本発明の凹凸構造フィルムの製造装置は、凹凸構造が形成された金型と、前記金型の表面にフィルムを加圧するプレス装置と、前記金型の表面からフィルムを離型する離型装置と、フィルムを搬送する搬送装置と、を少なくとも含む凹凸構造フィルムの製造装置において、前記プレス装置へのフィルム搬送方向上流側に前記金型と接触するフィルム表面を粗面化する表面粗面化手段を有することを特徴とする凹凸構造フィルムの製造装置である。
本発明の凹凸構造フィルムの製造装置1の一実施形態を、図1を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の第1の凹凸構造フィルムの製造装置1は、上記のプレス装置たるプレスユニット10と、上記の搬送装置たる巻出ユニット50と巻取ユニット60と、上記の表面粗面化手段たるフィルム表面粗面化手段91と、上記の離型装置たる表面に凹凸構造が形成された金型3に密着したフィルム2を離型し、次に成形するフィルム2を供給するための剥離手段20と、金型を加熱、冷却するための図示されていないヒーターユニットと冷却ユニットと、を備えている。
凹凸構造フィルムの製造装置1の動作としては、巻出ユニット50でロール状に巻き取られたフィルム2が巻き出される。続いて、プレスユニット10のフィルム搬送方向81の上流側にあるフィルム表面粗面化手段91にて、フィルム2の表面2aの表面粗面化が行われる。その後、プレスユニット10で金型3の凹凸構造が加工された表面3aに押しつけられて、フィルム2の表面2aに金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造が成形される。その後、フィルム2は金型3から離型され、巻取ユニット60に向かって搬送されつつ、次に成形されるフィルム2が金型3に供給される。この動作を1サイクルとして、成形、離型、搬送が順次に繰り返されて行われる。
表面が粗面化されていない平坦なフィルムでは、フィルム2が金型3の表面3aに押しつけられる際に、フィルム2のたわみなどにより、フィルム2と金型3の間にエアが残りやすく、特に金型3の凹凸構造に凹部で顕著に発生する。この状態でフィルム2が加熱されガラス転移点よりも高い温度になるとフィルム2が軟化し、フィルム2は金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造に形成されていく。このときフィルム2と金型3の間に残ったエアは、フィルム2と金型3の間のわずかな隙間を通って金型3から外に逃げ出していくが、エアの周辺のフィルム2と金型3が完全に密着すると、エアは逃げ道を失い、フィルム2と金型3の間に残ったまま(エアの噛み込み)となる。成形後、エアが残った箇所にはエアによりフィルム2に凹形状が発生し、成形不良となる場合がある。
そこで、予めフィルム2の表面2aの表面粗面化を行うことで、フィルム2が金型3の表面3aに押しつけられた直後には、表面粗面化の際に金型3とフィルム2の間にわずかに隙間ができ、金型3内部に残ったエアはその隙間を通って金型3から外に逃げだすことが可能となるため、フィルム2と金型3の間にエアが残ることを抑制できる。一方、成形後には表面粗面化を行ったフィルム2の表面2aには金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造が成形され、粗面状態は解消する。
本発明の主たる部分である表面粗面化手段91の一実施形態について図面を用いて説明する。
表面粗面化とはフィルム2の表面2aに凹凸形状を成形することをいう。また、表面粗面化を行うフィルム表面は、金型3と接触するフィルム表面が好ましい。
フィルム表面粗面化手段91としてはレーザー光発生装置を備えフィルム表面にレーザー光を照射してフィルム2の表面2aを粗面化する表面粗面化レーザー光照射ユニットからなるものなどがあるが、表面粗面化手段が少なくとも表面を粗面化した型の表面にフィルムを加熱および加圧する機構を備えたプレス型表面粗面化手段であることが好ましい。さらに好ましくは、プレス型表面粗面化手段が少なくとも表面を粗面化した型を有するエンボスロールとニップロールとを有する装置であることが好ましい。
エンボスロールとニップロールとを有するプレス型表面粗面化手段の一実施形態を、図2を用いて説明する。
図2に示す表面粗面化手段91は、少なくとも表面を粗面化した型を有するエンボスロールとニップロールとを有するプレス型表面粗面化手段として、表面にフィルム2の表面2aの表面粗面化を行うための凹凸形状が形成されたエンボスロール264と、エンボスロール264と平行に配置され、フィルム2を加圧成形する表面に弾性体の層260を有するニップロール256と、挟圧手段としてフィルム2を加圧するために、エンボスロール264とニップロール256の少なくともどちらか一方に接続された加圧機構262と、ガイドロールからなる表面粗面化用プレスユニット251で構成される。
また、フィルム2を搬送するため、ニップロール256および/またはエンボスロール264を回転駆動する駆動装置を備えていてもよい。さらに、必要に応じて図示されていないガイドロールを1本ないしは複数本備えていてもよい。さらに、ニップロール256および/またはエンボスロール264には温度調整機構を有している。また、ニップロール256とエンボスロール264に対してフィルム搬送方向81の上流側にフィルム2を温度調整する図示していない温度調整機構を有していてもよい。
図2に示す表面粗面化手段91の動作は以下の通りである。まず、巻出ロール59より巻き出されたフィルム2を、表面粗面化用プレスユニット251のエンボスロール264に供給する。供給されたフィルム2は、ニップロール256によりエンボスロール264の表面に形成された凹凸形状に押し付けられ、フィルム2の表面2aにエンボスロール表面に形成された凹凸形状に対応する形状、すなわちエンボスロール表面に形成された凹凸形状とは逆パターンの凹凸構造が成形される。その後、フィルム2はプレスユニット10へと搬送される。
ここで、表面粗面化工程において、表面粗面化工程通過後の前記フィルム表面の算術平均粗さRaが0.1〜10μmであることが好ましい。0.1〜10μmであればエア逃げがしやすく、フィルムにシワが入りにくくなるため好ましい。
続いて、各構成部材の構造について説明する。
ニップロール256は芯層の外表面に弾性体の層260を有する構造である。芯層は、強度および加工精度が求められ、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが適用される。また、弾性体の層260は、加圧により変形する層であり、ゴム、樹脂、もしくはエラストマー材質等が好ましく適用される。芯層はその両端部で軸受261によって回転可能なように支持されており、さらに軸受261は、シリンダなどの加圧機構262と接続されている。ニップロール256はこの加圧機構262のストロークにより開閉し、フィルム2を加圧または開放する。
ニップロール256の加工精度は、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が0.03mmを超えると、加圧時のエンボスロール264とニップロール256の間に部分的な隙間ができるため、フィルム2を均一に加圧できなくなり、フィルム2の表面2aで凹凸形状の成形性の低下が生じる場合がある。また、弾性体の層260の表面粗さは、JIS B 0601(改訂年2001)にて定義される、算術平均粗さRaが1.6μm以下のものが好ましい。Raが1.6μmを超えると、加圧時にフィルム2の表面2aの反対側の面に、弾性体の層260の表面形状が成形してしまう場合があるためである。
ニップロール256の弾性体の層260の耐熱性は、160℃以上の耐熱温度を有するものが好ましく、さらに好ましくは180℃以上の耐熱温度を有するものである。ここで耐熱温度とはその温度で24時間放置したときの引張強さの変化率が10%を超えるときの温度を言う。
弾性体の層260の材質としては、例えばゴムを用いる場合には、シリコーンゴムやEDPM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ネオプレン、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)、ウレタンゴム、NBR(ニトリルゴム)、エボナイトなどを用いることができる。更に高い弾性率と硬度を求める場合には、カレンダーローラ用樹脂としてゴムメーカ各社から販売されている上記ゴムに特殊な処方を用いたものや、じん性を向上させた硬質耐圧樹脂(例:ポリエステル樹脂)を用いることができる。
ニップロール256のロール径は特に制限されるものではないが、ニップロール256の軸方向の長さや質量などによって異なる適切な強度を確保できる最低限のロール径を有しつつ、さらに200mm以下とすることが好ましい。200mmより大きくなるとフィルム搬送方向の加圧長さが長くなるために、フィルム2がエンボスロール264の凹凸構造が形成された面3aに押し付けられる圧力が低下し、表面粗面化における凹凸構造の成形に必要な加圧時間が確保できない場合がある。
なお、ニップロール256を支持する軸受261は、そのロールの質量や受ける負荷、回転速度などに応じて設計される。
次に、ニップロール256とフィルムを挟んで対向するエンボスロール264について説明する。エンボスロール264はニップ時に荷重を受けるので、強度および加工精度が求められ、さらに加熱装置を含むことが好ましい。材質としては、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが挙げられる。
エンボスロール264のロール径は、特に限定されるものではないが200〜500mmが好ましい。200mm未満では、ニップロールとの間で十分な加圧長さを確保できなくなり、表面粗面化が不十分となる場合がある。一方、500mmより大きくなると、加工精度が低下したり、エンボスロール264自身の自重によりエンボスロール264自身が変形しやすくなったり、製作コストが多大となったりする場合がある。
ニップロール256はエンボスロール264と平行に配置されることが好ましい。
エンボスロール264の加工精度も、前述したニップロール256と同じく、JIS B 0621(改訂年1984)にて定義される円筒度公差において0.03mm以下、円周振れ公差において0.03mm以下であることが好ましい。これらの値が0.03mmより大きくなると、加圧時のエンボスロール264とニップロール256の間に部分的な隙間ができるため、フィルム2を均一に加圧できなくなり、フィルム2の表面2aで成形性の低下が生じる場合がある。
なお、図2では表面粗面化手段91において表面粗面化用プレスユニット251は1組であるが、例えばフィルム搬送方向81に向かって表面粗面化用プレスユニット251を複数設置してもよい。
続いて、エンボスロール264の表面264aに形成する凹凸形状の好ましい形態について説明する。エンボスロール264の表面264aに形成する凹凸形状は表面粗面化手段91においてフィルム2の表面302aに表面粗面化によって成形したい凹凸形状とは逆パターンである。
エンボスロール264の表面264aに凹凸形状を形成する方法としては、ロール表面に直接切削やレーザー加工やサンドブラスト加工などにより凹凸を成形する方法、金属ベルトの表面に形成した鍍金皮膜表面に直接切削やレーザー加工やサンドブラスト加工などにより凹凸を成形する方法、金属ベルトの表面に機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー、電子線描画方法等のほか、既にある凹凸形状を有する原版を元にして電気鋳造を施す方法などによって凹凸構造面が形成された薄板を連続して貼り付ける方法などが挙げられる。
ここで、エンボスロール264の表面264aに凹凸形状、エッチング処理、あるいは研磨処理により形成することが好ましい。エンボスロール264の表面にエッチング処理または研磨処理した凹凸形状を成形する方法としては、ロール表面の周方向表面にエッチング処理あるいは研磨処理を行う方法、エッチング処理または研磨処理を行ったベルト状の薄板を、エッチング処理をした面、または研磨処理をした面が外側になるようにしてロールに嵌合する方法、エッチング処理または研磨処理をした薄板をロール表面に貼り付けてエンボスロール264とする方法などが挙げられる。エッチング処理あるいは研磨処理により凹凸形状を形成することで、凹凸をランダムに発生させることができるため、金型3を使って成形する際の金型3の外部へのエアの逃げ道が複数確保されて、エアの噛み込みを抑制する効果を高めることが可能となる。さらに、エッチングあるいは研磨により製作することで、直接切削やレーザー加工を施す方法などに比べて安価にエンボスロール264を製作することができる。エッチングあるいは研磨の条件については使用するエンボスロール264の材質や成形したい凹凸形状に応じて適宜自由に決めればよい。
エンボスロール264の表面264aに形成する凹凸形状は規則的である必要はなくランダムであってもよい。凹凸形状は、フィルム2の表面2aに形成された金型3の表面の形状に対応する形状、すなわち金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造によって適宜最適化すればよいが、好ましくはJIS B 0601(改訂年2001)にて定義される、算術平均粗さRaが0.1〜10μm、より好ましくは、算術平均粗さRaが0.1〜10μm、かつ、金型3の凹凸構造の高さ(単位μm)の1/20〜1/5とすることが好ましい。Raが0.1μm未満では成形時にエアを逃がす効果が低下し、金型3とフィルム2エアの噛み込みが発生しやすくなる場合がある。一方、Raが10μmを超えると、成形時に完全に金型3の凹凸構造に対応する構造がフィルム2の表面2aに成形されず、エンボスロール264の表面264aに形成する凹凸形状によって成形された凹凸形状の影響が残る場合がある。
エンボスロール264の表面264aに形成された凹凸形状をフィルム2の表面2aに押し付けることにより、フィルム2の表面2aには常に安定した凹凸構造を形成することができるようになるため、安定してエアの噛み込み抑制することができる。
ニップロール256および/またはエンボスロール264に設ける温度調整機構は、ロール内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を設置したり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流したりすることにより、ロール内部から加熱する構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターや誘導加熱装置を設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。また、この限りではなく、その他の構造であってもよい。また、ニップロール256とエンボスロール264に対してフィルム搬送方向81の上流側にフィルム2を温度調整する温度調整機構としては、例えば、フィルム2の近傍に赤外線加熱ヒーターを設置する構造や、ニップロール256および/またはエンボスロール264と同様の温度調整機構を有するロールに抱きつかせる構造が挙げられるが、この限りではなく、そのほかの構造であってもよい。
これらの好ましい加圧条件について以下に説明する。
また、両ロールの加圧時のたわみ量の合計は、フィルム2が加圧される領域の幅をWとしたときに、フィルム2の加圧領域の幅方向長さW内において50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。たわみ量が50μm超となると、ニップロール256の弾性体の層260が変形に追従しきれなくなり、フィルム2に負荷される加圧力が不均一となる場合がある。
好ましい加圧力は、加圧機構262によりニップロール256に与えられる力をPとしたときに、単位幅あたりに加わるニップ荷重を示すP/Wで定義される線圧の値の範囲を1kN/m以上とすることが好ましい。
表面粗面化手段91がプレス型表面粗面化手段であることによりフィルムの被成形面表面に強制的に表面粗面化手段の凹凸形状に応じた形状を成形させることができるため、常に安定して目標の表面粗面化を行うことができるようになる。さらに、表面粗面化手段としてエンボスロールとニップロールとからなる構造を有するプレス型表面粗度面化手段を適用することで、フィルム2の表面2aを連続的に安定して粗面化することが可能となるため、金型3で凹凸構造を成形する際に、フィルム2がフィルム搬送方向81の方向に位置ずれを起こしてフィルム2の表面2aで表面を粗面化していない箇所を成形して、エアの噛み込みによる成形不良が発生することを防ぐことが可能となる。
以下に、表面粗面化手段以外の装置構造について図1を用いて説明する。
プレスユニット10は、加圧プレート(上)14aが支柱11をガイドにして昇降移動できるように、プレスシリンダー12に連結されている。支柱11はフレーム(上)16aとフレーム(下)16bに挟まれるように配設されている。加圧プレート(上)14aの下面には温度調整プレート(上)15aが取り付けられている。一方、加圧プレート(下)14bの上面には温度調整プレート(下)15bが取り付けられている。各温度調整プレートには、それぞれ、図示されていない加熱ユニット、冷却ユニットが配管、配線等を介して接続されている。そして、金型3は温度調整プレート(下)15bの上側表面に取り付けられて、温度調整プレート(下)15bを介して、加熱、冷却制御される。なお、金型3は温度調整プレート(上)15aの下面に取り付けられてもよい。
プレスシリンダー12は、図示されていない油圧ポンプとオイルタンクに接続されており、油圧ポンプにより加圧プレート(上)14aの昇降動作および、加圧力の制御を行う。また、本実施形態では油圧方式のプレスシリンダー12を適用しているが、加圧力を制御できる機構であれば、いかなるものでもよい。圧力範囲は0.1MPa〜20MPaの範囲で、適用する成形材料やパターン形状に合わせて制御する。
図示されていない加熱ユニットは、温度調整プレート(上)15a、(下)15bをアルミ合金とし、プレート内に鋳込んだ電熱ヒーターにより制御するものや、温度調整プレート内に鋳込んだ銅あるいはステンレス配管、もしくは、機械加工により加工した穴の内部に加熱された水等の熱媒体を流すことにより加熱制御するものでよい。さらには両者を組み合わせた装置構成でもよい。また、金型に直接、熱媒配管ラインを加工し、金型を直接温度調整するようにしてもよい。
図示されていない冷却ユニットは、温度調整プレート(上)15a、(下)15bに鋳込んだ銅あるいはステンレス配管、もしくは機械加工により加工した穴の内部に冷却された水等の冷媒体を流すことにより冷却制御する。
巻出ユニット50は巻出ロール回転手段51と、引出バッファ部53と、ガイドロールと、から構成される。巻取ユニット60は巻取ロール回転手段61と、巻取バッファ部63と、搬送駆動ロール64と、フィルム固定部44、45と、ガイドロールと、から構成される。
引出バッファ部53、巻取バッファ部63はそれぞれボックス55、66とこれらに接続された吸引排気手段56、67から構成され、ボックス55、66内に挿入されたフィルム2の表裏面で圧力差を与えることにより、一定の張力を付与するとともにボックス55、66内でフィルム2を弛ませて保持する。
搬送駆動ロール64は図示されていないモーター等の回転駆動手段に連結されて、成形後のフィルム2を搬送する時にはニップロール64aが搬送駆動ロール64に近接し、フィルム2を挟み、搬送駆動ロール64にてトルク制御を行いながらフィルム2を一定張力のもとで搬送する。
また、本発明に適用するフィルム2の好ましい厚さ(厚み、膜厚)としては、図1に示すようにロール状に巻かれたフィルム2を成形するのであれば、0.01〜1mmの範囲であることが好ましい。0.01mm未満では成形するのに十分な厚みがなく、また1mmを超えるとシートの剛性により搬送が一般に難しい場合がある。
ところで、フィルム2は図1に示すように巻出ロール59から表面粗面化手段91、プレスユニット10を経て巻取ロール69までの連続体である必要はなく、枚葉状でもよい。フィルム2が枚葉状の場合の装置としては、例えば表面粗面化手段91で粗面化した連続体のフィルム2を枚葉ごとカットしたのちにプレスユニット10に搬送する構成や、表面粗面化手段91において枚葉ごとにフィルム2の表面2aに表面粗面化を行ったフィルム2を枚葉ごとにプレスユニット10に搬送する構成などが挙げられる。フィルム2が枚葉状の場合のフィルム2の好ましい厚さは、搬送中のたわみを抑制するため、0.3mm以上、より好ましくは1mm以上である。
本発明において用いられる金型3は、表面に凹凸構造が形成された面を有する金型である。凹凸構造とは、高さ10nm〜1mmの凸形状および/または凹形状が、ピッチ10nm〜1mm、より好ましくは高さ1μm〜100μmの凸形状および/または凹形状が、ピッチ1μm〜100μmで周期的に繰り返された形状のことを示す。
凸形状および/または凹形状の高さやピッチが10nmより小さくなると、金型3への凹凸構造の形成が困難となり加工精度が低下する場合がある。一方、凸形状および/または凹形状の高さが1mmより大きくなったり、ピッチが1mmより大きくなったりすると、フィルム2の表面2aに金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造が成形される際に、成形不良が発生しやすくなる場合がある。
凸形状および/または凹形状について、例えば、三角形状の溝が複数個ストライプ状に並んでいるものでもよいし、矩形、半円形状もしくは半楕円形状等でもよい。さらには溝が直線である必要はなく、曲線のストライプパターンでもよい。また、その稜線方向はベルトの周方向に限らず幅方向であってもよい。さらに、凹凸構造は他にも直線状あるいは曲線状に連続したものに限られず、半球や円錐や直方体などの凸形状がドット状に離散的に配置された離散凸構造でもよい。しかし、少なくとも半球や円錐や直方体などの凹形状が離散的に配置された離散凹構造を含むことが好ましい。発明者の実験的な検討では、金型3の表面3aに形成された凹凸構造が離散凹構造において、フィルム2の表面2aの表面粗面化を行うことで、成形時のフィルム2と金型3の間のエアの噛み込みを抑制し、成形不良を低減させることができることがわかった。
金型3の材質としては、所望の加圧時の強度、凹凸形状の加工精度、フィルム2の離型性が得られるものであればよく、例えば、ステンレス、ニッケル、銅等を含んだ金属材料、シリコーン、ガラス、セラミックス、樹脂、もしくは、これらの表面に離型性を向上させるための有機膜を被覆させたものが好ましく用いられる。
金型3に凹凸形状を形成する方法としては、金型3の母材表面もしくは母材表面に形成した鍍金皮膜表面への機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィー、電子線描画方法等のほか、既にある凹凸構造を有する原版を元にして電気鋳造を施す方法などが挙げられる。鍍金を施す場合は、鍍金の材質はニッケルや銅などが好ましい。また、鍍金の厚さは0.03mm以上とすることが好ましい。一方、鍍金の厚さが0.03mm未満では、凹凸構造を精度よく加工することが困難となる場合がある。
次に、本発明の凹凸構造フィルムの別の一実施形態を、図3を用いて説明する。
図3に示す凹凸構造フィルムの製造装置301は、表面に凹凸構造が形成されたエンドレスベルト形状を有する金型303(以下、金型303と略すこともある)と、金型303を加熱するための加熱ロール304、冷却ロール305と、加熱ロール304と平行に配置され、フィルムを加圧成形する表面に弾性体の層310を有するニップロール306と、成形後のフィルムを金型303より剥離する離型装置たる剥離ロール307とから構成される。そして加熱ロール304とニップロール306は、挟圧手段として金型303とフィルム302とを積層した状態で挟んで加圧するために、少なくともどちらか一方にプレス装置たる加圧装置312が接続され、加圧機構として構成されている。また、加熱ロール304、冷却ロール305に懸架した金型303を周回させるように搬送するための搬送機構として、加熱ロール304および/または冷却ロール305を回転駆動する駆動装置を備えている。また、フィルム302を搬送するため、搬送装置たる巻出ロール308、巻取ロール309を備えており、さらに、必要に応じて図示されていないガイドロールを1本ないしは複数本備えていてもよい。巻出ロール308とニップロール306および加熱ロール304の間に表面粗面化手段91を備えている。
凹凸構造フィルムの製造装置301の動作は以下の通りである。まず、巻出ロール308より巻き出されたフィルム302は、表面粗面化手段91においてフィルム302の表面302aに凹凸形状が形成される。表面粗面化手段91を通過したフィルム302は加熱ロール304の表面部での熱伝導により加熱された金型303上に供給される。金型303上に供給されたフィルム302は、ニップロール306により金型303の凹凸構造が形成された面303aに押し付けられ、フィルム302の表面302aに金型303の表面の形状に対応する形状、すなわち金型303の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造が成形される。この際、表面粗面化手段91において成形された凹凸形状を通じて金型3とフィルム302の間のエアが外に出される。その後、フィルム302は金型303と密着したまま加熱ロール304から冷却ロール305へ向かう第1の金型搬送経路371を通って冷却ロール305の表面部まで搬送される。冷却ロール305の表面部まで搬送されたフィルム302は、金型303を介して冷却ロール305との間の熱伝導によって冷却された後、剥離ロール307によって金型303から剥離され、巻取ロール309に巻き取られる。一方、剥離ロール307でフィルム302と剥離した金型303は、冷却ロール305から加熱ロール304へ向かう第2の金型搬送経路372を通って、加熱ロール304まで搬送され再び加熱される。この動作が連続的に行われる。
本発明の主たる部分である表面粗面化手段91については凹凸構造フィルムの製造装置1における表面粗面化手段91の場合と同様である。
続いて、表面粗面化手段91以外の各構成部材の構造について説明する。
本発明において用いられる金型303は、表面に凹凸構造が形成された面を有するエンドレスベルト形状を有する金型である。エンドレスベルト形状を有する金型の材質は強度と熱伝導率が高い金属が好ましく、例えばニッケルや鋼、ステンレス鋼、銅などが好ましい。また、エンドレスベルト形状を有する金型として、エンドレスベルト形状を有する金属ベルトの表面に鍍金を施したものを使用してもよい。
金型303の表面に凹凸構造を形成する方法については、金属ベルトの表面に直接切削やレーザー加工を施工する方法、金属ベルトの表面に形成した鍍金皮膜表面に直接切削やレーザー加工を施工する方法、凹凸構造を内面に有する円筒状の原版に電気鋳造を施す方法、金属ベルトの表面に凹凸構造面が形成された薄板を連続して貼り付ける方法などが挙げられる。
エンドレスベルト形状を有する金属ベルトは、所定の厚さ、長さを持つ金属板の端部同士を突き合わせ溶接する方法や、例えば所定の倍の厚さの金属板を所定の半分の長さで溶接してエンドレス形状にした後に2倍に圧延する方法、などによって製造される。
エンドレス形状を有する金属ベルトの表面に鍍金を施す場合は、鍍金の材質はニッケルや銅などが好ましい。
本発明において用いられる金型303の凹凸構造は、高さ10nm〜100μmの凸形状および/または凹形状が、ピッチ10nm〜1mm、より好ましくは高さ1μm〜50μmの凸形状および/または凹形状が、ピッチ1μm〜100μmで周期的に繰り返された形状のことを示す。凸形状および/または凹形状について、例えば、三角形状の溝が複数個ストライプ状に並んでいるものでもよいし、矩形、半円形状もしくは半楕円形状等でもよい。さらには溝が直線である必要はなく、曲線のストライプパターンでもよい。また、その稜線方向はベルトの周方向に限らず幅方向であってもよい。さらに、凹凸構造は他にも直線状あるいは曲線状に連続したものに限られず、半球や円錐や直方体などの凸形状がドット状に離散的に配置された離散凸構造でもよい。しかし、凹凸構造フィルムの製造装置1における金型3と同様、少なくとも半球や円錐や直方体などの凹構造が離散的に配置された離散凹構造を含むことが好ましい。
ここで、エンドレスベルト形状を有する金型の製造方法の一例を以下に示す。
まず、薄肉のステンレス鋼板の端部を突き合わせ溶接し、エンドレス形状を有する金属ベルトに加工する。次に、この金属ベルトをロールにはめて固定し、表面にニッケル鍍金処理を施し、その後、旋盤加工機にて金属ベルトの鍍金層に所定の凹凸構造を切削加工する方法がある。切削加工を施した金属ベルトは、ロールより取り外すことで、表面に所定の凹凸構造が形成されたエンドレスベルト形状を有する金型が得られる。
また、エンドレスベルト形状を有する金型の他の製造方法の例として、薄板状の金属板に凹凸構造を加工した後に、突き合わせ溶接でエンドレスベルト化する方法がある。薄板状の金属板への加工は、表面にニッケル鍍金処理を施した後、平面切削加工機にて鍍金層に所定の凹凸構造を切削する方法や、金属板表面を直接レーザー加工や、電子ビーム加工、あるいはフォトリソグラフィーにより凹凸構造を形成する方法が挙げられる。
続いて各ロール部材の構成について説明する。
ニップロール306は芯層の外表面に弾性体の層310を有する構造である。芯層は、強度および加工精度が求められ、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが適用される。また、弾性体の層310は、加圧により変形する層であり、ゴム、樹脂、もしくはエラストマー材質等が好ましく適用される。芯層はその両端部で軸受311によって回転可能なように支持されており、さらに軸受311は、シリンダなどの加圧装置312と接続されている。ニップロール306はこの加圧装置312のストロークにより開閉し、フィルム302を加圧または開放する。
また、ニップロール306は所望のプロセスやフィルム材質に合わせて、温度調整機構を有してもよい。温度調整機構としては、ロール内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を埋め込んだり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流したりすることにより、ロール内部から加熱する構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターを設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。
ニップロール306の弾性体の層310の耐熱性は、160℃以上の耐熱温度を有することが好ましく、さらに好ましくは180℃以上の耐熱温度を有することが好ましい。ここで耐熱温度とはその温度で24時間放置したときの引張強さの変化率が10%を超えるときの温度を言う。
弾性体の層310の材質としては、例えばゴムを用いる場合には、シリコーンゴムやEDPM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ネオプレン、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)、ウレタンゴム、NBR(ニトリルゴム)、エボナイトなどを用いることができる。更に高い弾性率と硬度を求める場合には、カレンダーローラ用樹脂としてゴムメーカ各社から販売されている上記ゴムに特殊な処方を用いたものや、じん性を向上させた硬質耐圧樹脂(例:ポリエステル樹脂)を用いることができる。
次に、ニップロール306と金型303を挟んで対向する加熱ロール304について説明する。加熱ロール304はニップ時に荷重を受けるので、強度および加工精度が求められ、さらに加熱装置を含むことが好ましい。材質としては、例えば鋼や繊維強化樹脂、セラミックス、アルミ合金などが考えられる。また、加熱方式としては内部を中空にしてカートリッジヒーターや誘導加熱装置を設置したり、内部に流路を加工して油や水、蒸気等の熱媒を流したりすることにより、ロール内部から加熱する構造でもよい。また、ロール外表面付近に赤外線加熱ヒーターや誘導加熱装置を設置して、ロール外表面から加熱する構造でもよい。
ニップロール306は加熱ロール304と平行に配置されることが好ましい。
加熱ロール304の表面には、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。なぜなら、加熱ロール304は常に金型303と接触しているうえ、ニップロール306による加圧力を受けるため、その表面は非常に磨耗しやすく、加熱ロール304の表面が磨耗したり、傷が入ったりすると、前述したようなフィルムの成形性の低下や、フィルムへのロール表面形状の成形が生じる場合があるためである。
加熱ロール304とニップロール306との間にフィルム2と金型303を積層した状態で挟圧する。
冷却ロール305は例えば内部に通水路が設けられ、一定の温度の水を連続して循環させる水冷式の冷却方式などによって冷却されることが好ましい。そして金型303との接触面における熱伝導により金型303を冷却する。
冷却ロール305の表面には、硬質クロムめっき、セラミック溶射、ダイヤモンド・ライク・カーボン・コーティングなどの高硬度皮膜の形成処理を施すことが好ましい。なぜなら、冷却ロール305は常に金型303と接触していて非常に磨耗しやすいからである。
剥離ロール307は冷却ロール305と同様に冷却装置を有しており、フィルム302の表面302aの反対側の面から冷却し、金型303からの剥離を補助する役割を果たす。また、剥離ロール307は流体圧シリンダなどにより冷却ロール305に対して押し当てられる構造であってもよい。剥離ロール307のフィルム302に対する加圧力は特に制限されず、剥離ロール307の周面がフィルム302の表面302aの反対側の面に密着していればよい。
巻出ロール308および巻取ロール309はともにフィルム302を巻きつけるコアを固定できる構造となっており、端部はモーター等の駆動装置と連結され、速度を制御しながら回転可能となっている。また、トルク制御により、フィルム302に与えられる張力を調整できることが好ましい。
各ロールの端部は、ころがり軸受などにより回転支持される。加熱ロール304はモーター等の駆動装置と連結され、速度を制御しながら回転可能となっている。搬送速度は凹凸構造の成形性と凹凸構造フィルムの生産性のバランスを考慮して決定されるが、凹凸構造を高精度に成形しながら生産性を高くするために、速度は1〜30m/分の範囲より決定されることが好ましい。ニップロール306の駆動装置は、加熱ロール304の端部とチェーンまたはベルトなどで連結し、加熱ロール304と連動して回転できるようにしたり、あるいは、加熱ロール304と速度を同期可能なモーターなどを用いて独立して回転させたりすることが好ましいが、回転自在の構造とし、フィルム302との摩擦によって回転されるようにしてもよい。
各ロールを支持する軸受は、そのロールの質量や受ける負荷、回転速度などに応じて設計される。
また、図1、3に示す凹凸構造フィルムの製造装置ではフィルム2、302の片面である表面2a、302aについて表面粗面化手段で表面粗面化をしたのち凹凸構造を成形する構成となっているが、この限りではなく、反対側の面についても表面粗面化手段と凹凸構造を成形する金型を備え、両面に凹凸構造を成形する装置構成としてもよい。
次に、本発明の凹凸構造フィルムの製造方法を説明する。
本発明の凹凸構造フィルムの製造方法は、凹凸構造が形成された金型の表面にフィルムを供給する供給工程と、前記金型に前記フィルムを接触させ加圧することにより、前記フィルムの少なくとも一方の面に前記金型の表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、成形後の前記フィルムを前記金型から離型して搬送する離型工程と、を少なくとも含む凹凸構造フィルムの成形方法であって、供給工程と成形工程との間に前記フィルム表面を粗面化する表面粗面化工程を含むことを特徴とする凹凸構造フィルムの製造方法である。
上記のフィルムの製造方法の一実施形態を、図1を用いて説明する。一連の供給、表面粗面化、成形、離型動作は以下のプロセス(A)〜(E)の流れで成形するものである。
フィルム2を巻出ユニット50にセットし、フィルム2の巻出部を引き出し、表面粗面化手段91、ガイドロールを経由し、プレスユニット10内の金型3の表面に沿わせ、さらに、剥離手段20を経由して、巻取ユニット60で巻き取っている状態とする。また、加熱ユニットを作動させて、温度調整プレート(上)15a、温度調整プレート(下)15bをともに成型温度まで上昇させておく。なお、下記の(A)〜(C)が成形工程、(D)が離型工程と供給工程、(E)が表面粗面化工程である。
(A)最初にプレスユニット10を作動させて、温度調整プレート(上)15aを下降させて、金型3の表面と温度調整プレート(上)15aとの間にフィルム2を挟むように加圧を開始する。温度、圧力、昇圧速度、加圧時間等の条件は、フィルムの材質、成形形状、特に凹凸のアスペクト比等に依存する。概ね、成形温度は100〜180℃、圧力は1〜10MPa、成形時間が1〜60秒、昇圧速度は0.05〜1MPa/秒の範囲で設定される。
(B)次に、加圧成形中において、冷却ユニットを作動させて、温度調整プレート(上)15a、温度調整プレート(下)15bを降温させる。なお、冷却中も加圧を継続していることが好ましい。冷却温度は金型の表面の温度がフィルム2を離型するのに十分に冷却されるように設定される。例えば、金型3の表面温度がフィルム2のガラス転移点以下まで冷却を行うのが良い。
(C)冷却完了後、圧力を開放して、温度調整プレート(上)15aを剥離手段20がプレスユニット10内を水平移動させるのに十分なスペースを確保できるように上昇させる。
(D)剥離手段20を用いて、金型3の表面のフィルム2がすべて剥離できたら、次に成形するフィルム2を金型3に供給する。
(E)次に成形するフィルム2を金型3に供給する際に、巻出ユニット50とプレスユニット10の間に設置した表面粗面化手段91においてフィルム2の表面2aの表面粗面化を行う。
フィルム2の表面2aを粗面化することで成形工程においてフィルム2と金型3との間に金型3の外部へのエアの逃げ道が確保され、成形時の金型3の凹凸構造とフィルムの間でのエアの噛み込みに抑制することが可能となる。なお、成形工程においてフィルム2の表面2aには金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造が成形されるため、表面粗面化の影響は少なくなる。
このとき、金型3の凹凸構造は少なくとも半球や円錐や直方体などの凹形状が離散的に配置された離散凹構造を含むことが好ましい。金型3の凹凸構造が離散凹構造の場合に、フィルム2の表面2aの表面粗面化によって、エアの噛み込み起因の成形不良発生抑制に著しい効果が期待できる。
また、表面粗面化工程において、フィルム2の表面粗面化を行う領域は、フィルム幅方向、フィルム搬送方向ともに、フィルム2の表面2aに金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造を成形する領域より広くすることが好ましい。フィルム2の表面2aに金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造を成形する領域より広くすることで、フィルム2の表面2aに金型3の表面の凹凸構造に対応する形状、つまり金型3の凹凸構造とは逆パターンの凹凸構造を成形する領域全域において、エアの噛み込みによる成形不良の発生を抑制することが可能となる。
続いて、表面粗面化工程での表面粗面化の方法について説明する。本発明の凹凸構造フィルムの製造方法では、表面粗面化工程が、フィルム搬送方向にわたってフィルムを連続的に供給しながら粗面化を行うことが好ましい。連続的に粗面化を行うとは、巻出ロールから巻取ロールに向かうフィルム搬送方向に対してフィルムを搬送しながらフィルムの表面粗面化を行うことをいう。さらに、表面粗面化工程が少なくとも表面を粗面化した型の表面にフィルムを加熱および加圧して行うことを含むことが好ましい。
ここで、表面を粗面化した型の算術平均粗さRaが0.1〜10μmであることが好ましい。0.1〜10μmであればエア逃げがしやすく、フィルムにシワが入りにくくなるため好ましい。なお、表面を粗面化した型の具体例については後述する。
連続的に表面粗面化を行い、少なくとも表面を粗面化した型の表面にフィルムを加熱および加圧して行うことを含む表面粗面化工程の一実施形態として、表面に粗面化した型を有するエンボスロールとニップロールとの間にフィルム2を通して加熱、加圧成形する方法について図1、2を用いて説明する。
まず準備段階として、フィルム2を巻出ロール59より引き出し、ニップロール256を開放した状態で、エンボスロール264とニップロール256との間を通した後、プレスユニット10を経由して巻取ロール69で巻き取っている状態とする。
続いて、ニップロール256および/またはエンボスロール264の図示されていない温度調整機構を作動し、ニップロール256および/またはエンボスロール264の表面温度が所定の温度になるまで温度調整する。また、ニップロール256とエンボスロール264に対してフィルム搬送方向81の上流側にフィルム2を直接温度調整する温度調整機構を設置している場合は、この温度調整機構も作動させ温度調整する。
エンボスロール264の表面温度は、フィルム2の材質、エンボスロール264の凹凸形状、アスペクト比等に依存するが、フィルム2の表面2aを有する部分のガラス転移温度をTgとしたとき、エンボスロール264の表面温度がTg℃からTg+50℃の範囲で設定されることが好ましい。Tg℃より低い場合はフィルム2の表面2aの表面粗面化が十分に行えない場合があり、Tg+50℃よりも高い場合は、表面粗面化工程通過後もフィルム2の表面2aがTg以上となっていて、表面2aに成形した凹凸形状が平坦面に戻ろうとする作用が働く場合がある。
エンボスロール264の表面温度が設定値まで温度調整されたら、凹凸構造フィルムの製造速度で搬送すると同時に、ニップロール256を閉じ、エンボスロール264とニップロール256でフィルム2を加圧し、エンボスロール264の表面に形成された凹凸形状をフィルム2の表面2aに加圧により密着させて、フィルム2の表面2aの表面粗面化を行う。このときの条件として、表面粗面化の速度は、凹凸構造フィルムの製造速度と同じとすることが好ましい。また、線圧はフィルムの材質や厚さに応じて適宜自由に決めてよいが、概ね1kN/m以上の範囲で設定されることが好ましい。線圧が1kN/m未満では、フィルム2の表面2aの表面粗面化が十分に行えない場合がある。
プレスユニット10でフィルム2を成形するためにフィルム2の搬送を停止している間は、ニップロール256および/またはエンボスロール264のロール表面温度をフィルム2のTgより低くすることが好ましい。Tgより高いままでは、搬送停止中にフィルム2の平面度が低下し、搬送不良を引き起こしたり、プレスユニット10での成形の際に成形精度が低下したりする問題が発生する場合がある。このほかに、例えば搬送を停止している間のみニップロール256を開放するとともに、図示していない移動可能なガイドロールを作動させ、フィルム2をニップロール256およびエンボスロール264から離間させる構造としてもよい。
なお、連続的にフィルム2の表面2aの表面粗面化を行う方法は、図2に示す方法に限られず、例えばフィルム2を搬送しながらレーザー光をフィルム2の表面に照射して粗面化する方法でもよい。また、これらに限られず、その他の方法でもよい。さらに、表面粗面化工程が少なくとも表面を粗面化した型を加熱したフィルムの表面に加圧して行うことを含むことにより、常にフィルム2の表面2aにエンボスロール264の表面264aに形成する凹凸形状に対応する形状、つまりエンボスロール264の表面264aに形成する凹凸形状とは逆パターンの凹凸形状が形成されるようになるため、安定して表面を粗面化できるようになり、結果としてより成形工程においてより安定的にエアの噛み込みによる成形不良の発生を抑制することが可能となる。
凹凸構造が表面に形成されたフィルムの製造方法の別の一実施形態を、図3を用いて説明する。図3の表面粗面化手段91は図2で示す、表面粗面化用プレスユニット251と同様の、表面にフィルム302の表面302aの表面粗面化を行うための凹凸形状が形成されたエンボスロール264と、エンボスロール264と平行に配置され、フィルム302を加圧成形する表面に弾性体の層260を有するニップロール256と、挟圧手段としてフィルム302を加圧するために、エンボスロール264とニップロール256の少なくともどちらか一方に接続された加圧機構262で構成される。
まず準備段階として、フィルム302を巻出ロール308より引き出し、表面粗面化手段91に通したのち、ニップロール306を開放した状態で、加熱ロール304と冷却ロール305に懸架された金型303上に沿わせ、剥離ロール307を経由し、巻取ロール309で巻き取っている状態とする。このとき、表面粗面化手段91においてフィルムの表面粗面化を行っていなくてもよい。
続いて、駆動手段によりフィルム302を低速で搬送しながら、加熱ロール304の加熱手段及び冷却ロール305の冷却手段を作動し、加熱ロール304及び冷却ロール305を介してそれぞれのロール上での金型303の表面温度が所定の温度になるまで温度調整する。搬送しながら温度調整する理由は、金型303は搬送状態において加熱及び冷却を繰り返して各位置での温度が平衡状態となる必要があること、搬送していないとフィルム302の加熱ロール304上に位置する部分が蓄熱し、そこでフィルムが溶けて破れてしまう場合があるからである。
加熱ロール304上での金型303の表面温度、冷却ロール305上での金型303の表面温度の条件は、フィルム302の材質、金型303の凹凸構造の形状、アスペクト比等に依存する。フィルム302の表面302aを有する部分のガラス転移温度をTgとしたとき、加熱ロール304上での金型の表面温度はTg+50℃からTg+100℃、冷却ロール305上での金型303の表面温度はTg−40℃からTg−100℃の範囲で設定されることが好ましい。また、温度調整中の搬送速度は0.1〜5m/分とすることが好ましく、0.1〜1m/分とすることがより好ましい。
加熱ロール304及び冷却ロール305の表面温度が設定値まで温度調整されたら、凹凸構造フィルムの製造速度で搬送する(供給工程)と同時に、表面粗面化手段91においてフィルム表面の粗面化を行っていなかった場合は表面粗面化手段を起動させ、フィルム302の被成形面の表面粗面化を開始する(表面粗面化工程)。表面粗面化の方法、条件については、図2の表面粗面化用プレスユニット251からなる表面粗面化手段91の場合と同様である。
続いて、ニップロール306を閉じ、加熱ロール304とニップロール306でフィルム302及び金型303を加圧し、金型303の凹凸構造が形成された面303aの形状をフィルム302の表面302aに加圧により密着させる。このときの条件として、凹凸構造フィルムの製造速度は1〜30m/分、線圧は400kN/m以上の範囲で設定されることが好ましい。
凹凸構造フィルムの製造方法は、金型の周回動作に合わせて各工程を並べると、金型加熱工程、加圧成形工程、第1の搬送工程、冷却工程、フィルム剥離工程、第2の搬送工程から構成される。以下、順に説明する。
まず、金型加熱工程では金型303は加熱ロール304と接触する部分において、常に高温の加熱ロール304からの熱伝導により加熱され、フィルム302と共に加熱ロール304とニップロール306によってフィルム302と共に加圧されるまでに、金型303の温度は加熱ロール304の表面温度まで昇温される。
加圧成形工程では、巻出ロール308から巻き出された、フィルム302が加熱ロール304とニップロール306による加圧部において、加熱された金型303に被成形面を押し当てられて密着し、軟化したフィルム302を構成する樹脂が金型303の凹凸構造が形成された面303aのパターン内に充填される(成形工程)。第1の搬送工程では、金型303に加圧されたフィルム302が、金型303と密着したまま第1の金型搬送経路371を通って冷却工程まで搬送される。
冷却工程では、金型303と冷却ロール305が接触する部分において、フィルム302は冷却ロール305との熱伝導により、金型303ごとフィルム302を構成する樹脂のガラス転移温度以下まで冷却される。
フィルム剥離工程では冷却後のフィルム302は剥離ロール307により、冷却ロール305から連続的に剥がすように離型される(離型工程)。なお、図3において剥離ロール307はフィルム302の冷却ロール305に対する抱き付き角が90度となるように配置されているが、0〜180度となる範囲で他の位置に配置されていてもよい。フィルム302の冷却ロール305に対する抱き付き角が大きくなるほど、フィルム302が冷却される時間が長くなり、フィルム302を十分に冷やすことが可能となる。剥離後のフィルム302は巻取ロール309に巻き取られる。第2の搬送工程では、金型303が第2の金型搬送経路372を通って冷却工程から再度金型加熱工程まで搬送される。
本発明に適用されるフィルム2、302の被成形面を有する層の材料は、熱可塑性樹脂を主たる成分とした熱可塑性樹脂が用いられ、具体的に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂などを挙げることができる。
このなかで共重合するモノマー種が多様であり、かつそのことによって材料物性の調整が容易であるなどの理由から特にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂またはこれらの混合物から選ばれる熱可塑性樹脂を含有していることが好ましく、上述の熱可塑性樹脂の含有率は50質量%以上であることがさらに好ましい。
フィルム2、302は上述の樹脂の単体からなるフィルムであっても構わないし、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。単体からなるフィルムの場合、被成形面を有する層を両表面に備えたフィルムとして扱う。複数の樹脂層からなる積層体の場合、単体フィルムと比べて、易滑性や耐摩擦性などの表面特性や、機械的強度、耐熱性を付与することができる。このように複数の樹脂層からなる積層体とした場合はフィルム全体が前述の熱可塑性樹脂を主たる成分とする要件を満たすことが好ましいが、フィルム全体としては前記要件を満たしていなくても、少なくとも前記要件を満たす層が表層に形成されていれば容易に表面を形成することができる。特に、凹凸構造フィルムの加工性を良くするために金型温度を高温にしたい場合は、表層にガラス転移温度が低く凹凸構造を成形しやすい樹脂、芯層にガラス転移温度が高く強度の強い樹脂、という構成のフィルムを用いることで、フィルムの平面性を維持しつつ、フィルムの加工性を高めることができる。
以上の凹凸構造フィルムの製造方法を用いれば、エアの噛み込みが起因の成形不良を発生させにくく、高い生産性で高精度な凹凸構造フィルムを製造することができる。
[用途例]
本発明の製造方法で得られた凹凸構造フィルムは拡散、集光、反射、透過等の光学的な機能を有する光学フィルム等、ミクロンサイズからナノサイズの凹凸構造をその表面に必要とする部材に好ましく用いられる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
図2の表面粗面化手段を有する、図1の凹凸構造フィルムの製造装置で凹凸構造フィルムを製造した。
(1)金型:
以下のとおりの金型を製作し使用した。
金型サイズ:200mm(フィルム幅方向)×400mm(フィルム搬送方向)×20mm(厚み)。
金型材質:銅。
凹凸構造:表面に直径15μm、3μmの離散凹構造(フィルムには離散凸構造が成形される)が金型全域にわたって形成されている。縦、横のピッチは縦横ともに100〜500μmのランダム配置。
(2)プレスユニット:
油圧ポンプで加圧される機構で、プレスユニット10内にはアルミ合金製でサイズが700mm(フィルム幅方向)×1,000mm(フィルム走行方向)の温度調整プレート(上)15a、温度調整プレート(下)15bが取り付けられ、それぞれ、図示されていない加熱装置、冷却装置に連結されている。なお、金型3は温度調整プレート(下)15bに取り付けられている。加熱装置は熱媒循環装置で、熱媒は加圧水を使用し、180℃に加熱したものを100L/分の流量で流す。また、冷却装置は冷却水循環装置であり、20℃に冷却された水を150L/分の流量で流すものである。
(3)表面粗面化手段:
ニップロール256は外径が160mmの炭素鋼からなる筒状の芯材表面に、弾性体の層としてシリコーンゴム(硬度:70°)を20mmの厚みで被膜したものを用いた。加圧領域の幅は220mmとし、フィルムの全幅(200mm)にわたってフィルムを加圧する構成とした。
加圧機構262には空気圧シリンダを用い、ニップロール256に対して加圧力20kNを付加した(線圧:100kN/m)。
エンボスロール264は炭素鋼からなる筒状の芯材の表面に、硬質クロム鍍金を施したのち周方向全周にわたってエッチング処理を行いエンボスロール264の表面264aにフィルム2の表面を粗面化するための凹凸形状を成形した。製作したエンボスロール264表面のフィルムが加圧される領域の任意の10点を印象材(株式会社ジーシー製 エクザファインレギュラータイプ)を用いて反転形状を採取し、超深度レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VK8510)で表面粗度を測定した。その結果、算術平均粗さRaの値は0.26〜0.54であった。エンボスロール264の外径は200mm、フィルム幅方向長さは300mmとした。
温度調整機構は、エンボスロール264内部に加工した流路に温度調整した水を熱媒として流す構造を設け、フィルム2を搬送時にはエンボスロール264の表面温度を155℃まで加熱するよう158℃の水を流してフィルム2の表面2aの表面粗面化を行う一方、フィルム2の搬送停止中は、エンボスロール264の内部に143℃の水を流して表面温度を140℃まで冷却した。
(4)フィルム:
ポリカーボネート(PC)(Tg:約150℃)からなり、厚みが180μm、幅は200mmである。該フィルムはプレスユニット10を挟んで対向に設置した巻出ユニット50、巻取ユニット60によって、送り出され巻き取られる。
(5)動作方法:
上記の装置を用い、以下のように間欠的に成形を行った。あらかじめ、フィルム2を巻出ユニット50から巻取ユニット60でプレスユニット10を経由して通しておく。次に、温度調整プレートが上下ともに180℃となるまで加熱した後、上側プレートを下降させて、フィルム2の加圧を開始する。加圧は金型の表面で7MPa、30秒で実施した。その後、加圧を継続したまま、温度調整プレートを上下ともに冷却する。各温度調整プレートが110℃になったときに冷却を停止する。上下ともに冷却が完了すれば、圧力を開放し、フィルム2を搬送する。そして、表面粗面化用プレスユニット251でフィルム2の表面2aを表面粗面化したフィルム2をプレスユニット10に供給する。フィルム2の搬送速度は2m/分とし、フィルム2の表面2aの表面粗面化はフィルム2を搬送しているときにのみ行った。
(6)結果
上記の動作を10回繰り返し、フィルム2を成形した。各回で成形したフィルム2について任意の離散凸構造10点の形状を超深度レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VK8510)で測定したところ、その結果、離散凸構造の高さは2.89〜2.93μmであった。また、超深度レーザー顕微鏡の画像を目視観察する限り、エアの噛み込みによる成形不良箇所は確認されなかった。
表面粗面化直後のフィルム2の表面2aの表面粗度について任意の10点を取り出して超深度レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VK8510)で測定した。その結果、算術平均粗さRaの値は0.25〜0.48であった。
(比較例1)
表面粗面化手段が無いことを除けば実施例1と同条件で凹凸構造フィルムを製造した。
(1)金型:実施例1と同じ
(2)プレスユニット:実施例1と同じ
(3)表面粗面化手段:無し
(4)フィルム:実施例1と同じ
(5)動作方法:フィルムをフィルム表面粗面化手段に通さないことを除けば実施例1と同じ
(6)結果
上記の動作を10回繰り返し、フィルム2を成形した。各回で成形したフィルム2について任意の離散凸構造10点の形状を超深度レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VK8510)で測定したところ、その結果、離散凸構造の高さは2.78〜2.91μmであった。また、超深度レーザー顕微鏡の画像を目視観察したところ、各回0〜3個の離散凸構造頂部に成形時のエアの噛み込みによる窪み(成形不良)が確認された。
また、成形に使用したフィルム2の被成形面の表面粗度について任意の10点を取り出して超深度レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VK8510)で測定した。その結果、算術平均粗さRaの値は0.018〜0.022であった。