<偏光フィルムの製造装置及び製造方法>
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系樹脂フィルム」ともいう。)から偏光フィルムを製造するための製造装置及び製造方法に関する。偏光フィルムは、PVA系樹脂フィルムに対し、処理槽への浸漬処理(湿式処理)、乾燥処理等を含む一連の処理を施して製造される。偏光フィルムは、延伸されたPVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものである。
本発明に係る偏光フィルム製造装置の一例を図1に示す。図2は、図1に示される偏光フィルム製造装置が有する乾燥処理部を拡大して示す断面模式図である。図1及び図2に示される偏光フィルム製造装置は、原料フィルムである長尺のPVA系樹脂フィルム10から連続的に長尺の偏光フィルム25を製造するための装置である。図1及び図2中の矢印は、フィルムの搬送方向を示す。図1及び図2に示される製造装置を用いた偏光フィルム25の製造においては、PVA系樹脂フィルム10を巻出ロール11から連続的に巻き出しつつ、膨潤処理槽13、染色処理槽15、架橋処理槽17及び洗浄処理槽19に順次浸漬し、最後に乾燥炉21に通すことにより乾燥処理を行って偏光フィルム25を得る。長尺物として製造される偏光フィルム25は、巻取ロール27に順次巻き取ってもよい。
偏光フィルム製造装置において、膨潤処理槽13、染色処理槽15、架橋処理槽17及び洗浄処理槽19等の、フィルムが浸漬される処理液を収容する1以上の処理槽を用いて湿式処理を行うゾーンを本明細書では「湿式処理部」(図1に示される湿式処理部20)という。また乾燥炉21のように、湿式処理後のフィルムに対して乾燥処理を実施するゾーンを本明細書では「乾燥処理部」(図1及び図2に示される乾燥処理部22)という。本発明に係る偏光フィルム製造装置は、湿式処理部と乾燥処理部とを含むPVA系樹脂フィルム10の搬送経路を有している。この搬送経路に沿ってPVA系樹脂フィルム10を搬送させることにより一連の処理が施されて偏光フィルム25が得られる。搬送経路に沿って搬送されるPVA系樹脂フィルム10の搬送速度は、通常10〜50m/分であり、生産効率の観点から、好ましくは15m/分以上である。
図1に示されるように上記搬送経路は、湿式処理部20と乾燥処理部22とを通るように、走行中のフィルム(PVA系樹脂フィルム10及び偏光フィルム25)を支持・案内する複数のロールによって構築される。複数のロールは、フィルムの片面を支持するフリーロールであるガイドロール、及び/又は、1対のロール(通常は駆動ロール)からなり、フィルムを両面から挟み込む又は挟み込んで押圧するニップロールを含むことができる。図1及び図2に示される例において製造装置は、ガイドロール1a〜1s及びニップロール2a〜2fを含んでいる。搬送経路を規定する複数のロールは、駆動ロールの1種であるサクションロール(吸引ロール)を含むこともできる。通常、これらのロールはいずれも搬送経路内のフィルムの一方又は両方の表面(主面)に接して該フィルムを支持する。これらのロールは、各処理槽及び乾燥手段(乾燥炉)の前後や処理槽及び乾燥手段(乾燥炉)内等の適宜の位置に配置することができる。
なお駆動ロールとは、それに接触するフィルムに対してフィルム搬送のための駆動力を与えることができるロールをいい、モーター等のロール駆動源が直接又は間接的に接続されたロール等であることができる。フリーロールとは、単に走行するフィルムを支持する役割を担い、フィルム搬送のための駆動力を与えることができないロールをいう。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法の一例のフローチャートを図3に示す。図3を参照して、本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、次の工程:
PVA系樹脂フィルムの表面に接するように配置される複数のロールによって構成される搬送経路に沿ってPVA系樹脂フィルムを搬送させながら、1以上の処理液に浸漬させる湿式処理工程S101、及び
上記搬送経路に沿ってPVA系樹脂フィルムを搬送させながら、湿式処理後のPVA系樹脂フィルムを乾燥させる乾燥処理工程S102
を含む。湿式処理工程S101は上述の湿式処理部20で行われる処理であり、乾燥処理工程S102は上述の乾燥処理部22で行われる処理である。
得られる偏光フィルム25は、延伸処理(通常は一軸延伸処理)されたものである。このために本発明に係る偏光フィルムの製造装置は、PVA系樹脂フィルム10の延伸手段(湿式延伸手段)を含むことができ、また本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、PVA系樹脂フィルム10の延伸処理工程(湿式延伸処理工程)を含むことができる。
(1)PVA系樹脂フィルム
湿式処理部20に導入される(湿式処理工程S101に供される)PVA系樹脂フィルム10は、ポリビニルアルコール系樹脂で構成されるフィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80.0〜100.0モル%の範囲であることができるが、好ましくは90.0〜100.0モル%の範囲であり、より好ましくは94.0〜100.0モル%の範囲であり、さらに好ましくは98.0〜100.0モル%の範囲である。ケン化度が80.0モル%未満であると、得られる偏光フィルム25を含む偏光板の耐水性及び耐湿熱性が低下し得る。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは1500〜8000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度もJIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が100未満では、好ましい偏光性能を有する偏光フィルム25を得ることが困難であり、10000を超えると溶媒への溶解性が悪化し、PVA系樹脂フィルム10の形成(製膜)が困難となり得る。
PVA系樹脂フィルム10の一例は、上記ポリビニルアルコール系樹脂を製膜してなる未延伸フィルムである。製膜方法は、特に限定されるものではなく、溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法を採用することができる。PVA系樹脂フィルム10の他の一例は、上記未延伸フィルムを延伸してなる延伸フィルムである。この延伸は通常、一軸延伸、好ましくは縦一軸延伸である。縦延伸とは、フィルムの機械流れ方向(MD)、すなわちフィルムの長手方向への延伸をいう。この延伸は、好ましくは乾式延伸である。乾式延伸とは空中で行う延伸をいい、通常は縦一軸延伸となる。乾式延伸としては、表面が加熱された熱ロールと、この熱ロールとは周速の異なるガイドロール(又は熱ロールであってもよい。)との間にフィルムを通し、熱ロールを利用した加熱下に縦延伸を行う熱ロール延伸;距離を置いて設置された2つのニップロール間にある加熱手段(オーブン等)を通過させながら、これら2つのニップロール間の周速差によって縦延伸を行うロール間延伸;テンター延伸;圧縮延伸等を挙げることができる。延伸温度(熱ロールの表面温度や、オーブン内温度等)は、例えば80〜150℃であり、好ましくは100〜135℃である。
上記延伸の延伸倍率は、後述する湿式処理工程S101において湿式延伸を実施するか否か、及び当該湿式延伸での延伸倍率にもよるが、通常は1.1〜8倍であり、好ましくは2.5〜5倍である。
PVA系樹脂フィルム10は、可塑剤等の添加剤を含有することができる。可塑剤の好ましい例は多価アルコールであり、その具体例は、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール等を含む。PVA系樹脂フィルム10は、1種又は2種以上の可塑剤を含有することができる。可塑剤の含有量は、PVA系樹脂フィルム10を構成するポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常5〜20重量部であり、好ましくは7〜15重量部である。
湿式処理部20に導入される(湿式処理工程S101に供される)PVA系樹脂フィルム10の厚みは、PVA系樹脂フィルム10が延伸処理されたものであるか否かにもよるが、通常10〜150μmであり、得られる偏光フィルム25の薄膜化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは65μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは35μm以下(例えば30μm以下、さらには20μm以下)である。PVA系樹脂フィルム10の厚み、従って偏光フィルム25の厚みが小さいほど特定凹凸欠陥を生じやすい傾向にある。従って、厚みが小さいPVA系樹脂フィルム10(例えば厚み65μm以下、さらには50μm以下、なおさらには35μm以下)を使用する場合、又は厚みが小さい偏光フィルム25(例えば厚み20μm以下、さらには15μm以下、なおさらには10μm以下)を製造する場合に本発明は特に有利である。
(2)湿式処理部及び湿式処理工程S101
湿式処理部20は、PVA系樹脂フィルム10の搬送経路上に配置されるゾーンであり、PVA系樹脂フィルム10が浸漬される処理液を収容する1以上の処理槽を含む。この湿式処理部20において、PVA系樹脂フィルム10を搬送させながら上記1以上の処理液に浸漬させる湿式処理工程S101が実施される。上述のように搬送経路は、走行中のフィルムを支持・案内する複数のロールによって構築されており、これらの複数のロールの一部は通常、湿式処理部20内に配置されている。
湿式処理部20は、上記処理槽として、通常は染色処理槽15及び架橋処理槽17を含んでおり、好ましくはさらに、膨潤処理槽13及び洗浄処理槽19を含む。これらの処理槽は通常、搬送経路の上流側から順に、膨潤処理槽13、染色処理槽15、架橋処理槽17、洗浄処理槽19の順で配置される(図1参照)。なお図1には、膨潤処理槽13、染色処理槽15、架橋処理槽17及び洗浄処理槽19をそれぞれ1槽ずつ設けた例を示しているが、必要に応じて染色処理槽15を2槽以上を設けてもよく、架橋処理槽17を2槽以上を設けてもよい。膨潤処理槽13、洗浄処理槽19についても同様である。
膨潤処理槽13に収容される処理液は、例えば水(純水等)であることができる他、アルコール類のような水溶性有機溶媒を添加した水溶液であってもよい。また、この処理液(膨潤浴)は、ホウ酸、塩化物、無機酸、無機塩等を含有することもできる。膨潤浴にPVA系樹脂フィルム10を浸漬することによって膨潤処理を行う。膨潤処理は、PVA系樹脂フィルム10の異物除去、可塑剤除去、易染色性の付与、フィルムの可塑化等の目的で必要に応じて実施される処理である。膨潤処理中に、PVA系樹脂フィルム10に対して湿式延伸処理(通常は一軸延伸処理)を施してもよい。その場合の延伸倍率は、通常1.2〜3倍、好ましくは1.3〜2.5倍である。膨潤浴の温度は、通常10〜70℃、好ましくは15〜50℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間(膨潤浴中での滞留時間)は、通常10〜600秒、好ましくは20〜300秒である。
染色処理槽15に収容される処理液は、二色性色素を含有する染色処理液である。この染色処理液にPVA系樹脂フィルム10を浸漬することによって染色処理を行う。これにより、PVA系樹脂フィルム10に二色性色素が吸着される。二色性色素は、ヨウ素又は二色性有機染料であることができ、好ましくはヨウ素である。二色性色素は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、上記染色処理液には、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理液と区別される。染色処理液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.003〜1重量部である。染色処理液におけるヨウ化カリウム等のヨウ化物の含有量は通常、水100重量部あたり0.1〜20重量部である。染色処理液の温度は、通常10〜45℃であり、好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは20〜35℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間(染色処理液中での滞留時間)は、通常20〜600秒、好ましくは30〜300秒である。
二色性色素として二色性有機染料を用いる場合、染色処理液には、二色性有機染料を含有する水溶液を用いることができる。当該染色処理液における二色性有機染料の含有量は通常、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この染色処理液には染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤等を含有していてもよい。二色性有機染料は1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。二色性有機染料を含有する染色処理液の温度は、例えば20〜80℃、好ましくは30〜70℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間は、通常30〜600秒、好ましくは60〜300秒である。
二色性色素の染色性を高めるために、染色処理に供されるPVA系樹脂フィルム10は、少なくともある程度の延伸処理(通常は一軸延伸処理)が施されていることが好ましい。染色処理前の延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の延伸処理に加えて、染色処理を行いながら延伸処理を施してもよい。染色処理までの積算の延伸倍率(染色処理までに延伸工程がない場合は染色処理での延伸倍率)は、通常1.6〜4.5倍であり、好ましくは1.8〜4倍である。
架橋処理槽17に収容される処理液は、架橋剤を含有する架橋処理液である。この架橋処理液に染色処理後のPVA系樹脂フィルム10を浸漬することによって架橋処理を行う。これにより、架橋によるPVA系樹脂フィルム10の耐水化や色相調整等がなされる。架橋処理を行いながら延伸処理(通常は一軸延伸処理)を施してもよい。
架橋剤としては、ホウ酸、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を挙げることができ、ホウ酸が好ましく用いられる。2種以上の架橋剤を併用することもできる。架橋処理液における架橋剤の含有量は通常、水100重量部あたり0.1〜15重量部であり、好ましくは1〜12重量部である。二色性色素がヨウ素の場合、架橋処理液は、架橋剤に加えてヨウ化物を含有することが好ましい。架橋処理液におけるヨウ化物の含有量は通常、水100重量部あたり0.1〜20重量部であり、好ましくは5〜15重量部である。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また架橋処理液は、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を含有していてもよい。架橋処理液の温度は、通常50〜85℃であり、好ましくは50〜70℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間(架橋処理液中での滞留時間)は、通常10〜600秒、好ましくは20〜300秒である。
洗浄処理槽19に収容される処理液は、例えば水(純水等)であることができる他、アルコール類のような水溶性有機溶媒を添加した水溶液であってもよい。この処理液(洗浄浴)に架橋処理後のPVA系樹脂フィルム10を浸漬することによって洗浄処理を行う。洗浄処理は、PVA系樹脂フィルム10に付着した余分な架橋剤や二色性色素等の薬剤を除去する目的で必要に応じて実施される処理である。洗浄浴の温度は、例えば2〜40℃である。洗浄処理を行いながら延伸処理(通常は一軸延伸処理)を施してもよい。
洗浄処理は、架橋処理後のPVA系樹脂フィルム10に対して洗浄液をシャワーとして噴霧する処理であってもよく、上記の洗浄浴への浸漬と洗浄液の噴霧とを組み合わせてもよい。図1には、PVA系樹脂フィルム10を洗浄処理槽19中の水に浸漬して洗浄処理を施す場合の例を示している。
上述のように、湿式処理工程S101においてPVA系樹脂フィルム10に対して湿式延伸を実施してもよい。湿式延伸は通常、一軸延伸であり、膨潤処理、染色処理、架橋処理、洗浄処理のいずれかの処理を行いながら、又はこれらから選択される2以上の処理中に行うことができる。湿式延伸は、好ましくは、架橋処理工程又はそれより前の1又は2以上の段階で延伸処理される。上述のように、二色性色素の染色性を高めて良好な偏光特性を有する偏光フィルム25を得るために、染色処理に供されるPVA系樹脂フィルム10は、少なくともある程度の延伸処理が施されていることがより好ましい。湿式延伸の延伸倍率は、得られる偏光フィルム25の偏光特性の観点から、好ましくは、偏光フィルム25の最終的な累積延伸倍率(湿式処理に供されるPVA系樹脂フィルム10が延伸処理されたものである場合には、この延伸も含めた累積延伸倍率)が3〜8倍となるように調整される。
湿式延伸処理工程を実施する場合、偏光フィルム製造装置は、PVA系樹脂フィルム10の湿式延伸手段を含む。湿式延伸手段は、好ましくはロール間延伸を行う延伸手段である。架橋処理中に湿式でロール間延伸を行う場合を例に挙げると、ロール間延伸を行う延伸手段は、架橋処理槽17の前後に配置される2つのニップロール2c,2dである。他の湿式処理中に延伸を行う場合についても同様に、離間して配置された2つのニップロールを湿式延伸手段とすることができる。
(3)乾燥処理部及び乾燥処理工程S102
乾燥処理部22は、PVA系樹脂フィルム10の搬送経路上であって湿式処理部20の下流側に配置される、湿式処理工程S101後のPVA系樹脂フィルム10を乾燥させるためのゾーンである。湿式処理工程S101後のPVA系樹脂フィルム10を引き続き搬送させながら、乾燥処理部22に当該フィルムを導入することによって乾燥処理を施すことができ、これにより偏光フィルム25が得られる。
乾燥処理部22は、フィルムの乾燥手段(加熱手段)を含む。乾燥手段の好適な一例は乾燥炉である。乾燥炉は、好ましくは炉内温度を制御可能なものである。乾燥炉は、例えば、熱風の供給等により炉内温度を高めることができる熱風オーブンである。また乾燥手段による乾燥処理は、凸曲面を有する1又は2以上の加熱体に湿式処理工程S101後のPVA系樹脂フィルム10を密着させる処理や、ヒーターを用いて該フィルムを加熱する処理であってもよい。
上記加熱体としては、熱源(例えば、温水等の熱媒や赤外線ヒーター)を内部に備え、表面温度を高めることができるロール(例えば熱ロールを兼ねたガイドロール)を挙げることができる。上記ヒーターとしては、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を挙げることができる。図1及び図2には、乾燥炉21内に湿式処理工程S101後のPVA系樹脂フィルム10を導入し、該フィルムを炉内のガイドロール1m〜1sに沿って搬送させながら乾燥処理する例を示している。このように、偏光フィルム製造装置が有するPVA系樹脂フィルム10の搬送経路を構築する複数のロールの一部(1又は2以上)は、乾燥処理部22(乾燥手段)内に配置することができる。
乾燥処理の温度(例えば、乾燥炉21の炉内温度、熱ロールの表面温度等)は、通常30〜100℃であり、50〜90℃であることが好ましい。乾燥時間は特に制限されないが、例えば30〜600秒である。
乾燥処理によってフィルムの水分率が低減される。乾燥処理を経て得られる偏光フィルム25の水分率は、通常5〜20重量%であり、好ましくは8〜15重量%である。水分率が5重量%未満であると、偏光フィルム25の可撓性が過度に低下し、偏光フィルム25がその後の搬送時や取扱い時に損傷したり、破断したりすることがある。また偏光フィルム25の水分率が20重量%より高いと、偏光フィルム25の熱安定性が低下しやすい。ここでいう水分率は、乾燥重量法によって測定されるものである。
偏光フィルム25は、延伸(通常は一軸延伸)されたPVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されているものである。偏光フィルム25の厚みは、通常2〜40μmである。偏光フィルム25を含む偏光板の薄膜化の観点から、偏光フィルム25の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。上述のように、厚みが小さい偏光フィルム25(例えば厚み20μm以下、さらには15μm以下、なおさらには10μm以下)を製造する場合に本発明は特に有利である。
得られる偏光フィルム25の視感度補正単体透過率Tyは、視感度補正偏光度Pyとのバランスを考慮して、40〜47%であることが好ましく、41〜45%であることがより好ましい。視感度補正偏光度Pyは、99.9%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましい。偏光フィルム25の視感度補正単体透過率Tyが大きいほど、液晶表示装置に適用したときに上記の輝点(光抜け)が視認されやすくなる。従って、視感度補正単体透過率Tyが41%以上、さらには42%以上、なおさらには43%以上である偏光フィルム25を製造する場合に本発明は特に有利である。Ty及びPyは、後述する実施例の項の記載に従って測定される。
得られた偏光フィルム25は、巻取ロール27に順次巻き取ってロール形態としてもよいし、巻き取ることなくそのまま偏光板作製工程(偏光フィルム25の片面又は両面に保護層(保護フィルム等)を積層する工程)に供することもできる。
(4)低回転抵抗ロール
偏光フィルム製造装置の搬送経路を構築・規定し、搬送されるPVA系樹脂フィルム10の表面に接するように配置される上述の複数のロールは、回転抵抗が0.025N以下である少なくとも1つの低回転抵抗ロールを含む。これにより、偏光フィルム25の表面に生じ得る特定凹凸欠陥を抑制することができる。特定凹凸欠陥をより効果的に抑制する観点から、低回転抵抗ロールの回転抵抗は、0.01N以下であることが好ましい。当該ロールの回転抵抗は、通常0.001N以上である。
ここでいうロールの回転抵抗は、次のようにして測定される回転抵抗値をいう。すなわち、ロールに薄いフィルムを巻き付けた後、巻き付けたフィルムの外側の端部をバネばかりに固定し、バネばかりをロールの回転数が100rpmとなるように一定速度で引いた際のバネばかりにかかる荷重である。
低回転抵抗ロールを用いることにより特定凹凸欠陥を抑制できるのは、低回転抵抗ロールに接触したときの搬送中のPVA系樹脂フィルム10の張力が低減され、低回転抵抗ロールとこれに接触したPVA系樹脂フィルム10との間の密着力が低くなって、その結果、PVA系樹脂フィルム10が低回転抵抗ロールから離れるときに生じ得る、PVA系樹脂フィルム10が低回転抵抗ロールに密着し続けようとする上記密着力に基づく抗力に伴うPVA系樹脂フィルム10の変形が抑制されるためと推定される。
低回転抵抗ロールの種類は特に制限されず、ガイドロールのようなフリーロールであってもよいし、ニップロール、サクションロールのような駆動ロールであってもよい。低回転抵抗ロールをニップロールに適用する場合において、ニップロールを構成する一対のロールのうち一方のみが低回転抵抗ロールであってもよいし、両方が低回転抵抗ロールであってもよい。低回転抵抗ロールは、それがフィルム搬送のための駆動力を有しないフリーロールであると、特定凹凸欠陥を抑制する効果を高めることができるため、好ましくはガイドロールである。
例えば、ロールの単位体積あたりの重量を小さくしたり、摩擦モーメントの小さい軸受を使用したりすることによってロールの回転抵抗を小さくすることができる。これらの中でもロールの単位体積当たりの重量を小さくすることがロールの回転抵抗を小さくするうえで有効である。ロールの回転抵抗を上述の範囲とするために、低回転抵抗ロールの単位体積あたりの重量は、好ましくは1500kg/m3以下であり、より好ましくは1000kg/m3以下であり、さらに好ましくは700kg/m3以下である。ロールの芯材(又はロール全体の材料)にカーボン、アルミニウム等の軽量材料を用いたり、中空のロールを用いたりすることで、ロールの単位体積あたりの重量を低減させることが可能である。当該ロールの単位体積あたりの重量は、通常200kg/m3以上である。
本発明者の検討により、低回転抵抗ロールの表面(搬送中のPVA系樹脂フィルム10に接する表面)の低い濡れ性は特定凹凸欠陥の抑制に有利に働くことが明らかになっている。これは、低回転抵抗ロールとこれに接触するPVA系樹脂フィルム10との間の上述の密着力の低下に寄与するためと推定される。従って、低回転抵抗ロールは、濡れ性の低い表面(搬送中のPVA系樹脂フィルム10に接する表面)を有することが好ましく、具体的には、低回転抵抗ロールは、水に対する接触角(対水接触角)が好ましくは60度以上、より好ましくは80度以上、さらに好ましくは100度以上である表面を有する。水に対する接触角の最大値は、通常120度程度である。低回転抵抗ロール表面の水に対する接触角は、後述する実施例の項の記載に従って測定される。
上記のような対水接触角が大きい表面を有するロールは、ロール表面に対水接触角が大きい材料からなる表面層(コーティング層)を設けたものであることができる。対水接触角が大きい材料の具体例は、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シロキサン系樹脂等のシリコン原子含有樹脂;カーボン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の炭素材料を含む。
低回転抵抗ロールの配置数は特に限定されず、また、低回転抵抗ロールは、偏光フィルム製造装置が有する搬送経路のいずれの位置に配置されてもよい。従って、搬送経路に2以上の低回転抵抗ロールを配置したり、搬送されるPVA系樹脂フィルム10の表面に接するすべてのロールが低回転抵抗ロールであってもよいが、特定凹凸欠陥の抑制効果を得るためには、少なくとも、湿式処理部20(湿式処理工程S101)から乾燥処理部22(乾燥処理工程S102)にわたる搬送経路のいずれかの位置に低回転抵抗ロールを配置することが好ましい。「湿式処理部20(湿式処理工程S101)から」とは、例えば最初の湿式処理が膨潤処理である場合、膨潤処理槽13の上流端(PVA系樹脂フィルム10が膨潤浴に浸漬される時点)を指す。「乾燥処理部22(乾燥処理工程S102)にわたる」とは、乾燥処理部22(乾燥手段)の下流端(乾燥処理終了時点)を指す。
中でも、次の点を考慮して低回転抵抗ロールの配置位置を選択することがより好ましい。
〔a〕架橋処理前よりはむしろ、架橋処理後のPVA系樹脂フィルム10がロールに接触したときに特定凹凸欠陥を生じやすい傾向が本発明者により確認されている。従って、架橋処理槽17以降(架橋処理槽17又はそれより下流側)の搬送経路に少なくとも1つの低回転抵抗ロールを配置することが好ましく、架橋処理槽17以降の搬送経路に複数のロールが存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。
〔b〕湿式処理中よりはむしろ、湿式処理を終えた後のPVA系樹脂フィルム10がロールに接触したときに特定凹凸欠陥を生じやすい傾向が本発明者により確認されている。従って、架橋処理槽17より下流側の搬送経路に少なくとも1つの低回転抵抗ロールを配置することが好ましく、架橋処理槽17より下流側の搬送経路に複数のロールが存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。架橋処理の後に洗浄処理のような湿式処理を行う場合には、湿式処理部20より下流側の搬送経路に少なくとも1つの低回転抵抗ロールを配置することが好ましく、湿式処理部20より下流側の搬送経路に複数のロールが存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。
〔c〕湿式処理を終えた直後(最後の湿式処理槽から出た直後)の水分率よりも低い水分率を有するPVA系樹脂フィルム10がロールに接触したときに特定凹凸欠陥を生じやすい傾向が本発明者により確認されている。従って、この点においても、湿式処理部20より下流側の搬送経路に少なくとも1つの低回転抵抗ロールを配置することが好ましく、湿式処理部20より下流側の搬送経路に複数のロールが存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。特に、湿式処理を終えた直後であって、乾燥処理の完了によって所望の水分率を有する偏光フィルム25となる前のPVA系樹脂フィルム10がロールに接触したときに特定凹凸欠陥を生じやすい。従って、湿式処理部20と乾燥処理部22とを接続する搬送経路、又は乾燥処理部22の前半の搬送経路に少なくとも1つの低回転抵抗ロールを配置することが好ましく、湿式処理部20と乾燥処理部22とを接続する搬送経路、及び乾燥処理部22の前半の搬送経路に複数のロールが存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。上述した「湿式処理を終えた直後(最後の湿式処理槽から出た直後)の水分率よりも低い水分率を有するPVA系樹脂フィルム10」の水分率は、例えば8〜30重量%であり、さらには10〜25重量%である。水分率の意味(測定方法)は、上述と同様である。
〔d〕ロールに接触するPVA系樹脂フィルム10の厚みが小さいほど特定凹凸欠陥を生じやすい傾向にある。従って、湿式処理工程S101に供される時点でのPVA系樹脂フィルム10の厚みよりも、湿式延伸処理によって厚みが小さくなっているPVA系樹脂フィルム10と接するロールを低回転抵抗ロールとすることが好ましく、このようなロールが複数存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。具体的には、湿式延伸を行うことがよくある染色処理槽15以降(染色処理槽15若しくはそれより下流側)又は架橋処理槽17以降(架橋処理槽17若しくはそれより下流側)の搬送経路に少なくとも1つの低回転抵抗ロールを配置することが好ましく、当該搬送経路に複数のロールが存在する場合、これらのロールのすべてを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。上述した「湿式処理工程S101に供される時点でのPVA系樹脂フィルム10の厚みよりも、湿式延伸処理によって厚みが小さくなっているPVA系樹脂フィルム10」の厚みは、例えば15μm以下であり、さらには12μm以下であり、なおさらには10μm以下である。
〔e〕ロールに接する前後でPVA系樹脂フィルム10の搬送方向が変化しないときよりも、変化するときの方が特定凹凸欠陥を生じやすい傾向にある。従って、それに接するPVA系樹脂フィルム10の搬送方向を変化させるロールを低回転抵抗ロールとすることが好ましい。ロールに接する直前のPVA系樹脂フィルム10の搬送方向ベクトルをA、当該ロールから離れた直後のPVA系樹脂フィルム10の搬送方向ベクトルをBとし、ロールに接する直前のPVA系樹脂フィルム10の搬送方向と当該ロールから離れた直後のPVA系樹脂フィルム10の搬送方向とが変化なく同じ方向であるときのベクトルAとBがなす角度(搬送方向変化角度)αを0°とし、ロールに接する直前のPVA系樹脂フィルム10の搬送方向と当該ロールから離れた直後のPVA系樹脂フィルム10の搬送方向とが真逆になるときのベクトルAとBがなす角度αを180°とするとき、角度αが30〜180°、さらには45〜180°を満たす場合に本発明はとりわけ有利である。
(5)特定凹凸欠陥
偏光フィルムの表面に生じ得る本明細書でいう特定凹凸欠陥は、該偏光フィルムを液晶表示装置に適用したときに輝点(光抜け)を生じさせる。この輝点は、バックライトの輝度をある程度以上まで高くしたときに初めて視認されるようになる欠陥であり、この点は本発明者により初めて見出された新たな課題である。上述の「バックライトの輝度をある程度以上まで高くしたとき」とは、輝度計で測定したバックライトの輝度がおよそ10,000cd/m2以上のときである。このバックライトの輝度は、当該バックライトと、その上に配置される液晶パネル(液晶パネルは、液晶セルとその両面に配置される偏光板とを備える。)とを含んで構成される液晶表示装置から出射される光の輝度でいえば、およそ500cd/m2以上に相当する。
特定凹凸欠陥は、典型的には、当該凹凸欠陥以外の偏光フィルム面を基準に、それより突出している1つの凸部と、上記基準より陥没しており、該凸部に隣接する1つの凹部との組み合わせからなる。通常、フィルム搬送方向の上流側に凸部があり、その下流側に凹部がある。従来の偏光フィルムにおいては、このような凸部及び凹部からなる凹凸部の複数が偏光フィルムのおよそ全面にわたってドット状にランダムに形成されているものであった。この凹凸部の形状は、偏光フィルムを上からみたとき(フィルム面に対して垂直な方向からみたとき)、例えば円形状、楕円形状などであるが、不定形の場合もある。特定凹凸欠陥は、偏光フィルムを上からみたとき(フィルム面に対して垂直な方向からみたとき)の長径(最大径)が0.5〜5mm程度(例えば1〜3mm)である。特定凹凸欠陥は、典型的には、上記基準に対する凸部の高さ及び凹部の深さが0.05〜0.5μm程度である。特定凹凸欠陥における高低差(凸部の頂部から凹部の底部までのフィルム厚み方向距離)は、0.1〜1μm程度である。特定凹凸欠陥の長径や高低差が上記の範囲外である場合には、その凹凸欠陥は輝点を生じさせず、問題とはなりにくい傾向にある。特定凹凸欠陥の存在は、例えばルーペ等によって確認することができる。特定凹凸欠陥の長径及び高低差は、後述する実施例の項に記載の方法に従って測定される。
本発明によれば、偏光フィルム表面における上記のような特定凹凸欠陥の発生を抑制又は防止することができる。これによって、輝度の高いバックライトを使用した液晶表示装置に偏光フィルムを適用した場合においても、輝点(光抜け)を効果的に抑制又は防止することができる。
本発明に係る偏光フィルムは、その少なくとも一方の面における特定凹凸欠陥の密度が20個/m2以下であることが好ましく、15個/m2以下であることがより好ましく、10個/m2以下であることがさらに好ましい。偏光フィルムの少なくとも一方の面における特定凹凸欠陥の密度は、0個/m2であることが望ましいといえるが、20個/m2以下であれば、液晶表示装置の画面をみたときの輝点は、その画面のサイズによらず、画面の視認性にほとんど影響を与えない。これに対して、特定凹凸欠陥の密度が20個/m2を超えると、画面のサイズによっては視認性を阻害する。特定凹凸欠陥の密度は、後述する実施例の項に記載の方法に従って測定される。なお、偏光フィルムの一方の面に特定凹凸欠陥が認められる場合には通常、他方の面にも同様の位置に、凸部と凹部とが逆転した特定凹凸欠陥が形成されている。
<偏光板>
偏光フィルム25の片面又は両面に保護層を形成することにより偏光板を得ることができる。保護層は、熱可塑性樹脂からなる保護フィルムであることができる他、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物層であってもよい。保護フィルムを用いる場合、偏光フィルム25の片面又は両面に接着剤層を介して保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。偏光フィルム25の両面に保護フィルムが貼合される場合においてこれらの保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、同種であってもよいし異種であってもよい。
保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。より具体的な例は、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)、ポリエチレン系樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)を含む。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、及びそれらの混合エステル等からなるものが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。好適なポリエステル系樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性を有する樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含む重合体である。該重合体は、典型的にはメタクリル酸エステルを含む重合体である。好ましくはメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合が、全構造単位に対して、50重量%以上含む重合体である。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、他の重合性モノマー由来の構成単位を含む共重合体であってもよい。この場合、他の重合性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは全構造単位に対して、50重量%以下である。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、メタクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、及びその他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を挙げることができる。他の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン等のビニル系化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物が挙げられる。その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
保護フィルムは、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つフィルムであることもできる。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。保護フィルムは、その表面に積層される、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
保護フィルムの厚みは通常1〜100μmであるが、強度や取扱性、偏光板の薄膜化等の観点から5〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
偏光フィルム25と保護フィルムとの貼合に用いる接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。偏光フィルム25の両面に保護フィルムが貼合される場合においてこれらの保護フィルムを貼合するための接着剤は、同種の接着剤であってもよいし異種の接着剤であってもよい。
水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものである。好ましく用いられる水系接着剤は、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた接着剤組成物である。
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂であることができるほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体であってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする水系接着剤は通常、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤は、接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂のような硬化性成分や架橋剤を含有することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(田岡化学工業(株)製)、「スミレーズレジン675」(田岡化学工業(株)製)、「WS−525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤としてともに添加する場合にはその合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、当該添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
また、接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合の好適な例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、偏光板が有する接着剤層は、当該接着剤の硬化物層である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する接着剤であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性接着剤である。ここでいうエポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
好適に使用できるエポキシ系化合物の具体例は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物を含む。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性接着剤が(メタ)アクリル系化合物のようなラジカル重合性硬化性成分を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
偏光フィルムに保護フィルムを貼合するに先立って、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を高めることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。測定又は評価は、以下の方法に従った。
(1)フィルム厚みの測定
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
(2)フィルムの水分率の測定
水分率の異なる複数のポリビニルアルコールフィルム試料を用いて、乾燥重量法による水分率と、赤外線吸収式の水分率計((株)チノー製の「IRMA1100」)の測定値との相関を示す検量線(換算式)を作成した。上記水分率計を用いて測定値を得、これを上記検量線(換算式)に代入し乾燥重量法による水分率〔重量%〕に換算して、これをフィルムの水分率とした。乾燥重量法による水分率は、105℃で120分間熱処理したときのポリビニルアルコールフィルム試料の重量をW1、熱処理前のポリビニルアルコールフィルム試料の重量をW0とするとき、下記式:
乾燥重量法による水分率〔重量%〕={(W0−W1)÷W0}×100
に従って求めた。上記検量線は、測定対象のフィルムの厚みが異なるごとに作成した。
(3)特定凹凸欠陥の確認及び評価
得られた偏光フィルムの片面(一方の面に特定凹凸欠陥が認められる場合には通常、他方の面にも同様の位置に特定凹凸欠陥が形成されている。)をルーペで観察し、特定凹凸欠陥の有無を確認した。上述のように特定凹凸欠陥は、当該凹凸欠陥以外の偏光フィルム面を基準に、それより突出している1つの凸部と、上記基準より陥没しており、該凸部に隣接する1つの凹部との組み合わせからなる。特定凹凸欠陥が存在する場合には、(株)菱化システム製の白色干渉計「VertScan」を用いて平均的な特定凹凸欠陥の長径(平均長径)、及び平均的な特定凹凸欠陥の高低差(平均高低差;凸部の頂部から凹部の底部までのフィルム厚み方向平均距離)を測定した(下記(4)参照)。また、得られた偏光フィルムから透過軸方向200mm×吸収軸方向300mmのサンプルを、ランダムな領域から3枚切り出し、それぞれについてルーペで観察して特定凹凸欠陥の個数を計測することにより、特定凹凸欠陥の密度(偏光フィルムの単位面積あたりの特定凹凸欠陥の数、単位:個/m2)を求めた。具体的には、特定凹凸欠陥の密度の算出は、下記式:
特定凹凸欠陥の密度(個/m2)=(3枚のサンプルにおける特定凹凸欠陥の合計個数
)/(3枚のサンプルの合計面積)
に従った。結果を表1に示す。なお、以上の特定凹凸欠陥の確認は、得られた偏光フィルムの片面についてのみ行ったが、下記の実施例及び比較例の間で、特定凹凸欠陥の確認は偏光フィルムの同じ面について行った。
(4)特定凹凸欠陥の平均長径及び平均高低差の測定
測定には、(株)菱化システム製の白色干渉計「VertScan」を用いた。長径(最大径)とは、特定凹凸欠陥を上からみたとき(フィルム面に対して垂直な方向からみたとき)の凸部の外側端から凹部の外側端までの距離のうち、最も長い距離をいう。特定凹凸欠陥を任意に10個選択し、これらの長径の平均値を「平均長径」とした。また、上記10個の特定凹凸欠陥について高低差を測定し、これらの平均値を「平均高低差」とした。結果を表1に示す。なお、実施例及び比較例において、測定した個々の特定凹凸欠陥の長径は0.5〜5mmの範囲であり、高低差は0.1〜1μmの範囲内であった。
(5)輝点(光抜け)の確認及び評価
得られた偏光フィルムから透過軸方向200mm×吸収軸方向300mmのサンプルを、ランダムな領域から3枚切り出し、それぞれについて輝点(光抜け)の評価を実施した。具体的には、暗室内において、輝度が20,000cd/m2((株)トプコンテクノハウス製の輝度計「BM−5A」を用いて測定。)であるバックライト上に、検査用の偏光板を配置し、さらにその上に上記偏光フィルムサンプルを配置した。この際、検査用の偏光板に含まれる偏光フィルムの透過軸と偏光フィルムサンプルの透過軸とが直交するように検査用の偏光板及び偏光フィルムサンプルを配置した。次いで、バックライトを点灯させて、偏光フィルムサンプル側から、当該サンプルの表面におけるドット状の輝点(光抜け)の有無を目視で確認した。輝点が認められる場合にはその個数を計測し、その密度(単位面積あたりの輝点の数、単位:個/m2)を求めた。具体的には、輝点の密度の算出は、下記式:
輝点の密度(個/m2)=(3枚のサンプルにおける輝点の合計個数)/(3枚のサンプルの合計面積)
に従った。結果を表1に示す。
また、上記条件において輝度が認められた場合には、下記の条件(A)又は(B)のいずれかを加えること以外は上記と同様にして輝点の密度を求めた。結果を表1に示す。
(A)バックライトと検査用の偏光板との間に平均透過率50%のNDフィルタをさらに配置する(この場合、バックライトの実質的な輝度は、10,000cd/m2となる。)。
(B)バックライトと検査用の偏光板との間に平均透過率3%のNDフィルタをさらに配置する(この場合、バックライトの実質的な輝度は、600cd/m2となる。)。
(6)視感度補正単体透過率Ty及び視感度補正偏光度Pyの測定
積分球付き吸光光度計(日本分光(株)製の「V7100」)を用い、得られた透過率、偏光度に対してJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率Ty及び視感度補正偏光度Pyを測定した。
(7)ガイドロールの回転抵抗の測定
ロールに薄いフィルム(厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)を巻き付けた後、巻き付けたフィルムの外側の端部をバネばかりに固定し、バネばかりをロールの回転数が100rpmとなるように一定速度で引いた際のバネばかりにかかる荷重を測定し、これをガイドロールの回転抵抗とした。
(8)ガイドロール表面の水に対する接触角(対水接触角)の測定
接触角計(協和界面科学社製の全自動接触角計「DM−701」)を用いて、液滴法により、温度23℃、相対湿度50%の条件下で測定した。
<実施例1>
乾燥処理部が合計15個のガイドロール(フリーロール)を含む(いずれもフィルム表面に接する。)こと以外は図1及び図2と同様の偏光フィルム製造装置を用いて、長尺のPVA系樹脂フィルム10から長尺の偏光フィルム25を連続製造した。次いで、得られた偏光フィルム25を用いて偏光板を作製した。具体的には次のとおりである。
(1)PVA系樹脂フィルム10の用意
PVA系樹脂フィルム10として次のPVA系樹脂フィルムaを用意した。このPVA系樹脂フィルムaは、厚み30μmのポリビニルアルコールフィルムを乾式で4.1倍に一軸延伸したものであり、フィルムを構成するポリビニルアルコールのケン化度は99.9モル%以上、平均重合度は2400であり、フィルムを構成するポリビニルアルコール100重量部に対して10重量部の可塑剤を含有している。
(2)湿式処理工程S101
PVA系樹脂フィルムaを巻出ロール11から巻き出しながら、張力をかけて緊張状態を保ったまま連続的に搬送し、40℃の純水を収容する膨潤処理槽13に滞留時間60秒で浸漬してPVA系樹脂フィルムaを十分に膨潤させた(膨潤処理工程)。膨潤処理槽13から引き出したフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水が重量比で0.1/6/100である30℃の染色処理液を収容する染色処理槽15に滞留時間60秒で浸漬しながら、その間に一軸延伸(浴中でのロール間延伸)を行った(染色処理工程)。染色処理槽15から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で15/5.5/100である68℃の架橋処理液を収容する架橋処理槽17に滞留時間130秒で浸漬しながら、その間に一軸延伸(浴中でのロール間延伸)を行った(架橋処理工程)。架橋処理槽17から引き出したフィルムを、20℃の純水を収容する洗浄処理槽19に滞留時間3秒で浸漬して洗浄を行った(洗浄処理工程)。PVA系樹脂フィルムaを基準とする累積延伸倍率は、4.5倍であった。
(3)乾燥処理工程S102
引き続き、洗浄処理槽19から引き出したフィルムを連続的に搬送しながら、熱風オーブンである乾燥炉21に導入し、滞留時間90秒、温度60℃の乾燥処理を行って、偏光フィルム25を得た。得られた偏光フィルム25の厚みは12μm、視感度補正単体透過率Tyは42.5%、視感度補正偏光度Pyは99.993%、水分率は10重量%であった。得られた偏光フィルム25について特定凹凸欠陥の確認を行った。結果を表1に示す。なお、最初の低回転抵抗ロールに接するときのフィルムの厚みは、偏光フィルム25の厚みと実質的に同じである。
実施例1においては、偏光フィルム製造装置が有するフィルムの搬送経路を構築しているガイドロールのうち、乾燥炉21の前半の搬送経路を構築しているガイドロール(15個のガイドロールのうちの上流側の8個)をすべて低回転抵抗ロールとした。これらの低回転抵抗ロールには次の低回転抵抗ロールIを使用した。乾燥炉21の前半の搬送経路を構築しているガイドロール以外のガイドロール(下流側の7個)には、次のガイドロールIIを用いた。湿式処理部のガイドロールにも、すべて次のガイドロールIIを用いた。
〔低回転抵抗ロールI〕
・構成:芯材にカーボンを用い、表面にフッ素系樹脂層がコーティングされたガイドロール、
・回転抵抗:0.008N、
・単位体積あたりの重量:640kg/m3、
・表面の対水接触角:95度、
・各低回転抵抗ロールにおけるフィルムの角度α(搬送方向変化角度):90°又は180°(各実施例及び比較例に共通)。
〔ガイドロールII〕
・構成:芯材にSUS304を用い、表面にクロムめっきが施されたガイドロール、
・回転抵抗:0.03N、
・単位体積あたりの重量:1600kg/m3、
・表面の対水接触角:75度。
得られた偏光フィルム25をついて、上述の方法により、特定凹凸欠陥及び輝点(光抜け)の評価を行った。結果を表1に示す。
(4)偏光板の作製
得られた偏光フィルム25を連続的に搬送するとともに、第1保護フィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」、厚み:25μm〕、及び第2保護フィルム〔JSR(株)製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「FEKB015D3」、厚み:15μm〕を連続的に搬送し、偏光フィルム25と第1保護フィルムとの間、及び偏光フィルム25と第2保護フィルムとの間に水系接着剤を注入しながら、貼合ロール間に通して第1保護フィルム/水系接着剤層/偏光フィルム25/水系接着剤層/第2保護フィルムからなる積層フィルムとした。
上記の水系接着剤には、ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製の商品名「ゴーセファイマー」、平均重合度1100〕を95℃の熱水に溶解して得られた濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液に架橋剤〔日本合成化学工業(株)製のグリオキシル酸ナトリウム〕をポリビニルアルコール粉末10重量部に対して1重量部の割合で混合した水溶液を用いた。
引き続き、得られた積層フィルムを搬送し、熱風乾燥機に通して80℃、300秒の加熱処理を行うことにより水系接着剤層を乾燥させて偏光板を得た。
<実施例2>
次の低回転抵抗ロールIIIを使用したこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルム25(厚み12μm)を作製し、次いで偏光板を作製した。特定凹凸欠陥及び輝点(光抜け)の評価結果を表1に示す。
〔低回転抵抗ロールIII〕
・構成:芯材にカーボンを用い、表面にダイヤモンドライクカーボン層がコーティングされたガイドロール、
・回転抵抗:0.008N、
・単位体積あたりの重量:640kg/m3、
・表面の対水接触角:105度。
<実施例3>
乾燥炉21の前半の搬送経路を構築しているすべてのガイドロールに加えて、洗浄処理槽19と乾燥炉21とを接続する搬送経路を構築しているすべてのガイドロールを低回転抵抗ロールIとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルム25(厚み12μm)を作製し、次いで偏光板を作製した。特定凹凸欠陥及び輝点(光抜け)の評価結果を表1に示す。
<実施例4〜6>
PVA系樹脂フィルム10として、厚み20μmのポリビニルアルコールフィルムを乾式で4.1倍に一軸延伸してなるPVA系樹脂フィルムbを用いたこと以外はそれぞれ実施例1〜3と同様にして偏光フィルム25(厚み7μm)を作製し、次いで偏光板を作製した。特定凹凸欠陥及び輝点(光抜け)の評価結果を表1に示す。
<比較例1>
低回転抵抗ロールIを用いることなく、偏光フィルム製造装置が有するフィルムの搬送経路を構築しているガイドロールをすべて上述のガイドロールIIとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルム25(厚み12μm)を作製し、次いで偏光板を作製した。特定凹凸欠陥及び輝点(光抜け)の評価結果を表1に示す。
<比較例2>
PVA系樹脂フィルム10として、厚み20μmのポリビニルアルコールフィルムを乾式で4.1倍に一軸延伸してなるPVA系樹脂フィルムbを用いたこと以外は比較例1と同様にして偏光フィルム25(厚み7μm)を作製し、次いで偏光板を作製した。特定凹凸欠陥及び輝点(光抜け)の評価結果を表1に示す。