JP6337767B2 - 炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料及び炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法 - Google Patents

炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料及び炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料及び炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法に係り、特に、プルトリュージョン法により、高品質の炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料及び炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットを歩留りよく効率的に製造する方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、耐熱性、透明性、寸法安定性等に優れた樹脂として、多くの分野で幅広く用いられている。中でも、近年の情報産業の発達により、電気電子機器の筐体として用いられるケースが非常に増えてきている。
このような用途においては、機器内で発生する電磁波を外部に漏らさないために、また、外部からの電磁波の侵入による誤作動を防止するために、電磁波シールド性が重要であるが、ポリカーボネート樹脂に限らず、樹脂材料自体は一般に絶縁性であり、電磁波シールド性は全くない。このため、電磁波シールド性を付与するために導電性物質を配合する必要がある。導電性物質としては、カーボンブラックや炭素繊維、金属繊維等多種に及ぶが、特に、炭素長繊維は高い電磁波シールド性を付与すると共に、補強効果にも優れることが知られている。
従来、長繊維/樹脂複合ペレットを連続的に製造する方法としては、電線被覆法、プルトリュージョン法(例えば、特許文献1,2)、ダイレクトロービング法が知られている。
以下に図9(a)〜(c)を参照して、これらの方法について説明する。
図9(a)〜(c)において、1は押出機、2はホッパー、3はスクリュー、4はクロスヘッドダイ、4Aはダイ、5は水槽、6は引き取りロール、7はカッター、8はメッシュコンベア、9は押出機1のベント口である。
いずれの方法でも樹脂ペレット11が押出機1のホッパー2から投入され、スクリュー3で溶融混練された後、長繊維束(ロービング)12と共にクロスヘッドダイ4又はダイ4Aから押し出される。
電線被覆法では、図9(a)に示す通り、長繊維束(ロービング)12をクロスヘッドダイ4に送り出し、スクリュー3からの溶融樹脂により長繊維束12を被覆して、樹脂被覆長繊維束13を得、これを水槽5で冷却した後カッター7で切断して長繊維/樹脂複合ペレット13Aを得る。
プルトリュージョン法では、図9(b)に示す通り、長繊維束(ロービング)12をクロスヘッドダイ4の上方から送り出し、クロスヘッドダイ4内に設けられた図示しない含浸ロールで長繊維束を帯状に拡幅させてほぐすことにより、溶融樹脂を長繊維束内の繊維間に含浸させて、樹脂含浸長繊維束14を得、これを水槽5で冷却した後カッター7で切断して長繊維/樹脂複合ペレット14Aを得る。
ダイレクトロービング法では、図9(c)に示す通り、長繊維束(ロービング)12を直接押出機1のベント口9から導入して樹脂複合長繊維15を得、これをメッシュコンベア8上で水冷した後カッター7で切断して長繊維/樹脂複合ペレット15Aを得る。
特開平1−16612号公報 特開平5−169445号公報
従来の長繊維/樹脂複合ペレットの製造方法のうち、ダイレクトロービング法では、長繊維束をベント口から押出機に直接供給するため、押出機内で繊維が折れてしまい、繊維長を十分に生かした長繊維/樹脂複合ペレットを製造することができない。
繊維長の短い複合ペレットでは、電磁波シールド性も補強効果も不十分なものとなるため、ペレット中の繊維長を長く残すことが重要である。
ペレット中の繊維長を長く残すことができる点において、電線被覆法やプルトリュージョン法が好ましいが、電線被覆法では、長繊維束の周囲を樹脂で被覆するのみであるため、得られたペレットから繊維が抜け落ち易い。
ペレットから繊維が抜け落ち難い点において、長繊維束の繊維間に樹脂を含浸させるプルトリュージョン法が好ましいが、プルトリュージョン法により炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットを製造しようとすると、樹脂の含浸中に繊維切れが発生し易いという問題がある。
これは、ポリカーボネート樹脂は粘度が高いために、溶融樹脂の含浸浴内で長繊維束に大きな張力がかかることによるためである。ポリカーボネート樹脂の溶融温度を上げることにより粘度を下げ、繊維切れを防止することはできるが、この場合には、ポリカーボネート樹脂の熱劣化でポリカーボネート樹脂本来の良物性が損なわれる。
また、ポリカーボネート樹脂等の非晶性樹脂は、ナイロン等の結晶性樹脂に比べて炭素繊維に対する密着性が悪いために、樹脂を含浸させるプルトリュージョン法によるものであっても、得られたペレットから繊維が抜け落ち易いという問題もあった。
繊維切れは、生産性を大きく損なう要因となり、また、ペレットからの繊維の抜け落ちは、製品の歩留りと品質の面で問題となる。このようなことから、炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造にプルトリュージョン法は実用化されていないのが現状である。
本発明は、プルトリュージョン法により、高品質の炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料及び炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットを歩留りよく効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、プルトリュージョン法における溶融樹脂温度、その他の製造条件を適切に制御することにより、繊維切れやペレットからの繊維の抜け落ちを防止することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネート樹脂の溶融樹脂浴中に、炭素繊維の長繊維束を連続的に走行させると共に、該溶融樹脂浴中にて、該長繊維束を含浸ロールで帯状に拡幅させることにより、該長繊維束に樹脂を含浸させ、樹脂含浸長繊維束を該溶融樹脂浴から引き取ることで炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料を製造するに当たり、下記(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法。
(1) 該炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の炭素繊維含有量が5〜40質量%である。
(2) 該溶融樹脂温度が290〜340℃である。
(3) 該含浸ロールの直径をa(mm)、該長繊維束の幅をb(mm)としたとき、該含浸ロールと該長繊維束との接触面積が0.6πab〜1.4πabである。
(4) 該樹脂含浸長繊維束の引き取り速度が1〜12kg/hrである。
[2] [1]において、2個以上の前記含浸ロールが、そのロール軸方向が前記長繊維束の走行方向と交叉する方向となるように並列して設けられており、隣接する該含浸ロール同士の間隔が該含浸ロールの直径a(mm)以下であることを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法。
[3] [1]又は[2]において、前記炭素繊維の長繊維束を、予め100〜300℃に予熱した後、前記溶融樹脂浴中に導入することを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法。
[4] [1]ないし[3]のいずれかの炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法で製造された炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料を切断して炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットを得る炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法。
[5] [4]において、前記炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の切断長さが4〜10mmであることを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法。
本発明によれば、プルトリュージョン法により、高品質の炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料及び炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットを歩留りよく効率的に製造することができる。
本発明の実施に好適なCF/PCペレットの製造装置の一例を示す模式的な平面図である。 (a)図は、図1のCF/PCペレットの製造装置の樹脂含浸セル及び予熱セル部分の模式的な断面図であり、(b)図は含浸ロールと案内ロールの配置を示す模式図である。 本発明の実施に好適なCF/PCペレットの製造装置の別の例を示す図であって、(a)図は、樹脂含浸セル及び予熱セル部分の模式的な断面図であり、(b)図は含浸ロールと案内ロールの配置を示す模式図である。 含浸ロールの配置例を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図及び(c)図は側面図である。 含浸ロールの配置例を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図及び(c)図は側面図である。 比較例3で採用した含浸ロールの配置を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。 実施例1〜5、比較例1,2,5で採用した含浸ロールの配置を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。 比較例4で採用した含浸ロールの配置を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。 従来の長繊維/樹脂複合ペレットの製造方法を示す模式図であり、(a)図は電線被覆法を、(b)図はプルトリュージョン法を、(c)図はダイレクトロービング法をそれぞれ示す。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料(以下「CF/PC材料」と称し、本発明の方法により製造されたCF/PC材料を「本発明のCF/PC材料」と称す場合がある。)の製造方法は、プルトリュージョン法に従って、ポリカーボネート樹脂の溶融樹脂浴中に、炭素繊維の長繊維束を連続的に走行させると共に、該溶融樹脂浴中にて、該長繊維束を含浸ロールで帯状に拡幅させることにより、該長繊維束に樹脂を含浸させ、樹脂含浸長繊維束を該溶融樹脂浴から引き取ることでCF/PC材料を製造するに当たり、下記(1)〜(4)の条件を満たすように条件設定を行うことを特徴とするものであり、本発明の炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレット(以下「CF/PCペレット」と称し、本発明の方法により製造されたCF/PCペレットを「本発明のCF/PCペレット」と称す場合がある。)の製造方法は、このようにして得られたCF/PC材料を切断してペレット化することを特徴とする。
(1) 該炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の炭素繊維含有量が5〜40質量%である。
(2) 該溶融樹脂温度が290〜340℃である。
(3) 該含浸ロールの直径をa(mm)、該長繊維束の幅をb(mm)としたとき、該含浸ロールと該長繊維束との接触面積が0.6πab〜1.4πabである。
(4) 該樹脂含浸長繊維束の引き取り速度が1〜12kg/hrである。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の溶融樹脂とは、ポリカーボネート樹脂のみからなるものであってもよく、ポリカーボネート樹脂とその他の成分とを含むポリカーボネート樹脂組成物からなるものであってもよい。この溶融樹脂については、「本発明の含浸樹脂」として後述する。
[プルトリュージョン法]
まず、図1〜3を参照して、本発明におけるプルトリュージョン法によるCF/PC材料及びCF/PCペレットの製造方法を説明する。
図1は、本発明の実施に好適なCF/PCペレットの製造装置の一例を示す模試的な平面図であり、図2(a)は図1の装置の要部を示す模式的な断面図(図1の矢印II方向から見た樹脂含浸セル及び予熱セル部分の縦断面図)、図2(b)は、含浸ロールと案内ロールの配置を示す模式図であり、図2(a)の矢印B方向から見た図に該当する。図3(a),(b)は、それぞれ図2(a),(b)に対応する別態様を示す。
図1,2において、20は押出機(通常、2軸押出機が使用される)であり、基端側に樹脂投入用のホッパー21を有し、先端20A側は、樹脂含浸セル22の下部に接続され、押出機20からの溶融樹脂10が樹脂含浸セル22内に押し出される。樹脂含浸セル22の上流側には、炭素繊維の長繊維束(以下、「CFロービング」と称す場合がある。)31を予熱するための予熱セル23が設けられている。24は賦形ダイであり、この賦形ダイ24を通過する過程で、溶融樹脂10を含浸したCFロービング31が所定の断面形状に成形される。25は水槽、26はペレタイザーであり、内部に引き取りロールとカッターが設けられている。
CFロービング巻回体30から連続的に繰り出されたCFロービング31は、予熱セル23で図示しないヒーターにより所定温度に予熱された後、樹脂含浸セル22内を通過する間に、含浸ロール41〜44により帯状に拡幅されることで、炭素繊維間に溶融樹脂が侵入して含浸される。
賦形ダイ24を経てペレタイザー26内の引き取りロールにより引き出された樹脂含浸CFロービング32は水槽25で冷却され、水槽25からのCF/PC材料33は、ペレタイザー26内のカッターで所定の長さに切断されてCF/PCペレット34となる。
図2に示すように、樹脂含浸セル22内には、CFロービング31の走行方向を水平方向から鉛直下方向に変更する入口側案内ロール40Aと、鉛直下方向から水平方向に変更する出口側案内ロール40Bとが設けられ、この案内ロール40A,40Bとの間に4本の含浸ロール41,42,43,44が設けられている。案内ロール40A,40B及び含浸ロール41〜44は、そのロール軸方向がCFロービング31の走行方向と直交するように並設されている。
案内ロール40Aは、樹脂含浸セル22内の溶融樹脂10の液面Lの上方に設けられており、案内ロール40Bは、溶融樹脂10内の賦形ダイ24の樹脂含浸CFロービング32の出口と等高さ位置に設けられている。
図2において、含浸ロール41〜44の直径aはすべて等しく、案内ロール40A,40Bの直径は、含浸ロール41〜44の直径より若干小さいが、含浸ロール41〜44の直径と等しくてもよく、大きくてもよい。
また、図2において、含浸ロール41〜44は、溶融樹脂10内に等間隔で設けられており、隣接する含浸ロール同士の間隔cは、含浸ロールの直径aの4倍以下、即ち4a以下である。また、案内ロール40Aは、最も上位の含浸ロール41よりも含浸ロールの直径aの4倍よりも大きく離隔した位置に設けられ、案内ロール40Bは、最も下位の含浸ロール44よりも含浸ロールの直径aの4倍よりも大きく離隔した位置に設けられている。
上記の通り、このCF/PCペレットの製造装置では、CFロービング巻回体30から繰り出されるCFロービング31が予熱セル23で100〜300℃程度に予熱された後、樹脂含浸セル22内に入り、案内ロール40Aで鉛直下方に向かい、溶融樹脂10内で含浸ロール41〜44に接触して帯状に拡幅される。拡幅されて繊維がほぐされたCFロービング31の炭素繊維間に溶融樹脂10が含浸され、樹脂含浸CFロービング32は案内ロール40Bを介して、賦形ダイ24で賦形され、ペレタイザー26内の引き取りロールにより引き取られる。この樹脂含浸CFロービング32が水槽25で冷却されて得られたCF/PC材料33がペレタイザー26内のカッターで切断されることにより、CF/PCペレット34が得られる。
なお、図1,2は、本発明の実施に好適なCF/PCペレットの製造装置の一例を示すものであって、本発明で用いるCF/PCペレットの製造装置は、何ら図1,2に示されるものに限定されない。
例えば、図1,2において、予熱セル23及び樹脂含浸セル22は、予熱セル23内のCFロービング31の走行方向が水平方向となり、樹脂含浸セル22内のCFロービング31の走行方向が鉛直方向となるように、断面L字型に設けられているが、図3に示されるように、予熱セル23Aと樹脂含浸セル22は、共にCFロービングの走行方向が鉛直方向となるように断面I字型に連続して設けられていてもよい。この場合、図2に示される入口側案内ロール40Aは省略することができる。
図3に示すCF/PCペレットの製造装置は、予熱セル23Aと樹脂含浸セル22が連続した筒状に設けられ、入口側案内ロール40Aが設けられていないこと以外は図2に示すものと同様に構成されており、賦形ダイ24以降の水槽25、ペレタイザー26等の構成は図1に示すものと同様であり、上記と同様にCF/PCペレットの製造が行われる。
本発明においては、このようなCF/PC材料及びCF/PCペレットの製造に当たり、前述の(1)〜(4)の条件を満たすように、条件設定を行う。
<CF/PC材料の炭素繊維含有量>
本発明において、CF/PC材料の炭素繊維含有量は5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%とする。
CF/PC材料の炭素繊維含有量が上記上限よりも多いと、CF/PC材料及びCF/PCペレット、更にはこれらを成形して得られる成形品の成形性が劣るものとなる。また、相対的に樹脂量が少なくなって、繊維の抜け落ちが問題となるおそれがある。
CF/PC材料の炭素繊維含有量が上記下限よりも少ないと、十分な電磁波シールド性が得られない。
<溶融樹脂温度>
本発明において、溶融樹脂温度(図1,2及び図3において、樹脂含浸セル22内の溶融樹脂10の温度)は、290〜340℃、好ましくは300〜330℃、より好ましくは310〜330℃とする。
溶融樹脂温度が上記下限よりも低いと、溶融したポリカーボネート樹脂の粘度が高いために、繊維切れが起こり易くなる。溶融樹脂温度が上記上限よりも高いと、繊維切れの問題はないが、ポリカーボネート樹脂の熱劣化でポリカーボネート樹脂本来の物性が損なわれる。なお、このポリカーボネート樹脂の熱劣化は、ポリカーボネート樹脂の分子量の低下の度合で把握することができる。
<含浸ロールとCFロービングとの接触面積>
本発明においては、含浸ロールとCFロービングとの接触面積を、含浸ロールの直径a(mm)、CFロービングの幅b(mm)に対して、0.6πab〜1.4πabとなるようにする。ここで、πは円周率3.14である。
この接触面積について、図2〜5を参照して説明する。
直径a(mm)の含浸ロール41〜44に対して、CFロービング31は、幅b(mm)で含浸ロール41〜44に接触している。本発明において、含浸ロールとCFロービングとの接触面積とはこれらすべての含浸ロール41〜44に対してCFロービング31が接触している面積の合計である。
案内ロール40A,40BとCFロービング31との接触面積は含まれない。
ここで、含浸ロールとは、CFロービング31に溶融樹脂10を含浸させるために、溶融樹脂10内に設けられているものであり、通常、2以上のロールが溶融樹脂10内で、隣接する含浸ロール間の間隔cが、含浸ロールの直径aの4倍以下(即ち4a以下)、好ましくは直径aの3倍以下(即ち3a以下)で、CFロービング31の厚さ以上となるように設けられる。従って、溶融樹脂10内に設けられていても、図2,3の案内ロール40Bのように、隣接するロールとの間隔が、含浸ロールの直径aの4倍よりも大きく離隔して設けられたロールは含浸ロールには含まれない。
含浸ロールとCFロービングとの接触面積は、含浸ロールの直径、含浸ロールの本数、含浸ロール間の距離、含浸ロールの位置、含浸ロールと案内ロールとの距離などを適宜設計することにより変更することができる。
例えば、図4(a),(b)に示すように、含浸ロール51〜53を比較的小さい間隔で並設した場合は、図5(a),(b)に示すように比較的大きい間隔で並設した場合よりも1本の含浸ロール当たりのCFロービングとの接触面積が大きく、従って、合計の接触面積が大きくなる。図4(c)、図5(c)に示すように、間隔は同じであっても、平面投影方向の含浸ロール51〜53の位置が異なる場合は、図4(b)、図5(b)に示すように、この位置が同一の場合に比べて、接触面積が大きくなる。含浸ロールの上下に設ける案内ロールの位置についても同様のことが言える。
また、含浸ロールの直径を変えることで、接触面積を変更することができる。
なお、含浸ロールの数については2本以上であればよく、特に制限はないが、通常2〜6本、好ましくは2〜4本である。
また、含浸ロールの直径a(mm)についても、CFロービングの幅b(mm)や樹脂含浸セルの大きさ等に応じて適宜決定されるが、幅bが3〜20mmのCFロービングに対して、含浸ロールの直径aは8〜16mm、特に10〜14mmとし、含浸ロールの直径aがCFロービングの幅bの0.5〜4倍程度となるように設計することが好ましい。
なお、複数の含浸ロールの直径aはすべて同じである必要はなく、異なっていてもよい。また、隣接する含浸ロールの間隔cもすべて同じである必要はなく、異なっていてもよい。
本発明においては、上記の通り設計される含浸ロールとCFロービングの接触面積が含浸ロールの直径a、CFロービングの幅bに対して0.6πab〜1.4πabの範囲となるようにする。
この接触面積が上記上限よりも大きいと、CFロービングにかかる張力が大きくなって、繊維切れが問題となり、上記下限よりも小さいと、CFロービングの炭素繊維間に溶融樹脂が十分に含浸しないために、得られたペレットからの繊維抜けが問題となる。この接触面積は好ましくは0.8πab〜1.2πabであり、より好ましくは0.9πab〜1.1πabである。
<樹脂含浸CFロービングの引き取り速度>
本発明において、樹脂含浸CFロービングの引き取り速度、即ち、図1において、賦形ダイ24からペレタイザー26内の引き取りロールにより引き取られる樹脂含浸CFロービング32の引き取り速度は、1〜12kg/hr、好ましくは3〜11kg/hr、より好ましくは5〜10kg/hrとする。
この引き取り速度が上記上限よりも大きいと、CFロービングにかかる張力が大きすぎるために、繊維切れが起こり易くなる。引き取り速度は小さくても繊維切れや繊維抜けの面での問題はないが、生産性の面で好ましくない。
なお、引き取り速度は、より好ましくは、溶融樹脂温度との相関において、上記範囲内で、溶融樹脂温度が高い場合には若干速く、溶融樹脂温度が低い場合には若干遅く、適宜調節することが繊維切れ防止と生産性の面から好ましい。
[CF/PCペレットの製造]
上記のプルトリュージョン法により得られたCF/PC材料は、ペレタイザー26で切断してCF/PCペレットとする。
本発明において、CF/PCペレットの切断長さ、即ち、得られるCF/PCペレットの長さについては特に制限はないが、4〜10mm、特に5〜8mmであることが好ましい。このようにして得られるペレットには、この切断長さとほぼ同じ長さの繊維長のCFロービングが含まれる。切断長さが短か過ぎると、このペレット中のCFロービングの長さも短いものとなり、これを用いて得られる成形品の電磁波シールド性が低下する傾向となり、また繊維の抜け落ちが起こる場合がある。逆に切断長さが長過ぎると成形性が損なわれる。
なお、CF/PCペレットの直径は、用いたCF/PCペレットの幅や樹脂含浸量などによって決められるが、通常2.5〜3.5mm程度である。
[CFロービング]
次に、本発明において用いるCFロービング、即ち、炭素繊維の長繊維束について説明する。
CFロービングを構成する炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石油ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維であってもよいが、特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、機械的特性に優れ、入手が容易である点において好ましい。
炭素繊維の繊維径(フィラメント1本当たりの直径)は、平均で5〜10μmであることが好ましい。CFロービングは、このような炭素繊維の1000〜50000本(1〜50k)程度をポリウレタン系収束剤等の収束剤で収束させた繊維束であることが好ましい。
このようなCFロービングの幅bは通常3〜20mm程度で、厚さは0.1〜1mm程度である。
なお、図1〜3において、CFロービング巻回体を1つのみ用いてCFロービングを送り出しているが、炭素繊維含有量の多いCF/PC材料を製造する場合には2個以上のCFロービング巻回体を用い、2本以上のCFロービングを平行して樹脂含浸セル内に走行させるようにしてもよい。
[含浸樹脂]
次に、本発明のCF/PC材料及びそのCF/PCペレットを製造するための含浸樹脂(以下「本発明の含浸樹脂」と称す場合がある。)について説明する。この含浸樹脂は、ポリカーボネート樹脂を含むものであり、ポリカーボネート樹脂のみから構成されるものであってもよく、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や、エラストマー、電磁波シールド性のより一層の向上のためのカーボンブラック、カーボンナノチューブ、SUS粉末等の無機導電性物質、更に特性改善のための各種の添加剤を含むポリカーボネート樹脂組成物であってもよい。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明の含浸樹脂に用いるポリカーボネート樹脂としては、従来公知の任意のポリカーボネート樹脂を使用できる。ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂である。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる、分岐していてもよい芳香族ポリカーボネート重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。また、溶融法で製造され、末端基のOH基量を調整して製造されたポリカーボネート樹脂であってもよい。
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の原料の一つである芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとして、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
さらに、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン等の分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を分岐化剤として少量併用することもできる。
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物のなかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、その使用量は、該ヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用されるが、中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記重合触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
ポリカーボネート樹脂として好ましいものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が挙げられる。また、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。ポリカーボネート樹脂は、原料の異なる2種以上の重合体及び/又は共重合体の混合物であってもよく、分岐構造を0.5モル%まで有していてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシル基含有量は、熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす。実用的な物性を持たせるためには、ポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシル基含有量は、通常30〜2000ppm、好ましくは100〜1500ppm、さらに好ましくは200〜1000ppmであり、末端ヒドロキシル基含有量を調節する封止末端剤としてはp−tert−ブチルフェノール、フェノール、クミルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等を使用することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂中の残存モノマー量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が150ppm以下、好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。エステル交換法により合成された場合には、さらに炭酸ジエステル残存量が300ppm以下、好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下である。
芳香族ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは13,000〜50,000の範囲のものであり、より好ましくは13,000を超え40,000以下のものであり、特に好ましくは18,000〜30,000の範囲のものである。粘度平均分子量を13,000以上とすることにより、得られるCF/PC材料及びCF/PCペレット、更にはこれを用いて得られる成形品に機械的特性がより効果的に発揮され、50,000以下とすることにより、得られるCF/PC材料及びCF/PCペレットの成形加工性がより良好となる。また、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合してもよく、粘度平均分子量が上記好適範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して、上記分子量の範囲内としてもよい。
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂であってもよい。使用済みの製品としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、再生ポリカーボネート樹脂の形態についても特に制限されず、製品の不適合品、スプルー、又はランナーなどの粉砕品、及びそれらを溶融して得たペレットなどいずれも使用可能である。
<エラストマー>
本発明の含浸樹脂は、エラストマーを含有していてもよい。エラストマーを含有することで、得られるCF/PC材料及びCF/PCペレット、更にはこれを用いて得られる成形品の耐衝撃性を改良することができる。
本発明に用いるエラストマーは、なかでもゴム質重合体にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよいが、生産性や粒径を制御しやすい点より、乳化重合法が好ましく、多段乳化重合法がより好ましい。この多段乳化重合法としては、例えば、特開2003−261629号公報に記載している重合法が挙げられる。
ゴム質重合体は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、(部分)水添ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、(部分)水添ポリブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、(部分)水添ポリブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソブチルアクリレートを主成分とするアクリル系ゴム共重合体等のブタジエンとブタジエンと共重合し得る1種以上のビニル系単量体との共重合体等のブタジエン系ゴムや、ポリイソブチレン、ポリイソブチレン−スチレン共重合体、ポリイソブチレン−スチレンブロック共重合体等のイソブチレン系ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−αオレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴムが好ましい。
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このようなコア/シェル型グラフト共重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−711」、「カネエースM−731」「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースMR−01」等が挙げられる。
本発明の含浸樹脂にエラストマーを含有させる場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。エラストマーの含有量が上記下限より少ない場合は、エラストマーによる耐衝撃性向上効果が不十分であり、エラストマーの含有量が上記上限値を超える場合は、難燃性や耐熱性の低下、得られるCF/PC材料及びCF/PCペレットを成形してなる成形品の外観不良が生じる可能性がある。
<無機導電性物質>
本発明の含浸樹脂は、無機導電性物質を含有していてもよい。
無機導電性物質としては、通常、熱可塑性樹脂に配合されている公知の無機導電性物質を用いることができ、無機導電性物質を用いることにより、得られる成形品内において、炭素長繊維により形成されるネットワークを、更に無機導電性物質の介在で連続させることにより、より一層優れた電磁波シールド性を得ることができる。このような無機導電性物質としては、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、炭素ウイスカー、カーボンナノチューブ等の炭素系の導電性物質、SUS粉末等の金属粉末、金属酸化物等の金属系の無機導電性物質、炭素繊維やウイスカー、ガラス繊維の表面に金属をコートした複合導電性物質等が挙げられる。これらの中でも、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、SUS粉末等の金属粉末が好ましい。これらの無機導電性物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性カーボンブラックとしては、一般に比表面積が大きく、2次凝集体(ストラクチャー)の発達したものが好ましく、比表面積(BET式窒素吸着法)が30〜1500m/g、中でも50〜1300m/g、更には70〜900m/g、特に100〜850m/gであるものが好ましい。比表面積が1500m/gを超えると、得られるCF/PC材料及びCF/PCペレット、更にはこれを用いて得られる成形品の流動性と外観が悪化する傾向があり、30m/g未満では、導電性が発現しにくくなるおそれがある。
また、導電性カーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が、100〜500cm/100gのものが好ましく、中でも120〜450cm/100g、特に150〜400cm/100gであるものが、導電性と耐衝撃性のバランスの点でより好ましい。
なお、本発明において、BET式窒素吸着法比表面積(単位:m/g)、DBP吸収量(単位:cm/100g)は、JIS K6217に準拠して測定されたものである。
このような好ましい導電性カーボンブラックとしては、原油やガスの燃焼熱によって原料炭化水素を熱分解させ、カーボンブラックを生成させるファーネス法導電性カーボンブラック、重質油のガス化プロセスによって得られるケッチェンブラック、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック等を挙げることができ、例えば、キャボット社製「バルカンXC−72」、三菱化学社製「ケッチェンブラックEC」、電気化学工業社製「デンカブラック」等が市販されている。
導電性カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、物性や原料ないし製造プロセスの異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
カーボンナノチューブは、中空構造を有する炭素フィブリルであり、外径3.5〜70nm、アスペクト比5以上であることが好ましく、外径4〜60nm、アスペクト比10以上であるものが特に好ましい。フィブリル外径が3.5nm未満のものは、樹脂中への分散性に劣り、70nmを超えると導電性が劣る傾向にある。また、アスペクト比が5未満では、導電性が劣る傾向にある。
カーボンナノチューブは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが該フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心状に配置されている円柱状のフィブリルである。更に、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmであることが好ましい。かかるカーボンナノチューブは、特表昭62−500943号や米国特許第4,663,230号明細書に詳しく記載されている。その製法については、上記特許公報や米国特許明細書に記載されているように、遷移金属含有粒子(例えばアルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子)をCO、炭化水素等の炭素含有ガスと850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解により生じた炭素を遷移金属を起点として繊維状に成長させる方法が挙げられる。かかるカーボンナノチューブは、ハイペリオン・カタリシス社より「グラファイト・フィブリル」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
金属粉末としては、金、銀、銅、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄等、或いはこれらの金属を2種以上含む合金などの粉末が挙げられるが、これらのうち、特にSUS粉末が電磁波シールド性の付与効果及びコストの面で好ましい。
SUS粉末等の金属粉末は、それのみでは電磁波シールド性を付与することは難しいが、炭素長繊維との併用で、高い電磁波シールド性を付与することができる。
金属粉末の形状は、繊維等の棒状、球状等の粒状、フレーク状(鱗片状)など特に制限はないが、その粒径については、大き過ぎるとペレットの成形性、機械的強度を損なうおそれがあり、小さ過ぎると電磁波シールド効果が劣る傾向にあることから、平均粒径で1〜1000μm、特に10〜500μm程度であることが好ましい。ここで、金属粉末の粒径とは、棒状の金属粉末であればその長辺の長さ、球状の金属粉末であればその直径であり、粒状の金属粉末であれば、その最も径の大きい部分の径に該当する。
金属粉末は、1種のみを用いてもよく、材質や大きさ、形状の異なるものの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のような無機導電性物質、特に、炭素系の導電性物質等の無機導電性物質を、本発明の含浸樹脂に用いる場合、無機導電性物質は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上で、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下となるように用いることが好ましい。無機導電性物質の配合量が上記下限値未満では、無機導電性物質を用いることによる電磁波シールド性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限値を超えると得られるCF/PC材料及びCF/PCペレットの成形性等が損なわれる恐れがある。
また、無機導電性物質のうちでも特にSUS粉末等の金属粉末を本発明の含浸樹脂に用いる場合、金属粉末は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上で、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下となるように用いることが好ましい。金属粉末の配合量が上記下限値未満では、金属粉末を用いることによる電磁波シールド性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限値を超えると得られるCF/PC材料及びCF/PCペレットの成形性等が損なわれる恐れがある。
なお、カーボンブラックやカーボンナノチューブ、金属粉末等の無機導電性物質は、これらを高濃度に含むマスターバッチとして配合することが、無機導電性物質を樹脂中で均一に分散させることができ、好ましい。この場合、マスターバッチに用いる樹脂としては、本発明の含浸樹脂に用いるポリカーボネート樹脂と同一のポリカーボネート樹脂であってもよく、異なるポリカーボネート樹脂であってもよく、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、例えば、ポリスチレン樹脂等であってもよい。マスターバッチ中のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粉末等の無機導電性物質の含有量には特に制限はないが、通常20〜50質量%程度である。
これらのマスターバッチにポリカーボネート樹脂が含まれる場合、そのポリカーボネート樹脂も本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂として、前述のエラストマー及び無機導電性物質や後述の各種添加剤等の配合量の数値の基準となるポリカーボネート樹脂に含まれる。
<他の熱可塑性樹脂>
本発明の含浸樹脂がポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む場合、その種類および配合量は、成形性、耐薬品性等の性能を向上するなどの目的で、適宜選択できる。ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン及び/又はHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)との混合樹脂などが挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル系樹脂、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。
本発明の含浸樹脂中にポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む場合、その配合量は、好ましくは、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量の50質量%未満であり、より好ましくは40質量%以下であり、最も好ましくは30質量%以下である。
<添加剤>
本発明の含浸樹脂には、所望の物性を得るため、必要に応じて各種の添加剤、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、難燃剤、滴下防止剤、離型剤、摺動性改良剤などを配合することができる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
上記の中では、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系酸化防止剤は、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社より、「イルガノックス1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されている。
酸化防止剤を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。酸化防止剤の配合量が0.001質量部未満の場合は抗酸化剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は効果が頭打ちとなり経済的ではない。
(熱安定剤)
熱安定剤としては、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物、亜リン酸、及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトの群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記の亜リン酸エステル化合物の具体例としては、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上のを混合して使用してもよい。上記の中で、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
熱安定剤を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。熱安定剤の配合量が0.001質量部未満の場合は熱安定剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は耐加水分解性が悪化する場合がある。
(離型剤)
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価又は3価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中では、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価又は2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸および/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。ここで、脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であればよい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
離型剤を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。離型剤の配合量が0.001質量部未満の場合は離型性の効果が十分でない場合があり、2質量部を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などの問題がある。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤の具体例としては、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などの有機紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルの群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物が挙げられる。また、その他のベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−ビス(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール][メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。
紫外線吸収剤を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.01〜3質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。紫外線吸収剤の配合量が0.01質量部未満の場合は耐候性の改良効果が不十分の場合があり、3質量部を超える場合はモールドデボジット等の問題が生じる場合がある。
(染顔料)
染顔料としては、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、酸化チタン、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料が挙げられる。有機顔料および有機染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、熱安定性の点から、カーボンブラック、酸化チタン、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
染顔料を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。染顔料の配合量が20質量部を超える場合は耐衝撃性が十分でない場合がある。
なお、カーボンブラックは無機導電性物質としても機能する。カーボンブラックを無機導電性物質として用いる場合、前述のように、その配合量は、染顔料としての配合量よりも多く設定することができる。
(難燃剤)
難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレンなどのハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の有機金属塩系難燃剤、ポリオルガノシロキサン系難燃剤などが挙げられるが、リン酸エステル系難燃剤が特に好ましい。
リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジキシレニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
難燃剤を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、更に好ましくは5〜20質量部である。難燃剤の配合量が1質量部未満の場合は難燃性が十分でない場合があり、30質量部を超える場合は耐熱性が低下する場合がある。
(滴下防止剤)
滴下防止剤としては、例えば、ポリフルオロエチレン等のフッ素化ポリオレフィンが挙げられ、特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これは、重合体中に容易に分散し、且つ、重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示す。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。ポリテトラフルオロエチレンは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社より、「テフロン(登録商標)6J」又は「テフロン(登録商標)30J」として、ダイキン工業社より「ポリフロン(商品名)」として市販されている。
滴下防止剤を用いる場合、その配合量は、本発明の含浸樹脂中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.02〜4質量部、好ましくは0.03〜3質量部である。滴下防止剤の配合量が5質量部を超える場合は、得られるCF/PC材料又はCF/PCペレットを成形してなる成形品外観の低下が生じる場合がある。
<本発明の含浸樹脂の製造方法>
本発明において、本発明の含浸樹脂がポリカーボネート樹脂のみからなる場合は、当該ポリカーボネート樹脂を用いて、即ち、ポリカーボネート樹脂を図1に示す押出機20のホッパー21から投入して、前述のプルトリュージョン法によりCF/PC材料及びCF/PCペレットを製造することができる。
本発明の含浸樹脂として、エラストマー、無機導電性物質、その他の添加剤等を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合、ポリカーボネート樹脂と、エラストマー、無機導電性物質、その他の添加剤等とを所定の割合で用いて、即ち、これらを所定の割合で、図1の押出機20のホッパー21から投入して、前述のプルトリュージョン法によりCF/PC材料及びCF/PCペレットを製造することができる。
この場合、ポリカーボネート樹脂と、必要に応じて配合される各種の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後押出機20のホッパー21に投入して溶融混練してもよいし、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練してもよい。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練してもよい。
[電磁波シールド性成形品]
本発明のCF/PC材料又はCF/PCペレットを成形することにより、電磁波シールド性に優れた成形品を得ることができる。本発明のCF/PC材料又はCF/PCペレットの成形法については特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。中でも、射出成形が電磁波シールド性成形品の製造には一般的である。
なお、本発明のCF/PC材料又はCF/PCペレットは、それ単独で成形に供して成形品とすることもできるが、必要に応じて、他の樹脂ペレット等の他の成分と混合して成形に供することもできる。
また、本発明のCF/PCペレットは他の樹脂ペレットと多色複合成形して複合成形品とすることもできる。
本発明のCF/PC材料又はCF/PCペレットから得られる成形品の適用分野については特に制限はないが、電磁波シールド性が要求される用途、例えば、OA機器、AV機器、測定機器、輸送機器、通信機器、レーダー装置等の筐体用途やコネクタ、包装材等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
以下の実施例及び比較例において用いた原材料成分は下記表1に示す通りである。
Figure 0006337767
[評価方法]
実施例及び比較例における生産性、ペレット品質等の評価は以下の方法により行った。
<繊維切れの有無>
1時間のペレットの製造中における繊維切れの有無を評価した。
<ペレットの繊維抜け落ち>
得られたペレットを目視観察し、繊維の抜け落ちの有無を調べ、以下の基準で評価した。
◎:抜け落ちが全く無い
○:全体の20%未満程度抜け落ちがある。
△:全体の20%以上40%未満抜け落ちがある。
×:全体の40%以上抜け落ちがある。
<分子量保持率>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:[η]=1.23×10−40.83の式から、得られたペレット中の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を算出した。ここで極限粘度[η]とは各溶液濃度(C)(g/dl)での比粘度(ηsp)を測定し、下記式により算出した値である。
原料芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量:21,000に対する測定された粘度平均分子量の割合の百分率を分子量保持率とした。この値が大きい程、ポリカーボネート樹脂の劣化が少なく、その物性が維持されていることを示す。
Figure 0006337767
<繊維長/ペレット長比>
得られたペレット100個について、ペレット長と、ペレット内の炭素繊維の繊維長を測定し、それぞれ繊維長/ペレット長比を求めた。この値が1に近い程、炭素繊維の長さが維持されていることを示す。
[実施例1〜5、比較例1〜5]
図1,2に示すプルトリュージョン法でCF/PCペレットを製造した。
上記表1に記載した各成分を、下記の表2に示す樹脂組成物配合の割合にて配合し、これを40mm単軸押出機(田辺プラスチックス機械製VS40−32V)20のホッパー21に投入し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数80rpmで溶融混練して含浸樹脂として樹脂含浸セル22に押し出した。
この含浸樹脂に対して、CFロービング31を、得られるCF/PCペレット中の炭素繊維含有量が表2に示す割合となるように用いた。CFロービング31は予熱セル23にて150℃に予熱した。
含浸樹脂温度、含浸ロールとCFロービングとの接触面積、樹脂含浸CFロービングの引き取り速度は、表2に示す通りとし、ペレットの切断長さは9mmとした。このペレットの直径は約2.8mmであった。
含浸ロールとしてはいずれも直径a=12mmのものを用いた。CFロービングは、この含浸ロールに対して幅b=8mmで接触する。CFロービングの厚さは0.3mmである。含浸ロールとCFロービングとの接触面積については、以下の通り、含浸ロールの個数を変えることで変更した。
実施例1〜5及び比較例1,2,5では、図7に示すように、3本の含浸ロール51〜53を用い、隣接する含浸ロール間がCFロービング31の厚さとほぼ同等となるように近接して並列配置した。
この場合、含浸ロール51と含浸ロール53では、CFロービング31は含浸ロールの外周の1/4の領域で接触し、含浸ロール52とCFロービング31は含浸ロールの外周の1/2の領域で接触するので、接触面積は以下の通り算出される。
接触面積=b×aπ×1/4+b×aπ×1/2+b×aπ×1/4
=πab
比較例3では、図6に示すように、2本の含浸ロール51〜52を用い、隣接する含浸ロール間がCFロービング31の厚さとほぼ同等となるように近接して並列配置した。
この場合、含浸ロール51と含浸ロール52では、CFロービング31は含浸ロールの外周の1/4の領域で接触するので、接触面積は以下の通り算出される。
接触面積=b×aπ×1/4+b×aπ×1/4
=0.5πab
比較例4では、図8に示すように、4本の含浸ロール51〜54を用い、隣接する含浸ロール間がCFロービング31の厚さとほぼ同等となるように近接して並列配置した。
この場合、含浸ロール15と含浸ロール54では、CFロービング31は含浸ロールの外周の1/4の領域で接触し、含浸ロール52と含浸ロール53では、CFロービング31は含浸ロールの外周の1/2の領域で接触するので、接触面積は以下の通り算出される。
接触面積
=b×aπ×1/4+b×aπ×1/2+b×aπ×1/2+b×aπ×1/4
=1.5πab
CF/PCペレット製造時及び得られたCF/PCペレットについて前述の評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例6]
実施例1におけると同様の割合で溶融混練した溶融樹脂とCFロービングを用い、図9(a)に示す電線被覆法でペレットの製造を行った。
溶融樹脂温度、樹脂被覆CFロービングの引き取り速度は表2に示す通りとした。
ペレット製造時及び得られたペレットについて前述の評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例7]
実施例1におけると同様の割合で溶融混練した溶融樹脂とCFロービングを用い、図9(c)に示すダイレクトロービング法でペレットの製造を行った。
溶融樹脂温度、樹脂複合CFロービングの引き取り速度は表2に示す通りとした。
ペレット製造時及び得られたペレットについて前述の評価を行い、結果を表2に示した。
Figure 0006337767
表2より次のことが分かる。
電線被覆法による比較例6では、繊維切れの問題はないが、繊維の抜け落ちの問題がある。また、ダイレクトロービング法による比較例7では、繊維切れ、ペレットからの繊維の抜け落ちの問題はないが、繊維長を長く残すことができず、繊維長/ペレット長比が非常に小さい。
これに対して、本発明に従って、前述の(1)〜(4)の条件を満たすプルトリュージョン法でCF/PCペレットの製造を行った実施例1〜5では、繊維切れ、ペレットからの繊維の抜け落ちを防止すると共に、繊維長を長く残して繊維長/ペレット長比が1に近い良好なCF/PCペレットを得ることができる。
プルトリュージョン法であっても、溶融樹脂温度が本発明の規定範囲よりも低い比較例1では、繊維切れ、ペレットからの繊維の抜け落ちの問題があり、逆に溶融樹脂温度が本発明の規定範囲よりも高い比較例2では、ポリカーボネート樹脂の熱劣化の問題がある。
また、含浸ロールとCFロービングの接触面積が本発明の規定範囲よりも小さい比較例3では、樹脂が十分に均一に含浸されないために、ペレットからの繊維の抜け落ちがあり、逆にこの接触面積が本発明の規定範囲よりも大きい比較例4では、繊維切れが起こる。
また、樹脂含浸CFロービングの引き取り速度が速すぎる比較例5では、繊維切れが問題となり、ペレットからの繊維の抜け落ちも若干起こる。
以上より、本発明に従って、前述の条件(1)〜(4)の条件を満たすプルトリュージョン法によれば、ポリカーボネート樹脂の熱劣化や、ペレットからの繊維の抜け落ちの問題のない高品質のCF/PCペレットを、歩留りよく、高い生産性で製造することができることが分かる。
20 押出機
21 ホッパー
22 樹脂含浸セル
23,23A 予熱セル
24 賦形ダイ
25 水槽
26 ペレタイザー
30 CFロービング巻回体
31 CFロービング
32 樹脂含浸CFロービング
33 CF/PC材料
34 CF/PCペレット
40A,40B 案内ロール
41,42,43,44,51,52,53,54 含浸ロール

Claims (5)

  1. ポリカーボネート樹脂の溶融樹脂浴中に、炭素繊維の長繊維束を連続的に走行させると共に、該溶融樹脂浴中にて、該長繊維束を含浸ロールで帯状に拡幅させることにより、該長繊維束に樹脂を含浸させ、樹脂含浸長繊維束を該溶融樹脂浴から引き取ることで炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料を製造するに当たり、下記(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法。
    (1) 該炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の炭素繊維含有量が5〜40質量%である。
    (2) 該溶融樹脂温度が290〜340℃である。
    (3) 該含浸ロールの直径をa(mm)、該長繊維束の幅をb(mm)としたとき、該含浸ロールと該長繊維束との接触面積が0.6πab〜1.4πabである。
    (4) 該樹脂含浸長繊維束の引き取り速度が1〜12kg/hrである。
  2. 請求項1において、2個以上の前記含浸ロールが、そのロール軸方向が前記長繊維束の走行方向と交叉する方向となるように並列して設けられており、隣接する該含浸ロール同士の間隔が該含浸ロールの直径a(mm)以下であることを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、前記炭素繊維の長繊維束を、予め100〜300℃に予熱した後、前記溶融樹脂浴中に導入することを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項の炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の製造方法で製造された炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料を切断して炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットを得る炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法。
  5. 請求項4において、前記炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合材料の切断長さが4〜10mmであることを特徴とする炭素長繊維/ポリカーボネート樹脂複合ペレットの製造方法。
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