JP6402675B2 - 塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル - Google Patents
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Description
フタロシアニンブルーは、高価な有機顔料であるため、低添加での色相調整が望まれる。しかし、塩化ビニル樹脂100質量部に対して添加量が0.1質量部以下で調色したものを日光や蛍光灯直下に晒すと部分的に空色発色度が低下(白色化)する現象が発生し、付設景観を損ねる問題があった。
群青は、日光や蛍光灯直下にさらしても、発色度の低下は軽微であるものの、酸にさらすと硫化水素を発生し、発色度が低下する問題があった。
[2]前記(F)フタロシアニンブルーの含量が前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以下であり、前記(F)フタロシアニンブルーに対する前記(E)酸化チタンの含有質量比(E/F)が50以上である前記[1]に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[3]前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(A)ステアリン酸亜鉛の含有割合が20〜60質量%である[1]又は[2]に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[4]前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(B)イソシアヌレート化合物の含有割合が1〜10質量%である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[5]前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有割合が0.1〜5質量%である[1]〜[4]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[6]前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(D)0.95〜1.1g/cm 3 である高密度酸化ポリエチレンワックスの含有割合が0.1〜5質量%である[1]〜[5]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[7]導体と、前記導体の外周に被覆された、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えた絶縁電線。
[8][1]〜[6]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブル。
[2]前記(F)フタロシアニンブルーの含量が前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以下であり、前記(F)フタロシアニンブルーに対する前記(E)酸化チタンの含有質量比(E/F)が50以上である前記[1]に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[3]前記(A)脂肪酸金属塩は、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸マグネシウム塩、及び脂肪酸アルミニウム塩から選ばれる1つ以上である前記[1]又は前記[2]に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[4]前記(A)脂肪酸金属塩は、(A1)脂肪酸亜鉛塩及び(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩であり、前記(A2)脂肪酸亜鉛塩以外の脂肪酸金属塩に対する前記(A1)脂肪酸亜鉛塩の含有質量比(A1/A2)が4〜9である前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[5]前記(A)〜(F)の合計含量に対する前記(A)脂肪酸金属塩の含有割合が20〜60質量%である前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[6]前記(A)〜(F)の合計含量に対する前記(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体の含有割合が1〜10質量%である前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[7]前記(A)〜(F)の合計含量に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有割合が0.1〜5質量%である前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[8]前記(A)〜(F)の合計含量に対する前記(D)高密度酸化ポリエチレンワックスの含有割合が0.1〜5質量%である前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
[9]導体と、前記導体の外周に被覆された、前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えた絶縁電線。
[10]前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブル。
鉛を含有しない塩化ビニル樹脂組成物の熱劣化や光劣化に対する安定剤としては、カルシウム/亜鉛系安定剤が用いられる。カルシウム/亜鉛系安定剤は、下表1の通り、各種の役割からなる材料の混合物である。
シート形状にした塩化ビニル樹脂組成物を用いて、加熱プレス機にて0.5mmtとしたシート片を各試験例につき2枚ずつ作製した。その内の1枚は、基準として屋内の暗室に保管した。残りの1枚は、日中、日陰とならない屋外にて21日間、日光曝露させた。退色の変化は、コニカミノルタ社の色差計CR−300を用い、基準との色差で退色の有無・程度を判断した。
シート形状にした塩化ビニル樹脂組成物を用いて、加熱プレス機によるプレス耐熱性にて、成形加工時の変色度合を検証した。プレス温度は、実際の押出作業を実施する時の温度180℃を適用し、プレス時間は1時間とした。評価は、プレス前後の色相を目視で確認し、変色の有無を判断した。
(1)ステアリン酸亜鉛を通常より多めに添加し、SBM(ステアロイルベンゾイルメタン)によるアリル塩の安定化が効率的に働くように、ステアリン酸亜鉛及びSBMの添加量を調整した(式(VII))。
(2)塩化亜鉛をキレート形成により安定化させ、金属塩に起因する塩化ビニル樹脂の熱劣化を抑制するため、イソシアヌレート化合物を選定し、添加した(式(VIII))。
(3)ステアリン酸亜鉛を通常より多めに添加することによる外滑性過多現象は、0.95〜1.1g/cm 3 である高密度酸化ポリエチレンワックスの添加で調整した。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、(A)ステアリン酸亜鉛、(B)イソシアヌレート化合物、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、(D)0.95〜1.1g/cm 3 である高密度酸化ポリエチレンワックス、(E)酸化チタン、及び(F)フタロシアニンブルーを含有する塩化ビニル樹脂組成物であって、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記(A)〜(F)成分の合計含量が1〜6質量部である。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、ベースポリマーとして塩化ビニル樹脂を含有している。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、(A)ステアリン酸亜鉛、(B)イソシアヌレート化合物、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、(D)0.95〜1.1g/cm 3 である高密度酸化ポリエチレンワックス、(E)酸化チタン、及び(F)フタロシアニンブルーを含有している。塩化ビニル樹脂100質量部に対する上記(A)〜(F)成分の合計含量は、1〜6質量部である。これらの合計含量を上記範囲内とすることで本願発明の効果を奏する。(A)〜(F)の合計含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1.2〜5質量部であることが好ましく、1.5〜4.5質量部であることがより好ましく、2〜4質量部であることがさらに好ましい。
(A)ステアリン酸亜鉛の含有割合は、(A)〜(F)成分の合計含量に対して20〜60質量%であることが好ましく、30〜55質量%であることがより好ましい。(A)ステアリン酸亜鉛の含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して1〜2質量部であることが好ましく、1.2〜1.8質量部であることがより好ましい。
(C17H35COO)2Zn + 2HCL → ZnCL2 + C17H35COOH
(C17H35COO)2Ca + ZnCL2 → (C17H35COO)2Zn +CaCL2
(B)イソシアヌレート化合物の含有割合は、(A)〜(F)成分の合計含量に対して1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。(B)イソシアヌレート化合物の含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜1質量部であることが好ましく、0.15〜0.5質量部であることがより好ましい。
(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有割合は、(A)〜(F)成分の合計含量に対して0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2.5質量%であることがより好ましい。(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01〜0.5質量部であることが好ましく、0.02〜0.1質量部であることがより好ましい。
一般に塩化ビニル樹脂のアリル塩安定化剤としては、ジベンゾイルメタン(DBM)が用いられてきた。脂肪酸塩や金属化合物下で、前述の式(I)、(II)の通り働く。すなわち、アリル塩を安定化することで、結果として着色抑制剤として働く。
ポリオレフィンワックスには、ポリエチレンホモポリマータイプ、酸化ポリエチレンタイプ、高密度酸化ポリエチレンタイプ、ポリプロピレンタイプ、エチレン・アクリル酸共重合タイプ、エチレン・酢酸ビニル共重合タイプ、酸化エチレン・酢酸ビニル共重合タイプ、低分子量アイオノマータイプ、エチレン−無水マレイン酸共重合タイプ、プロピレン−無水マレイン酸共重合タイプなど、さまざまなワックスが存在する。これらの中でも、以下の点に着眼し、高密度酸化ポリエチレンワックスを選定した。
(1)塩化ビニル樹脂、及び(B)シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体や(C)ステアロイルベンゾイルメタンとの相溶性を考慮し、極性基を保有するワックスであること。
(2)国際規格ASTM−D3954ベースの滴点が本発明の塩化ビニル樹脂組成物の混練温度(130〜150℃)付近にあるワックスであること。
(3)本発明の塩化ビニル樹脂組成物の混練温度付近での粘度が高く、内部滑剤として働くワックスであること。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、白色着色剤として酸化チタンを含有している。(E)酸化チタンの含有割合は、(A)〜(F)成分の合計含量に対して25〜80質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましい。(E)酸化チタンの含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.5〜6質量部であることが好ましく、0.8〜4.5質量部含有することがより好ましい。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、青色着色剤としてフタロシアニンブルーを含有している。(F)フタロシアニンブルーの含有割合は、(A)〜(F)成分の合計含量に対して0.1〜3質量%であることが好ましく、0.2〜2質量%であることがより好ましい。(F)フタロシアニンブルーの含量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.005〜0.2質量部であることが好ましく、0.01〜0.1質量部含有することがより好ましい。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物には、可塑剤として、従来公知の可塑剤を添加することができる。特に限定はされないが、例えば、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸系ポリエステルなどが挙げられる。特性を補うために、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、塩素化パラフィン、ヘキサンジカルボン酸エステル、エポキシ化大豆油などを適量用いても良い。また、これらをブレンドして用いても良い。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物には、安定剤として、従来公知の安定剤を添加することができる。特に限定はされないが、安定剤は、鉛を含有しない非鉛系安定剤を用いることが、法規制上好ましい。非鉛系安定剤としては、ハイドロタルサイト系安定剤や、カルシウム−亜鉛系の複合安定剤を挙げることができる。前述の脂肪酸金属塩としてステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等を添加した場合、これらを安定剤として機能させることもできる。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物には、上記添加剤に加え、必要に応じて、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、充填剤、加工性改良剤、その他の改質剤などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、空色に着色された軟質塩化ビニル樹脂組成物全般に適用可能であり、電線被覆材としては、絶縁体及びシースのどちらにも使用できる。代表例としては、通信用LANケーブル外被材などが挙げられる。
本発明の実施形態に係る絶縁電線は、導体と、導体の外周に被覆された、本発明の実施形態に係る上記塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えたことを特徴とする。
図1に示すように、本実施の形態に係る絶縁電線10は、導体1と、導体1の外周に被覆された絶縁層2とを備える。被覆される導体1としては、例えば外径0.15〜7mmφ程度の導体を使用することができる。錫メッキ軟銅線を撚り合わせた導体などを好適に使用することができるが、これに限定されるものではない。導体1は、図1のように1本である場合に限られず、複数本であってもよい。
本発明の実施形態に係るケーブルは、本発明の実施形態に係る上記塩化ビニル樹脂組成物を被覆材料(シースないし絶縁層及びシース)として使用したことを特徴とする。
図2に示すように、本実施の形態に係るケーブル20は、導体1に絶縁層2を被覆した絶縁電線3本を紙等の介在4と共に撚り合わせた三芯撚り線と、三芯撚り線の外周に施された押え巻きテープ5と、その外周に押出被覆されたシース3とを備える。絶縁電線は単芯でもよく、三芯以外の多芯撚り線であってもよい。
(1)本発明の実施形態によれば、空色を呈するためにフタロシアニンブルーを使用した塩化ビニル樹脂組成物において、日光や蛍光灯直下で使用しても空色発色度の低下(白色化)を抑制できる塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。
(3)本発明の実施形態によれば、ステアリン酸亜鉛を他の脂肪酸金属塩(例えばマグネシウム塩)よりも多く添加することにより、熱負荷で原色の青色が維持できずに赤茶系に変色することなく、色相の維持が可能となるため、空色発色度の低下を抑制できる塩化ビニル樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。
表3に示す各材料を記載された割合で配合し、140℃に加熱したオープンロールミキサーで混練混合した後、シート形状で取り出し、更に加熱プレス機にて180℃で5分間成形し、所定の肉厚の各実施例及び比較例の塩化ビニル樹脂組成物を得た。用いた材料は、表4に示す通りである。安定剤は、表5の組成・割合としたものを用いた。
上記(1)で作製した塩化ビニル樹脂組成物を用いて、加熱プレス機にて0.5mmtとしたシート片を各例につき3枚ずつ作製した。その内の1枚は、基準として屋内の暗室に保管した。残りの2枚は、日中、日陰とならない屋外にて各々、2週間、1ヶ月間、日光曝露させた。退色の変化は、コニカミノルタ社の色差計CR−300を用い、基準との色差がΔEで3以内のものを合格とした。表3に評価結果を示す。
上記(1)で作製した塩化ビニル樹脂組成物を用いて、加熱プレス機によるプレス耐熱性にて、成形加工時の変色度合を検証した。プレス温度は、実際の押出作業を実施する時の温度180℃を適用し、プレス時間は1時間とした。1時間とした背景は、通常のPVC絶縁電線を6時間連続で作業させた後の色相変化と一致するためである。評価は、プレス前後の色相を目視で判断し、差が無いものを合格とした。表3に評価結果を示す。
1:導体、2:絶縁層
3:シース、4:介在、5:押さえ巻きテープ
Claims (8)
- 塩化ビニル樹脂、(A)ステアリン酸亜鉛、(B)イソシアヌレート化合物、(C)ステアロイルベンゾイルメタン、(D)0.95〜1.1g/cm 3 である高密度酸化ポリエチレンワックス、(E)酸化チタン、及び(F)フタロシアニンブルーを含有する塩化ビニル樹脂組成物であって、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記(A)〜(F)成分の合計含量が1〜6質量部である塩化ビニル樹脂組成物。
- 前記(F)フタロシアニンブルーの含量が前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以下であり、前記(F)フタロシアニンブルーに対する前記(E)酸化チタンの含有質量比(E/F)が50以上である請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
- 前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(A)ステアリン酸亜鉛の含有割合が20〜60質量%である請求項1又は2に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
- 前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(B)イソシアヌレート化合物の含有割合が1〜10質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
- 前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(C)ステアロイルベンゾイルメタンの含有割合が0.1〜5質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
- 前記(A)〜(F)成分の合計含量に対する前記(D)0.95〜1.1g/cm 3 である高密度酸化ポリエチレンワックスの含有割合が0.1〜5質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
- 導体と、前記導体の外周に被覆された、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層とを備えた絶縁電線。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物からなるシースを備えたケーブル。
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