JP7372118B2 - 易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維、およびその製造方法 - Google Patents

易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、繊維の破断強度が3.0cN/dtex以上、繊維の結晶化度が25%以上であり、染色繊維の染着率が90%以上である易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維およびその製造方法に関するものである。
従来より、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性および難燃性に優れていることは周知であり、かかる全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(以下メタアラミドと称する場合がある。)の繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものである。これらの特性を発揮して、例えば防護衣等の防災安全衣料用途やフィルター、電子部品等の産業用途に用いられている。最近では、耐炎性と防炎性とを活かした寝具、衣料、インテリア等の分野への用途が急速に広がりつつあり、特に衣料分野においては耐炎性および防炎性に加えて、意匠性の観点から繊維色を自在に選択可能な染色性も重要な性能として求められている。しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その剛直なポリマー分子鎖に起因して、通常の方法では染色が困難であるという問題があった。
そこで、染色性を向上させる方法として、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を紡糸液に添加することにより、カチオン染料に対して易染色性なメタ型芳香族ポリアミド繊維を得る方法が提案されている(特許文献1)。この方法によればカチオン染料に対しては、良好な染色性を有するメタ型芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。しかしながら、当該オニウム塩が添加された繊維は、コストが高いものとなっていた。
別の報告として、細孔を有する非晶質の繊維を形成し、水で膨潤した当該繊維を蒸気加熱し、染料を繊維の当該細孔中に拡散させることにより、繊維構造全体にわたって染料が含有した繊維を得て、引き続き、当該繊維をガラス転移温度より高い温度にて十分な時間をかけて蒸気加熱を行って当該細孔を潰し、これにより染料を不可逆的に繊維内に閉じ込め、当該繊維を結晶化させる方法が提案されている(特許文献2)。
この方法によれば、良好な染色性を有した繊維を得ることができるが、高温の蒸気を用いた加熱処理が必要となるだけでなく、処理前の繊維物性は実用に耐えられないほど低いものであり、上記処理後も繊維結晶化が不十分となる可能性があった。一般に、全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度が低いと、強度低下や高温条件下または染色処理における収縮、寸法安定性の低下を招くことが知られている。
一方、特許文献3号公報、特許文献4では、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を適宜調節し、特定倍率で可塑延伸し、洗浄工程を経た後、260~330度で乾熱処理を行うことにより、高い染色性を有するメタ全芳香族ポリアミド繊維を得る方法が提案されている。この方法によれば、染色性に影響のない程度に5~20%の範囲で結晶化させた繊維を染色処理することで結晶化を完了させ、繊維の物性を確保している。
しかしながら、上記結晶化度は染色処理前の原繊維を使用する事を仮定した場合、耐熱性や低熱収縮率を発揮するためには不十分である。つまり、原繊維を目的に合わせて加工し、繊維製品を製造することを仮定した場合、染色処理を前提とした取扱いが必要であり、繊維の使用用途範囲を狭めることになってしまう。
特開平08-081827号公報 特開昭62-184127号公報 特開2010-084237号公報 特開2011-236543号公報
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点を解消し、耐熱性、難燃性、機械物性などの優れた性質を持ったメタ型全芳香族ポリアミド繊維において、特に破断強度が高いながらも、染色性が良好な易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、メタ型全芳香族ポリアミドの重量平均分子量を巧みに制御し、高濃度無機塩凝固液を使用した湿式紡糸手法を用いることで、繊維の結晶化度を高くしつつ、繊維の破断強度を良好とし、且つ染色性が良好なメタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
1.JIS-K-7252に準じ測定される重量平均分子量が30~60万のメタ型全芳香族ポリアミドからなり、JIS-L-1015に規定される破断強度が3.0cN/dtex以上であり、繊維の結晶化度が25%以上であり、染色繊維の染着率が90%以上である易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維
提供される。
本発明によれば、繊維の結晶化度を高くしつつ、繊維の破断強度を良好とし、且つ染色性が良好なメタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られるので、該繊維を衣料用途として用いる場合、染色処理により容易に目的の意匠性を持った繊維製品を得ることができる。また、染色処理前の原繊維においても結晶化度が高いことからメタ型全芳香族ポリアミド繊維としての機能を十分に発揮し、用途が限定される可能性が低くなる。
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の1例を例示した断面図である。 本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の1例を例示した断面図である。 本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の1例を例示した断面図である。 比較例のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の1例を例示した断面図である。
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を構成するメタ型全芳香族ポリアミド(以下メタアラミドと称する場合がある。)は、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モルである。
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4-トルイレンジアミン、2,6-トルイレンジアミン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、2,6-ジアミノクロロベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミドを構成するメタ型芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3-クロロイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドそのもの、または、イソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
上記メタアラミドの重合方法としてはメタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドとを含む生成ポリアミドの良溶媒ではない有機溶媒系(例えばテトラヒドロフラン)と無機の酸受容剤ならびに可溶性中性塩を含む水溶液系とを接触させることによって、ポリメタフェニレンイソフタルアミド重合体の粉末を単離する方法(特公昭47-10863号公報)、またはアミド系溶媒で上記ジアミンと酸クロライドを溶液重合し次いで水酸化カルシウム、酸化カルシウム等で中和する方法(特開平8-074121号公報、特開平10-88421号公報)などに記載の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明に用いられるメタアラミドの重量平均分子量は、結晶化度が高く、破断強度が良好で、且つ染色性が良好である繊維を形成し得る観点から、後述する分析方法に従い30万~60万の範囲のポリマーであることが必要である。
つまり、本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、破断強度が3.0cN/dtex以上、且つ染着率が90%以上の繊維を得るには、重量平均分子量40万~60万の範囲のポリマーが必要である。
本発明で規定する分子量を持ったポリマーは、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーの混合物も使用することができ、混合比の調整により全体分子量が目的の値であればよい。例えば、重量平均分子量が20万のポリマーと80万のポリマーを混合し、全体重量平均分子量が50万であった場合、本発明への利用は何ら問題ない。
一方で分子量30万未満の場合、強度を持った繊維を得ることができない。また、分子量が60万を越えると染着率が90%以上の繊維を得ることができない。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、上記の製造方法によって得られたメタアラミド重合体を用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、洗浄工程、沸水延伸工程、乾熱処理工程、熱延伸工程を経て製造される。
紡糸液調製工程においては、メタアラミド重合体を溶媒に溶解して、紡糸液(ドープ)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常アミド系溶媒を用い、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらの中では溶解性と取扱い安全性の観点から、NMP、またはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、10~30質量%の範囲とすることが好ましく、15~25質量%の範囲とすることがより好ましい。
本発明ではドープ中に無機塩を導入する必要があり、染着率が90%以上の繊維を得るためにはドープに対して0.1~20質量%の無機塩を含む必要があり、安定した紡糸性を得るためには0.1~10質量%の無機塩がさらに好ましい。
ここで、20質量%を超えた無機塩を含むと凝固速度が速くなりすぎてしまい、繊維中に多数のボイドを形成することから目的の物性を持った繊維を得ることができない。なお、無機塩としては塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウムなどの塩化物塩を使用することが好ましい。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られたドープを凝固液中に紡出して凝固させる。紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が10~30000個、紡糸孔径が0.03~0.2mmのステープルファイバー用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。また、紡糸口金から紡出する際のドープの温度は、20~90℃の範囲が適当であるが、特に70~90℃が好ましい。
本発明の繊維を得るために用いる凝固浴としては、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウム等の無機塩を30質量%以上、好ましくは35~45質量%含み、アミド系溶媒を1~20質量%、好ましくは3~15質量%含む水溶液を50~90℃の範囲で用いる。
かくして得られた凝固糸は水性洗浄浴にて十分水洗され、沸水延伸工程に送られる。沸水延伸浴中の延伸倍率は1.5~5.0倍が適当であり、さらに好ましくは2.0~4.0倍の範囲である。本発明においては、延伸を当該倍率の範囲で行い、分子鎖配向を上げることにより、最終的に得られる繊維の強度を確保することができる。
上記洗浄・延伸工程を経た繊維に対して、好ましくは、乾熱処理工程を実施する。乾熱処理工程においては、上記洗浄工程により洗浄が実施された繊維を、好ましくは100~250℃、さらに好ましくは100~200℃の範囲で、乾熱処理をする。ここで、乾熱処理は、特に限定されないが、定長下で行うのが好ましい。なお、上記の乾熱処理の温度は、熱板、加熱ローラーなどの繊維加熱手段の設定温度をいう。
本発明においては、上記乾熱処理工程を経た繊維に対して、熱延伸工程を施す。熱延伸工程においては、300~380℃で熱処理を加えながら、延伸を実施する。延伸倍率は1.2~5.0倍が適当であり、さらに好ましくは1.5~4.0倍の範囲である。続いて、十分な結晶化を行うために熱セット工程を施す。乾熱処理工程においては、上記熱延伸が実施された繊維を、好ましくは300以上℃、さらに好ましくは300~400℃の範囲で、熱セット処理をする。ここで、熱セット処理は、特に限定されないが、定長下で行うのが好ましい。なお、上記の熱セット処理の温度は、熱板、加熱ローラーなどの繊維加熱手段の設定温度をいう。
以上の方法により得られるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度は3.0cN/dtex以上であり、結晶化度は25%以上である。破断強度に関しては3.0cN/dtex以上が必要であり、3.5cN/dtex以上が特に好ましい。結晶化度に関しては25%以上が必須であり、25~40%の範囲であることが好ましい。破断強度または結晶化度が上記以下である場合、繊維の機械物性が劣ることから工程通過性に支障が出る、より高度な用途において製品の耐久性が低下する、等の問題が発生する。
以上の方法により得られるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の染色繊維の染着率は90%以上であり、好ましくは92%以上、より好ましくは95%である。染着率が90%以下であった場合、衣料分野において求められる審美性の点で好ましなく所望の色相に染色することができないことや、多くの染料や処理時間を要するなど染色加工において問題が発生する。
なお、本発明の繊維の断面形状は図1~3に示すように、C字型(コの字ともいう)であることが好ましい。繊維の断面形状がC字型(コの字ともいう)であると、表面積が大きくなることから、染着率が良好となる。また、衣料用途に用いる際に吸汗性などの機能性を発現することが期待される。
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下内容に制限されるものではない。尚、実施例および比較例における各物性値は、下記の方法で測定した。
[重量平均分子量Mw]
JIS-K-7252に準じ、サイズ排除クロマトグラフィー用カラムを装着した高速液体クロマトグラフィー装置にて分析をおこない、展開溶媒にはジメチルホルムアミド(塩化リチウムを0.01モル%含有)を用いて測定した。なお、標準分子量サンプルとしてはシグマアルドリッチ製ポリスチレンセット(ピークトップ分子量Mp=400~2000000)を用いた。
[単繊維繊度]
JIS-L-1015に準じ、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛け繊度にて表記した。
[破断強度、破断伸度]
引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS-L-1015に基づき、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g/dtex)
引張速度 :20mm/分
[染着率]
「染着率」を求めるための「染色」は、以下の染色方法による染色とする。
(染色方法)
カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL-ED(B-54))6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリヤー剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意する。
引き続き、繊維と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施する。染色処理後、ハイドロサルファイト2.0g/L、アミラジンD(第一工業製薬社製、商品名:アミラジンD)2.0g/L、水酸化ナトリウム1.0g/Lの割合で含有する処理液を用いて、浴比1:20で80℃下20分間の還元洗浄を実施し、水洗後に乾燥することにより染色繊維を得る。
なお、本発明における「染着率」とは、以下の方法によって得られる値をいう。
原繊維を染色した染色残液に、この染色残液と同容積のジクロロメタンを加え、残染料を抽出する。引き続き、抽出液について、波長670nm、540nm、530nmの吸光度をそれぞれ測定し、あらかじめ染料濃度が既知のジクロロメタン溶液から作成した上記3波長の検量線から抽出液の染料濃度をそれぞれ求め、上記3波長における濃度の平均値を抽出液の染料濃度(C)とする。染色前の染料濃度(Co)を用いて、以下の式にて得られる値を染着率(U)とする。
染着率(U)=[(Co-C)/Co]×100
[結晶化度]
染色前繊維(原繊維)を約1mm径のバンドルに束ねて、X線回折測定装置(商品名:RIGAKU RINT TTRIII)により、下記の条件で測定して得られたプロファイルから換算した。
(測定条件)
X線原 :Cu-Kα線
繊維試料台 :50rpm回転
2θ走査 :5-50°
連続測定 :0.1°
幅計測 :1°/分走査
具体的には、実測回折プロファイルから空気散乱、非干渉性散乱を直線近似で補正して、全散乱強度プロファイルを得た。得られた全散乱強度に非晶質であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の未乾燥糸プロファイルを目測フィットし、差分を結晶散乱強度とした。結晶化度は、結晶散乱強度および全散乱強度の面積(積分値)を用いて、以下の式から求めた。
結晶化度(%)=(結晶散乱強度面積/全散乱強度面積)×100
[実施例1]
溶液重合により合成し水洗精製した重量平均分子量47万のメタアラミド重合体粉末および塩化カルシウム粉末を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が20%、塩化カルシウムが2.5%になるよう調整した。
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数2000の吐出孔が円形の紡糸口金から83℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが38質量%、NMPが5質量%、残りの水が57質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)140cmにて糸速7.8m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第3水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は360秒とした。なお、第1~第3水性洗浄浴温度はそれぞれ20、30、50℃の水を用いた。次に、この洗浄糸条を90℃の沸水中にて3.0倍に延伸し、引続き90℃の温水中に50秒浸漬し、洗浄した。
次に表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度340℃の熱板にて1.5倍に延伸した。最後に、表面温度320℃の熱板にて定長下で5秒間熱セットすることでメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.2dtex、強度3.1cN/dtex、伸度88%、結晶化度28%であった。また、繊維の断面形状はC字型(コの字ともいう)であった。得られた繊維断面の走査型電子顕微鏡画像を図1に示す。染色処理後の染着率は99%以上であった。
[実施例2]
溶液重合により合成し水洗精製した重量平均分子量52万のメタアラミド重合体粉末および塩化カルシウム粉末を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が20%、塩化カルシウムが0.2%になるよう調整した。
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数2000の吐出孔が円形の紡糸口金から80℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが38質量%、NMPが5質量%、残りの水が57質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)140cmにて糸速7.8m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第3水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は360秒とした。なお、第1~第3水性洗浄浴温度はそれぞれ20、30、50℃の水を用いた。次に、この洗浄糸条を90℃の沸水中にて3.0倍に延伸し、引続き90℃の温水中に50秒浸漬し、洗浄した。
次に表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度320℃の熱板にて1.5倍に延伸した。最後に、表面温度310℃の熱板にて定長下で5秒間熱セットすることでメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.2dtex、強度3.2cN/dtex、伸度59%、結晶化度31%であった。また、繊維の断面形状はC字型(コの字ともいう)であった。得られた繊維断面の走査型電子顕微鏡画像を図2に示す。染色処理後の染着率は91%であった。
[実施例3]
界面重合により合成し水洗精製した重量平均分子量53万のメタアラミド重合体粉末および塩化カルシウム粉末を、NMPに溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が20%、塩化カルシウムが1.0%になるよう調整した。
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数2000の吐出孔が円形の紡糸口金から83℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが38質量%、NMPが5質量%、残りの水が57質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)180cmにて糸速7.8m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第3水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は360秒とした。なお、第1~第3水性洗浄浴温度はそれぞれ20、30、50℃の水を用いた。次に、この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.2倍に延伸し、引続き90℃の温水中に50秒浸漬し、洗浄した。
次に表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度340℃の熱板にて2.0倍に延伸した。最後に、表面温度320℃の熱板にて定長下で5秒間熱セットすることでメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.0dtex、強度3.4cN/dtex、伸度76%、結晶化度28%であった。また、繊維の断面形状はC字型(コの字ともいう)であった。得られた繊維断面の走査型電子顕微鏡画像を図3に示す。染色処理後の染着率は99%以上であった。
[比較例1]
溶液重合により合成した重量平均分子量72万のメタアラミド重合体を、NMPに溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が22%になるよう調整した。
該ポリマー溶液を実施例1と同様の方法で紡糸し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.1dtex、強度4.6cN/dtex、伸度50%、結晶化度34%であった。また、繊維の断面形状はマユ型であった。得られた繊維断面の走査型電子顕微鏡画像を図4に示す。染色処理後の染着率は66%であった。
[比較例2]
溶液重合により合成した重量平均分子量72万のメタアラミド重合体粉末および塩化カルシウム粉末を、NMPに溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が22%、塩化カルシウムが2.5%になるよう調整した。
このポリマー溶液を実施例1と同様の方法で紡糸し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.1dtex、強度4.6cN/dtex、伸度45%、結晶化度40%であった。また、繊維の断面形状はC字型(コの字ともいう)であった。染色処理後の染着率は70%であった。
[比較例3]
界面重合により合成した重量平均分子量52万のメタアラミド重合体粉末を、NMPに溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が22%になるよう調整した。
このポリマー溶液を実施例2と同様の方法で紡糸し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.2dtex、強度3.3cN/dtex、伸度55%、結晶化度30%であった。また、繊維の断面形状はマユ型であった。染色処理後の染着率は74%であった。
実施例及び比較例で得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性を表1に示す。
Figure 0007372118000001
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を衣料用途として用いる場合、染色処理により容易に目的の意匠性を持った繊維製品を得ることができる。また、染色処理前の原繊維においても結晶化度が高いことからメタ型全芳香族ポリアミド繊維としての機能を十分に発揮し、用途が限定される可能性が低くなる。
さらに、本発明の製造方法は使用するポリマーの粘度が低いため操作性が向上する。加えて、厳密な紡糸条件の管理を行わなくても強度の高い凝固糸を与える手法であることから安定な生産を行うことができ、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (3)

  1. JIS-K-7252に準じ測定される重量平均分子量が30~60万のメタ型全芳香族ポリアミドからなり、JIS-L-1015に規定される破断強度が3.0cN/dtex以上であり、繊維の結晶化度が25%以上であり、染色繊維の下記方法により測定した染着率が90%以上である易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
    (染色方法)
    カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL-ED(B-54))6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリヤー剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意する。
    引き続き、繊維と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施する。染色処理後、ハイドロサルファイト2.0g/L、アミラジンD(第一工業製薬社製、商品名:アミラジンD)2.0g/L、水酸化ナトリウム1.0g/Lの割合で含有する処理液を用いて、浴比1:20で80℃下20分間の還元洗浄を実施し、水洗後に乾燥することにより染色繊維を得る。
    原繊維を染色した染色残液に、この染色残液と同容積のジクロロメタンを加え、残染料を抽出する。引き続き、抽出液について、波長670nm、540nm、530nmの吸光度をそれぞれ測定し、あらかじめ染料濃度が既知のジクロロメタン溶液から作成した上記3波長の検量線から抽出液の染料濃度をそれぞれ求め、上記3波長における濃度の平均値を抽出液の染料濃度(C)とする。
    染色前の染料濃度(Co)を用いて、以下の式にて得られる値を染着率(U)とする。
    染着率(U)=[(Co-C)/Co]×100
  2. 繊維の結晶化度が25~40%である請求項1に記載の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  3. JIS-L-1015に規定される破断伸度が40~90%である請求項1または2に記載の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
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