以下、本発明の実施形態に係る3次元造形装置について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係る3次元造形装置1の縦断面図である。図2は、3次元造形装置1の平面図である。なお、以下の説明においては、図1の左、右をそれぞれ3次元造形装置1の前、後とする。また、図2の上、下をそれぞれ3次元造形装置1の左、右とする。図1等において、符号F、Rr、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、3次元造形装置1の設置態様を何ら限定するものではない。図1に示すように、3次元造形装置1は、台11と、槽12と、ホルダ13と、光学装置14とを備えている。
台11には、開口21が形成されている。開口21は、後述する光硬化性樹脂23に照射する光を通過させる部位である。開口21の形状は特に限定されない。本実施形態では、図2に示すように、開口21は平面視矩形状に形成されている。開口21は、光通過部の一例である。
図1に示すように、槽12は、台11上に載置される。槽12は、台11に取り付け可能に配置されている。図2に示すように、槽12は、台11に載置された状態において、台11の開口21を覆っている。図1に示すように、槽12は、液体の光硬化性樹脂23を収容する。光硬化性樹脂23とは、光を照射することによって硬化することが可能な樹脂のことである。図2に示すように、槽12は、平面視略矩形状の容器である。槽12は、平面視矩形状の底板と、底板の左端部、右端部、前端部、後端部からそれぞれ起立した左側板、右側板、前側板、後側板とを備えている。槽12の底板は、槽12が台11上に載置された際に、一部が台11の開口21の上方に位置している。ここでは、槽12の底板の後部が開口21の上方に位置している。槽12のうち少なくとも底板は、光を透過させることのできる材料、例えば透明な樹脂またはガラス等で形成されている。本実施形態では、槽12は透明なアクリル樹脂で形成されている。なお、槽12の底板の表面には、光硬化性樹脂23が固着してしまうことを抑制する層が設けられていてもよい。例えば、槽12の底板の表面には、シリコン層が設けられていてもよい。
図1に示すように、ホルダ13は、槽12の上方に配置されている。ここでは、図2に示すように、ホルダ13は、台11の開口21の上方に配置されている。ホルダ13の形状は特に限定されないが、ここでは開口21と同様、平面視矩形状に形成されている。ホルダ13は、昇降自在な部材である。図1に示すように、ホルダ13は、後述する光源装置14のプロジェクタ31からの光が照射されて硬化した光硬化性樹脂23を引き上げる。ホルダ13は、下降したときに槽12内の光硬化性樹脂23に浸漬するように構成されている。また、ホルダ13は、上昇するときに、光が照射されて硬化した光硬化性樹脂23を吊り上げるように構成されている。本実施形態では、台11には、上下方向に延びた支柱41が設けられている。支柱41の前方には、スライダ42が取り付けられている。スライダ42は、支柱41に沿って昇降自在であり、モータ(図示せず)によって上方または下方に駆動される。ここでは、ホルダ13は、昇降自在なスライダ42に取り付けられている。ホルダ13は、上記モータによって上方または下方に駆動される。支柱41は、スライダ42を介して、ホルダ13を昇降自在に間接的に支持している。ただし、支柱41はホルダ13を直接的に支持していてもよい。ホルダ13は支柱41の前方に配置されている。
次に、ホルダ13と槽12と台11の開口21との詳しい位置関係について説明する。なお、ホルダ13は前後に移動不能であってもよいが、前後に移動可能になっていてもよい。その場合、以下に説明する位置関係は、ホルダ13が最も後側に位置する場合の位置関係を意味するものとする。また、ホルダ13は左右に移動不能であってもよいが、左右に移動可能になっていてもよい。その場合、以下に説明する位置関係は、ホルダ13が左右の中央に位置する場合の位置関係を意味するものとする。
図1に示すように、槽12の前後方向の長さL3は、ホルダ13の前後方向の長さL1よりも長い。本実施形態では、槽12の前後方向の長さL3は、ホルダ13の前後方向の長さL1の2倍以上である。ホルダ13の前端13fは槽12の前端12fよりも後方に位置している。ホルダ13の後端13bは槽12の後端12bよりも前方に位置している。ホルダ13の前後方向の中央13Cは、槽12の前後方向の中央12Cよりも後方に位置している。槽12は、ホルダ13よりも前方に延びている。図2に示すように、槽12は、ホルダ13よりも左方および右方にも若干延びている。図1に示すように、槽12の前端12fとホルダ13の前端13fとの前後方向の長さL2は、ホルダ13の前端13fとホルダ13の後端13bとの前後方向の長さ(言い換えると、ホルダ13の前後方向の長さ)L1よりも長い。ただし、槽12の前端12fとホルダ13の前端13fとの前後方向の長さL2は、ホルダ13の前後方向の長さL1と等しくてもよい。
図2に示すように、台11の開口21は、平面視において、ホルダ13よりも前後方向および左右方向に大きい。また、ホルダ13は、平面視において、開口21の周縁よりも内側に配置されている。
図1に示すように、光学装置14は、台11の下方に配置されている。光学装置14は、槽12内の液体の光硬化性樹脂23に光を照射する装置である。本実施形態では、光学装置14は台11の下方に設けられたケース25に収容されている。光学装置14は、プロジェクタ31と、ミラー32とを備えている。
プロジェクタ31は光を発する光源の一例である。ただし、光学装置14の光源はプロジェクタ31に限定される訳ではない。本実施形態では、プロジェクタ31は、台11の前部の下方に配置されている。プロジェクタ31は、レンズ34を備えている。レンズ34は、プロジェクタ31の後部に配置されている。レンズ34を通じて前方から後方に向かって光が発せられる。プロジェクタ31の投光方向は特に限定されない。ここでは、プロジェクタ31から発せられる光は、レンズ34の光軸Aを通る水平面の下方よりも上方に多く照射される。
本実施形態では、プロジェクタ31には、制御装置35が接続されている。制御装置35は、プロジェクタ31から発せられる光を制御する。例えば、制御装置35は、プロジェクタ31から発せられる光の波長帯域、光の形状および光を発するタイミングなどを制御する。制御装置35の構成は特に限定されない。例えば、制御装置35は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。
次に、プロジェクタ31の設置位置について詳しく説明する。図1に示すように、プロジェクタ31は、ホルダ13よりも前方に配置されている。ここでは、プロジェクタ31は、ホルダ13の前方斜め下に配置されている。そして、プロジェクタ31の後端部は、槽12の下方に配置されている。詳しくは、プロジェクタ31の後端部は、槽12の真下に配置されている。プロジェクタ31の前後方向の中央Cも、槽12の下方に配置されている。ここでは、プロジェクタ31の前端部は、槽12の前端12fよりも前方に位置している。ただし、プロジェクタ31の前端部は、槽12の前端12fよりも後方に位置していてもよい。
ミラー32は、プロジェクタ31からの光を槽12に向かって反射させるものである。本実施形態では、ミラー32は、台11に形成された開口21の下方、かつ、プロジェクタ31の後方に配置されている。ミラー32は、前下がりに傾斜して配置されている。プロジェクタ31から発せられた光は、ミラー32によって反射され、台11の開口21を通じて槽12内の光硬化性樹脂23に照射される。ここで、3次元物体を造形するに先立って、プロジェクタ31からの全ての光が開口21を通過するように、光の照射方向を調整する必要がある。本実施形態では、3次元物体を造形するに先立って、プロジェクタ31の上下方向の位置を調整することによって光の照射方向を調整しているが、ミラー32の角度を調整することによって光の照射方向を調整してもよい。
次に、プロジェクタ31とミラー32との詳しい位置関係について説明する。図1に示すように、ミラー32は、プロジェクタ31と前後方向に並ぶように配置されている。ここでは、側面視において、プロジェクタ31のレンズ34の光軸Aは、ミラー32の中心Bよりも下方に位置する。また、レンズ34の下端34dとミラー32の下端32dとは、略同じ高さである。レンズ34の下端34dとミラー32の下端32dとの上下位置の差は、プロジェクタ31の上下長さ以下であってよく、レンズ34の上下長さ以下であってもよい。勿論、レンズ34の下端34dとミラー32の下端32dとの上下位置の差は、零であってもよい。
3次元造形装置1は、脚15を備えている。脚15は、傾斜装置の一例である。脚15は、槽12の底面の前部が槽12の底面の後部よりも上方に配置されるように、すなわち、槽12が後側に傾くように、槽12を傾斜させるものである。本実施形態では、脚15は、ケース25の底板に設けられている。脚15は、ケース25の底板の四隅部に設けられており、合計4つ設けられている。図1では、ケース25の底板の左前部および左後部に設けられた脚15が図示されているが、ケース25の底板の右前部および右後部にも同様の脚15が設けられている。
ケース25は、台11、光学装置14、支柱41、およびホルダ13を支持している。前側の脚15を後側の脚15よりも長くすることにより、ケース25を後下がりに傾斜させることができる。ケース25が後下がりに傾斜すると、台11の上に載置された槽12も後下がりに傾斜する。本実施形態では、脚15の長さを調節することによって、槽12を傾斜させることが可能である。ここでは、4つの脚15は、それぞれ独立して長さを調節することが可能である。脚15は、ケース25の底面に形成された孔(図示せず)に挿入される軸15aを備えている。この軸15aがケース25の底板に挿入される長さを適宜調節することにより、脚15の長さを調節することができ、槽12を適宜傾斜させることができる。例えば、図3に示すように、4つの脚15のうち、前側の脚15を後側の脚15よりも高くすることで槽12を後側に傾けることができる。
ケース25の底板に対して軸15aの挿入長さを調節する機構は特に限定されない。例えば、軸15aが雄ねじで構成され、ケース25の底板の孔が雌ねじで構成されていてもよい。この場合、軸15aを回転させることにより、脚15の長さを調節することができる。
なお、本実施形態では、槽12を傾斜させると、3次元造形装置1自体も傾斜する。すなわち、台11、光学装置14、およびホルダ13はケース25に支持されているので、前側の脚15の長さと後側の脚15の長さとを相違させると、槽12だけでなく、台11、光学装置14およびホルダ13も槽12と同様に傾斜する。しかし、光学装置14と、台11の開口21と、槽12と、ホルダ13との相対的な位置関係は変化しない。3次元造形装置1の各部位同士の位置関係は変化しない。よって、槽12を傾斜させたとしても、3次元造形の品質が低下するおそれはない。
本実施形態では、図1に示すように、3次元造形装置1には、カバー45が設けられている。カバー45は、台11よりも上方に配置された槽12、ホルダ13および支柱41などを覆う部材である。カバー45により、照射された光が外部に漏れることを防止することができる。カバー45は、光硬化性樹脂23を硬化させる波長を含んだ光を遮断する材料で構成されていることが好ましい。カバー45は、不透明なカバーであってもよい。また、カバー45によって、槽12内の光硬化性樹脂23に外部からのごみなどが入りにくくすることができる。カバー45は、鉛直に延びる前壁45aと、鉛直に延びる後壁45bと、前下がりに傾斜する上壁45cとを備えている。上壁45cの後端45cbは支柱41の上端41tよりも高く、上壁45cの前端45caは支柱41の上端41tよりも低い。
本実施形態の3次元造形装置1では、以下のようにして3次元物体の造形を行う。先ず、制御装置35によって、プロジェクタ31のレンズ34を通して、プロジェクタ31から光を照射させる。プロジェクタ31の光は、ミラー32によって反射される。ミラー32に反射した光は、台11の開口21を通過する。開口21を通過した光は、槽12の底板を通過する。槽12の底板を通過した光は、上記底板とホルダ13との間に位置し、槽12内に収容された光硬化性樹脂23に照射される。光を受けた光硬化性樹脂23は硬化する。ミラー32の角度が適宜変更されることにより、光の照射位置が適宜変更され、光硬化性樹脂23によって、所望の断面形状を有する固体の樹脂の層が形成される。
上記層が形成されると、ホルダ13を昇降自在に動かすモータ(図示せず)が駆動され、ホルダ13は上方に移動する。このとき、ホルダ13に保持された固体の樹脂層は引き上げられ、その樹脂層と槽12との間に隙間が形成される。この隙間に液体状の光硬化性樹脂23が流れ込む。そして、プロジェクタ31からの光が上記隙間内の光硬化性樹脂23に照射され、所望の断面形状を有する次の固体の樹脂層が形成される。以後、同様の動作が繰り返され、所望の3次元形状を有する物体が生成される。
以上のように、本実施形態では、図1に示すように、槽12の前端12fとホルダ13の前端13fとの間の前後方向長さL2は、ホルダ13の前後方向長さL1よりも長い。槽12はホルダ13よりも前方に大きく延びている。槽12の平面視面積は大きい。そのため、槽12では、平面視面積の小さな槽に比べて、液体の光硬化性樹脂23が流動しやすい。ホルダ13が硬化した光硬化性樹脂23を引き上げると、その硬化後の光硬化性樹脂23の下方には、液体の光硬化性樹脂23が供給される。本実施形態によれば、硬化後の光硬化性樹脂23の下方には、光が照射されていない新鮮な光硬化性樹脂23が供給されやすい。したがって、3次元造形の品質を向上させることができる。
また、槽12の平面視面積が大きいので、槽12内の光硬化性樹脂23の液面高さを低く抑えることができる。よって、ホルダ13を槽12内の光硬化性樹脂23に浸したときに、光硬化性樹脂23が槽12からこぼれにくくすることができる。
ところで、槽12の同じ箇所にプロジェクタ31からの光を長期間にわたって照射すると、槽12の一部が部分的に経年劣化して白濁するおそれがある。ところが、槽12内の光硬化性樹脂23は、槽12を通過する光に照射されるので、槽12が白濁すると、槽12内の光硬化性樹脂23に光を良好に照射することが難しくなる。図4(a)は、台11に槽12が載置された状態の平面図である。図4(a)は、槽12の第1の状態を示している。すなわち、図4(a)では、槽12の底板の後部が台11の開口21を覆うようにして槽12が台11上に載置されている。図4(a)に示すように、例えば、槽12が第1の状態において、槽12の底板の後部の位置Dに光を照射し続けると、位置Dが白濁することがある。このことによって、槽12内に収容された光硬化性樹脂23のうち、位置Dの上方に位置する光硬化性樹脂23が硬化しにくくなるおそれがある。
しかし、本実施形態では、槽12はホルダ13よりも前方に大きく延びている。槽12は、図4(a)の第1の状態から槽12の前後を入れ替え、図4(b)に示すように、槽12の底板の前部が開口21を覆うようにして槽12が台11上に載置された状態(第2の状態)とすることができる。そのため、槽12の後部が白濁した場合、図4(b)に示すように、槽12の前と後とを入れ替えて使用することができる。第1の状態(図4(a))において、槽12の底板のうち開口21の上方に位置する部分は、第2の状態(図4(b))では、開口21の上方から外れた部分に位置する。すなわち、同一の槽12を、位置Dが開口21の上方から外れるようにして使用することができる。したがって、槽12の一部が白濁したとしても、その槽12を使って3次元造形を良好に行うことが可能である。
ホルダ13を昇降自在に支持する支柱41は、ホルダ13の右方または左方に配置されていてもよい。しかし、本実施形態によれば、図1に示すように、ホルダ13は支柱41の前方に配置されている。支柱41はホルダ13の後方に配置されているので、槽12が前方に延びているにも拘わらず、支柱41と槽12との干渉を避けることができる。
ところで、槽12が前方に延びている分、槽12等を覆うカバー45は大型化する傾向にある。しかし、本実施形態によれば、カバー45の上壁45cは、前下がりに傾斜している。そのため、カバー45の上壁45cが水平に延びている場合に比べて、カバー45の大型化を抑制することができる。したがって、3次元造形装置1の大型化を抑えることができる。
また、本実施形態では、プロジェクタ31は、ホルダ13よりも前方に配置され、かつ、プロジェクタ31の後端部は槽12の下方に配置されている。槽12が前方に延びている分だけ、槽12の前部の下方には、スペースの余裕がある。そのスペースにプロジェクタ31を配置することで、余裕スペースを有効活用することができる。その結果、3次元造形装置1をコンパクトにすることができる。
本実施形態では、図2に示すように、台11に形成された開口21は、平面視において、ホルダ13よりも前後方向および左右方向に大きい。ホルダ13は、平面視において、開口21の周縁よりも内側に配置されている。このことによって、プロジェクタ31からの光は、開口21を通過してホルダ13付近の光硬化性樹脂23に照射され易くなる。よって、所望の3次元物体を容易に造形することができる。なお、開口21が大きいと、ホルダ13付近以外の光硬化性樹脂23にも光が照射されるおそれが高くなり、ホルダ13を上昇させたときに、ホルダ13付近に新鮮な光硬化性樹脂23が供給されにくくなるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、槽12内の光硬化性樹脂23は流動性が良好であり、ホルダ13付近には、光が照射されていない新鮮な光硬化性樹脂が供給されやすい。したがって、開口21が大きくても、高品質の3次元物体を造形することができる。
また、本実施形態では、光学装置14の光源として、プロジェクタ31を利用している。図1に示すように、プロジェクタ31は、ミラー32と前後方向に並ぶように配置されている。プロジェクタ31からの光は、レンズ34の光軸Aから若干上方に向かって照射される。しかし、本実施形態によれば、側面視において、プロジェクタ31のレンズ34の光軸Aは、ミラー32の中心Bよりも下方に位置する。また、レンズ34の下端34dとミラー32の下端32dとは、略同じ高さである。そのため、プロジェクタ31からの光をミラー32に照射し易くなる。よって、ミラー32で反射した光を台11の開口21に導きやすくなり、槽12内の光硬化性樹脂23に光を良好に照射させることができる。
また、本実施形態では、3次元造形装置1は、槽12の底面の前部が槽12の底面の後部よりも上方に配置されるように槽12を傾斜させる脚15を備えている。このことによって、槽12内の光硬化性樹脂23の量が少ない場合、図3に示すように、脚15の長さを調節することによって槽12を後側に傾けることができる。これにより、光硬化性樹脂23は槽12の後部に溜まる。よって、槽12内の光硬化性樹脂23の量が少ない場合であっても、光が照射されて硬化した光硬化性樹脂23の下方に、液体の光硬化性樹脂23を良好に供給することができる。
本実施形態では、脚15の長さを調節することにより、ケース25が傾斜する。ケース25が傾斜することにより、槽12が傾斜するようになっている。ケース25を傾けるという簡単な方式により、槽12を傾斜させることができる。ところで、ケース25は、台11、光学装置14、およびホルダ13を支持している。そのため、ケース25が傾斜すると、槽12だけでなく、台11、光学装置14、およびホルダ13が槽12と一体となって傾斜する。したがって、ケース25が傾斜したとしても、光学装置14と、台11の開口21と、槽12と、ホルダ13との相対的な位置関係は変化しない。よって、ケース25が傾斜した場合であっても、3次元造形の品質が低下するおそれはない。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することが可能である。
上記実施形態では、槽12は平面視矩形状に形成されていた。槽12は、平面視正方形状であってもよく、平面視長方形状であってもよい。また、槽12の平面視形状は、矩形状以外の形状であってもよい。
上記実施形態では、4本の脚15がケース25の底板の四隅部に設けられていた。しかし、脚15の本数は4本に限定されない。
また、上記実施形態では、槽12を傾斜させる傾斜装置は、長さ調節が自在な脚15により構成されていた。しかし、傾斜装置は脚15に限定される訳ではない。また、傾斜装置は、ケース25を傾斜させることによって槽12を傾斜させるものに限定されない。傾斜装置は、槽12のみを傾斜させるものであってもよい。例えば、傾斜装置は、槽12に設けられた長さ調節自在な脚であってもよい。
上記実施形態では、光学装置14はミラー32を備えていた。しかし、ミラー32は必ずしも必要ではない。光学装置14は、光源から台11の開口21に向かって光を直接照射するように構成されていてもよい。
上記実施形態では、光学装置14の光源はプロジェクタ31であった。しかし、光源はプロジェクタ31に限定されない。光源は、例えばレーザであってもよい。
上記実施形態では、光硬化性樹脂23に照射する光を通過させる光通過部は、台11に形成された開口21であった。しかし、光通過部は、開口21に限定されない。光通過部は、光硬化性樹脂23に照射する光を通過させればよく、例えば、光通過部は、台11に設けられた透明な板であってもよい。また、台11が透明の板で形成されていてもよい。この場合、台11自体が光通過部となる。
<その他の発明>
ホルダを順次上昇させることにより物体を一層毎に造形していく上記3次元造形装置では、ホルダを上昇させたときに、ホルダによって引き上げられた硬化後の光硬化性樹脂の下方に、次の層を形成することになる液体の光硬化性樹脂を迅速かつ安定して供給することが重要となる。特許文献1に記載された3次元造形装置では、平面視において、槽はホルダ(特許文献1では、キャリアプラットフォームと称する)よりも若干大きい程度であり、槽の平面視面積は小さい。そのため、槽の平面視面積が大きい場合に比べて、液体の光硬化性樹脂は槽内において流動しにくい。そのため、ホルダを引き上げたときに、硬化後の光硬化性樹脂の下方には、既に若干の光が照射されて多少劣化した液体の光硬化性樹脂が残りやすく、光が照射されていない新鮮な光硬化性樹脂は供給されにくい。よって、3次元造形の品質が低下するおそれがあり、3次元物体を所望通りに造形しにくい場合があった。
そこで、その他の発明では、高品質の3次元物体を造形することができる3次元造形装置を提供することを目的としている。
その他の発明に係る3次元造形装置は、液体の光硬化性樹脂を収容する槽と、前記槽が載置され、前記光硬化性樹脂に照射する光を通過させる光通過部を有する台と、前記台の下方に配置され、光を発する光源を少なくとも有し、前記光通過部を通じて前記光源からの光を前記槽内の前記光硬化性樹脂に照射する光学装置と、前記槽の上方において昇降自在に設けられ、下降したときに前記槽内の光硬化性樹脂に浸漬し、上昇するときに、前記光が照射されて硬化した前記光硬化性樹脂を吊り上げるホルダと、を備える。前記槽の所定方向の長さは、前記ホルダの前記所定方向の長さよりも長い。前記所定方向を前後方向としたときに、前記ホルダの前後方向の中央は前記槽の前後方向の中央よりも後方に位置し、かつ、前記槽の前端と前記ホルダの前端との前後方向長さは、前記ホルダの前後方向長さ以上である。
前記3次元造形装置によれば、槽の前端とホルダの前端との前後方向長さは、ホルダの前後方向長さ以上である。槽はホルダよりも前方に大きく延びており、槽の平面視面積が大きい。よって、槽内において、液体の光硬化性樹脂は流動しやすい。ホルダが上昇したときに、硬化後の光硬化性樹脂の下方には、光が照射されていない新鮮な光硬化性樹脂が供給されやすい。したがって、3次元造形の品質を向上させることができる。
その他の発明の好ましい一態様によれば、前記台上に配置され、前記ホルダを昇降自在に支持する支柱を備えている。前記ホルダは前記支柱の前方に配置されている。
上記態様によれば、支柱はホルダの後方に配置されるので、支柱とホルダよりも前方に延びる槽との干渉を防止することができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記槽、前記ホルダ、および前記支柱を覆うカバーを備えている。前記カバーは、前下がりに傾斜する上壁を備えている。
槽が前方に延長されていると、槽等を覆うカバーは大型化する傾向にある。しかし、上記態様によれば、カバーの上壁は前下がりに傾斜している。そのため、カバーの上壁が水平に延びている場合に比べて、カバーの大型化を抑制することができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記光学装置の前記光源は、前記ホルダよりも前方に配置され、かつ、前記光源の後端部は前記槽の下方に配置されている。
槽が前方に延長されると、槽の下方(特に、槽の前部の下方)にスペースの余裕が生まれる。上記態様によれば、余裕スペースを光源の設置スペースとして有効活用することができる。したがって、3次元造形装置の大型化を抑制することができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記光通過部は、前記台に形成された開口であり、前記開口は、平面視において、前記ホルダよりも前後方向および左右方向に大きい。前記ホルダは、平面視において、前記開口の周縁よりも内側に配置されている。
上記態様によれば、光源からの光は、開口を通過してホルダ付近の光硬化性樹脂に照射され易くなる。よって、所望の3次元物体を容易に造形することができる。なお、開口が大きいと、ホルダ付近以外の光硬化性樹脂にも光が照射されるおそれが高くなり、ホルダ付近に新鮮な光硬化性樹脂が供給されにくくなるおそれがある。しかし、槽内の光硬化性樹脂は流動性が良好なので、ホルダ付近には、光が照射されていない新鮮な光硬化性樹脂が供給されやすくなる。したがって、開口が大きくても、高品質の3次元物体を造形することができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記槽の底面の前部が前記槽の底面の後部よりも上方に配置されるように前記槽を傾斜させる傾斜装置を備えている。
槽が前方に延長されている場合、槽内の光硬化性樹脂の量が少なくなると、硬化した光硬化性樹脂の下方に液体の光硬化性樹脂が供給されにくくなるという課題がある。しかし、上記態様によれば、槽内の光硬化性樹脂の量が少ない場合、傾斜装置によって槽を後側に傾けることができるため、槽内の光硬化性樹脂は槽の後部に溜まる。よって、槽内の光硬化性樹脂の量が少ない場合であっても、硬化した光硬化性樹脂の下方に液体の光硬化性樹脂を良好に供給することができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記台、前記光学装置、および前記ホルダを支持するケースを備えている。前記傾斜装置は前記ケースを傾斜させるように構成されている。
槽は台の上に載置されているので、台を傾斜させることにより、槽を傾斜させることができる。上記態様によれば、ケースを傾斜させるという簡単な方式により、槽を傾斜させることができる。簡単な構成により、前記傾斜装置を得ることができる。なお、槽の傾斜に伴ってホルダも傾斜するが、光学装置も傾斜するので、3次元造形の品質が低下することはない。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記光源は、レンズを有し、後方に向かって光を照射するプロジェクタからなっている。前記プロジェクタの後方に配置され、前記プロジェクタからの光を前記台の前記光通過部に向けて反射させるミラーを備えている。側面視において、前記レンズの光軸は、前記ミラーの中心よりも下方に位置する。
プロジェクタからの光は、レンズの光軸から若干上方に向かって照射されやすい。上記態様によれば、レンズの光軸がミラーの中心よりも下方に位置するので、プロジェクタからの光をミラーに照射し易くなる。そのため、ミラーで反射した光を台の光通過部に導きやすくなり、槽内の光硬化性樹脂に光を良好に照射させやすくなる。よって、3次元造形の品質を向上させることができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記レンズの下端と前記ミラーの下端とは、略同じ高さである。
上記態様によれば、プロジェクタからの光をミラーに照射し易くなる。よって、ミラーで反射した光を台の光通過部に導きやすくなり、3次元造形の品質を向上させることができる。
その他の発明の好ましい他の一態様によれば、前記槽は、前記台上に載置された際に、一部が前記光通過部の上方に位置する底板を有する。前記底板の後部が前記光通過部を覆うようにして前記槽が前記台上に載置される状態を第1の状態とし、前記第1の状態から前記槽の前後を入れ替え、前記底板の前部が前記光通過部を覆うようにして前記槽が前記台上に載置された状態を第2の状態としたとき、前記第1の状態において、前記底板のうち前記光通過部の上方に位置する部分は、前記第2の状態では、前記光通過部の上方から外れた部分に位置する。
槽が第1の状態のように台上に載置された状態で、槽の同じ箇所に光源からの光を長期間にわたって照射すると、槽の一部が部分的に経年劣化して白濁するおそれがある。槽内の光硬化性樹脂は、槽を通過する光に照射されるので、槽が白濁すると、槽内の光硬化性樹脂に光を良好に照射することが難しくなる。しかし、上記態様によれば、槽を第1の状態から槽の前後を入れ替えた第2の状態にして使用することができる。槽の白濁した部分が光通過部の上方から外れた部分に位置する。したがって、槽の一部が白濁したとしても、その槽を使って3次元造形を良好に行うことが可能である。
その他の発明によれば、高品質の3次元物体を造形することができる3次元造形装置を提供することができる。