JP6384717B2 - コンクリート着色剤、コンクリート着色方法、コンクリート及びコンクリートからなる構造物 - Google Patents
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更に、例えば特許文献3には、吸水性の殆どないインキを用いた絵柄の印刷を施した印刷原紙を合板上に積層してなる型板を用いて型枠を構成し、この型枠内にコンクリートを注入することにより、絵柄の印刷に応じた濃淡をもつコンクリートの表面を形成する化粧コンクリートの打設方法が開示されている。
]
上記(2)のコンクリート着色剤によれば、コンクリート表面に付着されたリグニン及びタンニンのうち少なくとも一方が有する木材の色調を活かして、より自然な木材の風合いに着色することができる。
上記(3)のコンクリート着色剤によれば、コンクリート表面に付着された没食子酸が有する木材の色調を活かして、より自然な木材の風合いに着色することができる。
上記(4)のコンクリート着色剤によれば、コンクリート表面に付着されたケルセチン及びフミン酸のうち少なくとも一方が有する色調を活かして、より自然な木材の風合いに着色することができる。
上記(5)のコンクリート着色剤によれば、複数のフェノール性化合物が有する色調の相互作用を活かして、より自然な木材の風合いに着色することができる。
上記(6)のコンクリート着色剤によれば、実際の木材から抽出される複数種類の化合物を含む色素をコンクリート表面に付着させ、より自然な木材の風合いに着色することができる。
上記(7)のコンクリート着色剤によれば、pH4以上の水系溶媒を用いて実際の木材から抽出される、発色性に優れた複数の化合物からなる色素をコンクリート表面に付着させ、より自然な木材の風合いに着色することができる。
上記(8)のコンクリート着色剤によれば、スギ、ラワン又はラーチが有する木材の色調を活かして、原料の木材に比較的近い風合いでコンクリートの表面を着色することができる。
(9) 前記(1)〜(8)の何れか一項に記載のコンクリート着色剤を、コンクリートの表面に付着させることを特徴とするコンクリート着色方法。
(10) 前記コンクリートの表層部をアルカリ性に維持することを特徴とする前記(9)に記載のコンクリート着色方法。
(11) 前記コンクリートの表層部をpH10以上のアルカリ性に維持することを特徴とする前記(9)に記載のコンクリート着色方法。
(12) 相形状を有する型枠を用いて前記コンクリートを打設する際に、前記コンクリート着色剤を前記型枠における前記コンクリートを打設する面に付着させた後に打設することを特徴とする前記(9)〜(11)のうち何れか一項に記載のコンクリート着色方法。
(13) 前記(9)〜(12)の何れか一項に記載のコンクリート着色方法により着色されたことを特徴とするコンクリート。
(14) 前記(9)〜(12)の何れか一項に記載のコンクリート着色方法により着色されたことを特徴とするコンクリートからなる構造物。
本発明のコンクリート及びそのコンクリートからなる構造物は、材料がコンクリートでありながら、その表面が木材の風合いに着色されているため、見る人に木材ならではの自然な美観性やぬくもり感を与えることができる。
本発明に係るコンクリート着色剤の実施形態は、下記一般式(P1)で表されるフェノール性化合物を含む。一般式(P1)中、Rはn価の有機基を表し、mは1〜5の整数を表し、nは1以上の整数を表す。Rはn個のフェノール性水酸基と結合している。
化合物P1を抽出するために木材を浸漬する溶媒の温度は特に制限されず、例えば10〜60℃程度で抽出することができる。
以下、本発明に係るコンクリート着色方法の実施形態について説明する。
本実施形態のコンクリート着色方法は、建物や構造物に用いられるコンクリートの表面に前述したフェノール性化合物を含むコンクリート着色剤を付着させることで、コンクリートの表面及びその表面近傍にフェノール性化合物(化合物P1)を付着させ、コンクリート表面を着色するものである。
ここで、コンクリート着色剤を「付着させる」とは、「塗布する」、「含浸させる」及び「転写する」を含む用語である。
本実施形態のコンクリート着色方法を用いて製造される化粧コンクリート2は、図1に示すように、建物や構造物を構成するコンクリート部材4(コンクリート)の化粧面4a(表面)に図示しない自然調の色を発するフェノール性化合物(すなわち化合物P1)を含むコンクリート着色剤が塗布されたものである。コンクリート着色剤は、化粧面4aから一定の厚み寸法内側のコンクリート部材4にも浸透している。コンクリート部材4において、化粧面4a及びその表面から一定の厚み寸法内側の化合物P1が含浸された部分を、着色層4dと称する。着色層4dの厚み寸法は、400μm程度である。
図2に示すように、先ず、コンクリート部材4の大きさに合致した木製合板、鋼或いは樹脂等からなる型枠10を組み立てる。図2に示した矩形の型枠10は一例であり、他の形状であってもよい。次に、型枠10内にコンクリート部材4を構成するコンクリート12を打設し、固化させる。コンクリート12の材齢は、使用したコンクリート12の種類、コンクリート部材4に必要とされる強度、仕上がり後の化粧コンクリート2の色合い等を勘案して適宜設定することが好ましい。この後、型枠10を脱型することによって、コンクリート部材4が製造される。
続いて、図3に示すように、コンクリート部材4の化粧面4aに前述したコンクリート着色剤13を塗布する)。なお、高濃度のリグニンはコンクリート12の固化を抑制する場合があるため、コンクリート着色剤13に含まれるリグニンの量はコンクリート12の固化が阻害されない程度であることが好ましい。
以上の工程により、化粧コンクリート2が完成する。
図4は、本実施形態のコンクリート着色方法を用いて製造される化粧コンクリート3を示す模式図である。なお、図4に示す化粧コンクリート3の構成要素のうち、第一実施形態の化粧コンクリート2と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
以下、第二実施形態の化粧コンクリート3の製造方法を説明する。
先ず、図5に示すように、コンクリート部材4の大きさに合致した型枠10を組み立てる。この際、型枠10の底板として、木調の凹凸パターンを型枠10の内側に向けた木製型枠(木材)14を設置する。型枠10の側板としては、底板と同様の木製型枠14を用いてもよく、鋼或いは樹脂からなる型枠材を用いてもよい。なお、型枠10の底板は必ずしも木製である必要はなく、相形状を有していれば木製以外の合成ゴム、金属等から構成されてもよい。
続いて、コンクリート部材4の化粧面4aにコンクリート着色剤13を塗布する。その塗布方法及び乾燥方法は第一実施形態で説明した内容と同様に行うことができる。
以上の工程により、化粧コンクリート3が完成する。
先ず、縦300mm×横100mmのスギ板を底板とし、この底板に合わせた側板を用意して木材からなる型枠を組み上げた。この底板におけるコンクリートの打設面に、スギの木片から水系溶媒へ抽出したフェノール性化合物(化合物P1)を含むコンクリート着色剤13を塗布して、この型枠に水セメント比を50%とした普通ポルトランドセメント(以下、N50と記載する)を打設し、材齢3日で脱型したものを試験体として用意した。なお、使用したN50は練り混ぜ後にブリージングが見られなくなるまで練り置きを行った。また、試験体と共に、参考試料として型枠の底板に使用したスギ板と同種のスギ材を用意した。
図7にSEMによる断面写真を示すと共に、図8には測定面近傍のカルシウム元素分布及び炭素元素分布を測定した結果を示す。図7からもわかるように、測定面の表層から約400μmの厚み寸法内側の試験体と、それより内側の試験体とで画像の濃淡に差異がみられた。この濃淡の差異に関して、図8に示す元素マッピングの結果を見ると、試験体の測定面の表層には炭素元素が多く分布しており、カルシウム元素が表層より内側の試験体と比較して少なく分布していることがわかる。即ち、図7の濃淡の差異は、試験体中の炭素元素濃度及びカルシウム元素濃度の差異によって生じたものと推定される。カルシウム元素はセメントに由来するものであるが、試験体の測定面の表層からの厚み寸法で炭素元素濃度に変化が生じる要因としては、コンクリート着色剤からの炭素元素(化合物P1)の供給が考えられる。これらの結果より、試験体の測定面における変色は、炭素元素を多く含有する物質に起因するものであることを確認した。また、本実施例では試験体の測定面から厚み寸法約400μm内側までの範囲が着色された。
0058−1のスラグ類の化学物質試験方法を参考に酸アルカリ水溶液抽出実験を行った。具体的には、各試料と酸アルカリ水溶液を重量体積比1:10で混合し、6時間振とうした。抽出後、懸濁液を2000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を0.45μmのフィルターでろ過した。その後、ろ液のpHと全有機炭素(Total Organic Carbon:TOC)量と吸光度を、市販のpH電極及びTOC計と、分光分析装置(型番:U−2000、株式会社日立製作所製)を用いて測定した。
pHによって色の濃淡に変化が生じた要因としては、抽出物質の色そのものが変化していることと、抽出物質の濃度が高くなっていることの双方が考えられる。そこで、pH12の抽出溶液を用いて、強酸を加えることで溶液の濃度は殆ど変化させず、pHのみを変化させて溶液の色を目視で観察した。その結果、pHが低下するにつれて溶液の色は淡化した。溶液全体の量は殆ど変化していないため、抽出物質は各pHによって異なる色を示していることになる。また、この呈色反応は可逆的であり、低pHから高pHへ再度変化させた場合は溶液の色が濃化した。これにより、試験体の着色部分にはその内部よりも約5倍の有機物が含まれていること、スギ片から抽出される溶液はpHによって呈色の程度が異なり、セメント中のように高アルカリ性のもの程、濃く呈色することを確認した。
打設するコンクリートが接する面にスギ材を用いた型枠を用意した。また、コンクリート着色剤として、1質量%、5質量%、10質量%のタンニン酸水溶液と10質量%、50質量%、100質量%のリグニン水溶液又はリグニン液をそれぞれ用意した。ここで使用したタンニン酸及びリグニンは試薬として購入できる市販品である。続いて、型枠とコンクリートが接する面に各濃度のタンニン酸水溶液とリグニン水溶液をそれぞれ塗布し、普通コンクリートを打設した。各々のコンクリートを乾燥材齢1日で脱型し、試験体B〜Gとした。また、タンニン酸水溶液及びリグニン水溶液の何れのコンクリート着色剤も型枠に塗布せずに、普通コンクリートを打設し、乾燥材齢1日で脱型した試験体Aを用意した。
着色前のコンクリート試料として、普通ポルトランドセメントからなる直径30センチの円盤状の白色プレートを常法により作製した。この白色のプレートに、タンニン酸を5〜10質量%濃度で含有するタンニン酸水溶液を塗布して乾燥させたところ、塗布した部分を木材様の褐色に着色することができた。また、タンニン酸を没食子酸に変更して同様の試験を行ったところ、タンニン酸の場合とは異なる風合いの木材様の褐色に着色することができた。
タンニン酸水溶液に硫酸鉄を溶解したところ、タンニン酸水溶液の色が淡褐色から濃褐色へ変化したことを認めた。同様に、没食子酸水溶液に硫酸鉄を溶解したところ、没食子酸水溶液の色が淡褐色から濃褐色に変化したことを認めた。この色の変化は、水溶液中で各化合物及び/又はその加水分解物と、鉄イオンとの錯体が形成されたためであると考えられる。
先ず、縦300mm×横100mmのゴム製の木目模様の凹凸を有する(相形状を有する)板を底板として、この底板に合わせた木製の板を側板として、型枠を組み上げた。
続いて、上記の型枠に普通コンクリート(N50)を打設した。このコンクリートを乾燥材齢4日で脱型して、2日〜1週間程度乾燥させて、木目模様の凹凸(底板の凹凸が反転された凸凹)を表面に有するコンクリート部材を得た。ゴム製の底板を使用したことにより、あばたが無い、美しい仕上がりの表面が得られた。
また、実施例1の結果(表1)と、本実施例における5質量%タンニン酸水溶液を使用した結果とを以下の表3に併記する。
タンニン酸以外のフェノール性化合物P1として、クロロホルム-メタノール混合溶媒で木材から抽出しやすい紫外領域230nmおよび275nmに吸収極大を有するフェノール性化合物や、メタノールで木材から抽出しやすい265nmおよび320nmに吸収極大を有するフェノール性化合物や、メタノール-水混合溶媒で木材から抽出しやすい265nmおよび350nmに吸収極大を有するフェノール性化合物も使用可能である。このようなフェノール性化合物の例として、リグニン、フラボノイド、フミン酸が挙げられる。これらの化合物をタンニン酸と併用した例を以下に示す。
各グラフにおいて、点線は、実施例1の試験体のL*、a*又はb*の結果であり、本実施例を評価する際の基準である。また、各グラフにおいて、B,P,Sは、それぞれバニレックス、パールレックス、サンエキスと称される市販のリグニンであり、Kは市販のケルセチンであり、Fは市販のフミン酸である。ケルセチン及びフミン酸の水に対する溶解度が低かったため、最大1質量%の濃度に留めた。
Claims (13)
- タンニンを含むことを特徴とするコンクリート着色剤。
- 没食子酸を含むことを特徴とするコンクリート着色剤。
- ケルセチンを含むことを特徴とするコンクリート着色剤。
- 更に、リグニン、ケルセチン及びフミン酸から選ばれる一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート着色剤。
- 下記一般式(P1)で表されるフェノール性化合物を含むコンクリート着色剤であって、
前記フェノール性化合物が、木材を水系溶媒に浸けることにより抽出された化合物であることを特徴とするコンクリート着色剤。
- 前記木材をpH4以上の水系溶媒に浸けることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート着色剤。
- 前記木材がスギ、ラワン又はラーチであることを特徴とする請求項5又は6に記載のコンクリート着色剤。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載のコンクリート着色剤を、コンクリートの表面に付着させることを特徴とするコンクリート着色方法。
- 前記コンクリートの表層部をアルカリ性に維持することを特徴とする請求項8に記載のコンクリート着色方法。
- 前記コンクリートの表層部をpH10以上のアルカリ性に維持することを特徴とする請求項9に記載のコンクリート着色方法。
- 相形状を有する型枠を用いて前記コンクリートを打設する際に、前記コンクリート着色剤を前記型枠における前記コンクリートを打設する面に付着させた後に打設することを特徴とする請求項8〜10のうち何れか一項に記載のコンクリート着色方法。
- 請求項8〜11の何れか一項に記載のコンクリート着色方法により着色されたことを特徴とするコンクリート。
- 請求項8〜11の何れか一項に記載のコンクリート着色方法により着色されたことを特徴とするコンクリートからなる構造物。
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