JP6332390B2 - 車両の下部車体構造 - Google Patents
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Description
本発明は、搭乗者用の座席シートを移動可能に支持するシートレールが取り付けられるシートブラケットを備えた車両の下部車体構造に関する。
自動車等の車両においては、搭乗者用の座席シートの車体前後方向の位置を調整可能とする必要がある。このため、座席シートは車体前後方向に延びるシートレールに移動可能に支持される。一方、シートレールは、車体フレームの下部に組み付けられるシートブラケットによって、位置決めされると共に固定的に支持される。シートブラケットは、車体フレームの下部に配置されるクロスメンバを利用して、車体フレームに取り付けられることがある。前記クロスメンバは、フロアパネルの車幅方向中央付近に置いて前後方向に延びるトンネル部と、車幅方向両端部に配置されるサイドシルとの間を繋ぐ補強部材である。シートブラケットは、このようなクロスメンバの車幅方向端部に配置される(例えば、特許文献1参照)。
車両の走行時、シートブラケットには、座席シート及び搭乗者の荷重を担持した状態で、車体フレームの振動が加わることになる。このため、シートブラケットは、車体上下方向の剛性が高いことが求められる。例えば、車体軽量化のためにシートブラケットをアルミニウムの鋳造品にて形成するような場合、構造的に上下方向の剛性に優れるシートブラケットが必要となる。
本発明の目的は、優れた車体上下方向の剛性を備えるシートブラケットを用いることで、剛性が高められた車両の下部車体構造を提供することにある。
本発明の一局面に係る車両の下部車体構造は、車体フレームと、前記車体フレームの下部に組み付けられ、シートレールが取り付けられるシートブラケットと、を備え、前記シートブラケットは、車体上方に向けて径小となる円錐形状を備えた円錐面部と、前記円錐面部の上端に設けられ、前記シートレールの固定部となる受け面部と、前記円錐面部と交差し、車体上下方向に延びる縦平面部と、を備える。
この車両の下部車体構造によれば、シートブラケットは円錐面部を有し、この円錐面部の上端にシートレールの固定部となる受け面部が備えられている。従って、シートレールを介して座席シートの荷重を受け止める受け面部の面積は自ずと小さくなり、面外変形が発生し難くすることができる。また、受け面部が受け取る車体上下方向の荷重は、円錐面部を通してバランス良く分散され、シートブラケットの下方固定部へ向けて伝達されるので、当該シートブラケットの車体上下方向の剛性を高めることができる。さらに、縦平面部を設けることで、この縦平面部と前記円錐面部と交差部分に稜線部が形成されるようになる。当該稜線部は応力集中箇所となり得る。このように、応力集中箇所を積極的に形成することで応力が加わる部位が分散され、シートブラケットの特定箇所に応力が集中することを回避できる。このこともまた、シートブラケットの車体上下方向の剛性を高めることに寄与する。これらに加え、円錐面部を具備させることで、直方体形状の場合に比べて容積が小さくなることから、シートブラケットの軽量化を図ることができる。
上記の下部車体構造において、前記円錐面部と前記縦平面部との交差によって形成される稜線部が、車体上方に向けて凸となるように湾曲した稜線部であることが望ましい。この場合、前記縦平面部が複数備えられ、且つ、前記湾曲した稜線部が複数備えられていることがより望ましい。
この下部車体構造によれば、前記稜線部が直線状である場合に比べて、前記円錐面部から、より多様な方向の荷重が稜線部に加わるようになる。従って、上述の応力集中箇所の分散効果をより高めることができる。また、前記稜線部を複数具備させることで、一層、前記分散効果を高めることができる。
上記の下部車体構造において、前記受け面部は、上面視で円形の形状を有していることが望ましい。
この下部車体構造によれば、受け面部の面積を必要最小限にすることができる。すなわち、シートレールを固定するボルトのボルト頭を受け止めるために、受け面部は、少なくとも上面視で円形の領域を有する必要がある。この円形領域以外の部分を削ぎ落とした受け面部とすることで、面外変形が生じ難い受け面部とすることができる。
上記の下部車体構造において、前記シートブラケットは、前記円錐面部の下端において前記円錐面部と交差し、水平方向に延びる横平面部をさらに備えることが望ましい。
この下部車体構造によれば、横平面部と円錐面部とが交差する稜線部を、応力集中箇所とすることができ、応力集中箇所の分散効果を高めることができる。また、円錐面部の下端に横平面部を形成することは、前記円錐面部の車体上下方向の軸線に対する傾きが大きくなりすぎないように規制することに繋がる。つまり、前記軸線に対して傾き過ぎた円錐面部であると、上下方向の荷重によって圧壊され易くなるが、前記横平面部を形成できる程度の傾きを持つ円錐面部とすることで、シートブラケットの上下方向の剛性低下を抑止することができる。
上記の下部車体構造において、前記シートブラケットは、アルミニウム又はその合金の一体成型物からなることが望ましい。
この下部車体構造によれば、シートブラケットをアルミニウム又はその合金の一体成型物にて形成することで、シートブラケットの軽量化を図ることができる。また、鋳造等で一体成型することで、平板材の組合せや板材の曲げ、絞り加工によりシートブラケットを形成する場合に比べて、ブラケット壁部やリブの形状、これらの配置の自由度を高めることができる。
上記の下部車体構造において、前記車体フレームは、その下部に、車体前後方向に延びるトンネル部を備えるフロアパネルと、前記フロアパネルの車幅方向外側において車両前後方向に延びる一対のサイドシルと、前記トンネル部とサイドシルとの間において車幅方向に延びるクロスメンバと、を備え、前記シートブラケットは、前記クロスメンバの車幅方向端部に取り付けられていることが望ましい。
この下部車体構造によれば、シートブラケットがクロスメンバに取り付けられるので、当該シートブラケットの裾野部分の剛性を高めることができる。また、トンネル部又はサイドシルとクロスメンバとの結合部分を、シートブラケットにて補強することが可能となり、車体フレームの剛性を高めることができる。
本発明によれば、優れた車体上下方向の剛性を備えるシートブラケットが車体フレームの下部に組み付けられるので、剛性が高められた車両の下部車体構造を提供することができる。
[車両の下部車体構造の概略]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る車両の下部車体構造を詳細に説明する。先ずは、本発明に係る車両の下部車体構造が適用された車体フレーム1について、図11、図2を参照して説明する。図1は、車両の車体フレーム1の上面図、図2は車体フレーム1の下部の要部斜視図である。車両は、例えば四輪自動車である。なお、図1及び他の図面において、前後、左右、上下の方向表示を付している。これらの方向は、車両を基準としている。つまり、以下の説明中において用いている前後、左右、上下の方向は、図1に示している前後方向(車体前後方向)、左右方向(車幅方向)、及び、図1の紙面に垂直な方向である上下方向と一致させている。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る車両の下部車体構造を詳細に説明する。先ずは、本発明に係る車両の下部車体構造が適用された車体フレーム1について、図11、図2を参照して説明する。図1は、車両の車体フレーム1の上面図、図2は車体フレーム1の下部の要部斜視図である。車両は、例えば四輪自動車である。なお、図1及び他の図面において、前後、左右、上下の方向表示を付している。これらの方向は、車両を基準としている。つまり、以下の説明中において用いている前後、左右、上下の方向は、図1に示している前後方向(車体前後方向)、左右方向(車幅方向)、及び、図1の紙面に垂直な方向である上下方向と一致させている。
車体フレーム1の下部には、フロアパネル11、サイドシル12、トンネル部13、ダッシュパネル14、フロントサイドフレーム15及びリアサイドフレーム16などが配置されている。このような車体フレーム1の下部には、クロスメンバ2及びシートブラケット3が組み付けられている。
フロアパネル11は大略的に水平方向に延びる平板であり、車体フレーム1の底面(車室の底面)を構成し、左右一対で備えられている。サイドシル12は、左右一対の補強部材であり、閉断面構造を備えている。一対のサイドシル12は、右側及び左側のフロアパネル11の車幅方向外側において、それぞれ前後方向に延びている。
トンネル部13は、車幅方向の中央、すなわち一対のフロアパネル11の中間に配置され、前後方向に延びている。図2には、トンネル部13の後方部分の斜視図が示されている。トンネル部13は、下面が開口し、フロアパネル11に対して上方へ山型に***した部分であり、前後方向に延びる右側板131及び左側板132と、これら側板131、132の上端同士を繋ぐ天板133とを含む。トンネル部13の左右下部側縁に延設された裾野フランジ13Fは、左右のフロアパネル11の内側端部に各々連結されている。トンネル部13の内側には、前後方向に延びる図略のドライブシャフトが収容される。
ダッシュパネル14は、フロアパネル11の前端から上方に立ち上がるパネルであり、車室とエンジンルームとを前後に仕切っている。ダッシュパネル14の左右方向中央付近には、トンネル部13の前端に連なるトンネル部分が備えられている。フロントサイドフレーム15は、ダッシュパネル14からさらに前方に延びる左右一対のフレームである。一対のフロントサイドフレーム15の間はエンジンルームであり、エンジンやトランスミッション等から構成される図略のエンジンユニットが据え付けられる。リアサイドフレーム16は、フロアパネル11の後端から後方に延びる左右一対のフレームである。
クロスメンバ2は、車体フレーム1の車幅方向の剛性を向上させるためのフレームであり、トンネル部13とサイドシル12との間において車幅方向に延びている。本実施形態では、左右のフロアパネル11上に、それぞれ前後方向に2本ずつ並んで配設されている例を示している。各クロスメンバ2の内側端部はトンネル部13に連結され、外側端部はサイドシル12に連結されている。図2には、4つのクロスメンバ2のうち、右後側のクロスメンバ2が示されている。
クロスメンバ2は、前凸条21、後凸条22、凹条部23及び底フランジ24を備え、下方が開口した部材である。前凸条21及び後凸条22は、共に前後方向の断面視で台形型の凸条であり、左右方向に平行に延びている。凹条部23は、凸条21、22間において左右方向に延びる谷部である。底フランジ24は最も下方に突出した部分であり、クロスメンバ2の前後に配置され、フロアパネル11に接面する。
シートブラケット3は、各クロスメンバ2の車幅方向両端部上に配置されている。シートブラケット3には、前後方向に延びるシートレールR(図1において、左側のフロアパネル11上のものだけを仮想線で示している)が取り付けられる。シートレールRは、図略の座席シートを前後方向に移動可能に支持する。車幅方向内側のシートブラケット3は、クロスメンバ2の内側端部とトンネル部13とに接合され、両者の連結部の補強材としての役目も果たす。また、車幅方向外側のシートブラケット3は、クロスメンバ2の外側端部とサイドシル12とに接合され、両者の連結部の補強材としての役目も果たす。
[シートブラケットの詳細]
図2には、右後側のクロスメンバ2の内側端部上に配置されているシートブラケット3が示されている。当該シートブラケット3は、トンネル部13の右側板131に形成されている取り付け面134と、前記クロスメンバ2の内側端部とに接合されている。以下、このシートブラケット3について、詳細に説明する。以下の図の方向表示は、図2のシートブラケット3に対応している。なお、トンネル部13に接合される他のシートブラケット3は、実質的に同じ構造を備えている。また、サイドシル12側に配置されるシートブラケット3も、接合される対象がサイドシル12である他は、実質的に同じ構造である。
図2には、右後側のクロスメンバ2の内側端部上に配置されているシートブラケット3が示されている。当該シートブラケット3は、トンネル部13の右側板131に形成されている取り付け面134と、前記クロスメンバ2の内側端部とに接合されている。以下、このシートブラケット3について、詳細に説明する。以下の図の方向表示は、図2のシートブラケット3に対応している。なお、トンネル部13に接合される他のシートブラケット3は、実質的に同じ構造を備えている。また、サイドシル12側に配置されるシートブラケット3も、接合される対象がサイドシル12である他は、実質的に同じ構造である。
図3は、シートブラケット3の斜視図、図4は、図2のIV−IV線断面図、図5は、図2のV−V線断面図である。シートブラケット3は、大略的に円錐台形状を有するブラケット壁部30を含む。ブラケット壁部30は、下面と左側面とが開口した中空構造体であり、クロスメンバ2及びトンネル部13と共に閉断面を形成する。これに加えシートブラケット3は、ブラケット壁部30の左端に配置された横フランジ35と、ブラケット壁部30の下端側に配置された縦フランジ36及び水平フランジ37とを含む。また、ブラケット壁部30の上面側には、第1位置決めボス38及び第2位置決めボス39が立設されている。
シートブラケット3は、アルミニウム又はその合金の鋳造によって、一体成型物として形成されている。鋳造の方法としては、砂型鋳造、金型鋳造或いはダイキャスト鋳造などを採用することができる。アルミニウム又はその合金材料を用いることで、シートブラケット3の軽量化を図ることができる。また、鋳造で一体成型することで、ブラケット壁部30及び他の部分の形状やこれらの配置の自由度を高めることができる利点がある。なお、平板材の組合せや板材の曲げ、絞り加工によりシートブラケット3を形成するようにしても良い。
ブラケット壁部30は、円錐面部31、受け面部32、縦平面部33及び横平面部34を備える。円錐面部31は、車体上方に向けて径小となる円錐形状を備える部分である。円錐面部31に具備させる円錐形状は、真正な円錐でなくとも良く、大略的に円錐形の形状を備えていれば良い。図3の例では、上底がやや前方寄りに偏心する円錐台の形状を有する円錐面部31を例示している。また、円錐面部31は、上方に向けて緩やかに凸となる湾曲、或いは、下方に向けて緩やかに凹となる湾曲を備えていても良い。
受け面部32は、円錐面部31の上端、すなわち上底に位置する上壁であり、シートレールRの固定部となる部分である。受け面部32は、上面視で円形の形状を有しており、その中心にボルト孔321が穿孔されている。シートレールRは、受け面部32の上に載置される。すなわち、受け面部32は、シートレールRを介して座席シート及び搭乗者の荷重を受ける壁となる。ボルト孔321には、シートレールRを固定するボルトが上方側から挿通され、受け面部32の下面側に配置されるナット部材に前記ボルトが螺合される。なお、受け面部32の下面側に、内周面にねじ切り部を有する円筒型のボス部を突設し、該ボス部に前記ボルトを螺合させるようにしても良い。
第1位置決めボス38は、受け面部32の左前方側において、円錐面部31から上方に突設されている。第1位置決めボス38の左側部は、横フランジ35と一体化している。第1位置決めボス38には、ボス孔381が穿孔されている。このボス孔381には、シートレールRに備えられている位置決め用の基準ピンが挿入される。シートレールRは、ボス孔381に前記基準ピンが挿通されることでシートブラケット3に位置決めされた状態で、受け面部32のボルト孔321において前記ボルトが締結されることで、シートブラケット3に固定される。第2位置決めボス39は、受け面部32の右後方側において、円錐面部31から上方に突設されている。第2位置決めボス39は、トンネル部13側の付属部品を取り付けるためのボス孔381を有している。
縦平面部33は、車体上下方向に延びる平面を有し、円錐面部31と交差する平面部である。縦平面部33が具備する平面としては、鉛直方向に延びる平面、若しくは鉛直方向に対してやや傾きを持つ平面、緩やかに湾曲した平面等を例示することができる。縦平面部33は、少なくとも一つが円錐面部31と交差するように設けられていれば良いが、複数設けることが望ましい。図3には、ブラケット壁部30の右側部に位置する比較的大きい縦平面部33と、後側部に位置する比較的小さい縦平面部33とが示されている。図3には現れていないが、ブラケット壁部30の前側部にも、比較的小さい縦平面部が備えられている。
縦平面部33と円錐面部31とが交差する部分には稜線部331が形成される。縦平面部33は、円錐面部31を前後方向及び左右方向に垂直に切断した切断平面の形態を有する。このため、稜線部331は、円錐面に倣って上方に向けて凸となるように湾曲している。このような稜線部331が、ブラケット壁部30の前、後、右側部に備えられている。なお、ブラケット壁部30の左側部には、上下方向に延びる横フランジ35が一体的に設けられている。この横フランジ35もブラケット壁部30と交差する態様であるため、両者の境界部にも、実質的に上方に向けて凸の稜線部が形成されている。
横平面部34は、円錐面部31の下端において当該円錐面部31と交差し、水平方向に延びる平面部である。円錐面部31の裾野部分は、本来は上面視で円形であるが、上述の複数の縦平面部33によって一部が削り取られている。これら縦平面部33の間には、円錐面部31の円形の裾野部分が残存している。横平面部34は、このような円形の裾野部分から外側へ水平に延びる平面部である。
横フランジ35は、ブラケット壁部3の左側開口を区画する左側縁から前方、後方及び上方に所定幅で延び出すフランジである。図4、図5に示すように、横フランジ35は、上下方向に対して左方に傾いている。これは、横フランジ35が、トンネル部13の右側板131の傾きに倣うようにするためである。シートブラケット3がクロスメンバ2に取り付けられた状態において、横フランジ35は、右側板131に設けられた平坦面である取り付け面134に接面し、例えばスポット溶接により取り付け面134に固定される。
縦フランジ36は、前後一対で設けられ、円錐面部31の前側及び後側から斜め下方に延び出すフランジである。縦フランジ36の左端は、横フランジ35の下端部分に繋がっている。縦フランジ36の右端は、右側の縦平面部33よりも右方へ突出している。一対の縦フランジ36間の間隔は、クロスメンバ2の前後幅に合わせて設定されている(図2)。前側の縦フランジ36は、クロスメンバ2の前凸条21の前側面と当接し、後側の縦フランジ36は、後凸条22の後側面と当接し、それぞれスポット溶接等によりクロスメンバ2に固定される。
水平フランジ37は、円錐面部31の下端から右方に延び出すフランジである。水平フランジ37は、横平面部34と面一であり、一対の縦フランジ36の上端同士を繋いでいる。水平フランジ37は、クロスメンバ2の前凸条21及び後凸条22の上面と当接し、スポット溶接等によりクロスメンバ2に固定される。
ブラケット壁部30自体は、上述の通り下面と左側面とが開口した構造体であるが、ブラケット壁部30の内部空間Sは、車体フレームの一部との組合せによって実質的に閉じた空間となる。すなわち図4、図5に示す通り、ブラケット壁部30の下面開口は、水平フランジ37側からクロスメンバ2の内側端部2Aが入り込むと共に、トンネル部13の裾野フランジ13Fが存在することで、実質的に閉じられている。また、ブラケット壁部30の左側面開口は、取り付け面134によって塞がれている。従って、ブラケット壁部30は、実質的に閉断面構造を備えている。
トンネル部13の裾野フランジ13Fの下方には、トンネルサイドメンバ135が前後方向に延びている。トンネルサイドメンバ135は上方に開口した断面U字型のフレームであり、裾野フランジ13Fと閉断面を形成している。この閉断面フレームの上に、クロスメンバ2の底フランジ24が接面し、固定されている。トンネル部13の下方には、当該トンネル部13の下方開口を跨ぐようにトンネルクロスメンバ136が取り付けられている。トンネルサイドメンバ135は、トンネル部13の左右の側部に一対で配置されており、トンネルクロスメンバ136の左右両端部は、これらトンネルサイドメンバ135の下面に固定されている。
[作用効果]
続いて、本発明に係るシートブラケットの作用効果について、図6に示すシートブラケット3Aを参照しながら説明する。シートブラケット3Aは、本発明のモデル的なシートブラケットの実施形態であるが、本質的には図3に示したシートブラケット3と同じ構造を備えている。図7(A)、図7(B)は、それぞれ図6のシートブラケットの上面図、側面図である。
続いて、本発明に係るシートブラケットの作用効果について、図6に示すシートブラケット3Aを参照しながら説明する。シートブラケット3Aは、本発明のモデル的なシートブラケットの実施形態であるが、本質的には図3に示したシートブラケット3と同じ構造を備えている。図7(A)、図7(B)は、それぞれ図6のシートブラケットの上面図、側面図である。
シートブラケット3Aは、上述した図3のシートブラケット3と同様に、円錐面部31、受け面部32、縦平面部33及び横平面部34を含むブラケット壁部30を備える。ブラケット壁部30の下部には、縦フランジ36及び水平フランジ37が付設されている(横フランジ35は省略されている)。受け面部32は、上面視で円形の形状を有している。また、シートブラケット3Aは、正方形の基台上に円錐面部31が突設された形態を備え、縦平面部33は円錐面部31の四方(前記基台の四辺)に配置され、横平面部34は隣接する縦平面部33の間(前記基台の四つの角部)に各々配置されている。
このようなシートブラケット3Aを用いることで、次のような作用効果を奏する。シートブラケット3Aは円錐面部31を有し、この円錐面部32の上端にシートレールRの固定部となる受け面部32が備えられている。受け面部32は、シートレールRを介して座席シートの荷重を受け止める面となる。この受け面部32が、円錐面部31の上底に配置されていることになるので、当該受け面部32の面積は自ずと小さくなり、面外変形が発生し難くなる。また、円錐面部32を具備させることで、直方体形状のシートブラケットに比べて容積が小さくなることから、軽量化の要請を満たすシートブラケット3Aを提供することができる。
また、受け面部32が受け取る車体上下方向の荷重は、円錐面部31を通してバランス良く分散される。すなわち、図7(A)に矢印a、b、cで示すように、受け面部32が受けた荷重は、円錐面部31の周方向に均等に分散され、円錐面部31の裾野部分を通して、シートブラケット3Aの下方固定部へ向けて伝達される。ここで下方固定部は、クロスメンバ2に対する固定部となる縦フランジ36、水平フランジ37及びトンネル部13に対する固定部となる横フランジ35である。矢印a、b、c方向の荷重伝達距離は、概ね同一となる。このため、荷重はバランス良く上記下方固定部の各々へ分散される。従って、シートブラケット3Aの車体上下方向の剛性を高めることができる。
図8は、比較例のシートブラケット300の上面図である。シートブラケット300は、円錐ではなく四角錐の形状を有する錐台部31Aを備えている。この錐台部31Aの上底が、上面視で四角形の受け面部320とされている。錐台部31Aとした場合でも、受け面部32が受けた荷重は、矢印a1、b1、c1で示すように分散して錐台部31Aの裾野部分へ伝達される。しかし、矢印a1、b1、c1方向の荷重伝達距離は、比較的大きな差異が生じる。つまり、錐台部31Aの角部へ向かう矢印b1方向の荷重伝達距離が、矢印a1、c1方向に比べて相当長くなってしまう。このため、比較例のシートブラケット300では、矢印b1方向において撓みなどの変形が生じ易くなってしまう。これに対し、本実施形態の円錐面部31を採用すれば、矢印a、b、c方向の荷重伝達距離の大きな差異は生じないので、撓み変形等を抑制できる。
さらに、ブラケット壁部30は、縦平面部33と円錐面部31とが交差する部分に稜線部331を備える。当該稜線部331は、図7(B)に示すように、受け面部32に荷重が加わったときに応力集中箇所となり得る。このように、応力集中箇所を積極的に形成することで応力が加わる部位が分散され、シートブラケット3Aの特定箇所に応力が集中することを回避できる。
この点を図9(A)、(B)に基づいて説明する。図9(A)は、比較例のシートブラケット301における応力集中箇所を示す模式的な断面図である。シートブラケット301は、縦平面部を具備しない、単純な円錐台型の円錐面部310を備えている。このようなシートブラケット301では、受け面部32に荷重が加わった場合、円錐面部310の裾野と水平フランジ311(図6の縦フランジ36、水平フランジ37に相当する模式的なフランジ)とが交差する角部P1だけが応力集中箇所となる。このため、角部P1が機械的強度のウィークポイントとなり易い。
図9(B)は、本実施形態のシートブラケット3Aにおける応力集中箇所を示す模式的な断面図である。シートブラケット3Aは、円錐面部31と交差する縦平面部33を備えている。このため、受け面部32に荷重が加わった場合、円錐面部31と縦平面部33とが交差する角部P2(稜線部331)と、縦平面部33と水平フランジ311とが交差する角部P3との2箇所が応力集中箇所となる。このように、本実施形態のシートブラケット3Aでは、応力集中箇所が複数に分散する。このこともまた、シートブラケット3Aの車体上下方向の剛性を高めることに寄与する。
また、稜線部331が、車体上方に向けて凸となるように湾曲した稜線部である。このため、図7(B)に矢印で示すように、円錐面部31から、より多様な方向の応力が稜線部331に加わるようになる。稜線部が直線状である場合、単位幅員で比較すると、稜線長は曲線に比べて短くなる。また、例えば水平方向に直線状に延びる稜線部の場合、専ら上下方向の応力だけを稜線部が受けることになる。これに対し、本実施形態のシートブラケット3Aのように車体上方に向けて凸の稜線部331とすることで、稜線長を長くし、且つ、色々な方向からの応力を受けさせることができる。さらに、シートブラケット3Aでは、4つの縦平面部33及び稜線部331を四方に有しているので、応力をバランス良く受けることができる。
シートブラケット3Aの受け面部32は、上面視で円形の形状を有している。このため、受け面部32の面積を必要最小限にすることができる。シートレールRを固定するボルトのボルト頭を受け止めるために、受け面部32は、少なくとも上面視で円形の領域を有する必要がある。シートブラケット3Aの受け面部32は、上記円形の領域以外の部分を削ぎ落とした形状を具備する。この構造は、上述の通り面外変形が生じ難い受け面部32とするだけでなく、図7(A)に示した矢印a、b、c方向の荷重伝達距離の均一化にも寄与する。つまり、円錐面部31の裾野部分と受け面部32とを同心円状とすることで、矢印a、b、c方向の長さを均一化することができる。
シートブラケット3Aは、円錐面部31の下端において円錐面部31と交差し、水平方向に延びる横平面部34を備える。図10は、横平面部34の意義を説明するための模式図である。横平面部34を設けることで、横平面部34と円錐面部31とが交差する角部P4を、応力集中箇所とすることができる。従って、上述した応力集中箇所の分散効果を一層高めることができる。
また、円錐面部31の下端に横平面部34を形成することは、円錐面部31の車体上下方向の軸線に対する傾きが大きくなりすぎないように規制することに繋がる。図10に示す通り、横平面部34が存在しない場合、仮想線で描かれた円錐面部31Bとなる。つまり、前記軸線に対して比較的大きく傾いた円錐面を備えた円錐面部31Bとなる。前記軸線に対して傾き過ぎた円錐面部31Bであると、受け面部32からの上下方向の荷重によって圧壊され易くなる。しかし、本実施形態のシートブラケット3Aのように、横平面部34を形成できる程度の傾きを持つ円錐面部31とすることで、上下方向の荷重に対する耐性を高めることができる。
以上説明した通り、本実施形態に係るシートブラケット3によれば、円錐面部31、受け面部32、縦平面部33及び横平面部34を含むブラケット壁部30を備えるので、シートブラケット3の車体上下方向の剛性が構造的に高められている。従って、軽量化を企図してアルミニウムの鋳造品にてシートブラケット3を形成する場合でも、必要十分な車体上下方向の剛性をシートブラケット3に具備させることが可能となる。
そして、このようなシートブラケット3を車体フレーム1の下部に組み付けることで、剛性が高められた車両の下部車体構造を提供することができる。また、シートブラケット3がクロスメンバ2に取り付けられるので、当該シートブラケット3の裾野部分の剛性を高めることができる。さらに、トンネル部13又はサイドシル12とクロスメンバ2との結合部分を、シートブラケット3にて補強することが可能となり、この点においても車体フレーム1の剛性を高めることができる。
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を取ることができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を取ることができる。
(1)図11は、第1変形例に係るシートブラケット3Bを示す上面図である。シートブラケット3Bは、受け面部32が上面視で円形ではない実施形態を示している。受け面部32は、上面視で略四角形の形状を有している。シートブラケット3Bのその他の構成は、先に説明したシートブラケット3Aと同じである。但し、円錐面部31の上端付近は、四角形の受け面部32に繋ぐため、四角錐台状の形状とされている。このように、受け面部32は円形のものに限定されず、円錐面部31は部分的に円錐面ではない部分を具備していても良い。
(2)図12は、第2変形例に係るシートブラケット3Cを示す斜視図である。シートブラケット3Cは、図3に示したシートブラケット3と同様な構造を備える(第1、第2位置決めボス38、39の記載は省いている)が、拡張水平フランジ371を円錐面部31の後方下部に備えている点で相違する。一対の縦フランジ36の間隔は、嵌め込み対象のクロスメンバ2の前後幅にマッチさせる必要があり、クロスメンバ2が幅広であると、一対の縦フランジ36間も広幅にせねばならない。一方、円錐面部31の車体上下方向の軸線に対する傾きは、上述の通り過度に大きくすることは望ましくない。このようなケースでは、円錐面部31の裾野を一対の縦フランジ36まで拡げるのではなく、拡張水平フランジ371を備えたシートブラケット3Cを用いることが望ましい。
(3)図13は、第3変形例に係るシートブラケット3Dを示す斜視図である。シートブラケット3Dは、図3に示したシートブラケット3と同様な構造を備えるが、横平面部34を具備していない点において相違する。本発明で用いられるシートブラケットにおいて、横平面部34の形成は必須ではない。シートブラケット3Dでは、隣り合う縦平面部33同士が交差している。このように、横平面部34が形成できない程度に円錐面部31に深く入り込んだ縦平面部33を設けることで、コンパクト化されたシートブラケット3Dを提供することができる。
(4)図14は、第4変形例に係るシートブラケット3Eを示す斜視図である。シートブラケット3Eは、図6に示したシートブラケット3と同様な構造を備えるが、横平面部34を具備しない点、及び円錐面部31の四方に水平方向に延びる平フランジ37Aを備えている点で相違する。このようなシートブラケット3Eは、上下方向の配置スペースが小さい場合に好ましく採用することができる。
(5)この他、ブラケット壁部30の内部に、剛性を強化する補強構造を具備させても良い。例えば、X字型に交差するリブを、円錐面部31の内面に設けることができる。
1 車体フレーム
11 フロアパネル
12 サイドシル
13 トンネル部
2 クロスメンバ
3 シートブラケット
30 ブラケット壁部
31 円錐面部
32 受け面部
33 縦平面部
331 稜線部
34 横平面部
35 横フランジ
36 縦フランジ
37 水平フランジ
11 フロアパネル
12 サイドシル
13 トンネル部
2 クロスメンバ
3 シートブラケット
30 ブラケット壁部
31 円錐面部
32 受け面部
33 縦平面部
331 稜線部
34 横平面部
35 横フランジ
36 縦フランジ
37 水平フランジ
Claims (7)
- 車体フレームと、
前記車体フレームの下部に組み付けられ、シートレールが取り付けられるシートブラケットと、を備え、
前記シートブラケットは、
車体上方に向けて径小となる円錐形状を備えた円錐面部と、
前記円錐面部の上端に設けられ、前記シートレールの固定部となる受け面部と、
前記円錐面部と交差し、車体上下方向に延びる縦平面部と、
を備える車両の下部車体構造。 - 請求項1に記載の車両の下部車体構造において、
前記円錐面部と前記縦平面部との交差によって形成される稜線部が、車体上方に向けて凸となるように湾曲した稜線部である、車両の下部車体構造。 - 請求項2に記載の車両の下部車体構造において、
前記縦平面部が複数備えられ、且つ、前記湾曲した稜線部が複数備えられている、車両の下部車体構造。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、
前記受け面部は、上面視で円形の形状を有している、車両の下部車体構造。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、
前記シートブラケットは、前記円錐面部の下端において前記円錐面部と交差し、水平方向に延びる横平面部をさらに備える、車両の下部車体構造。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、
前記シートブラケットは、アルミニウム又はその合金の一体成型物からなる、車両の下部車体構造。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、
前記車体フレームは、その下部に、車体前後方向に延びるトンネル部を備えるフロアパネルと、前記フロアパネルの車幅方向外側において車両前後方向に延びる一対のサイドシルと、前記トンネル部とサイドシルとの間において車幅方向に延びるクロスメンバと、を備え、
前記シートブラケットは、前記クロスメンバの車幅方向端部に取り付けられている、車両の下部車体構造。
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