以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図には、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。X−Y平面は水平面に平行で、Z軸方向は鉛直方向である。
<スクライブ装置の構成>
図1(a)、(b)は、スクライブ装置1の構成を模式的に示す図である。図1(a)は、Y軸正側からスクライブ装置1を見た図、図1(b)は、X軸正側からスクライブ装置1の一部を見た図である。
図1(a)を参照して、スクライブ装置1は、コンベア11と、支柱12a、12bと、ガイド13、14と、摺動ユニット15、16と、駆動モータ17、18と、カメラ19a、19bと、2つのスクライブヘッド2を備える。
図1(b)に示すように、コンベア11は、スクライブヘッド2が配置される箇所を除いて、Y軸方向に延びるように設けられている。コンベア11には、マザー基板Gを把持するハンド11aが設置されている。コンベア11上には、ハンド11aに端縁が把持された状態で、マザー基板Gが載置される。マザー基板Gは、一対のガラス基板が相互に貼り合わされた基板構造を有する。マザー基板Gは、ハンド11aに把持された状態で、コンベア11によりY軸方向に送られる。
支柱12a、12bは、スクライブ装置1のベースにコンベア11を挟んで垂直に設けられている。ガイド13、14は、それぞれ、X軸方向に平行となるように、支柱12a、12bの間に架設されている。摺動ユニット15、16は、それぞれ、ガイド13、14に摺動自在に設けられている。ガイド13、14には、それぞれ、駆動モータ17、18が設けられ、これら駆動モータ17、18により、摺動ユニット15、16がX軸方向に駆動される。
摺動ユニット15、16には、それぞれ、スクライブヘッド2が装着されている。Z軸正側のスクライブヘッド2とZ軸負側のスクライブヘッド2には、それぞれ、マザー基板Gに対向するようにスクライビングツール30、40が取り付けられている。スクライビングツール30、40に保持されたスクライビングホイールがマザー基板Gの表面に押し付けられた状態でスクライブヘッド2がX軸方向に移動する。これにより、マザー基板Gの表面にスクライブラインが形成される。
カメラ19a、19bは、ガイド13の上方に配置され、マザー基板Gに記されたアライメントマークを検出する。カメラ19a、19bからの撮像画像によって、コンベア11に対するマザー基板Gの配置位置が検出される。この検出結果に基づいて、スクライブヘッド2のスクライブ開始位置やスクライブ終了位置等、スクライブ動作におけるスクライブヘッド2の各動作位置が決定される。
<スクライブヘッド>
図2は、スクライブヘッド2の構成を示す一部分解斜視図、図3は、スクライブヘッド2の構成を示す斜視図である。
図2を参照して、スクライブヘッド2は、昇降機構21と、スクライブライン形成機構22と、ベースプレート23と、トッププレート24と、ボトムプレート25と、ゴム枠26と、カバー27と、サーボモータ28とを備える。
昇降機構21は、サーボモータ28の駆動軸に連結された円筒カム21aと、昇降部21bの上面に形成されたカムフォロア21cとを備える。昇降部21bは、スライダー(図示せず)を介してベースプレート23に上下方向に移動可能に支持され、バネ21dによってZ軸正方向に付勢されている。バネ21dの付勢により、カムフォロア21cは円筒カム21aの下面に押し付けられている。昇降部21bはスクライブライン形成機構22に連結されている。サーボモータ28により円筒カム21aが回動すると、円筒カム21aのカム作用によって昇降部21bが昇降し、これに伴い、スクライブライン形成機構22が昇降する。スクライブライン形成機構22の下端に、スクライビングツール30、40が装着される。
ゴム枠26は、空気を通さない弾性部材である。ゴム枠26は、ベースプレート23の溝23a、トッププレート24の溝24aおよびボトムプレート25の溝25aに嵌まり込む形状を有している。ゴム枠26が溝23a、24a、25aに装着された状態で、ゴム枠26の表面は、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25の側面よりも僅かに外側に突出する。
カバー27は、前面部27a、右側面部27bおよび左側面部27cの3つの板部が折り曲げられた形状を有する。前面部27aの上下の端縁には、2つの孔27fが形成されている。
ゴム枠26が溝23a、24a、25aに嵌め込まれた状態で、カバー27の右側面部27bと左側面部27cが外側に撓むように変形されて、カバー27がベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25に取り付けられる。この状態で、前面部27aの上下の端縁に形成された2つの孔27fを介して、ネジがトッププレート24およびボトムプレート25に螺着される。さらに、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25の溝23a、24a、25aのやや外側に形成されたネジ穴に、ネジが螺着される。これにより、カバー27が、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25とネジの頭部とによって挟み込まれ、右側面部27bおよび左側面部27cの周縁部がゴム枠26に押し付けられる。こうして、図3に示すようにスクライブヘッド2が組み立てられる。
図1(a)に示すように、2つのスクライブヘッド2がマザー基板Gの上下にそれぞれ配される。2つのスクライブヘッド2は同じ構成となっている。2つのスクライブヘッド2に装着されるスクライビングツール30、40は、スクライブ方法に応じて変更される。以下に示す2つのスクライブ方法のうち、スクライブ方法1では、スクライビングホイール301、401のみを保持するスクライビングツール30、40が用いられる。また、スクライブ方法2では、スクライビングホイール301、401とローラ302、402を保持するスクライビングツール30、40が用いられる。
以下、これら2つのスクライブ方法について説明する。
<スクライブ方法1>
図4(a)〜(c)は、本実施の形態に係るスクライブ方法を説明する図である。図4(a)はY軸負側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図4(b)はX軸正側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図4(c)はZ軸正側からスクライブ位置付近を見たときの模式図である。
図4(a)に示すように、本スクライブ方法では、上側(Z軸正側)のスクライブヘッド2のスクライビングホイール301が、下側(Z軸負側)のスクライブヘッド2のスクライビングホイール401よりも、スクライブ方向(X軸正方向)に距離W1だけ先行するようにして、2つのスクライビングホイール301、401が移動される。これとは逆に、スクライビングホイール401がスクライビングホイール301に対して先行しても良い。2つのスクライビングホイール301、401は、それぞれ、軸301a、401aを回転軸として回転可能にスクライビングツール30、40が取り付けられている。
図4(b)を参照して、マザー基板Gは、シール材SLを介して2つのガラス基板G1、G2を貼り合わせて構成されている。ガラス基板G1にはカラーフィルタ(CF)が形成され、ガラス基板G2には薄膜トランジスタ(TFT)が形成されている。シール材SLと2つのガラス基板G1、G2によって、液晶注入領域Rが形成され、この液晶注入領域Rに液晶が注入される。2つのスクライビングホイール301、401は、Y軸方向に互いにずれることなく位置付けられる。スクライビングホイール301は、シール材SLの直上の位置においてガラス基板G1の表面に押し付けられ、スクライビングホイール401は、シール材SLの直下の位置においてガラス基板G2の表面に押し付けられる。
図4(c)に示すように、シール材SLは格子状に配置されている。2つのスクライビングホイール301、401は、シール材SLに沿ってX軸正方向に移動される。これにより、図4(b)、(c)に示すように、ガラス基板G1、G2の表面に、それぞれ、スクライブラインL1、L2が形成される。
図4(a)〜(c)に示すスクライブ方法では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面を押さえるローラは設けられておらず、また、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面を押さえるローラも設けられていない。
<実験1>
本願発明者らは、図4(a)〜(c)に示すスクライブ方法に従ってマザー基板Gにスクライブラインを形成する実験を行った。以下、この実験と実験結果について説明する。
実験では、厚みがそれぞれ0.2mmのガラス基板G1、G2をシール材SLを介して貼り合わせた基板(マザー基板)を用いた。貼り合わせ基板(マザー基板)のサイズは118mm×500mmである。スクライビングホイール301、401は、三星ダイヤモンド工業株式会社製、マイクロぺネット(三星ダイヤモンド工業株式会社の登録商標)を用いた。スクライビングホイール301、401は、それぞれ、円板の外周にV字状の刃先が形成されるとともに刃先の稜線に所定の間隔で溝を有する構造となっている。スクライビングホイール301、401は、直径3mm、刃先角度110°、溝個数550、溝深さ3μmである。
この構成のスクライビングホイール301、401を、それぞれ、図4(a)〜(c)に示すようにガラス基板G1、G2に押し付けつつ移動させてスクライブ動作を行った。スクライブ動作時にスクライビングホイール301、401に付与される荷重は6.5Nに制御した。また、スクライビングホイール301、401の移動速度は、一定(200mm/sec)とした。
以上の条件のもと、2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1を変化させながら、ガラス基板G1、G2におけるクラックの浸透量を計測した。比較例として、スクライビングホイール301、401間の距離W1が0の場合のクラックの浸透量も計測した。各測定では、クラックの浸透量の他、リブマーク量も併せて計測した。
図5(a)〜(e)に実験結果を示す。図5(a)は、クラックの浸透量とリブマーク量を数値で示す図、図5(b)〜(e)は、スクライブライン上におけるマザー基板Gの断面写真であり、それぞれ、距離W1が0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmの場合のものである。図5(b)〜(e)において、D1、D3はリブマーク量、D2、D4はクラックの浸透量を示している。
図5(a)を参照すると、距離W1が0.6mmを超えると、距離W1が0mmの場合に比べて、ガラス基板G1のクラックの浸透量が大きくなっている。ガラス基板G1、G2のうち何れか一方に大きな浸透量でクラックが入ると、ブレイク工程において、マザー基板Gを適正に分断することができる。
たとえば、比較例(W1=0mm)のように、ガラス基板G1、G2におけるクラック量が共にガラス基板G1、G2の厚み(0.2mm)の半分程度であると、ブレイク工程において、マザー基板Gの両側からガラス基板G1、G2をそれぞれブレイクする必要がある。このようにマザー基板Gの両側からガラス基板G1、G2をそれぞれブレイクする動作が行われると、ガラス基板G1、G2の端縁に細かい亀裂や破損が生じて、ガラス基板G1、G2の強度が低下する惧れがある。
これに対し、距離W1が0.6mm〜1.4mmである場合には、ガラス基板G2におけるクラックの浸透量は小さいものの、ガラス基板G1におけるクラックの浸透量が大きい。このようにガラス基板G1におけるクラックの浸透量が大きい場合、ブレイク工程では、クラックの浸透量が小さいガラス基板G2をマザー基板Gの一方側のみからブレイクする動作が行われればよく、このブレイク動作の際に、深くクラックが入ったガラス基板G1も同時にクラックに沿って分断される。このようにマザー基板Gの一方側のみからガラス基板G1、G2をブレイクすると、ガラス基板G1、G2の端縁に細かい亀裂や破損が生じることがなく、ガラス基板G1、G2の強度が高く保たれる。
以上の理由から、マザー基板Gの分断においては、ガラス基板G1、G2の何れか一方に大きな浸透量でクラックが入っていることが望ましい。本実験では、図5(a)に示すように、2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1が0.6mmを超えると、比較例(W1=0mm)に比べて、ガラス基板G1のクラックの浸透量が大きくなっている。このことから、2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1は、0.6mm以上であることが望ましいと言える。このように2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1を設定することにより、マザー基板Gのブレイクを適正に行うことができる。
<スクライブ方法2>
図4(a)〜(c)に示すスクライブ方法(スクライブ方法1)では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面がローラで押さえられておらず、また、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面もローラで押さえられていない。これに対し、本スクライブ方法では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面と、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面が、それぞれ、ローラによって押さえられている。なお、スクライビングホイール301、401と反対側の面を押さえる押さえ部材として、ローラ以外の他の部材が用いられても良い。
図6(a)、(b)は、スクライブ方法2を説明する図である。図6(a)はY軸負側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図6(b)はX軸正側からスクライブ位置付近を見たときの模式図である。
図6(a)に示すように、本スクライブ方法では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面が2つのローラ402で押さえられ、また、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面も2つのローラ302で押さえられている。2つのローラ302は、スクライビングホイール301を挟むように配置され、軸302aを回転軸として回転可能となっている。また、2つのローラ402は、スクライビングホイール401を挟むように配置され、軸402aを回転軸として回転可能となっている。
スクライブ方法1と同様、2つのスクライビングホイール301、401は、スクライブ方向(X軸方向)に距離W1だけずれている。スクライブ方法2の場合も、下側のスクライビングホイール401が上側のスクライビングホイール301に対して先行しても良い。2つのスクライビングホイール301、401は、それぞれ、ガラス基板G1、G2に押し付けられながら、シール材SLに沿って移動する。スクライビングホイール301と2つのローラ302との間にはY軸方向の隙間があり、スクライビングホイール401と2つのローラ402との間にもY軸方向の隙間がある。このため、ローラ302、402は、スクライビングホイール301、401によって形成されるスクライブラインL1、L2を跨ぐようにしてX軸正方向に移動する。
<実験2>
本願発明者らは、図6(a)、(b)に示すスクライブ方法に従ってマザー基板Gにスクライブラインを形成する実験を行った。以下、この実験と実験結果について説明する。
本実験で用いたマザー基板Gとスクライビングホイール301、401は、上記実験1と同じとした。本実験では、スクライビングホイール301、401間の距離W1が2.2mmに設定された。また、スクライビングホイール301、401の移動速度は、一定(200mm/sec)とした。上側のスクライブヘッド2の荷重中心に対するスクライビングホイール301の偏心量は1.0mmであり、下側のスクライブヘッド2の荷重中心に対するスクライビングホイール401の偏心量は3.2mmであった。
スクライビングホイール301、401の軸301a、401aの中心位置は、それぞれ、ローラ302、402の軸302a、402aの中心位置と、Z軸方向において一致し、ローラ302、402の直径は、それぞれ、スクライビングホイール301、401の直径と同じく3mmに設定した。
以上の条件のもと、スクライビングツール30、40に付与される荷重を変化させながら、ガラス基板G1、G2におけるクラックの浸透量を計測した。
図7(a)〜(e)に実験結果を示す。図7(a)は、クラックの浸透量とリブマーク量を数値で示す図、図7(b)〜(e)は、スクライブライン上におけるマザー基板Gの断面写真であり、それぞれ、荷重が6N、7N、8N、9Nの場合のものである。図5(b)〜(e)において、D1、D3はリブマーク量、D2、D4はクラックの浸透量を示している。
図7(a)を参照すると、荷重が5Nから6Nに変化すると、ガラス基板G1におけるクラックの浸透量が急激に増加することが分かる。また、荷重が6Nを超えると、ガラス基板G1のクラックの浸透量がガラス基板G1の厚み(0.2mm)の80%を超え、ガラス基板G1に大きな浸透量でクラックが入る。上記のように、ガラス基板G1、G2のうち何れか一方に大きな浸透量でクラックが入ると、ブレイク工程において、マザー基板Gを適正に分断することができる。したがって、スクライブ方法2においては、スクライビングツール30、40に付与される荷重を6N以上に設定することが望ましいと言える。
なお、本実験では、上記実験1に比べて、ガラス基板G1に対するクラックの浸透量がさらに大きくなっている。また、本実験では、スクライビングホイール301の下側がローラ402によって支持され、また、スクライビングホイール401の上側がローラ302によって支持されるため、スクライビングホイール301、401の刃の押圧力によってマザー基板Gが歪むことが抑制される。したがって、クラックの浸透量を大きくしつつ安定的にクラックを形成するには、スクライブ方法2のように、マザー基板Gのスクライビングホイール301、401と反対側の面をローラ402、302で押さえるようにすることが望ましいと言える。
<スクライビングツール>
図8(a)、(b)は、それぞれ、上記スクライブ方法2において用いるスクライビングツール30、40の構成例を示す斜視図である。
スクライビングツール30、40は、スクライビングホイール301、401とローラ302、402の配列順序を除いて同様の構成を備えている。スクライビングツール30、40は、それぞれ、スクライビングホイール301、401とローラ302、402を保持するホルダ303、403を備える。ホルダ303、403は、スクライビングホイール301、401が装着される溝303a、403aと、ローラ302、402が装着される溝303b、403bと、傾斜面303c、403cとを備える。スクライビングホイール301、401は、軸301a、401aをホルダ303、403の孔に嵌め込むことにより装着される。ローラ302、402は、軸302a、402aをホルダ303、403の孔に嵌め込むことにより装着される。
図9(a)、(b)は、スクライブライン形成機構22に対するスクライビングツール30の取り付け方法を模式的に示す図である。図9(a)、(b)では、スクライブライン形成機構22の内部が透視された状態が示されている。
スクライブライン形成機構22の下端には、スクライビングツール30を保持する保持部221が設けられ、この保持部221に、スクライビングツール30を挿入可能な穴222が形成されている。穴222の底には磁石224が設置され、穴222の中間位置にピン223が設けられている。スクライビングツール30のホルダ303は強磁性体からなっている。また、保持部221は、図示しないベアリングによって、水平方向に360度回転可能にスクライブライン形成機構22に支持されている。
スクライブライン形成機構22にスクライビングツール30を取り付ける場合、スクライビングツール30のホルダ303が保持部221の穴222に挿入される。ホルダ303の上端が磁石224に接近するとホルダ303が磁石224に吸着される。このとき、ホルダ303の傾斜面303cがピン223に当接し、ホルダ303が正規の位置に位置決めされる。こうして、図9(b)に示すように、スクライビングツール30がスクライブライン形成機構22の下端に装着される。
スクライビングツール40も同様にしてスクライブライン形成機構22の下端に装着される。こうして、スクライビングツール30、40が、それぞれ、対応するスクライブヘッド2のスクライブライン形成機構22に装着されると、図6(a)、(b)に示すように、スクライビングホイール301に対応する位置にローラ402が位置付けられ、スクライビングホイール401に対応する位置にローラ302が位置付けられる。図8(a)、(b)に示す構成のスクライビングツール30、40を用いれば、スクライビングツール30、40をそれぞれ、対応するスクライブヘッド2のスクライブライン形成機構22に装着するだけで、スクライビングホイール301とスクライビングホイール401との距離W1を所定の距離に保ちつつ、スクライビングホイール301、401とローラ402、302とを互いに向き合わせることができる。
なお、上記実験2は、図8(a)、(b)に示す構成のスクライビングツール30、40を用いて行った。また、上記実験1は、ホルダ303、403から溝303b、403bが省略され、溝303a、403aのみを有するホルダ303、403に、それぞれ、スクライビングホイール301、401のみが装着されたスクライビングツール30、40を用いて行った。
<スクライブ制御>
次に、スクライブ装置1におけるスクライブ制御について説明する。
図10(a)は、スクライブ装置1の構成を示すブロック図である。
スクライブ装置1は、制御部101と、検出部102と、駆動部103と、入力部104と、表示部105とを備える。
制御部101は、CPU等のプロセッサと、ROMやRAM等のメモリを備え、メモリに記憶された制御プログラムに従って各部を制御する。また、メモリは、各部を制御する際のワーク領域としても用いられる。検出部102は、図1(a)に示すカメラ19a、19bの他、各種センサを含む。駆動部103は、図1(a)に示すスクライブ装置1の機構部や駆動モータ17、18を含む。入力部104は、マウスおよびキーボードを備える。入力部104は、スクライブラインの開始位置および終了位置や、スクライブラインの間隔等、スクライブ動作における各種パラメータ値の入力に用いられる。表示部105は、モニタを含み、入力部104による入力の際に、所定の入力画面が表示される。
図10(b)、(c)は、上下のスクライビングホイール301、401がスクライブ方向に変位した状態で他のスクライブラインLV1、LV2を通過する場合の問題を説明する図である。図10(b)はマザー基板Gの一部を側方から見た図、図10(c)は他のスクライブラインLV1、LV2の付近を拡大した図である。
図10(b)、(c)に示す他のスクライブラインLV1、LV2は、図1(a)、(b)の構成において、マザー基板Gが、ハンド11aに把持された状態で、コンベア11によりY軸方向に移動されることにより形成される。このとき、上下のスクライビングホイール301、401は、稜線がY軸方向に並行となるよう、図4(a)または図6(a)に示す状態から水平方向に90度回転する。上述のように、図9の保持部221は、図示しないベアリングによって水平方向に360度回転可能に支持されている。したがって、上下のスクライビングホイール301、401がマザー基板Gの上下の面に押し付けられた状態で、マザー基板Gがコンベア11によりY軸方向に移動されると、保持部221が回転し、稜線がY軸方向に平行となるように、スクライビングホイール301、401が位置付けられる。
このとき、上下のスクライビングホイール301、401は、Y軸方向に所定距離だけ互いに変位した状態にある。また、上下のスクライビングホイール301、401は、それぞれ、図4(c)に示すシール材SLの直上および直下の位置に位置付けられる。こうして、上下のスクライビングホイール301、401をマザー基板Gの上下の面に押し付けられた状態で、マザー基板Gがコンベア11によりY軸方向に移動されることにより、マザー基板Gの上下の面に、Y軸方向に平行なスクライブラインLV1、LV2が形成される。スクライブラインLV1、LV2は、X軸方向に並ぶシール材SLの数だけ形成される。
このように、スクライブラインLV1、LV2が形成された後、スクライブヘッド2をX軸方向に移動させて、X軸方向に平行なスクライブラインL1、L2が形成される。したがって、スクライブラインL1、L2の形成動作では、上下のスクライビングホイール301、401が、スクライブラインL1、L2に垂直に交差するスクライブラインLV1、LV2を通過することになる。
上記実験1、2で検証したように、マザー基板Gの両面に同時にスクライブラインを形成する場合、上側のスクライビングホイール301と下側のスクライビングホイール401をスクライブ方向に所定距離だけずらすことが望ましい。しかしながら、このスクライブ方法を、図10(b)に示すように、上下のスクライビングホイール301、401がスクライブラインLV1、LV2を通過する際にも適用すると、図10(c)に示すように、スクライブラインLV1、LV2を跨ぐ位置に、相反する方向の力F1、F2が、スクライビングホイール301、401から掛かることになる。これにより、スクライビングホイール301、401がスクライブラインLV1、LV2を通過する際に、スクライブラインLV2、LV2から亀裂C1、C2が入るとの問題が起こる。
この問題は、上述のスクライブ方法1のようにローラ302、402が配されていない場合のみならず、スクライブ方法2のようにローラ302、402が配された場合にも同様に起こり得る。つまり、スクライブ方法2のようにローラ302、402が設けられる場合にも、荷重中心に対するスクライビングホイール301、401の位置調整や、上下方向(Z軸方向)におけるスクライビングホイール301、401とローラ302、402の相対位置の調整によって、スクライビングホイール301、401がマザー基板Gの表面に強く押し付けられる。このとき、ローラ302、402は、マザー基板Gの撓みをスクライビングホイール301、401の反対側から抑えるに留まり、マザー基板Gの表面に強く押し付けられることはない。よって、スクライブ方法2のようにローラ302、402が設けられる場合も、図10(c)に示すように、スクライブラインLV1、LV2を跨ぐ位置に、相反する方向の力F1、F2が、スクライビングホイール301、401から掛かり、スクライビングホイール301、401がスクライブラインLV1、LV2を通過する際に、スクライブラインLV2、LV2から亀裂C1、C2が入るとの問題が起こる。
そこで、本実施の形態では、上下のスクライビングホイール301、401が他のスクライブラインLV1、LV2を略同時に通過する制御が行われる。なお、ここでは、他のスクライブラインLV1、LV2の通過位置以外の範囲において、下側のスクライビングホイール401が上側のスクライビングホイール301に対してスクライブ方向に先行するように制御される。
図11は、スクライブ制御を示すフローチャートである。なお、図11に示すスクライブ制御は、図1(a)のコンベア11を移動させることなく、スクライビングツール30、40を移動させて、マザー基板Gの両面にスクライブラインを形成する際の制御である。図11に示すスクライブ制御が実行される前に、上記のように、スクライビングツール30、40を移動させることなく、コンベア11を移動させて、マザー基板Gの両面にスクライブラインLV1、LV2を形成する制御が行われる。
図11に示すスクライブ制御は、図10(a)の制御部101によって行われる。図12(a)〜図14(b)は、所定の制御タイミングにおけるスクライビングツール30、40の位置を模式的に示す図である。ここでは、図8(a)、(b)に示すスクライビングツール30、40が用いられている。これに代えて、ローラ302、402が省略されたスクライビングツール30、40が用いられても良い。
図11を参照して、制御部101は、カメラ19a、19bの撮像画像を処理し、マザー基板Gの位置を検出する(S11)。この検出結果に基づいて、制御部101は、各スクライブラインに対する上下のスクライブヘッド2(スクライビングツール30、40)の初期位置と、各スクライブヘッド2に対する送り制御の切り替えタイミングを設定する(S12)。なお、制御部101は、先に行ったスクライブラインLV1、LV2の形成動作において、予め、スクライブラインLV1、LV2の位置を記憶している。制御部101は、スクライブラインLV1、LV2の位置に基づいて、各スクライブヘッド2に対する送り制御の切り替えタイミングを設定する。
次に、制御部101は、上下のスクライブヘッド2を形成対象のスクライブラインL1、L2の開始位置に移動させる(S13)。図12(a)は、このときのスクライビングツール30、40の状態を示す図である。この状態では、X軸方向において、スクライビングホイール301とローラ402の位置が一致し、また、スクライビングホイール401とローラ302の位置が一致している。
この状態で、制御部101は、上下のスクライブヘッド2のサーボモータ28を駆動して、スクライビングツール30、40を、それぞれ、マザー基板Gの上面および下面に所定の荷重で圧接させる(S14)。図12(b)は、このときのスクライビングツール30、40の状態を示す図である。この状態では、スクライビングホイール301、401の位置がX軸方向に互いに変位した状態で、マザー基板G上面のシール材SLに対向する位置と、マザー基板G下面のシール材SLに対向する位置に、それぞれ、スクライビングホイール301、401が圧接される。
こうしてスクライビングツール30、40をマザー基板Gの両面に圧接させた状態で、制御部101は、駆動モータ17、18を駆動し、上下のスクライブヘッド2をそれぞれ同じ速度Vnで移動させる(S15)。したがって、スクライビングホイール301、401の間隔が保たれたまま、マザー基板Gの両面に対するスクライブ動作が行われる。
その後、制御部101は、通過前タイミングTbが到来するのを待つ(S16)。通過前タイミングTbとは、先行する下側のスクライビングホイール401が、次に到来する他のスクライブラインLV1、LV2の位置Ppから所定距離だけ手前の位置Pbに到達するタイミングである。通過前タイミングTbが到来すると(S16:YES)、制御部101は、下側のスクライブヘッド2の移動速度を速度Vnから速度Vsに低下させる(S17)。これにより、上側のスクライビングホイール301が徐々に下側のスクライビングホイール401に近づく。図13(a)は、このときのスクライビングツール30、40の状態を示す図である。
その後、制御部101は、通過タイミングTpが到来するのを待つ(S18)。通過タイミングTpとは、先行する下側のスクライビングホイール401が、次に到来する他のスクライブラインLV1、LV2の位置Ppに到達するタイミングである。通過タイミングTpが到来すると(S18:YES)、制御部101は、下側のスクライブヘッド2の移動速度を速度Vsから速度Vfに高める(S19)。
図13(b)は、このときのスクライビングツール30、40の状態を示す図である。図13(b)に示すように、通過タイミングTpにおいて、上側のスクライビングホイール301は、下側のスクライビングホイール401に追いつき、上下のスクライビングホイール301、401は、略同時に、他のスクライブラインLV1、LV2を通過する。図11のS17における速度Vsは、このように、通過タイミングTpにおいて、上側のスクライビングホイール301が下側のスクライビングホイール401に追いつくように調整されている。
こうして、上下のスクライビングホイール301、401が他のスクライブラインLV1、LV2を通過すると、S19において、下側のスクライブヘッド2の移動速度が速度Vsから速度Vfに高められる。ここで、速度Vfは、速度Vnよりも高く設定されている。したがって、他のスクライブラインLV1、LV2を通過した後、下側のスクライビングホイール401は、徐々に、上側のスクライビングホイール301に対して先行する。図14(a)は、このときのスクライビングツール30、40の状態を示す図である。
その後、制御部101は、通過後タイミングTaが到来するのを待つ(S20)。通過後タイミングTaとは、先行する下側のスクライビングホイール401が、直前に通過した他のスクライブラインLV1、LV2の位置Ppから所定の距離だけ進んだ位置Paに到達するタイミングである。通過後タイミングTaが到来すると(S20:YES)、制御部101は、下側のスクライブヘッド2の移動速度を速度Vfから速度Vnに低下させる(S21)。これにより、上下のスクライビングホイール301、401の移動速度が同じになる。
図14(b)は、このときのスクライビングツール30、40の状態を示す図である。図14(b)に示すように、通過後タイミングTaにおいて、上側のスクライビングホイール301は下側のローラ402に対向し、下側のスクライビングホイール401は上側のローラ302に対向する。こうして、上下のスクライビングホイール301、401の間隔が所期の間隔に維持される。図11のS19における速度Vfは、このように、通過後タイミングTaにおいて、上側のスクライビングホイール301と下側のスクライビングホイール401の間隔が所期の間隔となるように調整されている。
その後、制御部101は、当該スクライブラインに対するスクライブ動作が終了したか否かを判定する(S22)。すなわち、制御部101は、スクライブ位置がスクライブラインの終了位置に接近し、他のスクライブラインLV1、LV2がさらに到来することがないか否かを判定する。スクライブ動作が終了していない場合(S22:NO)、制御部101は、処理をS16に戻して、スクライブ動作を継続する。スクライブ動作が終了した場合(S22:NO)、制御部101は、当該スクライブラインの終了位置までスクライブ動作を継続し、上下のスクライブヘッド2のサーボモータ28を駆動して、スクライビングツール30、40を、それぞれ、マザー基板Gの上面および下面から離間させる(S23)。
そして、制御部101は、上下のスクライブヘッド2を移動させることによる処理が、予め設定された全てのスクライブラインについて完了したか否かを判定する(S24)。全てのスクライブラインに対する処理が完了していない場合(S24:NO)、制御部101は、処理をS13に戻して、次のスクライブラインに対する処理を実行する。こうして、全てのスクライブラインに対する処理が完了すると(S24:YES)、制御部101は、処理を終了する。
図15は、スクライブ制御を示すタイミングチャートである。図15の下段には、上側のスクライブヘッド2に対する駆動信号と、下側のスクライブヘッド2に対する駆動信号が示されている。これらの駆動信号は、それぞれ、図1(a)に示す駆動モータ17、18に印加される。また、図15の上段には、スクライブ方向におけるマザー基板G上の位置と、スクライビングホイール301、401の相対位置が示されている。
位置Ppは、上述とおり、スクライブラインLV1、LV2が形成された位置であり、位置Pa、Pbは、それぞれ、位置Ppから所定距離だけ進んだ位置および所定距離だけ手前の位置である。また、上述のとおり、通過タイミングTp、通過後タイミングTaおよび通過前タイミングTbは、それぞれ、位置Pp、Pa、Pbに対応するタイミングである。
上側のスクライブヘッド2の駆動信号は、スクライブ動作の全期間に亘ってレベルDnに維持される。下側のスクライブヘッド2の駆動信号は、通過前タイミングPbから通過タイミングPpまではレベルDsに設定され、通過タイミングPpから通過後タイミングPaまではレベルDfに設定され、その他の期間は、レベルDnに設定される。したがって、範囲Rcにおいては、上下のスクライビングホイール301、401の移動速度は共にVnとなり、スクライビングホイール301、401の間隔が所定の間隔に維持される。また、範囲Rbにおいては、上下のスクライビングホイール301、401の移動速度がそれぞれVn、Vs(Vn>Vs)となり、スクライビングホイール301、401の間隔が徐々に縮まる。さらに、範囲Raにおいては、上下のスクライビングホイール301、401の移動速度がそれぞれVn、Vf(Vn<Vf)となり、スクライビングホイール301、401の間隔が徐々に開く。
かかる制御により、通過タイミングPpにおいて、上下のスクライビングホイール301、401の位置が揃い、上下のスクライビングホイール301、401は、略同時に、他のスクライブラインLV1、LV2を通過する。この制御は、他のスクライブラインLV1、LV2が到来する毎に、同様に、繰り返される。したがって、全ての他のスクライブラインLV1、LV2の通過タイミングPpにおいて、上下のスクライビングホイール301、401の位置が揃う。また、範囲Rcにおいては、上下のスクライビングホイール301、401の間隔を所定距離に維持して、スクライブ動作が実行される。したがって、スクライブライン上の大部分を占める範囲Rcにおいて、上記実験1、2で示したように、良好な深さのクラックが形成される。
<実施形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
実験1、2で示したとおり、シール材SLの直上の位置に、深いクラックでスクライブラインを形成することができる。特に、スクライブ方法2のように、スクライビングホイール301、401の反対側をローラ302、402で押さえることにより、クラックの浸透量をさらに大きくしつつ安定的にクラックを形成することができる。
また、スクライブラインL1、L2に直交する他のスクライブラインLV1、LV2をスクライビングホイール301、401が略同時に通過するように、スクライビングホイール301、401の移動が調整されるため、他のスクライブラインLV1.LV2を跨ぐ位置に、相反する方向の力F1、F2が、スクライビングホイール301、401から掛かることが回避される。これにより、スクライビングホイール301、401が他のスクライブラインLV1、LV2を通過する際に、他のスクライブラインLV1、LV2から亀裂が生じることがなく、他のスクライブラインLV1、LV2による分断を適切に行うことができる。
また、図15の範囲Raにおいては、スクライビングホイール401の移動速度をスクライビングホイール301の移動速度よりも早くすることによって、スクライビングホイール401がスクライビングホイール301に対して先行する。このため、マザー基板Gの両面にクラックを形成しつつ、スクライビングホイール401とスクライビングホイール301の間に間隔を空けることができる。
また、図15の範囲Rcにおいては、スクライビングホイール301の移動速度とスクライビングホイール401の移動速度とを同一にすることにより、スクライビングホイール401とスクライビングホイール301との間隔が所定距離に維持される。このため、マザー基板Gにクラックをむらなく良好に形成することができる。
また、図15の範囲Rcにおいては、スクライビングホイール401の移動速度をスクライビングホイール301の移動速度よりも遅くすることにより、他のスクライブラインLV1、LV2が形成された位置Ppにおいて、スクライビングホイール301がスクライビングホイール401に追いつく。このため、マザー基板Gの両面にクラックを形成しつつ、スクライビングホイール301、401に他のスクライブラインLV1、LV2を略同時に通過させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
<変更例1>
たとえば、スクライビングホイール301をスクライビングホイール401に対して変位させる方法は、上記実施の形態に示された方法に限られるものではなく、他の方法とすることもできる。
図16は、変更例1に係るスクライブ制御を示すタイミングチャートである。図16のタイミングチャートは、図15のタイミングチャートに対応するものである。
上記実施の形態では、位置Ppにおいて、上側のスクライビングホイール301が下側のスクライビングホイール401に追いつくよう制御されたが、変更例1では、位置Ppよりも所定距離だけ手前の位置Pb1において、上側のスクライビングホイール301が下側のスクライビングホイール401に追いつくよう制御される。
すなわち、変更例1では、位置Pb2に対応するタイミングTb2において、下側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDsに設定され、下側のスクライビングホイール401の移動速度が速度Vsに減速される。これにより、範囲Rb2において、上下のスクライビングホイール301、401の間隔が徐々に縮まり、位置Pb1において、上側のスクライビングホイール301が下側のスクライビングホイール401に追いつく。
また、位置Pb1に対応するタイミングTb1において、下側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDnに戻され、下側のスクライビングホイール401の移動速度が速度Vnに高められる。これにより、範囲Rb1と範囲Ra1においては、上下のスクライビングホイール301、401が先後することなくスクライブ方向に速度Vnで移動する。したがって、上下のスクライビングホイール301、401は、略同時に、他のスクライブラインLV1、LV2を通過する。
さらに、位置Pa1に対応するタイミングTa1において、下側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDfに高められ、下側のスクライビングホイール401の移動速度が速度Vfに高められる。これにより、範囲Ra2において、上下のスクライビングホイール301、401の間隔が徐々に広がり、位置Pa2において、上側のスクライビングホイール301に対して下側のスクライビングホイール401が所定距離だけ先行する。位置Pa2において、上下のスクライビングホイール301、401は、図14(b)のように位置付けられる。
そして、位置Pa2に対応するタイミングTa2において、下側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDnに戻され、下側のスクライビングホイール401の移動速度が速度Vnに減速される。これにより、範囲Rcにおいては、上下のスクライビングホイール301、401の間隔が所定距離に維持されて、上下のスクライビングホイール301、401が移動される。他のスクライブラインLV1、LV2が到来する毎に、以上の制御が繰り返される。
変更例1によれば、位置Ppを挟む前後の範囲Rb1、Ra1において、上下のスクライビングホイール301、401の位置が整合している。したがって、上記実施の形態に比べて、より確実に、上下のスクライビングホイール301、401が他のスクライブラインLV1、LV2を略同時に通過し易くなる。なお、範囲Rb1、Ra1においては、上下のスクライビングホイール301、401が前後に変位することなくスクライブ動作が行われるため、上記実験1、2で示したように、クラックの深さが浅くなる。この点を考慮すると、範囲Rb1、Ra1はなるべく狭く設定することが望ましいと言える。
<変更例2>
上記実施の形態および変更例1では、下側のスクライブヘッド2の移動速度のみが変更されたが、上側のスクライブヘッド2の移動速度のみが変更されても良く、また、上下のスクライブヘッド2の移動速度が共に変更されても良い。
図17は、変更例2に係るスクライブ制御を示すタイミングチャートである。変更例2では、上記変更例1の範囲Rb2において、下側のスクライブヘッド2が減速される替わりに、上側のスクライブヘッド2の移動速度が高められる。具体的には、範囲Rb2において、上側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDfに設定される。これにより、上側のスクライブヘッド2の移動速度が速度Vfに高められ、位置Pb1において、上側のスクライビングホイール301が下側のスクライビングホイール401に追いつく。変更例2によっても、変更例1と同様の効果が奏され得る。
なお、上側のスクライブヘッド2の移動速度のみが変更される場合は、図17のタイミングチャートにおいて、範囲Ra2における上側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDfに設定され、範囲Ra2における下側のスクライブヘッド2の駆動信号がレベルDnに設定される。同様に、図15のタイミングチャートにおいても、上側のスクライブヘッド2の移動速度のみを変更する制御が可能であり、また、上下のスクライブヘッド2の移動速度を共に変更する制御も可能である。
<変更例3>
図18は、変更例3に係るスクライブ制御を示すタイミングチャートである。変更例3では、位置Pa1に対応するタイミングTa1から位置Pcに対応するタイミングTcまでの期間は、上側のスクライブヘッド2の駆動信号と下側のスクライブヘッド2の駆動信号がそれぞれDn、Dfに設定され、位置Pcに対応するタイミングTcから位置Pb1に対応するタイミングTb1までの期間は、上側のスクライブヘッド2の駆動信号と下側のスクライブヘッド2の駆動信号がそれぞれDf、Dnに設定される。ここで、位置Pcは、位置Pa1と位置Pb1の間の中間位置である。
こうすると、範囲Rc1では、下側のスクライビングホイール401が上側のスクライビングホイール301に対して徐々に先行し、範囲Rc2では、上側のスクライビングホイール301が下側のスクライビングホイール401に対して徐々に追いつく。位置Pb1では、上下のスクライビングホイール301、401の位置がスクライブ方向において一致し、その後、上下のスクライビングホイール301、401は、同じ移動速度Vnで、スクライブ方向に移動する。よって、変更例3においても、上下のスクライビングホイール301、401が、略同時に、他のスクライブラインLV1、LV2を通過する。変更例3によっても、上記実施の形態および変更例1〜3と同様の効果が奏され得る。
なお、上記実施の形態および変更例1〜3では、上下のスクライビングホイール301、401の間に間隔を空ける場合は、常に、下側のスクライビングホイール401を先行させたが、これに代えて、常に、上側のスクライビングホイール301を先行させても良く、あるいは、所定のタイミングで、先行させるスクライビングホイールを切り替えても良い。たとえば、他のスクライブラインLV1、LV2を通過する毎に、先行させるスクライビングホイールを切り替えても良い。
<変更例4>
上記実施の形態および変更例1〜3では、上下のスクライビングホイール301、401がマザー基板Gの上面および下面に圧接される荷重が、スクライブラインの全長において不変とされた。しかしながら、上下のスクライビングホイール301、401がマザー基板Gの上面および下面に圧接される荷重が、スクライブラインの位置に応じて変化するように制御されても良い。
図19は、変更例4に係るスクライブ制御を示すタイミングチャートである。図19のタイミングチャートでは、図15のタイミングチャートの下段に、上下のスクライビングツール30、40に付与される荷重のタイミングチャートが追加されている。図19に示すように、変更例4では、位置Pp付近、すなわち、上下のスクライビングホイール301、401の間隔が0またはかなり狭い範囲において、上下のスクライビングツール30、40に付与される荷重がN0からNLに弱められる。
このようにスクライビングツール30、40の圧接荷重を調整することにより、位置Pp付近において、マザー基板Gに過度の荷重が掛かることが回避される。位置Pp付近では、スクライビングホイール301、401の位置が略一致するため、マザー基板Gは、スクライビングホイール301、401によって直接挟まれることとなる。このため、マザー基板Gは、スクライビングホイール301、401がスクライブ方向に互いに変位している場合に比べて、スクライビングホイール301、401から大きな力を受ける。図19の制御により、位置Pp付近において、荷重が弱められることにより、マザー基板Gが、スクライビングホイール301、401から過度の力を受けることが回避される。よって、位置Pp付近において、マザー基板Gに対し、破損なく、適正な深さのクラックを形成することができる。
なお、範囲Rcにおける圧接荷重N0は、スクライビングホイール301、401の間隔が所定の距離にあるときに所望の深さのクラックが形成されるように調整される。
<変更例5>
図20は、変更例5に係るスクライブ制御を示すタイミングチャートである。変更例5は、変更例2の制御に、圧接荷重の調整制御を追加したものである。図20のタイミングチャートでは、図17のタイミングチャートの下段に、上下のスクライビングツール30、40に付与される荷重のタイミングチャートが追加されている。
図20に示すように、変更例5では、位置Ppを挟む範囲Rb1および範囲Ra1において、上下のスクライビングツール30、40に付与される荷重がN0からNLに弱められる。変更例5においても、変更例4と同様の効果が奏され得る。なお、変更例1、3においても、同様に、上下のスクライビングツール30、40に付与される荷重を調節することが望ましい。
<その他の変更例>
上記実施の形態では、刃先の稜線に一定間隔で溝が形成されたスクライビングホイールが用いられたが、稜線に溝が形成されていないスクライビングホイールを用いても同様の効果が奏されることが想定され得る。スクライビングホイール(刃先)の大きさや形状は、上記実施の形態に記載されたものに限定されるものではなく、他の大きさや形状、種類の刃先を適宜用いることができる。
また、上記実施の形態では、図12(a)に示すように、スクライブラインの開始位置において、既に、スクライビングホイール301、401の間隔が所期の間隔に設定されたが、スクライビングホイール301、401の間隔を所期の間隔に設定する方法はこれに限られるものではなく、スクライブラインの開始位置から所定の距離だけスクライブ動作が進んだときに、スクライビングホイール301、401の間隔が所期の間隔となるような制御がなされても良い。
また、図6(a)、(b)および図8(a)、(b)の構成では、スクライビングホイール301、401の軸301a、401aの中心位置が、それぞれ、ローラ302、402の軸302a、402aの中心位置と、Z軸方向において一致し、スクライビングホイール301、401の直径が、それぞれ、ローラ302、402の直径と同じとされた。しかしながら、スクライビングホイール301、401とローラ302、402の関係は、これに限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
また、図6(a)、(b)および図8(a)、(b)の構成では、スクライビングホイール301、401の両側に一対のローラ302、402が配されたが、スクライビングホイール301、401の片側のみに一つのローラ302、402が配される構成も想定され得る。
この他、マザー基板Gの構成、厚み、材質等は、上記実施の形態に示すものに限定されるものではなく、他の構成のマザー基板Gの切断にも、上記スクライブ方法1、2およびスクライブ装置を用いることができる。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。