受電コイル312に流れる電流I2とには、以下の関係が成り立つ。
ここで、ωは、電流I1の周波数(インバータ220の駆動周波数であり、送電電力の周波数でもある。)を示す。Mは、送電コイル242と受電コイル312との相互インピーダンスを示す。上述のように、受電電力一定の下では電流I2及び負荷インピーダンスRLは略一定であるから、この式(2)は、周波数ωと電流I1との関数を示すものとみることができる。そこで、式(2)を周波数ωの関数として式(2)の導関数を算出し、算出された導関数を用いて、電流I1が最小(極小)となる周波数ωを示す最適周波数ωopを次式にて求めることができる。
なお、受電コイル312(インダクタンスL2)とキャパシタ314(キャパシタンスC2)とによって構成される共振回路の共振周波数ωcは、ωc=1/√(L2・C2)と表せるので、上記の式(3)は、共振周波数ωcを用いて以下のように表すことができる。
したがって、送電電力の周波数ω(インバータ220の駆動周波数)を、式(4)で示される最適周波数ωopに調整することによって、送電コイル242に流れる電流I1は最小となり、送電コイル242と受電コイル312との間の電力伝送効率η(式(1))を高めることができる。
送電コイル242に流れる電流I1の検出値を用いるフィードバック制御により、電流I1が実際に最小となる最適周波数を探索することは可能であるが、フィードバック制御では、最適周波数の探索に時間がかかる可能性がある。上記の式(4)を用いて最適周波数ωopを予め推定することができれば、電流I1が最小となる動作点に早期に到達することができる。しかしながら、式(4)に用いられるパラメータ(特に共振周波数ωc)の精度が悪いと、推定される最適周波数ωopの精度も悪くなってしまう。
そこで、この実施の形態1に従う非接触電力伝送システム1においては、共振周波数ωc(受電コイル312とキャパシタ314とによって構成される共振回路の共振周波数)が推定される。具体的には、最適周波数ωopを用いた送電コイル電流最小制御や送電電力制御の実行前(送電装置10により蓄電装置350の充電が開始される前)に、送電装置10から受電装置20へ一定の小電力を出力するとともに、受電装置20において短絡回路316を作動させる。そして、その状態で、送電電力の周波数を制御可能範囲において走査し、送電コイル242に流れる電流I1が最小となる周波数ωeを検出する。詳細には、電力一定の下では周波数ωと電流I1との関数を示す式(2)に基づいて、|I1/I2|2の値が最小となる周波数ωeが検出される。
図3は、電力一定の下で送電電力の周波数を制御可能範囲において走査したときの|I1/I2|2の変化を示した図である。なお、受電装置20において、短絡回路316により受電部310の出力は短絡されている。図3を参照して、横軸は送電電力の周波数を示し、縦軸は|I1/I2|2の値を示す。周波数ω1,ω2は、規格等によって定められ得る制御可能範囲の上下限値を示し、送電電力の周波数(インバータ220の駆動周波数)は、ω1以上ω2以下の範囲内で調整可能である。
|I1/I2|2の値は、周波数ωeにおいて略0の最小値となり、この周波数ωeは、受電コイル312とキャパシタ314とによって構成される共振回路の共振周波数ωcとなる。この点について上記の式(2)を参照して説明すると、短絡回路316によって受電部310の出力が短絡された状態では、式(2)において電気負荷390のインピーダンスRLを0とすることができる。また、受電コイル312の巻線抵抗r2も、その値は無視できるほど小さい。そうすると、受電部310の出力が短絡された状態では、|I1/I2|2の値が最小となる周波数ωeは、ω・L2−1/(ω・C2)が0となる周波数すなわちω=√(L2・C2)であり、これは共振周波数ωcであることが分かる。
そして、この実施の形態1に従う非接触電力伝送システム1においては、上記のようにして推定された共振周波数ωcが式(4)に用いられる。すなわち、この実施の形態1によれば、推定された共振周波数ωcを式(4)に用いることによって最適周波数ωopが算出されるので、式(4)において共振周波数ωcに設計値を用いる場合に比べて最適周波数ωopの推定精度が向上する。
図4は、図1に示した電源ECU250により実行される周波数制御及び送電電力制御の制御ブロック図である。図4を参照して、電源ECU250は、コントローラ420,430と、最適周波数算出部440と、演算部450とを含む。
コントローラ420は、送電電力の目標値を示す目標電力Psrと送電電力Psとの偏差に基づいて、インバータ220の出力電圧のデューティ指令値を生成する。コントローラ420は、たとえば、目標電力Psrと送電電力Psとの偏差を入力とするPI制御(比例積分制御)等を実行することによって操作量を算出し、その算出された操作量をデューティ指令値とする。これにより、送電電力Psが目標電力Psrに近づくように出力電圧のデューティが調整され、送電電力Psが目標電力Psrに制御される。
最適周波数算出部440は、上記の式(4)を用いて、送電コイル242に流れる電流I1が最小となる周波数ωを示す最適周波数ωopを算出し、算出された最適周波数ωopを演算部450へ出力する。なお、式(4)において、負荷インピーダンスRLは、電気負荷390(図1)の回路構成、蓄電装置350の電圧(略一定)、及び電気負荷390の受電電力Pcから算出することができる。
コントローラ430は、電流I1の検出値に基づいて、電流I1が最小となるようにインバータ220の駆動周波数の指令値を調整する。コントローラ430には、たとえば、公知の極値探索フィードバック制御を適用することができる。一例として、電流I1の検出値をハイパスフィルタを通過させて直流成分を除去した値に振動信号を乗算し、その後ローパスフィルタを通過させて得られる直流成分を積分し、その積分値に上記振動信号を加算して得られる値を周波数のフィードバック指令値とすることができる。
演算部450は、最適周波数算出部440によって算出される最適周波数ωopに、コントローラ430からのフィードバック指令値を加算し、その加算値をインバータ220の駆動周波数の指令値とする。これにより、電流I1が最小となるようにインバータ220の駆動周波数ωが調整され、電流I1は最小値に制御される。
なお、最適周波数算出部440とコントローラ430との機能分担については、最適周波数算出部440が式(4)に基づくフィードフォワード制御であるのに対し、コントローラ430は電流I1の検出値に基づくフィードバック制御である。そして、最適周波数算出部440によって算出される最適周波数ωopの推定精度は、上述のように式(4)に共振周波数ωcの推定値を用いることによって高められる一方で、それでも最終的に残る推定誤差をコントローラ430によるフィードバック制御で補償する。最適周波数算出部440によって算出される最適周波数ωopの推定精度が高められることで、コントローラ430のフィードバック制御による真の最適周波数の探索時間を十分に短縮することができる。
図5は、電源ECU250により実行される最適周波数推定処理の手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、送電装置10による蓄電装置350(図1)の充電が開始される前、すなわち図4に示した周波数制御及び送電電力制御が作動する前に実行される。一例として、このフローチャートに示される処理は、受電部310と送電部240との位置合わせの終了後、送電装置10による蓄電装置350の充電が開始される前に実行される。
図5を参照して、電源ECU250は、インバータ220が一定の小電力を出力するようにインバータ220を制御する(ステップS10)。なお、この小電力の大きさは、受電部310において受電電力を検出可能であり、かつ、送電装置10において過電流が生じないレベルに設定される。また、この時点では、小電力の周波数(インバータ220の駆動周波数)は、制御可能範囲(図3に示したω1以上ω2以下)であれば任意であり、たとえば最小周波数のω1に設定される。
次いで、電源ECU250は、受電装置20の短絡回路316(図1)の作動(リレーオン)を指示する指令を通信部260を通じて受電装置20へ送信する(ステップS20)。そして、短絡回路316の作動が確認されると(ステップS30においてYES)、電源ECU250は、最適周波数算出部440(図4)において用いられる共振周波数ωcを推定するために、周波数走査処理を実行する(ステップS40)。具体的には、電源ECU250は、インバータ220の駆動周波数を制御可能範囲(図3のω1以上ω2以下)において走査し、各周波数における|I1/I2|2の値を検出する。なお、電流I2については、受電装置20において検出されるので、電源ECU250は、電流I2の検出値を受電装置20から通信部260を通じて受信する。
そして、電源ECU250は、|I1/I2|2の値が最小(極小)となる周波数ωeを共振周波数ωcとして推定する(ステップS50)。受電装置20において短絡回路316により受電部310の出力が短絡された状態では、上述のように、周波数ωeは共振周波数ωcとして推定可能である。
周波数走査処理が実行され、共振周波数ωcが推定されると、電源ECU250は、推定された共振周波数ωcを式(4)に代入し、最適周波数算出部440における最適周波数ωop(フィードフォワード制御項)を算出する(ステップS60)。その後、電源ECU250は、受電装置20の短絡回路316の停止(リレーオフ)を指示する指令を通信部260を通じて受電装置20へ送信する(ステップS70)。そして、短絡回路316の停止が確認されると(ステップS80においてYES)、電源ECU250は、送電装置10による蓄電装置350の充電を実行する充電処理を開始する(ステップS90)。そして、充電処理の開始とともに、図4に示した周波数制御及び送電電力制御が作動する。
以上のように、この実施の形態1においては、受電装置20に設けられた短絡回路316によって電力線対が短絡された状態で、送電電力の周波数が制御可能範囲において走査され、送電コイル242に流れる電流I1が最小となる周波数ωeが検出される。短絡回路316によって受電部310の出力を短絡することにより、電気負荷390のインピーダンスRLを略0とみることができるので、この場合に、電流I1が最小となる周波数ωeを共振周波数ωcとして推定することができる。そして、この実施の形態1によれば、推定された共振周波数ωcを上記の式(4)に用いることによって最適周波数ωopが算出されるので、共振周波数ωcに設計値を用いる場合に比べて最適周波数ωopの推定精度が向上する。
[実施の形態2]
上記の実施の形態1では、共振周波数ωcを推定する際に受電装置20において電力線対を短絡する短絡回路316は、受電部310と電気負荷390との間、具体的には受電部310とフィルタ回路320との間に設けられるものとしたが、そのような短絡回路は、フィルタ回路320と整流部330との間に設けられてもよい。
すなわち、送電装置から非接触で受電する受電装置においては、受電中に蓄電装置の充電電圧について過電圧が検出された場合に、フィルタ回路と整流部との間に設けられるクローバー回路(短絡回路)によって電力線対を短絡させることが行なわれ得る。クローバー回路を作動させると、送電装置からみた受電装置側のインピーダンスが低下し、その結果、送電装置における電流が急激に増加する。送電装置では、この電流の急増を検知することによって、受電装置において過電圧が生じたことを検知することができる。
そして、この実施の形態2は、このようなクローバー回路(短絡回路)を利用して、実施の形態1と同様に共振周波数ωcを推定するものである。
図6は、実施の形態2による非接触電力伝送システムの全体構成図である。図6を参照して、この非接触電力伝送システム1#は、送電装置10#と、受電装置20#とを備える。
送電装置10#は、図1に示した送電装置10の構成において、電源ECU250に代えて電源ECU250#を含む。この電源ECU250#は、実施の形態1における電源ECU250と基本的に同様の機能を有するが、最適周波数推定処理の手順が電源ECU250と異なる。この点については、後ほど詳しく説明する。
受電装置20#は、図1に示した受電装置20の構成において、短絡回路316及び電流センサ384に代えてそれぞれクローバー回路326及び電流センサ386を含む。なお、この受電装置20#においては、フィルタ回路320は電気負荷に含めておらず、電気負荷390#は、整流部330と、リレー回路340と、蓄電装置350と、電圧センサ380と、電流センサ382とを含むものとする。
クローバー回路326は、フィルタ回路320と電気負荷390#との間に設けられ、フィルタ回路320と電気負荷390#との間の電力線対を短絡可能に構成される。クローバー回路326は、充電ECU360から駆動信号を受けると、フィルタ回路320と電気負荷390#との間の電力線対を短絡する。送電装置10#による蓄電装置350の充電前に受電部310の共振周波数ωcの推定が行なわれる際に、クローバー回路326は、充電ECU360からの駆動信号に応答してフィルタ回路320と電気負荷390#との間の電力線対を短絡する。クローバー回路326も、実施の形態1における短絡回路316と同様に、たとえばリレーによって構成される。
電流センサ386は、受電部310に流れる電流I2をフィルタ回路320の出側で検出し、その検出値を充電ECU360へ出力する。この電流センサ386は、クローバー回路326の作動時にも受電部310に流れる電流I2を検出できるように、クローバー回路326よりもフィルタ回路320側に設けられる。なお、電流センサ386は、受電部310とフィルタ回路320との間の電力線に設けられてもよい。
図7は、図6に示した送電部240及び受電部310並びに受電装置20#のフィルタ回路320の構成を説明する回路図である。図7を参照して、フィルタ回路320は、コイル322と、キャパシタ324とを含む。このフィルタ回路320は、受電電力の周波数(送電電力の周波数)よりも高周波の遮断周波数を有するLCフィルタである。なお、ここでは、フィルタ回路320は二次のLCフィルタによって構成されているが、三次以上のLCフィルタによってフィルタ回路320を構成してもよい。
インピーダンス397は、電気負荷390#(図6)の等価インピーダンスを示し、そのインピーダンス値はRL#であるものとする。すなわち、インピーダンス397は、フィルタ回路320以降の負荷インピーダンスである(以下では、電気負荷390#の等価インピーダンスRL#を「負荷インピーダンスRL#」とも称する。)。なお、この負荷インピーダンスRL#は、電気負荷390#の回路構成、電気負荷390#が受ける電力(受電電力)、及び電気負荷390#に含まれる蓄電装置350(図6)の電圧(電気負荷390#の電圧は蓄電装置350によって拘束される。)から算出することができる。そして、フィルタ回路320と電気負荷390#との間にクローバー回路326が設けられている。
このような回路構成においては、送電コイル242に流れる電流I1と、受電コイル312に流れる電流I2とには、以下の関係が成り立つ。
ここで、XLは、フィルタ回路320のインピーダンス(虚数成分)を示す。この式(5)は、実施の形態1における式(2)に対応するものである。式(5)を参照すると、クローバー回路326によってフィルタ回路320の出力側が短絡された状態では、式(5)において電気負荷390#のインピーダンスRL#を0とすることができる。受電コイル312の巻線抵抗r2も、その値は無視できるほど小さい。しかしながら、式(5)はフィルタ回路320のインピーダンス(虚数成分)XLを含むので、|I1/I2|2の値が最小となる周波数ωeと共振周波数ωcとには、XL項の影響によるズレが生じる。
そこで、この実施の形態2では、周波数走査によって|I1/I2|2の値が最小となる周波数ωeを検出し、その周波数ωeを補正することによって共振周波数ωcが推定される。補正量は、たとえばフィルタ回路320によって決まる定数とすることができ、フィルタ回路の構成に応じて予め求めておくことができる。
そして、上記のようにして推定された共振周波数ωcが上記の式(4)に用いられる。したがって、この実施の形態2によっても、推定された共振周波数ωcを式(4)に用いることによって最適周波数ωopが算出されるので、式(4)において共振周波数ωcに設計値を用いる場合に比べて最適周波数ωopの推定精度が向上する。
図8は、実施の形態2における電源ECU250#により実行される最適周波数推定処理の手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理も、送電装置10#による蓄電装置350(図6)の充電が開始される前に実行される。
図8を参照して、電源ECU250#は、インバータ220が一定の小電力を出力するようにインバータ220を制御する(ステップS110)。この処理は、図5に示したステップS10において実行される処理と同じである。
次いで、電源ECU250#は、受電装置20#のクローバー回路326(図6)の作動(リレーオン)を指示する指令を通信部260を通じて受電装置20#へ送信する(ステップS120)。そして、クローバー回路326の作動が確認されると(ステップS130においてYES)、電源ECU250#は、周波数走査処理を実行する(ステップS140)。この周波数走査処理は、図5に示したステップS40において実行される処理と同じであり、インバータ220の駆動周波数が制御可能範囲において走査され、各周波数における|I1/I2|2の値が検出される。
周波数走査処理において、電源ECU250#は、|I1/I2|2の値が最小(極小)となる周波数ωeを検出する(ステップS152)。そして、電源ECU250#は、受電装置20#のフィルタ回路320の情報を取得し(ステップS154)、その取得した情報に基づいて周波数ωeを補正する(ステップS156)。この周波数ωeの補正は、上述のように、フィルタ回路320のインピーダンス(虚数成分)XLの影響を補正するものであり、補正量は、たとえば、フィルタ回路320に応じて予め求められた定数とすることができる。そして、電源ECU250#は、ステップS156において補正された周波数ωeを共振周波数ωcとして推定する(ステップS158)。
周波数走査処理が実行され、共振周波数ωcが推定されると、電源ECU250#は、推定された共振周波数ωcを式(4)に代入し、最適周波数算出部440(図4)における最適周波数ωop(フィードフォワード制御項)を算出する(ステップS160)。その後、電源ECU250#は、受電装置20#のクローバー回路326の停止(リレーオフ)を指示する指令を通信部260を通じて受電装置20#へ送信する(ステップS170)。そして、クローバー回路326の停止が確認されると(ステップS180においてYES)、電源ECU250#は、送電装置10#による蓄電装置350の充電を実行する充電処理を開始する(ステップS190)。
以上のように、この実施の形態2においては、受電装置20#に設けられたクローバー回路326を用いることによって共振周波数ωcが推定される。そして、推定された共振周波数ωcを上記の式(4)に用いることによって最適周波数ωopが算出されるので、この実施の形態2によれば、共振周波数ωcに設計値を用いる場合に比べて最適周波数ωopの推定精度が向上する。
なお、上記において、インバータ220は、この発明における「電源部」の一実施例に対応し、電源ECU250,250#は、この発明における「制御部」の一実施例に対応する。また、短絡回路316又はクローバー回路326は、この発明における「短絡回路」の一実施例に対応する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。