JP6321425B2 - 全芳香族ポリアミド繊維 - Google Patents
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Description
<パラ型全芳香族ポリアミド>
[パラ型全芳香族ポリアミドの構造]
本発明の繊維を構成するパラ型全芳香族ポリアミドは、下記化学式(I)で表される構造反復単位(I)と、下記化学式(II)で表される構造反復単位(II)と、及び下記化学式(III)で表される構造反復単位(III)とを、特定比率で含む全芳香族ポリアミドである。
本発明の繊維を構成するパラ型全芳香族ポリアミドにおいては、構造反復単位(II)の比率が、構造反復単位(I)、構造反復単位(II)、および構造反復単位(III)の合計に対して40〜60モル%、好ましくは45〜55モル%である。構造反復単位(II)の比率が40モル%未満の場合には、ポリマーの固有粘度が高くなり、繊維化が困難となる。一方で、構造反復単位(II)の比率は60モル%を超える場合には、繊維の強度低下が著しいため好ましくない。
本発明に用いられる全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分とを、低温溶液重合、または界面重合して得ることができる。
(芳香族ジアミン成分)
本発明において使用される芳香族ジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、2−クロルp−フェニレンジアミン、2,5−ジクロルp−フェニレンジアミン、2,6−ジクロルp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2−アミノベンズアミドなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において使用される芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分としては、例えば、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、2−クロルテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドなど挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。
したがって、本発明における全芳香族ポリアミドの例としては、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、およびポリメタフェニレンテレフタルアミドなどを挙げることができる。
(重合溶媒)
全芳香族ポリアミドを重合する際の溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などが挙げられる。これらの溶媒は、単独あるいは2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、上記溶媒は、脱水されていることが望ましい。
溶解性を上げるために、重合前、途中、終了時に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩として、例えば塩化リチウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分のモル比として、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05である。芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比が0.90未満または1.10を超える場合には、芳香族ジアミン成分との反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、−10℃〜80℃の範囲とすることがさらに好ましい。
全芳香族ポリアミドの末端は、封止されていてもよい。末端封止剤を用いて封止する場合には、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体を用いることができる。
また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩を併用できる。
反応の終了後は、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを添加し、中和反応を実施してもよい。
上記のようにして得られる全芳香族ポリアミドは、アルコール、水といった貧溶媒に投入して沈澱せしめ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出されたパラ型全芳香族ポリアミドを再度、他の溶媒に溶解して成形に供することができるが、重合反応によって得た溶液をそのまま成形用溶液として用いることもできる。一度取り出してから再度、溶解させる際に用いる溶媒としては、全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されないが、上記全芳香族ポリアミドの重合に使用する溶媒が好ましい。
なお、本発明においては、物性を損なわない範囲で、フィラーを併用することができる。用いるフィラーとしては、繊維状、もしくは板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、全芳香族ポリアミド繊維以外の有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、二酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、層状粘土鉱物、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、本発明の窒化ホウ素粒子以外の、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。また、上記のフィラーは、2種以上を併用して使用することもできる。
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維を製造するにあたっては、全芳香族ポリアミド溶液(全芳香族ポリアミド製造時の生成ポリマードープであってもよい)を、湿式紡糸あるいは乾式紡糸したのち、溶媒を除去する。以下、本発明の全芳香族ポリアミド繊維の製造方法の一例を示す。
繊維の製造にあたり、パラ型全芳香族ポリアミドを有機溶媒に溶解させた等方性の紡糸用溶液(ドープ)を得る。紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整する方法としては、特に限定されるものではない。溶液重合を行った後の有機溶媒ドープそのままでも、得られた全芳香族ポリアミドを有機溶媒に再度溶解させたものでもよい。ここで、パラ型全芳香族ポリアミドを再度溶解させる際に用いる溶媒としては、上記したパラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いる溶媒を使用することができる。
上記のごとく調整された等方性のドープ(紡糸用溶液)を用いて、湿式紡糸法またはエアギャップを設けた半乾半湿式紡糸法によって繊維を成形する。すなわち、先ず、上記で得られた紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出し、続いて、エアギャップを介し、または介さずに、凝固浴中の凝固液に接触させて凝固糸を形成する。
凝固液から凝固糸条を引き上げた後は、公知の方法によって、最終的なパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。例えば、水洗工程を実施して形成された未延伸糸から溶媒を除去し、必要に応じて延伸を実施し、乾燥工程等を経た後に必要に応じて延伸することにより配向させ、最終的な繊維を得ることができる。
本発明の繊維は、延伸配向されていることが好ましい。延伸の方法としては特に限定されるものではなく、凝固糸状態での水洗延伸、沸水延伸のみならず、乾燥糸状態での加熱延伸等、いずれでもよい。また、延伸倍率については特に制限はないが、5倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率を制御することにより、得られる芳香族ポリアミド繊維の伸度および強度を制御することができる。
熱延伸を実施する場合には、その温度は、全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、好ましくは300〜550℃、さらに好ましくは350〜500℃とし、また、延伸倍率は好ましくは4倍以上、さらに好ましくは4〜10倍とする。
(単糸繊度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.5〜50dtex、さらに好ましくは1.0〜10dtexである。0.5dtex未満の場合には、製糸性が不安定となる場合がある。また、繊維の比表面積が大きくなるため耐光劣化を受け易い。一方で、50dtexを超える場合には、繊維の比表面積が小さくなり、耐光劣化を受けにくい反面で、製糸工程で凝固が不完全となりやすく、その結果、紡糸や延伸工程で工程調子が乱れやすく、物性も低下しやすくなる。
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、織物、編物、不織布などの布帛のほか、組紐、ロープ、撚糸コード、ヤーン、綿などの繊維構造物を構成することができる。
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法で測定・評価を実施した。
JIS−L−1015に準じ、測定した。
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
(測定条件)
温度 :室温
測定試料長 :500mm
チャック引張速度 :250mm/分
初荷重 :0.2cN/dtex
JIS L 0842−71に準拠し、紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機にて100時間で180,000kJ/m2照射前後における引張強度の測定を実施した。光照射前後の引張強度値を用いて、以下の式により強度保持率を求めた。
強度保持率(%)=(光照射後の引張強度)/(光照射前の引張強度)×100
[パラ型全芳香族ポリアミドの重合]
108.0gのパラフェニレンジアミンを1.0Lのジオキサンに溶解し、これに8.0gのピリジンを添加した。更に115.0gのイサト酸無水物を添加し、5時間還流下で反応させた。反応後、反応溶液にエタノール1.0Lを添加し、0℃で12時問静置した。析出した白色結晶をろ取し、さらにエタノールで再結晶後、析出結晶をろ取し100℃で6時問乾燥することによりアントラニルアミド誘導体モノマーを得た。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2.139Lに得られたアントラニルアミド誘導体モノマー12.7g(5モル%)、パラフェニレンジアミン22.8g(20モル%)と、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル52.8g(25モル%)とを秤量して投入し、室温で溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸クロライド106.9g(50モル%)を投入して反応せしめることにより、ポリマーを重合した。引き続き、22.5質量%の水酸化カルシウムを含有するNMP分散液172.2gを添加して中和し、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)は3.3)溶液を、濃度6質量%となるようNMPに溶解し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整した。
得られたドープを用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度530℃下で10.0倍に延伸した後に巻き取ることにより、パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
アントラニルアミド誘導体モノマー2.5モル%、パラフェニレンジアミン22.5モル%、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル25モル%とした以外は、実施例1と同様の方法で、パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
パラフェニレンジアミン25モル%、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル25モル%とした以外は、実施例1と同様の方法で、パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
アントラニルアミド誘導体モノマー10モル%、パラフェニレンジアミン15モル%、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル25モル%とした以外は、実施例1と同様の方法で、パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
アントラニルアミド誘導体モノマー1モル%、パラフェニレンジアミン24モル%、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル25モル%とした以外は、実施例1と同様の方法で、パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
パラフェニレンジアミン25モル%、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル25モル%として、実施例1と同様の方法で、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液に、カーボンブラックのNMP分散液(大日精化工業株式会社製、MPS−1100 Black(T))を、ポリマーに対してカーボンブラックが5質量%となるように加え、続いて、浅田鉄工株式会社製プラネタリーミキサー(製品名PVM−5)を用いて、80℃にて2時間加熱・混練し、カーボンブラック含有全芳香族ポリアミド溶液を得た。
得られたカーボンブラック含有全芳香族ポリアミド溶液を紡糸用溶液として、実施例1と同様の方法で全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
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